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「エントロピック重力」とは

2019.08.22 (Thu)
でrt (2)

毎日暑いですね。このところ、いくらかはマシになってきた気もしますが、
ここ大阪は、まだまだエアコンなしに生活するのは不可能そうです。
熱中症は野外だけでなく、室内で起きることもありますので、
こまめに水分をとるなどの対策を心がけてください。
さて、今回は「ヴァーリンデの重力仮説」を取り上げます。

ただ、この話、すごく難しいんですよね。自分の理解範囲をかなり超えた
ものなので、いろいろ間違いがあると思います。なるべく正確に
書くつもりですが、まあ、眉に唾をつけて聞いてください。
もし、明らかな間違いとかがあれば、指摘していただければありがたいです。

エリック・ヴァーリンデ博士
でrt (6)

2009年、アムステルダム大学の理論物理学教授である、
エリック・ヴァーリンデ博士が、「重力は存在しない」とする理論を
発表し、話題を集めました。ニュートンが万有引力の働きを発見したのは
ご存知だと思います。ただし、「リンゴが落ちるのを見て」というのが
本当かどうかはわかりません。おそらく作り話でしょう。

ニュートン以前、われわれはリンゴなど、上にあるものが下に落ちるのは
あたり前だと思っていました。ですが、無重力の宇宙空間では
リンゴは下に落ちません、というか、そもそも上下という概念がないんですね。
地球上では、リンゴの持つ質量と地球の質量、これが互いに引き合って、
われわれにはリンゴが地面に落ちるように見えます。



さらにその200年以上後、アインシュタインが相対性理論を発表し、
重力理論を書き換えました。では、もしヴァーリンデ博士の主張どおり
重力はないのだとしたら、リンゴは何の力で落ちるんでしょうか。
これは、「エントロピックな力」として説明されています。

ですから、ヴァーリンデの重力理論は別名「エントロピック重力理論
(Entropic gravity theory)」とも言うんです。エントロピーはご存知だと
思います。熱力学において発見された、「乱雑さ」を表す物理量です。
例えば、100℃のお湯と10℃の水を混ぜると温度は下がりますよね。
このとき、エントロピーは増大することになります。

でrt (4)

もし、われわれの住む宇宙空間が閉じている(他の世界との
熱交換がない)とすれば、どんどん温度は均一化していき、エントロピーは
増大を続けて、やがて「宇宙の熱的死」を迎えるという予測があります。
で、エントロピック重力理論を思い切り単純化して言うと、このエントロピー
による力があらゆる空間に働いていて、木からリンゴが落ちる。 

先ほどの例だと、100℃のお湯の中では水分子が活発に動いていて、
それが動きの悪い10℃の水分子にあたって弱められ、全体として温度が
下がる。あと、ゴムを引っぱって手を離すと戻ってきますが、
これもエントロピックな力と言えます。われわれが重力だと思ってるのは、
そういうエントロピーが動く力だというわけです。

えー、そんなバカなと思われたんじゃないでしょうか。では、この理論、
世界の物理学者にどう受けとめられたかというと、じつはそうバカには
されなかったんです。ありえるかも、と考えた物理学者も一部にはいました。
どうしてかというと、アインシュタインの重力方程式は、熱力学の方程式と
強い相関があるからです。このことは以前から知られていました。

でrt (1)

さらに、熱力学のエントロピーと情報理論にも関連性があります。
物理学におけるエントロピーを、情報理論の一応用とみなすべきだと
主張する研究者もいるんです。さて、ここで少し話を変えて、
「ホログラフィック原理(holographic principle)」というのが
ありますよね。これも、エントロピック重力理論とつながっています。

ホーキング博士らが、ブラックホールに落ちた情報について問題を
提起しました。ホーキング理論では、大きなブラックホールは長い時間をかけて
蒸発してなくなります。では、中に落ちたものの情報は保存されるのか。
世界中の理論物理学者がそれについて考え、一定の結論が出ました。

「ホログラフィック原理」のイメージ
でrt (5)

ブラックホールはいずれ蒸発するが、情報は保存される。ただし、
その情報量はブラックホールの表面積に比例する。
これ、すごく意外な答えなんですが、計算結果は間違っていません。
ブラックホールの体積に比例すると考えるのが普通なのに、表面積、
つまり、情報は2次元面に保存される。

