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地震予知の周辺事情

2020.01.07 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。地震はほんと怖いですよね。
自分が大阪に転居したのは、茨城の実家にいたときに
東日本大震災に遭遇したためです。ただ、放射能が怖いから
ということではありません。あのときの恐怖から少しでも
離れるためでした。

あと、自分は実家で海水魚をサンゴ中心に飼育してたんですが、
地震の後の停電で、魚はなんとか救えたものの、
サンゴは全滅しました。大阪に移ってから飼育は再開しましたが、
サンゴはやめて魚だけです。あの地震のさ中では、水槽はもう
どうでもよく、自分と家族の命を守るだけで精一杯でしたね。

さて、「地震予知」という言葉にはいろいろ誤解があります。
オカルト的には、予知能力を使って地震を知るというもの
地震予知と言いますが、今回はその話ではありません。
日本地震学会では、警報につながるような直近の地震の
事前情報を地震予知と言い、それ以外の、例えば、

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「〇〇地方でマグニチュード◯以上の地震が起きる確率は、
30年間で◯%」といった長期的なものは「地震予測」とする
新しい定義を2012年秋に発表し推奨しています。これは
「緊急地震速報」ともまた違います。地震速報はすでに地震が
発生していて、まだ揺れが伝わってない場合のものですね。

さて、では、直近の地震予知は、科学的にできるものなんで
しょうか。まず地震予知の定義について。一般的には、
「いつ、どこで、どのくらいの規模の地震が起きるか」
というのが必須条件と考えられます。具体的には、
「◯月◯日、〇〇地方で、マグニチュード◯規模」となるでしょう。

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で、日本地震学会をはじめ、気象庁その他、ほとんどの学術
団体、個人の科学者からも、現在の科学力で、そのレベルの
地震予知は不可能と考えられています。どうしてできないのか。
これは、地震予知が数学が通用しにくい性質を持っている
ためと考えられます。

同じ自然科学の分野で、数学が通用し、数式が立てられるものは
急速に発展します。1900年、マックス・プランクが
プランクの法則を提案して量子力学が始まりました。
また、1905年のアインシュタインの特殊相対性理論、
その後の宇宙膨張の観測により、現代宇宙論は急速に進展しました。

わずか100年で目をみはる成果です。量子力学では、
シュレディンガーの波動方程式、ハイゼンベルグの不確定性原理の
不等式。宇宙論では、アインシュタインの宇宙方程式。これらの解に
あてはまる現象が次々に発見され、先日、ブラックホール撮影の
話題が世界を駆け巡ったのは記憶に新しいところです。

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量子力学もそうですね。アメリカで白黒テレビ放送が始まったのは
1941年ですが、その後の量子力学の急速な進展で半導体などが
開発され、現在みなさんが使っているスマホ等へとつながります。
ところが地震予知では基本となる数式の立てようがありません。

この理由はおわかりだと思います。あまりに諸要素、諸条件が
複雑だからです。うーん、何か例え話で説明したいですね。
あ、そうだ。薄い板に五寸釘を20本打ちつけます。すると釘の
ほとんどが外に出ますよね。その一本一本に同じメモ用紙を
刺します。で、これを風のある日に公園に持っていく。

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で、どのメモ用紙が最初に飛ばされるか・・・無理ですよね。
いくら、その公園の風速、風向、気流の状態、釘の摩擦、
メモ用紙の刺さり方などを研究したとしても、
どれが最初に飛んでいくかを予知するのは不可能です。
地震予知もほぼそれと同じなんですね。

あと、観測の問題もあります。宇宙論であれば、地球や衛星の
望遠鏡から宇宙を見て、見える範囲について少しずつわかっていく。
ですが、地震の場合、海底のすべてのプレートの状態をカメラや
ソナーで監視することはできませんし、また、直下型や火山による
地震などもあります。まずデータがそろわない。

海溝のプレートの裂目
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前にも書きましたが、数学が通用しない、地震予知、気象予報、
医学・生理学などは、一つずつわかったことを積み上げていくしかなく、
その歩みは遅々としているんです。まあそれでも、気象予報は
関係者の努力で、かなり当たるようになりました。

