自動運転あれこれ

2017.10.17 (Tue)
2年に1度の自動車の祭典、東京モーターショーが10月27日から始まる。
国内自動車メーカーは、開発競争にしのぎを削る電気自動車(EV)や
自動運転などの分野で先端技術をアピールする構えで、各社の出展内容がほぼ出そろった。
人工知能(AI)を活用した試作車の出展も目立つ。
」(朝日新聞)

今日のお題は自動運転とします。まず、自動運転にはレベルがあります。
レベル0・・・運転者がすべての操作を行う
レベル1・・・アクセル、ハンドル、ブレーキの操作のどれかを自動システムが行う
レベル2・・・アクセル、ハンドル、ブレーキの操作の複数を自動システムが行う
レベル3・・・限定的な状況で、アクセル、ハンドル、ブレーキの操作を自動が行う
       ドライバーはシステムからの要請があればこれに答える
レベル4・・・高速道路など特定の状況下で操作を全てシステムが行い、
       その条件が続く限りドライバーは全く関与しない
レベル5・・・考え得る全ての状況下での運転をシステムに任せる状態
       ドライバーの乗車も必要ない

これ、本当はもっと複雑なんですが、わかりやすいように書き換えてみました。
で、本項ではレベル4,5が実現した場合のことを考えてみます。
まず、自動運転が完成すると事故は起きなくなるでしょうか?
そんなことはないですよね。事故は劇的に少なくはなるでしょうが、
まったく起きないはずはありません。突然、歩行者が飛び出してくるとか、
急に目の前のトラックが荷物を落とすとか、不測の事態は必ずあるでしょう。
昔、原発は絶対に安全、という馬鹿げた神話がありましたが、
もろくも崩れ去ってしまいましたよね。あれと同じです。
では、事故が起きてしまった場合、その責任は誰にあるのでしょうか。

これ、自分で運転していないドライバーに責任を追わせるのは不自然ですよね。
そもそも完全自動運転なら、運転免許は必要ないし、
幼児や病人、障害者が一人で乗ったっていいわけです。
じゃあ、車を造ったメーカーが責任を負うのか。
もし自動運転に誤作動が起きての事故なら、
メーカーは責任を負う必要があるでしょうが、それ以外の場合は? 難しいですよね。
自分は、ドライバーもメーカーも無過失になるんじゃないかと思います。
で、民事で事故の賠償をする。賠償金を支払うのは保険会社です。
じゃ、保険金の掛け金は誰が払うのか? 

完全自動運転が普及すれば、個人での車の所有は意味がなくなるんじゃないでしょうか。
だって自分で運転する楽しみがないわけですから。
カーシェアリングが主体になるでしょう。自宅から連絡すれば車が自動でやってくる。
それに乗って、目的地に着いたら乗り捨てればいいわけです。
自動で走るタクシーみたいなもんです。その利用料金に保険料を上乗せする。
そんな形になっていく気がします。シェアリングカーは、
燃料補給や整備を一括して管理すればいいので、タクシー会社はもちろん、
ガソリンスタンドや町の整備工場なんかも必要なくなるんじゃないでしょうかね。

シェアする車の車種は近距離タイプ、遠距離タイプ、荷物を多く積むタイプとか、
そんなに多くする必要はないでしょう。どうせただの移動手段ですから。
同じ大きさ、同じ性能の車が多く走ってれば、それだけ事故も少なくなるでしょうし。
あと、どうしても自分で車を運転したいとか、高価な車を自慢したいという人は、
サーキットなどで自己責任で手動運転すればいいわけです。

次、当ブログで前に紹介した「トロッコ問題」というのが、改めて検討されています。
例えば、自動運転車が走っていると突然目の前の道路が陥没した。
ブレーキをかけても止まれないし、そこに落ちると必ずドライバーは死ぬ。
ハンドルを切って回避するしかないんですが、道路の右側には老人の集団がいる。
また、左側には幼稚園児が1人いる。この状況で、自動運転をしているAIに、
どういう判断をするようにプログラミングすればいいでしょうか。