ここから話を広げて、われわれの宇宙を一つの巨大なブラックホールとみると、
この宇宙で起きるあらゆる出来事の情報は、宇宙のまわりをとりまく
(ちょっと違いますが、まあ)事象の地平面にすでに書き込まれている。
われわれが3次元だと思っているのは、じつは2次元の情報が投影された
幻影(ホログラフィック)である、とするのがホログラフィック原理。

ダークマターとは、銀河を回転させる力の源となる「見えない」質量
sでw

で、ホログラフィックとして物が動いているように見える源が、
エントロピックな力というわけです。みなさん、これ、どう思われますか。
ヴァーリンデ博士は、翌2010年、エントロピック重力理論を適用すると、
銀河を回転させている仮想的な質量である暗黒物質(ダークマター)も、
想定する必要がなくなるという論文を発表しています。

さらに、2016年、オランダ、ライデン大学の研究チームが、
エントロピック重力理論が実証データでも一致することを裏づけ、世界に
衝撃が走りました。ただし、2017年、アメリカ、プリンストン大学の研究で、
矮小銀河の自転速度に関して、ヴァーリンデの重力仮説に反する証拠が
見つかったと発表し、現在、事態は混沌としている状況です。

『マトリックス』
でrt (3)

さてさて、映画の『マトリックス』では、われわれ人間は
ヴァーチャル世界にいて、情報によって動かされていましたが、
もしかしたら実際に、ホログラフィック世界の中で、エントロピックな力で
動いているのかもしれません。その可能性は絶対にないとは言えないんですね。
では、今回はこのへんで。




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知能と50ポンド紙幣

2019.08.14 (Wed)
イギリスの新しい50ポンド紙幣の肖像に、コンピューター科学の先駆者で
暗号解読者のアラン・チューリング(1912~1954年)が採用される
ことが明らかになった。イングランド銀行総裁が15日発表した。

チューリングは第2次世界大戦中、ナチス・ドイツの暗号解読に
多大な役割を果たし、連合国の勝利に貢献した。イングランド銀行の
マーク・カーニー総裁は、マンチェスターの科学産業博物館で
新50ポンド札の顔を発表。「アラン・チューリングは傑出した数学者で、
その業績は現在の私たちの暮らしに巨大な影響を与えた」と述べた。

(NEWS JAPAN)

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紙幣の顔になるアラン・チューリング

今回はこういうお題でいきます。なるほどねえ、アラン・チューリングが
紙幣の顔になるわけですか。イギリスも思い切ったことをしましたねえ。
自分が思うに、これは彼の業績に対する評価とともに、
贖罪の意味もあるんじゃないかと思います。
どういうことなのかは、おいおい書いていきます。

多くの顔を持つ人物でしたが、基本的には数学者、論理学者ですね。
仮想的な計算機で、現在のコンピュータの基礎になったチューリングマシンを
設計したことで知られ、「人工知能の父」とも呼ばれます。
また、機械が知的であるかどうかを判定する「チューリング・テスト」も
考案しています。それについては後で詳しく述べます。

有名な業績としては、第2次世界大戦中、ナチスドイツの暗号、
「エニグマ」の解読に取り組み、解読機ボンベを作成して成功したこと。
これにより、連合軍側の勝利が2年早まったとまで言われ、
戦争の英雄としても評価されています。

ナチスドイツのエニグマ暗号機
sssdert (3)

今回の選定にあたっては、近年亡くなったスティーブン・ホーキング博士など
12人の候補者の中から選ばれたんですが、選考理由として、
「現在のわれわれの生活に大きな影響を与える研究をおこなった、
非常に優れた数学者」との声明がイングランド銀行から出されています。

ちなみに、イギリスの通貨の正式名称は「スターリング・ポンド」で、
50ポンド札は最高額ですね。日本円にして6400円くらいです。
これまでの50ポンド札はジョン・フーブロン、
日本では知られてない人物で、自分も初めて名前を聞いたんですが、
イングランド銀行の創始者のようです。

さて、たいへんな天才であったチューリングですが、晩年は不幸でした。
1952年、自宅に泥棒が入ったことがきかっけで、
18歳の青年との同性愛関係が発覚し、逮捕されてしまうんですね。
窃盗の被害者だったのに、これは運が悪いとしか言いようがないです。