さて、オカルト的には、地震予知は超能力の一種としてとられられ、
(あるいは高次の霊が教えてくれる、などと言う人もいます。)
5ちゃんねるのオカルト板にも、予言・予知スレが立てられましたが、
誰も当たらないんですね、かすりもしない。あまりに当たらないので、
みな飽きてしまって、今はそのスレも荒れ放題です。

気象予報は当たるようになりました 衛星の力も大きい
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まあね、現状では、未来から情報を得ることは不可能とみられて
います。また、もし未来から情報が伝われば、未来が変わってしまう
可能性もあります。例えば競馬で、ある人が今日のレースの勝ち馬情報を
どうやってか手に入れ、馬券を大量買いした。するとオッズが変わって
しまいますよね。多くの人が情報を得れば元金返しになるかもしれません。

さてさて、ということで、地震予知の話でしたが、地震予知ができたとして、
そこにはメリットとデメリットがあります。例えば、2日以内に80%の
確率で地震が起きる・・・これなら発表して避難する意義はあるでしょう。
じゃあ、1週間以内に5%だったら? ただ混乱をまねくだけに
なってしまうかもしれません。では、今回はこのへんで。

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進化の多様性について

2020.01.05 (Sun)
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今回はこういうお題でいきます。前回、カラスの話を書いたので、
その続きみたいなもんです。さて、カラスが頭がいいというのは
本当です。それを証明するさまざまな研究があります。また、
インコの一種である「ヨウム」なども、ひじょうに頭がよいとされ、
インターネットで検索すれば、いろんな動画が出てきます。

まあ、実際のところ、鳥の知能についてはよくわかっていません。
これは他の動物との知能の比較が難しいからですね。
鳥は体が小さく、脳の容量も小さい。神経系のつながりも
それほど複雑というわけではありません。ただ、頭のよさというのは
たんに脳を研究しただけで定量的には測れないようです。

大型インコの一種、ヨウム 人間の言葉を覚えコミュニケーションをとると言われます
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アメリカのデューク大学の研究では、2014年、36種の動物を
対象に「両側が開いた半透明の筒から食べ物を取り出す
ことができるか」というテストを行いました。この結果、ほとんどの
動物は容器からじかに食べ物を取り出そうとし、透明プラスチックに
はばまれて しょんぼりしてしまいました。

できたのはチンパンジーなどのごく一部だけ。研究の当初には、
鳥類はこの対象に含まれていませんでしたが、興味を持った研究者らは、
ワタリガラス、ニシコクマルガラス、カレドニアガラスを対象に
同じ実験を行ってみました。すると、すべてのワタリカラスが
筒の中に入り、食べ物を取り出す事に成功したんですね。

チンパン探偵 もうアメリカではこういう番組は難しいでしょう
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ニシコクマルガラスやカレドニアガラスもまずまずの成功率があり、
チンパンジーとまではいかなくても、ゴリラ程度の知能はあるのでは
ないかと、研究者たちは推測しています。ただし、言葉どおり
これはあくまで推測で、動物の知能が数値化できるわけではありません。

一般的には、知能の高い動物として、チンパンジー、オランウータン
などの霊長類、イルカ、シャチなどのクジラ類、ゾウ、
意外なところでは、最近の研究で、ブタもかなりの知能を持っている
ことがわかってきています。

さて、ここで少し話を変えて、進化とはどういうことなんでしょうか。
ネット辞書を引くと「生物の形質が世代をへる中で変化していく現象」
と出てきます。人間の場合、樹上生活をやめ、地上に降り立って
直立歩行するようになったことなどが代表的なものですよね。

ビーカーに重りを入れてエサをとるカラス ただしこれは芸の一種
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では、この進化に「よい」と「悪い」があるんでしょうか。
これはあるでしょう。よい進化をしたものは、生息数が増え、
生息域が拡大して繁栄します。逆に、悪い形で進化してしまった場合、
環境に適応できずに種が絶滅してしまいます。ちなみに、
悪い進化=退化 ということではありません。

地球生物の歴史をふり返ってみると、新しく生まれでた生物の
90%以上がすでに絶滅してしまったと考えられています。
まあ、絶滅の原因は巨大隕石の衝突など、どうにもならないものも
ありますが、それ以外の理由も多いんです。

