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基地局アンテナの話

2020.06.30 (Tue)
こんばんわ、よろしくお願いします。宇田ともうしまして、
地方公務員をしております。さっそく話を始めさせていただきます。
これ、僕が小6のときのことです。ですから、今から15年
以上前のことになりますね。当時、〇〇市の賃貸マンションに
住んでました。家族は両親と、小4の妹です。
それで、賃貸マンションだからせまいですよね。僕の部屋は
妹と共有で2段ベッドで寝てました。それがすごく嫌だったんです。
まあ小学生と言っても男女ですし。ですから、何度となく両親に、
「自分だけの部屋がほしい。もっと広い家に引っ越そうよ」って
訴えてたんです。それが効いたのか、あるとき父親が、
「そうだなあ、そろそろ郊外に建売でも買うか。

 けどそうすると、お前転校しなくちゃなんなくなるぞ」
こう言ったんです。「やった!」と思いました。引っ越すと今の
仲間とは遊べなくなるけど、中学生になれば部活に入るだろうし、
そこで新しい友だちもできると思いました。ええ僕、小4から
ずっとスポ少で野球やってたんです。で、父親の言葉どおり、
中学からは新しい家に住むことになったんですが、これから話すのは
マンションでの最後の年のことです。夏休み中だったと思います。
夕食のとき、母が父に「ねえ、マンション自治会のちらしで、
 今度屋上に携帯電話の基地局アンテナができるって出てたけど、
 大丈夫かしら。ほら、電磁波の影響がどうこうなんて話もあるから」
こんなことを言ったんです。父は笑って「WHOの調査で、
 
 電磁波が人体に与える影響はないって発表されてるぞ。それに、
 このマンションに住むのもあと半年くらいだし」と答え、
母は「そうよね。自治会費が少し安くなるかもしれないけど、
 私たちには関係ないわね」こんな会話があったんです。
その次の日曜です。僕は午前中野球の練習に行き、戻って一人で
昼飯を食べ、留守番をしてたんです。はい、そのとき両親は、
新体操を習ってる妹を練習場所に連れてって、いなかったんです。
1時間くらいして玄関のドアチャイムが鳴ったんで、
インターホンに出てみると「お兄ちゃん、あたし」妹だったんです。
このときちょっと変だとは思いましたよ。両親は鍵を持ってるから、
ふつうに開けて入ってくるはずだから。「お前、どしたん?」

「お父さんとお母さんが買い物するって言ったから、先に帰ってきた。
 見たいTVがあるから」まあそういうこともあると思って開けました。
そのときは普段と変わりない妹だと思ったんですけど・・・
着てた服も朝と同じだったし。妹はリビングでTVを見始め、
僕は部屋でマンガ読んでました。そしたら、またドアチャイムの音が
聞こえ、妹が出た様子でした。すぐ、「お兄ちゃん、来て~」と呼ばれ、
行ってみると、玄関に青い作業服、作業帽の人が2人立ってて、
妹が壁にぴったりくっついてたんで、僕が「父母は今、いないんです。
 あと少しで戻ると思います」そう言ったら、一人が、
「あ、そうですか。工事会社の者です。これから屋上のアンテナ工事を
 します。ここまで音はしないと思いますが、危険ですから

 屋上へは出ないでください」そう言って、パンフレットのようなのを
置いてったんです。ドアが閉まってから妹に「お客さんに失礼だろ、
 何やってんだ」と少しきつめに言うと、なぜか半泣きになってて、
「あの人たち、トカゲだったよ。人間じゃなかった」って。
バカバカしいと思ってそれ以上はとり合わず部屋に戻ったんです。
あ、言い忘れてましたけど、そのマンションは12階建てで、
僕らのとこは10階だったんです。たしかに、工事のような音は
まったくしませんでした。それからまた1時間くらいたって、
玄関が開いた音がし、行ってみると両親が帰ってきたんですが・・・
父が「お土産があるぞ」とか言った後ろから、妹が出てきたんです。
「あれ!?」と思いました。一人でテレビ見てたはずなのに。

もし両親を迎えに出たのなら、ドアの音がするんで必ずわかるはずです。
それで妹に「お前、さっき1回戻ってきたよな」そう聞いたんですが、
首を振るだけだったんです。わけわからないながらも、両親に工事の
人が来たことを話し、パンフレットを渡しました。
それからですね、おかしなことが続くようになったのは。
最初は・・・、あ。そうだ。その2日後です。滅多にないことに
夜中にトイレに行きたくなりました。そんとき、2段ベッドの上に
妹がいなかったんです。「あいつもトイレか」くらいに思って
トイレに行く途中、リビングで音がしてました。引き戸を開けてみると、
暗い中に妹が一人パジャマのまま座ってTVを見てたんです。
まあ夏休み中なので、翌日早起きする必要はないんですが、

