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怪談における主人公の責任

2020.02.17 (Mon)
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『アントラム』

今回はこういうお題でいきます。カテゴリは怪談論です。
今、『アントラム』という映画が公開されています。
けっこう観客は入ってるようですね。2018年に制作された
カナダ映画なんですが、「観たら死ぬ」というキャッチフレーズが
ついています。「アントラム」という題名の映画が1970年代に

アメリカで制作されたものの、観た者に不幸をもたらすとして
封印される。しかし1988年、ブタペストで世界初上映が行われると、
上映中に火災が発生し、56人の犠牲者を出す大惨事となる。
その後も、様々な映画祭で「アントラム」上映が企画されるが、
関係者が次々と謎の死を遂げ、そのうちにフィルムが紛失。

それが、この呪われた映画を長年にわたり調査していた
ドキュメンタリー映画作家により40年ぶりに発見され、新たに撮影
された関係者や研究者たちの証言を交えてまとめられた・・・
というモキュメンタリー作品です。この手のホラーを日本では
「自己責任系」と言いますが、責任を取らせられるのは観客です。

巻き込まれ系ホラーである『呪怨』
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さて、怪談を分類する場合、さまざまな観点があります。
「部屋もの」 「人形系 」 「時空系」などですが、今回は
その話の「主人公の責任」ということを中心に、できるだけ
具体的な例をあげて考えてみたいと思います。

①「見てしまう」系 もっともストレートな形です。夜道を歩いてたら
何かを抱えた人影が走り出て、よく見るとその女には首がない。
あ然としていると、女は自分に近づいてきて、抱えていた生首を
ポーンと放ってよこした。まあこんな感じです。これだと
主人公には何の責任もないですよね。運悪く怖い目に遭った。

因果もの、勧善懲悪の『四谷怪談』
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②「巻き込まれる」系 ①と似ていますが、ただ怖いだけでなく
主人公に災いが降りかかってきます。2ちゃんねるで有名になった
「八尺様」がそうですね。たまたま出会ってしまった長身の女に
なぜか好かれてしまい、後を追いかけられる。自分が引っ越した
部屋に幽霊が出るというのもこれに入るかな。

③「地雷を踏む」系 自分が何気なくした行為によって、呪いや祟りの
封印を解いてしまいます。仲間と廃墟の探索に行って、そこにあった
仏壇の引き出しを開けてしまった。アンティークショップにあった
鏡台をひと目で気に入り買ってきた。落ちていた手紙を拾い、
そのままバッグに入れて忘れてしまった。

実際には。この①~③は重なっていて、きちんと分けるのが
難しいことが多いですね。『リング』では、そうとは知らず呪いの
ビデオを見てしまう。『呪怨』では、何らかの理由で呪われた家に
入ってしまう。プロの作品でもこの形はたくさんあります。

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④「因果」系 自分の「よくない」行為により恨みが発生して
怪異が起きる。ひどい形で振った女が自殺し、その霊に祟られる、
会社の上司と浮気して、その奥さんの生霊に悩まされる。
『四谷怪談』がそうですよね。この場合、話の主人公は
読者に同情してはもらえないでしょう。

⑤「因縁」系 例えば、遠い先祖が旅人を殺してその金を奪い
裕福になったが、旅人の祟りによって、その家に生まれた男児は、
20歳を前にして事故や病気で死んでしまう・・・
昔の仏教説話などによくあった形ですが、
自分はあまり好きではなく、話も書いていません。

『八つ墓村』も因縁系と言える
キャプチャ

だって、その家に生まれてきた男の子に責任があるとは言えないし、
家系への祟りを除くには大法要でもするしかないですよね。
「祖先の悪行の障りを除くために、この壺を買って飾れ」
みたいな詐欺行為にもつながってくると思います。

⑥「神仏」系 お地蔵様に小便をかけた。神社のお賽銭箱に
手を入れて小銭を盗んだ。そのために罰が下る。
これもねえ、怖いという以前に「ザマミロ」と思いますよね。
主人公はまったく読者に同情してはもらえません。
それがいい怪談とは思えないです。