アメリカ軍のイルカ兵器? もちろん公的には存在は否定されます
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関連記事 『動物兵器って何?』

現在も、年々、多くの種が絶滅しており、IUCN(国際自然保護連合)
が毎年更新している野生生物のリスト「レッドリスト」では、
2万5821種を、特に絶滅のおそれの高い「絶滅危機種」として
指定しています。これには、植物や菌類なども含まれます。

そう考えてくると、現在 生き残って繁栄している生物種は、進化の
上での「勝ち組」と言えるかもしれません。現在の世界の総人口は
77億人で、ますます増えているので、人類が繁栄しているのは
間違いありません。しかし数で言えば、
ある種の昆虫や微生物類などはもっと多いですよね。

さて、進化の方向性は多様です。人間やカラスは知能を高める方向に
進化しましたが、それがすべてではありません。ある種は体を
大きくし、ある種は逆に小さくし、嗅覚を発達させたり、
より深海に潜れるようになったり、カラスと同じ鳥類でも、
ハヤブサなどのように視力を発達させたものもあります。

日本の捕鯨を「野蛮」と一方的に非難する欧米のジャーナリズム
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関連記事 『捕鯨問題について』

何を言いたいかというと、「知能が高い」というのが進化の
すべてではないということです。また少し話は変わりますが、
日本のIWC(国際捕鯨委員会)脱退に際して、欧米のジャーナリズムは、
一斉に日本を非難しました。枚挙にいとまがないですが、
一例を上げると、英 オブザーバー紙は社説で、

「地球上で最も知的な生き物を虐殺するのは野蛮な行為である」と
書いています。ニューヨーク、オーストラリアのジャーナリズムも
同じ論調でした。ですがこれ、みなさん何か違和感を感じませんか。
たしかにクジラやイルカは知能が高いでしょうが、じゃあ、
知能が低ければ殺すのはかまわないんでしょうか。これについて、

アメリカの友人に話してみたことがあります。「知能が高い動物を
殺すのは残虐というけど、バカは殺してもいいの?」このときは、
「それとこれとは話が違う」という答えが帰ってきて、まあそういう
反応だろうという予想どおりでしたが、欧米人は特に、進化の
方向性として「知能」に重きを置きすぎるきらいがあると思います。

デカルト
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自分はこれ、ヨーロッパの長い哲学の伝統からきているところが
大きいと考えます。プラトン、アリストテレスの昔から「理性、
知性」が重視され、ショーペンハウエル、カントと続いていきます。
デカルトは「人間は考える葦である」と述べてますよね。

こう書くと問題あるでしょうが、欧米人には東洋などの異人種、異文化に
対する抜きがたい偏見、蔑視があります。また、人間を含めた
動植物すべての命を同等なもとの考え、岩や山などにも神が宿るとする、
日本の神道的な汎神論はなかなか理解できません。
さてさて、長くなってきたのでそろそろ終わります。

進化において、多様性を認めることはきわめて重要です。知能だけが
進化の指標ではありません。たしかに人類は知能の面では生物界の
トップランナーですが、発展途上国の人口が増えるいっぽう、先進国は
アメリカ以外どこも少子化に悩んでいます。それに重きを置きすぎると、
人類は道を誤るのではないかと思いますね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『超古代文明と白人優越主義』

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宇宙の形が揺らいでる?

2019.11.21 (Thu)
ある科学者グループが、消滅した衛星のデータを分析していたんですが、
その中で、「もしかして、宇宙ってまるいんじゃない?」
という説が出てきました。もしそうなら、ちょっとヤバいことに
なるかも、と彼らは最新の論文に詳細を記しています。

現在、宇宙の年齢やサイズ、進化の過程などにまつわる定説は
いくつもありますが、それを構築する前提になっているのが、
「宇宙は平面時空」と考え。しかし最新の論文では、
「人工衛星プランクが収集したデータは、宇宙がまるいと考えた方が
つじつまが合う」と何度もくり返されています。

