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逆さ

2016.07.05 (Tue)
大学のときの話ですね。都市伝説研究会というのに所属してたんです。
まあでも、地方大学ですので田舎伝説と言ったほうがいいのかもしれませんが。
それで、俺が3年のときです。学祭での発表のためのテーマに選んだのが、
地元で「逆さトンネル」と呼ばれてる場所についてです。
これ、郊外の鉄道の下を通る大きなトンネルの脇にある、
人しか通れないトンネルです。封鎖されてるけど今もありますよ。
俺が大学当時も、もうすでに封鎖されてたんですが、
そのときは両方の入り口に、あの側溝に使うコンクリブロックが
逆さに積み上げられているだけで、入ろうと思えば入れたんですよ。
今はダメです。完全にコンクリで塗り込められちゃってますから。
ああ「逆さ」がついた理由ですか。それを今から説明します。

これね、俺らが大学の当時ってのが、今から7年前ですけど、
その頃にはもう真偽不明の古っるい伝説になってました。
俺もそうでしたけど、地元の市の出身者なら、
中学校のときにこの話聞くんじゃないかな。ええ、まず知ってますよ。
そのトンネルだけど、中を通ってた女の人が襲われて殺されたってのが発端。
その事件があって、しばらくしてトンネルは立入禁止になったんです。
でも事件後しばらくは、両側に立入禁止の移動柵が置かれてるだけで、
だれでも簡単に入れたんだそうです。
で、事件が風化し始めた3年後、あるグループが怖いもの見たさで、
夜にそのトンネルに行った。軽自動車の男女4人、って言われてます。
たぶん男2人、女2人。これねえ、最初の女の人が殺された事件は、

本当にあったことですよ。新聞に出ましたから。
その縮刷版のコピーも持ってきてます。犯人は、
その場で凶器を持って立ち尽くしていたところを逮捕されてます。
被害者とは知り合いじゃない、通り魔的な犯行だったみたいです。
あ、すみません。説明がごちゃごちゃしてしまって。
ただ、最初の事件は伝説でも何でもないって言いたかっただけで。
でね、その後の男女ですけど、なんと通行止めの柵を寄せてから、
車でトンネル内に侵入しちゃったんです。はい、入ろうと思えば入れます。
幅は2mくらいありましたから、軽自動車ならギリギリなんとか。
それでトンネルは高さも2mちょっとで。
これ重要なことなんですよ。というのは、その軽自動車。

伝説では、トンネルの中央部分でひっくり返った状態で
発見されたことになってるからなんです。でも、それってありえませんよね。
軽の長さって3.4mってなってるじゃないですか。
それが横幅ギリギリ、縦が2mの場所でどうやってひっくり返ることができます?
1回つぶしてだったらできるかもしれませんけど、まさかねえ。
うーん、この話の裏はまったくとれてません。
市の交通死亡事故もかなり遡って調べたんです。でも、
あのトンネル内で起きたという新聞記事は出てきませんでした。
たしかに古くからあるトンネルではありますが、
それだって昭和40年代にできたものなんです。
まあね、話自体は、この時点でガセってわかるんですけど、

じゃあそういう伝説がそうしてできたのかってことも、
それはそれで興味深いじゃないですか。ぶっちゃけた話をすれば、
都市伝説と言われるもののほとんどは信憑性の薄いデマでしょ。
でも、どうしてその伝説、例えば100kキロ婆とかができたのかを探るのは、
現代の民俗学として意味があることじゃないですか。
でね、まずは実地調査ってことで出かけたんです。やっぱ軽自動車で。
その伝説と違うのは、夜じゃないこと、車では入れなくなってたこと、
あと男ばっか3人だったことですね。平日の午後でしたから、
人なんかいませんでしたよ。やや離れた場所の大きいほうのトンネルを、
時おり車が通るだけで。でね、やや離れた草地に車を起きまして、
3人で伝説のトンネルの前に出ました。

中は照明を切ってるはずなんで、懐中電灯は人数分用意してまして。
側溝ブロックをよじ登って、隙間から中に入っていったんですよ。
それで、その日もだし、前1週間くらい雨降ってなかったのに、
トンネル内はかなり湿ってまして。ポタポタ天井からしずくがたってました。
いやあ、地下水ってことはないと思うんですけど、理由はわかりません。
ああ、大事なことを言い忘れてました。トンネルの長さは100mもないんです。
走ればあっという間に向こうに着いちゃう。あちこち照らしながら
3人で進んでいきました。いや、最初の事件の現場はわかんないです。
でもそのほうがよかったっていうか、怖いじゃないですか。
で、写真を撮りながら、車がひっくり返ったっていう中央部分まできたんです。
そこで念入りにあちこち照らしてましたら「あっ!」という声が同時に上がったです。

