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空間についての一考察

2018.10.22 (Mon)
映画E38080Cube-2E38080より

今回はこういうお題でいきます。ただこれ、前半は自分がかなり勝手に考えた
内容ですので、冗談みたいなものだと思って聞いていただければ幸いです。
さて、よく「時間と空間」と言いますよね。この2つは、
古代ギリシアの昔から、哲学的な考察の対象になってきました。

ただ、時間については、カントやハイデカーなど、多くの哲学者が著書で
くわしく書いていますが、空間についてはそうでもありません。
これは、時間とは何かを考えるのが難しいのに対して、
空間は、なんとなくわかっているような気がするからかもしれません。

むしろ空間は、哲学よりも数学での考察の対象になってきました。
みなさんも学生時代に勉強して苦しめられたでしょうが、
縦・横・高さをそれぞれ軸にとった下図のような座標で、
基本的に、どのような空間も表すことができるからです。

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ですが、みなさんが普段、空間と認識しているものは、
じつは、あくまで「地球上にすむ人間」という条件に縛られたものなんです。
宇宙空間を無重力遊泳している場合を考えてみてください。
みなさんはどのような方向にも回転することができますし、
自由に進んでいくことができます。

とすると、縦・横・高さという区別は意味がなくなりますよね。
ただ、x・y・zという3つの座標軸があるだけ。
ですが、どのように回転しても、みなさんはたぶん、
頭がある方向を上、足の方向を下と考えてしまうと思います。
これはみなさんが、人間の体という器に縛られているからじゃないでしょうか。

また、縦を前後、横を左右、高さを上下と言い換えることもできます。
で、この中で高さは特別なもののように思いませんか。
例えば、広い野原の中に一人で立っているとしましょう。
みなさんは、前後にも左右にも自由に動いていくことができますが、
上下に動くのは難しいですよね。

上にはせいぜい1mくらいジャンプするだけで、下にいくためには、
スコップで地面を掘らなくてはなりません。なぜそうなのかと言えば、
みなさんは地球の上に立っていて、地球には重力があるからです。
もしこれが宇宙空間だったら、みなさんは頭の方向へも、
足の方向へも自由に進むことができるはずです。

どうでしょうか。みなさんが空間と考えているものは、人間の体と地球上
という条件によるところが大きいんですね。ちなみに、前後という区別があるのも、
みなさんの目が一方向についているからです。
目で見える方向が前、見えない方向が後ろというように一つの軸ができます。
そして、その軸に対して直交する軸が左右なわけですね。

ここで、面白い思考実験をしてみましょう。ある星に宇宙生物がいたとします。
その生物は完全な球形の体を持っていて、全身にびっしりすき間なく目があります。
つまり、360°の視界を持っているんです。で、体の中にはガスが詰まっていて、
フワフワと浮かんで進むことができます。(ここで、口はどこにあるのか、
などと言う人は思考実験には向いていません。)

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では、この生物にとって、前後・左右・上下の区別はあるでしょうか。
おそらくですが、上下の区別はあると思います。自分の星の地面が見えるほうが下。
その反対の空があるほうが上。では、前後・左右はあるのか。
ここが難しいですね。みなさんはどう思われますでしょうか。

さて、ここからは真面目な話です。じつはこの100年ほどで、
空間の概念は変化してきています。かつてニュートン力学において、
空間は、無限に広がる3次元のユークリッド空間と想定されていました。
ところが、20世紀初頭、相対性理論が登場して大きく空間の概念が変わりました。

重力でゆがめられる空間
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アインシュタインはまず、空間と時間は切り離すことができないとして、
空間3次元+時間1次元の時空連続体を想定しました。
それと、重力によって空間がゆがむことを発見し、
リーマン幾何学によって空間を記述することを提案したんですね。

さらに、量子力学の分野において、プランク定数が発見されました。
プランク定数とは何か、長くなるのでここでは説明しませんが、
その式を変換することで、「プランク長さ」というものが出てきます。
これは、それ以上小さくすることができない、空間の最小単位です。

その長さまでくると、空間は原理的に、われわれには観測できなく
なってしまうんです。また、時間の最小単位である「プランク時間」もあり、
この宇宙は、プランク長さとプランク時間で格子状に編まれている
とするのが、ループ量子重力理論です。