時間は夜中の3時過ぎだったと思います。それでね、TVの液晶画面に
大きく不気味なトカゲ人間が映ってたんです。SF映画か何かだろうと
思いました。その光で妹の顔が青と緑のまだらになってて不気味でしたよ。
「こんな時間に見てると怒られるぞ。どうしても見たかったら部屋ので
 見ろよ」こう言いました。僕らの部屋にも小さいTVがあったんです。
妹は立ち上がり、「もう寝る」とひとこと言ってTVを消し、
ロボットみたいな動きで部屋に帰ったんです。僕がトイレから戻ると、
もう妹はベッドに入ってて、呼んでも起きませんでした。
次の日ね、そのことを妹に言ったら「知らない、起きてない」って。
新聞で番組表を見たんですが、妹が見てた番組が何だったかは
わかりませんでした。たぶんBSだったろうと思うんですが。

それから1ヶ月以上間が開いて、学校が始まり、季節は秋になってました。
僕は野球部を引退しててヒマでしたね。で、何曜だったかは
覚えてませんが、夜中、ビンビンビンというような音がして
目が覚めたんです。そうですね、ギターの低いほうの弦を強く弾くような、
頭が痛くなるような音でした。「何だ?」と思って起き上がると、
ベッドの上から「来たあ!」という妹の声が聞こえ、ドンと上から
床に飛び降りたんです。そんなことしたことないのでびっくりしました。
「来た、来た、来たああ」叫びながら妹は部屋を出、玄関が開く音が
聞こえました。「あ、待て、どこ行くんだ」あわてて追いかけました。
妹はマンションの外廊下を走り、エレベーターには目もくれず、
非常階段を上っていったんです。「待てったら、どうした」

10階ですから、すぐに屋上への扉につきあたります。屋上は
共有スペースで、普段出てもいいことになってるんですが、夜は
鍵がかかってるはずなのに、そのドアが開いてて妹は闇の中に
走り出していったんです。屋上はかなり広く、給水塔や
BSのアンテナなどがあるんですが、妹は新しくできた右隅の
基地局アンテナへまっすぐ走ってったんです。アンテナの前には
人が5、6人いました。みな妹と同じくらいの年の女の子。はい、
都会で夜は明るいので顔が見えて、中にはマンションの近くの部屋の
妹の友だちの子もいたと思います。どういうことかわかりませんでした。
妹は、その子たちがアンテナを囲んで立ってる半円に加わって
全員が片手を上ました。そしたら、アンテナが緑に光りだしたんです。

ブンブンブンブン、またあの音がして、僕は頭が割れるように痛くて
その場に倒れてしまったんです。マンションの上の空に、緑の大きな光が
浮かんで見えました。それはだんだんに近づいてきて・・・そこで気を
失ってしまいました。気がついたら、部屋の自分のベッドにいました。
もちろん前の晩のことを妹に聞いても「知らない」と言うだけ。
僕の夢ということになっちゃったんです。屋上には行ってみましたよ。
アンテナは光ったりしてませんでしたが、よく見ると2本の筒の部分に、
変な記号のようなものが彫られてました。これでほとんど話は終わりです。
翌年度、僕の家族は埼玉県の一軒家に引っ越し、自分の部屋ができて
おかしなことはなくなりました。それでね、今度、妹の結婚が
決まったんですが、相手の人、宇宙開発機構に勤めてるんですよね・・・

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落とし穴の話

2020.06.18 (Thu)
あ、ども、こんばんは。俺、道村といって、都内の大学の6回生です。
いや、大学に6年もいるって言うと変に思うかもしれないスが、
苦学生なんスよ。親からの学費は期待できないんで、バイト
ばっかしの生活で。それでも、いつも金なくてピーピーなんスけど。
でね、これ、2週間ばかり前に起きたことなんス。
俺の身の上にってわけじゃなく、ダチの話だけど。
どうにもね、解釈がつかないんス。でほら、ここはそういう
ヘンテコな話をすれば、いろいろ説明してくれるし、おまけに金も
もらえるって聞いてやってきたんス。順を追って話していくけど、
俺、あんまり説明するの得意じゃないんで、そこんとこよろしく。
まずね、大学の後輩に進藤ってやつがいるんス。

そいつはアパートの2階の部屋に住んでるんスが、これが今どき
ありえないようなボロアパートで。住所とかは言わなくてもいいスよね。
まあ家賃が3万って言えば想像つくと思うス。一間で、日に焼けて
黒くなった畳、キッチンにはゴキブリが出放題で、便所は共同、
風呂はなし。そのアパート、1、2階合わせて12部屋あるんスけど、
今住んでるのは進藤と、あともう一人だけ。中年のアル中のおっさんで
生活保護らしいス。進藤は2階の角部屋で、そのおっさんは
反対側の角部屋。顔を合わせることはまずないって言ってました。
どうもそのおっさん、小便をバケツかなんかに溜めてるみたいで、
便所にもほとんど来ないらしいス。あとね、1階には半年前まで
ずらっとガイジンが住んでたらしいけど、なんか犯罪に