神罰が直接下る『大魔神』
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⑦「悪意」系 これはどういうことかというと、主人公には
何の責任もないですが、第三者の悪意によって生贄などに
されてしまう。加門七海氏の『三角屋敷』がそうですね。
風水的によくない三角形のマンションが霊的な実験を目的に
建てられ、そこに入った住人は思わぬ不幸に見舞われる。

現代的な怪談だと思いますし、自分もこの形はあれこれ
書いていて、「絵馬の検索」とか「奇妙すぎるバイト」なんかが
そうです。ただ、面白い話にはなりますが、主人公は
犠牲者という形なので、そこまでの内容の深みは出ません。

悪意系の『三角屋敷』
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この他にも「運命」系というのもあるかもしれません。
映画の『ファイナル・デスティネーション』みたいななもので、
死ぬべき運命になっている主人公が、何とかしてそれを
脱出しようと苦闘する。この場合、内容がややSFっぽくなる。

さてさて、ということで、怪談における主人公の責任という
観点から考えてみました。話の深みというのは必要だと思いますが、
あまりそこにこだわると、無理にオカルトホラーにしなくても、
『黒い家』や『冷たい熱帯魚』みたいな形でいいじゃん、
となるんですよね。なかなか難しいです。では、今回はこのへんで。

運命に殺される『ファイナル・デスティネーション』
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幽霊は怖いか?

2020.02.10 (Mon)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリは怪談論ですね。
さて、どっから話していきましょうかね。
「幽霊」という言葉で連想ゲームをすると、おそらく1位か
2位に「怖い」という語が出てくると思います。
では、幽霊って怖いんでしょうか?

まあ、幽霊なんてもともといないから、怖いも怖くないもない、
こんなふうに答えられる方も、かなりの数おられるとは思いますが、
今回は文化的な話としてお読みください。「幽霊=怖い」という
連想が生まれた原因は、大きく2つあるかなと自分は考えます。

『呪怨』


一つは、「娯楽としての恐怖」が氾濫していることじゃないで
しょうか。ホラー映画は毎年、趣向をこらした新しい作品が
つくられますし、ホラー小説も同様です。
「恐怖」は商品になるんです。

ホラー映画に登場するのは、幽霊の他に、殺人鬼、悪魔、ゾンビ、
正体不明の怪物などもいますが、アメリカ映画はともかく、
日本ではあまり一般的ではありません。日本映画で恐怖の主役に
なるのは、やはり山村貞子や佐伯伽椰子のような、
一度死んで悪霊化したものが多いですよね。

ただまあ、ホラー映画や小説はフィクション、作り物ということが
最初からわかっています。だから映画館で見ても一種の安心感が
あるんですが、2000年代に入ってから、日本では「実話」と
冒頭に銘うたれた作品がどんどん出てきました。これは活字も
ありますし、怪談という形でライブで語られたりもします。

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実話であるからには、日本のどこかで「本当にあった」話なわけで
フィクションよりはずっと身近です。あるアンケート結果では、
「幽霊はいる」と答えた人は、全回答者の40%くらいでした。
(ここで注意しなくてはならないのは、「霊魂はある」という回答とは
違うことです。霊魂はある、と答える人はもう少し多いでしょう。)

ですから、現代の日本では、幽霊を現実的な存在としてとらえている
人もそれなりにいるんだと思います。そして、実話怪談の主流は
「怖い幽霊」です。中には、心温まる幽霊話というのも
ないわけではありませんが、それは箸休め程度ですね。

二つ目の原因は、日本は長く仏教国であり、仏教の因果応報的な
考え方が浸透していたことだと思います。うちの父はもう
亡くなりましたが、テレビで幽霊番組をやっていると、
「何も悪いことをしてないんだから、俺に化けて出てくるやつは
いない」みたいなことを言ってました。

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これが伝統的な日本の幽霊観なんです。あるところに非道い仕打ちを
されて殺された人がいて、遺体は川に流されたので、葬式もしてないし
墓もない。お経もあげてもらっていません。つまり成仏していない。
そのために怨霊化し、自分を殺した人間のところに化けて出る。
『四谷怪談』のお岩さんがそうですね。

