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「免疫力」信仰は危ない

2021.02.13 (Sat)
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今回はこういうお題でいきます。科学ニュースのカテゴリですね。
この記事、おそらく読んで反発される方もいるんじゃないかと
思いますが、まあ、あくまでbigbossman個人の考えですので、
そこはご承知おきください。

さて、ネットには「免疫力アップで健康に」とか「免疫ががんを
やっつける」とか、そういう記事が多いですよね。免疫治療を
しているクリニックの広告も目立ちます。最近は youtubeなどの
動画サイトの広告にもかなり進出してきていて、
儲かってるんだろうなと思います。

では、免疫って何なんでしょう。ネット辞書を引くとこう出てきます。
「体内に病原菌や毒素その他の異物が侵入しても、それに抵抗して
打ちかつ能力。また、異物と反応する抗体を作って発病をおさえる
抵抗力を持つこと。転じて、物事がたび重なるにつれて
慣れてしまうこと」なるほどね。

これ自体はたいへん正しいですが、あたり前ですよね
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「転じて」以下の部分は、「最近、妻の小言に免疫がついた」
みたいな感じで使われるんでしょう。みなさんが風邪をひいたとき、
くしゃみや鼻水、発熱をしますが、これは風邪のウイルスが
症状を起こしているというより、自己免疫が風邪のウイルスと戦った
結果、起きるものです。体温が高いほうが免疫が有効に発揮されやすい。

こう書くと、免疫ってすごくいいもんだと思われますよね。たしかに
そうです。もし免疫がなくなると、そこらにありふれてる常在菌に
感染して、すぐに死んでしまいます。免疫不全におちいった場合、
無菌室で厳重に管理されなくてはなりません。

でも、免疫が諸刃の剣であることは、医学的には常識です。
今回のコロナ禍ではワクチンに注目が集まっていますが、外から
抗体を注射して自己免疫を働かせ、ウイルスを撃退するための
ものです。また、コロナが重症化する原因の多くは
サイトカインストームで、いわば自己免疫の暴走です。

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これはハチに刺されたときなどにも起きます。1度目に刺されて
体内に抗体ができ、2度めに刺されたときに免疫が暴走を始める。
アナフィラキシーの症状が出てから心停止までの時間は15分という
報告もあり、それだと助かるのは難しいですよね。

自己免疫性の疾患はたくさんあります。軽微なものとしては
花粉症。体内に入ってきた花粉を自己免疫が攻撃することで起こる
アレルギー反応の一つです。さらに、アトピー性皮膚炎や
関節リウマチなどもそうですね。膠原病の一つで、
炎症性自己免疫疾患です。辛く苦しい症状が特徴ですね。

正常細胞とがん細胞はここまで違いはないので、誤解をまねきやすい
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また、自己免疫性肝炎、すい炎などは、死にいたる可能性もあります。
で、これらについては、どうして発生するかの機序はほとんどわかって
ないんです。原因が不明なので、対処療法を行うしかない。全体として、
自己免疫性の疾患で亡くなる人は、かなりの数がいると思われます。

人間の持つ免疫機能は複雑系の最たるもので、仮に全体像が100
だとすれば、現状の科学、医学では3か4程度しかわかっていないと
自分は考えています。自然科学の中でも数学が適用できない分野の
歩みは遅々として、試行錯誤をくり返しながら少しずつ知見を
深めていくしかありません。医学は人体実験ができませんから。

さて、上でも少し書きましたが「免疫力を上げてがんを撃退する」
これって本当にできるんでしょうか。自分はきわめて懐疑的です。
がんは遺伝子の突然変異によって起こります。こう書くと、
まったく違った細胞ができるように思われがちですが、がん細胞は
正常細胞とほとんど変わりません。ほんの一部が違うだけ。

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細菌やウイルスなどの外部からの侵入者は、人間の細胞とは
まったく違うものです。ですから、リンパ球などが敵と認識して
攻撃できる。ところが、がん細胞はほとんど同じですので、
免疫細胞が認識できない。まあ、がんにかからないようにするため、
免疫力を高める生活をするというのなら、ありかもしれません。

