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式仕舞いの話

2021.02.15 (Mon)
bigbossmanです。今回もまた、ボランテイア霊能者であるKさんと
ごいっしょさせていただいたときの話です。
ただし、ホテルのバーでの会話だけでなく、後半は実際に現地に
行っての活劇もあります。これは今から2年前くらいのころですね、
「Kさん、最近は何か霊障事件がありましたか」 「ああ、あった。
 というか現在進行形なんだが」 「聞かせてくれますよね」
「ああ、それだけじゃなく、人手が足りないんで、お前にも
 手伝ってもらうかもしれん」 「あ、それはかまいませんが、
 自分は霊感はありませんよ」 「わかってる。プロが同行して
 くれるから心配はいらん。お前はまあ、雑用係だ」
「ああ、はいはい。発端はどんなことです?」

「ある町でのことだ。最初は、風呂場の覗きだ」 「え?」
「といっても、覗かれたのはジイさんだけどな」 「どういうことです」 
「仮にAさんとしておこうか。60代後半で、再雇用で町立病院付属の
 レストランで働いてる。一軒家で一人暮らしだ」 「今はたいへん
 ですよね。地方は特に、60代、70代でも働いてる人が多い」
「うん、貧困老人ということもあるが、若いやつがいないせいで、
 仕事があるんだよな。それでな、Aさん、2週間前の夜の9時過ぎ、
 自宅の風呂に入ってたんだ。風呂場は外に面してるが、道との
 間にブロック塀がある」 「はい」 「で、風呂場のくもりガラスに何かが
 映ってることに気がついた。ふだん、そんな影はないのに」 
「はい」 「しかもその影は動いてる。つまり、塀を越えて

 Aさんの家の敷地に何者かが侵入し、風呂場のサッシの前にいる」
「はい」 「泥棒? まさか覗きということはないだろう、年寄の
 一人暮らしというのは、地域のものはみんな知ってる、
 Aさんはそう考え、声もかけず、思い切ってサッシを開けてみた
 そうだ」 「はい」 「そしたら・・・」 「何がいたんです」
「道からの街灯の光で見えたのは動物の頭」 「なんだ人間じゃないのか」
「ああ、けどな、その動物に頭が3つあったとしたらどうだ」
「え?!」 「Aさんが見たのは、真ん中にタヌキ、その両側に
 ムジナとキツネの頭が生えたもの、それが直立して風呂場の
 窓の前にいた」 「ムジナというのはアナグマのことですね。
 3匹がいっしょにいたんじゃなくて?」 「いや、胴体は一つ

 だったそうだ」 「えー、信じがたいです」 「Aさんは確かに
 見たと言ってる。そのとき、驚きのあまり後ろにひっくり返って
 肘を骨折した。そのまま這うようにして風呂場を出て、警察に
 連絡したんだ」 「で、どうなったんですか」 「パトカーが
 駆けつけたときには何もいなかったそうだ。けど、下の地面に
 動物の毛らしいものが落ちてた」 「うーん、ジイさん、酒飲んで
 たんじゃないですか」 「ああ、晩酌はしたと言ってたが、
 缶ビール1本だけ」 「ジイさんがノラ猫かなんかを見間違えた
 というのが一番ありそうですけど」 「まあな、そんとき見たのは
 Aさん一人だけだからな。けど、その2日後に、町中がひっくり返る
 ような出来事があった」 「どんな?」 「その町は山沿いにあってな、

 ほぼ町の中央を流れの速い川が通ってる」 「はい」
「橋も何本もかかってるんだが、川の水面に近いところを顔が流れてった
 という通報がいくつも警察に入ったんだ」 「顔?」
「そうだ、しかもただの顔じゃなく、縦横2mはあったそうだよ」
「えー、嘘でしょう」 「いや、目撃者は40人くらいいるんだが、
 その証言はほぼ一致してる。巨大な女の顔、40代くらいの中年女性と
 いう意見が多かったが、それがニヤニヤ笑いを浮かべながら、
 流れに乗ってスーッと通り過ぎていったそうだ」 
「それ、顔を上に向けた巨人の女が、川の中を歩いてったってことですか」
「いや、体を見た人はいない。顔だけ」 「で、どうなったんです」
「通報を受けた警察も困ってしまってな」 「そうでしょうね」

「いちおう警官を出して川岸を捜索させたが、おかしなものは見つからない」
「で」 「しかし目撃者40人というのは重いだろ、それで署長が、
 町に一つだけある神社の宮司に相談した」 「はい」
「その宮司が神社本庁に連絡し、さらにそっから俺に話が回ってきた」
「どうしました?」 「最初はむろん、変な話だなあと思ったが、
 その町の場所を聞いて事情がすぐ飲み込めた」 「それ、どこですか」
「〇〇県の〇〇町」 「え? あ、もしかして」 「お前もわかったようだな」
「つい去年、教祖が亡くなって解散したばかりの新興宗教の霊堂が
 山麓にあるとこですよね」 「そうだ、集団生活してた信者も
 ちりじりになって、その建物は荒れている」 「えーと、たしか、
 珍しい陰陽道系の宗派でしたよね」 「そう、教祖は陰陽師を称してた」

