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アーカイブ アレルギーの話

2021.03.06 (Sat)
話は2週間前にさかのぼります。親戚の伯母が亡くなったんです。
夫のほうの親戚で、86歳でした。その方は老衰ではなかったですけど、
大勢の家族に囲まれた穏やかな最期で・・・ 
ですから、今回のこととは関係ないと思いたいです。
私の地方では、最初に火葬をするんです。その後、お骨箱になってから
お葬式です。その火葬のときに、親戚が集まったんです。
私も主人と、3歳の息子を連れて出かけました。
それでお骨拾いがあるんですが、子どもにやらせるのはどうだろうって話が、
一同の中から出たんです。ええ、子どもは息子の他に何人か来ていました。
そうですね、地域でも来ていただいたお坊さんの宗派でも、
特に禁じられているわけではないんですが、怖がるかと思ってです。

少し話をした結果、お骨拾いは子どもには見せないで、
大人だけでやろうってことになりました。それで、その間、
中1の女の子に小さい子2人を見ててもらうことになったんです。
痩せていた方ですし、火葬の火の勢いもあるのかもしれませんが、
お骨はあらかた形が崩れた灰になっていて、拾える部分は少なかったです。
あと、こちらの地方では、お棺の中に10円玉を数枚入れるんですが、
それも溶け曲がっていました。魔除け、お守りになるとのことでしたので、
我が家で2枚いただいたんです。その後、火葬の順は午前中でしたので、
みんなでどこかでお昼ごはんを食べて解散しようって話になりました。
息子たちのいるところに戻りましたら、見てくれていた女の子が、
「さっき、〇〇ちゃん(息子のことです)の頭をなでていったおじいさんがいたよ」

と言ったんです。それだけじゃなく「なんか10円玉でなでてたみたい」とも。
変には思いましたけれど、息子の様子に特に変わったところはなかったので、
その場はそれで終わりました。なにか私の知らない、縁起かつぎのような
ことかと思ったんです。主人も特に気に留めませんでしたので。
その夜からですね。息子がしきりに目のまわりを気にして、
「かゆい、かゆい」って言い始めました。見ると顔の上半分が
赤くなっていました。それで翌日、皮膚科の病院に連れていったんです。
そこは、私が子どものころからやっているところで、院長は
おじいさん先生ですが、息子さんもいっしょに勤めてるんです。
「これは何かのアレルギーだね。薬を出しますけど、
 採血してアレルゲンの簡易検査もしてみましょう」

こう診断されまして、30分ほどかかったんですが、
その場では原因はわからなかったんです。
その検査でできる40種類くらいの物質ではないということでした。
さわったり掻いたりしないように言われて、内服薬と塗り薬をもらってきました。
症状は、顔の特に目のまわりが腫れてまゆの上下からじくじくした液が流れ、
それが眼窩で固まってこびりついているという感じでした。それでも、
内服薬を飲んでしばらくするとかゆみは治まったようで、すんなりと寝ました。
部屋に寝かせて、私は夫と明日の伯母の葬式に持っていくものの準備などを
していたんです。11時ころでしたか。そろそろ寝ようか寝室を整えにいきました。
息子が先に寝てたので、小さい電気だけつけていたんです。
その明かりで。息子の寝顔がテカテカ光っていました。これは塗り薬のせいです。

早く治ればいいな、と布団をかけ直そうとしたとき、
息子ががばっと上半身を起こしたんです。両手を上げ、顔をかきむしり、
額の生え際から下に皮を剥くようにしてべりべりっと・・・
幼児の体に老人の顔が乗っていました。老人は骨ばったいかつい顔で、
南の島の、あのモアイって言うんですか、その像を連想したんです。
老人は「灰をかぶれええ」大声で叫び、やや遅れて私が悲鳴を上げました。
主人が駆け込んできたときにもまだ、私は壁まで下がって叫び続けていました。
「こら、どうしたんだ?」  「〇〇の、〇〇の顔が!!」
「ええ? なんでもないぞ」見ると、息子はすやすやと眠っていて、
老人の顔など、どこにもなかったんです。
息子は騒ぎに起きもせず、右手を上げて目蓋をぽりりと掻きました。

