FC2ブログ

ダイエット神社の話

2020.04.07 (Tue)
アーカイブ247

今晩は、よろしくお願いします。では、私の話をしていきます。
私は、事務機リース会社の経理課に勤めてるんです。
年齢は29歳です。それで、同じ課の同僚にB子さんという人がいて、
同期で入社したので同じ29歳です。それで、2人ともまだ独身なんです。
はい、もうすぐ30歳で大台に乗っちゃうんで、結婚はあせってました。
ええ、合コンに参加したり、仕事の合間をぬってそれなりに婚活はしていました。
これはB子さんも同じです。その点、
私とB子さんはライバル意識があったと言ってもいいかもしれません。
それでですね、今年の4月、経理課にAさんという男性が、
地方支社から転任してきたんです。それが、背がすらっと高いステキな人で。
年齢は31歳ということで、まだ独身だったんです。

会社で歓迎会をやったときの自己紹介では、つき合っている人もいなくて、
恋人募集中ですって言ってたんです。これは、って思いました。
ああ、この人と結婚できたらいいなあって。
でも、それはB子さんも同じ思いだったみたいで、
Aさんのところへお酒を注ぎにいった様子を見ててわかりました。
それで、これは負けられないって思って、私もAさんに積極的に話しかけて・・・
このことについて、その2次会のときB子さんと少し話をしたんです。
協定を結んだっていうか、お互いに正々堂々とAさんを張り合おうって。
それでもし、Aさんのほうから私とB子さんのどちらかが誘われたら そこで勝負あった。
遺恨を残さなように前途を祝福しましょうってことをです。
で、ですね、私はこの勝負、けっこう自信があったんです。

というのは、B子さんって体型がぽっちゃり型でスタイルがあんまりよくないので、
Aさんが選んでくれるとしたら私のほうかなって思ってました。
ところがです、それから2週間らいの間に、B子さんがどんどん痩せてきて、
見違えるようにスタイルがよくなったんです。それに、化粧の仕方も変えたのか、
肌の内側から輝いてるようにきれいになってきて・・・
これには驚くとともにあせりました。ああ、私も何かやんなくちゃいけないと思って、
週に何回もエステに行ったり、ネットでダイエットのページを見て、
よさそうな内容のものを実行してみたり。
でも、そんなに短期間で効果って出ないじゃないですか。それは、
断食すれば痩せるかもしれませんが、そうすると肌がガサガサになってしまうし。
マズイなあと思ってたら、B子さんのほうからこんなふうに話しかけてきたんです。

「ねえ、最近 私痩せたように見えるでしょ」
「ダイエットしてるんでしょ。まだ短期間なのにすごい効果出てるね」
「ありがと。どんなことをしてるか知りたい?」
「教えてくれるの?」 「まあそれは、友だちだからね」
で、聞かされたのがこんな内容だったんです。
「ダイエット神社ってあるのよ。もちろん正式な名前じゃないけど。
 ダイエットにばつぐんの霊験があるって、知る人ぞ知るってとこ。
 場所は県内のはずれのほうだけどね。ちょっとした山の上にあって、
 かなり長い石段を登ってかなくちゃならない。それでね、
 そこでお参りしてから、社殿の横にある湧き水、これが特別なご神水なの。
 ペットボトルに何本かくんできて、毎日、朝起きたらコップに1杯ずつ飲むの。

 それと、洗顔した後に顔につける。どう、こんなこと信じる?」
「でも、B子は効果出てるよね」 「まあね、他のダイエットももちろんやってるけど、
 2週間で8kgは痩せたよ」・・・こう聞いて私が考えたのは、
まず、何でAさんをめぐるライバルの私に、簡単に教えてくれたんだろうかってことと、
神社のお水なんかで本当に効果があるんだろうかってこと。
でも、B子さんが成果が出てるのは確かなんだし・・・
それで、次の休みの土曜日、車にペットボトルを何本か積んで、
B子さんに教えられた道を通ってその神社に向かったんです。
そしたら、場所は県の北の外れのほうで、車は、農家しかない田舎に入っていったんです。
そしてその細い道の行き止まりの脇に、ちょっとした小山があったんです。
山には細い石段の道が上に向かって続いていて、塗りのはげた鳥居が立ってました。