「どうするんです」 「来週初めに、神社本庁の専門家と現地に行く」
「自分もついてっていいんですよね」 「さっきそう言ったろ」
「ありがとうございます」と、こんな会話があって、Kさんのレンジローバーに
自分と専門家が乗せてもらい、3人でその町に向かいました。
神社本庁のプロは40代くらいですかね。自分とKさんのちょうど
中間くらいの年配。神職の装束はつけておらず、ジャージ姿でした。
ここからは車の中での会話です。自分が「その新興宗教の教祖、陰陽師を
 名のるだけあって、式神をつくってたんですね」 「そうだ」とKさん。
「式神って、作った本人が亡くなると消えちゃうんじゃないんですか」
「普通はそうだが、タネのあるものは消えない」 「タネ?」
「力のある陰陽師なら、何もないとこから式を作り出せるが、

 半端な霊力だと、式のタネになるものが必要なんだ」 「意味が
 わかりません」 「粘土で人形を作るとして、中に針金とかで芯を入れないと、
 すぐ手足が くたっちゃうだろ」 「ああ、何となく理解できてきました」
ここで、プロの人が口を開き、「今度の始末はそう難しいことじゃないが、
 力仕事が必要でね。だからあなたに来てもらいました」そう言ったんです。
レンジローバーは町の中心部を抜けて山に向かい、やがてだだっ広い
道路に出ました。「これは?」 「教団の霊堂にしか通じない道だよ」
「立派ですね。お金が相当あったんでしょうね」 「ああ。ただ、その教団、
 後継者を決めてなかったから。教祖が一代で興して、後継者がいない場合、
 四分五裂してしまうことが多いんだよ」 「なるほど」
そうしてるうち、金色に塗られた下品な感じの霊堂が見えてきましたが、

放置されて1年、背後の山から飛んできた落葉がそこかしこに積もってましたね。
その前庭に車を停め、プロがカーゴから木材を出して祭壇を築きました。
神道式とは言えない見たことのない形の。「郷に入っては郷に従え」と
プロが言い、それで、古式陰陽道のものだとわかったんです。その前で火を焚き、
プロが祝詞ともお経ともつかないものを唱え始めると、風はなかったのに、
近くの落葉が舞い始めました。Kさんが車から木でできた剣を出して身構え、
自分もあたりに気を配ってると、ザザッと積もった落葉が盛り上がり、
こちらに一直線に進んできて、すぐ前まで来たと思ったとき、Kさんが木剣を
軽く振りました。クオンという鳴き声が聞こえ、中空に動物3匹が かたまった
ものが姿を現し、すぐに骨になって崩れ落ちたんです。「それが芯だ」とKさん。
で、骨と祭壇はそのままにし、プロが「水場を探そう」と言い、3人で霊堂の

裏に回ると、幼稚園児用くらいの浅いプールがあったんです。プールの
中も落葉だらけでしたが、くるぶしくらいまで水が残ってました。
プロはその場でまた呪言を唱え始め、するとプールの端のほうで落葉と
水がぶわっ持ち上がったんです。Kさんはズボンが濡れるのもかまわず、
そちらに走りより、真上から木剣を振り下ろし・・・ブチッと太い綱が
切れるような音がしました。で、そこに浮かんできたのは2m近い大きな
甲羅だったんです。亀じゃなくスッポンだと思いました。「大スッポンだ、
 アフリカから輸入したんだろう」 「これが式神の芯」 「そう、タヌキ、
 キツネ、ムジナの骨を混ぜたものとこの大スッポンで、2体の式神を作ってた、
 それを今、仕舞い終えたんだよ。さ、こっからはお前の仕事だ。
 この甲羅、かなり重そうだが、車まで運ぶぞ」 「う」

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マンションの地下室の話

2021.02.10 (Wed)
三田ともうします。25歳、ある会社で事務をやっています。
2年前に結婚して、夫は3つ年上の28歳、広告デザインの会社に
デザイナーとして勤めてました。子どもはいません。それで、
今年の4月に、2部屋の賃貸マンションに転居したんです。
理由は、夫の職場に近く、私も会社に少し近くなるから。
それと都内なのに、そこまで家賃が高くなかったからです。
そんなに長くいるつもりはありませんでした。子どもが生まれて
2年か3年くらい、保育園に入る頃まで。で、今、事故物件というのが
評判になってますよね。殺人や自殺があった部屋、病死でも
死後長期間発見されなかった部屋とか。そこは気になったので、
不動産屋さんには確認を取りました。そしたら、

その部屋は・・・心理的瑕疵物件って言うらしいですけど、
そういうものではない。直前の入居者は普通に引っ越ししていったし、
それ以前も部屋で亡くなった人はいない。それに、私たちの
部屋だけが安いんじゃなく、マンション全体が同じだと。
それはそうですよね、だって間取りも築年数も同じなんだから。
それで、格安物件が見つかってよかったなあと思ってたんです。
特に何事もなく2ヶ月が過ぎ、私も夫も、職場に近くなった
ぶんだけ朝、寝てられるって喜んでました。
私は定時で帰ってきますが、夫の仕事はハードで、12時過ぎまで
会社にいることも珍しくなかったんです。マンションの他の住人は
私たちと同じような、子どものいない若い人が多かったです。