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また、量子力学と相対性理論(重力理論)を統合する試みである超弦理論では、
この宇宙は、空間9次元に時間が1次元。そして、空間のうちの6次元は、
われわれに見えないプランク長さ以下に縮こまっている、と説明されます。
これを空間のコンパクト化と言います。

さてさて、ということで、この100年ほどの間に、自明のものであると
考えられていた空間の定義が、ダイナミックに変化してきました。
こういう話はすごく面白いし、こう言ってはなんですが、
オカルト的な感じがしますね。では、今回はこのへんで。







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「舟」としての私

2018.10.21 (Sun)
ベリーなど実を結ぶ樹木の生存戦略は、その実を動物に食べてもらって
種子を拡散し、生育圏を拡大することだ。この生存戦略に基づき、
樹木の実は特定の動物種に向けて、「ここにいるよ! 私を食べて!」と
メッセージを発信していることが、徐々に明らかになっている。

草木と生物の絶妙な協力関係で成り立っているのが森の生態系だ。
豊かな森には実を結ぶ果物もよりどりみどりだが、
どうしてこれほどの種類があるのか。
(tocana)

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今回は科学ニュースからこういうお題でいきます。トカナからの引用ですが、
けっこう真面目な研究ですね。さて、なぜ植物の一部が果実をつけるのか。
なんで、果実はおいしいのか。どうしていろんな種類があるのか。これ、
普段はあまり考えないようなことですが、その理由はおわかりですよね。

ただ たんに種をつくるだけだと、種はその場に落ちてしまい、
そこは親の木がある場所なので、過密になって成長できませんよね。
ですから、多くの植物は、できるだけ離れた場所に種をばらまきたいわけです。
これにはさまざまな戦略があって、例えばタンポポは綿毛をつくって、
パラグライダーのように種子を遠くまで飛ばします。

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果実も同じで、食べておいしいことで、とりにくる生物がいて、
その生物が種子を遠くまで運んでくれるわけです。このとき、
種子まで食べられては困りますので、固かったり苦かったりして、
みなさんがスイカを食べるときでも、種をペッペと吐き出しますよね。

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さて、研究を行ったのは、米デューク大学の進化生態学者である
キム・バレンタ氏をはじめとする国際的な研究チームで、ウガンダと
マダガスカルの自然公園において、果樹と果実食動物の関係を、
その実の色の観点から調べてみたんですね。

植物の果実は、それを食べるお得意様の動物がいます。
木の幹はつるつるしてたり、ごつごつと枝が多く登りやすかったりしますが、
その形態は、「お得意様」の動物が果実を採りやすいようになってるんです。
これはどうやら、果物の色にもあてはまるようです。

研究では、ウガンダの公園にすむサルたちは、人間同様、光の三原色を感知できる。
それに対し、マダガスカルのサルは、赤と緑の色の区別が困難な「赤緑色盲」
の遺伝子を受け継いでるんだそうです。で、それぞれの地域の果実の色を、
光学スペクトル分析で調べたところ、果物の色は、お得意様動物に
発見されやすいよう、最適化されていることが判明したんですね。

これは、なかなかすごいことですよね。植物に、果実を食べに来る動物が、
赤緑色盲だなんてことがわかるはずがないんですが、長い間の進化の結果、
その動物が発見しやすい色と形に変化して、
自らの遺伝子を広範囲にばらまくことが可能になっている。

この手のことは、他にもさまざまにあり、そういうのを見るにつけ、
自然のしくみってすごいなと感心することになります。
この研究では、植物の果実は、熟す前と熟した後の匂いの差が大きいことも
明らかになりました。匂いに変化つけることで、「完熟したよ! おいしいよ!」
とサルや鳥たちにメッセージを送っているわけです。

さて、話を変えて、哲学の大きなテーマの一つに、
「われわれはなぜ生きるのか? なぜ死ぬのか?」というものがあります。
この答えは多面的で難しいでしょうが、生物学からの解答として、
「遺伝子を運ぶため」というのが出されています。

