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石のオカルト3

2019.01.16 (Wed)
ということで、今回もしつこく石のオカルト話を続けます。
前回は海外版でしたので、本項は日本のものを中心にみていきたいと思います。
さて、日本の石に関わるオカルトで最大のものは、
なんといっても「殺生石」じゃないでしょうか。

那須の殺生石
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殺生石は、以前に妖怪談義で取り上げましたが、栃木県那須町の那須湯本温に
ある溶岩石のことです。下の画像のように、注連縄が巻かれて
結界が張られています。それほど大きいものではありません。殺生(せっしょう)は、
仏教における最も重い罪で、みだりに生き物の命を奪うことです。

この石のまわりでは、鳥獣の死骸が発見されることが多く、
付近には硫化水素、亜硫酸ガスなどの有毒ガスがたえず噴出しており、
その毒性にあたったためと考えられています。これらのガスは空気より重く、
地面を這うように広がるので、まず最初に、一帯に入り込んだネズミなどの
小動物がやられ、さらにそれを見つけて降りてきた鳥もやられてしまうんですね。

まあ、自然現象なんですが、言い伝えとして、この石は「九尾の狐」の
死骸が変じたものとされます。九尾の狐は、日本最大の妖怪とも言われ、
妲己という女に化けて古代中国の商王朝を滅ぼし、さらにインドに渡って、
耶竭陀(まがだ)国の王子の妃、華陽夫人となり、そこで暴虐のかぎりを
尽しましたが、聖人に正体を見破られて追い払われ、さらに中国から、

遣唐使船に乗って日本へ上陸したとされます。そのときは玉藻前と名乗り、
女官として鳥羽上皇に仕え、上皇をとり殺そうとします。
しかし、陰陽師、安倍泰成に九尾の狐の正体を見破られ、
関東の那須地方に逃げ出し、その地の武士たちによって討伐されます。

殺生石と玄翁和尚
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ですが、その死骸は、上記したように石と化して殺生を続けたため、
現地を訪れた高僧、玄翁(げんのう)和尚の法力によって打ち砕かれます。
今でも、金づちのことを「げんのう」というのは、この話からきてるんですね。
『奥の細道』には、松尾芭蕉がこの地を訪れたことが記されていますが、
芭蕉がこの話を信じていたのかどうかは、興味深いところです。

天竺、中国、日本を股にかけた壮大な伝説ですが、真偽はともかく、
火山性ガスはひじょうに危険です。自衛隊の演習中に死者が出ていますし、
自分も、かなり前に秋田県の玉川温泉近くの山に入ったとき、
熊が倒れて死んでいるのを発見したことがあります。

さて、現代の話にいきます。昭和の時代に、石に人が映るという話が
ちょっとしたブームになったのをご存知でしょうか。
まず、1つめは「新潟の童女石」。新潟県胎内市に、「越後胎内観音」という、
昭和42年に起きた羽越豪雨の犠牲者の冥福を祈るために創建された

大観音があるんですが、そこに参拝した人が帰り道で、
20cmばかりの気になる石を拾った。泥を落としてみると、
そこには少女に見える顔が浮き出ており、豪雨の犠牲者だと考えて、
観音堂に奉納したということになっています。

「新潟の童女石」
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この話は当時、週刊誌やテレビのワイドショーでも取り上げられました。
童女石は今でも、観音堂である「帰林殿」にあるようです。上の画像がそれですが、
「ただの石の模様だろう」などと言ってはいけないんでしょうね。
次は、茨城県守谷市にある「高野のお化け石」

これも、マスコミによってかなり報道されていましたね。
昭和50年の夏なつ、高野の仲坪地区にある不動明王の石碑ですが、
その前で遊んでいた女の子が、「石碑の中に人が映っている」と言い出し、
近所の人が見にいくと、たしかにそう見えたので評判になったケースです。
見る人によって、映っているものが違うとも言います。