翌日、お葬式が終った後に、また息子を連れて皮膚科に行きました。
変に思われるだろうし、主人にも怒られるだろうと考えたんですが、
思い切って、老先生に昨日の夜のことを話してみたんです。
そしたら、老先生はありえないような話を遮りもせず最後まで聞いてくださり、
両手を組んで「うーん」と唸っていました。
やがて、「医者がこんなことを言うのはやっぱりよくないんだろうけど、
 お薬師様の目洗い地蔵さんって知ってるかな」意外なことを言われました。
「そこのお水をいただいて、この子の顔を洗ってみたらどうかなあ。
 いやね、わたしも若い頃は、なんだそんなものって馬鹿にしてたんだが、
 これがうちで改善しなかった症例がよくなったことも多々あるんだよ。
 その老人の顔というのは解釈できないが、行ってみなさい」

それで、待っていた主人にそのことを話し、車で回ってみたんです。
お薬師様があるお寺は大きなところでしたが。平日で境内は閑散としてました。
参道の右脇にお地蔵様のお堂があり、竹筒から水が手水鉢に落ちていました。
そこのお賽銭箱に千円札を入れ、持ってきたタオルに柄杓で水をかけ、
息子の顔をふこうとしたんです。タオルを近づけたときに、
急に息子が口をとがらせ、老人の声で「やめろお」と言ったんです。
ええ、これは主人も聞いて驚いていました。私はためらわず、
タオルで息子の顔を包み込むようにし、それを何度も繰り返しました。
息子は最初は泣いていましたが、タオルの水をかえるたびに、
「気持ちいい」と言い出して、最後はにこにこしていたんです。
これでお話はほとんど終わりです。

その後3日ほどでアレルギーは治まり、顔の皮が剥がれた部分から、
新しいやわらかい皮膚がのぞいてきました。
あの老人の顔や声は一度も出てきていません。あれ、
何だったんでしょうか。わからないですが、火葬のときに女の子が言っていた、
10円玉で頭をなでた老人と関係があるような気がしてならないんです。
みなさん、どう思われますか?ああそれと、老先生の皮膚科にはその後も通って、
今後のことも考えて、詳しいアレルゲンの検査をしてもらったんです。
でも、何百種という数で調べてもよくわかりませんでした。
ただ、少しだけ反応があったのが火山灰なんです。でも、
このあたりに火山なんてないですし・・・ あの老人の言葉を考え合わせると、
火葬の灰・・・ そういうことってあるものなんでしょうか。






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アーカイブ 封の話

2021.02.17 (Wed)
大学生です。・・・俺のアパートに転がり込んでた友人が急死して、
俺に嫌疑がかかって、ごたごたが続いてたんですよ。それがなんとか片づいて・・・
疑いが晴れたっていうか、もともとあいつを殺す動機なんてないしね。
いい迷惑でしたよ。だから話は俺自身じゃなく、そいつから聞いた
ことなんです。いいですか。名前は仮に山野ってことにしときます。
東北出身で、山スキーが趣味なんです。ほら、かかとの上がる細いスキー
はいて歩くやつ。いや、俺はぜんぜんやらないです。寒いの好きじゃないから。
山野がとある湿原に単独行したのが、去年の12月ですね。
リュック背負って一人で雪の上をえんえんと歩いて、雪の上でテント張って、
何が面白いもんやら。しかも死んじまったんですからねえ。それで、
一日目の夕暮れにテントの場所を探して木のあるところへ入ったそうなんです。

大きな岩の陰に場所をとって、テントから顔だけ出して紅茶をわかしてた
んだそうです。したら、100mほど離れた雪の中を女が歩いている。
それがすごい軽装で、上半身はカーディガンだけに見えたそうです。
「地元の人なのか」と思ったそうですが、そこは集落から何kmも離れてるんです。
女が林に消えていったので、ちょっと心配になって見にいったそうです。
いや、変な下心っていうより、自殺者じゃないかと思ったんですね。
ところが、林の中は薄暗くなってて女の姿は見あたらない。
「まあ、いいか」と思って戻ろうとしたとき、
「ひゅいいいー」って音が小高くなったところから聞こえてきた。
歌ってるようにも笛のようにも聞こえる音で、何だろうと登ってみたんだ
そうです。だけど音はそれ1回きりで、周囲には足跡もない。