リチャード・ドーキンス
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つまり、自分の遺伝子を子孫に残すために、われわれは生きているということです。
「私たちは遺伝子を運ぶ舟である」という言葉がありますが、
この考え方を強く主張しているのが、イギリスの進化生物学者・動物行動学者で、
現代の世界最高の知性の一人とも言われる、リチャード・ドーキンス博士です。
博士は、「ミーム」という新概念も生み出しています。

「自然選択の実質的な単位が遺伝子である」とする遺伝子中心視点を提唱し、
「生物は遺伝子によって利用される"乗り物"に過ぎない」という比喩を
著書に書きました。この考え方は、生物学界だけではなく、自然科学界全体に
大きな衝撃を与えましたが、と同時に、強い反発もあったんですね。

「われわれは、たんに生殖して子孫を残すために生きているのではない。
人生にはもっと崇高な目的があるはずだ」みたいな反論です。
たしかにねえ、そう言いたくなる気持ちはわかります。ドーキンスの考え方は、
種の保存と遺伝子の伝達を重要視するあまり、個人を鎖の輪のように
見ているという批判が出てくるのは当然のように思います。

アイザック・ニュートン
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例えば、プラトン、アインシュタイン、ガリレオ、ダ・ビンチとか、
人類に偉大な貢献をした人物はたくさんいます。その中で、
アイザック・ニュートンなんかは一生独身で、子孫はいなかったはずです。
だからといって、ニュートンの生涯や業績が否定されることはありませんよね。
ドーキンス博士が言っているのは、あくまでも一つの答えでしかないんです。

さて、進化ということを考えると、もし自然界の目的が種の保存であるなら、
なぜわれわれは不死にならず、生殖して子孫を残すなどという回りくどい
方法をとっているのか。これは、環境の変化にすばやく対応するためなんでしょうね。
地球は長い歴史の中で、全凍結、地軸逆転、自転速度の変化、
小惑星衝突による環境の激変など、さまざまな試練を経てきています。

そこで生き残るには、生物の世代単位の短い期間での適応が必要だった。
また、同種間で異性をめぐって競争することで、強い遺伝子、優れた遺伝子が
生き残っていくという面は否定できません。「優生学」という言葉は
差別的だとしてなくなりましたが、その考え方は大きく間違ってはいないんですね。

さてさて、ここまでお読みになられて、どんなことを感じられたでしょうか。
「人は何のために生きるのですか?」という疑問に対し、
「親よりも優れた子孫を残すため」という答えで、
みなさんは満足できますでしょうか? では、今回はこのへんで。

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中国の人工月計画

2018.10.19 (Fri)
今月16日付の「人民日報」によると、2020年に「人工の月」を打ち上げる
予定なのは中国南西部の成都市だ。この人工衛星は「月を補完する目的」
で設計されており、太陽の光を反射して直径10〜80キロメートルの範囲を
誤差数十メートル程度で照らすことができるという。その明るさは本物の月の
およそ8倍とされ、夜の町を夕暮れ時くらいの明るさに照らすことができるという。

この壮大な計画は、今月成都市で行われた展覧会で発表された。計画によれば、
人工の月はおよそ50平方キロメートルを照らすことができ、街灯も必要なくなって
エネルギー消費の節約にもなるという。試験はすでに数年前から始まっており、
技術的にも成熟段階にあるとのことだ。
(tocana)

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今回は科学ニュースから、この話題でいきたいと思います。
ただ、自分は理系ではないですので、すごい間違ったことを言うかもしれません。
このニュース、記事はたったこれだけです。その人工衛星がどの程度の大きさで、
どのくらいの高さになるのかも書かれていません。

キーワードを拾って中国語検索してみましたら、中国の国営メディアの
記事が見つかるので、フェイクというわけではないようです。そこで、
まったく見当はずれの可能性もありますが、いったいどういうものになるのか
推理してみたいと思います。まず考えたのは、2年後の2020年打ち上げ
予定ということで、それほど大掛かりなものではないんだろうということです。

じつは、最初にこのニュースを見たときには、中国の話ですので、
でかい気球を打ち上げるんじゃないかと思いました。
でも、あらためて考えると、いろんな観点から気球では無理なことがわかります。
まず、記事に「人工衛星」と書いてありますし(笑)、
気球を高高度に上げると、上空の気象によってかなり不安定になります。