チューリングを取り上げた2014年の映画
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当時のイギリスでは同性愛は違法で、刑務所に服役するかわりに、
大量の女性ホルモンの強制投与を受けることになります。
これにより男性機能が失われる、化学的な去勢措置です。
うーん、でもこれ、人権的に問題があるんじゃないでしょうか。

その2年後の1954年、41歳で自宅で死去。検死の結果は青酸カリ中毒で、
自殺と断定されます。イギリスで同性婚が法律で認められたのは
2005年、これとともに、チューリングへの政府の公式な謝罪を
求める運動が高まり、2009年、当時の首相が「非人道的な扱い」
を謝罪、2013年には、エリザベス女王が死後恩赦を与えています。

イギリスのLGBTデモ


おそらくですが、チューリングが最高額紙幣である50ポンド札の
顔に選ばれたのは、このあたりのことも関係してると
自分は思うんですよね。社会的少数者に対する配慮があったんじゃ
ないでしょうか。さて、ここから本題に入っていきます。

チューリング・テストとは、「ある機械が知的かどうか
(人工知能であるかどうか)を判定するためのテスト」で、一人の人間と
一つの機械が、それぞれ別の部屋の人間の判定者と文章によって会話をし、
判定者が人間と機械を区別できなかった場合、
その機械はテストに合格したことになります。

ただ、このテストについて、哲学者の間から批判が続出しました。
有名な哲学者のジョン・サールが、「中国人の部屋」という思考実験を
つくって反論しています。中国人の部屋とは、「ある小部屋に小窓があり、
中に中国語を理解できない人物がいる。外から小窓を通して中国語を
書いた紙が差し込まれてくるが、部屋の中の人物はそれに対して

「チューリング・テスト」
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どう答えればいいかすべてが書かれたマニュアルを持っている。
彼はマニュアルにある中国語をそのまま紙に書き写し、部屋の外に
出してやる。すると、中の人物はまったく中国語を理解していないのに、
外の人々は、部屋の中には中国人がいると思いこむ」こんな感じです。

これだと、中の人物が中国語で考えることができなくても、
外からは知能を持ってるように見えてしまうんですね。同じことが
コンピュータでも成り立ち、知能を持たなくても会話ができるのではないか
という反論になっているわけです。これ、みなさんはどう思われますか。

さて、この他にも、チューリング・テストには、判定するのが人間なのは
おかしい。人間の判断はあいまいであり、客観的な評価とは言えない
といった反論もあります。ちなみに、2014年イギリスで行われたテストで、
ロシアのAIが30%以上の確率で複数の判定者たちに人間と間違われ、
史上初めての「合格者」となりました。

思考実験「中国人の部屋」
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ただ、どうでしょう、基準が甘い気もします。7割近い人が「人間ではない」と
見破ったわけですからねえ。最後に、これについての自分の考えを述べると、
「知能とは何か」という定義がはっきりしていないと思うんです。
人間が会話するとき、完全に知能だけで行ってるはずがないですよね。

「この人に気に入られるように話したい」とか「自分をよく見せたい」、
「相手をやり込めたい」など、そこには、個人の感情が入ってるんじゃ
ないでしょうか。人間の場合、知能と感情は切り離せない気がするんです。
そしてその感情は、自己保存や種保存の本能などから
きているものが多いと思います。

さてさて、ということで、人間は本能があり、感情があり、その上に
知能が構築されている。ですから、コンピュータが知能を持つためには、
前提として、自我を持ち、本能を持っている必要があるんじゃないでしょうか。
ま、素人の考えたことですので、話半分で聞いておいてください。
では、今回はこのへんで。

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癌ビジネスの実態

2019.08.13 (Tue)
東京の健康食品販売会社の社長ら4人が、「がん細胞が自滅する」
などと効能を宣伝し、がん患者に健康食品を高額で販売していた
として逮捕されました。

同社は「フコイダン」という成分が含まれた原価約3000円の商品を
5万円を超す値段で販売。3年間に28億円余りを売り上げていました。
このように、がん患者さんを相手に医学的根拠のない治療を高額で提供し、
利益をあげる業者は後を絶ちません。
(山本健人氏のブログ)

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今回はこういうお題でいきたいと思います。これは個人ブログからの
引用で、ブログ管理人の山本健人氏は消化器外科専門医ということです。
それにしても、原価3000円を5万円で売るのはボロい商売ですね。
ただ、これも健康食品として売る分には罪にはなりません。