「高野のお化け石」
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この話には後日談があって、石碑が評判になったので賽銭箱を設置したものの、
箱ごと盗まれてしまったんですが、しばらくして、賽銭を返しに来た人がいる。
わけを聞くと、盗んだ人がその後、バイクで事故を起こして入院し、
「これはお化け石の祟りだろうから、かわりにお賽銭を返して来てくれ」
と頼たのまれたと言ったと、守谷市のホームページに載っています。

最後は、「京浜橋脚の女幽霊」。これ、昭和60年の読売新聞に載っています。
場所は、川崎市高津区千年の第三京浜。橘中前の交差点近くのコンクリートの
橋脚に、高さ3メートルほどの灰色のシミが現れ、女性の姿に見える。
シミが現れたのは昭和54年からで、その1年前に、同交差点近くで
少女が死亡した交通事故が起きています。

読売新聞の幽霊記事
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近所の人の話によると、深夜に問シミのある橋脚から、助けを求める女の声が
聞こえてくるという噂がだんだんに広まっていったそうです。
現在、その橋桁は塗りつぶされて新しくなっているみたいですね。
高速道路での事故の霊が壁などに映っているという話は他にもあります。

さてさて、ということで、現代の3つの事例を見てきましたが、
昭和の時代には、ワイドショーの中に心霊コーナーがあり、
一般紙も、けっこうな頻度で幽霊話を取り上げていたんです。
オカルトに寛容な時代だったんですが、オウム事件でそれが一変し、かわりに
スピリチュアルが勢力を伸ばしていくんですね。では、今回はこのへんで。

新しくなった現在の橋脚
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石のオカルト2

2019.01.15 (Tue)
前回に引き続いて石のお話ですが、今日はオカルトらしいオカルト話にします。
さて、石に関わるオカルトってすごく多いんです。なんでかと言うと、
石は動かず、壊れにくいためですね。ですから、
かなり古代からのものが、あちこちに残っているわけです。

石が関係する最大のミステリーと言えば、「ロゼッタ・ストーン」でしょうか。
ただし、これについて書いていると、それだけで本項が終わってしまいますので、
またの機会にして、もう少し下世話というか、オカルトらしいものを
取り上げていきましょう。最初はそうですね、「カブレラ・ストーン」

「カブレラ・ストーン」
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これは名前を聞いたことのある方もおられるでしょう。別名は「イカの石」。
南米ペルーの医師が1万点以上を所有するもので、中には、
恐竜と人間が共存する絵も存在し、オーパーツと見るむきもあったんですが、
実際は、現地人が石に彫刻して、古く見えるような加工を施したものだったんですね。
製作者が名乗り出ています。まあ、土産物レベルのものです。

次は何がいいでしょうか。「コスタリカの真球」がいいかな。
中央アメリカの、コスタリカの密林で発見された石の球体で、最大直径2m、
25tもあるものが見つかっています。製作年代は1500年ほど前。
日本だと、巨大な前方後円墳がつくられていた頃ですね。
すべてが真球であるとも言われましたが、そうではありません。

「コスタリカの真球」
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現地の古代人が、おそらく宗教的な目的で制作したものでしょう。
例によって、これは宇宙人が伝えた超技術であるという説もあるんですが、
そうではなく、古代人が大きな岩を一生懸命に磨いたものです。
中に黄金が詰まっているという噂が流れて多数が破壊され、
数が少なくなってしまいました。世界遺産リストに登録されています。

次、これは最近、話題になったもので、イギリスのマンチェスター博物館にある、
「動くオシリス像」。オシリスは、古代エジプト神話に登場する神です。
石像なんですが、くるりくるりと360度回転する様子が、
映像に収められています。まあでも、このタネはわかりますよね。