まず、ハンドルは切らないで自分が穴に落ちて死ぬという選択。
しかし、そういうプログラミングをされた車に乗りたいですか?
老人はどうせ残り少ない命なんだし、将来のある幼稚園児を死なせるよりは
そっちに突っ込むという選択。あるいは、老人は集団で複数の犠牲者が出るだろうから、
犠牲が一人で済む幼稚園児に突っ込むという選択。
これも難しいですよね。老人や幼稚園児が死亡した場合の賠償額を瞬時に計算し、
額が少ないほうに突っ込むようにすればいいのか(笑)  

関連記事 『倫理学的思考実験』

MITが、今ネット上でこの問題について「モラル・マシーン」
というアンケートを世界規模でやっているようです。
興味を持たれた方はアクセスしてみてください。http://moralmachine.mit.edu/hl/ja

さてさて、では完全自動運転はいつごろ実現するでしょうか。
自分はまだまだ先のことだと思います。なぜかというと、技術的な問題はさておき、
完全自動運転が実現することで、仕事がなくなる、損をする、
大きな責任を負ってしまう、という人がたくさんいるからです。

まあ何の技術でもそうなんですが、世の中が大きく変わるときには、
それによって不利益をこうむる人の手あてをしなくてはなりません。
ソフトランディングを目ざさなければ、足の引っ張りあいが起きるでしょう。
新技術だからと はしゃぐだけでなく、生じる利益と不利益をしっかり計算し、
それによって人間全体がほんとうに幸せになれるのかということを、
つねに考えながらことを進める必要があると思います。

自分の予想としては、2030年になっても、
ほとんどの車が自動運転化されてる、というのは無理なんじゃないかと思います。
せいぜい高速道路上、トラックとかの商用車で実現するくらいなんじゃないかなあ。
で、そのうちに別の新技術が開発され、例えば人を乗せて移動するドローンとか、
そっちのほうに世の中の関心が移っていくとか・・・(笑)

自動運転車関連銘柄3







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タイムトラベル雑想

2017.10.07 (Sat)
こないだタイムパラドックスの話を書きましたが、その続きみたいな内容です。
ちゃんとした科学のお話ではありませんので、そのつもりでお読みください。
未来にも過去にも行けるタイムマシンが完成したとします。
で、これを使って何か金もうけをしたい。
そう考えたとき、一番最初に思いつくのは、株とかロトとか競馬ですよね。
この中では、結果が短期間にわかる競馬が一番てっとり早いでしょう。
馬券もほぼ金額無制限に買えますし。

じゃあ競馬以外にはどんな金儲けの手段があるでしょう。
これ、『ドラえもん』のある回で面白い話が出ていたのでご紹介します。
さすがに子ども向けアニメですからギャンブルを出すのははばかられるので、
こんな内容になったんでしょうね。・・・自転車がほしいのび太は、
お父さんにボーナスで買ってもらえる約束をします。
ところが、お父さんの会社の業績が悪化してボーナスの額が減らされてしまい、
お父さんは約束を無視します。のび太はいつものようにドラえもんに泣きつき、
ドラえもんはタイムマシンを取り出します。

そしてお父さんのボーナスをこっそり拝借し、
現在の銀行で100年間の定期預金にしてしまうんですね。
これで利子が100年分つくはずです。そして100年後の未来に行って、
増えたお金を引き出してくればいいわけです。
結果、たしかにお金は増えました。ドラえもんはリュックいっぱいの札束を持って
未来から帰ってくるわけですが、もちろんその札束は、
現在の人間は誰も見たことがないもので、使いようがなかったんです。