雪が深くてスキーでも無理っぽい感じがして戻ろうとしたとき、
斜面に、軽自動車より少し小さいくらいの奇妙な固まりを見つけました。
自然物のようにも、そうでないようにも見えた。
自然ぽいのは色で、茶色と黄色の中間くらいで青黒い斑点が入ってた。
らしくないのはその表面の質感。つるつるした陶器みたいな感じ。
近づいていってみると、あちこちポコッポコッと出っぱってた。
それが顔だったんですって。精巧に彫った人の顔が20ほども、一定の間隔を
置いて浮き出していたんだそうです。ええ、耳から前の顔だけ。顔はすべて
目を閉じていて、若い人ばっかりだと思ったそうですね。男と女は半々くらい。
それで最初、オブジェだと思ったそうです。前衛彫刻って言えばいいのかな。
雪に埋もれてるけど、下には台座があって人に見せるものなんだろうと思って。

でね、すぐ側まで来てさわってみた。したら柔らかかったんだそうです。
押した手袋の指がぐにょんと沈んだ。
あんまり空気の入ってない風船に指を突っ込んだ感じって言ってました。
それと、手のひらのほうを当ててみたら、鼓動を感じたそうです。
ドッキン、ドッキンていう心臓の音。まあしかし、そんな生物があるわけは
ないですよね。オブジェってことで自分を納得させて戻ろうとしたとき、
肩くらいの高さにあった女の顔が口を開けた。中には上下の歯も見えたそうです。
その口から「ひょいーん、ひょいいいーん」みたいな音が出てきた。
「さっき聞こえたのはこれだ」と思ったそうです。そ女の上のまぶたが
ヒクヒク動くのが見えた。「これ、目を開けようとしている」そう気づくと怖くなって、
後ろも見ずに逃げてきたって言ってました。

それ以後は特に変わったこともなく、もう一日過ごしてこっちに戻ってきたんだ
そうです。それから山野は実家に帰省して、1月半ばにアパートに帰ってきたら、
郵便受けに熨斗のついた薄っぺらい箱が入ってた。
開けてみると中はタオルで短い手紙が入ってました。
どうやら下の階に越してきた人からのあいさつの粗品のようでした。
でね、その夕方にいちおうお礼を言いに行ったんだそうです。
インターホンを押すとややあって返事があり、要件を話すと「どうぞ」って言われた。
出てきたのは山野より少し年上に見えるくらいの若い女でしたが・・・
その顔がね、あの山の中で見たおかしな造形物にあった顔。
それも最後におかしな声で鳴きだしたのとそっくりに見えたそうです。
山野のほうからお礼を言って、あたりさわりのない話を少しして帰ってきました。

その夜からだそうです。部屋でおかしなことが始まったのは。
1時過ぎに寝て、少し寝たあたりで「ひょーん、ひょいーん」という音が聞こえた。
上のほうからで、見上げると天上板に何かがあった。とび起きて電気を
つけたそうです。で、幻覚や夢なら消えるはずなのに消えなかったそうです。
天井板には板の色のまま顔が浮き出してて、それが山で見た女の顔、
引っ越してきた、その日話したばっかりの女の顔だったって言ってました。
それがぷるぷると震えながら、少しずつ少しずつ沈み込んでいって、
元の天井板に戻った。それからはね、夜になると鳴き声とともに女の顔が出てくる。
うん、顔だけ。それも耳から前のほうの。出てくるのは天上とは限らず、
柱とか、流し台の下とか、要するに木材部分ってことです。
ね、本当だとしたら気味が悪いでしょう。

それで、顔は何をするというわけじゃなく、ただ「ひょーん」と鳴くだけ。
山野が気がついて近づくと消えていく。どうしたらいいのか
困ったそうです。誰かに相談しても、ありえないって言われるだろうし、
俺を部屋に泊まらせて、出てきたのを見せようかと考えていたそうです。
始まって4日目の夜中ですね。それがまた出たときには、完全に頭にきて、
走って部屋を飛び出し、非常階段から下の女の部屋に文句を言いに
行ったそうです。したら電気がついてるのがわかった。インターホンは
返事がない。それでドアを確かめたら開いてた。開けたそうです。
さらに玄関から中仕切りになってる戸を開けたら・・・
壁際にその女がパジャマを着て立ってたんですが、頭がなかったそうです。
壁の柱にもたれるように立ってて、柱に顔がめり込んでた。