車を道に停め、1Lmのペットボトルを数本紙袋に入れて石段を登っていきました。
両側が林の中を石段はどこまでも続いていて、やっと着いたのが、
山頂にある小さな神社でした。私の他には参拝者はだれもいなかったです。
神主さんもいないようでした。とにかく、お賽銭をあげてお参りして、
神社の横に回ってみました、そしたら、岩の間からチョロチョロ水が落ちているところがあり、
そこでペットボトルに水をくんだんです。帰りがけに、社殿をもう一度見たら、
高いところに古い絵の額が何枚も飾ってあり、それはどれも、
花嫁と花婿を描いたもののように見えました。ただ、花婿は軍服姿のものもあって、
もしかしたら太平洋戦争中のものなのかと思いました。
とにかく、ここは縁結びの神様で、額は結婚したカップルがお礼に奉納したものだろうって、
納得して帰ってきたんですよ、それでさっそく、翌日からペットボトルの水を飲み始めました。

はい、効果てきめんでした。たった2日飲んだだけで、体重が2kgも減ってたんです。
正直スゴイと思いました。食事はそんなにひかえてないのに、
こんなに体重が減ったのははじめての経験でしたよ。
もちろん、顔をその水で洗うことも忘れませんでした。
ええ、体重のほうはハイペースでそれからも落ちていきましたが、
顔はそんなにきれいになったように思えませんでした。
むしろ頬がこけて やつれたような感じになって・・・
その頃には、B子さんはものすごく痩せて、しかも私とは違って、
顔も輝くばかり美しくなってたんですよ。それから数日して、
昼休みにB子さんからこんなことを言われました。
「昨日ね、この土曜日、食事をしないかってAさんから誘われちゃった。

 この勝負、私の勝ちみたいね」って。
ええ、それはショックでしたけど、きれいになったB子さんを見れば、
それもしかたがないかって思えたんです。ですから私としては、
約束どおり素直に祝福してあげるつもりだったんです。それで、その翌朝です。
くんできた神社の水がなくなって、最後の一杯をコップで飲もうとしました。
勝負がついちゃったんだから、もうあんな遠くまで水はくみにいかなくてもいいか、
そう思って、窓からの朝日に半分飲みかけたコップをかざしてみたら、
水の中に5mmほどの白いヒモのようなものがたくさん浮かんでいるのが見えたんです。
ええ、何十匹もいました。「匹」って言いましたが、生き物かどうかはわかりませんでした。
でも、それらはうねうね右に左に動いていたんです。
「キャー」と叫んで、コップの水を流しにあけ、水道の蛇口をひねって流しました。

それからトイレに駆け込んでしばらく吐いたんです。
ああ、なんてものを飲んでしまったんだろう、あの虫みたいなのはいつから入ってたのか。
もしかして最初から入ってたのに、今まで気がつかなかったのか、
体重が減ったのはそのせいなのか・・・嫌な考えが頭の中を駆けめぐりました。
で、神社の水を飲むのをやめたとたん、体重は元に戻っていったんです。
病院に行って事情を話して検査してもらったんですが、特に異常はありませんでした。
・・・B子さんとAさんの交際は順調に進んでいるようで、
B子さんからはいろいろ のろけを聞かされました。そして3ヶ月後、
B子さんとAさんの結婚式があったんです。同僚として、もちろん私も出席しました。
花嫁姿のB子さんはモデルのようにスタイルがよく、すごく美しかったです。
そして、式の直後に胸をかきむしりながら倒れて、そのまま亡くなってしまったんですよ。

怪奇ロマン『君待てども』
ダウンロード

 