鶴屋南北が書いた脚本が上演されて大ヒットしました。觀ている客は、
怖いけれども、祟りにあうのは舞台の伊右衛門であり、自分のところに
危害がおよんでくるわけではない。ですから、現代の映画みたいな感覚で、
幕間に弁当を食べたりしながら見ることができたわけです。しかし、
明治維新後、仏教はまともに信じられなくなっていきます。

1970年代のオカルトブームが一つのきっかけになっているでしょう。
テレビ番組『あなたの知らない世界』で最恐と言われてるのは、
通称「恐山の怪」とか「お歯黒お化け」と呼ばれている回で、
ご存じの方も多いと思いますが、青森の恐山でたまたま女の霊を
見てしまっただけなのに、幽霊は家までついてきて、

『恐怖の心霊写真集』シリーズより
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茶碗の中に出現。その人の家族は全員、歯を真っ黒にされて
しまうんです。これ、自分はビデオで見たんですが、歯が真っ黒に
なるのが唐突で意味不明、そして映像としてすごく怖いんです。
あとは中岡俊哉氏の『恐怖の心霊写真集』シリーズで、
霊は目に見えないが、どこにでもいるという考え方が広まった。

この流れが少しずつ形を変えながら現在まで続いてるんですね。
ただ道を歩いていたり、鉄道自殺を目撃したりしただけで、
何も悪いことをしてないのに霊障に遭うことがある・・・自分も、
先祖の因縁みたいなのはあまり好きじゃないので、この形で
書いた怪談はかなりあります。ただ、それだけだと底が浅い気もして、

最近は、「自分の生き方が怪異を呼び込んでしまう」系の話を
なるべく増やそうと思ってるんですが、これは難しく、書くのに
時間がかかるうえに、内容が普通小説やミステリに近づいて
くるんですよね。試行錯誤中ではあります。

怪談会
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さてさて、では「怖くない霊」はいないかというと、まあ
生きた人間と変わらず、幽霊とわからないケースは別として、
人を助けてくれる霊の話は世界中にあります。よく知られてるのが、
吹雪の山中で道に迷ったりしたとき、誰とも不明なヤッケの
男がピッケルにつかまらせてくれた、みたいな話です。

スマトラ沖地震で、明らかに生者ではないものが瓦礫に
埋もれて生きている人の場所を教えたとか、病院で看護師が
休憩してると、いないはずの古い制服を着た看護師が現れ、
窒息しかけている新生児がいるのを知らせたとか、
さがせばけっこうな数が出てきます。

ということで、「幽霊=怖い」の背景には、エンターテイメント
で売り上げを増やすという戦略が隠れています。
しかし、もし幽霊がいるとして、すべての霊が邪悪な存在とも
考えにくいですよね。では、今回はこのへんで。

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夢をどう使うか?

2020.01.18 (Sat)
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今回はこういうお題でいきます。怪談論ですね。
自分が書く話には夢が出てくるものが多いですが、もちろん、
最初から最後まで夢で終わることはありません。では、夢は
怪談にどう使うことができるでしょうか。少し考えてみたい
と思います。みなさんの参考になればいいですが。

まず、最初に考えられるのは、未来を夢が予言する、いわゆる
予知夢です。予知夢には、悪い未来を予言するものと、
よい未来を予言するものがありますが、よい未来の場合は
なかなか怪談にはなりにくいと思います。

「夢見が悪い」という言葉があります。簡単に言えば悪夢を
見ることですが、一口に悪夢と言ってもいろいろあります。
怪物に追いかけられる夢、高いところから落ちる夢、
すでに亡くなった人が何人も出てくる夢、学生時代の試験で
答案が白紙のまま時間切れになってしまう夢・・・

夢を食べる動物「獏」、じつは中国ではジャイアントパンダのこと
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ただ、これだけだと予知夢とは言いにくい気がします。もう少し
具体的なほうがいいですね。例えば、死んだおばあちゃんが
出てきて、あなたの右腕をなでて悲しそうな顔をする。
これだったら、近い将来に腕にケガを負うことを暗示
しているのかも、と思いますよね。