もちろんこの見解には賛否両論ありますが、この論文の著者は、
「もし宇宙が本当はまるいなら、平面であると仮定することで
悲惨な結果を招く恐れがある」と記しています。
(GIZMODO)

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インフレーション・ビッグバン理論

今回は科学ニュースから、こういうお題でいきます。うーん。
まず、今回この説を出したグループですが、欧州宇宙機関(ESA)が
打ち上げた、宇宙背景放射の観測に特化した人工衛星「プランク」の
計画にたずさわる研究者たちのようですね。

では、宇宙の形について少し一般論を書いてみたいと思います。
古代において、地球は平面と考えられた時期がありました。
平らな地面がどこまでも続いて、端が崖のようになっていて、
そっから海の水が流れ落ちている。地球そのものは宇宙に
浮いてるんです。これを「地球平面説」といいます。

「地球平面説」のイメージ


ですが、時代が進むにつれて、例えば港に近づいてくる船は、
マストの先端から見えてくることなどから、地球は球体であると
考えられるようになりました。これ、よく誤解されるんですが、
地動説、天動説とは関係ありません。天動説が盛んな頃でも、
知識人は地球が球体であることを知っていました。

やがて近代になり、宇宙についての知識が深まるにつれ、
われわれの宇宙はどんな形なんだろうと考えられるようになります。
そこで使われたのが、ドイツの天才数学者ガウスによる
曲面上の幾何学での「曲率」の考え方です。

人工衛星「プランク」
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みなさんは平面上に書いた三角形の内角の和が180°になることは
ご存知でしょうが、曲面上では必ずしもそうはなりません。
内角の和は180°以上にも180°以下にもなりえるんです。
この曲率を利用して、3つの宇宙の形の候補がつくられました。
こっからは一つずつ説明していきます。

まずは、三角形の内角の和=180°のモデル。「平坦な宇宙」です。
平らな紙がどこまでも広がってるイメージですが、もちろん2次元
ではなく3次元です。これだと、宇宙には端があるので、
どこまでも広がっていくことができます。つまり、いつまでも膨張が続く。

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次が、「開いた宇宙」です。この場合、三角形の内角の和<180°。
よく「馬の鞍のような形」と形容されます。この場合も宇宙には
端があるので膨張は続くものの、空間のゆがみも大きくなります。
で、この2つのモデルですが、もし宇宙空間内にある物質の量が一定だと、
宇宙は「熱的死」を迎えるという予測があります。

それはそうですよね。中の物の量が一定で、空間だけが広がって
スカスカになっていくわけですから、どんどん温度が下がり、
最終的には光が消え、何も動くものがなくなってしまうでしょう。
怖い未来ですが、それははるか遠い先のことで、人類はその前に
とっくに絶滅してるでしょうから、心配はいりません。

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3番めのモデルが、「閉じた宇宙」で、三角形の内角の和>180°。
ちょうど地球の表面のような球面状の宇宙です。上の2つとの大きな違いは、
空間が閉じているので、宇宙をずっと進んでいくと、いつかは出発点に
戻ってくることができます。なんかよさそうなモデルに見えますが、

球面ということは端がありません。つまり膨張はいつまでも続かない。
いつかは膨張が収縮に転じる(ビッグクランチ)という予測があります。
SF小説だと、ビッグクランチになれば時間が逆向きに流れるなどという
作品もありますが、実際にはどんなことが起きるのかはよくわかりません。
われわれの想像がおよばないんですね。

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さて、この3つの候補のうち、現在は、最初に出てきた「平坦な宇宙」が、
われわれの宇宙と考えられるようになりました。いつからですかねえ、     
COBE(コービー)衛星が宇宙背景放射を観測した1980年代の
終わり頃からでしょうか。で、平坦な宇宙を前提として、
いろんな理論が立てられるようになっています。

宇宙が平坦になった理由は、1981年に発表された
「インフレーション仮説」で説明されます。ビッグバンが起きた最初期に、
宇宙は指数関数的な急速膨張をとげた。これがあまりに爆発的だったので、
宇宙はひきのばされて凸凹のない平坦な形になった。

宇宙背景放射
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ですから、もし今回のニュースにある「宇宙は閉じている(球形)」
という観測結果が正しいとすると、たいへん困った事態になってしまいます。
インフレーション仮説も見直しになるかもしれません。
しかし、この観測結果、ほんとうに正しいんでしょうか。