俺以外の2人です。一人は天井を指差してて、一人は地面です。
まず地面のほうから説明しますね。ぼこぼこになったコンクリ面に何か白いものが
突き刺さってたんです。声を上げたやつが手を出してそれ抜いてみました。
何だったと思います? 高さが25cmくらい。太さは手首より細いくらいの
観音像だったんです。それが逆さになって、頭を下にした形で埋まってまして、
コンクリが10cmほどくぼんでたんです。それね、俺も持ったんですが、
以外に軽かったですよ。象牙とか、何かの骨とかそういう材質に感じました。
「どうする?」って言われたんで、
俺が「それ仏様だよな、何かの供養かもしれないから、元に戻しとけよ」って。
だって、ただ捨てたのならコンクリがくぼむはずないでしょ。
明らかに道具を使って掘り、そこに埋め込んだものですよね。

あと天井のほうですけど、なんと懐中電灯の丸い光の中に、
車のタイヤ跡が見えたんです。天井もコンクリで一面に黒く濡れてるわけだから、
それが見えるってことは、よっぽど強くこすりつけたかなんかで。
これが地面なら急ブレーキを踏んだ跡と言えるんでしょうけど。
あとね、これ混乱しないように分けて話してるんですけど、
実際はこの2つのことが同時に起きたんです。だからね、頭が混乱しました。
天井のタイヤ跡は伝説の車のものだろうか。?それを供養するために、
何ものかが観音像を逆さに立てたんだろうか?
そんな風に考えたのは、トンネルを出てからのことです。中ではみなそれぞれ、
イヤーなことを考えたんですね。「もう出ようぜ」ってことになりました。
引き返すと、側溝ブロックの外はこうこうと明るくて、

安心感がありました。みなが足をかけて登ろうとしたとき、
3人とも時間差でひっくり返りました。それで脳天を打ったんです。
俺と天井のタイヤ跡を発見したやつはコブだけで済んだんですが、
観音像を最初に見つけたやつは頭を切ってかなり血が出たんです。
まあ医者に行くほどではなかったんでねすけど、でも、いくら慌ててたとはいえ、
3人が3人とも、ほぼ同時に転ぶってありえないですよね。
しかも後ろに倒れたんなら後頭部をうつか、手をついて受け身をとるでしょ。
ええ、俺の場合は滑ったわけでもなんでもなく、
ポンと弾き飛ばされた感覚がありましたね。だからね、あのトンネル、
やっぱ何かがあるんです。そう思って、そこで研究はやめました。
うーん、3人とも、その後は特別なことはないんですけども。

indexええっdっrっtyy





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胸像マネキンの話

2016.07.04 (Mon)
みなさん、人形の怪異って信じますでしょうか?
私は大変怖い目にあいまして、その顛末をこれからお話するんですけど、
もともと命を持ってない作りものの人形が、
何か生きた人間に影響を与えたりすることってないと思うんです。
ああ、それは人形を可愛いがるなどとは別の話ですよ。
そうじゃなく、動き出したりしゃべったりするようなことです。
もし、そういうことがあったとしたら、それは人形にそうさせている
生きた人間がいるんじゃないかと思います。
すみません、前置きが長くなってしまって。私はあるデパートで、
貴金属売り場のマネージャーをしているんです。
商品はジュエリーがほとんどですが、金銀製品も扱います。

仕事は、仕入れはしませんが売り場担当マネジャーとして、
売上の数字や販売スタッフ、商品などの管理に携っています。
スタッフはセールスが4人と経理事務が2人、全員女性です。
それで、売り場には全身マネキンというのは少ないんです。
そのかわり、胸像マネキンは十数体あります。
ほら、胸から上だけ、あるいはそれに腕がついているもの。
それにネックレスや指輪をつけさせ、ショーケースの後ろなどに
展示するんです。これらのマネキンの多くは、顔の造作はあるものの
目は入っていません。貴金属は近くから見るものですので、
瞳が開いていると、いくら精巧にできていても不気味な感じがするんです。
ああ、すみません。また余談になってしまいました。

先週の日曜のことです。私のシフトは月・火が休みで水から日までの5日間。
売り場は8時なんですが、その日は残って売上の集計などを見ていたんです。
前年同月比などの統計を出すためですが、ソフトに打ち込むだけ。
うちのデパートでは残業は少ないんです。
いつもその手の仕事は開店前にやるんですが、2日の休みに入るので。
貴金属売り場のスタッフはみな帰ってましたけど、
他の売り場には何人も人が残ってました。パソコンを閉めて、
さあ私も帰ろうとなったとき、ブーンという、
何かが振動するような音が聞こえました。売り場の中でです。
機械類の電源が落ちていないものがあるか最終確認をしたんですが、
そういうものはなかったです。そのうちに音は止みましたので、

バッグを持って立ち上がったとき、「ふふふっ」という
含み笑いのような声が聞こえました。すぐ近くで。
女の声だと思いました。でも、人がいるはずはないし・・・そこでまた、
「ふふふっ」こう言いますと、可愛い声と思うかもしれませんが、
そうじゃなく、なんとなくイヤーな感じのする笑いでした。
しかたなくもう一度見まわったんですが、当然人はおらず、
どこか他の売り場の声が天井などを伝わって聞こえてきたのかと
考えるしかなかったです。もう本当に帰ろうと想ったとき、
すぐ前で「ふふふっ、ハハハハハ」って。でも、目の前には
胸像マネキンが2体並んでるだけでした。
一体は帽子をかぶり純金のネックレスをつけたもの。