そこでさらに知恵をしぼった二人は、
100年後の未来でも、現代のお金が古銭として売られてるだろうと考えます。
で、もう一度未来に行って、未来のお金で現在のお札を古銭として買ってくる。
しかし未来では古銭の価値が値上がりしていたので、お父さんのボーナスは、
ちょうど自転車1台分しか増えなかった・・・こんなお話でした。
しかしこれ、現実的に考えれば危ない方法です。
100年はたいへん長い期間ですし、その間に銀行の倒産、ハイパーインフレ、
デノミ、戦争、革命などが起きないとは限らないですよね。

さて、競馬の話に戻って、今日のスポーツ新聞を持ってタイムマシンで昨日に行き、
勝った馬の馬券を大買いする・・・
大きく買えば買うほど配当率は下がってしまうでしょうが、それはしかたない。
でもこれ、そんなにうまくいくでしょうか。
前回、平行世界のことを書きましたが、この手のお話は、
タイムマシンで過去に戻ったとき、時空がずれて別の平行世界に入ってしまい、
持っているスポーツ新聞のとおりの結果にはならない・・・
そういう結末になることが多いんですよね。

さて、タイムパラドックスには、前回ご紹介した「親殺しのパラドック」の他に、
「ブートストラップのパラドックス」と呼ばれるものがあります。
これは、例えば現代から『枕草子』を持って平安時代に行き、清少納言に見せる。
面白いと思った清少納言はそれを書き写し、現代にまで伝わる・・・
そうすると『枕草子』を実際に書いた人がいなくなってしまうわけです。
これ、本でなくても、未来から来た人が有名デザイナーの服を着ていて、
それを見た過去の人がスケッチをして、
そのデザインを自分のものとして発表してしまう、なんてことも考えられます。
やはり未来の情報が過去に伝わるのはマズイようなんです。
 
この考え方を効果的に使っていたのが、映画の『ターミネーター』シリーズです。
最初のターミネーターが未来から過去にある人物を殺しにやってくる。
で、ターミネーターは撃退されたけども、その腕が過去に残ってしまい、
その未来の技術をもとにして、人類を滅亡させるスカイネットが作り出される。
『ターミネータ-2』では、人類を助けにやってきたターミネーターが、
自分の体が過去に残るのを避けるために、
溶鉱炉に入って自分を完全消滅させるという名シーンがありましたよね。

さてさて、そろそろまとめますが、
原因があって結果があるという因果律は、
どうしても崩せないものであるのかもしれません。
ですから、そもそも過去に戻ることができるタイムマシンは完成しない。
ホーキング博士は「時間順序保護仮説」で、過去に戻れるよう空間をねじ曲げるには
無限大の力が必要で、相対性理論の式が破綻してしまうと述べています。

また、もし過去に戻るタイムマシンができたとしても、
過去に未来の情報が伝わってしまいそうな場合、そこで時空にズレが生じて、
因果律に反しないような平行世界に入ってしまうとか、
もしかしたら、そういう宇宙の仕組みになっているのかもしれませんね。

関連記事 『タイムパラドックスの話』



追伸: 量子力学では二重スリット実験などで、未来の出来事が過去に影響を与える 
    「逆因果」という事象が世界的に研究されています。それについては、
    いつか機会があれば書いてみたいと思います。





クイズ

2017.10.05 (Thu)
題1問 「走っている電車の中で真上にジャンプすれば元の場所に落ちます。
     では、走っている電車の屋根の上でジャンプすればどうなるでしょう?」

これ、ネットでよく見かける問題ですよね。
答えは「その他の条件をいっさい考慮しないとすれば、元の場所に落ちる」です。
時速60kmで走っている電車の乗っているあなたは、
やはり時速60kmで進行方向に向かって動いているのです。
これはあなたが立っていても座っていても、ジャンプして空中にいても同じです。
電車の中でも屋根の上でも、同様に慣性の法則が働いています。
地球は公転・自転していて、電車とは比べ物にならない速さで動いているのですが、
ジャンプすると元の場所に落ちますよね。

ただ、電車の中と屋根の上で違いがあるように感じるのは、
屋根の上だと風があるからでしょうね。電車の中は壁でおおわれているため、
中の空気も電車と同じ時速60kmで動いています。
ところが電車の屋根の上はそうではありません。
時速60kmは、だいたい秒速17mになります。