スポンサーサイト



アーカイブ 嘘つき

2020.03.31 (Tue)
小学校のときのことなんだけど、たいして怖い話でもないのでここに投下。
3年生のときの同級生でよく嘘をつくやつがいたんだよ。
そいつとは家が近かったんで、
低学年の頃は何度かいっしょに外で遊んだ記憶もある。
小学生は意地をはったり見栄をはったりして、
他愛もない嘘をつくことがあるけど、そいつのはいかにも突飛で、
しかも確かめればすぐばれるようなのばかりだった。

例えば虫取りが流行ってたときには、
15センチもあって角が三つに分かれたカブト虫を
山で捕まえたとか言う。今にして思えば、
図書館で図鑑に載ってる外国のカブトを見たとかなんだろうけど、
空の水槽に入れて飼ってるというんで、このときは信じた子供もいた。
放課後、見せてもらおうと後をついてそいつの家に行くと、
先に家に入ったそいつが、
いかにもがっかりした顔で出てきて目尻をぴくぴくさせ、
そこ以外は無表情に「逃げられてたよ」と言う。まあそんな感じ。

他にも、そいつは片親でボロい木造家屋に母親と住んでるんだけど、
実は親父は外国に長期出張してる有名な会社の社長だとかなんとか。
しかしそうでないことは、いくら小学校3年生でもすぐわかった。
勉強もスポーツもできず、
小遣いを持ってることも少なく話しても何も面白くない。

それに母親が夜の仕事で忙しいせいか、
そいつのことをろくにかまってなくて、
毎日忘れ物はするし同じシャツを着てきて汗臭いしで、
まずクラスの女子がそいつを嫌がり、
男子もだんだんと話をするやつがいなくなって孤立状態になった。
ただし、いじめられてるというわけでもなかったけどな。
子供なりにそいつが自分のヘマや嘘で、
追いつめられたときに見せる無表情さに、
一種の不気味さを感じていたんだと思う。

4年生になってクラス替えがあり、俺はそいつとまたいっしょの
クラスになった。俺の行ってた小学校は大規模校だったんで、
それまで同級だった子よりも知らない子のほうが多く、
春休み明け始業式の日は子どもなりに緊張して迎えた。
朝ちょっと早めに登校すると、そいつのまわりに
何人か人が集まり「うえー」「本当かよー」とか言ってる。
そいつが何かの紙切れを、寄ってくるやつに見せてるんだな。

それで、俺も近づいてみると、「◇◇(俺のこと)この写真見て、
 今まで一人っ子だと思ってただろうけど
 じつは小さい頃は双子だったんだ」と言ってくる。
そいつが持ってる紙には、シャム双生児というのかな、
体がくっついてて手が4本、
足はどうなってるのかわからないような幼児が写っている。
頭は一つで奇妙にねじ曲がっていて片目がつぶれてて、残った
片一方の目で、悲しいような恨めしいような感じにこっちを見ている。

「これオレなんだよ。弟といっしょにくっついて産まれたけど、
 小さい頃手術して切り離したんだ」しかしそうは言うものの、
手に持ってるのは写真ではなく、
雑誌か何かから切り抜いたと思われる紙切れだし、
写ってる顔はどう見ても日本人じゃない。
ああいつもの嘘だな、と思って俺はその場を離れた。
これ以降、そいつもクラス替えで精神状態が高ぶっていたのか、
毎日のように様々な嘘をつき、
そして3年生のときのようにあっという間に孤立した。

ただし今回は学年で鼻つまみのいじめっ子がクラスにいたこともあり、
たんに孤立では済まないようだった。
俺はそのイジメには加わっていなかったし、
そいつの味方をしたこともない。クラスではただひたすら離れていた。
それに4年生からはスポ少に入ることができ、
俺は野球部になって放課後は遅く帰ることが多くなった。
そいつは運動は苦手で、用具などをそろえる金もなかったの
かもしれないが、下校時間になると一人で帰っていた。