ですが、いったんがんができてしまった場合、自己免疫で治癒に
持ち込むというのは不可能だと思います。だって、がんはゼロから
できるわけですが、免疫ががんを治すんだったら、そのときに
どうして消してしまえなかったんでしょうか。また、がんは
免疫細胞をごまかすさまざな手練手管を持っています。



オブジーボ、キートルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬は、
このがん細胞が免疫をだます仕組みを破壊するものです。
自己免疫ががん細胞にたぶらかされて攻撃のブレーキを
踏んでしまっているのを解除する。ですから、効く人には
劇的に効くんですが、副作用で免疫暴走が起きたりもします。

医師の近藤誠氏は、がんの免疫治療に批判的で、「体内で毎日がん化が
5000例は起きていて、それを免疫細胞が殺しているというのは
根拠がない」と著書で書いています。自分は、近藤氏のがんもどき理論は
馬鹿げていると思いますが、この発言は評価しています。がん細胞で
できてすぐ死ぬものが多いのは事実ですが、

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おそらくその手のがん細胞は、遺伝子変異により初めから生きられない
ようにできている。あ、かなり長くなってきました。以上のような理由から、
自分は「免疫力を高める」という考え方には批判的です。もちろん、適切に
運動し、バランスのとれた食事、ストレスをなくし よい睡眠をとるのは
大切なことですが、有効に免疫力を高める方法は現状ではわかっていません。
たんにリンパ球の数が多ければいいというような、単純な話ではないんです。

さて、年齢を重ねるにつれて免疫力は落ちてきます。加齢によって低下する
機能は、獲得免疫系の方が著しいことがわかってきました。一説によると、
獲得免疫の能力は、20代頃がピークであり、40代ではすでに
その半分に低下するとされています。また、高齢者の体は、低レベルでは
ありますが、あちこちで炎症が起きている状態です。

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顔や手にしわ、シミができるのも炎症の結果と考えていいでしょう。
そのため、自己免疫では対処ができなくなる。まあしかたのないことです。
ほとんどの生物で、繁殖、子育て期には体がよく働くように機能しますが、
それが過ぎると、役目の終わった個体として死に向かうように
プログラミングされているという説もあるくらいです。

さてさて、ということで、この記事で自分が言いたいのは、免疫については
ほとんど何もわかってないこと。「免疫力アップでがんを治す」などの
ネット上の文言の多くには根拠がないこと、下手に免疫にちょっかいを出すと、
おそろしい自己免疫疾患を引き起こす可能性があることです。
最近あまりに、怪しいインチキ業者が「免疫力」という言葉を使っているのを
危惧して本項を書きました。では、今回はこのへんで。




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太陽系内の生命探査

2021.02.11 (Thu)
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中国の火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」が日、火星の周回軌道に
無事到達したと、国営メディアが報じた。同国の野心的な宇宙計画が、
また一歩前へ進んだ形だ。

国営新華社通信は「中国の天問1号は、地球からの7か月近い旅を経て、
10日に火星の周回軌道に無事入った」と伝えた。同機は昨年7月、
同国南部から打ち上げられていた。
(AFP)

今回はこういうお題でいきます。科学ニュースから、天文学、
宇宙生物学的な内容になります。自分は占星術をやっていて、
宇宙関係のニュースはつねにチェックをかかしませんが、
この手の話題が苦手な方は、スルーされてください。

さて、「ハビタブルゾーン Habitable zone」という言葉があります。
当ブログでも何度か取り上げてきましたが、「生命居住可能領域」と
翻訳され、「恒星の周辺において、十分な大気圧がある環境下で、
惑星の表面に液体の水が存在できる範囲」という意味で使われます。
つまり、ハビタブルゾーン内には地球型の生命が存在するかもしれない。

中国、天問1号による火星画像
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ここで、地球型の生命という部分に注意してください。地球生命、
例えば人間は、体の60%が水分とも言われます。また、
地球生命は原始の海の中で発生し、進化して陸上にも上がってきた。
ですから、水は絶対に必要なわけですが、他の星には、水分を
必要としない、非地球型の生命がいる可能性は否定できません。