これまでにも、2011年だったかな、ニュートリノが光よりも速い、
という実験結果が世界をかけ巡りましたが、間違いとわかって撤回されたり
してますよね。あのときはたしか、光ケーブルの接触不良という
ひじょうにお粗末な理由でした。今回もその可能性はあるように思います。

宇宙背景放射から宇宙の曲率を割り出す方法
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というのは、人工衛星プランクも宇宙背景放射の測定から
宇宙の曲率を割り出していて、これまでの測定と基本的に同じ方法を
とっているからです。どのように観測しているかは、
上の図をごらんいただければわかると思いますが、
これはかなり測定誤差の出やすい方法です。

さてさて、ということで、あれこれみてきましたが、自分は
インフレーション仮説はたいへんなスグレモノで、まず間違いないだろうと
考えています。ですから、もし今回宇宙の曲率に多少の新事実が
発見されたとしても、大勢は崩れないんじゃないかと思いますね。
では、今回はこのへんで。

開いた宇宙と閉じた宇宙の行く末
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精子トレーニングって何?

2019.11.12 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。生物学の内容ですね。
自分は、ダーウインの進化論は大筋で正しいと思ってますし、
世界の趨勢もそうだと思います。キリスト教の聖書原理主義団体の
中には、進化論に対抗する勢力もありますが、
ローマ・カトリックは進化論をほぼ認めています。

進化論は多面的な考え方なので、ひとことで言うのは難しいですが、
「生物の進化は突然変異と適者生存によって起こる」としても、
そう大きな異論は出ないのではないかと思います。
進化論以前には、ジャン・バティスト・ラマルクによる、
「獲得形質の遺伝」という考え方が存在しました。

これは過去記事で書いていますが、「キリンが高い場所の葉を
食べようと首を伸ばす動作を続けているうちに長くなり、
その長い首は子孫にも遺伝する」というものです。
これに対し、ダーウインは「突然変異で首の長いキリンが生まれ、
それが環境に適合していたので生き残った」と説明します。

精子の構造
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近年、遺伝子DNA配列の解析が進み、ダーウインの論が正しいことは
立証されたと考えてよいでしょう。遺伝子のDNA塩基配列が
勝手に変わることはありえないからですね。
ですが、「獲得形質の遺伝」が完全に否定されたかというと、
必ずしもそうとは言えないようなんです。

「DNAスイッチ」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
NHKのテレビ番組、『NHKスペシャル 人体』で使用されて有名になり
ましたが、学術的には「エピジェネティクス epigenetics]と
言うようです。一般的には、「DNA塩基配列の変化を伴わない

ジャン・バティスト・ラマルク
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細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化」
を研究する学問分野です。この説明は言葉が難しいですね。
人間の体は、遺伝子情報をもとにさまざまなタンパク質をつくり、
体内の各部でそれらが働いて生命活動を行っています。

ところが遺伝子の中には、ふだんは眠っていて、スイッチが入って
初めて動き出すものがあることがわかってきました。
そのしくみを研究するのがエピジェネティクスと考えていいでしょう。
現在、このような遺伝子のスイッチングのメカニズムを
調べる研究が、世界中で進められています。

この考え方が学会の主流でしたが・・・
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そして、癌化や老化など、遺伝子の配列の変化を伴わない
後天的な現象の多くが、この遺伝子のスイッチングに関係している
ことが明らかになってきたんです。かなりのことが解明していますが、
では、DNAスイッチングは、世代を超えて受け継がれるんでしょうか。

これについての結論はまだ出ていません。ただ、
もし立証されるようなら、ノーベル賞級の成果になると思われます。
さて、精子トレーニングの話にうつります。この研究を行っているのは、
世界の名門、ノーベル賞学者を10人以上輩出している
デンマークのコペンハーゲン大学。

生理学のロマン・バレス教授は、「メタボの予防」が研究テーマで、
近々子どもをもうける予定の若い男性を募集し、
毎日1時間の有酸素運動(バイクを漕ぐなど)を6週間にわたって
続けてもらう。まあ、メタボは完全に解消しなくてもいいんですが、
DNAスイッチが入ることが重要です。