それと、気球が到達できる高度では「夜」を抜け出すことができません。
ですから、太陽の光を反射して光ることができないわけです。また、
もし電力などで気球を光らせるとすれば、莫大なエネルギーが必要になります。
ということで、これは無理ですね。

じゃあ、夜を抜け出すにはどうすればいいんでしょうか。
なぜ夜があるかはおわかりでしょう。地球が自転しているため、
太陽のある方向と反対側に、自分の住んでいる地域がきたときが夜ですよね。
下の図は、夏至のときの地球における昼夜を表したものです。

cddcdc (1)

ここで、南極や北極は白夜になります。ということは、地球の半径の高さにまで
上がれば、十分な太陽の光を受けることができるようにならないでしょうか?
地球の半径は、約6000km、これは人工衛星の高度としては中軌道。
けっして高い位置というわけではありません。

「あ!」 ・・・ここまで考えて、あることに思いあたりました。
こんなのが地球を周回してたら、通り道の下にある地域の人は迷惑ですよね。
おそらくこの人工衛星は、成都市の上空にとどまる静止衛星になると思われます。
静止衛星になるには、軌道傾斜角がゼロにならなくてはならず、その高度は
決まっていて、約36000kmです。最初に気球を思い浮かべたのは、
思考方法としては悪くなかったようです。

人工衛星の静止軌道
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この高さなら、成都市が夜であっても、太陽光を受けるのに問題はありません。
次に、どうやって太陽光を反射して地上に届けるのか。
巨大な鏡を打ち上げるというのは現実的に無理と考えられるので、
おそらく、人工衛星が、金属片を組み込んだ自動制御できる網のようなものを、
宇宙空間で広げるということになるんじゃないでしょうか。    


        
あと、記事では、「その明るさは本物の月のおよそ8倍」と出てきますが、
べつに、見た目の大きさが月の8倍というわけではないでしょう。
月は大きく、人工衛星は小さいですが、衛星の高度に比べて、
月ははるかに遠くにあるため、その光は淡いんですね。

ですから、人工の月は大きくなくても、そのぶん反射する太陽光が
強ければいいわけです。こうして考えてみると、
最初は夢物語のように感じましたが、けっこう現実的かなと思えてきました。
これは実際にできるのかもしれません。続報を待ちたいところです。

さて、ではもし人工の月ができたとして、
どのような利点ならびに欠点があるんでしょうか。
利点の一つ目は、人工の月は成都市の観光資源になるということです。
都市の上空に浮かぶ2つの月。これを目当てに旅行に来る人は増えるでしょうし、
月に関するいろんなイベントを行えば、相乗効果が期待できます。

次に、記事にあるとおり、夜間の照明を減らすことができて、
省エネルギーになるでしょう。もしかしたら、夜が明るいので、
犯罪も減ったりするのかもしれません。あとはそうですね、
何か外での仕事をするとき、夜間でもできるので突貫工事がきくとか。

欠点として最大のものは、夜が明るいと、
生物の持つ概日リズムに影響を与える可能性があることです。
まあ、人間はぶ厚いカーテンを閉めて寝ればいいかもしれませんが、
植物や野生動物、昆虫や魚などの生態系に大きな影響がある気がします。

1日の生態リズム クリックで拡大できます
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バクテリアとかでも、昼夜を区別できるものはいますし。あとは、
軍事的なことなんかはどうでしょう。中国全土は、アメリカの軍事偵察衛星
によって監視されているはずですので、夜が明るいと不利になるんじゃないかとか。
でもまあ、きっとそこまでは考えてはいないんでしょうね。

さてさて、みなさんは成都といえば何を連想するでしょうか。
四川省にあり、日本の九州よりもはるかに南方に位置する都市です。
自分は、唐の時代の詩人、杜甫が書いた「春望」の五言律詩を思い浮かべます。
国語の教科書に採用されるなど、有名なので、みなさんもご存知でしょう。

成都の杜甫草堂
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「国破山河在 国やぶれて山河あり 城春草木深 城 春にして草木深し・・・」
この詩は、戦乱によって荒れ果てた首都長安から成都に逃れてきた杜甫が、
郊外に草庵をたてて住んだときのもので、南国の美しい自然の中で、
異郷に暮らす悲しみが詠われています。その生態系が、人工物によって
破壊されることがなければいいんですが・・・では、今回はこのへんで。





祈りのパワーってあるの?

