女性週刊誌とオカルト

2018.06.29 (Fri)
今回はオカルト論でいきます。みなさんは、女性週刊誌なんか読まれるでしょうか?
例えば代表的なところでは、「女性自身」とか「女性セブン」とかですが、
まず男の人は読まないと思うんですよね。自分も、買って読んだりすることは
ないんですが、この2誌については注目はしています。

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というのは、どちらもこれまで、心霊写真などを掲載するコーナーや、
怪談を紹介する囲み記事があり、そこから発生したオカルト話が
世間に流布している例が多いんですね。男性週刊誌の「週刊ポスト」や
「週刊現代」などには、その手の話はあまりありません。

いくつか例をご紹介したいと思います。「御殿場市殺人事件」
昭和62年(1987)静岡県御殿場市の川原で、男性の絞殺死体が発見され、
会社員のAさん(37歳)と判明しました。警察が妻B子に事情を聞くと、
夫には1ヶ月前からたびたび不審電話がかかってきており、
その日も電話で呼び出されて川原に向かったという。

しかし、B子の証言を怪しんだ警察は尋問によって追求し、
その結果、B子が夫殺しを自白したんですね。まあ、ここまではありふれた
事件だと思いますが、その数日後、「女性セブン」の心霊写真コーナーに、
B子が林の中にいる息子を撮影した写真が、投稿されていることがわかりました。

これ、画像を探したんですが、残念ながら、古い話なんで
ネットに残ってないんですよね。その写真自体は、よくある木の葉の影が
見ようによっては人の顔に見えなくもない、という程度のものだったんですが、
当時、心霊写真研究の第一人者だった中岡俊哉氏が鑑定し、
「被写体の子ども、あるいは撮影者に霊障のおそれがある」と述べています。

心霊研究家 中岡俊哉氏
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この一連の経緯は、当時のオカルト界では大きな話題になりました。
ただし、この鑑定結果が載った週刊誌が発売されたのは、殺人が行われた後のことで、
中岡氏の鑑定結果が、犯行に影響を与えたということではありません。
さすがに「女性セブン」もマズイと思ったらしく、
誌面で、くり返し記事と殺人事件との因果関係を否定していました。

「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」いわゆる宮崎勤の事件ですが、
平成元年(1989)「女性セブン」の編集部に、「朝日新聞」と「読売新聞」に
載った宮崎の写真に人の顔らしきものが写っているので調べてくれ、
という投稿があり、「女性セブン」は、写真のそれらしき部分にエアブラシで
顔を描いて強調したものを誌面に掲載しました。(下図)



これについて、「女性セブン」は読売新聞から正式な抗議を受け、
写真を加工して用いたことを認めて、誌面で謝罪することになります。
ただ、当時は、一般紙に載った報道写真を女性週刊誌がとりあげて、
心霊が写っているか検証するというのは一般的に行われていて、「女性自身」も、
昭和54年(1979)の「日本坂トンネル火災事故」で、「静岡新聞」の現場写真に
写った犠牲者らしき顔を強調したものを誌面に載せています。

「秋田児童連続殺人事件」平成18年(2006)畠山鈴香が、
自分の娘を含む2人の子どもを殺害した事件ですが、
「女性自身」が犯人の自宅の、誰もいないはずの窓に、人物らしき影が写っている
写真を掲載して話題を集めました。どう思われますでしょうか。(下図左)

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写真が加工でないのは間違いないですし、人が写っているのも確かです。
ただ、このとき、犯人自宅前には多数人が集まっており、
そのうちの誰かの顔が窓に写り込んでしまったのだろう、というのが常識的な
解釈だと思いますね。窓に映った人物の肩の上にカメラらしきものがあります。

また、これらの女性週刊誌は。このような写真だけではなく、
手記・体験談という形で、実際にあった事件について、
オカルト的な話をつけ加えている場合も多数ありまして、
以下に2つのケースをご紹介しておきます。

「橋北中学校集団水難事件」これは古い話になります。昭和30年(1955)
三重県津市の橋北中学校の1年生女子生徒36名が、
海での水泳訓練中に溺死したという他に例のない大事件で、
このことが、全国の小中学校にプール設備が設置される契機になっています。