「動くオシリス像」 けっこう安くさい
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まず台座の底の部分が微妙に丸くなっていて、それが、
博物館周辺の交通などによる微小の振動で動かされていただけです。
監視カメラの映像は、ネットで探せば見ることができます。
次は何がいいでしょうか。あまりみなさんが知らないもの・・・うーん、
「シバプールの浮遊石」というのはどうでしょう。

これは、インドのムンバイ郊外のシバプール村にある重さ90kg程度の石で、
インドでは数少ないイスラム教寺院の所有です。
この寺院には、かつて、カマル・アリ・ダルヴィーシュという聖者がいて、
彼は死の前に、精神の力が筋力よりも優れていることを証明するため、
この石に呪をかけたとされます。

「もし11人の男が右の人差し指を石の下にさし入れ、私の名前を全員で呼んだら、
 私は石を頭上より高く上げるでしょう」下の画像がそれですが、
11人がそろってないとダメというところがミソです。観光客がぴったり11人に
なることはまずないので、中には現地人のサクラが入ります。で、その人たちが、
人差し指だけでなく、手のひらも使って持ち上げているんですね。

「シバプールの浮遊石」
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どんどんいきます。「ヘッジスの水晶髑髏」、これも有名ですよね。
通称は「ヘッジス・スカル」。イギリス人の探検家、F・A・ヘッジスが、
1927年に、中央アメリカ、ベリーズ南部の古典期の遺跡ルバアントゥンで
発見したと伝えられるもので、呪いがかかっているとも言われます。

ですが、2008年、スミソニアン研究所で精密な調査が行われ、
電子顕微鏡による検査で、スカルの表面にはダイヤモンド研磨剤による
切断跡が確認され、ドリルの跡も見つかりました。結局、19世紀末以降に、
レンズ製作技術が発達していたドイツで加工された
ものであることが判明したんですね。残念です。

「ヘッジス・スカル」
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「ホープ・ダイヤモンド」 。現在スミソニアン博物館のひとつである、
国立自然史博物館に所蔵されている45.52カラットのブルー・ダイヤモンドで、
所有したものは、死ぬか、それに匹敵するほどの破滅に
見舞われるという伝説がつきまとっています。

呪いの伝説では、ヒンドゥー教寺院に置かれた女神シータの彫像の目に
はめられていた2つのうちの1つを盗まれ、それに気づいた僧侶が、
あらゆる持ち主に呪いをかけたとされます。最初にダイヤを手に入れたフランス人は、
伝説では狼に食い殺されたことになっていますが、実際は84歳で老衰死です。

その後、ダイヤはヘンリー・フィリップ・ホープに買収され、
その一族に受け継がれたため、ホープ・ダイヤモンドと呼ばれるんですね。
もちろん、伝説のほとんどは真実ではありません。ただし、
たいへんに高価なものですので、その周囲にはつねに欲望が渦巻いていたため、
事件が起きるのはべつに不思議な話ではないですよね。

さてさて、そろそろ予定の字数がつきようとしています。これ以外にも、
日本の石の話もあるんですが、そこまでいきませんでした。
もし、みなさん興味があるようでしたら、続きを書きたいと思います。
では、今回はこのへんで。 

 関連記事 『石のオカルト』

「ホープ・ダイヤモンド」
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石のオカルト

2019.01.13 (Sun)
今回はこういうお題でいきます。みなさんは普段の生活の中で、
石について意識されることってありますでしょうか?
ふつうはないんじゃないかと思います。で、自分はというと、
おそらくみなさんよりも、石に関わりのある生活をしてるんじゃないかな。

水槽の石組レイアウト
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というのは、一つには、自分がアクアリストだからです。
自分の家には大型の海水水槽がありますが、その他に、45cmや60cmの
淡水の水草水槽もあるんです。中には流木や石を入れますが、
そういうレイアウト素材を、たまにヤフオクとかで見てるんですね。
気に入ったのがあれば注文したりもします。