秒速17mの風が電車の進行方向とは逆向きに吹いているわけですが、
これ、台風なみの暴風ですよね。ですから、電車の進行方向を向いてジャンプすれば、
あなたは向かい風によって後ろに押し戻されることになります。
また、電車の進行方向とは逆を向いてジャンプすれば、
追い風によって前に吹き出されることになります。

あと、元の場所に落ちるのは、電車が等速運動(同じスピード)してる場合に限ります。
もしも、60kmで走っている電車の中であなたがジャンプした瞬間、
電車が急に70kmにスピードを上げたらどうなるでしょう。
まあ一瞬のうちに10kmもスピードを上げるのは無理なのですが、そこは思考実験。

この場合、あなたは60kmの速さで空中にいるのに、
電車(の床)は70kmで動くため、あなたはジャンプした地点より後ろに落ちます。
逆に、あなたがジャンプした瞬間に電車が急停止すると、
あなたは前につんのめっていくことになるでしょう。
また、電車がカーブを走っているとか、
起伏のある地面を走っているとかの加速度運動をしている場合、
落ちる位置は飛び上がった位置と微妙に違ってくると思われます。

題2問 「赤い絵の具がチューブに入っていてフタが閉まっています。
     では、この絵の具は何色でしょう?」

答えは黒ですが・・・この問題は反則です。なぜかというと、
フタが閉まったチューブの中は誰も見ることができないからです。
中を見るためには、光をあてなくてはなりません。
そして中の絵の具は、光をあてたとたんに黒から赤に変わるのです。
なんだか魔法みたいですね。

物には色はない、という考え方があります。では何に色があるかというと、
それは光です。光の色は?と聞くと、無色透明とか白と答える人が多いのですが、
虹は7色ですよね。また光をプリズムに通すと7色にわかれます。
光はこの7色が混ざって無色透明になっていると考えてください。

で、物の表面は電子顕微鏡で見れば分子レベルの凸凹があります。
その凸凹はある光を吸収し、ある光は反射します。
赤い絵の具は、赤い色を反射し、それ以外の光は吸収してしまいます。
そして反射した赤い光があなたの目に届いて、絵の具が赤く見えるというわけなんです。

では、光にはほんとうに色があるんでしょうか。
ここは難しいところです。色は心理物理量と言われています。
例えば、あなたの目の前にパソコンがあったとして、
その重さや縦横の長さは物理量です。それに対し、
あなたのパソコンのデスクトップの壁紙の色は心理物理量になるんですね。
これ、どこが違うんでしょうか。
それは、色というのはあなたの脳の中で作られているからです。

可視光線には波長があります。これは物理量です。
虹の色の紫は波長が短く、それより短くなると紫外線と呼ばれ人間には見えません。
赤は波長が長く、もっと長くなると赤外線と呼ばれて、やはり人間には見えません。
(紫外線の領域が見える生物は多数います)
で、みなさんはある波長の光を目にすると、視神経からその光を取り入れて、
脳の中で赤とか青とかの色を感じとっているんですね。
ですから、色はあなたの脳が作っている心理的なものとも言えるわけです。



ちょっと前に「人によって色が違って見えるドレス」というのが話題になりました。
下に画像を貼っておきますが、これが見る人によって、「白と金」「青と黒」
に見えると話題になりました。それ以外の見え方をしたという人もいます。
なぜこれが起きるかというと、見る人の脳の中で、
ドレスのまわりの光環境をその人なりに解釈して、色の補正を行ってしまったからです。
ちなみに、自分には白と金に見えます。