この事故について、8年後の1963年、「女性自身」の「恐怖の手記シリーズ」に
当時の橋北中生徒だったという人物の、「防空頭巾とモンペを身につけた
黒い影が海の中にいてみんな引っぱられた」という投稿が掲載され、
この痛ましい事故がオカルト化してしまいました。(下図)



「秩父貯水槽殺人事件」昭和52年(1977)防火用貯水槽の中から、
女性の腐乱死体が発見された、オカルト界ではたいへんに有名な事件なんですが、
この事件から数年たった後、遺体発見前から現場には幽霊の噂があったことを、
「女性自身」が記事に書いています(下図)。



さてさて、ここまでざっと見てきましたが、女性週刊誌が長期間にわたって、
日本の心霊オカルト界で果たしてきた役割がおわかりいただけたかと思います。
ここからの内容は女性差別と言われかねませんが、この手の話は、
上で書いたように男性週刊誌ではほとんどないんですよね。

男性週刊誌にこれを載せても、おそらく「なんだバカバカしい」というような
反応が多く、あんまり売り上げには貢献しないんだと思います。
ということで、今回はちょっと変わった視点からのオカルト論でした。
では、このへんで。

関連記事 『オカルトとエイプリルフール』





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都市伝説の成立条件

2018.06.10 (Sun)


当ブログでは、何回か都市伝説についての記事を書いていますが、
今回はそれ系のお話です。まず、都市伝説とは何か?ということですが、
この定義はいろいろあるものの、「現代を舞台にした、多くの人に伝わっている、
根拠のあいまいな噂話」だいたいこんなところになるでしょうか。

まず、現代の話でないものは除外されます。例えば、「源義経は大陸に渡り、
ジンギスカンとなって広大な領土を治め、その孫、
フビライの代になって日本に侵攻した」こういうのは都市伝説とは
言いませんよね。あくまで歴史上の伝説です。

次に、「多くの人に伝わっている」の部分。いくら興味深い話であっても、
かぎられた地域の少数の人にしか知られていないものは、
やはり都市伝説とは言いにくいでしょう。もっとも、インターネット時代に
なってからは、噂話が拡散するスピードは格段に早くなっています。



あとはもちろん、「根拠があいまい」なのは当然ですね。
もしきちんとした根拠があるなら、それは伝説じゃなく事実になります。
あと、ある研究では、一度ネット上に何らかのデマが広がると、直後に、
それを否定する正しい情報が出ても、人は最初に出たデマを
信じてしまう傾向があるという結果が出ていました。

さて、では、どういう内容が都市伝説として広まりやすいか。
自分が考えたのは、次のようなことですね。
① その話が面白いこと、興味深いこと。
② その話に真実味があること、信憑性が高いと感じられること。
③ 自分にも何らかの形でかかわりがあるかもしれない話であること。
④ 印象的なオチがついていること。

で、まず①ですが、これは当たり前の話ですよね。つまらない話は興味を持たれないし、
広まることもありません。みなさんは、「ミーム」という言葉をご存知でしょうか?
進化生物学者のリチャード・ドーキンスによって考え出された概念で、
一般的には、「ヒトの脳内で進化し、人類の文化を形成する情報」と定義されます。

このミームを説明する場合、都市伝説がよく引き合いに出されます。
情報そのものが生命のような力を持ち、「どうしても他の人に伝えたい」という
気持ちを引き起こして、短期間に広まっていく。その間に、情報の細部が、
不特定多数の伝達者によって、より面白い、より興味深い形に改変されていく。
ですから、よく似た都市伝説がいくつかある場合、その中でも、
最も面白い内容のものが最終的に生き残ることになります。

次に、②の「話に真実味がある」という項目ですが、例えば、
「ある女性がヨーロッパを旅行していて、東欧の某国の店で試着室に入ったところ、
そこで足どりが途絶え、行方不明になってしまった。数年後、別の国の街角で、
両腕両足を切断された、だるまのような姿で見世物にされているのを友人が発見した」



また、「東南アジアの某国を旅行中、ポン引きにいい女がいると紹介されて
ついていき、最初に出された酒を飲んだら記憶を失った。気がついたら、
ホテルの一室で、氷がたくさん浮かんだ風呂に入っていて、
腹部には大きな傷跡があった。病院で検査したら、内臓がいくつかなくなっていた」