関わってたみたいで、あるとき一斉にいなくなったって。
その進藤も、バイトするために生きてるようなやつで、部屋では寝るだけ、
飯は外食だから、あんなとこでもやってけるんでしょうね。
でね、その進藤に久々に大学で会ったら、妙なことを言い出したんス。
「道村さん、幽霊っていると思うスか」って。もちろん、
「そんなもんはいねえよ!」って即答したっス。ねえ、この世に
幽霊なんているわえないっしょ。そんなんは甘えですよ、甘え。
世の中はシビアなんだから。金が月にいくら入ってきて、生活費が
いくらかかるか。収入のほうが多ければ何とか生きていける。
霊なんて不確実なものが介在する余地はどこにもないんスよ。あ、
言い忘れてたけど、俺、大学の専攻は数学の統計なんス。

あ、スンマセン、なかなか話が進まないスね。事情聞いてやるから
その代わりって学食で飯をおごらせたんス。そしたら、「毎晩、2時過ぎ
 になるとアパートのまわりを歩き回るやつがいる」って。
「そりゃ通行人だろ」と応じて、あれと思ったんス。
俺、進藤のアパートには何度か行ってるんスが、高い板塀に
囲まれてるんス。ペラペラの黒い板なんだけど、2mくらいの高さで
アパートを一周ぐるっと。何であんなもの作ったのかわかんないけど、
あれだと1階の窓から日が差さないス。あ、でも、何か犯罪やるには
都合がいいのかも。「塀の内側なんか」 「そうです」
「うーん、その、今お前の他にもう一人住んでるっていうアル中の
 おっさんじゃないのか」 「いや、おっさんはあんなに速く歩けないス」

「速く?」 「はい、俺のアパート、塀と建物の間が1m半くらい
 あるんスけど、そこ、雑草が生えないよう、細かい砂利が敷いてあるんス。
 だから通ればジャリジャリいう。その音が速いんス。おっさんは外出るとき
 杖ついてヨタヨタしてるから」 「ふーん、まとめると、夜中の2時過ぎに
 アパートの塀の内を早足で通るやつがいるってことか」
「はい、決まってだいたい3周くらいします」 「意味わからねえな、
 けど生きた人間だろ、間違いなく。あ、そうだ、お前んとこの窓から
 下見えるじゃないか。懐中電灯とかで照らしてみればいいだけだろ」
「それ、やってみたっス。ジャリジャリする音が部屋の窓の下に来たとき、
 借りてきた大型懐中電灯で」 「したら?」 「誰もいなかったんス。
 そんときだけ音が止まって、10分くらいして電灯消して引っ込んだら
 
 またジャリジャリって。何度かやったんス」 「うーん、じゃあ狸とかか」
「いや、まさか。でね、一昨日、夕方に板使って砂利をきれいにならした
 んス。誰か通ればわかるように。そしたら、やっぱ夜中にジャリジャリいって、
 朝見たら乱れてたんスよ」 「・・・外に出て追いかけてみたんか」
「さすがにそれは怖くて」こういう話になったんス。で、俺もね、
興味持って、その日の夜進藤の部屋に泊まり込んでみたんス。廊下を通ると
抜けて落ちそうなボロアパート。便所は臭くて、もちろん部屋にはエアコンなんて
ついてないス。やつの部屋で酒飲んでダベってると2時になり、そしたら、
たしかにジャリジャリって音が聞こえる。そんな時間だし、外は車通りは
なかったス。「ほんとだ、音するな」んで、ちょうど窓の真下にきたとき、
ガラッと開けて「誰だコラ」って怒鳴ってみたス。返事はなし。

ジャリジャリジャリジャリ。それで、「おい、進藤、外出るぞ。玄関から出て、
 お前右に回れ、俺は反対に行く」やってみたんス。外だと、部屋よりも
ジャリジャリ音が大きく聞こえて移動してる。「コラ、誰だあ」叫びながら
塀の内を回ってくと、裏手のところで進藤と鉢合わせしたんスよ。
人一人しか通れない幅なんで、取り逃がすことはないんス。
「えー、不思議だ」 「やっぱ幽霊スか」 「違う!!」それでどうしたか
っていうと、進藤の部屋の窓の下に落とし穴掘ることにしたんス。
俺、もう引退したけど少林寺拳法部に入ってて、そこの後輩何人か呼んできて。
いや、そのアパート、大家は滅多に顔出さないみたいだし、高い塀があるんで
作業は問題なかったス。5cmくらいの砂利の層をはがして、むき出しになった
土をどんどんスコップで掘る。土は柔らかくて掘るのは難儀じゃなかったけど、