「後ろから強い光が射していてドレスとカメラはその影に入っている」と認識した人は、
より明るく補正してドレスを見るので「白と金」に見え、
「部屋全体が明るくてドレスとカメラも明るい場所にある」と認識した人は、
より暗く補正してドレスを見るので「青と黒」に見える、ということなんだそうです。
ちなみに下の図の長方形で囲まれた部分、同じ色のシャツに見えますか?
自分はどうやっても見えません・・・
ですが、これをフォトショップに取り込んで色スポイトで確認すると、
これがまったく同じ色なんですよねえ・・・チョー不思議です。



※ 間違いがあればご指摘ください。






温羅、桃太郎、邪馬台国

2017.10.01 (Sun)
今回は比較的軽い3題話ですが、これって妖怪談義になるのか、
それとも古代史になるのかなあ。まあ古代史といっても眉唾ものの内容ですが。
古代の吉備地方(岡山県を中心とした地域)に、あるとき、
空を飛んで巨大な鬼がやってきました。真っ赤な髪をして、身長は一丈四尺
(約4,2m)もあったとされます。
鬼は温羅(うら)という名前で、現在の総社市に鬼ノ城(きのじょう)という
城を築き、近辺を荒らし回りました。

これを伝え聞いた大和朝廷は、温羅を討伐するために吉備津彦を派遣しました。
吉備津彦命は第7代孝霊天皇の皇子で、四道将軍の一人です。
四道将軍は、大和朝廷が勢力圏を広げるために全国に派遣した4人の武人。
吉備津彦は温羅との戦いに備えて、楯築(たてつき)遺跡に砦を築きました。
楯築遺跡は鬼ノ城の近くにある2世紀後半から3世紀ころの弥生墳丘墓で、
双方中円形をしています。○の両脇に□がくっついた、
腕時計のような形といえばわかりやすいでしょうか。全長72m、
2世紀当時としては最大規模の大きさで、吉備の大王の墳墓と考えられます。

さて、吉備津彦は弓矢で温羅を攻撃するものの、温羅が石を投げて
矢を撃ち落としてしまう。そこで一つの弓に2本の矢をつがえて射たところ、
一本が見事に温羅の目に突き立った。温羅は驚いて雉に姿を変えて飛び立ったが、
吉備津彦は鷹に変身して追いかける。温羅はさらに鯉になって川に逃れたが、
鵜に変身した吉備津彦によって捕らえられ、ついに首を斬られてしまう。

しかし温羅は首になっても泣き喚き、そこで吉備津彦は吉備津神社の釜殿の
釜の下にその首を埋めた。現在、この吉備津神社では鳴釜神事といって、
釜の鳴り方によって吉凶を占っていますが、これはその下に埋まっている
温羅の首の霊力によるものとされています。
そういえば時代は違いますが、同じように朝廷に反抗した平将門も、
首になっても喚き続けたと言われていますね。
これは朝廷に反逆したものの末路を表しているんでしょうか。
上田秋成の『雨月物語』には「吉備津の釜」という怪談がありますが、
吉備津神社の鳴釜神事が筋の上で重要な役割を果たしていました。

さて、温羅を見事退治した吉備津彦ですが、民話「桃太郎」のモデルである
という説があるんです。桃太郎が行った鬼ヶ島は温羅の鬼ノ城。
おともに連れた犬、猿、雉は、犬飼健(いぬかいたける)
楽々森彦(ささもりひこ)留玉臣(とめたまおみ)の3人の家来で、
キビダンゴは黍団子(とうきびの団子)ですが、これは吉備団子でもあるのです。
岡山県は現在でもトウモロコシの名産地で、また桃の産地としても有名です。

うーん、どうなんでしょう。吉備津彦は少なくみても1500年以上前の人物です。
そういう人の伝説が民話に姿を変えて現在まで残っているのだとしたら、
これはなかなかスゴイことだと思います。
ただ、古い桃太郎伝説は岡山県以外に、愛知県や香川県にもあります。

さてさて、最後に邪馬台国ですが、
ここからの話は邪馬台国畿内説にのっとったものですが、
九州説その他の方はどうかお気を悪くなさらないでください。
半分冗談みたいな内容ですから。