もう一体はサングラスに指輪。このとき初めて怖くなりました。
マネキンが笑った?! もちろん2体のマネキンは動かして調べました。
でも声なんか出すはずはないんです。1・2分待ってみました。
もしまた聞こえるようだったら、フロアマネージャーに話しに行こうと考えた
んですが、もうそれ以上は聞こえることはなかったんです。
翌週の水曜日ですね。その日は午後から、
上得意の奥様が来店されていたんです。
季節に数回いらっしゃって、一点数十万の商品をいくつもお買い求めになられる。
ですから、私も売り場に出てお相手をしていました。パールのネックレスを
お薦めしていたときです。奥様が「うっ!」とおっしゃって
胸を押さえられました。「どうなさいましたか」声をかけたのですが、奥様は、

「あれ、あの顔、あの顔は」絞りだすような声で私の背後を指さされたんです。
「え?」振り向くと、奥の棚の上に2体のマネキンがあって、
それは前に笑い声が聞こえたと思ったものでした。奥様は、
「こんなところまで出てきて!」悲鳴のような声をあげながら、
ショーケースの間を入っていって、1体のマネキンの帽子を取ったんでです。
そのとき、私にはマネキンに顔があるように見えました。年配の女性の、
憤怒の形相というんですか、怒りが噴き出しているような顔です。
奥様はそのマネキンを両手で持ち上げようとしましたが、
そのまま前のめりに倒れてしまったんです。駆け寄って抱き起こしましたが、
口から泡をふいておられて・・・救急車で搬送されたものの、
そのままお亡くなりになったということでした。

その騒ぎの中で、横倒しになったマネキンの顔を見たんですが、
なんでもない、目を閉じた白い無表情に戻っていました。
私が見たと思ったのは幻覚だったんだろうか。でも、奥様もこのマネキンを
両手でわしづかみにして何か言おうとしてた・・・わけがわかりませんでした。
スタッフの手を借りてマネキンを起こし散らばったものを元に戻しまして、
平常業務に戻ったんですけど、私は混乱してしまって、
奥の事務室に入ってしばらく頭を抱えていたんです。
その日の終業のときです。「お先いたします」と言ってスタッフが帰り始め、
事務の子の一人が大きな紙袋を持って、エレベーターに向かって行きました。
「あれ、何? あの重そうなものは?」疑問に思い、
反射的に昼の騒ぎのときのマネキンを見ましたら、なかったんです。

それで、迷ったんですがその子を更衣室まで追いかけていきました。
それで入り口前でつかまえたんです。「ちょっとその紙袋」
私がそうささやくと観念したような顔になったので、そのまま袖を引っぱって、
その階の空いている部屋に連れていったんです。
「訳を話してくれるよね」そう言いましたら、その子は黙って
紙袋の中からあの胸像を取り出しました。
そしてうつ伏せの形でテーブルに載せると、バッグからピンを出して、
胸像の背中の部分をこじりました。そしたらパカっと開いたんです。
継ぎ目がわからないようフタがされてたんですね。
中はかなり広く空洞になっていて、髪の毛の束が見えました。

亡くなった上得意の奥様と同じ髪の色でした。
「これ、ヘアーサロンの知り合いからもらったんです・・・
 呪いに使うために」その子はそういいながら、胸像の奥をさぐって
一枚の写真を取り出しました。奥様とは別の人が映っていて、
同年輩くらいの地味な感じの女性でした。マネキンに浮き出た顔と
似ている気がしました。その子は「母です」と言い。それから、
奥様を恨むようになった経緯を聞いたんですが、申し訳ありませんが、
それはここではお話しないことにさせていただきます。
その子の話したことが本当なら、十分に同情に値する内容でした。
ただ・・・今後、私はマネージャーとしてどうしたらいいのか。
こちらのみなさんにアドバイスをいただきたいと思いまして。








聞いた話(米)

2016.06.29 (Wed)
これは、自分が前に取材で知り合った霊能者さんから聞かせていただいた話です。
ある男性、40代後半の商社員の方だったそうですが、
中米の某国へ2年ほど長期出張していまして、
もちろんその年代ですから、日本に妻子を残した単身赴任です。
それが日本に帰ってきてから、いろいろとおかしなことが起こり始めました。
最初は、夜になると家鳴りがし始めました。
でも、普通の家鳴りはきしむような音がほとんどですよね。
ところがポン、ポン、ポポンパという感じの音が、夜になると家の中のどこかで聞こえる。
太鼓を平手で叩いてる音に思えたそうですが、
あちこち見まわっても特に音がするようなものはない。
それで、家の外でしてるのが聞こえてくるんだろう、と思っていたそうです。

ところが、日がたつに連れて音ははっきりとしてきて、
リビングの天井付近で鳴っているとしか思えなくなってきました。
男性の家は戸建てで、リビングは吹き抜けの天井が高い造作になっていたんです。
まあでも、これだけなら不思議ではあるものの、
実害はないですよね。その家族の4歳と6歳の子どもさんも、
「また鳴ったね」 「これ妖精かなんかが叩いてるんじゃない」
そんな無邪気な会話もあったそうです。この太鼓の音が1ヶ月ほど続いて、
それから事態が変化しました。ある日中、専業主婦をしている奥さんが
1階の廊下に掃除機をかけていると、玄関の外で何やら叫ぶ声が聞こえました。
女の人の声なのは間違いないですが、外国語と思われる言葉で
意味はさっぱりわからなかったそうです。