医薬品ではない食品を、「癌が治る」 「癌に効果がある」こういう
宣伝文句で売った場合、薬事法に違反するんです。ちなみに
フコイダンとは、主に海藻に含まれるヌルヌルした成分のことです。
実験用マウスなどでは、癌に対する効果は認められるものの、
人間での治験は行われていません。

さて、何から書きましょうかね。はたしてこのフコイダン、癌に効果があるのか。
自分はないだろうと思ってます。もし本当に癌に効果があるなら、
世界の巨大製薬会社が黙ってるはずはありません。彼らは、
アマゾンの奥地に分け入ってでも、薬効成分のあるものを探し求めています。

今井雅之氏 テレビで病気を明らかにした途端 さまざまな代替療法の案内が送られてきたそうです
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当然、フコイダンについても実験を重ねているはずです。そのうえで、
これは使い物にならないと放棄した。これで数百億円かかる治験を
実施しても損になるだけと判断したんでしょう。実験用マウスで薬効効果が
認められたという成分はいろいろあります。しかし、じゃあそれが
人間にも効くかというと、そこには大きな壁があるんです。

マウスの場合、ただのお茶(緑茶)やショウガエキスを注射しただけでも、
癌が消えたり縮小したりするんです。フコイダンだけでなく、
アガリスク(キノコ)、メシマコブ(キノコ)、プロポリス(ミツバチが
巣に塗る成分)、ブロリコ(ブロッコリー由来の成分)、霊芝(キノコ)
深海鮫エキスなどについても同じです。

まあ、これらの健康食品には即時的な副作用はないだろうと思われます。
ですが、本当に副作用がないかどうかはわかりません。ニンジンに多く
含まれるβ-カロテンについて、アメリカで大規模な臨床試験が行われ、
その結果、β-カロテンを主成分としたサプリメントを常用していた群で、
喫煙者では肺癌の罹患率が上昇していることがわかったんです。

小林麻央氏 糠風呂をはじめ いろいろな民間療法をやられていたようです
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日本でも、癌にはニンジンジュース、野菜ジュースというのが浸透していて、
乳癌で亡くなったアナウンサーの小林麻央さんも飲んでいたようですが、
効果がないどころか、かえって癌リスクが高まってしまう。
これは考えてみれば当然で、ある成分の過剰摂取が体にいいわけがないです。
体液のバランスが崩れて細胞を傷つけてしまうでしょう。

さて、では、どうしてこういう高額な健康食品に手を出してしまう人が
いるんでしょうか。これはいくつも原因が考えられます。まず、
ふだんから自然食品などの信奉者である場合。アップル社の共同設立者の
一人であるスティーブ・ジョブズ氏は、IT企業に身をおいていながら、
ニューエイジ思想を実践していました。

ITとニューエイジって相性がいいんですね。彼は膵臓の神経内分泌腫瘍に
かかっていると診断され、手術を勧められたものの拒否。絶対菜食、ハリ治療、
ハーブ療法、瞑想などで癌を消そうとしました。ですが、再検査で癌の
増大が判明して、結局は手術を受けます。最後は肝臓移植までしたんですが、
最終的に癌のために亡くなります。

スティーブ・ジョブズ氏 彼ほどの資産家でも転移・再発した癌は治りません
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まあ、自分の主義主張で、最後まで西洋医学の治療を拒んだというなら
それは一つの生き方でしょうが、ジョブズ氏は最初に手術しなかったことを
強く後悔していたと言われます。もちろん、早期に手術したとしても、
完治できたかはわかりません。アメリカにはこういう自然主義者は
多いものの、日本ではそれほどの数はいないと思われます。

2つめは、癌と診断され、ショックのあまり何かできることはないかと
すぐにネットを検索しまくったケース。ネットには、その手の健康食品、
代替療法、民間療法などの広告があふれていて、ショック状態にある人は
たちまちひっかかってしまうんです。あまりに氾濫してしまっているので、
とても取り締まるのは不可能という気がします。

膀胱癌にかかった元プロボクシングのチャンピオン、竹原慎二氏も
このケースで、ネットで見つけたフコイダン、1本3万のものを
とりあえず24本買ったそうです。その心理はよくわかります。
竹原氏は余命1年を宣告されたものの、膀胱摘出、再建の
最新治療を受け、現在もお元気です。