自分は、ルーマニアなどの東欧や、東南アジア、南米にも行ったことがありますが、
中には、警官が簡単に買収に応じる国や、マフィアが裏で支配してるところなどもあり、
残念ながら、日本のように治安や人権意識が確保されている国は多くありません。
ですから、こういう話が、いかにも「ありそう」に思えるんですね。

こう書くと、「真実味のない都市伝説もあるじゃない」と言われそうです。
確かに「高速道路を100キロで走っていると、車と並走してくる
着物姿の婆さんがいた」100キロ婆っていうんですが、そういうものもあります。
しかしこれ、自分は都市伝説とはちょっと違うんじゃないかと思ってます。
ギャグの一種なんじゃないでしょうか。

それと、伝説が広まる年齢層ということもあります。
「トイレの花子さん」などの学校の怪談系の話は、大人は信じなくても、
子どもにしてみれば身近で怖いですよね。このような、ある特定の年代に通じる
都市伝説というのも、年齢層によって利用するSNSが異なる現状において、
広まりやすくなっていると思います。

③の「自分に何らかの形でかかわりがある」これは例えば、「ある人がビーチで
美しい女声と知り合い、ホテルで一夜を過ごした。翌朝目覚めると、
ベッドに女性の姿はなく、バスルームの鏡に口紅で、『ようこそエイズの世界へ』
と書かれてあった・・・」こういうのは、ナンパをしてる人には身近で
怖いでしょうし、実際、これに近い話もあるんです。



あるいは、「○○フライドチキンで三本足の鶏を、
遺伝子改変で作って使用している。△△バーガーにはミミズの肉が使われている」
こういうのも、ふだんからファーストフードをよく利用している人にとっては、
身近な話ですよね。また、これ系の都市伝説は、陰謀論と結びつく場合も多いです。

④の「印象的なオチ」は、①とも関係がありますが、
オチが鮮やかであればあるほど、「他の人に教えたい」という気持ちが強くなります。
あと、上には書きませんでしたが、伝説の登場人物のキャラが立っているかどうかも
重要です。「口裂け女」とか「八尺様」とか。

さてさて、ということで、都市伝説の成立条件に着いて考えてみましたが、
自分が書いている怖い話の中にも、都市伝説を利用させていただいているものは
数多くあります。怪談は世に広まってナンボですので、自分が書いた話でも、
都市伝説化するものがあればいいなあと思ってます。では、今回はこのへんで。

関連記事 『アメリカの都市伝説』  『ベッドの下には?』  『ミミズバーガーはある?』

映画『ルール』
ははははは





「蠱術」って何?

2018.05.17 (Thu)
今回はこういうお題でいきます。どっから書いていきましょうか。
まず、「蠱術 こじゅつ」は中国から日本へと伝わったものですが、
さまざまな内容を含んでいて、たいへんわかりにくくなっています。
Wikiを始め、あちこちのホームページに書かれている記述には混乱が見られます。

自分は、すべてのものを総称した上位概念を「蠱術」と呼んでいて、
その中に「蠱毒 こどく」 「巫蠱 ふこ」 「犬神の法」などが含まれます。
蠱術は、簡単に言えば、他人に害を与える目的の、
「中国式の呪詛」を表しています。

さて、「蠱」という漢字ですが、これは壺などの容器の中に、
たくさんの虫がいる状態を表します。ひじょうに古い漢字で、
3000年以上前の中国の殷(商)の時代には、甲骨文字としてすでに
あったようです。ですから、長い長い歴史を持っているわけですね。

「蠱毒 こどく」は、みなさん聞かれたことがあるでしょう。
蠱術の中でも生き物を使う技法で、現在も、中国の少数民族である、
苗(ミャオ)族に伝わっているという話もありますが、
自分が文献を調べても、はっきりしたことはわかりませんでした。

蠱毒
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蠱毒の方法として、『隋書 地理志』には、「五月五日に百種の虫を集め、
大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、
互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、
虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す。」と出てきます。

で、人を殺すためには、その生き残った虫を相手に食べさせるわけですが。
これで本当に人が死ぬかどうかは大いに疑問です。
蛇などの毒は、噛まれて血液中に入った場合は致命的ですが、
口から胃に入った場合は、それほどの効き目はないはずです。

おそらく、中国で古くから研究されていた、漢方薬系の毒薬を
併用したのではないかと思われます。ちなみに、漢方薬には副作用はない、
などという人もいますが、そんなことはなく、重度の肝障害や、
肺炎での副作用死をもたらすものが知られています。