その日は練習がなかったんで俺が普通の下校時間に一人で歩いてて、
角を曲がるとそいつが前にいた。
どうやら帰りの掃除の時間にでもイジメを受けたらしく、
いかにもとぼとぼとした感じで歩いてる。
ちょっとかわいそうになったので追いついて、
「いっしょに帰ろう」と言うといつもの無表情でこっちを見た。

けど何の話題もない。そのままただ歩いていると、
唐突に「オレ転校するんだよ、明日からこの学校には来ない」と言う。
でも、転校するなら必ず先生がそのことを言うはずだし、
今までは転校する子が出ると簡単なお別れ会を開いてた。
そういうことがなかったので、ははあまた嘘だなと思った。
リアクションを返せないまま押し黙って歩いてそいつの家の前まで来ると、
そいつがやはり無表情のまま、
「今までありがとうな」と言って玄関に入っていこうとした。

そいつが後ろを向いたとき、ランドセルの蓋がパンと強くはね上がり、
中から幼稚園児くらいの大きさで細長くねじけた頭が飛び出した。
頭は俺のほうを見ると、苦しそうに顔をゆがめ、
いくつにも切れた唇からしぼりだすような声で「あ・り・が・と」と言った。
始業式の日にそいつが持ってきた切り抜きに写っていた、
シャム双生児の顔だと思った。

次の日そいつは学校には来ず、数日して先生が、
「◯◯君は急な事情で転校しました、
 みんなにお別れが言えずにとても残念がっていました」と説明した。
親たちの噂話では、どうやら夜逃げのようだった。
それから今まで一度も会っていないし消息もわからない。






ルルドの泉と無原罪の御宿り

2020.03.27 (Fri)
アーカイブ245

今日はクリスマスですので、それらしい内容にしたいと思いますが、
なにぶん、地味なキリスト教の話なので、スルーされたほうがいいかも
しれません。さて、キリスト教の教義の根本になっている概念の一つに、
「原罪 original sin( 英語) peccatum originale(ラテン語)」
というものがあります。

フランス ルルドの泉
dddd (2)

原罪は、ひとことで言うと「アダムとイヴから受け継がれた罪」のことです。
『旧約聖書』の創世記では、神が創った初めての人間、アダムとイヴを楽園におき、
あらゆるものを食べてよいと命じましたが、善悪を知る「知識の木の実」だけは、
「取って食べると死ぬであろう」として禁じました。しかし、蛇にそそのかされた
イヴが木の実を食べ、イヴに勧められたアダムも食べてしまいます。

これによって、アダムとイヴは楽園を追放されてしまうわけですが、
その罪は、神に命じられたことに背いた「不服従の罪」なんですね。
ここでイブは、あくまで蛇に食べることを勧められただけであって、
強制されたわけではありません。また、アダムも同じで、
自らの意志で神の言いつけに背いてしまったと、一般的には解釈されます。

楽園からの追放
dddd (3)

このため、われわれ、アダムとイヴの子孫である人間は、
等しく原罪を背負うことになってしまうわけです。ただまあ、それだと、
キリスト教徒ではない人間も原罪を持つことになってしまいますが、
そのあたりのことは、あいまいにして避けられる場合が多いですね。

さて、救い主イエス・キリストは原罪を持たないのはご存知だと思います。
イエスは、神の意志によってこの世に送られたのであり、
形としては聖母マリアの「処女懐胎」ということになります。現在では、
イエスの存在は、「父・子・精霊」の三位一体説がとられています。

大工であったヨセフは、婚約者のマリアが結婚前に身ごもっていることを知り、
当時のユダヤ法にしたがえば、マリアを不義姦通として世間に公表し、
石打ちの刑にしなくてはなりませんでしたが、マリアの話を聞いて
すべてを受け入れ、マリアと結婚します。

マリアへの天使ガブリエルによる受胎告知
dddd (6)