窒素やメタンを利用する生命体、あるいはSFチックですが、
体がケイ素である岩石生命体などがいるのかも。さて、
ある惑星に液体の水が存在するための条件は、大きく2つあると
考えられます。一つは、その系の恒星からの距離。

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この意味はおわかりでしょう。単純な話、地球がもし、もっと太陽に
近ければ、表面温度が上がり、液体の水は蒸発してしまいますよね。
今よりもほんの数%、距離が太陽に近いだけで、少しずつ
海水が蒸発して、最終的に海は消滅してしまいます。

逆に、もし10%ほど太陽から遠ければ、海は完全に凍りついて    
しまいます。表面だけならまだしも、全部が氷の中で生命が
存在できるとは考えにくいですよね。偶然だと思いますが、
地球は生命が発生し進化していけるちょうどいい距離、
太陽から離れているということになります。

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次、2つめの条件はおわかりでしょうか。その星の大きさ(質量)
です。これは重力の大きさと言い換えてもいいでしょう。
例えば火星ですが、太陽からの距離的には、ハビタブルゾーン
ぎりぎりのところにある星です。

ですが、質量が地球の10分の1程度でしかないため、重力が弱く、
大気を保持することが難しいんです。きわめて薄い大気しか
ありません。大気が薄い=気圧が低い ということになりますが、
気圧が低いほど液体の沸点が下がるのはご承知でしょう。
例えば、富士山頂の気圧は気圧は630hPa程度で、地上の約6割。

気圧と沸点の関係
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それだと、水の沸点は90℃ほどになります。ですから、
富士山頂に電気窯を持っていってお米を炊いても、
芯の残ったものができあがってしまいます。かつて、火星には
海があったと考える研究者は多いですが、この低い気圧により
蒸発してしまったと見ています。

さらに、大気がないと、有害な紫外線や宇宙線の類が地表に      
直接降り注ぎ、大きなダメージを与えます。火星への植民計画も
ありますが、紫外線はともかく、宇宙線対策は難しいんですよね。
逆に、地球の内側の星はどうかというと、金星は大きさは
地球とほぼ同じですが、太陽からの熱量、光量が大きく、

エンケラドス
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二酸化炭素を主成分とする厚い大気で、もうれつな温室効果を
起こしており、地表面は400℃にも達するとみられています。
当然、液体の水は存在できません。ですから、もし火星に生命が
存在するなら地下、金星だったら温度が下がる二酸化炭素の
雲の中だろうと考えられます。

厳しいですね。太陽系には地球以外に生命がいないのか。
最近は、金星、火星以外に生命の存在を探ろうとする流れが
出てきています。でも、太陽に一番近い水星は論外です。むしろ
遠いほうの、木星や土星の衛星が候補にあがってきてるんです。

エウロパ


これらの星は超低温であるのは間違いないんですが、惑星から
強い潮汐力を受けています。地球でも、月があるため、
月に近い面と遠い面では重力の大きさが違い、わずかですが地球を
変形させています(これは月側から見ても同じ)。

で、巨大質量を持った木星や土星の衛星は、強い潮汐力を受けて
氷が砕かれ、液体の水が存在する可能性があるんですね。
木星から内側2番めの軌道にある衛星エウロパは、
表面の氷の層が数km、その下には数十kmの液体の海が
あるのではないかと考えられます。

一見、地球にそっくりなタイタン
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また、土星の衛星も注目の的で、月の7分の1と小さい、
エンケラドスという衛星では、土星探査機カッシーニにより、
氷のすき間から水が吹き出しているのが観測されました。また、
最大の衛星タイタンには、液体メタンの河や湖があるようです。
メタンの沸点は-160℃ほどですね。もしかしたらそこには、
非地球型のメタン生物が・・・

さてさて、ということで、ハビタブルゾーンの話から始まり
ましたが、それを外れたところにも生命の可能性があります。
無理くりという気もしないわけではありませんが、最近の
宇宙生物学では、そういったことも研究されてるんです。
では、今回はこのへんで。