せまいんで土運び出すのが大変だったス。穴は人の身長くらい。
上にブルーシートを切ったのをかけ、杭で四隅を固定して、上からパラパラ
砂利をかける。多少周囲からは低くなったけど、夜ならまずわからない
落とし穴ができたんス。で、俺の他にもう一人、栄田っていう後輩も
泊まらせて、計3人で夜中を待ったんス。進藤は懐中電灯とカメラを
持って部屋に待機、落とし穴に何者かが落ちたら上から照らして写真を撮る。
俺と栄田は、前にやったみたいにそいつを前後からはさみうちにする。
完璧な計画っスよね。んで2時になって、ジャリジャリジャリ。
今回は音を立てないよう栄田とそっと玄関を出て、反対方向に走りました。
ジャリジャリ、ジャリジャリ、ズザザザザザ。最後のは落とし穴に
落ちた音だと思ったス。穴が凹んでるように見えたけど、

暗くてはっきりしない。「照らせ!」と上に叫ぶと、暗くしてた部屋から
パッと明かりがついたス。向こうから栄田が走ってくる。2人で両側から
穴の縁に立ち、上からの明かりで見たものは・・・何だったと思うスか。
穴の中にしゃがんで土にもたれ込んでる進藤だったんス。目をつぶってました。
え、じゃあ上から照らしてるやつは誰だ?? と見上げると、
「うわあああ~」と大きな声を上げて進藤が足から飛び降りてきたんス。
で、ぴったりと穴に落ち、中でへたり込んでたもう一人のやつと
重なったんス。「????」わけわかんないスよ。とにかく気を失ってる
進藤を引っ張り上げましたが、正気に戻らないんで救急車呼びました。
でね、病院であれこれ処置されて、やっと目を開けたんスが、
両足を捻挫してたんス。それ以外に大きなケガはなし。

医者は、俺らが暴行したんじゃないかって疑ったみたいスが、進藤本人が、
自分で穴に落ちたのを助けてもらったって言ったんで、
なんとか大事にはならなかったス。そんときは歩けなかったんで、
3日入院したけど、捻挫は比較的早く治ったんス。
まあ、こういう話なんスよ。ねえ、幽霊じゃないとは思うけど、
進藤が2人に分かれて、また一つになったのはどうしてなのか。
本人は、落とし穴が完成して、その後のことは覚えてないって言うんス。
それとね、やつが部屋に戻ったら、やっぱまた2時過ぎに
ジャリジャリ誰かが通るって・・・ いやいや、もうコリゴリっスよ。
だから、知り合い中に広くカンパを募って、進藤を引っ越させようって
考えてるんス。ここの人たちなら、これ、どういうことかわかるっスか?

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病院での話

2020.06.12 (Fri)
bigbossmanです。今週の火曜日、大阪市内のある病院へ定期検査に
行ってきました。自分は2016年に大きな病気をして入院・手術し、
このブログも1年以上中断してるんです。今年の8月で
手術以来4年が経過しますが、今のところ再発などの異常は
ありません。運がよかったと思ってます。
当日はCTを撮るため朝食抜きで出かけ、その他に内視鏡検査も
あったので、午前中いっぱいかかりました。
そこの病院、コロナの緊急事態宣言中は患者の数も少なかった
ようですが、最近はまた増えてきてて、表示版に「今日の患者数
3500人」と出てましたね。病院に付属したレストランで
昼食をとり、玄関ホールで支払いを待ってたんです。

そしたら、後ろから「おや、bigbossmanじゃないですか」と声を
かけられ、ふり向くと、入院着を着た白髪の男性が立ってたんですが、
一瞬誰だかわからなかったんです。「ほら、〇〇です。以前に雑誌社の
 仕事でご一緒した」 あ、と思いました。その人、京都在住の
霊能者の方で、2年前に取材させていただいてたんです。
とっさにわからなかったのは、恰幅がよかったのが、ずいぶん痩せて
しまっていること。あと、お会いしたときには和服姿で髪も黒く
染めてられたからです。「いやどうも、お久しぶりです。その節は、
 いろいろお世話になりました」 「いやいや」
仮にBさんとしておきます。Bさんは霊能者としてはひじょうに
力のある方で、2年前の取材もたいへん興味深いものだったんですが、