都会ですから深いつき合いはありませんが、両隣の方とは、
顔を合わせればあいさつするようになりました。
それで、6月の夜です。そろそろ暑くなってきたので、夫が夜に
エアコンをつけようと言い出し、私が冷え性気味でエアコン嫌いなので、
ちょっと言い合いになりました。でも、すぐ仲直りしてお酒を
少し飲んで寝たんです。で、私はあんまり眠りが深いほうではなく、
夜中の1時過ぎに目を覚ましました。じっとり汗をかいてて、
あ、夫の言ったとおりエアコンを軽くかけとけばよかったかなと
思ったんですが、ダブルベッドの隣に夫がいませんでした。
トイレかなと考えて寝なおそうとしたんですが、夫は20分を過ぎても
戻ってきませんでした。おかしいなあと、トイレまで見に行ったら

いなかったんです。外出したんだろうか、でも、着替えは寝室に
あるので、パジャマから着替えてればそのときに私も気がつくはず。
それからさらに15分たって、やっと夫が戻ってきました。
パジャマのままでした。「どこ行ってたの」そう聞いたら、
最初、ベッドの横に立ったまま何も答えなかったので、も一度聞いたら、
「地下室」とぼそっと言ったんです。その地下室というのは、
マンションの地下の駐車場脇にあるコンクリ打ちっぱなしのスペースで
かなりの広さがあります。住人の共同物置にしてよいということでしたが、
わざわざエレベーターでそこに荷物を運び込む人は少なかったんです。
「地下室? 何しに」そしたら、「・・・いや、なんとなく」
納得できませんでしたが、翌日も早かったので、そのときはそれで

終わったんです。で、翌日ですね、夜に玄関脇に詰めている警備員さんに
聞いてみたんです。「昨夜、夜中に外に出た方っていますか?」って。
はい、そこのマンションは、夜間だけ警備員さんが常駐してるんです。
その点でも安心だと思っていたんですが。警備員さんの答えは、
「いや、いなかったはずですよ」でした。夫の様子はそれまでと
変わりはないように思いました。ただ・・・2つおかしなことが
あったんです。一つは、暑がりだったのに、その夜をさかいにエアコンを
つけようって言わなくなったことです。不思議でした。だんだん暑く
なってきたのに、汗をかかず、洗濯のとき見てもシャツがあまり汚れて
ないんです。もう一つは、風呂好きで長湯をするタイプだったのに、
シャワーだけで済ませることが多くなって。でも、それ以外は

普通だったので、深くは気にしませんでした。え、食事ですか?
言われてみれば、いつもより少食だったように思います・・・
それで、3日後、2回めがあったんです。あ、いえ、もしかしたら
私が眠っていて気づかなかっただけかもしれませんが、3日後の夜中、
やはり夜中に目が覚め、夫がいなかったんです。「また地下室?
 でも、何のために」よっぽど地下室まで探しにいこうとかと
思ったんですが、夜中でしたから。待っていると、20分くらいで
戻ってきたので、リビングの電気をつけ、入ってきた夫に「何してたの?」
って強めの口調で聞いたんです。そしたら夫はぼうっとした様子で、
手に持っていた製図用のペンを私に見せ「今やってるデザインのアイデアを
 廊下をうろうろしながら考えてたんだ。で、地下室まで行って戻ってきた

 んだよ」こう答えました。それを聞いて、そのときは、夫は
私と違ってクリエイティブな仕事なんだからと考え、少し反省したんです。
それから、私が気づいただけで2度、夫は夜中に地下室に出ていきました。
やっぱりおかしいですよね。仕事が早く終わった日、地下室に
入ってみたんです。かなり広く、マンションの2部屋分はあって、
置かれているのはパイプ椅子や机、いくつかのダンボールなどで
がらんとしてました。ああ、これなら思う存分歩き回れるかと
思ったんですが・・・ それからまた3日して、夜中、夫が寝室を
出ていく音で目が覚めました。それで、音をたてないよう、こっそりと
後をつけたんです。夫が玄関を出てからしばらくしてドアを開けました。
もう廊下には夫の背中は見えず、エレベーターに乗ったんだろうと

思いました。2つあるエレベーターは深夜は一つしか動いてないので、
私たちの部屋のある階に戻ってくるのを待ち、乗ってBのボタンを
押しました。降りると駐車場に出るんです。で、地下室のほうを見たら、
駐車場に向いた窓が真っ暗だったんです。いないんだろうか、それとも
暗い中を歩き回っているのか。怖くなってきたんですが、意を決して
地下室のドアを開けました。鍵がかかってることは それまでなかったです。
入ってすぐの壁に照明のスイッチがあるので、それを全部押し、
中が蛍光灯の青白い光の色になり・・・一番遠いところの壁に向かっている
夫の姿が見えました。「〇〇君!」と夫の名前を呼びました。
そしたら、ふりむ向かなかったので、かけ寄って肩をさわりました。
たしかにさわったんです。でも、その瞬間、夫の姿が消えました。