寺田寅彦と孕のジャン

2021.02.06 (Sat)
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孕の地形

今回はこういうお題でいきます。分類が難しいですが、
いちおう科学ニュースに入れておきます。さて、何から
書いていきましょう。寺田寅彦の名前は聞かれたことが
あるかと思います。明治時代の物理学者であり、また、
吉村冬彦の名前で多数の随筆を発表しています。

東京帝国大理科大学実験物理学科、首席卒業の超エリートです。
寺田が学問の道を選んだのには奇異な経緯があり、弟が
土佐藩にて起こった刃傷事件に関連して切腹、そのときに
介錯したのがじつの父親で、このため父は精神を病み、
土佐藩による倒幕活動に参加できませんでした。

寺田寅彦博士
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これが原因で、薩長土肥に生まれた寅彦ですが、政治や軍事の
道を志さず、学問で身を立てていくことになったんです。
博士号を取得し、最終的には、東京帝国大理科大学教授と
なりますが、その仕事のあいまに科学随筆を書き、
一般大衆の啓蒙に努めました。

夏目漱石との関係もよく知られていますね。漱石が熊本
第五高等学校の英語教師だったときの教え子で、漱石が主催した
俳句の会のメンバーでもありました。専門は地球物理学でしたが、
科学を芸術的にとらえる目を持っていたと言われます。

浦戸湾
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ここでちょっと余談、地球物理学には火山学、気象学、地震学
などが含まれますが、この分野ではなかなかノーベル物理学賞が
受賞できないんですね。例えば、昔に比べて天気予報はずいぶん
当たるようになりました。これは気象衛星やデータ解析プログラムの
成果なんですが、ノーベル賞にはつながりません。

さて、お題のもう一つ「孕のジャン」ですが、「孕」は「はらみ」と
読みます。明治以前から土佐地方に伝わる怪異とされてきました。
土佐の3不思議の一つとまで言われてたんですね。
どういう現象かというと、海の上で「ジャン」と大音響がして、
この音が聞こえると、漁でまったく魚が捕れなくなるとされました。

日本を取りまくプレート
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多数の漁船に聞こえるんだから、かなりの音量ですよね。暗い湾内が
急にパッと明るくなり、落雷のように「ジャン」と音がして、
湾内のあちこちに「ジャン」 「ワンワン」と響きわたり、それきり
魚が網にかからなくなる。うーん、不思議ですよね。

一説には、この現象が、「おじゃんになる(ダメになる)」ことの
語源だとも言われます。また、「孕」とは、高知の海岸に並行する
山脈が湾に中断された両側の突端部と、その海峡とを含む地名です。
で、地震と関係があるようなんですね。土佐沖では、
数十年に1度、大きな地震が起きていました。その前兆として、

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この孕のジャンが起きる。うーん。土佐出身の寺田は、これについて
随筆作品『怪異考』で考証し、「地鳴り」としてとらえています。
孕の地形は、明瞭な地殻の割れ目であり、東西に走る連山が、
南北に走る断層線で中断された形である。この断層が生成したのは、
おそらく非常に古い地質時代で、

その時の歪が現在まで残っているとは信じがたいが、しかし、
そのような地殻の古きずが、現在の歪に対して時々過敏になりうると
想像するのは単に無稽な空想とは言われないだろう・・・
だいたいこんな意味のことを述べています。これ、現在であれば
中央構造線の存在が明らかになり、地震発生のメカニズムも

妖怪「頽馬」
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わかってきていますが、これが発表されたのは、地震は地下の
大ナマズが暴れて起こすとされていた江戸から遠くない時代です。
さらに、ドイツのヴェーゲナーが大陸移動説を発表したのが
1912年ころから。すべての地殻現象を包括的に説明できる

プレートテクトニクス理論ができたのは、その50年も後です。   
寺田寅彦、鋭いなあと思わずにはいられません。あと『怪異考』では、
濃尾地方で「ギバ」、他で「頽馬」と呼ばれる、馬を襲って
斃死させる魔物を、放電現象であろうと推察しています。