ところが、もし夢の中で右足だけが大根になっていたとしたら。
で、あなたは夢の中で、困ったなあ、これじゃあ会社に行けない
と考えている。この大根になる夢を何度かくり返し見て、
さて何が起こるのか? 怪談にはこういうパターンもあります。
現実とどうつながっていくかが腕の見せどころです。

黒澤明 『夢』
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いい予知夢というのは、宝くじ当選の体験談によく出てきます。
白い蛇が小判の山の上にとぐろを巻いていた、これはと
思って翌日宝くじを買ったら見事当選した。やはり怪談には
なりません。なんとか逆手にとれませんかね。

こういうのはどうでしょう。あなたはその夢を見て宝くじを
買い、番号を控えた。さらに念を入れようと思い、蛇神様を
祀っている神社にお参りに行き、くじの束をご祈祷して    
もらった。そしてくじをバッグに入れる途中で、足元を蛇が
走り抜けた。キャーと言ってくじは散らばり、

何とか拾い集めたが1枚だけ足りない。あとで抽選を見たら、
続き番号で1枚だけなくなったくじが1000万円に
当たっていた・・・ 予知夢の反対は過去を見る夢になります。
こういうのはどうでしょうか。夢の中であなたは、
小学生まで住んでいたせまいアパートにいます。

夢探偵が活躍する、筒井康隆原作のアニメ映画『パブリカ』
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あなたの母親が絶叫しながら包丁で何かを刺している。
現在の母親よりもだいぶ若い姿です。たちまち床に血が
こぼれますが、母親が何を刺しているのかはぼんやりして
わからない。あなたの父親はあなたが2歳のときに失踪して
今も行方不明です。もしかしたらあれは、母が父を

殺している姿だったのではないか。疑惑がめばえます。
そこで母のいる実家に行ってさぐりを入れると・・・
うん、一つの怪談になりそうです。次に、夢の中に現実が
侵入して来る話。あなたは最近、夫が浮気していることに
気がつき、離婚話が持ち上がっています。

デカプリオ、渡辺謙が共演した『インセプション』
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頭にきているあなたは、夫と別れて慰謝料をふんだくって
やりたいが、ここのところどうも夕食後、すぐに眠くなってしまう。
そして何度も、ロープで輪をつくり首を吊ろうとしている夢を
見ます。それで、寝る前に飲んでいたブランデーをやめて
みました。その夜、夜中に目を覚ますと枕元に人の気配がします。

浮気発覚以来、寝場所を別にしていた夫が暗い中に座ってて、
「吊れ~、吊れ~」と言いながら呪文を唱えている・・・
うーん、いまいちかな。逆に、夢が現実に侵入している話も
あります。あなたは夢の中で粘土をこねて人の顔を作っている。
あまり特徴のない中年男性の顔です。

ご存知『エルム街の悪夢』では、夢の中で殺されると現実にも死んでしまう
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それだけだとツマラナイ感じがしたので、目の間に大きな
イボをつけ加えてみた。するとすごく満足した気持ちになって、
朝を迎えた。変な夢だったと思ったが、すぐ忘れてしまった。
翌年度、あなたは本社に栄転になり、会社にあいさつにいくと、
直属の上司である課長が出てきたが、顔に大きなイボがある。

あなたは夢を思い出して「あっ!」と叫んでしまう。すると、
課長はあなたを睨みつけて、「お前だったのか、俺の顔に
イボをうつしたのは!」と言う・・・うん、これいいですね。
このタイプのアイデアはナンセンス話に使えそうです。
あとはそうですね。夢から出られなくなってしまう、

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というパターンもあるかと思います。『不思議の国のアリス』が
そうですよね。途中でアリスは、これは夢だと気がついている
ものの、いつまでも覚めることができない。最後に癇癪を起こして、
赤の女王たちに「なによ、あなたたちなんてトランプのくせに!」
と怒鳴ってひっくり返し、それでやっと夢の世界から抜け出る。