ということで、キリスト教の初期には、原罪を持たないのは
イエスだけだったんですが、カトリック派において、だんだんにマリアに対する
聖母信仰が高まってきました。9世紀頃から、マリアもまたイエスと同じく
無原罪で生まれたという説が唱えられるようになりました。

ですが、その説については否定的な意見が多かったんですね。
13世紀の神学者トマス・アクィナスも、はっきりと否定しています。
マリアも無原罪だったとすれば、イエスの特別性が失われるからです。
しかし、イタリアやスペインなどのラテン地方では、ますますマリア信仰が高まり、

ついに1854年、教皇ピウス9世の回勅によって、
マリアの無原罪説が認められました。マリアもまた、
神の特別なはからいによって母親の胎内に宿ったのであり、マリアのことは、
「無原罪の御宿り Immaculata Conceptio Beatae Virginis Mariae(ラテン語)」
と呼ばれるようになったんです。 

さて、「ルルドの泉」の話に移ります。1858年、フランス・ルルド村の14歳の少女
ベルナデッタ・スビルーが、郊外の洞窟のそばで薪拾いをしているとき、
若い女性が出現したとされます。ベルナデッタは最初、
自分の前に現れた女性を聖母とは思わず、「あれ(アケロ)」と呼んでいました。

ルルドの泉の水質 かなりの硬水
dddd (1)

当然ながら、この話を聞いた、教会関係者はじめ多くの人々は疑いを持ちました。
その女性はベルナデッタにしか見えなかったからです。ベルナデッタが、
「あれ」がここに聖堂を建てるよう望んでいると伝えると、
神父はその女性の名前を聞いて来るように命じます。

そして、何度も名前を尋ねるベルナデッタに、「あれ」は自分を「無原罪の御宿り」
であると告げたとされます。これを聞いて周囲は驚きました。ベルナデッタは、
ラテン語どころか母国フランス語の読み書きも満足にできなかったからです。
このことを証拠として、聖母出現は真実とされることになりました。

聖母は、ベルナデッタに「顔を洗いなさい」と言い、近くに水がなかったので、
聖母が洞窟の岩を指さすと、そこから水が湧き出し、最初は泥水であったのが、
だんだんに澄んできて、飲めるようになりました。そこに聖堂が建てられ、
次第に多くの参拝者が訪れるようになり、やがて重病人が泉の水を飲むと、
病気が治る「奇跡」が起きると言われるようになっていったんです。

この奇跡の認定基準はかなり厳しく、「医療不可能な難病であること、
治療なしで突然に完全に治ること、再発しないこと、
医学による説明が不可能であること」となっていますが、現在まで
68例が奇跡としてローマ教皇から公認されています。
その中には、1879年(明治12年)、悪性腫瘍で余命いくばくもないと
医師に宣告された、弘前市に住む新谷雄三少年が快癒した例も含まれます。

聖ベルナデッタの不朽体
dddd (5)

ベルナデッタは修道女となり、肺結核35歳で亡くなります。
自分には泉の効果がなかったのか。それとも神が早くに天に召されたのか・・・
遺体は聖人として保存されており、腐敗しないとも言われます(不朽体)。
ただし、上の画像では、遺体の顔と手指にには
ロウ製のマスクが被せられています。

さてさて、ここまで読まれてどう考えられたでしょうか。
1854年に、「無原罪の御宿り」の教義ができ、そのわずか4年後に
ルルドの泉の聖母出現が起きる。不信心な自分なんかは、かなり怪しいなあと
思ってしまいます。まるで新教義の宣伝みたいじゃないですか。
とはいえ、ルルドの泉の治癒例には、現代医学で説明ができないものが
あることも確かなんですね。では、今回はこのへんで。

エステバン・ムリーリョ『聖母マリア』
dddd (4)