ニュージーランド地震の地震光とされる画像 真偽不明
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さて、大地震の前に怪光が起きる現象が報告されていますね。地震光
などとも呼ばれますが、学会に認められているわけではありません。
1975年のカラパナ地震で、地震の前後に光の報告があり、
白から青みを帯びた色で、形はオーロラに似ているが、
もっと広い色スペクトルを有すると報告されています。

また、2003年のメキシコのコリマ地震では、地震が起こっている
間に空にカラフルな光が見られた。2007年のペルー地震では、
海上の空で光が見られ、多くの人々により撮影され、2009年の
ラクイラ地震や2010年のチリ地震でも観察され、
フィルムに収められています。

メキシコ地震の地震光とされる画像 真偽不明
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この説明として、安山岩など、特定の種の岩石が断層のずれによって
破壊されるときに酸素のイオン化が起こり、それが空気中に放出されて
放電、発光するのではないかという仮説が立てられていますが、
これについては批判もあります。また、関係があるかわかりませんが、
地震雲などを研究している人もいますね。

さてさて、ということで、明治の碩学、寺田寅彦の業績を見て
きました。『怪異考』は青空文庫に入ってますので、ちょっと
言葉は難しいですが、ネットで読むことができます。
では、今回はこのへんで。

関連記事 『消えるオカルト甦るオカルト』




KIC8462852の不思議

2021.01.23 (Sat)
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今回はこういうお題でいきます。天文学系の内容ですね。
KIC8462852は、はくちょう座の方向に1480光年離れた
位置にある、F型主系列星と赤色矮星からなる連星です。
連星とは、2つの恒星がお互いに回り合っているもので、
双子星などとも呼ばれます。主星と伴星に分かれますが、

KIC8462852は主星のほう。で、この星のどこが不思議か
というと、不規則かつ大規模な減光をするんですね。つまり
地球から見える明るさがときおり暗くなる。この減光は、
2015年と最近発見され、発見者のタビー・ボヤジアンに
ちなんで、KIC8462852はタビーの星とも呼ばれます。

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さて、星の光が暗くなる場合、みなさんだったら何を原因と
考えますか。その星がエネルギーを失って燃えつきようと
している? でも、それだったら、長期間かけて少しずつ
暗くなるはずだし、すぐに明るさが回復することはないですよね。

ケプラー探査機によって、2011年から2013年の間、
KIC8462852Aが極めて不規則に減光する様子が観測されました。
変光周期が規則的ではなく、しかも、一度の減光で明るさが
15~22%も暗くなるんです。これほど大きな減光の原因が
つかめず、不思議な星として観測され続けてるんです。

KIC8462852Aの異常を発見したケプラー探査機
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ここでいう減光とは、あくまで地球から見て暗くなるという話で、
必ずしもその星が光を失っているということではありません。
例えば、地球とKIC8462852Aの間(KIC8462852Aに近いところ)に
何か障害物があれば、地球からは光が暗くなったように見えます。
ですから、この減光もそれが原因と考えられているんですが・・・

KIC8462852Aとわれわれの太陽を比較すれば、KIC8462852Aのほうが
少し大きい程度です。そこを、例えば地球より11倍も半径が
大きい木星クラスの惑星が横切ったとしても、全体の明るさは
1%ほどしか減光しません。ですから、KIC8462852Aと地球の間を、
きわめて巨大なものが遮っていることが考えられます。

KIC8462852Aの見かけの光の変化
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その候補として、小惑星ベルト、彗星の残骸、系外彗星などが
考えられたんですが、じつはこの星は「ダイソン球」なのでは
ないか、という話が出てるんですね。ダイソン球とは、1960年、
アメリカの物理学者フリーマン・ダイソンが提唱した、
恒星の発する熱や光を活用するための装置のことです。

例えば、われわれの太陽系でいえば、太陽を覆うような形で人工物を
浮かべ、それが受ける太陽熱や太陽光、その他のエネルギーを
地球まで引っぱってきて利用する。上手くやれば、低コストで
恒常的なエネルギーを得ることができるようになります。