かき消すようにいなくなったんです。カランと音がして床に何かが
落ちました。我に返って拾い上げると、夫の製図用のペンだったんです。
そういえば、前もこれを持って夜中に出ていた・・・
パニックになりながら、夫が向かっていた壁を見ると、なにやら
小さい字がたくさん書かれてたんです。この間、地下室に入ったときに
気づかなかった、普通に書くよりも小さい字で壁にびっしり、
「死なない 死なない 死なない 死なない 死なない 死なない」と。
地下室中を走り回り、ダンボールを開けたりしていると、
物音を聞きつけたのか、警備員さんが様子を見に来てくれたんです。
「夫がここにいたんです!」そう叫びました。警備員さんは事情が
飲み込めない様子で、「ここは警備員室から見えますが、

 一度も明かりはついてません。それと、ご主人は存じておりますが、
 外には出ていってませんよ。というか、私が配置についてから、
 帰ってこられてもいないはずです」 「!?」その日、夫が帰宅したのが
10時ころで、警備員さんは玄関にいたはずです。事情を話し、
駐車場一帯を探しましたが、誰もいませんでした。夫も私も電車通勤で、
そこには車もありません。もうわけがわかりませんでした。
「いったん部屋に戻りましょう」警備員さんが部屋まで送ってくれ、
部屋の中にも夫の姿はありませんでした。スマホを探しました。
私のはありましたが、夫のはなし。そんなはずは・・・
そのとき、私のスマホに着信が入ってるのに気がつきました。
夫の会社からです。かけ直すとすぐに出て、夫の直属の上司の方でした。

「奥さんですか。何度も連絡したんですが。今、〇〇病院にいます。
 仮眠室で三田君が床に倒れていて、目を覚まさないので救急車で
 ここに搬送したんです。今、緊急で処置を受けています。
 来られますか? すぐに来てください」タクシーで駆けつけました。
会社の方が大勢来られていて、病室に案内されたときには、夫はもう
生きていませんでした。・・・後で医師に説明されたのは、
突発的な心臓発作で、それまでに前兆があったのではないかということ。
じゃあ、私が見た帰宅した夫の姿は? あの地下室で見た夫は!?
何もかも、もうわけがわからなかったです。
・・・夫が亡くなって、あれから半年が過ぎました。あの頃の
ことを思い出しては、後悔することばかりなんです。

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町内の呪いの話

2021.02.08 (Mon)
こんばんは、私、西根〇〇と言います。高校2年生です。
よろしくお願いします。うち、小さいですけど神社なんです。
どこにでもあるような稲荷社で、父が一人で宮司をやってます。
お賽銭や社務所での売り上げ・・・あ、売り上げって言っちゃ
ダメなんです。御守や破魔矢なんかは授与するもので、お代は
お礼とか報謝って言うんです・・・で、その報謝料だけでは
とてもやっていけません。氏子さん方の毎年の寄進で、
なんとかまかなっているんですね。それで、社務所のほうは
アルバイトの人が来てますが、学校の長期休みのときは、私も
そこに入ります。初詣のときなんか、それなりに忙しいですよ。
小さな神社でも、年間行事はきちんとこなさなくちゃなりませんから。

それで、神社に生まれ育ったって言うと、よく「何か不思議な
 経験がありますか」って聞かれるんです。「そんなのないですよ」
と答えることにはしてますけど、じつは数年に1度くらい、
やっぱり説明のつかないようなことが起きるんです。今から
お話するのは、そんな中の一つですね。まず、うちの神社ですが、
4つの町内の真ん中にあるんです。で、だいたい氏子さんも
そこに住んでいる人たち。あと、地域にある小学校の保護者の
中にも氏子さんがいます。これは、夏祭りのとき、そこの
小学校の生徒がお神輿をかついでくれるからです。
で、うちの神社の護りの力も、だいたいその範囲内で。
あ、護りの力ってご存知ですよね。神社というのは、

建っている地域を護ってるものなんです。大きい神社だったら、
その県内全域に力が及びますが、うちくらいだとせいぜい数町内。
あれは去年の夏休みのことでした。私は部活動とかには入ってなくて、
その日も午後から社務所に出ていましたが、お客さんは
一人もなかったんです。ヒマにしていると、夕方になって父が入って
きました。いつもは朗らかな父ですが、そのときは眉根にシワを寄せ、
ちょっと厳しい表情でした。「宮司様、どうしましたか」って
聞きました。これ、神社内では父のことは「宮司様」って呼ぶんです。
すると父は「巫女職、なにか町内で変なことが起きているようだ。
 ちょっと様子を見に行くから、着替えてついてきなさい」
そう言ったんです。私はそのとき、巫女さんの装束をつけてましたから。

で、動きやすい服装にして、ふつうの和服に着替えた父について
いきました。行った先は、神社から400mくらいの町内の
ゴミ収集所です。金属でつくられてて、戸を開けて中にゴミを入れるん
ですが、その脇のブロック塀に異様なものがあったんです。
そうですね、高さ50cmくらいでしょうか。細い竹を組んで作った
・・・一種の祭壇があったんです。四角く組んだ竹の中には和紙が敷かれ、
上にネズミが1匹置かれていました。もちろん死んだネズミで、
その体に破魔矢が刺さっていました。ひと目でわかりましたが、
それ、うちの神社のだったんです。「えー、こんな使い方をするなんて
 ひどい」と思いましたよ。父に「どうしてわかったの?」と
聞くと、「近くに住んでる氏子さんが教えてくれた」