次に「巫蠱 ふこ」について。これは、呪う相手をかたどった木製の人形を
土中に埋め、巫女が呪いをかけるものです。
そんなことで本当に効果があるのか?と思われるでしょうが、じつは、
たいへんな効果があり、中国では内乱まで起きています。

巫蠱
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ただし、効果というのは「巫蠱を行った罪で、相手を陥れる」ことです。
中国の漢の時代、紀元前91年、漢の武帝からうとんじられていた
皇太子の戻(れい)が、重臣の江充から、巫蠱の法を行っていると訴えられ、
皇太子の宮殿から木人形が発見されました。

進退窮まった皇太子は、江充を斬った上で反乱を起こしましたが、
死者数万人の激しい戦いの後、皇后とともに自殺しています。
この事件を「巫蠱の乱」と言います。なお、後に、皇太子の無実が明らかになり、
武帝は江充の一族を滅ぼし、皇太子を追悼しています。

井上内親王を祀る御霊神社


日本でも、奈良時代の「養老律令」において、蠱毒は厳しく禁じられ、
772年、井上内親王が天皇を呪い殺そうとした罪で皇后の位を追われ、
皇太子とともに、不自然な形で死亡しています。
井上内親王の蠱毒は冤罪の可能性が高く、その怨念と考えられる天変地異が
しきりに起こったため、後に無実を認められ、名誉回復されることになりました。

ということで、蠱毒や巫蠱は、その呪いが効力があるというより、
相手が「蠱術を行った」と言いがかりをつけ、呪いの人形などを偽造し、
政敵を葬るために用いられたケースが、たいへん多いんですね。
呪詛よりも、現実的な勢力争いのほうが、ずっと怖いということです。

さて、最後に「犬神の法」ですが、「犬を頭部のみを出して生き埋めにし、
その前に食物を見せて置き、餓死しようとする瞬間ににその首を切ると、
頭部は飛んで食物に食いつき、これを焼いて骨とし、
器に入れて祀る。すると永久にその人に憑き、願望を成就させる」

犬神
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こういう使い方が一般的に知られています。相手を呪う場合は、
その人が通る道筋に、犬の頭蓋骨を埋めておいて踏ませる。
あるいは、犬の首についたウジを乾燥させ、
食物に入れて食べさせるなどの方法があるようです。
でも、現代の目からすれば、こんなことで人が死ぬとは思えませんよね。

さてさて、ここまで見てきたように、蠱術はまあ迷信です。
歴史的には、それを行ったと喧伝して、政敵を葬り去るために使われてきました。
現代でも、メールを偽造したりとか、会話を録音したりとか、
人を陥れるためのさまざまな謀略がありますが、
その一種だったわけです。では、今回はこのへんで。

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「相」って何?

2018.05.13 (Sun)
相というのは古い時代にできた漢字です。木と目が向かい合うことから、
「よく見る」という意味で使われます。例えば、人相、手相、家相
などという、占いのジャンルがありますよね。
また、相を読むことを「観相」などとも言います。

ギリシアの人相学


まず、人相ですが、人の顔だちを見て、性格や生涯の運勢を割り出すもので、
歴史は古く、古代ギリシャ時代からありました。
ヒポクラテス、アリストテレス、プラトンなどが人相学の基礎を築いたと
言われ、その著作も残っています。

また、中国でも古い時代から人相学は発達していて、
日本の人相学は、その流れと考えられます。人相占い師は奈良時代から
いたようで、『日本霊異記』には、大きな神社のそばには、
相八卦見(そうはっけみ)が店を出して、参詣に来た人から
お金をとって占っていたという記述が出てきます。

次に、手相ですが、この由来は古代インドで、それが中国を経由して
日本に伝わっています。ヨーロッパでは、手相を見ることはキリスト教で
禁止されたので、あまり広まりませんでした。
あと、家相は、中国の風水から来ているものですね。

インドの手相学


さて、この「相」について、自分が好きな『今昔物語』に
面白い話が出ているので、ご紹介しましょう。
その昔に、登照という僧がいて、京都一条に住み、人相見の名人として
知られていました。この人は、平安時代の実在の人物です。