ダイソン球のイメージ
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アメリカのSF作家、レイ・ブラッドベリに『太陽の黄金の林檎』
という短編があり、エネルギーの尽きてしまった地球のため、宇宙船
「金の杯」号が、太陽に近づいてその一部をすくい取ってくるという
話でした。もちろん大変な高温になるため、宇宙船の外部は冷却装置で
ガチガチに凍っています。ところがその冷却装置が故障して・・・

ここで少しSFの話。宇宙文明には3つのレベルがあり、まずその1は、
自分たちの星で得られるエネルギーだけを利用している。
現在の地球人がそうですよね。レベル2が、自分たちの恒星系
(地球なら太陽系)のエネルギーを利用する。上で書いたように
太陽からマグマを取ってくるとか、木星からメタンを持ってくるとか。

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現状では、地球がレベル2に達するのはまだまだ先です。
月の地下資源を掘り出すことすら難しいですし、それがどこの国の
ものかという議論もあるでしょう。レベル3は、その銀河系全体の
エネルギーを使う。映画『スター・ウォーズ』の世界が
このあたりでした。もしかしたら、われわれの天の川銀河には、

不死になる物質を産出する星があるかもしれません。フランク・
ハーバードのSF小説『デューン』シリーズに出てくるメランジの
ようなものです。あるいは、時間旅行を可能にする
ホワイトホールとか。さすがに、全宇宙のエネルギーを利用する
レベル4は難しい。あまりに広すぎますから。

メランジをつくり出すサンドワーム
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さて、KIC8462852Aの話に戻って、減光の原因が、小惑星や
彗星の残骸だとした場合、KIC8462852Aのまわりで強い赤外線
が観測されるはずですが、それはありません。また、過去に遡って
調査したところ、やはり大規模な減光が確認され、
彗星説は有力ではなくなったんです。

やはりそこに異星人文明があって、主星のエネルギーを汲み取って
いるのか。ですが、KIC8462852Aからの電波を解析しても、
人工的な信号を見出すことはできませんでした。
これは困りましたね。たしか2018年だったかな。

原因は宇宙塵?
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米ルイジアナ州立大学の研究者が、減光の原因は宇宙塵である説を
発表しました。データを分析したところ、光がどの程度遮られるか、
光の色に違いが見られ、不透明な物質が遮っているのではなく、
塵の層のようなものなのではないか、ということのようです。
でも、それだとツマラナイですよね。

さてさて、ということで、KIC8462852Aの謎について見てきました。
今のところ、さまざまな仮説はあるものの、原因は不明のままです。
こういうのは宇宙研究のロマンですよね。やはり地球外生命が
関与していてほしいなあと、いちオカルトファンは考えます。
では、今回はこのへんで。





天の川の話

2021.01.11 (Mon)


今回はこういうお題でいきます。昨日、「宇宙論的自然選択」を
あつかった硬めの記事を書いたので、今回は同じ宇宙の話でも、
わりと気軽に読めるものにしたいと思います。さて、みなさんは
夜空の星など、ご覧になられるでしょうか。

自分はもちろん占星術師なので、夜間晴れていれば天測をしますが、
大阪に移ってからは、かなり観測が難しくなりました。
以前、茨城に住んでいたときと違って、街が明るすぎるんですね。
それと、今は冬場で空気は澄んでいるものの、
やはり悪天候が多くてなかなか星が出てくれません。

天の川を見上げるなんてロマンチックですが、現代人には
そんな余裕はないですよね。さて、天の川は天球上を
ぐるっと回っていますので、世界のどこからも見えるはずですが、
場所によって見え方は違います。下は南半球で見られる
天の川の画像です。

南半球から見る天の川
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東洋では、天の川はその言葉どおり川と考えられてきましたが、
西洋では「流れる乳」という見方が多いんですね。
英語では「Milky way」で、もともとはギリシア神話からきています。
好色な主神ゼウスは、自分と人間の女の間に生まれた男児、
ヘラクレスを不死身の英雄にしようと思いました。