さらに「これ、何」と聞いたら、「どうやら呪いのようだ」という答え。
さすがにただごとではないですよね。呪いのために祭壇をこしらえ、
ネズミを殺し、しかもそれにうちの神社の神物(しんもつ)が
用いられてる。「どうするの?」 「うーむ、まず誰が誰を呪ってるのか
 特定しないとならんが、これだけでは・・・」と、そのときは
頼りない感じでした。それで、翌日、また別の場所で祭壇が見つかったんです。
最初の場所から200mほど離れた、やはりゴミ収集場の近くで。
祭壇の形は前とほぼ同じでしたが、死んで置かれている動物は、
ネズミからウサギに変わってたんです。野生のウサギなんていないので、
わざわざ買って殺したんでしょう。これも父といっしょに見に行きました。
やはりうちの神社の破魔矢が腹に刺さってました。

それ以外、体に傷はなかったですが、父はウサギを持ち上げて、
「首の骨が折れている。さすがに警察に連絡しないと」と言いました。
それから2日おいて3件目、2件目の場所から300mほど
離れた児童公園のベンチの後ろに同じ祭壇、死んでいたのは今度は猫です。
私はその時点ですっかり怖くなっていました。父は苦々しい口調で、
「まあ、呪い自体はけっこうあることなんだが、うちの社の破魔矢が
 使われているのは許しがたい」そう言いました。
で、神社に戻って、せまい神域の杜があるんですが、その中を
見回りました。もしかしたら、藁人形や五寸釘が見つかるかと考えたんです。
じつは、神社で呪詛を行う人はいて、うちの社でも数年に1度くらい、
そういったものが見つかることがあったんですよ。

でも、そのときは特に異常はなしでした。それから父と社務所に入り、
社務に使っているパソコンを立ち上げました。神社にパソコンなんて変だ、
と思われるかもしれませんが、今はどこも経理ソフトなどを使ってます。
で、インターネットでその地域の地図を出し、祭壇があった3ヶ所に
印をつけました。円の周囲にそって並んでるみたいでしたけど、
まだはっきりしません。父は「これはおそらくもう2回、呪いの儀式を
 行うはずだ。5回めが終わると呪いは成就してしまうだろう。
 その前になんとかする」と。それで3日後、4回目があったんです。
やはり数百m離れたビルとビルの間に祭壇が。殺されてたのは中型犬です。
このときは警官も現場検証に来てました。動物虐待など、何かの
犯罪にあたるからでしょうね。犬は両目を開け、ビルの間からのぞく

せまい空をにらんでました。その場所をパソコンに入れると、
やはりぐるっと円形の続きになり、父は「次はここだろうな」そう言って、
地図の下のほうに印をつけ、5つの点を結ぶと、五芒星の形になったんです。
はい、五芒星は呪力を持つと言われてるシンボルで、西洋魔術で
使われることが多いんですが、日本でも晴明印、桔梗印と言って、
木・火・土・金・水の5つの元素の働きの相克を表すとされています。
「この中心に呪いの対象があるはずだ」五芒星の頂点を線で結んでいくと、
その中心は住宅街でした。「この家が呪詛されている」父は、
線が重なった一軒の家を指差したんですが、そこは一般の民家の
ようでした。それで・・・残念なことに「危険があるかも」ということで、
私はこの呪詛事件の探索から外されてしまったんです。

ですから、ここからの話は後になって父から聞いたことなんです。
その呪いの対象になっている家は5人家族で、40代の夫婦と、主人の母親、
それに中学と小学生の子どもが2人。近所で悪い噂が立ってたんです。
そこの家のおばあさんは寝たきり状態のようで、外出することが
なくなってしまったんですが、嫁に虐待されてるんじゃないか、
っていう。もともと嫁姑の仲が悪いことで評判だったみたいです。
4件目の呪詛があってから4日目の夜中、父は神職の装束で外出しました。
警察には連絡せず、そのかわり信頼のおける氏子連の人を2人連れて。
行った先は、5つ回目の呪詛が行われるはずの場所です。
それで、何があったと思いますか。父たちが待ち構えていると、
夜中の2時過ぎ、そこにやってきたのは・・・

4人組のおばあさんたちだったそうです。はい、全員が懐中電灯と
祭壇を組むための材料を持ち、それと、おそらくペットショップで買った
ばかりの小型種の猿が入ったケージ。猿はまだ生きてたそうです。
もう、どういうことかわかりますよね。そのおばあさんたちは、
呪いの対象になっている家のおばあさんのお花、華道のお仲間で、
そこの家の嫁を呪詛しようとしてたんです。はい、父はおばあさんたちを
社務所に連れてきて、長時間説教をしたそうですよ。呪いなんて
トンデモない。そんなことをすれば必ず自分たちに返ってくると。
警察に通報はしませんでした。そのかわり、民生委員などを通じて
そこの家の虐待を市の福祉課に訴えたんです。その件はまだ解決して
ませんが、いい方向に進んでると思います。まあ、こんな話なんです。