それと、自分は大学時代に考古学を専攻しまして、旧石器時代の打製石器から、
古墳時代の石製品まで、いろんな遺物を手にとって調べてきました。
ちなみに、歴史区分に、なんで木器時代ってないかわかりますよね。
石は、石同士をぶつければ加工できますが、
木を加工するには、石器や金属器が必要だからです。

さて、石の中には神聖なものがあり、この考え方は世界各地で見られますが、
日本では、「磐座 いわくら」という形の祭祀遺跡が多いですね。
磐座をWikiで見ると、「古神道における岩に対する信仰のこと。
あるいは、信仰の対象となる岩そのもののこと」というふうに出てきます。

古代の磐座
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これは大きく2つに分けて考えることができます。
一つは、岩そのものが神である場合。日本では、動植物だけでなく、
無生物である石なども神性を持っていると考えられてきました。
山の中などで奇岩に出会って、そこに神を感じとります。

もう一つは、石を神の「依代 よりしろ」、つまり神が降臨するものと
考える場合です。ここで少し古神道の基礎知識を述べると、
石に神が降りる場合を「磐座」、高い常緑樹に神が降りるものを
「神籬 ひもろぎ」と言うんです。どちらも、注連縄によって結界が張られます。

さて、日本神話では、石は、変わらないもの、長命なものの象徴でした。
石長姫(イワナガヒメ)は、国津神である大山祇神(オオヤマツミ)の娘で、
天から降り立った瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に、大山祇神は、姉の石長姫、
妹の木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)の2人を、妃として差し出しました。

石長姫と木花開耶姫
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ですが瓊瓊杵尊は、木花開耶姫だけを受け取り、
石長姫は醜かったので返してしまったんですね。大山祇神は嘆息して、
石長姫は岩のように長い寿命の象徴、
木花開耶姫は花が咲き誇る繁栄の象徴だったのに、
石長姫を返されたので、天孫の寿命は短くなるでしょうと告げます。

ここまでは『古事記』からの話ですが、『日本書紀』では、
返された石長姫が、妊娠した妹の木花開耶姫を呪ったため、
瓊瓊杵尊との子どもである人間の寿命が短くなったとされています。
ただ、現在では、どちらも縁結びの神とされることが多いですね。

さて、ここまででだいぶ長くなってしまいましたが、石にまつわるオカルトを
ご紹介していきます。「石・オカルト」で検索すれば、
まずひっかかってくるのが「パワーストーン」です。このブーム、
けっこう長く続いてますよね。自分が知ってるオカルトショップでは、
売り上げのかなりの部分を支えています。

パワーストーン
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パワーストーンは、宝石(貴石・半貴石)の中でも、
ある種の特殊な力が宿っていると考えられている石のことで、
その石を身につけているとよい結果がもたらされると言われます。
その効果は、石の種類によって違いますし、
ペンダントや数珠に加工されて販売されることが多いです。

これ、由来はアメリカです。「ニューエイジ・ムーブメント」はご存知でしょう。
ビートルズがヒゲを生やしてインドに行ったりした、1970年代初頭の
ヒッピー文化ですが、その頃、石には特別な癒やしの効果(ヒーリング・パワー)
があるとして注目され、それが日本にも伝わってきました。

いっぽう日本でも、古代から滑石や蝋石、翡翠などを加工して玉にする技術があり、
勾玉なんかは、あの形に特別な呪力が込められていると考えられました。
まあ、パワーストーンには科学的な根拠はなく、怪しいオカルトと言われれば
そうなんですが、本格的な宝石に比べれば安価なものが多く、
持っていて悪いということもないような気がします。

あとはそうですね、「蛇石」なんてのをご存知でしょうか。
下図のようなもので、観賞用の石です。自然に蛇の模様が浮き出たと
言われるものの、加工されている場合もあるようです。縁起物として、
座敷の床の間に飾られたりしますが、効果のほどはわかりません。