膀胱癌を克服した竹原慎二氏
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3つめ、これが最も深刻な理由だと思いますが、再発・転移してしまった
ステージⅣの癌は、現代医学では治す方法がないことです。
抗癌剤治療は症状の緩和、延命が目的です。技術的な限界点であり、
どうしようもないんですが、患者にしてみればあきらめきれない、
やはり完治したいですよね。

そこへ、代替療法の業者が「治りますよ」 「いっしょに治しましょう」と
声をかけてくれば、怪しいとは思いながらも話を聞いてしまう。
そうすると向こうはプロですから、さまざまな手口を使って
お得意様に引き込んでいく。その結果、何百万から千万以上の
お金を使って、最終的には亡くなります。

自分も目撃したことがあるんですが、そういう業者は大病院のPET検査室の
前の待合室にいて、患者の家族が深刻な顔で座っていると、「たいへんね
・・・わかりますよ」などと言って近づいていくんです。その業者は、
1本5万円、月40万円以上かかる「癌の治る水」を売っていました。

アメリカの病院に付随したチャペル
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死人に口なしですし、家族もそういうのに引っかかったのが恥ずかしくて
表沙汰にできないという構図があるんです。自分はオレオレ詐欺と同じような
もんだと思ってますが、問題なのは、現役の、あるいは退職した大学教授などが
お金をもらって業者に名前を貸していたりすることです。医学博士、元〇〇大教授、
そういう名前が出てれば、ころっと信用してしまう人もいます。

さてさて、長くなってきたのでそろそろ終わりますが、解決は難しいですね。
一番いいのは「健康保険で行う標準治療で癌が治ること」それができれば、
代替療法など一掃されるでしょう。ですが、癌は手強い敵です。
取り締まりを強化すればいいと思われるかもしれませんが、
健康食品としてそれらを売るのを止めることはできません。

あと、日本人の死生観の問題もあります。ほとんど無宗教の日本人は、死を忌避し、
ふだんから話題にすることを避け、見ない触れないようにしています。自分の死を
受容できない人がとても多い。だから逆に、心霊の話が流行ったりもします。
自分がアメリカにいたとき、病院内にチャペルがあり、余命宣告を受けた人が祈りを
捧げているのを見ました。死は神のおそばに行くことなんですね。
では、今回はこのへんで。






癌治療の現状

2019.08.10 (Sat)
国立がん研究センターは8日、平成24年にがんと診断された患者の
3年後の生存率は、がん全体で72・1%だったと発表した。
23年の集計(71・3%)からやや改善した。膵臓がんや胆嚢がんの
生存率は他のがんと比べると低く、新たな治療法の開発など
難治性がん対策が課題となった。

全国のがん診療連携拠点病院など286施設の患者約34万人を分析。
15部位のがんについて、がん以外の死亡の影響を取り除いた
相対生存率を算出した。
(産経オンライン)

今回は科学(医療)ニュースから、こういうお題でいきます。
最近よく、「癌は治る病気になった」という言葉を聞きます。
たしかに、下の表にみる すべての癌種全体の5年生存率は66%強
ですので、癌患者の3人に2人は5年間生存することができると言えます。

キャプチャ

ただし、ここは誤解しやすいところですが、5年生存=完治または完全寛解
ということではありません。その患者がもし治療開始から5年と1日で
癌のために亡くなったとしても5年生存率に含まれますし、
6年目の初日に全身転移の末期状態だとしても、その中に入ってしまうんです。
ですから、癌患者の3分の2が治るわけではない。

それから、癌にはステージがあるのはご存知だと思います。
多くの癌種で、ステージⅠ~Ⅳに分類され、それがさらに細かくⅡa、Ⅱbの
ように分けられている場合もあります。このステージの判定のしかたは、
やはり癌種によって違います。ステージごとの生存率も出ていますので
興味をお持ちの方は検索してみてください。

患者の腹腔内に抗癌剤を投与して腹膜播種を治療


これも一概には言えないんですが、多くの場合、ステージⅣは、
遠隔転移が見られるケースです。例えば肺癌であれば、それがもう一方の肺、
あるいは脳や骨などに転移してしまっている。この場合、癌細胞が血液や
リンパ液の中にあるので、手術を行っても意味がありません。
無理に手術をしても、かえって寿命を縮めることになってしまいます。