そうです。溶けたように柱と一体化して、後頭部の長い髪だけが
垂れ下がっていたそうです。山野は「うわっ」と叫んで逃げ出し、
財布と携帯だけを持って、俺のところに転がり込んできたんですよ。
でね、この話を聞かされました。いや・・・信じられませんでしたよ、当然。
だって世の中ってそうなってないじゃないですか。
とりあえず山野をなだめて落ち着かせ、
「明日になったら一緒に見にいってやる。なんならその女と話してもいい」
そう言って酒を飲ませて寝かせたんです。
このときの酒の量とかも後に警察で問題になりましたが、2人で焼酎の
ボトル半分くらいですよ。そんなベロベロになるほど飲んだなんてことはない。
俺の部屋はベッドがなくて、2人とも畳に寝ました。

寝たのは2時過ぎでしたね。冬休み中で、翌日も特に予定はなかったですから。
それで・・・寝入ったと思ったら、音が聞こえたんです。
「ひょーん、ひょいいーん」って音。でね、そのほうを見ると、山野ですよ。
やつが上を向いたまま口をひし形に開け、目をつむったまま音を出してたんです。
それ以外部屋に変わったとこはなかったと思います。
「ははあ」これやっぱ全部山野の夢なんじゃなか、と思いました。
音も自分で出してるし、女の顔うんぬんは夢で見たことなんだろうって。
起こそうとしたとき、山野が自分で起き上がったんです。
目はつむったまま「ひょー」と言って半身を起こし、這って近くの柱のほうへ・・・
でね、そのまま思いっきり顔をぶつけ・・・たら、
柱が粘土でもあるかのように顔がめり込みました。

あ然としましたが、襟首をつかまえて引っぱりました。
でも抜けなかったんです。山野の手足は痙攣し始めて、俺は足を
壁に引っかけてなんとか柱から引きはがしました。その間5分はありました。
柱のその部分は、デスマスクみたいに山野の顔型がついて、へこんでて・・・
山野は息をしてなくて、すぐ救急車を呼んだんです。助かりませんでした。
窒息死ということで病院が警察に連絡し、俺は取り調べを受けて・・・
正直にあったことを答えるしかありませんでした。
柱の跡は、夜中にははっきり跡がついてたのが、元に戻ってまして、
警察は話をほとんど信じてくれなかったです。山野のアパートのほうは、
引っ越してきたという女は、その夜のうちにいなくなってて、いまだ消息不明です。
荷物もなく、ただ・・・キッチンに奇妙なものが残されてたってことです。
サッカーボールくらいのいびつな楕円形の・・・粘菌というものだということでした。

関連記事 『妖怪談義1(封)』






アーカイブ 文字のオカルト

2021.02.16 (Tue)
tshhst (6)
「耳なし芳一」

今回はこういうお題でいきます。洋の東西を問わず、文字が力を
持つといった話はよく耳にします。ただ、この場合、
音声と結びついていることが多いんですよね。でも、それだと
「呪文」になってしまいますので、今回は純粋に
文字(表記)だけのオカルトについて考えてみます。

西洋では、力を持つ文字としては「ルーン」が、まずあげられる
でしょうか。ファンタジー小説やゲームにもよく登場します。
これは古代のゲルマン人が用いていた文字体系で、
表音文字のうち、音素文字と呼ばれるものです。

ルーン文字 最初の1行がフサルクという音素
tshhst (7)

「ルーン(rune)」という名称の語源としては、「秘密」を意味する
ゴート語からきていると言われますが、はっきりしません。
ルーン文字は、最初の6文字をとって「フサルク」とも呼ばれます。
実際に見てもらえればわかりますが、ひじょうに素朴な感じがします。

現在の魔術では、ルーン文字は、呪術や儀式に用いられた神秘的な文字
などと言われたりしますが、実際にはそんなことはなく、荷札や伝票など、
日常ふつうに使われていました。魔術に関係があると言われるように
なったのは、ラテン文字が広く普及してからのことです。
ルーン文字は、ラテン文字にいくつか転用されています。

さて、自分が、文字が印象に残っているホラー作品は、
1999年公開のアメリカ映画、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
ですね。黒い森の中にある存在しないはずの廃墟の壁に
手形とともに書かれていた文字です。最初、ルーン文字かと
思いましたが、よく見ると少し違います。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
tshhst (2)