「精子トレーニング」をする男性
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精子の遺伝子に含まれる「メタボに関連するDNAスイッチ」。これが
入ったままの状態にして受精させる。では、はたして生まれてくる
子どもは、メタボになりにくい体質になっているのかどうか。
大変興味深いですよね。みなさんはどう思われますか。

最初の話に戻って、「獲得形質の遺伝」という学説は、西欧の
学会での激しい対立の後に葬り去られました。過去記事に
書いているとおり、資料の捏造や研究者の自殺などがあったんです。
ですから、この分野に手を出すのは研究者にとっては危険で、
経歴に傷がつきかねません。

これまでは、受精に備えて、精子の中の遺伝子スイッチはすべて
リセットされると考えられてきましたが、もしそうではなかったとしたら?
バレス教授は、通常体型の男性10名、メタボ男性10名から
精子を採取し、詳しく分析した結果、リセットされてないと
見られるDNAスイッチが2つ見つかったと報告しています。

ただし、そのことが即、獲得形質の遺伝につながるかはわかりません。
また、もし彼らの赤ちゃんのDNAスイッチが生まれつきオンだった
としても、それだけでは仮説の証明にはならないでしょう。
かなり長期的スパンの研究になると思われます。

DNAスイッチが入るしくみ
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あと、ここでは、精子のことだけを取り上げていますが、
卵子はどうかというと、女性の卵子は生まれたときからすでに
ほとんどできています。それが毎月、規則正しく排卵される。
ですから、トレーニングのしようがないんです。

さてさて、面白い話だなあと思います。自分はもう精子トレーニングを
しようとしても、子づくりの時期は終わっているので
どうしようもないんですが、これを読まれてやってみようと
考えられた方もいるかもしれませんね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『ラマルクの子孫たち』

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アインシュタインの敗北

2019.11.06 (Wed)
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今回は昨日に引き続いて物理学のお話にします。アインシュタインは
当然、みなさんご存知ですよね。相対性理論を提唱したことで
有名であり、アメリカでは頭のいい人の代表のような形で
ジョークに出てきます。そうですね、一つだけご紹介しましょう。

天国へアインシュタインとピカソがやってきた。天国の門番は2人に、
入るためには本人であることを証明しろと言います。
そこで、アインシュタインは黒板に相対性理論の数式を書き、
ピカソはあのキュピズムの絵を描いて本人と認められます。

アルベルト・アインシュタイン
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それを見ていたのが、ジョージ・ブッシュ元アメリカ大統領(父親のほう)。
天国の門番が証明を求めると「私は大統領だ、見ればわかるだろう。
それより変な落書きしてた今の2人は何者なんだ?」と逆に聞かれます。
門番はにっこりと笑って、「ああ、間違いなくご本人ですね、どうぞ」
と、ブッシュ大統領を天国に入れてやるんです。

意味はわかりますよね。アインシュタインもピカソも知らないのなら、
ブッシュ本人で間違いないと、物理学も芸術も理解しない無教養を
バカにしてるわけです。まあそれでも、アメリカ人はブッシュ大統領が
天国に行けると思ってるんですね。もし天国があるとして、イラク戦争を
実行したブッシュ大統領が入れるか、自分は怪しい気もするんですが。

「テキサスの田舎者」のイメージが強いブッシュ大統領ですが、じつは英王室につらなる家柄
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さて、物理学の世界では「古典物理学 Physics in the Classical Limit」
という言葉があります。この言葉だけみれば、古代ギリシアの
アルキメデスあたりの物理学のことみたいですが、そうではなく、
量子論以前のものはすべて範疇に入ります。ですから、
アインシュタインの相対性理論も古典物理学なんです。

アインシュタインが量子論を懐疑的な目で見ていたのは有名な話で、
「神はサイコロをふらない」という過激な発言があります。
これは、量子力学が確率論を中心にすえていることを皮肉ってるんです。
量子論では、原子核のまわりの電子の位置は、
確率的にしか言えないとされています。