その付近は、電気部品の組立工場ができたばかりで、
従業員には外国人もかなりいましたので、その人たちが騒いでるのかと思いました。
それにしても、扉のすぐ前で聞こえるので、
怖くなってスコープから覗いてみたものの人の姿はなし。思い切って
ドアを開けてみました。そしたら、家の外のコンクリの三和土の隅に、
人の背丈ほどの黒い煙のようなものが立っていたんです。
それは細かく動いていて、蚊柱のようにも見えましたが、
何の音もしませんでした。2,3歩近づいてみましたら、
煙はその奥さんの横をすり抜け、すうっと家の中に入ってしまったんです。
後を追いかけたものの、直線になった廊下には見えませんでしたし、
まさか煙がドアを開けてどこかの部屋に入ったとも思えなかったんですね。

気にはなったので、夕食のときに旦那さんに話したんですが、
「何かの見間違いじゃないか」と言われてしまいました。
ま、そのときはそれで納得したんです。でも、この煙は、それからちょくちょく
家の中に現れるようになったんです。台所仕事などをしていて、
ふっと背後に気配を感じて振り向くと、
奥さんより少し低い高さで煙が渦巻いていました。ただこれ、日中よりも、
旦那さんが帰ってくる7時過ぎからのほうが出現が多かったんです。
前に太鼓の音が聞こえていたリビングの天井隅に、もやもやした形で渦巻いている。
もちろん旦那さんも気がつき、長い剪定バサミを持ちだして煙に突っ込み、
かきまわしてみたりもしたんです。すると煙はいったん散らばるものの、
しばらくするとまた集まってくる。このときに旦那さんは露骨に嫌な顔をしましたので、

奥さんは「これは何か知ってるんじゃないか」と思ったそうです。
でも、旦那さんに聞いても「俺がわかるわけないだろ」こんな調子だったんですね。
煙はだいたい3日に一度は見かけたそうです。それからまた2週間ほどして、
旦那さんが風呂に入っているときです。奥さんがたまたま風呂の前を通りかかると、
脱衣所へのドアの隙間から、あの煙がすうっと中に入っていくところだったんです。
気になったのでその前に立っていますと、ややあって中から「うわわっ!」
という旦那さんの叫び声が聞こえ、ドアを開けると、
旦那さんが脱衣所の鏡の前に裸で座り込んで両手を合わせていたんです。
そして旦那さんの顔の回りを取り巻くように煙がぐるぐる回っていました。
「あなた、ちょっとどうしたの?」そのとき、煙がぎゅっと集まったようになって
伸び上がり、そのとき鏡に映ったのを見てしまいました。

それは煙ではなく、長い髪をべったり濡らして額にはりつかせた、
色の浅黒い外国人の女性の顔だったんです。女性は血のように赤い涙を流し、
憤怒の形相をしていたそうです。・・・その日、子どもたちを寝かせてから、
奥さんは旦那さんを問い詰めまして、そして出張先であったことを
白状させたんですね。その内容は、ここでは書きませんが、
旦那さんは現地女性のひどい恨みを買っていたんです。そのことがあって、
煙はだんだんに人の姿をとるようになってきました。それで、つてをたどって、
冒頭で出てきた霊能者さんのところに話がいったわけです。霊能者さんは
50代の女性で、体格の良い、どこにでもいるようなオバちゃんなんですが、
(○○さん、すみません) 訪ねてきた夫婦を一室に招き入れて、
奥さんの前で、あらためて旦那さんに洗いざらいを話させたんです。

「あんたねえ、それで恨まれないわけがないことは、自分が一番よくわかるでしょ。
 これね、外国の呪術だよ。私にははっきりはわからないけど、
 何らかの方法で生霊をとばしているようだ。煙に見えてたのは、
 現地語の細かい文字じゃないかなねえ。日本にも似たものはある」
続けて、すっかり恐縮してうつ向いてしまった旦那さんに、
「あんたが現地に戻ってケリをつけてくるのが当然のことだろう。
 とりあえず当座は祓ってやることはできるが、それで済むことじゃない。いいね」
こう強く言いました。それから、「今すぐ呪法をやるから」
旦那さんを庭に連れだしたんです。郊外でしたので、かなりの広さの庭があり、
手入れをされた花壇があったんですが、「ここ壊すから、経費で払ってもらうよ」
旦那さんにシャベルを手渡して、そこに長方形の穴を掘らせたんです。