まず、最初のほうで出てきた楯築遺跡は、
邪馬台国の前身であった国の王のものであるとする説があります。
畿内説の邪馬台国候補地はほとんどが奈良県桜井市の纏向遺跡ですが、
卑弥呼の墓ともされる箸墓古墳(箸中山古墳)からは、
吉備で発祥した特殊器台とよばれる土器が出土しています。
纏向遺跡は2世紀最後半に突如として現れた巨大遺跡であり、
吉備の勢力が中心になって築いたというのは、あってもおかしくないと思います。

さらに、吉備津彦の姉は倭迹迹日百襲姫(やまとととひ ももそひめ)といって、
記紀では箸墓古墳に葬られたことになっています。シャーマン色の濃い女性で、
畿内説ではこの人物を卑弥呼に比定する研究者も多いのです。
それと、『魏志倭人伝』(三国志 魏書 東夷伝 倭人の条)
では、卑弥呼が魏に難升米(なしめ?)という人物を遣使していて、その後
さらに派遣されたものの中に、伊声耆(いせき?)掖邪狗(えやく?)の名があります。

倭迹迹日百襲姫には吉備津彦の他にもう一人、稚武彦(わかたけひこ)
という弟がいます。この弟2人が、
上記の伊声耆・掖邪狗ではないかとする説があるんです。
なんだ名前がぜんぜん違うじゃないか、と思われるでしょうけど、
吉備津彦の本名は、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)で、
男を表す彦を取ってしまえば「いさせり」です。
伊声耆(いせき)に似ているといえば言えなくもないでしょう。
また、掖邪狗は「ややこ」と読んで、若々しい赤子のような男子という意に取れば、
これが稚武彦ということになります。

ただの言葉遊びじゃないか・・・まあ、自分もそう思うんですが、
ちょっと面白いのでご紹介しました。あと、桃太郎の桃ですね。
纏向遺跡では、一カ所から2千個以上の桃の種が出土しました。
これは単なる食べカスではなく、同じ場所から祭祀用の土器等が出土してますので、
何らかの祭祀、神事に使われたものと見て間違いないのです。
時代もほぼ卑弥呼が活躍した年代のものであるとされます。
桃が神聖な果実として尊重されていたのは間違いないでしょう。
そして桃は桃太郎(吉備津彦)のモモであり、また倭迹迹日百襲姫のモモでもあるのです。

温羅の面








キップ・ソーン博士

2017.10.01 (Sun)
早いもので、今年もまたノーベル賞受賞シーズンになりました。
現在、日本人は3年連続で受賞していますが、初の4年連続の受賞はなるでしょうか。
さて、今回取り上げるのは、ノーベル物理学賞の最有力候補の一人である
キップ・ソーン博士についてです。昨年2月に重力波がはじめて観測されましたが、
博士はその検出プロジェクトのリーダーの一人なんですね。
ちなみに、物理学賞の発表は日本時間の10月3日です。

自分が博士の名前を知ったのは、もう10年以上前、
過去に遡るタイムマシンに関する著作を読んだときでした。
キップ・ソーン式のタイムマシンはワームホールを用いたもので、
ワームホールは宇宙の虫食い穴とも呼ばれます。
入り口から入って出口から出ると、
そこは宇宙のはるか離れた空間になっているという不思議な穴。
ただし、この宇宙に実際にワームホールがあるという証拠はまったくありません。
ですから、このタイムマシンに関する考察は思考実験です。

ブラックホールは空間に空いた一方通行の穴のようなものです。
そこに飲み込まれた物質やエネルギーは二度と出てくることはできません。
ブラックホールの中心は特異点といって、圧力や温度が無限大になります。
ブラックホールには入り口はあるものの出口はないのです。
このブラックホールを2つつなげたらどうなるか、
というのがワームホール発想の原点なんです。