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電子は確率の雲のように広がって原子核を取りまいている。
その中には、存在する確率の濃い部分と薄い部分があるとされますが、
それがアインシュタインには気に入らない。確率ではない、           
もっとしっかりした法則があり、それが明らかになっていないため、
現状では確率論に頼らなくてはならないのだと考えたわけです。

まあね、アインシュタインの言うことはわからなくはありません。
この世界の法則はきちんと定まったものであると、どうしても考えたく
なります。このため、アインシュタインはことあるごとに当時の
量子論の研究者たちに難題をふっかけていきます。このあたり、
新しい考え方になじめない頑迷な老人という感じですね。

ニールス・ボーア
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量子論の中心となっていたのは、コペンハーゲンに住んでたくさんの
研究者を育てたニールス・ボーアです。ボーアは一般の人には
あまり知られていませんが、世界の物理学者に、
アインシュタインとボーアのどっちが偉大か聞くと、回答はかなり
わかれると思います。下手すればボーアのほうが多いかも。

ボーアは、先の「神はサイコロをふらない」という言葉に対し、   
「ミスターアインシュタイン、神が何をなさるかなど、
軽々しく語ってはいけません」とクールに切り返すんです。
アインシュタインがボーアのグループにぶつけた思考実験の一つに、
「EPRパラドックス」というのがあります。

ある粒子を2つに切り分けたとします。そこで粒子AとBができるんですが、
この2つは必ず逆向きのスピンを持っています。仮に上向きと
下向きにしましょうか。どちらがどの向きなのかは、観測してみるまで
決まりません。A・Bをそれぞれ観測せずに別の箱に入れ、
Aは地球、Bはロケットではるか遠くの星に持っていきます。

EPRパラドックス
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で、地球でAの箱を開けてスピンが上向きに決定される。その瞬間、
遠く遠く離れた星のBに情報が伝わり、Bのスピンが下向きになる。
あれ、変ですよね。相対性理論では、光速を超えて情報が伝わることは
禁じられていたはずです。アインシュタインはこのことを
「不気味な遠隔作用 spooky action at a distance」と表現しています。

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結論から言えば、この議論はアインシュタインの負け。
不気味な遠隔作用は実在したんです。ただし、地球とBの星にいる人間が
もう一方の情報を知るためには、電話をかけたりなど、
相対性理論で制限される手段をとるしかありません。

じつはこれ以外の論争も、ほぼすべてアインシュタインの敗北に
終わっています。アインシュタインが、ハイゼンベルグの不確定性原理に
いちゃもんをつけたときには、ボーアはなんとアインシュタインの
一般相対性理論を用いて、完膚なきまでに論破してるんですね。
これはアインシュタインにとっては屈辱だったでしょう。

上記のA・Bの粒子間に起きる現象を「量子もつれ quantum entanglement」
と言います。量子もつれは現在たいへんに研究されている分野で、
その理由はおわかりと思います。これを利用することで、
量子テレポーテーションが可能になるからですね。
最近のニュースとして、イギリスで量子もつれの様子が撮影されました。

さて、ボーアが偉大だったのは、「波の収縮」について積極的な解釈を
しなかったことです。観測がなされたときだけ、電子の雲が収縮して
位置が決まる。不思議ですが、それは人間の感覚で、この世はそういうふうに
できているので、無理に意味を解釈しようとしてはいけないというのが
ボーアの方針。(ボーアらの考え方をコペンハーゲン解釈と言います。)

世界初、画像にとらえられた量子もつれ(イギリス グラスゴー大学)
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ここで立ち止まらなかったため、量子論は大いに進展しました。
この理論を使って半導体などが開発され、現在使われているPC、
スマホ、その他、ほとんどの電気製品に量子力学が応用されて、
人間の暮らしはたいへんに進歩しましたが、これは、
ボーアがそのように方向づけしたためと見ることもできるんです。

さてさて、アインシュタインは相対論発表後、神の隠された数式を
見つけだすべく、相対論と量子論を結びつける研究を続けましたが、
成功することなく亡くなります。その後「超弦理論」なども出てきたものの、
現在でも明確な答えが出ないまま、量子論と相対論(重力理論)をつなぐ
研究は続いてるんですね。では、今回はこのへんで。