いろいろ差し障りがあってここに書くことはできません。
「入院なさってるんですね」自分が尋ねると、「うん、ちょっと心臓の
 ほうがね、不整脈から血栓ができて、それが脳のほうに回って
 脳梗塞になっちゃった。まあ、大事は至らず後遺症もなかったんだけど、
 ペースメーカーを埋めなきゃならなくなって、今入院してるんだよ」
「それは大変でした」 「まあねえ、私ももう70代に入って、
 無理がきかなくなってるんだな」こういう会話になりました。
それからいろいろ雑談して、自分のほうから「ところでBさん、
 霊視をなさりますよね。やっぱり病院って霊が多いもんですか」
こう聞くと、「うーんまあ、そりゃあね、この規模の病院だと、
 1日に亡くなる入院患者も何十人だから、

 死霊はいないわけじゃない。けどほら、よく病院の怪談なんかに
 書かれてるように多いってこともないよ」 「ははあ」
「まあ亡くなるのはだいたいがお年寄りだし、覚悟もできてるんだろう。
 人間誰でも年取って死ぬのは必然だし、それでいちいち迷っても
 いられないだろ」 「なるほど」 「けどね、魍魎のたぐいは多いよ」
「魍魎ですか」 「うん、魍魎ってのは、はるか昔からこの世にいる
 ものだが、われわれ生物とは違う存在のしかたをしてる。
 人間の感情を食べてるんだが、病院には、やつらが好むものが
 あふれてるから」 「え、どういうことでしょうか」
「口で説明するのは難しいから、これから実際に見せてあげようか」
「あ、ぜひお願いします」ということで、

支払いを済ませてから、Bさんとともに病院内を回ったんです。
「じゃあまず2階に行こうか、あそこが一番 魍魎は多いから」
行ったのは外来の化学療法室のある棟でした。昔は抗癌剤治療は
入院して行うことが多かったんですが、今はどこも病棟はいっぱいだし、
吐き気止めなどの薬も改良され、外来で治療を受ける患者が
多くなってるんですね。化学療法室は奥まったところで、
待合室にはかなりの患者がいましたが、多くが高齢者の方でした。
Bさんが「ほら」と言って端のほうに座ってる人を指差し、
それは50代に見える髪をオールバックにした男性でした。
「あれは」 「患者じゃなく健康食品やサプリの業者だよ。
 毎日ここへ来て売りつける相手を物色してるんだな。

 抗癌剤治療をしてる患者の多くは、藁にでもすがりたい心境だから」
「そうでしょうね」 「けどね、bossmanさんには見えないだろうが、
 あの人の頭の上には、大っきな黒いものが渦巻いてるよ」
「それが魍魎ですか」 「うんそう。それとこの待合室の中にもたくさん
 いるよ。人の不安や死への怖れを餌にしてるやつらが」
「どんなのですか」 「見たいかい」 「はい」 「じゃあ」
ここでBさんは人差し指と中指を天井に向けて上げ、さぐりながら
何かをはさむ仕草をしたんです。「お、いたいた」と、
指を胸の前に持ってきましたが、もちろん何も見えません。それが、
Bさんが口の中で何かを唱えてから、ふっと指先に息を吹きかけると、
見えたんですよ。ここからの話は信じてもらえないかもしれませんが、

15cmほどもある毛虫とムカデが混ざったような赤黒い不気味な
ものでした。「う」それはBさんの指にはさまれてぐねぐねと動き、
たくさんの触手を伸び縮みさせてました。「これが魍魎」
「初めて見ました」 「そう。たぶん天井裏に巣があるんだろうな。
 どこの病院にもいる」Bさんがそう言って、また息を吹きかけると、
その姿は消えて、Bさんは待合室のソファの後ろに捨てるような
仕草をしたんです。「本当にいるんですね」 「ああ、でも、
 姿形は不気味だけど、別に人間に直接害を与えることはない。
 あ、多少気持ちが暗くなったりはするかもしれないが」
「ははあ」 「ここの次に多いのはどこだかわかる?」 「うーん、
 診療棟ですか」 「あそこもいるけど、だいたいこれと同じ種類」

Bさんが歩き出したのでついていくと、エスカレーターで1階に
降りて渡り廊下を通り、救命センターに向かったんです。
そこの病院は、夜間休日外来もやってますが、救急救命の拠点に
なっていて、ひっきりなしに救急車が来てるんです。実際、
そのときもサイレンの音がしてました。「ここはね、交通事故や
 急病で運び込まれる人も多いけど、最近はすでに亡くなった方が
 増えてるみたいだね」 「どういうことです」 「例えばほら、
 家族が布団の中で亡くなってるのを朝に見つけたとして、
 往診の医者なんてすぐには来てくれないだろ。驚いて救急車を
 呼ぶことが多いんだ」 「ああ、そうでしょうね」
「医師でないと死亡確認はできないから、救急隊員も