2m☓1m、深さも1mくらいの穴でした。それから旦那さんの袖をつかむと、
引っぱっていって近くにあった池に落としたんです。鯉の泳いでる庭の池ってことです。
「何するんですか?」旦那さんが立ち上がると、「うるさい」と叱りつけ、
旦那さんに、自分で掘った穴に仰向けに寝るように言いました。
旦那さんは躊躇していましたが、「これやらないと、あんたらの子どもにも災いが行くよ」
強くそう言われ、ミミズやらダンゴ虫の出てきている穴に、
ぐっしょり濡れた状態で横たわったんです。霊能者さんは、いったん屋内に戻り、
升いっぱいの米を持ってきました。そして呪言を唱えながら、
旦那さんの体にまんべんなくふりかけたんです。それから「このまま動いちゃいけないよ」
「いつまでです?」旦那さんが聞くと、「まあ2日、もしかしたらそれ以上かも。
 今あんたらの家にいる生霊がここ見つけるまでだね」

それで旦那さんは、まる2日ずっと穴の中に寝たきりだったんです。
その間、水だけは霊能者さんに飲ませてもらいましたが、食事はなし。
トイレも近くに置いたバケツにしてたんです。旦那さんが音を上げると、
「やかましい、これは罰なんだから黙ってやりなさいい」とまた怒られる。
で、2日目の夕方ですね。観念して寝ている旦那さんの上にあの煙がやってきたんです。
煙は旦那さんの体の上で急速に回転し、だんだん人型に変化していきました。
半裸の、現地人らしい女性の姿に変わりました。宙に浮いた状態で、
旦那さんの体と並行になり、手を伸ばして旦那さんの体に触ろうとしましたが、
散らばった米に触れたとたん、驚いたように引っ込め、放心したような目をして消えました。
それで終わりです。とりあえずは、その一家に害はなくなったということです。
ここからは、話を聞いた自分と霊能者さんの会話。

「これ、米に呪力があったってことですか? お塩をまくみたいな」
「いやいや、確かに散米といって神道では儀式にお米を使ったりするが、これは、
 そんなにいいものじゃない。出てきた外国人の女にはお米がウジ虫に思えたはずだよ」
「えっ、ウジ虫!!」 「そう。つまり旦那が死んでると思ったろうってこと。
 それで死体にウジがたかりついている」 「・・・そんなことできるんですか」
「生霊は普通の人間のように見たり聞いたりはできないから、そこをごまかす、
 一時しのぎの方策だけどね。ショックだったのか、それとも目的を果たしたと思ったか、
 生霊はいったん帰ったけど、根本的な解決にはならないから」この後・・・
中米に単身戻った旦那さんは現地で刺殺されました。犯人はわかっていません。
かなり酷い状態だった遺体は現地で火葬され、
子どもたちは奥さんとともに、実家に戻って暮らしてるんだそうです。

地鎮祭での散米


 



TTRPG

2016.06.23 (Thu)
15年くらい前、私が大学生のときの出来事です。
ただ、あまりに奇妙な話なので信じてもらえるかどうか。2年生のときですね。
私はテーブルトーク・ロールプレイングゲームのサークルに入ってたんです。
おわかりになりますでしょうか?コンピュータのゲームはご存知ですよね。
ファンタジーなら、戦士、魔法使い、治療師などが共通の目的を持って
冒険の旅に出ますよね。それを、機械を使わないで会話で行うんです。
ゲームマスターという役割の人がいて、その人が大ざっぱなストーリーや、
ダンジョンの間取りなんかを考えてきて、
それにしたがってサイコロを振ってゲームをするわけです。
ルールは、ゲーム店で売られているルールブックを使うことが多んですけど、
慣れたゲームマスターだと自分で作ったルールで遊ぶこともできます。

それけっこう難しいんですよ。ルールを厳しくしちゃうと、
ゲームの序盤で登場人物がみなバタバタ死んでいったりして。
死んじゃった人はあと他の人がやるのを見てるしかできないですから。
説明すると長くなってしまうので、話の中で意味のわからない部分があったら、
そのつど質問してください。そのときは夏休み中盤の平日の日中でした。
大学の中はガランとしてましたね。メンバーは2年の男子2人、
女子2人、それに3年の男のマスター。サークルや同好会で申しこめば
自由に使える小会議室に集まって。エアコンがあったので涼みがてらってことです。
マスターは「今日は夏らしくホラーゲームを考えてきた。
 それも実際にある幽霊屋敷の間取りを手に入れたからそれを使う」
そう言って、エアコンの設定温度を18°にしたんです。

「えー、そんなのよく手に入りましたね」 
「ホラー雑誌から借用したんだけどね。その家の次男が婆さんの首を絞めて殺し、
 一家離散して廃墟になった場所らしい。心霊スポットになってるのに潜入した
 ルポが載ってたんだよ」それから、
マスターの説明を聞いてキャラクターを決めるんですが、マスターが、
「今回は臨場感を出すために、役割演技じゃなく自分をそのままやってもらうよ」
って言い出しました。これ、私が素のままの私を演じるってことです。
ただ、それだけだとゲームにならないんで、最初に20面サイコロを振って、
自分の霊感ポイントと精神ポイントを決めました。霊感ポイントが高いほど、
霊がいることを察知したり、追い払ったりする力が強いんです。
精神ポイントのほうは、何かイベントがあるたびに減っていって、