蛇石
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最後は墓石。墓石の伝統は古く、遺体の埋葬地の上に石を立てたものを、
「支石墓」と言います。日本では縄文時代晩期ころから見られるようになり、
朝鮮半島経由で伝わったようです。墓石にも「墓相 ぼそう」というのがあり、
これは中国の風水からきた考え方です。
それによって、子孫の生活に影響が出たりするなどとも言われますね。

縄文時代の支石墓
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さてさて、ということで、石について見てきました。
「亡くなった子どもの顔が浮かぶ石」とか、そういうのも取り上げようかと
思ったんですが、かなり書く内容があったので、
また次の機会とします。では、今回はこのへんで。




異界の話

2018.12.17 (Mon)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論ですか。
さて、ラノベとかアニメ、ゲームなんかで「異世界もの」というのが
たいへん流行っていますよね。現実世界ではニートとか、まったくモテないとか、
さえない主人公が何かのきっかけで異世界へと転生し、
そこで大冒険するみたいな内容です。

この設定は便利ですよね。ひじょうに応用範囲が広いと思います。
なんといっても「異世界」ですから、その環境は作者が自由に設定することができます。
また、現実世界では弱虫だったのに、異世界内では勇者として怖れられる存在になるとか、
ギャップが大きいほど読者の関心を惹くでしょう。

この元となったのが「異界」の概念ですね。異界とは、Wikiによれば、
「人間が周囲の世界を分類する際、自分たちが属する(と認識する)世界の外側のこと」
こんなふうに出てきます。異界には「他界=霊魂が行く死者の世界」も含まれます。
また、異界の住人を異人と言うこともあります。

さて、異界をわかりやすく説明する例として、何がいちばんふさわしいかを考えてみると、
ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』がいいかと思います。
あの話は、異界をとりまく約束事を守って組み立てられているんです。
約束事の一つめは、この世と異界は重なり合っているんですが、
そこに行くためには境界を通らなければならないということです。



映画だと、千尋の家族は車で奇妙なトンネルに入っていきますよね。
あれが、この世とつながる境界なんです。次に、異界にとどまるための条件があります。
千尋の両親が、ずらっと並んだ無人の屋台で、「金は後から払えばいい」と言って、
食物を口にしてしまいます。そして豚に変わってしまう。
これは、異界の側に借りができてしまったことになるんです。

人間が豚に変わるところは、西洋のおとぎ話の影響もあります。
この間ちょっと触れましたが、紀元前8世紀に書かれたホメロスの
『オデュッセイア』では、オデュッセウスの一行は魔女キルケーの島に上陸し、
キルケーの差し出す食べ物を口にして豚に変えられてしまいます。

西洋の童話では、魔法でヒキガエルに変えられた王子なんかが出てきますが、
その大もとは、おそらくギリシア神話なんじゃないかと思います。
変身の呪いを解くため、主人公の千尋は異界の中でさまざまな働きをします。
よく考えられたストーリーだと思いますね。

黄泉比良坂
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さて、『千と千尋の神隠し』と構造が似ているのが、日本神話のイザナギ、イザナミの
黄泉国の話です。亡くなった妻のイザナミに、黄泉国まで会いにいったイザナギは、
けっしてふり向いてはいけないという約束を破って、腐り果てた妻の姿を見てしまう。
そして、怒ったイザナギに追いかけられますが、
黄泉国とこの世の境界が、「黄泉比良坂 よもつひらさか」です。

また、「黄泉戸喫 よもつへぐい」ということもあり、
これは、イザナミが黄泉国の食物を口にしてしまっており、
すでに黄泉国の住人になってしまっているとして、
最初は地上への帰還を断られ、イザナギがどうしてもと頼み込んだことで、
後ろをふりかえってはいけないという条件がつくんです。

で、さらにこれとそっくりなのが、ギリシャ神話の「オルフェウス」の話です。
できあがったのは、もちろんギリシア神話のほうが古く、神話学者の
吉田敦彦氏によると、ヨーロッパから中東、アジアを経て日本に伝播したために、
内容が類似しているのだということですが、ありえないことはないでしょう。
こうしてみると、ギリシア神話の影響力って大きんですね。