 死んでると見てとっても、いちおう病院に搬送する。で、救命措置を
 ひととおりやってから死亡宣告する。そんなケースが増えてるって
 話だね」 「なるほど」 「そのほうが警察にとっても都合がいいんだよ。
 例えば、暴行などが疑われた場合、病院で外傷や、CTを撮って
 内出血なんかを調べたりすることもできるし」 「うーん」
救命センターの待合室はかなり広く、たくさんの人がいましたが、
そのほとんどは患者ではなく、つき添ってきた家族のようでした。
「ここはあんまり長居はできないから」Bさんはそう言って、
さっきとは違って足元のほうを指で探り、また息を吹きかけると
半透明の青いものが見えたんです。ほら、UMAでスカイフィッシュって
いますよね。あれに似てる感じでした。「さっきのとは違いますね」

「ああ、これはね、患者本人じゃなくて家族や友人などの悲しみを
 食べてる種類の魍魎だ」 「なるほど、勉強になりました」
「どう、喫茶店に寄ってコーヒーでも飲んでいかない」 「はい」
そこでまたいろいろとお話をうかがったんです。Bさんは、
「昔はね、人が亡くなるのは自宅が多かったでしょ。だから、
 魍魎も1ヶ所に集まってるってわけじゃなかったけど、
 今は、大きな病院は魍魎の巣みたいになてってるんだ」
「怖いですね」 「まあね、さっきも言ったけど、魍魎が直接
 人間に害を与えるわけではないんだが、病院には近寄らないに
 こしたことはないよ」 「Bさんも、どうぞお大事になさってください」
「ああ、ありがとう。bossmanさんもね」 「はい」

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駅自販機の話

2020.06.09 (Tue)
※ ナンセンス話です。

あ、僕、山本って言います。駅自販機の補充の仕事をしてるんです。
正社員じゃなくバイトで、飲料販売の会社に雇われてます。
これ、あまりご存知のない方が多いんですが、飲料の自販機には
2種類あって、一つは飲料メーカー直営のもの。赤い色をしてて目立つ、
コカコーラの自販機、ダイドーさん、キリンビバレッジさんのものとか。
もう一つが、僕が働いてるような飲料販売会社のもの。はい、
自社で開発した自販機に、さまざまなメーカーの飲料を入れるんです。
入れる商品は季節によって違うんですが、お客様のアンケートを
もとに決められてます。で、最初は街中にある自販機を
担当してたんですけど、2年目から駅の自販機担当になったんです。
僕が受け持ったのは近接した私鉄の駅2つで、合わせて6台の

うちの自販機があります。こう言うと楽だと思われるかもしれませんが、
けっこう大変なんですよ。ほら、街中の自販機なら前の道路に
車をつけて補充できるけど、駅構内じゃそんなわけにいかないですよね。
商品を積んだ台車を押して通用口から入って補充するんです。
ですから何回も往復しなくちゃなんない。それと、駅の自販機って
商品がすごく売れて、街頭にあるのとは比較になりません。
基本毎日補充しますし、時期によっては1日2回のときもあります。
もちろん一人でやるわけじゃなくて、山田さんという50代の
ベテランの人と2人組でした。もう何十年もこの仕事してて、
駅のことなら何でも知ってるんです。
それでね、山田さんからはいろいろと怖い話を聞かされたんです。

自販機って、商品取り出し口にフラップがついてるのと、
そうじゃないのがありますよね。フラップはトラブルの原因に
なることが多いんです。連続して商品を購入して詰まったとか、
子どもが手をはさんだとか。ですから、ついてないもののほうが
多いんですけど、駅のホームは違います。何でフラップつきなのか
わかりますか。これね、山田さんの話だと、ホームで飛び込み自殺が
あったとき、取り出し口に肉片なんかが飛び込むのを防ぐため
なんだそうです。いやあ、本当にそういうことがあるかは
わかりません。駅担当になって2年になりますけど、
そういうケースに遭遇したことはないです。
あとね、自販機の正面を線路側に向けない。柱の陰とか、線路に

側面が向くようにして置く。これも同じ理由での破損を防ぐためです。
あ、すみません、本題と関係ない話が長くなってしまって。
補充する時間は朝夕のラッシュを避けます。ふだんは夜間、
終電前後の時間帯にやることが多いですね。お客さんがまばら
ですから。1日2回の場合は、午後の2時ころにも。
でね、2週間前のことです。会社に出ると山田さんが休み
だったんです。家で頭が痛くなって救急車で病院に運ばれたって
連絡が来てるということでした。心配でしたが、仕事があるんで
見舞いに行くこともできない。会社のほうでは、山田さんの代わりに
入ったばかりの若い子を一人つけてくれました。もちろん僕と同じ
バイトで十代の茶髪の子、名前は木村って言いました。髪はまあ、