0になれば、発狂するか霊に憑依されてしまうという設定でした。
「さあ、君たち4人は草むらに車を停め、そろってその家の前に出た。
 木造2階建ての一軒家は廃墟と化して久しく、一面に蔦がからまり、
 壁の崩れ落ちている個所があちこちに見られる。侵入者に割られたのか、
 生垣の向こうの縁側のガラスがせまい庭に散乱している。時刻は夕暮れ時。
 さて、どうする?」マスターのこの説明に対して、私たち4人が
相談して応じるんです。目で見てわかることは質問してもかまいません。
「あの、玄関は開いてるんですか?」 「引き戸は閉まってるが、
 鍵がかかってるかどうかはわからない」
相談して、とりあえず玄関を調べることにしました。ああそれから、
言い忘れましたが、懐中電灯とかブーツとかの装備も最初に決めてあるんです。

コーラーという役割の人がいて、その人が次にとる行動をマスターに言います。
私はそのときマッパーをやってました。家の中がどうなってるかの情報はないので、
マスターの話を元に地図を書いていくんです。でも、ダンジョンならともかく、
一軒家ならそんなに複雑ではないだろうと思ってました。
玄関の鍵は開いていて、男A女A女B男Bの順番で入っていきました。
これ女Bが私だったんです。「玄関には靴だながあり、たたきに古い靴が散乱している。
 ほとんどが若い男物。玄関の先には細い廊下があり、右手にフスマ戸がある。
 玄関を調べるかい?」 「廊下を先へ進みます」
「廊下の突きあたりに木の扉とサッシ戸があり、どうやらトイレと風呂場に思える。
 さてどうする?」 「まずトイレに入ってみます」 「開けるのは男Aでいいんだね」
「トイレの戸がギーッと嫌な音を立てて開き・・・はい、ここで最初のチェック」

チェックというのは、怖がって精神ポイントが減ってないか、一人ずつ
サイコロを振って調べるんです。20面サイコロの6~20ならダメージなし。
それ以下だと出た目の数を引かれます。私は大丈夫でしたが、女Aの子が5を出して、
最初の22から引かれて17まで落ちてしまいました。これ現実だと、
すごく怖がってるってことです。「精神ポイントが5まで落ちたらパニック状態。
 憑依チェックをするよ」とマスター。トイレはひどい臭いがする汲み取り式で、
大の便器が赤黒く染まってるということでした。風呂場は浴槽に少し水が残り、
緑に濁ってボウフラのようなものが浮いてたということです。
そんな感じで、私たちは昔のカレンダーや領収書類が散らばった居間を抜け、
天井に焼け焦げのある台所を通り、奥の寝室と思える和室に入りました。
特別そこまでは何事も起きていません。

でも、マスターの情景説明がすごく上手で、突然掛け時計が鳴りだしたり、
本当に廃屋を探索してる気分になってました。
私たちはそれぞれ精神ポイントを減らしていましたが、女Aの子は残り4の
状態でその和室に入ったんです。「部屋の奥に大きな仏壇があり、扉は閉まっている」
相談の結果、男Aが扉を開けることになりました。「扉に手をかけた瞬間、
 ゆらゆらと仏壇が前後に動き始めた。ここでポイントチェック」
そしたら女Aの子が3を出し、残り1に精神ポイントがなっちゃったんです。
「うん、じゃまた憑依チェックをしよう。10以下が出たら憑依されてしまう。
 ただしまだ、霊感ポイントあんまり使ってないから救いもあるよ」
女Bがおそるおそる振ると、出た目は1でした。20面サイコロの1です。
「ああ、憑依されちゃったね。でも、霊感が強ければはね返すことができる。

 まだ先は長いから11以上が出れば霊を受けつけなかったことにするね」
それで振った目がまた1。「ああ、君は霊にとり憑かれた。もう自分が自分ではない。
 大きな叫び声を上げながら君は、揺れている仏壇を抱きかかえ、
 少し離れておもむろに扉を開いた・・・」 
「イヤアアッ!!!!」女Aが絶叫しました。これゲームじゃなく、実際にってことです。
私、最初これも演技のうちだと思ったんです。こういうゲームって、
登場人物になりきってセリフも気分出して言ったほうが面白いから。
でも、そうじゃないってことはすぐわかりました。
両目に黒いところがなかったんです。眼球が裏返って全部白目だけ。
音を立ててイスを倒し、テーブルに腰をぶつけて後ろ向きになりました。そのとき、
テーブル上の飲みかけのペットボトルが、ボンボンボンって弾けたんです。

ええ、フタ空いてたのも炭酸でないものもです。「ちょっと女A、どうしたのよ」
「イアアアアア、イエアアアアアアアッ」女Aは壁にあったスチール棚、
中には同人誌とか入ってたんですが、そのガラスに両手を突っ込み、
ばっと血が飛び散りました。男子3人が寄ってきて取り押さえようとしましたが、
女Aはスチール棚の奥を血まみれの両手で引っかきまわして・・・
何かをつかみ出したんです。右手に半分、左手に半分、縦二つに割れたお位牌でした。
そんなものが大学にあるはずないんです。女Aは位牌を頭の上にあげ、
「ギャハハハハハハ」と笑うとそのまま後ろに倒れ、テーブルがあったので
頭を打たずに済みました。そのまま目を閉じて動かなくなり、
血だけがどんどん流れたので、傷口タオルなどでしばって救急車を呼んだんです。
幸いというか、血の量に比して傷は大きくなく、