博士のタイムマシン理論について、ここでは詳しく解説はしませんが、
負のエネルギーを持つエキゾチックな物質を使って特異点問題を回避し、
さらにワームホールの通路を光速に近いスピードで伸ばしてやることで、
なんとかかんとか過去へのタイムトラベルを可能にする理論を組み立てました。
ですが、これが現実にできるかというと、おそらく1000年たっても不可能でしょう。
先に書いたように、まずワームホールそのものが存在するかどうか怪しいですし、
ワームホールを準光速でビョ~ンと伸ばしてやる技術は想像を超えています。

それと、キップ・ソーン式のタイムマシンはなかなか使いにくいものです。
なぜかというと、原理的に、過去に遡るといっても、
タイムマシンが作られた以前の過去には戻れないからです。
今日は10月1日ですが、この日の昼の12時にタイムマシンが完成したとすると、
そこが基準点となって、それより昔には戻れないのです。ですから、
ジュラ紀の時代に行って恐竜を観察するとか、子ども時代の自分に会って、
人生のアドバイスをしてやるなどということは不可能なわけですね。

さて、自分は洋画に関する雑文なども書いていますが、
博士は映画界とも深いつながりがあります。話題になった2014年のSF映画、
『インターステラー』の原案を出したのがキップ・ソーン博士でした。
この映画は、特殊相対性理論、特異点問題、多次元における時間と重力など、
きわめて難解な物理学的内容が含まれていて、
その方面の知識があればあるほど面白く見られるというものでした。
また、ジョデイ・フォスター主演の1997年のSF映画『コンタクト』にも
深く関わっており、この映画ではワームホールを利用した星間旅行機が登場します。

さて、博士は量子力学の人ではなく、研究分野は相対論的重力理論です。
相対性理論の学者がノーベル賞を取るのはたいへんに難しいと言われます。
なぜなら、理論を証明する証拠が出てくることがほとんどないからです。
ノーベル賞は賞の性格として、実証的かつ実用的な研究に与えられることが多いのです。

世界的に有名な車椅子の天才科学者、ホーキング博士がノーベル賞を取れないのは、
彼の研究を証明する証拠が実験で出てこないからなんですね。
(大型加速器でマイクロブラックホールが生成され、
それが蒸発するホーキング放射が観測されたなら、あるいは・・・)
相対性理論の創始者、アインシュタインはノーベル賞を受賞していますが、
これは相対性理論に対して与えられたわけではなく、他の研究によるものです。

ですから、今回キップ・ソーン博士がノーベル賞を取れればラッキーとも言えますが、
長い間、アメリカで重力理論研究の第一人者としてやってきたからこそ、
重力波検出プロジェクトのリーダーに選ばれたのだとも言えるのです。
ノーベル賞に関しては、もし今年取れないとしても、
近い将来には必ず受賞することになるでしょう。

さてさて、最後に、博士はアメリカ人ですから冗談が好きです。
博士は研究分野が同じであるホーキング博士とはたいへん仲がよく、
ホーキング博士はイギリス人ですから賭けが好きです。

「裸の特異点」という概念があります。
宇宙の始まりのビッグバンの瞬間やブラックホールの中心が特異点ですが、
なぜ「裸の」とついてるかというと、
ホーキング博士は、これは女性の局部のように恥ずかしいものだから、
必ず奥底に隠されて見えなくなっていると主張しました。
(特異点は温度・圧力無限大になり、計算が成り立たなくなるので恥ずかしい)
それに対してキップ・ソーン博士は異を唱え、賭けが成立しました。

結果、高い次元の宇宙だと裸の特異点が存在するという計算結果が示され、
ホーキング博士はキップ・ソーン博士に、
裸を隠すための下着を贈ることになりました。
また「はくちょう座 X-1 はブラックホールか否か」という賭けも2人の間で行われ、
これにも負けたホーキング博士は、キップ・ソーン博士に、局部丸見えの、
アメリカのヌード雑誌である『ペントハウス』1年分を贈ったということです。

関連記事 『重力波観測』



※ 追伸 ノーベル物理学賞受賞おめでとうございます。