帽子かぶればわかないですけど。僕が運転して駅に向かいました。
夜の8時過ぎで、すでに帰宅ラッシュが終わってる時間です。
業者専用の入口から入り、警備員さんにあいさつしてホームに
入ります。台車ですから階段は使いません。それで、その駅の
2台目の自販機で商品を補充、金銭を回収して周囲を掃除します。
で、3台目に向かう途中です。急にホームの明かりが消えたんです。
「え?!」照明だけじゃなく、表示板とかも全部。
けど、それは数秒のことで、すぐに明るくなりました。駅は独自の
発電システムを持ってて、停電はまずありえないんですが。
木村が「今、一瞬暗くなりましたよね」と言い、
「あ、そうだったな」と答えました。ここで不思議だったのは、

まばらにいる乗客が特に何も反応してなかったことです。
まあでも、時間が短かったせいだろうと思いました。でね、先に立って
台車を押してた木村が、3台目の自販機の前ですっとんきょうな
声を上げたんです。「えーっ! えっ、何だこりゃ??」
「こら、大きな声を出すな」と注意はしたものの、僕も自販機の
前に行って絶句しました。機械自体はうちの会社のものなんですが、
中に入ってる飲料がまったく違ってたんです。というか、
どこでも見たことがないものでした。どれも同じ500mlの缶で
全体が真っ黒。それに白い字で人の名前が入ってる。
はい、名前と・・・「佐藤睦夫 享年47」みたいな感じで、
これってその人が死んだ歳ってことですよね。

「何だこれは・・・」2人で呆然としてると、また構内が
真っ暗になったんです。今度は10秒・・・20秒たっても明るく
ならない。「どうなってるんスか」木村が不安そうな声を出し、
「わからん、回復するまで動くな」そうは言いましたけど、
僕もすごく動揺してたんです。もう10秒くらいしてパッと
電気がつきましたが、いつもよりも暗く、青みがかった照明です。
「えっ、えっ?」また木村が声を出し、その理由はすぐにわかりました。
さっきまで、まばらながら10数人はいたはずの乗客が誰も
いなくなってたんです。そんなはずないですよね。避難したとしても
あんな真っ暗な中でできないですよ。自販機は前と同じで、
不気味な、名前入りの墓石のような缶がずらっと並んだ状態。

目で駅員を探しました。けど、いつもいるはずのホーム係の姿も
見えない。人っ子一人いないんです。「どうすればいいんですか」
木村がおびえた声を出したんで、「とにかく台車はここに置いて、
 階段を使って改札のほうに出てみよう」・・・けど、階段なんて
なかったんです。ただ、水に浮かぶ島みたいに一本のホームだけがある。
また台車の前に戻ってきました。そのとき構内放送のアナウンスが
入ったんです。「まもなく、○番線に自殺列車がまいります。
 黄色い線の外に出て飛び込む準備をしてください」・・・!?!?
ゴーッという音がして電車が入ってきましたが、前照灯は青、
車体は真っ黒でした。ありえない、何から何まで。木村が、
「どうしたらいいんですか、飛び込めばいいんですか」

そう叫んだので「バカ言うな!」怒鳴りました。その電車は窓も
真っ暗で、中の様子はまるでわかりません。「早く飛び込んでください!」
アナウンスが金切り声を上げ、木村が頭を抱えてしゃがみ込んだとき、
自販機から声がしたんです。山田さんの声だと思いました。
「自販機に金を入れろ、名前が書いてない缶のボタンを押せ」
そうしましたよ。財布出して硬貨を入れ、一番下の列のただの真っ黒い
缶のボタンを押す。そのとき黒い電車がゆっくりとホームに停まったんです。
ガゴン、取り出し口に落ちる音がして、取り出すとそれは見慣れた
お茶のペットボトルでした。照明はもとに戻ってて、乗客もいました。
ホームに入ってる電車もいつもと同じ・・・木村が、
「あれ、山本さん、ノド乾いてたんスか」とぼけたことを言いました。

はい、僕が見たものをまったく見てなかったんです。黒い缶も、
黒い電車も、自分が恐がってたことさえ知らないって言う。
それだと、全部僕の幻覚ってことになりますよね。納得がいかなかったけど、
そう考えるしかありませんでした。仕事を手早く済ませ、会社に戻ったんです。
3日後、会社から病院を聞いて山田さんの見舞いに行きました。
幸いたいしたことはなく、血栓からくる軽い脳梗塞だったのを
カテーテル治療で散らしたということだったんです。
はい、駅での話はしませんでした。山田さんのほうから何も言って
こなかったんで、自販機から山田さんの声がしたことも本人は
知らないんだと思います。まあこんな話なんです。あれから、
おかしなことは一度もありません。ないんですが・・・