病院で数カ所縫っただけで。それと意識も戻って、何かにとり憑かれた状態
じゃなかったんです。いえ、警察沙汰にはならなかったですが、
大学当局からさんざんしぼられて、サークルは解散させられてしまったんです。
あと、お位牌はマスターが保管してましたが、
後で聞いた話だと、ホラー雑誌に載ってた家の仏壇にあったものと
よく似ているということで、雑誌の写真だと字まで読めませんでしたが、
私が見ても形は同じものでした。それでどうしたかって?
マスターが雑誌の廃屋まで返しに行ったんです。車で6時間かけて。
その後マスターに会ったとき、そのときの様子を聞いたんですが、
首を振るだけで答えてくれなかったんです。いや、みんな元気ですよ。
あれ以来不幸があったって話は聞いていません。こんな話です。







ある沼の話

2016.06.19 (Sun)
O・Kさん(88歳 無職 女性)

お役に立つかわかりませんが、わたくしが嫁入り前に住んでいた、
実家の裏手の沼の話をすればいいのですね。わたくしの実家は、
元はそのあたりの地主であった旧家で、わたくしが子どもの頃、農地開放の前は、
自慢ではありませんが、たくさんの奉公人が家にいたものですよ。
沼はその家から少し離れた森の中にありまして、そうですねえ、
学校の運動場ほどもあったかと思います。木々の間に一本の細い道がついてまして、
そこをまっすぐ進むと、沼のほとりの小さなお社に行き着くのです。
わたくしが行ったのは一度きりだそうです。それもほんの幼児の頃に父におぶられて。
そのときの記憶はありませんので、行ってないのと同じことでしょう。
ただ、お城の山に登りますと、上からその沼は見下ろせます。
その形でなら何度も見ました。緑とも青ともつかない不思議な色をしておりました。

あれは陽のあたり具合によって変わってくるものでしょう。それで、
子どもの頃、家の奉公人たちには、さまざまな恐い話を聞かされたものです。
今にして思えば、事故を怖れて、わたくしが沼に近づかないように
という意味があったのでしょうね。いえいえ、近づくものですか。
わたくしは虫が嫌いでしたので、森にも入りません。
そのうえ、これは聞いた話ですが沼一帯はひどい臭いであったそうで。
これは10歳頃に、わたくしの妹たちの子守と家事の手伝いをしていた、
当時14歳くらいの子から何かのおりに聞いた話です。
「嬢ちゃんねえ、あの沼は怖いんだよねえ。おらは爺ちゃんから聞いたんだが、
 昔はいらない子どもをあの沼に持ってて沈めとったそうだ。
 あの沼は泥がたまって底がねえと言われとるが、

 赤子をその泥に頭から投げ落とすんだそうだ。そうすれば泣きもできねえし、
 顔も見えねえ。少しはもがくが、すぐに動かなくなって、
 ゆっくりゆっくり沈んでいくんだとよ。だから、あの沼の底をさらってみれば、
 小さな骨がごろごろしてるとよ」
子どもには恐い話でしょう。わたくしは驚いて、その日のうちに東矢という
奉公人にこの話をしたのですよ。東矢は50代くらいでしたかねえ。
家の薪や炭の世話をしておった者です。鉄砲を持っていて、ときおり山に入っては、
兎や鴨などを家に下げてきました。東矢は「ねえ、ねえよ、猫の子じゃあるまいし、
 そんな赤子を投げるなんて、あったとしても明治の世になるずっと以前の大昔。
 しかし、やっぱ昔でもねえと思うな。子買いに売れば金になるし、
 そこそこ7つあたりまで育てば、商家に奉公に出してもいい。

 だからねえ、嬢ちゃん。そんな怖がることはねえんですよ。
 あの子守だな、嬢ちゃんによくないことを吹き込んだのは。
 奥方様に知らせねばなんねえ」このような話になったので、わたくしは、
子守が叱られては可哀想に思い、それはやめてくれるように願ったのです。
また別のときに、他の奉公人からこのような話を聞かされたこともありました。
「嬢ちゃん、あの沼ですかい。あそこは主がおるんで、大人でも近寄りません。
 主はねえ、見たものによって大蛇とも大魚とも言ってます。
 なんでも鱗一枚が茶碗ほどもあるそうで。ズッズッって泥の中を這う跡だけが見える。
 その主が怒らないように、ほとりに社を建てて祀ってあるって言いますね。
 それと、夜になればその主が顔だけ出して哭いて、
 その声は今でも聞こえるって言われます。ま、犬の遠吠えかもしれませんが」

I・Uさん(82歳 農業 男性)