2018.10.16 (Tue)
感謝の言葉を語りかけた水の結晶は美しくなり、罵詈雑言を浴びせた水の結晶は
醜くなる。今や「疑似科学」のレッテルを貼られてしまった波動の存在。
しかし、意識や思考が物質に与える影響を真剣に取り組み、
肯定的な実験結果を得ている研究も存在するのだ。

2017年に学術誌「Explore」に公開された、国立台湾大学、高雄師範大学、
米・純粋知性科学研究所の共同研究によると、僧侶の祈りを込めた水を与えた
植物の種子は、そうでない種子よりもより成長していたという。
(tocana)

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最近、なかなか科学ニュースで、いい話題がないんですよね。
一番オカルトに関係ありそうなのがこれだったので、今回はこういうお題でいきます。
さて、人間の意識、あるいは祈りのパワーは、植物の成長に変化を与えるのか?
・・・あれ、なんか変だと思いませんか。これ変だと思わない方は、
もしかしたら少し危険があるかもしれませんよ。

実験は、市販されているミネラルウォーターをA・B2つのグループに分け、
Aはそのまま、Bには事前に、「台北市福智佛教基金会」のベテラン僧侶3人に、
「この水に浸される植物が大きく成長しますように」という願いを込めて、
祈ってもらっていたのだそうです。

そしてA・Bの水に、シロイヌナズナという植物の種子を浸し、
その成長程度の違いを測定。結果、祈りを込めた水で発芽した種子は、
普通の水を使ったものより有意に胚軸が短く、アントシアニンが増え、
若干クロロフィルも増加していたということです。
アントシアニンは、花の色を表す色素ですね。

シロイヌナズナ
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どうでしょう、この実験の怪しい部分に気がつかれたでしょうか?
当ブログの読者の方なら、実験の1段階がすっとばされていることがわかると
思います。僧侶が祈りを込めたBの水が、植物の成長に変化を与えられる
のだとしたら、Aの水とは何か違いがあるはずですよね。
そこ調べないとダメなんじゃないでしょうか。

ここで少し、水についての話をします。水がH2Oという化学式で表される
化学物質であることがわかったのは、そんなに古い話ではありません。
19世紀初め頃でしょうか。まだ、200年たったくらいです。
それまで、水については、さまざまに神秘的なことが言われてきました。

水が化学物質であると書くと、驚かれる方もいると思います。
美しい湖にたゆたい、清冽な渓流を流れる水は自然の象徴でもありますが、
一方で、分子の化合物でもあります。水素原子2個と酸素原子1個が手をつないだ形。
ですから、水を大量に飲めば中毒を起こしますし、死に至ることもあるんです。

で、水の分子同士は、他の分子と水素結合でくっついてます。
下図を見てもらえばわかりやすいでしょう。最近は、最先端の顕微鏡を使って
水分子のつながりを見ることができるようになってきました。
じゃあ、表題の研究で、どうしてAの水とBの水の比較をやらないのか。

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これは、ぶっちゃけた話をすれば、比較しても有意な差が出ないからじゃないかと
思います。どっちも、特別なところのない、ただの水なんですね。
それに対して、植物の成長に差があったとか、
葉緑素が少し増えたなんてのは、何度か実験すれば、植物の個体差とか、
置き場所の微妙な違いなどで、そういうことが起きてもおかしくはないでしょう。

もし、徳の高い僧侶の祈りのパワーが、水に明らかな変化を与えることが
できるのなら、世界中で追試が可能なんじゃないかと考えられます。
それとも、台湾のこの3人の僧侶でないとできないことなんでしょうか。
ということで、実験の段階をすっ飛ばしている研究は、
眉に唾をつけて見られたほうがいいと思いますね。

水分子を見る
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さて、僧侶の祈り、あるいは瞑想には、パワーというか、脳を活性化させる働きが
あることは実証されています。ダライ・ラマを始めとする高名な仏教僧の
脳波を測定すると、修行期間の長さにおうじて、短時間の瞑想で
強いγ波が生じました。γ波は高次の精神活動時に出る波長で、
それによって注意力が高まり、幸福感が増します。