癌は全身病になってしまっているので、抗癌剤治療を受けるしかありません。
ただし、大腸癌などでは、転移巣を手術して治癒が得られる場合があります。
ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は、大腸癌の原発巣、肝臓転移、
肺転移を次々に手術して、今は元気にしておられます。癌細胞は転移しても
できた部位の性質を受けつぎ、大腸癌は他にくらべて大人しいんです。

抗癌剤の癌種ごとの効果 『がん診療レジデントマニュアル』より


さて、癌の場合、「手術、放射線、抗癌剤」が3大治療と言われてきました。
ただし、急性白血病などごく一部の癌種をのぞいて、抗癌剤で完治が
得られることはありません。(上図参照) ですから、完治を目指すためには
手術と放射線が2大治療なんです。言葉は悪いですが、野球に例えると
抗癌剤治療は敗戦処理に出てくるピッチャーみたいなもんです。

日本の癌治療は、その歴史から、手術偏重になっているとも言われます。
欧米の先進国に比べて放射線専門医の数が少ない。でも、これはだんだんに
変わりつつありますね。治験により、手術でも放射線治療でも効果は
ほとんど変わらないというエビデンスが増えてきています。

中村勘三郎氏
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歌舞伎の中村勘三郎さんは、2012年、食道癌の手術後、合併症と思える
肺炎(急性呼吸窮迫症候群)を併発して亡くなりました。食道癌の
標準的手術は開腹、開胸で食道を切除し、胃を引っぱり上げて代用する
大手術で、周囲のリンパ節も広範囲に切除します。

その間、肺は空気にさらされることになります。勘三郎さんは喫煙者でしたので、
肺が弱り、誤嚥などの合併症が起きる可能性はかなり高いんです。
この場合、もし放射線治療だったら、完治できたかはわかりませんが、
もっと延命できていただろうとは思います。

さて、「抗癌剤は効かない」 「抗癌剤は毒である」こういった内容を含む書籍が
書店に行くと目につきます。では、抗癌剤ってホントに効かないんでしょうか。
抗癌剤には大きく3つの役割があります。① 手術後の再発防止に用いる
② 手術(放射線治療)の前に使用して効果を高める。
③ 転移・再発した癌を治療する。

この①②は完治を目指すための抗癌剤使用です。ただ、①は再発防止といっても
再発確率は多くの癌種で数%下がるだけで、効果がなく抗癌剤の副作用を
受けるだけということも十分ありえます。②は、腫瘍が血管を巻き込んでいて
手術ができないのを、抗癌剤で縮小させて根治手術に持ち込むなどの場合。また、
化学放射線治療といって、抗癌剤と放射線を同時に行う研究も進んできています。

抗癌剤
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問題は③です。転移・再発、あるいは最初から手術非適応の癌は、
抗癌剤治療では治りません。わずかな延命が得られるだけなんです。
最近は、治療にあたって「これは完治をめざすのではなく、延命のためです」
そう宣言してから抗癌剤治療が始まるケースが増えてきました。
病院側が正直に事実を言うようになった。

でも、患者にしてみれば治りたいですよね。延命では満足できません。
そのため、食事療法やクリニックでやっているNK、樹状細胞などの
免疫療法、あるいはサプリメント、金の延べ棒で患部をこするなどの
怪しい民間療法・・・そういうものに手を出す人がたくさんいるんです。

金の棒による療法 川島なお美さんが受けたとされます


「現代の科学、医学では転移・再発した癌は治らない」このことが
問題を難しくしています。「がん難民」という言葉がありますよね。
抗癌剤治療は、ファーストライン、セカンドラインとだいたい3種類くらい
行われますが、癌細胞が耐性を獲得して効かなくなってしまう。
で、病院に「もう治療法はありません、緩和ケアをお勧めします」と言われる。

でも、そうなっても体はまだまだ元気で、自覚症状をあまり感じてない
人も多いんです。そういう人たちが治療法を求めてあちこちさまようのが
がん難民です。その道々、効果のはっきりしない代替療法を試してみる。
しかし、やはり癌は治らず、高額のお金をかけたあげく亡くなってしまう。
それが今の癌治療の実態です。

さて、ここからの話は少し専門的になりますが、なるべくわかりやすく
書くようにします。下の図をごらんください。これは肺癌に対する治験結果で、
全身状態が悪くないステージⅣの患者 計878人に対して行われたものです。
グラフの上は、カルボプラチン+パクリタキセル+アバスチン( ベバシズマブ)
という3種の抗癌剤の混合群。