この映画は、「モキュメンタリー( 疑似ドキュメンタリー)」として
話題を集めました。評価は賛否両論がありますが、
自分は面白かったです。さまざまな伏線らしきものが提示されるものの、
最後まで観ても、謎はまったく解決しないという内容は
実話怪談に通じるものがありますね。

この映画に低評価をつけた人は、手持ちカメラのグラグラ揺れる映像で
気持ちが悪くなったせいもあるんじゃないでしょうか。
自分は、これを考えた人は頭がいいと思います。まず、超低予算
ですよね。ずっと野外撮影で、CGどころかセットすらありません。
3人だけのキャストはすべて無名の新人。

それであれだけ話題を読んで興行収入を上げたんだから、
たいしたものだと思います。あ、映画の話ではないので、
これくらいにしておきます。西洋には、「シジル魔術」というものも
ありますが、これは文字というより紋章ですね。イギリスの秘密結社、    
「黄金の夜明け団」が使用して有名になりました。

「シジル魔術」
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さて、東洋のほうはどうでしょうか。オカルト的なパワーを持った
文字としては、まず漢字があげられると思います。
自分は、これだけ複雑な構成要素を持った表意文字ができたのは、
奇跡に近いことだと考えてるんです。

漢字の起源は古く、甲骨文字がもとになってるのはご存知でしょう。
甲骨文字は主に占いに用いられ、その結果で生贄の数が
決められていたんです。商(殷)の遺跡からは、生贄になった人骨が
14000体も出土していますが、このことと漢字の発生は
深い関係があります。

甲骨文字 焼いてひびわれを観るため甲骨に記された


ですから、何気ない漢字にも恐ろしい意味を持つものがあります。
例えば、「道」という漢字は、首を手にたずさえる形から生まれ、
荒れ地にいる災いをなす鬼神を祓い清めるために、斬った人間の
首を掲げて道をつけていく様子を表す、などと言われます。

で、もともと力を持っている漢字が、さらにお経になると、
いっそうパワーを発揮します。何を言いたいかもうおわかりでしょう。
「耳なし芳一」の話ですね。平家の怨霊に目をつけられた
芳一の姿を隠すため、寺の住職は全身に般若心経を書き込みますが、
耳にだけ書き忘れてしまったために・・・

お経は、声に出して読まなくても、文字として存在するだけで
力があるとされました。これは梵語の場合も同じです。他にも、
経蔵にしまわれていた経文の文字を食べた紙魚(しみ 虫の一種)が、
不思議な力を持って怪異をなすといった話もあります。

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興味深いのは、四国の某地方に伝わる話で、そこには幼くして海に沈んだ
とされる某天皇がじつは落ちのびてきて、一行が集落の菩提寺に
泊まったときに、礼として書き溜めておいた経文を当時の住職に下した。
そのようないわれのあるものが、いまだに寺に残っていて、
経文はところどころ四角く切り取られた穴が開いている。

どういうことかというと、まともな薬も医師もなかった時代に、
病人が出た家の者が住職のところにやってくると、
うやうやしく経文から小刀で一字を切り取って与えた・・・
ありがたいお経、しかも天皇が自ら写したものだとすれば、当時の人が
飲めば病気が治ると考えても不思議はないかもしれません。

さてさて、この他、文字のオカルトには「神代文字」というのもあり、
漢字伝来以前に古代日本で使用されたと言われるんですが、
確証にとぼしいものばかりです。昔から、日本が中国由来の
漢字を使っているのが気に入らない勢力もあったんですね。
この内容もまだ書くことがありそうですが、まずはこのへんで。

神代文字の一種
tshhst (5)




「魔除け」って何?

2021.02.15 (Mon)
アーカイブ605

hhdususs (3)

今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論かな。
さて、魔除けというのは、まじないの一種でしょう。
まじないとは、さまざまな民間信仰が混然とした形になっているものです。
前に、当ブログでは「まじない」について考察していますので、
興味ある方は参照なさってください。  関連記事 『まじないについて』

まじないは、大きく分けると2種類あるのかなと思います。
一つは、開運です。積極的に運を自分のほうに引き寄せるためのもの。
もう一つが魔除け、つまり悪運を避けるためのもの。
これは開運に比べれば、消極的な意味にも思えますよね。

イワシとヒイラギの魔除け
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ただ、歴史的には、開運よりも魔除けのほうが古かったのではないかと
思います。みなさんは、例えば、ある石を身につけるだけで運がよくなる、
なんてことがあると思いますか。まあ、一種のブラセボ効果のようなものは
あるのかもしれません。ですが、幸福をつかむためには、
やはり自分が努力することが何よりも大切です。