さてさて、この他、SFだと他人の夢に侵入できる超能力(または
超技術)が出てくる話があります。筒井康隆原作の『パブリカ』
では、他人と夢を共有できる夢探偵が、夢の中で罠を仕掛けられる。
デカプリオ主演の『インセプション』は、他人の夢に忍び込んで
金になるアイデアを盗みとるお話でした。では、今回はこのへんで。

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家もの、部屋ものホラー

2020.01.15 (Wed)
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『ヘルハウス』

今回はこういうお題でいきます。怪談論になります。
さて、ホラー小説や映画には、「家もの」と呼ばれるジャンルが
あるのはご存知だと思います。映画なら、まずあげられるのが、
リチャード・マシスン原作のイギリス映画、『ヘルハウス』です。
これ、傑作ですよね。じつによくできていると思います。

「滞在すると必ず死ぬ館がある。そこでは過去に、
館の主を中心に、背徳的・悪魔的な儀式が行われていた」
そこに、科学者夫妻と心理霊媒師、前回の探索で一人だけ生き残った
物理霊媒師を加えたグループが入り込み、異常現象の調査をする。
まずこの設定が、その後の家ものホラーに大きな影響を与えています。

これはC級なのでお薦めしません
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内容は、派手に血しぶきが飛び散るようなスプラッターではありません。
また、悪魔ものとも言いにくい。異常現象を起こしているのは、
ネタバレになりますが、かつての館の主ベラスコ個人の残留思念です。
それが鉛で囲まれた隠し部屋に渦巻いている。

心霊を科学で解明しようとするストーリーも、当時としては
新しかったですし、その館で死ぬ人物は必ず足に傷を
負うのはなぜか、という謎解きの要素もありました。この
『ヘルハウス』影響を受けて、たくさんの家ものホラー映画が
つくられました。実話をもとにしたとされる『悪魔の棲む家』。

心霊でなくても、ここまで怖くできる
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スティーブン・キングの原作は超能力ものですが、かなり違った
ストーリーになっていた『シャイニング』。シャーリー・ジャクスンの
小説『山荘奇譚』を原作とした『たたり』。新しいところでは
『パラノーマル・アクティビティ』のシリーズなど、
枚挙にいとまがありません。

小説のほうでも、ホラー作家であれば一度は家ものホラーに挑戦して
みたくなるようで、日本の小池真理子氏の『墓地を見おろす家』。
加門七海氏の『美しい家』。心霊要素はありませんが、貴志祐介氏の
『黒い家』。映画で大ヒットした『呪怨』など、数多くの作品群があります。

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ここで、お前はどうなんだ、と言われそうですが、自分は本格的な
家ものと言える話は書いていません。理由はおわかりだと思います。
家ものホラーはどうしても長くなるので、短い怪談では
処理しきれないんです。じゃあ、なんで家ものは長くなるのか。

家は部屋数が多いからでしょうか。まあ、そういう要素もなくはない
ですが、それよりも、登場人物が多くなるのが問題です。
特にアメリカ映画は「家族」というのが一つの大きな共通テーマと
なっていて、家ものホラーも例外ではなく、
「家長を中心とした家族 対 家」という構図になることが多いんですね。

欧米ではルームシェアものも多いですが、日本では一般的ではありません
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ご主人、奥さん、子どもたち一人ひとりのエピソードを描いてれば、    
それは当然長くなってしまいます。では、短い怪談の場合どうするか
というと、家ものがスケールダウンした「部屋もの」になります。
これだと、多くの場合、登場するのはその部屋に住むことになった
人物一人だけですよね。話を短く収められる。

自分も部屋ものはたくさん書いています。では、部屋もののパターン
にはどういったものがあるか。よくあるのは、前の住人が殺されたり、
自殺や孤独死をしていて、その霊が出てくる。ただ・・・
これだと、話としてはストレートすぎて、たくさん怪談を読まれた
ツワモノの方には物足りなく感じられるんじゃないでしょうか。

実話をもとにしたというフレコミです
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もう一ひねりも二ひねりもほしい。それで自分は、何らかの意図で呪いが
込められた部屋というパターンで書くことが多いんです。不動産屋や
他の部屋の住人がグルになってる場合もあります。「剥製の家」
というのを書いてますが、これは家と言っても、一部屋しかない離れです。
そこは、かつて剥製師をしていた大家の一人息子の仕事場を改造したもの。