下は、カルボプラチン+パクリタキセルの2種を使って治療した群です。
無治療の患者との比較はできません。それは人道上許されないんです。
で、2種類の生存中央値(半分の患者が亡くなる期間)が10.3ヶ月
なのに対し、3種類では12.3ヶ月になっています。アバスチンを
プラスすることで、2ヶ月の延命期間の延長が認められたわけです。

このグラフは恐ろしいですよね。治療を開始してすぐ、どちらの
グラフも数が減りはじめています。これは抗癌剤の副作用によって
短期間に死亡する人がいるためです。全身状態が悪くない人が対象なので、
癌による死亡ではありません。また、上のグラフは43ヶ月で0になりますが、
これは患者全員が死亡したということです。下は0にはなってないですが、
長期生存の患者がいるのではなく、そこで調査をやめたんですね。

癌細胞のタイプは同じ肺癌でも人によって違いますので、抗癌剤が
よく効く人もいれば、ほとんど効果がないという人もいます。効果がある人は
延命につながるでしょうが、そうでない人は、苦しい副作用だけを受けて
毒性で寿命を縮めます。また、抗癌剤は癌に対してよく効いているが、

副作用が強くて治療を続けることができないケースというもあり、
その場合は、治験から退場ということになります。
寿命を伸ばす人、縮める人、それを平均して、この治療を受けた場合、
12.3ヶ月の生存中央値になるというのがエビデンスです。

「重粒子線治療機」 初期の頃は何にでも適用して重篤な副作用を引き起こした


この結果を受けて、病院からは「この治療を受ければ約1年延命できます」
「あなたの余命は治療して1年程度です」と言われることになります。
癌種によっては、もっと延命期間が長いものもありますが、
だいたいこれが抗癌剤の実力と見ていいでしょう。みなさん、どう思いますか。
癌という恐ろしい相手に立ち向かうには、あまりにも非力だと思われませんか。

もちろん、抗癌剤で延命を図りながら新しい治療法が開発されるのを
待つということはできますし、実際にそうしている人もたくさんいます。
ただ、現状のままでは、抗癌剤に多くは期待できません。制吐剤などが
進歩したと言っても、まだまだ副作用は激烈で、QOLも大きく下がります。

さてさて、ということで、長くなってしまいましたが、癌治療の現状について
書いてみました。日本人の2人に一人が癌にかかり、3人に一人が死亡する
という統計になっています(男性はもっと多い)。人ごとではありません。
画期的な治療法が開発され、癌が撲滅されることを期待したいですね。
では、今回はこのへんで。

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食品のオカルト

2019.08.07 (Wed)
牛乳などの乳製品については、アメリカで賛否両論が起こっています。
日本の農林水産省に相当するアメリカ農務省は、乳製品は健康に良いと主張し、
食事ごとに摂取することを推奨しています。これに対して、ハーバード大学の
研究者たちは、「乳製品の積極的な摂取を勧めるエビデンスはない」
と否定しているのです。
(文春オンライン)

weeertyu (1)

今回は、科学ニュースからこういうお題でいきます。なかなか難しい話ですね。
自分は栄養学なんかはまるっきり素人ですので、今回の内容は
話半分程度で聞いていただけたらと思います。何から書いていきましょう。
まず、牛乳のことからにしましょうか。

自分はアメリカの中西部に2年ほど住んでたことがあるんですが、
アメリカ人ってすごく牛乳を飲むんですよね。当時自分がバイトしてた
スーパーに、毎日牛乳を買いにくる50代の白人のおばちゃんがいまして、
その人は身長180cm弱、体重120kgくらいでした。

で、向こうの容器はガロン表示なんですが、毎日約6Lの牛乳を買って
いきました。そこの家は4人家族だったので、1日に一人平均
1.5Lの牛乳を飲んでるわけです。アイスクリームも大量に
買ってましたので、おそらく食事のすべてがそういう量だと思われ、
ああ、こりゃ太るよなあと納得して見てたんです。

乳製品の摂取量は、日本人は世界の中でも少ないほうです。
ヨーロッパの国と比較して3分の1、アメリカと比べても2分の1以下です。
ヨーロッパのほうは、牛乳というより生クリームやバター、チーズなどが
多いんだと思います。ですから、アメリカなどの国の分析が、
必ずしも日本人にあてはまるわけではありません。

クリックで拡大できます
weeertyu (3)