これに対し、不幸はいつ襲ってくるかわかりません。疫病とか、
不慮の事故、そういうのはいくら気をつけていても避けられない場合も
あります。昨日まで隣の家の子と仲よく遊んでいた自分の息子が、
今日、流行病で死んでしまった。隣の子はピンピンしてる。

ハチの巣の魔除け


これは運不運なんですが、どうしても釈然としない気持ちが
残ります。自分の子は、魔に魅入られてしまったのではないか。
そのような偶発的な不幸を避けたい、というのが魔除けの
そもそもの発想ではないかと思います。

さて、「魔除け」に類する言葉はいくつかありますね。
「厄払い」 「邪気払い」などです。これらはだいたい同じ意味で
使われていますが、そもそもの言葉の成り立ちは少し違いが
あります。まず、そのへんをみていきたいと思います。

花火筒の魔除け
hhdususs (6)

魔除けの「魔」は、サンスクリット語の「マーラ (魔羅)」の短縮形で、
仏教的な意味合いがあるようです。マーラは、仏道の修行を妨害したり、
人の行う善事を妨げるものを指しています。「魔が差す」という言葉が
ありますが、これは、「悪魔が心に入りこんだように、一瞬判断や
行動を誤る。出来心を起こす。」という意味で使われます。

ですから、魔除けとは、外からの影響によって悪い心を起こす、
人生が破滅してしまう、といったことがないよう、自分を守るための
ものだったと考えます。現代でも、女や金、あるいは酒などで
人生を棒に振ってしまうなんて話は、いくらもありますよね。

次に厄払いですが、この「厄」は、厄病神、疫病神、厄神のことで、
人間界に疫病をもたらす悪い神とされます。
厄病神が村の街道を通ってやってくるのを、注連縄などの
結界を張って防ぐ。これを「道切り」と言いました。

厄病神を通さないための「道切り」
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次は邪気払い、「邪気」とはよくない気のことです。
自分はこれ、神道の影響が強い言葉じゃないかと思います。
神道では、気を重視します。気が充実していない場合を「気枯れ」
と言い、それが「穢れ」という語に変化しました。

邪気は、「人の身に病気を起こすと信じられた悪い気」という意味で
使われます。厄と似た意味の言葉なんですね。ただ、上でも書いたように、
「魔除け」 「厄払い」 「邪気払い」は、現代では、
どれも同じような意味で考えてる人が多いんじゃないでしょうか。

ニンニクの魔除け
hhdususs (4)

さて、では、どうすれば魔を払うことができるのか。一つには、強いものの
力を借りる。「鎮西八郎為朝御宿」と書いた札を家の入口にはって、
疫病が入ってこないようにします。源為朝は剛弓の使い手として知られた
平安時代の武将ですね。この他、「鬼瓦」の怖い顔で魔を追い返す
などもそうですし、沖縄のシーサーもこれに近いものです。

次に、魔が嫌がりそうなものを軒先に吊るす。例えば、嫌な臭いを出す
イワシの頭、ニンニクなどです。ニンニクは西洋でも、ドラキュラ除け
として有名ですよね。この他、トゲトゲのあるヒイラギの葉や、ハチの巣、
花火の殻、蹄鉄など、地方によっていろいろな魔除けグッズがあります。

あと、籠や笊を魔除けとして用いる地方もありますね。
籠や笊は目(穴)がたくさんあるので、魔が怖がるとされます。
また、籠目は六芒星の形をしていて、それが魔除けになるという説もあります。
六芒星はダビデの星とも言われ、西洋でも呪術的な意味を持っています。

籠目
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さてさて、ということで、ここまで見てきましたが、
いくら自助努力をしても避けようがない不運というのは、人生には、
どうしてもあるものです。それをなんとかしたい、そういう昔の人の
気持ちが、魔除けには込められているのではないでしょうか。
では、今回はこのへんで。