退行催眠の話

2021.02.04 (Thu)
bigbossmanです。みなさんは「退行催眠」という言葉を
ご存知でしょうか。精神病、あるいはノイローゼなどの治療として
催眠術をかけ、術者の言葉によって、だんだんに現在の年齢から
過去へと記憶を遡らせていくというものです。これにより、
自分でも忘れていた何気ない記憶が明瞭に見えてくるとも
言われます。退行催眠は、本人に記憶がある6歳程度で
やめておくのがよいとされていますが、それ以前に遡ることも
できます。3歳、2歳、1歳、0歳、そして母親の子宮の中に
いるときまで。そのときには、自分の心臓の鼓動とあいまって、
母親の鼓動や、血液、体液の流れる音なども思い出すそうです。
じつは自分はアメリカにいたとき、催眠術を少しだけ勉強し、

ある程度ならかけることができます。これを言うと、
クチの悪い友人からは、「占星術のお客にかけて金を引き出して
るんだろう」などとからかわれたりするんですが、誓って
そんなことはありません。催眠術には限界があり、いくら深く
かかっていても、被術者は自分が損をするような行動は
とらないものです。ですから、催眠術で被術者に自殺をさせたり、
あるいは誰かを害するような行動をとらせようとしても、成功する
ことはありません。ただし、その人に強い自殺願望があったりした
場合は そのかぎりではないんですが。さて、では、退行催眠で
母親の胎内にいたときよりも さらに時間を遡ることって
できるんでしょうか。これはできます。

アメリカで1980年代、精神科医のブライアン・L・ワイス
という人物が「前世療法」というのを発表しています。
ワイス医師は、これによって、精神外傷を取り除くことができると
主張しました。実際、多くの患者が自分の前世を見たという
記録が残っています。ただ、これについては検証されたものも
いくつかあり、それらの記憶には多数の誤りがあって信用できないと
されました。つまり、過誤記憶、虚偽記憶ということですね。
患者は、自分の想像で ありもしない記憶を創り出し、それを述べた。
いずれにしても、前世療法は危険であり、実施するべきではない
というのが近年の流れですね。今回は、この退行催眠を受けた
ことがあるというUさんから、いつものバーでお話を伺いました。

「あ、どうも、占星術をやっているbigbossmanです。よろしく
 お願いします」 「こちらこそ」Uさんは30代初めの女性で、
現在はプロのピアニストとして、イタリアを拠点に音楽活動を
行っているそうです。「退行催眠を受けたのはいつのことですか」
「私が、某音楽大学の4年生のときです」 「ははあ、そのきっかけは?」
「bigbossmanさんがご存知かわかりませんが、その大学では、
 初冬に音楽祭があるんです。祭という言葉がついてますが、
 実際は学内コンクールです。ピアノ、ヴァイオリンなどの楽器ごとに
 わかれて、先生方やゲストの音楽家の先生の前で演奏し、順位がつきます」
「大変そうですね」 「はい。この時期の音楽科の4年生はみな
 ピリピリしています。なにしろ1日の大半、練習してますから」

「それは卒業に関係があるんですか」 「そういうわけではないですけど、
 部門で1位になれば、2年間のヨーロッパ留学が公費でできるんです。
 その後はまずプロになります」 「なるほど、将来がかかってると
 いうわけですか」 「はい。・・・当時、私は学内の評判で、
 ピアノ部門で1位になるだろうと言われていて、自分でもそのつもり
 でした」 「自信があった?」 「うーん、自信というか、
 そうしなければいけないという強迫観念だったと思います」 「で?」
「1日14時間、わずかな食事の時間以外はすべて練習。これには
 手指の柔軟なども含まれますが。それで、睡眠時間は毎日4、5時間
 でしたけど、眠っても自分が練習している夢を見るんです。
 それに、昭和の時代のことですが、音楽祭を目前にして

 疲れました、というメモ書きを残して自殺した学生もいたということです」
「うーん、で」 「私は自宅生ではなかったので、練習はいつも大学の
 防音のピアノ室でやってました。その時期、3年生以下は、4年生の
 ために使用を遠慮するんです」 「なるほど」 「それで、その日も
 朝早くからピアノ室に入り、指の練習から始めたんですが、すぐ
 音がおかしいのに気がつきました」 「で」 「調べてみたら、
 鍵盤と鍵盤の間にカミソリが何枚も」 「うわ、ケガはなかったんですね」
「はい、ただ・・・ それで気持ちがぷつんと切れちゃったんです。
 もう限界だったんですね。そのまま部屋に戻り、布団をかぶって
 寝ちゃったんです。次起きたときには、まる1日以上たってました」
「うーん、昔の少女漫画みたいに、Uさんのライバルがやったんでしょうか」

「・・・そのときはそう思ってました。何もかも嫌になって、
 そのまま部屋に引きこもったんです」 「で」 「3日間くらいそうして
 たと思います。そしたら、仲よくしてた1年後輩の女の子が様子を
 見にきてくれて、その間食事も取らないでいた私を無理やり外に
 引っぱり出したんです」 「で」 「ファミレスに行っていろいろ
 聞かれたので、あったことを話しました。そしたら、その子は、先輩は
 絶対プロにならなくちゃダメな人だから、そう言ってくれたんですが、
 気力がわいてきませんでした」 「で」 「その子は、自分がよく知ってる
 催眠術の先生がいるから、そこで見てもらおう、優しい女の先生だよって」
「行ったんですね」 「はい。もし病院と言われたら断ってたかと思います。
 催眠術を信じてたというか、何の知識もなかったですけど」