瞑想時の脳波測定
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ここで、少し話を変えて、仏教には「小乗仏教」と「大乗仏教」があるのは
ご存知だと思います。最近は「小乗」は差別的な言い方だとして、
「上座部仏教」と言われることが多くなりました。
この「乗」という文字は、「乗り物」という意味です。

ちゃんと説明すると長くなるので、簡単に触れるだけにとどめますが、
小乗仏教は、出家者が修行をして悟りを開き、自分個人を救うための仏教です。
それに対し大乗仏教は、多くの人々を救うための大きな乗り物なわけです。
日本の仏教各派は、基本的にどれも大乗仏教です。

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さて、ここまで読まれて、自分が何を言いたいかおわかりかと思います。
優れた僧侶が祈り瞑想すれば、脳内が活性化して、自らを「悟り」の境地に
導くことができるでしょう。上で書いた実験はそれを示しています。しかし、
いくら徳の高い僧侶であっても、祈りの力が水などの物質に働くとは考えにくい。

日本で有名な僧、空海、日蓮、道元、法然、親鸞などは、
僧坊にこもって読経や座禅だけしていたのではなく、俗世間に出て、
行動と言葉で教えを広めていった人たちばかりです。
それが世の中を動かすことであり、「大乗」ということなんだと考えます。

さてさて、そろそろ終わりにしますが、疑似科学は、実験の過程を一部抜いていたり、
結果をあいまいにしているものがほとんどです。で、そのことを指摘すると、
「だって実際に植物が育ってるじゃないか!」みたいな答えが返ってくるんです。
しかしそれは、科学のふりをしていても、科学的な方法ではありません。
そこらへんを、しっかり見分ける目を持ちたいですね。では、今回はこのへんで。




オブジーボとお金と年齢

2018.10.12 (Fri)
今年のノーベル医学生理学賞は、人の体の中で異物を攻撃する免疫に
ブレーキをかけるタンパク質を見つけた京都大学の76歳の本庶佑特別教授と、
米テキサス大学の70歳のジェームズ・アリソン教授に与えられた。

受賞の理由は、免疫機能のブレーキを解除することによるがんの治療法を
確立したことだった。本庶氏の研究は、小野薬品工業が2014年に発売した
新型がん治療薬「オプジーボ」につながった。
オプジーボはがんの治療に高い効果があり、世界から注目されている。

本庶氏とアリソン氏の発見を契機に、オプジーボのような「がん免疫療法」が
次々と研究・開発されている。いまや免疫療法は手術、
放射線照射、抗がん剤に続く第4の治療となり、
これまでの治療が難しい患者に大きな希望を与えている。
(グノシー)



今回はこういうお題でいきます。オカルトの話ではないのでスルー推奨です。
さて、何から話しましょうか。癌の治療法の柱として、手術、放射線療法、
化学療法の3つがあるのはご存知でしょう。この中で、手術と放射線は、
早期の癌に対して根治を望める治療法です。

癌という病気は、転移しているかどうかで治癒への展望が分かれます。
例えば肺癌になったとして、癌が肺の中一ヶ所だけで、他に転移していなければ、
これは局所疾患と見ることができ、手術で腫瘍を摘出するか、
放射線で癌細胞をすべて死滅させることができれば、根治する可能性があります。

これに対し、癌が転移している、つまり体液の中に癌細胞が入り込んで
体の中を巡っている場合は、全身疾患となります。手術でいくら切り取っても、
次々に新しい場所に癌ができ、いたちごっこになってしまうんです。
この場合、手術は患者の体力を消耗させるだけでしかありません。

実際、大腸癌などの特別なケースをのぞいて、
転移を次々に切り取る場合と、そうしない場合を比較すると、
手術したほうが生存期間が短くなっちゃうことが多いんですね。
ですから、転移した癌に対しては基本的に化学療法、つまり、
抗癌剤治療ということになります。ですが、抗癌剤ではまず根治は望めません。

癌と共存し、延命を図ることしかできないんです。現在の医学は、
転移した癌に対してほとんど無力なんですね。そこで、癌治療の4つ目の柱として
期待されるのが免疫療法です。免疫なら、全身に癌が散らばっていたとしても、
それらをすべて消し去ることができる可能性があります。