アーカイブ ネットの墓の話

2021.02.14 (Sun)
前に「悪魔の話」というのを書きましたが、あれに登場するKさんに、
昨夜、いつものバーでお会いしていろいろお話をうかがいました。
Kさんは、貸ビルやアパレルの店などを手広く経営されている実業家ですが、
霊能者としての活動もしてるんですね。ただし、
すべてはボランティアで、謝礼などは一切もらっていません。
「Kさん、最近、何か面白い話とかありましたか?」
「bigbossman、お前なあ、ブログに書くネタを探してるんだろ」
「まあそうです」 「でもな、ブログって怖いんだぞ」
「どんなとこがですか?」 「お前、去年大病しただろ」
「あ、はい。12時間の手術をして、一時は死も覚悟しましたよ」
「で、もしあのときお前が死んでたら、今書いてるブログはどうなったんだ?」

「え、それは大丈夫です。共同事務所の仲間にパスワード教えてるんで、
 消してくれるはず。あと、自分のパソコンの処分も」
「だったらいいけどな。お前のやってるブログなんて、
 特に霊障のかたまりみたいなもんだから」 「・・・・」
「でな、人が生きていく世の中には、喜びも悲しみもあるよな」 「はい」
「それは人間の歴史が始まって以来、ずっとそうだったんだが、
 ネット社会になって、その喜びや悲しみが不特定多数につながるようになった」
「そうですね」 「ネットのことを電脳空間とも言うよな」 「はい」
「けど、実際にそこにあるのは人間の思いなんだよ」 「はい」
「ところで、ネットの墓って知ってるか」 「いえ」
「管理人が亡くなって、ネット上にそのまま放置されてるブログのことを言うんだ」
「ああ、なるほど。言いえて妙ですね」

「だろう。ただまあ、ブログをやってる人でも、自分のブログに対する思い入れは
 さまざまだ」 「はい」 「だからほとんどのネットの墓は無害だが、
 中にはマズイものもあるんだ」 「そうなんでしょうねえ」
「お前、闘病ブログって知ってるか?」 「あ、わかります。病気になった人が、
 病状の経過や治療のことを書いたりするんですよね。上位になってるブログは、
 自分のより3桁くらいアクセス数が多いです」 
「あれなんて、かなり危険な要素がいろいろある」 「ははあ」
「まず、書いてる本人の思い入れというか、念のこもり方が強い」
「そうでしょうねえ」 「ホスピスの病床で、スマホで記事を投稿して、
 そのまま中断してしまってるものもある。おそらく、その記事を書いた直後に
 亡くなったとかだろう」 「はい」 「身内がいれば、死去したという報告を

 ブログに上げたりすることもあるが、今は独身の人も多いし」
「そうですね」 「で、重い病気の場合、仕事をやめてしまったり、症状が重くて
 出歩けなかったり、医師との関係がうまくいかなくて病院を転々としたり、
 外の世界とのつながりが、そのブログだけって場合もあるんだ」 「はい」
「それと、詐病ブログって知ってるか?」 「いえ」
「病気を装った嘘のブログってことだよ」 「何のためにそんなことを?」
「さっき、アクセス数が多いって自分で言ったじゃないか。末期がんとか、 
 難病のふりをしてブログを立ち上げれば、大勢の人に注目してもらえるし、
 アフィリエイト収入にもなる」 「ああ」
「アナウンサーの小林麻央さんが乳がんになって、すごいアクセス数だったろ」
「はい」 「あれ以後、かなり増えたらしい」

「でも、詐病なんてすぐわかるでしょうに」 「それが、そうでもないんだな。
 今は病気に関する情報なんてネットにいくらも出てるし、
 ずっと前に書かれてた他人のブログをその部分だけパクったっていい」
「うーん」 「それに、詐病ブログを書いてる人は、悲劇の主人公になりきって、
 すごく真に迫ったものも多いんだよ」 「・・・・」
「あとは、ブログを見るほうの問題もある」 「どういうことですか?」
「そのブログの読者が、必ずしも治療を参考にしたり、
 病状が軽快するように応援してるわけじゃない」 「・・・・」
「中には、自分より不幸な人を見て楽しみたいってことで、
 アクセスしてる人もいるわけだ」 「うーん、それは嫌ですねえ」 
「でも、実際そうなんだよ。お前、こないだ病気してどんなことを考えた?」