ウエンディゴの影

2020.03.27 (Fri)
アーカイブ244

タイトルなしaas

今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論かな。
これも地味な話題で、みなさんが興味を持たれるかどうかはわかりません。
さて、「ウエンディゴ」とは、アメリカ合衆国北部から、
カナダにかけてのアメリカ先住民、オジブワ族などに信じられている
悪霊というか、一種の精霊です。

その姿はいろいろ言われますが、身長が高く痩せこけていて、
皮膚の上から骨格がわかる。目は落ちくぼみ、唇はボロボロ。肌は灰色で、
大鹿のような角を持っているともされます。また、ウエンディゴは
強い腐敗臭を放っていて、近くにくるとすぐにわかるということです。

北アメリカ大陸の北部はかなり気温が低く、ウエンディゴは、
冬、寒さ、飢餓の象徴であると見られることが多いですね。
森の中を一人で歩いていると、ふと近くにウエンディゴがいる気配を感じ、
そのうちにウエンディゴにとり憑かれてしまいます。そうすると、
その人物は自分自身がウエンディゴになったと思い込んでしまう。

そうすると、いくら食べてもお腹が一杯にならない、満足しないという
状態になり、目につく食べ物をすべて食べつくすと、
近くにいる人間を手あたりしだいに襲い、殺して食べてしまう。
このあたりは、日本の「餓鬼」や「ヒダル神」に似ているかもしれません。

ヒダル神


また、自分がウエンディゴになったと思いこむところは、
「犬神憑き」や「狐憑き」との共通点があるようです。
アメリカ先住民は、部族の誰かがウエンディゴにとり憑かれた場合、
火を焚いて太鼓の周囲を後ろ向きに回るなどの儀式を行ったとされます。

さて、このウエンディゴの名をとった精神疾患の一つに、
「ウェンディゴ症候群」があります。最初は気分が落ち込み、
食欲がなくなります。そうして、自分がウェンディゴになったと思って
他人を襲い始める。この場合、儀式で回復しなければ処刑されたようです。

ウェンディゴ症候群の有名な事例としては、カナダのアルバータ州で、
1878年 の冬、雪の中に孤立したスウィフト・ランナーと彼の家族は
食料が尽き、まず長男が餓死すると、ランナーはその遺体を食べ、
さらに妻と残りの5人の子供たちも殺して食べてしまったんですね。

ランナーが殺して食べた家族の遺骨


ランナーは春になって逮捕され、当局によって処刑されています。
この事例なんかは、ウェンディゴが人肉食のタブーと深い関係に
あることを物語っているようです。食料がなくなって、
人を殺して食べることの罪悪感が、ウェンディゴにとり憑かれたと
思い込むことで軽減されるのかもしれません。

さて、話変わって、みなさんはアルジャノン・ブラックウッドという
人物をご存知でしょうか。イギリスの短編ホラー小説家で、
「妖怪博士ジョン・サイレンス」が活躍するシリーズが有名です。
代表作として『いにしえの魔術』 『犬のキャンプ』などがあります。

アルジャノン・ブラックウッド
タイトルなしqqqw

太古から信じられている超自然的な存在が出現する恐怖をモチーフとする
作品が多く、「クトゥルー神話」のH・P・ラブクラフトにも大きな
影響を与えています。また彼は生涯独身で、
秘密結社「黄金の夜明け団」に所属する魔術師でもありました。

ブラックウッドは、1900年代の初めに、上記のアメリカ先住民の
伝説をもとにした『ウェンディゴ』という短編を書いていて、
これも傑作の一つと言われます。なぜイギリス人が、
アメリカ先住民の話を書いたかというと、どうもこのころ、イギリスでは
アメリカ先住民の文化に対するブームがあったみたいなんですね。

有名な「シルバーバーチの霊訓」は、イギリスの心霊主義新聞を
主催していたモーリス・バーバネルという人物が、
高位の霊である「シルバーバーチ(シラカバという意味)」
と接触して、そのメッセージを書き伝えたものです。