「それで」 「ついていった先は、意外にも普通の民家だったんです。
 その子が事前に連絡してて、40歳くらいの、笑顔の優しい女の人が
 出迎えてくれました」 「その人が催眠術師」 「はい。開業していると
 いうわけじゃなく、困った人を助けるみたいな形でやってたんですね」
「で」 「フローリングの一室に案内されましたが、6畳ほどの広さで、
 リクライニングできるベッド以外、何もありませんでした。
 bigbossmanさんも催眠術をやられるんですよね」 「かじった程度です」
「ならご存知だと思いますが、入眠の儀式があって、その先生の声しか
 聞こえなくなりました」 「で」 「最初に、いつも練習してるピアノ室が
 見えました。そこで黒鍵のわきにカミソリの刃を入れている女の人・・・
 それ、私だったんです」 「えっ!?」 「それから少しつ時間を遡って、

 さまざまなものが見えました。高校を卒業して東京に一人出てきた自分。
 中学のとき入ってた吹奏楽部の大会、発表会の前に緊張している
 小学生のとき、そして、親に買ってもらったピアノが家に来て、
 喜んでいる小さな私・・・ たどたどしく右手だけで鍵盤を押している私に、
 それを見ていた私がふっと重なったんです。そこからの記憶はありません。
 深い深い眠りに入って、夢も見なかったと思います」 「どうなりました」
「そんなに長い時間ではなかったようです。目が覚めるとすごくすっきり
 した気分になってました。お礼は後ほどということで、催眠術の先生の家を
 後にしたんです」 「で」 「後輩の子はまだ心配してましたけど、
 ありがとう、もう大丈夫と言って部屋に戻りました」 「音楽祭は?」
「参加しないわけにはいかないですから、それからは1日1時間だけ

 ピアノに向かいました。課題曲も自由選択曲も、子どものときのように
 音符一つずつを大事に大事に弾いて」 「結果は?」
「それが、どうでもいいつもりだったんですけど、1位だったんです」
「うーん、よけいな力が抜けたということでしょうか」 「わかりません。
 ゲストで来られていた卒業生の、高名なプロの先生が講評のとき、
 こんなこととをおっしゃっていました。1位になった子の音は柔らかく、
 懐かしかったと」 「なるほどねえ」 「卒業後、オーストリアの
 学校に入り、さまざまな経験をしました。人生の中で一番濃密な
 2年間だったと思います」 「その催眠術の先生とは」 「私が
 日本で演奏する機会があるたび、ご招待させていただいてます」
「いや、今日は貴重なお話、どうもありがとうございました」

キャプチャ

 
 

ホームページの村の話

2021.01.26 (Tue)
あ、ども、今晩は。俺、早瀬っていって、都内のある大学の
2回生です。オカルト研究会に所属してます。入った動機は、
もともと子どもの頃から、それ系の話が大好きで。
うーん、そうですね。UFOや陰謀論も好きだけど、やっぱ
一番興味があるのは心霊です。幽霊はいるし、死後の世界も
あると思ってたんですが・・・それでね、今、オカルトブームと
言ってもいいような状況でしょ。地上波テレビであんまり
オカルトを扱わなくなったかわり、ネットは盛り上がってます。
特にyoutubeですね、怪談語りや朗読、心霊スポット凸とか、
もう怪談師なんて何人いるかわかんないです。けど、
うちの大学のオカルト研究会は入るやつが少なくて。

暗いやつが多いサークルだと思われてるんでしょうね。
ま、それは否定できないんですが・・・俺らの下の1回生は
一人だけだし、全体で女子はゼロなんです。それでというか、
3年の先輩たちが、もっと目立つ活動をしないとサークルが
消滅してしまうって言い出して。最初はyoutubeをやろうって
話になったんですが、いざやってみるとネタが続かなかったんです。
youtubeって、ほぼ毎日投稿しないと固定ファンがつかないんですね。
それで、まずはネタをちゃんと集めようってことに。それまでも
サークルのブログはあったんですが、更新もあんまり
してなかったのを、ちゃんとしたホームページにして、そこにまず
ネタをストックし、それからyoutubeに流そうって相談がまとまりました。

でね、「お前らヒマだろ」って言われて、俺ともう一人の2回生、
湊ってやつが担当にさせられたんです。まあ、俺と湊が情報工学部
ってのもあったと思います。パソコンの操作は慣れてますから。
で、ホームページ作りが始まり、サークル長のあいさつとか、
メンバー紹介とかはブログからコピペしました。それでね、
企画として、ありきたりですけど、全国の心霊スポット地図を
載せることになって。けど、その手のサイトっていっぱいあるじゃ
ないですか。実際、アクセス数はあんまり伸びなかったんです。
それで俺が、ブログの中に心霊スポットを作って、ホラーゲーム
みたいに、見にきた人が自由にそこで遊べるようにって考えました。
グラフィックなんかの打ち込みは大変でしたが、