妻と冥界から逃れるオルフェウス
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さて、日本の異界には、「隠れ里」 「迷い家」なんてのもありますが、
山の中で道に迷って入っていく場合が多いんですね。ですが、現代だと、
登山ルートは決められていますし、入山して下りてこなければ、
遭難ということになって、捜索隊が出されます。

そこで、現代の都市伝説では、乗り物が一種の異界へのルートになっていることが
多いんですね。前に2ちゃんねるで話題になったのは、エレベーターに乗って
異界に行く方法でした。4階、2階、6階、2階、10階と複雑な操作で移動し、
さらに5階に下りると、人ではない雰囲気を持った女が乗ってくる・・・

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「きさらぎ駅」というのも乗り物がらみです。投稿者の女性が、新浜松駅から
いつも利用している電車に乗車したら、電車はなぜかどこにも停車せずに走り続け、
他の乗客はすべて眠りこけている。そしてやっと停まったのが、
「きさらぎ駅」というあるはずのない駅・・・

エレベーターも鉄道も、日常的に利用している人が多いですので、
山の中に入っていくよりはリアリティがあるでしょう。あとはそうですね、
物理学で、量子力学の波の収縮の解釈として、エバレット3世が多世界解釈を示し、
そこからSF作家がアイデアを発展させて、「平行世界」という概念ができました。

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多世界解釈だと、他の世界とは行き来できないはずですが、
それだとつまらないので、何らかの方法で行くことができる設定にします。
これもネットで、縦横5センチの正方形の紙に六芒星をペンで書き、
その真ん中に赤字で「飽きた」と書いておくと、寝ている間にパラレルワールドの
自分と入れ替わることができる、という方法が話題を集めました。

さてさて、ということで、異界について書いてきましたが、まとまらない内容になって
しまいました。ただ、やはり昔からの約束事というのはありますので、
異世界の話を書こうと考えている方は、それらに留意してストーリーを考えて
みるといいんじゃないでしょうか。では、今回はこのへんで。

関連記事 『ロビンソンとガリバーの間』

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P・T・バーナムとオカルト

2018.12.04 (Tue)
今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論です。
昨年、『グレーテスト・ショーマン』というアメリカ映画が公開されましたが、
みなさんの中で、ご覧になった方はおられるでしょうか。この映画、
なかなか評価の難しい内容で、アメリカでの評論家の意見も分かれています。

P・T・バーナム
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さて、映画の主人公になったP・T・バーナムは、19世紀に活躍した
アメリカの興行師です。アメリカの国土はひじょうに広いですよね
しかも、ふだんは娯楽がほとんどない田舎町が数多く点在しています。
かつてアメリカの興行師は、自分の目玉となる展示物をかかえて、
そういう町々を興行して回ることが多かったんです。

そのような見世物の中には、インチキなものがかなり混じっていました。
バーナムが最初に手がけた興行もその類で、1835年、彼は、
年老いた黒人奴隷の女性ジョイス・ヘスを、安価な値段で買い取りました。
これはもちろん、リンカーンによる奴隷解放宣言以前の話です。

で、バーナムはどうしたかというと、「ジョイス・ヘスは今年で160歳になり、
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンの乳母をしていた」というふれこみで、
アメリカ全土を興行して回り、たいへんな成功を収めたんですね。
ちなみに、ジョイス・ヘスが亡くなった後、その年齢が調査され、
70歳を超えていないことが判明しています。

こういう形で、何もないところからネタを作って金を産み出すのが当時の興行なんです。
これは日本でも同じでした。日本の見世物の伝統は古く、江戸時代以前からあります。
「大イタチ」という話は有名なので、ご存知の方も多いでしょう。
見世物小屋の宣伝書きに、「○○山中でつかまえた大イタチ」と書かれていて、
木戸銭を払って入ってみると、大きな板があり真ん中にべったりと血がついている。