登照は、人の顔を見るだけではなく、声を聞いたり、
その動作を見ることで、寿命の長い、短いだけでなく、貧富や、
官位の高い、低いなどもすべて当て、一度も間違うことがありませんでした。
このことが評判になり、登照の僧坊にはたくさんの人が、
連日、占ってもらおうと押しかけました。

さて、この登照があるとき、所用があって朱雀門の近くを通りかかると、
老若男女、大勢の人が門の前にたむろしていました。
何げにそれらの人の顔を見て、登照は驚きました。
というのは、そこにいる人すべての顔に死相が現れていたからです。

「これはどうしたことだ?」 なぜこの人たちはみな死ぬのだろう。
例えばここに、悪人が現れて、手あたり次第に刀をふるったとしても、
全員が死ぬということはないはずだ。とすれば、考えられることは一つです。
登照は、「見ろ、今にも門が倒れるぞ。まごまごしてると、
下敷きになって死ぬばかりだ!」こう大声で叫びました。

朱雀門


この言葉を聞いて、あわてて走り出たものもいれば、登照の言葉を
信じなかった者もいましたが、それまで、ぴくりとも動かなかった門が、
急に傾いて、地響きをたてて倒れ、ぐずぐずしていた者の幾人かは、
門の下敷きになって死んだということです。

この話で面白いのは、登照は門が倒れることを予知したわけではない
というところです。あくまで、その場にいる人たちの相を読んだんですね。
そして全員に死相が現れていることから推理して、
朱雀門が倒れるという結論に達したわけです。

さて、登照の話はもう一つ載っていて、雨がしとしと降り続く夜、
登照の僧坊の近くを、笛を吹きながら通り過ぎるものがありました。
登照はじっと耳を澄まして笛の音を聞いていましたが、弟子を呼んで、
「今、笛を吹いて通り過ぎる者は、命が今日、明日に迫っている」
行ってそのことを教えてやれ、と命じました。

ところが、弟子はその人に追いつくことはできませんでした。
翌日、雨がやんだ夕方のことです。また同じ笛の音が聞こえてきました。
登照は、「おかしなことだ。あの笛の音は昨夜と同じ人だろうが、
ずっと寿命が延びている」そう言って、弟子に笛の音の主を呼んでこさせました。

普賢菩薩


見ると、若い侍でしたので、登照は「失礼ながら、昨夜あなたさまの
笛を聞いたときには、寿命が尽きかけていると思いましたが、
今聞くと、延命の相が出ています。いったい、
どういうことをなさったのですか」と尋ねました。

男は、「いや、特別なことはしていないが、昨夜は普賢講(普賢菩薩を信仰する講)
があって、そこの人たちに混じって、夜通し笛を吹いていたのだ」と答えました。
これを聞いて、登照は、「それは、お経を読む以上の功徳があって、
寿命が延びたのでしょう」と言って男のことを拝み、
男も喜んで、礼を言って帰っていった・・・こんな話です。

さてさて、『今昔物語』は仏教説話ですので、寿命を延ばす功徳のある普賢菩薩
を称えるような内容になっていますが、それはともかく、
これらの話から、相は予知とは違うこと、また、相は変えることができるものだ
ということがわかります。では、今回はこのへんで。







血液型占いってどうなの?

2018.05.11 (Fri)
日本では自分の血液型をほとんどの人が知っていますが、
外国では「血液型、何型?」と聞くと「血液型? 知ってるわけないじゃん!」
と笑われたりします。でも、やっぱり自分の血液型は
知っていたほうがよさそうです。

性格判断とか相性占いとかにも使えますけど、血液型によっては
大ケガで生きるか死ぬかをわける大ごとになるかもしれません。
東京医科歯科大の研究チームが発表した論文によると、
血液型によって、大ケガで死亡する割合が変わってくるらしいのです。

2013年から2016年までに大ケガを負って救急に搬送された900名
以上の患者データを分析した結果、救命を施したにも関わらず
亡くなってしまった患者の死亡率はO型が28%、ほかの血液型は11%でした。
O型の人、えらいこっちゃです。
(GIZMODO)



今回は、科学ニュースから、この話題でいきます。
うーん、まず、血液型とは何かというと、血球の中にある「抗原・抗体」
という物質の有無によって、人間を分類しようとするものです。
日本ではABO式の血液型分類がよく知られています。