ヘラクレスは半分人間なので、神とは違って不死ではないんです。
そのため、妻である女神ヘラの母乳をヘラクレスに飲ませようとしますが、
嫉妬深いヘラは、ヘラクレスを憎んでいたため断ります。一計を案じた
ゼウスは、ヘラに眠り薬を飲ませ、ヘラが眠っているあいだに
ヘラクレスに母乳を飲ませようとする。

ヘラの乳を飲むヘラクレス
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このとき、ヘラが目覚め、ヘラクレスが自分の乳を飲んでいることに
驚いて払いのけた際、天にヘラの母乳が流れ出した。それが天の
ミルクの環になった・・・まあ、だいたいこんなお話です。
これ、ギリシア神話のパターンの一つなんです。ゼウスが浮気をし、
妻のヘラが怒って いろいろと祟りをなす。

さて、天の川はずっと古代から見えてましたが、地球とは遠く離れた
場所だと思われていました。まあ、無理のない考え方です。
東洋では、上記したように川と考えられており、中国で、牽牛、織女の
話ができ、それが日本に伝わって七夕の行事になりました。

18世紀を代表する知性 エマヌエル・カント
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天の川についての理解が深まったのは、そう古い話ではありません。
1609年、ガリレオが望遠鏡で観察し、天の川は無数の星の
集まりであることがわかりますが、なぜそこだけ多いのかは
謎のままでした。1755年、ドイツの哲学者カントが、天の川も
太陽系と同様に重力によって円盤状に回転しているとする説を唱えます。

なかなか鋭いですね。1788年、ドイツの天文学者ハーシェルは、
天の川が巨大な直径と厚みをもった円盤状の構造である考え、
太陽がそのほぼ中心にあるとしました。これ、けっこう長く続いたんです。
地球のどこからも見えて、ぐるりと回りを取り巻いてるんだから、太陽
(地球を含む太陽系)がその中心と考えるのも、無理がない気がします。

天の川銀河
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この後、天の川の比較的正確な構造がわかってきたのは20世紀に
入ってから。天の川が渦巻銀河であることが判明したのは1958年。
また、「棒渦巻銀河」であると考えられるようになったのは1980年代
のことです。直径が10万光年、厚さが1000光年。また、全質量は
膨大な値になり、そのほとんどが暗黒物質(ダークマター)。

その中心は いて座の方向で、大質量ブラックホールがあると推定されて
います。太陽系が天の川の中心にあるわけではないこともわかりました。
銀河系の中心から縁までの およそ4分の3のところに位置するようです。
さて、ここからは名前の話になります。星の集まりである
銀河(galaxy)は、この宇宙にたくさんありますよね。

天の川銀河の構造
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そこで地球がある銀河のことは、定冠詞をつけて大文字を使い、
銀河系(the Galaxy)と呼ぶことが多いんです。ただ、これが正式名称と
いうわけでもなく、our Galaxyなどとも言われます。で、だいぶ以前に
なりますが、たしか朝日新聞で、われわれの銀河に名前つけよう、
という企画をやってました。

そこで出てきたのが、宇宙科学研究所の的川教授は「金河」。
落語家の柳家小ゑん師匠が「お銀河様」。国立天文台の家正則教授は
「M0(メシエ・ゼロ)」で、これは銀河の名前にMと数字をつける
慣習から。納得できるといえばできますが、平凡でもあります。
(ご存知と思いますが、ウルトラ兄弟の故郷がM78星雲)

天の川銀河における太陽系の位置
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宇宙科学研究所の平林助教授が「巴」。西はりま天文台長の黒田氏が
提案したのは「moga(モガ)」で、mother galaxyの略のようです。
『天文学辞典』を編集した鈴木敬信氏は、われわれのものだけを
銀河と呼び、他のものは小宇宙とするべきという説。

さてさて、ただこれ、日本だけの呼び名ではあまり意味がないですよね。
世界が納得するような名前にしなくてはならず、そうなると難しい。
やはり記号や数字を使うのが無難なのかなと思ったりもします。
では、今回はこのへんで。

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