シルバーバーチ レッドインディアンの姿を借りている
タイトルなしde

シルバーバーチは霊訓の中で、アメリカ先住民の体を借りていると
述べています。この時代のイギリスの文献を少し調べると、神智学協会など、
あちこちにアメリカ先住民の精神文化の影響が見られます。
インド思想の輪廻などとともに、キリスト教とは異なった叡智として
受け入れられていったみたいですね。

さて、ウェンディゴの影響のもとに書かれた作品としては、
オーガスト・ダーレスの短編『風に乗りて歩むもの』が有名です。
ここで出てくる「イタカ」という精霊は、ウェンディゴと同一視されます。
また、スティーブン・キングの長編『ペット・セマタリー』なんかも、
その系統に連なるものだと思います。

『ペット・セマタリー』には、アメリカ先住民の禁断の土地が出てきてましたが、
作品のテーマである死者の復活は、アメリカで強い勢力を持つキリスト教的には
いろいろ問題があります。そこで、太古の「インディアンの呪い」
をベースにして、小説のストーリーを組み立てているんですね。

さてさて、ということで、ここまで読んでいただいた方がどのくらい
おられるでしょうか。じつはこの話、アメリカのニューエイジ・ムーブメント
までつながっているんですが、もう余白がありません。
それはまた書く機会もあるでしょう。では、今回はこのへんで。

ペット・セマタリー
タイトルなし





無言ルーム

2020.03.26 (Thu)
アーカイブ243

この1ヶ月ばかりの間にすごく気味の悪い出来事があったので、
その話をしたいと思います。
あの、私は30代の主婦で、週2日ビル清掃のパートもやっています。
夢を見るんです。ずっと同じ夢・・・
あ、同じというのは場所や出てくる人が同じという意味で、
もちろん夢の中での時間は進んでるんですよ。 

最初に見たのは正確には29日前です。日記に見た夢の記録を
つけているんです。だから間違いはないです。 
・・・夢の中で、学校の教室みたいなところにいるんです。
あ、学校じゃないかな。座ってるのが個人個人の机じゃなくて長机でしたから、
カルチャースクールか何かのセミナーみたいな感じですね。
夢はいきなり講師の先生の説明を聞いているところから始まったんです。

講師の先生は30代くらいの男の人でした。
・・・夢の中のことなので顔まではっきりおぼえてませんが、
なんとなく30代って気がしたんです。
先生が「ここは無言ルームです。絶対に話をしないでください。
 一言でも声を出すとたいへんなことになりますよ。それから席を立つのも
 やめてください」こうおっしゃったんです。

まわりを見ると、部屋には10人以上の人がいました。4人がけの
長机が4つあってイスは16人分なんですが、ところどころ空いていましたから。
私は前から2列目の右から2番めの席で・・・右隣りは中学生くらいの
ボサボサの髪の男の子、左は70代かなあ・・・上品そうなおばあさんでした。
他の席を見回すのは禁じられてなかったですから、後ろを向いて確認したんですが、
女の人・・・私のような主婦に見える人が多かったと思います。

講師の先生はそれだけ言って出ていかれ、あとは席に座ったまま無言で
過ごすんです。それで・・・不思議なことに夢の中なのに退屈なんですよ。
ふつうは夢の中の時間ってとびとびになってますよね、伸び縮みするというか。
ところがこの夢だと、何もしないでただ座ってる時間が長いんです。変ですよね。
あたりには荷物もないしパンフレット類なんかも置いてない。
自分の指を見たりしてただただ退屈な時間が続くんです。・・・2時間くらいに感じました。

それはものをしゃべりたかったですよ。
でも、言いつけを守らないと大変なことになるのも、なんとなくわかっていました。
そのうち最初の講師の先生がまた部屋に入ってきて、
「時間になりました。みなさんご苦労さんでした」こう言うんです。
するとすぐ目がさめるんですね。いつも決まった時間で朝の5時です。
私は毎日6時半に起きてますので、そこからたいがい2度寝をします。
2度寝したときは夢は見ないんです。見たとしてもぼんやりとした普通の夢・・・