あの沼ね。昔は子どもがよっく死んだもんだ。いや、魚が釣れるわけじゃあないし、
むろん泳げるわけでもねえ。あたり一面、肥よりまだひどい臭いが漂ってて、
それなのに、どういうわけか幼い子どもが死ぬ。まあね、昔のことだから、
どの家も兄弟が多かった。俺も8人兄弟の7番目なんだよ。
それでも2人、子どもの頃に伝染病で2人とられた。死んだってことだ。
まあそんなだったから、沼にはまる子がいても大騒ぎにはならねえ。
ただな、あの沼は遺骸が上がらないから、葬式はちょっと困りもんだったろう。
その子の使ってた玩具や衣類なんかを小さな棺に入れて埋めていたな。
ああ? あのお社か? 知ってるとも。一間四方のお堂みてえなもんだが、
村では大事にされてたな。年に何度かお祀りをやるんだが、
そんときには、村長はじめ長老たちも参列したんだ。

4月には、各家々の3歳になる子をおぶって沼まで連れていくんだよ。
これは全員。まあねえ、七五三の代わりみてえなもんかもしれない。
村にはお寺さんはあったが、神社はそこだけだったんでね。
で、何をするかっていうと、神主が祝詞を捧げた後に、
沼の色やら、あぶくの出方を見て、ちょいと指先で泥をすくって
子どもの額につけるんだ。嫌な臭いだからたいがいの子は泣くよ。
でな、これがそのときにいた子ども全部ってわけじゃないんだ。
神主が見て取って選んだ子だけ。まあ10人に一人もなかったんじゃないかな。
ああ、俺ももちろん行ったはずだが、覚えちゃいねえ。
親父に後で聞いたところ、泥はつけられてねえってことだった。
何でそんなことをするかはわからねえが、神事ってそういうのが多いだろ。

いや、調べたわけじゃねえが、泥をつけられた子が、
大きくなってから沼にはまってたなんてことはねえよ。まさかそんなわけはねえ。
ただなあ、俺んちで泥をつけられたっていう2つ上の兄貴が、
5歳で疫痢で死んではいる。しかしそれは偶然だよ。沼にはその後、
何度か行ったことがある。親に知られれば、死ぬほどどやされるんだけどな。
沼の主が見たかったのよ。あの広い沼をぐるんと一巻きするほどの大蛇って
話だったからな。その主が、さっき話した3歳子を連れていく神事のときに、
泥のすぐ下まで来てるって話だったし。いやあ、もちろん見たことはねえ。
大人になったからわかるが、あの沼は腐りきってて生き物は棲めやしねえよ。
お社?・・・ああ、外から中をのぞいたことはある。板の隙間から。
暗くてよくわからなかったが、こけしほどの人形がずらずらっと並んでいたな。

T.Nさん(48歳 市役所土木科勤務 男性)

ええ、5年前のことです。その、今話に出てる沼を埋め立てしたんです。
あのあたりも人口が増えて、悪臭と蚊や虻の発生についての苦情が、
数多くきてましたから。それで大々的に埋め立てをして、
もちろん軟弱地盤で宅地にはなりませんが、テニスコートくらいは
できるんじゃないかってことで。入札で、地元ではない業者が工事しました。
主・・・ああ、そういう話はありました。沼を埋めると主の居場所がなくなって、
罰が当たる、祟りがあるって。いやあ、そのときは迷信だと思ってました。
だってねえ、そんなことあるわけないじゃないですか。
実際、私が立ち会ってましたけど、ポンプで水を排出した際も、
魚一匹いなかったです。あの臭いのせいでその後、半月ほど頭痛がしましたよ。
でねえ、ご相談したいのは、そのあたりで子どもが死ぬんです。

ほんとね、こんな迷信みたいなことをお話して恥ずかしいかぎりですが、
沼があった跡地の川向こうの団地の子が次々亡くなってるんでです。
この5年間ずっと通して。それも、ちょっとありえないような形でなんです。
例えば父親とキャッチボールしていた5歳の子。その歳ですから、
グローブ使わない、ふにゃふにゃのソフトテニスのボールで。
それが、トンと軽く子どもの胸にあたってばったり倒れて・・・心臓震とうでした。
あと、土手をランニングしてた小学校のサッカー部の子が、
脱水症状で倒れて・・・でもね、脱水たって11月の話なんですよ。
川向うには市営住宅もあるんですけど、自分の家の中で亡くなった子も含めれば、
統計的にありえないほど子どもが死んでるんです。
そうですね、亡くなった子は5~9歳で、ほとんどが病死です。

ですから、沼の主の祟りとからめて、地域で変な噂が広まってしまってまして。
いやいや、市に責任なんてあるはずがないでしょう。ですけど、
こういう声って無視もできないんです。それでね、近々内密でお祓いをしようかって
話が出てて。でね、沼のそばにお社があったのが、埋め立てで、
他の大きな神社の摂社になってまして。そこの宮司さんに
来てもらおうと考えてるんです。それでいいもんなんでしょうか。
もともとのお社の神主さんは、調べたらとうの昔に亡くなってましたからね。
あと、これは関係あるかどうかわかりませんが、市営住宅から苦情があるんです。
風呂場の排水口が臭うって。しかも泥が吹き上げたりするらしいです。
これ、担当者から聞いたんですが、苦情があって行ってみたら、
風呂中臭い泥でいっぱいになってて・・・そこの家の子が翌月亡くなったんです。

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