現在 注目されている「光免疫療法」も、特筆される部分は、
近赤外線を癌細胞にあてて破壊することではなく、それによって自己免疫が
癌細胞を認識し、転移巣をも攻撃するところなんですよね。
ですが、残念ながら、その部分は今一歩うまくいってないようです。

関連記事 『光免疫療法について』

さて、前に「オブジーボは夢の新薬ではない」と書きましたが、
例えば肺癌で見ると、オブジーボの効果があるのが、全患者の2割ほどです。
その2割も、癌が根治するわけではなく、せいぜい癌が縮小し、
生存期間の延長が見られる程度の場合が多いんです。

で、オブジーボには薬価問題があります。これは国会でも取り上げられ、
議論されています。最初にオブジーボが発売されたときには、一人の患者が1年間
使用すると3500万かかりました。まあ、保険適用で自己負担は3割、
さらに高額医療費制度で、患者が実際に負担する額は年間100万円台ですが、
残りの金額は健康保険から支払われることになります。

そのため、このままでは保険医療が破綻してしまうのではないかと危惧された
わけです。当時は、オブジーボが使えるのは一部の皮膚癌だけでしたが、
現在では肺癌や胃癌に適用範囲が広がっています。例えば、年間5万人の患者が
オブジーボを使うとして、これ一つの薬代だけで年1兆7500億円になります。

これでは、たしかに日本の国民皆保険制度が破綻しかねません。また、
医療費や薬剤費の約4分の1が国費でまかなわれているので、国の予算に占める
社会保障費への影響も非常に大きなものになります。こう書くと、
じゃあ薬の値段を下げればいいじゃないか、と思う方もいるんじゃないでしょうか。
実際、オブジーボの場合は特例として、年間1000万まで薬価が下がっています。

ですが、新薬の開発には長い年月と莫大な予算が必要です。本庶博士の場合も、
PD-1の発見は1992年で、薬剤として結実するまで20年がかかってるんです。
それを安易に薬価を下げることで対応してしまうと、製薬会社の新薬開発に対する
意欲が削がれてしまうことになりかねません。画期的な薬が新しく出てこないとなれば、
それはそれで困りますよね。それに、薬の多くは外国で開発されたもので、
その値段を、日本で勝手に下げるのは無理です。

じゃあどうすればいいのか。もちろん一番いいのは、オブジーボが効く患者を
厳密に選んで投与することですが、これが難しいんです。癌という病気は
遺伝子の変異であり、患者一人一人、微妙に性質が異なっています。
ですから、投与してみないと効くかどうかわからないという面があるんですね。

次に、年齢制限をもうける。例えば75歳以上の患者にはオブジーボのような
高額な薬は使えないようにするとか。でも、それだと「老人切り捨て」という
批判が必ず起きます。今の日本は少子高齢化社会で、お年寄りの有権者が多い。
そんな政策を打ち出したら、政権が倒れるかもしれません。
どこの政党でもできないでしょう。

次、オブジーボを使う場合は自己負担額を大きくする。しかし、そうすると、
お金がない人は治療をあきらめるしかなくなってしまいます。命に値段がついて、
金持ちしか長生きできない社会というのは、無保険者の多いアメリカが
それに近いですが、本当にその形でいいのかは、大きな疑問があります。

最後は、健康保険料を大幅に引き上げることです。でも、医療保険って、
若いうちはあまり使うことがなく、中年以降に生活習慣病などで
医者にかかることが多くなっていくのが普通ですよね。それを、若い人にも
多大な負担を強いることになるのは難しいと思うんです。それでなくても、
若年層の生活困難が、少子化につながっている面があるわけですから。

さてさて、ということで、どうすればいいんでしょう。現在、日本人の2人に1人が
癌になり、3人に1人が癌で亡くなっています。けっして他人事ではないんです。
今後、画期的で、しかも薬価が高い新薬は、免疫療法の進展とともに、
次々に開発、発売される可能性があります。
みなさんは、どう考えられますでしょうか。では、今回はこのへんで。

関連記事 『パラケルススとオブジーボ』