この夢を3日おきに見ていました、正確に3日。これも日記につけてるんです。
だから全部で9回見ているわけです。体調ですか?・・・特に変化はなかったですねえ。
疲れやすいとか病気になるなどのことはありませんでした。
ただ目が覚めたときに「ああ、やっと終わった。退屈だった」と思うくらいです。
それで退屈のあまりに、夢の中のメンバーをずっと観察していました。
私を含めて18人いたはずです。

・・・さっき席が16といいましたが、日によってこない人がいるんです。
私は毎回出席していると思ってましたが、後で考えてみると
夢は3日ごとにしか見ていないので、私が夢を見ない夜も
会は開かれてるのかもしれないんです・・・変ですか、こう考えるのは?
だからのべにして18人。顔はぼんやりしてても、それぞれの特徴が
頭に入ってくるんです。ああ、この人は40代で私と同じように主婦をしている・・・とか。
あと服装はみな普段着で、ジャージとかの人もいました。

それと・・・その場にいる人の共通点がなんとなくわかったんです。
おそらく・・・ですが、この人たちは日中家にいる人たちなんじゃないかって。
隣の中学生の男の子は、不登校って気がしました・・・
おとといのことです。はじめて夢に変化が起きました。
そのときも退屈な時間を我慢していると、急に隣の男の子が立ち上がったんです。
「もうガマンできない。これっていつ終わるんだよ。なんでこんなとこに
 いなくちゃならないんだ。しゃべったっていいだろ。もうこんな夢見たくないよ!」

部屋の前のドアが開いて講師の先生が入ってこられました。白衣を着ていたと思います。
他にそれまで見たことのない白衣の人たちが何人かいました。
「実験の一段階目は終了しました。みなさんご苦労様でした。今日の朝6時です。
6時に◯◯公園のジョギングコース、スタート地点に集合してください、いいですね」
講師の先生がこう叫んでいる間に白衣の人たちが私の席に近づいてきて、
暴れる男の子を抱きかかえてドアの外に連れ出していきました。

目を覚ますと5時きっかりでした。いつものように夢の内容は
はっきり覚えていました。今日の6時に公園にいかなくちゃいけない、どうしても。
そのことが頭に強くありました。
夫も子どももまだ寝ていましたので、そっと起きだして着替えました。
◯◯公園というのは総合運動場で、林の中にジョギングコースがあります。
私の家からは歩いて20分くらいでしょうか。
コーヒーを沸かして頭をすっきりさせてから出かけました。

ジョギングコースに入ったのは6時に5分前、
ゆっくりスタート地点に向かうと人だかりがしていました。
ほとんどが夢の中で知っている人たちでした。パトカーと救急車がきていて、
ちょうど毛布をかけた担架が救急車に運び入れられるところでした。
6時になりました。夢の中の私以外の16人が集まってきているとわかりました。
その他に早朝ジョギングの人たち。

その中の一人が「かわいそうに首を吊ったんだって。中学生みたいよ」と、
誰にともなくつぶやきました。制服の警官が人だかりの前に出てきて、
「何でもないです。みなさんもうお帰りください」と言いました。その警官は
夢の中の講師の先生に似ている気がしました。あまり自信はありませんが・・・
夢の中のメンバーはまるで夢の続きとして禁じられているかのように、
一言も言葉をかわさず、そのままちりじりになって家に戻りました。

・・・それで、気になることが2つあるんです。
一つは、あのジョギングコースはふだんあの時間にあんなに人がいるとは
思えないので、警察が変に疑いを持ったんじゃないかということです。
もう一つは、今晩はあの夢を見る予定の日です。
今日も夢を見るのか・・・夢の中がどう変化しているのか・・・
何よりも私はあの男の子のように叫びだしたりしないだろうか・・・
気になってしかたがないんです。