蛟4

2020.06.06 (Sat)
あ、今晩は。さっそく話をさせてもらいます。私、中学校の教員を
してまして、教科は理科です。大学の専攻は生物でした。
そのときから水生生物を飼うのが好きだったんです。
メインは魚ですけど、その他、イモリとかの両生類、
ゲンゴロウなんかの昆虫もね。ただ、大学時代は一間のせまい
アパートでしたから、水槽を置く余裕なんてなかったんです。
それが教員に採用されて、部屋も広いとこに引っ越しまして、
一人暮らしですから、まあ給料が足りないということもありません。

それで、部屋に60cmの規格水槽を一つだけ置く
ことにしました。飼ってるのは淡水の熱帯魚です。
それに水草を少し入れて、それだけで満足してました。
で、部屋のわりと近くに熱帯魚屋さんがあったんです。
そこはペットショップじゃなくて、専門の熱帯魚屋さんで
水草にも力を入れてて、ディスプレイした水槽がいくつも
置いてありました。プロですから、どれも素晴らしい出来です。
私は土日がお休みで、ちょくちょく行くようになって、
店長とも親しくなりました。サラリーマンだったのが、水草好きが
嵩じて、とうとう自分の店を持つようになったと言ってましたね。

先週の土曜日のことです。午後3時くらいでしたか。
その店で水槽を見て回ってると、店にグループが入ってきました。
それがなんとも異様な格好で。男3人だったんですが、
3人とも背が高く、中国服を着てたんです。
あのほら、キョンシーの映画がありますよね。
それに出てくるお化けが着てるやつ。後で調べたんですが、
中国の清の時代の官服みたいです。先頭で入ってきた人が、
流暢な日本語で「店長はおられますか」と言い、
店長が出ていくと、何かを読み上げるような感じで、
朗々とこんなことを言ったんです。

「この店は風水によりミズチ様の通り道にかかると決まった。
 明日の午前11時にお通りになられるので、水槽の水量を
 減らしておくがよかろう」正確にこのとおりではないかもしれませんが、
だいたいこういう内容だったと記憶してます。
で、そのまま帰っていったんです。店長があっけに取られた
顔をしてたんで、「今の何です?」と聞きました。
店長は「いや、わからんけど、中国の人みたいだったから、
 アロワナでも買いに来たのかと思ったよ。うちは小型美魚専門で、
 大型魚は置いてないんだけど」
私が「ミズチ様って言ってましたよね」そう言うと、

「そうだったね。ミズチってのは、中国の伝説で下級の龍のこと
 じゃないかな。龍になる前段階の水蛇って言えばいいか。
 水槽の水を減らせって言ってたけど、どういうことだろう」
かなり困惑した様子でした。私は興味をひかれまして、翌日もその店に
行ってみたんです。10時開店で、私が着いたのが10時半過ぎ。
店内には他のお客さんはいませんでした。店長がいたので、
「昨日ほら、変な中国人が来ましたよね。11時って言ってたんで、
 気になって来てみました」そう言ったら、「うーん、あの人たち、
 冗談にしては真面目な口調だったし、こっちも気になってるんだよね」
と答えましたが、店の中の水槽の水は特に減らした様子はなかったんです。

水槽を見て回ってるうち11時近くなりました。そのとき、
オーンという音が店の中に響いたんです。うーん、どう表現したらいいか。
お寺の鐘ってありますよね、ゴーンと撞くやつです。あの余韻だけを
大きくしたような。近くの水槽のガラスがピリピリいってました。
で、時計の針が11時をさしたときです。店に何十とある
水槽の中が青くなったんです。深い青い色で、どれにも中に20cmもある
大きな鱗のようなのが見えたんです。「あああっ!」店長が叫び、
その瞬間、すべての水槽の水がしぶきを上げて溢れたんですよ。
私もびしょ濡れになってしまいました。でも、すぐ水槽は
もとに戻ったんです。私と店長は顔を見合わせてましたが、
私が「巨大な生物がいましたよね。全部の水槽の中に」と言うと、

「ああ、俺なんか目玉を見ちまった。皿くらいもある金色の目玉・・・」
呆然としてました。わかりにくいかもしれないので説明すると、
店の水槽は離れた場所にあるじゃないですか。その一つ一つに
巨大な生物の体の一部分が見えたってことです。けど、
店の中の他の場所には何もない。鏡が割れて破片がちらばり、
そこに何かが映ったような状態と言えば、わかってもらえるでしょうか。
でね、水はこぼれたものの、それ以外の被害はありませんでした。
中の魚も水草も死んだってこともなかったです。翌週の休日も
その店に行ったんですが、店長が興奮した声で、「あれ以来、
 すべての魚が繁殖してるんだよ。水族館でも難しい種類も。
 それに水草もどんどん伸びてる」こんなことを言ったんですよ。
いったいどういうことなんでしょうか。ここの方なら何かわかりますか。