夏休み、毎日出てきて、少しずつやっていったんです。でね、
そのホームページの中の心霊スポットは、「四石碑の村」って
名前にしたんです。廃村ですね。明治の時代に栄えてた鉱山の村が、
閉山ともに廃墟になり、ボロボロの建物がいくつも残ってる。
で、その村に鉱山事故とかの記念碑が4つあるんです。
訪問してきた人は夜の村の中を回って、その石碑を見つけていく。
ゲームじゃないんだけど、そんな感じで、4つの石碑を全部見つけたら
達成感が得られるよう考えました。で、これを作ってる最中、湊と仲が
悪くなったんです。湊はもともと、あんまり心霊とか信じてなくて。
オカルト研究会に入ったのは、自分だけでユーチューバーとかに
なろうと思ってのネタ探しだってことが、だんだんわかってきたんです。

これ、腹立ちますでしょ。心霊を信じてないくせに、それで金儲け
するつもりかって思いました。それに、湊は俺と同んなじくらいに
パソコンができるのに、面倒な仕事はみな俺に押しつけてきて。
で、ケンカみたくなって、後半のほうはずっと俺一人でやってたんです。
それでも夏休みが終わるギリギリで完成しました。新学期が始まったら
先輩たちに見てもらう。その前に、やっぱ湊に見せなきゃいかんでしょ。
サークル室のパソコンで見せたら、「うわあ、メンド。お前よく
 つくったなあ」て、ひと事みたいに言ったんで、また腹が立ちました。
でね、4つの石碑のうち、鉱山事故のやつ、昔の飢饉の犠牲者のやつ、
公園にある古墳の近くのよくわからないやつ、この3つは
それほど時間をかけずに見つかるようにして、ただ最後の一つだけは

慎重に隠して、村の中を歩き回って、謎を解かないと発見できないように
したんです。案の定、湊は見つけることができず、「どこにあるんだよ」
ってイラ立った調子で言ったんで、俺は「最後のは難しいんだよ。
 この廃村は今日中にウエブにアップするから、テストもかねて
 お前、家で探してみろよ」 「チェッ」とか言ってましたね。でね、
じつを言うと、そのときはまだ、4つめの碑はなかったんです。
場所は、村外れの神社の裏って決め、石碑自体もできてて、
あとはそこに入れるだけにしておいたんですけど。ザマミロ、湊のやつ
一晩中探し回るか、それとも早々にあきらめて寝てしまうか。
おそらく後者だとは思ってました。いちおうね、探せなくてメールや
電話が来るかもしれないんで、スマホは電源オフにしてたんです。

やっとできたんで解放感がありました。かなり根を詰めて
やりましたから。その日はビールやチューハイを買い込んで、
酔っぱらって12時過ぎに寝ました。で、夢を見たんです。
真っ暗・・・でもなく、大きな月が空に見えて、空気が青みがかって
ました。「あ、ここは?!」自分の作った廃村だと思いました。
月の光で、輪郭だけが照らされた古い家並み。ただ、このとき、
これは夢なんだって、はっきり自覚はしてなかった気がします。
もちろん廃村なので、いくら月明かりと言っても、街灯もなく、
足もとが見えなくて、何かにつっかかって転びそうでした。どうやら
村の中央をつっきる一番広い通りにいるみたいだったので。慎重に
一歩一歩進んでいきました。どこに行くってあてはなかったんですが。

どのくらい歩いたか、夢の中なので時間の感覚がつかめなかったです。
村の外れの、それ以上マップできない突きあたりまで来たとき、
「おーい、誰かいませんか、おーい」という呼び声が聞こえて
きたんです。湊の声だとすぐわかりました。やつもこの村にいるのか。
「ここにいる!」大声をあげると、ややあって「早瀬か?!」
そっからお互いに呼び合いながら、声のするほうに進んでって、
人の姿がぼんやり見えてきたんです。暗くて顔はよく見えなかったけど、
湊だと思いました。すぐそばまで行くと、湊は「お前、よく一人でこんな
 丁寧に作ったな。行っても行っても村の中だ。石碑は3つは見つけた。
 けど、最後の一つはわからんかった」こう言ったんですが、怒ってる
口調じゃなかったです。「スマン、じつはまだ、4つめは入れてないんだ」

「マジかよ!」 「ああ、けど、場所はもう決めてある。村外れまで
 きてるから案内するよ」すぐに神社の鳥居が見つかり、参道に入ると、
社殿の前にオレンジの灯りが見えました。「え、俺らの他に人がいるのか?」
でも、ロウソクは立ち並んるものの、社殿の扉は閉まってて人影はなし。
「この裏だよ」そう言って、湊とともに神社の横を通って裏に回ると、石碑
らしきものがあったんです。「ええ!?」 そのとき急に、稲妻みたくあたりが
真っ白になり、碑に彫られた文字が見えて「湊〇〇ノ墓」。そんな馬鹿な。
ここで目が覚め、気がつくと朝でした。でね、これで湊が実際に死んでた
とかならオチがつくんでしょうけど、そんなことはなく、その日、しれっと
サークルに出てきて、「4つめは見つからなかった。それで夜中
 お前に連絡したが、スマホ通じなかったぞ」って言ったんです。

それで、これだけなら、すべてが俺の夢ってことで片づくんだけど、
ほら、まだ入れてなかった4つめの碑、夢と同じように「湊〇〇ノ墓」って
なってたんです。俺が作った覚えはまったくないけど、もしかして
無意識のうちにやったんでしょうか。

キャプチャddd




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