A型はBという抗体を持ち、B型はAという抗体を持つ。
AB型はどちらも持っておらず、逆にO型はABのどちらも持っている。
このため、輸血する場合は、同じ血液型どうしで行うのが、
拒否反応が起こりにくく、安全なわけです。



ただし、ABO式は、数ある血液型分類の一つに過ぎません。
他にもRh式などがあるのはご存知だと思います。
血液の中にある抗原の種類は数百あるので、その組み合わせによって、
ほぼ無限に近い血液型タイプに分けることができます。

一卵性双生児でもないかぎり、自分と完全に同じ血液型を
している人はいないとまで言われています。
ですから、ABO式というのは、あくまで一つの目安にすぎないわけです。
まず、このことを前提として頭に入れておいてください。

自分はアメリカにいたことがありますが、たしかに自分の血液型を知らない
という人も多かったです。もちろん、軍に入隊した人は、金属製のタグに
自分の血液型を記入して身につけるので知ってますが、
日本のように、ほとんどの人がわかるということはありません。

さて、じゃあ、日本の血液型占いというのは信じられるものでしょうか?
日本で血液型占いが広まったのは、放送作家だった能見正比古氏によるところが
大きいですね。氏が1971年に出版した『血液型人間学』が大ベストセラー
になり、そこからテレビや雑誌で取り上げられるようになりました。

能見正比古


ただし、能見氏は別に医師や生理学者などではなく、氏の理論は、
統計学的に見ても、お世辞にも説得力があるものではありませんでした。
それなのに、血液型占いが爆発的に広まったのは、一つには、
上記したように、ほとんどの日本人が学校の検査で教えられて、
自分の血液型を知っていたことがあるでしょう。

もう一つは、日本人の血液型(特にABO式)にバラエティがあるからです。
日本の場合、A型が約40%、O型が30%、B型が20%、
AB型が10%くらいです。しかし、そういう国のほうが珍しいんですね。
例えば、ヨーロッパの多くの国では、A型とO型で80%以上になります。

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人間の血液型は、厳密に遺伝によって決まるので、
中には、95%がO型というグアテマラのような国もあり、
そういう国で、血液型性格分類や占いをする意味はないですよね。
また、B型、AB型が少ない国で、ことさらその性格を強調することは、
少数派差別につながりかねない危惧があると思います。

実際、世界の中で血液型占いをやっているのは、日本と、その影響を受けた
韓国、台湾くらいのものです。占星術や、タロットカードなどの占いには
長い歴史がありますが、血液型占いは、
そもそも、血液型が分類できるようになったのが近代のことで、
統計的事実の積み重ねがあるわけではありません。

さらに、血液型による性格分類といった類の話は、
ヨーロッパでのイメージはよくないです。
これは、ドイツ・ナチスの優生学によるところが大きいんですね。
純粋ゲルマン人に多い血液型は○○、ユダヤ人に多い血液型△△、
○○は優れた遺伝形質を持ち、△△は劣ったものである・・・という具合です。

ナチスの優生学 顔の長さを測られる女性


2014年に、日本とアメリカが共同で、1万例以上をサンプルとして、
血液型と社会的行動や性格との関連を研究した調査がありますが、
そこでは、意味のある関連性は見出されませんでした。
ですから、世界的には疑似科学あつかいされることが多いんです。

さてさて、上記の引用に戻って、なぜ救急にかかったO型の人の死亡率が
高いのかについて、はっきりした因果関係はわかっていません。
ただ、数字を見るかぎり、たまたまということでもないようです。
研究チームによれば「O型は血が固まりにくいという性質があるため、
大量出血の止血がしにくいのではないか」という可能性が指摘されています。

うーん、例えば交通事故なんかで、O型は、病院で処置される以前に
大量出血してしまっているなんてことは、ありえるかもしれません。
これを逆に考えれば、血が固まりやすいO型以外の血液型の人は、
血栓などを起こしやすいということが言えそうなんです。

実際、足で血栓ができ、それが心臓や脳に影響を与えるエコノミー症候群は、
O型の人はなりにくく、AB型がいちばん起きやすいんだそうです。
ということで、血液型で性格が違うということに根拠はありませんが、
生理的な違いはあり、それが命に関わる場合もあるということは、
頭に入れておいたほうがいいでしょう。では、今回はこのへんで。