つまり「大板血」なわけです。小屋の中に入ってそれを見た人は、
最初は「騙された」と憤慨するものの、やがてその洒落っ気に笑いだしてしまう。
もし、どうしても納得しない客がいれば「お代は見てのお帰り」。
木戸銭を取らなければいいわけで、元手はタダみたいなものなので、
それでも商売が成り立つんですね。

「カーディフの巨人」
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「カーディフの巨人」という、この手の有名な話があります。
ジョージ・ハルという人物が、カーディフという町の郊外に身長3mの石膏像を埋め、
自分で掘り出して、井戸掘削のときに見つかった「巨人の化石」として展示を始めました。
誰が見ても、ひと目で人工物とわかるずさんなものでしたが、いったん興行を始めると、
全米各地から、毎日数百人の見物人が訪れたといわれます。

これに目をつけたのがバーナムです。バーナムはハルに、巨人の貸出を持ちかけ、
断られると、自分で、石、粘土、乾燥卵などを混ぜて第二の巨人を制作、
それを用いて全米で興行を始めました。当然、この巨人について、
アメリカの考古学者などから、本物ではないというクレームがつきましたが、
バーナムは、「世間は騙されたがっている」という言葉を吐いて平然としていました。

この話は、オカルトのある一面を表していると言えます。「ミネソタ・アイスマン」
というのを、オカルトにくわしい方なら知っておられるかもしれません。
1967年、ベーリング海峡の氷塊の中から氷漬けのまま発見されたという、
謎の類人猿型未確認生物がミネソタ・アイスマン(下図)。

「ミネソタ・アイスマン」
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この正体は、じつはハリウッドで制作された着ぐるみなんですが、全米各地で
巡回興行されて大評判になりました。もちろん疑いを持つ専門家も多かったんですが、
バーナムの言葉どおりの結果になったんですね。この手のオカルトは、
手を変え品を変え、現在でもいろんなものが出回っています。

「巨人ネフィリム」の生きた化石(笑)


さて、バーナムにはもう一つの名言が知られていて、「どんな人にでも当てはまる
要点というものがある」というものです。アメリカの心理学者ポール・ミールが、
このことを証明しようとして実験を行い、結果を「バーナム効果 Barnum effect」
と名づけました。これは現在でも、心理学用語の一つになっています。

どんな実験が行われたのか。フォアという心理学者が行ったものを見てみましょう。
フォアは、学生たちを被験者にして、簡単な心理テストを行い、その結果として、
「あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、
 それにかかわらず自己を批判する傾向にあります.」

「あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます」
「あなたは使われず生かしきれていない才能を、かなり持っています」
「あなたは人前では自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります」
などの分析結果を示しました。ですがこれ、心理テストとは何の関係もない、
雑誌などに載っている占いの内容を、適当に組み合わせただけのものです。

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ところが、学生たちにこの結果が自分に当てはまっているかどうかを
5段階評価させると、学生たちの平均は4.6。つまり、ほとんどの学生が、
「このテスト結果はよく当たっている」と考えたことになります。
バーナム効果はくり返し追試され、その正当性が認められています。

その後の実験で、バーナム効果は、
・被験者がその分析は自分にだけに適合すると信じている
・被験者が評価者の権威を信じている ・分析が前向きな内容ばかりである
という3つの条件を満たすときに、最も強く発揮されることがわかっていて、
じつは、これを利用している占い師は多いんですよ。

さてさて、ここまで見てきたように、興行師バーナムは心理学者ではありませんでしたが、
人間がどういうものか、たいへんよく理解していました。それがあったから、
数々の興行を成功させ、現在のオカルトにつながる源流を作っていったわけですね。
では、今回はこのへんで。

関連記事 『リーディングの話2』

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