少し前、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関が、
ハムやソーセージなどの加工肉や、牛や豚などの赤肉を毎日食べ続けると、
発癌リスクが特に大腸癌において高まると発表し、日本でも話題を集めました。
ですが、日本は世界的に見て最もこれらの摂取量の低い国の一つで、
それほど気にする必要はないという反論もすぐ出てきました。
食生活、食文化の違いがあるので、単純に世界との比較はできないんです。

牛乳を含む乳製品については、昔から前立腺癌や乳癌など、ホルモンに関係した
癌の発症と関連があるのではないかと指摘されてきましたが、
近年になって、乳製品を多くとる人は、前立腺癌で7%、
卵巣癌で13%リスクが高まるという論文が出されています。

それにしても、ハーバード大学はよくやりますね。アメリカ農務省が
食事のたびに牛乳をとることを推奨しているのは、おそらく向こうの
畜産団体からの圧力が理由の一つとしてあると思われます。
それに対して真っ向から異を唱えているわけです。

ハーバード大医学部
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ハーバード大学では以前にも、アメリカで販売されるサプリの典型的な成分である
オメガ脂肪酸とビタミンDについて、中高年の人4万人を対象にした大規模な
治験を行い、どちらも癌の予防、心血管疾患の予防、そして死亡数に影響が
なかったことを明らかにしました。つまりまったく効いていない。

一般的に、食品の健康に対する効果を研究する場合、その資金は食品会社や
生産者団体から出されることが多いんですね。例えば、
チョコレートの生産者団体が資金を出して、チョコレートの健康に対する
影響を調べる。その場合、研究者は資金をもらってるもんだから、
どうしてもその団体に有利なほうに結論が傾きがちです。

ですから、「○○食品は健康にいいと研究者が発表」みたいなニュースは、
眉に唾をつけて見ることが大切です。上記のニュースで、ハーバード大が、
力のある生産者団体に対してはっきりものが言えるのは、アメリカの税制が
日本とは違っていて、主に卒業生でしょうが、大学に一般人からの多額の
寄付が集まるためもあるんです。お金をもらってないから正直なことが言える。

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さて、食品と健康について、例えば「コーヒーは体にいい・コーヒーは体に悪い」
という相反した内容の話題が出され、消費者が混乱する場合があります。
これ、どっちが正しいんでしょうか。じつは両方とも正しいんですね。
コーヒーは刺激物で胃に悪いが、肝臓にはよいという具合に、
人体は複雑ですので、さまざまな形の影響があっても不思議ではありません。

トータルしてどういう影響があるかなんて、不確定要素が多くて
調べようがないですよ。ただ一つ言えるのは、さまざまな食品を少しずつ
バランスよく食べるのがいいだろうということです。自分はアクアを
趣味にしていて、水槽で水草を育てたりもしています。植物の3大栄養素は
窒素・リン酸・カリウムで、その他に微量のミネラルなども必要です。

で、これがすごく複雑なんですね。ある成分はイオンの形でないと吸収
できないとか、単体では吸収されにくく、吸収率を上げる別の成分といっしょに
与えなくてはならないとか、とにかく難しい。人間の体も同じで、ある成分を
そのままとっても、吸収されずすぐに排出されてしまうことも多いんです。
ですから、体にいい成分を含んだサプリが、必ずしも効果があるとはかぎりません。

さまざまなサプリの中には効果の怪しいものも
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今、糖質制限が流行っていますよね。ご飯やパンなどの炭水化物を極力減らして、
その分を他の食品でおぎなう。たしかにこれをやれば体重は減ります。
ダイエット効果は実証されてますが、極端な糖質制限が体にいいかといったら、
よくはないでしょう。炭水化物は人体に必要な栄養素です。ただまあ、
それを承知で、どうしても痩せたいからやるというのは個人の自由ですが。

さてさて、引用ニュースに戻って、ハーバード大学の研究者たちによる推奨では、
牛乳は1日1~2杯、ヨーグルトは170~450グラムまでを
摂取の上限量としているようです。あたり前の結論で、アメリカ人は
常識的な量を飲んだり食べたりしなさいよ、ということなんですね。

ということで、食品についての研究にはかなり怪しいものも多いんです。
自分はなるべく、どっからその研究資金が出ているかをみるようにしています。
くり返しになりますが、食で健康になるためには、できるだけ多種の食品を
少しずつ食べることだと思います。では、今回はこのへんで。

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