「いや、それは、健康って大事だなあ、生きてるだけで丸もうけなんだな、って」
「だろう。例えば、余命宣告なんかされた人のブログを見て、
 自分は何もないけど、まだ死ぬ心配がないだけ、この人よりはマシだってわけだ」
「うーん」 「まあ、そんな感じで、人間の嫌な部分がブログの周辺に渦巻いてたり
 するんだな」 「でも、病気がよくなるよう、心から応援してる人もいるんでしょう」
「まあな、むしろそっちのほうが多い。しかし、それはそれで、
 因縁の元になったりするんだ」 「どういうことですか?」
「Sさん、としておこうか。まだ20代の女性で主婦をしてる。その人が、
 偶然に、ある闘病ブログを見つけた。そのブログは5年ほど前に
 書き込みが途絶えてたが、まだネット上に残ってたんだな。ブログランキングからも
 外れて、意図的に探してもなかなか見つからないような」 「はい」

「でな、その管理人の女性が、たまたまSさんと同じ年齢だったこともあって、
 興味を持って読み始めた。ブログの管理人は生真面目な人だったらしく、
 病状や治療を細かく記してて、文章も上手だと思ったらしい」 「はい」
「で、それと同時に、管理人の境遇が不幸なことも知った。管理人は独身で、
 父親とは幼い頃に死に別れてたが、闘病中に母親まで亡くなってしまった」
「・・・・」 「それと、仕事を続けられなくなったんで、お金の問題もあった。
 あからさまにそういうことを書いてるわけではないが、そのあたりは読み取れた。
 で、Sさんは深く同情してしまったんだな」 「はい」
「ブログの書き込みは、病状が重くなるにつれて増え、それがあるときを境に
 がくんと減った。パソコンで書いてたのがスマホになり、とぎれとぎれになり、
 最後は、ブログを読んでくれた人へのお礼が2行書かれて終わってた」

「はい」 「それを何日かかけて読み終えたSさんは、
 あまりにつらい気持ちになったんで、ずっと何も書かれてなかったコメント欄に、
 管理人さんのご冥福をお祈りします、みたいなことを投稿したんだな」
「はい」 「それ以後も、ときおりブログを読み返したりしてたんだが、
 Sさんが夜中にうなされるようになった。毎夜、2時から4時ころの間に、
 悲鳴をあげて飛び起きる」 「はい」 「ご主人が心配して、心療内科に行かせたが、
 睡眠導入剤を処方されただけだった」 「はい」 「それで、飛び起きることは
 なくなったが、やはり寝汗をかいてうなされているし、悪い夢を見るって言う」
「どんな夢ですか?」 「黒い影がベッドに近づいてきて、体のある部分を
 なでる夢」 「黒い影?」 「姿形はわからなかったらしい。で、つてを頼って
 俺に連絡がきたわけだ」 「どうなりました?」

「Sさんからいろいろ話を聞いて、そのブログの存在を知った。で、読んでみたが、
 俺には陰鬱なだけの内容にしか思えなかった。おそらく、そのブログの管理人と
 Sさんの波長が合ったんだろうなあ」 「で?」
「でな、ブログの管理人の病気は、特殊な部位のがんだったんだが、
 Sさんが毎夜、黒い影になでられているのが、それと同じ場所だったんだよ」
「う」 「それに気がついて、知り合いのいる癌研の受診を勧めたんだ。
 よく頼み込んで、何種類もの検査をしてもらった。そうしたら、
 やはりその場所にがんが見つかったんだよ」 「うう」
「初期も初期のがんだったんで、Sさんは手術をして、経過観察になってる。
 幸い、再発や転移の兆候は出ていない」 「で?」
「もちろん、Sさんの手術と並行して除霊を進めた」

「上手くいったんですか?」 「たぶん大丈夫だろう。ただ、そのブログのほうは
 問題だった。悪い墓と化してるんだ。だから、またSさんのようなことが
 起きないとも限らない」 「でも、管理人の浄霊は済んだんでしょう」
「それとは別に、ブログそのものに命が宿ってるっていうか、
 悪霊化してるっていうか」 「で?」 「管理人に身内はいないし、
 難しかったが、なんとかブログサービスに連絡をとって、
 落としてもらった。これは、管理人本人を浄霊するより大変だったよ」
「うーん、ブログを書いた人が亡くなり、さらに浄霊されたとしても、
 ネット上に残ったものが霊障をまき散らすって場合があると」
「そう。命とはいえない命を持つんだ。これからのネットは怖い。 
 だから、bigbossman、お前も十分気をつけないと」 「お言葉、肝に銘じますよ」

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