その押入の奥に隠しスペースがあり、息子の剥製が他の動物たちと
ともに収められていました。大家の老夫婦は、わざと未婚の
美術学生を選んでその部屋を貸し、息子の冥婚の相手に
しようとします。たんに死者の無念だけではなく、
生きた人間の悪意も合わせて書きたいと考えたわけです。

この場合はホテルの一室です
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ただ、たった一部屋にキッチン・バス・トイレだけですから、
怪異がひそむ場所は限られています。天井裏、床下、押入、
バスルーム、これくらいしか考えつかないですよね。自分も、
天井裏も床下も使っていますが、もう少し新味を出したい。
そこで知恵をしぼったのが、「夜が来る話」という話です。

ふだん何気なく見過ごしてしまっているガス検知器、この中に
なぜか「夜スイッチ」が入っていて、そのスイッチが下りると
停電になり、さらに死者がよみ返るという、かなり非現実的な
内容になっています。これ、賛否あるでしょうが、
自分では気に入っている話なんです。

アパート全体が水に関連した呪いを受けている
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さてさて、ということで、家もの、部屋ものホラーの話をしてみました。
みなさんが、自分も怪談を書いてみようと考えた場合、
これが一番とっつきやすいんじゃないかと思います。
あるアパートの一室があり、そこにどんな住人を入れて、
どんな怪異を起こそうか・・・何か、わくわくしてきませんか。

怪談を書くのは、ある意味、模型を組み立てたり、手芸の人形を
作ったりするのと似ていると、自分は思っています。
パーツをいろいろ用意して、どこにどういうふうに組み込めば
より怖くなるか、考えながら作っていくのが楽しいんですね。
では、今回はこのへんで。

『エクソシスト』も部屋ものと言えます すべての怪異はリーガンの子ども部屋で起き、
登場人物も、実質的にリーガン(悪魔)とカラス神父だけ







怪談に出てくる職業

2020.01.02 (Thu)
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今回はこういうお題でいきます。怪談論になります。自分は
このブログで、もう1000話以上の怖い話を書いていて、
老若男女、さまざまな人物が登場してくるんですが、その職業って
意外に限られてるんですよね。これは自分だけではなく、
プロの先生方が書かれる実話怪談でも似たようなものです。

まずいちばん多いのが学生で、その中でも大学生が多いですね。
これには2つの理由があります。一つは、まだ社会人ではないので、
バカをやっても許されること。例えば、お固い公務員が
心霊スポット探索とかは普通やりませんよね。
もし何か問題が起きれば、処分の対象になるかもしれません。

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そういうことができるのは若いうちだけです。もう一つは、
学生は時間があるということ。夜中まで活動できますし、
日中も大学の授業は休むこともできます。時間の制約にとらわれる
ことなくストーリーを進められるのは大きな利点なんです。

これ、じつは推理小説なんかでもそうなんですよね。主人公は
学生ではないにしても、自由業・自営業がひじょうに多い。
例えば、京極夏彦氏の小説の主人公である中禅寺秋彦は、
京極堂という古本屋の主人です。何か事件があって急いで
駆けつけなくてはならないときは、奥さんに店をまかせればいい。

ドラマの浅見光彦 この人いつ仕事してるんだろうと思われないところが便利です
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あと、ベストセラー作家の内田康夫氏のシリーズ物の主人公、
浅見光彦はフリーのルポライターです。全国を旅して回り、
事件を解決する探偵役には、これ以上の職業はないかもしれません。
さらに、じつの兄が警察庁刑事局長ということで、もし疑われても
身分保障してもらえる、ご都合主義の極地のようなものです。

毎日出勤してるサラリーマンを主人公にすると、作中の時間管理が
大変なのはおわかりでしょう。あと、やはり時間の自由がきく
子どものいない主婦なんかも、作中人物としては便利です。
夏休み中の小学生というのも、ノスタルジックな怪談にはぴったり。
さて、次に自分の話で多いのは警備員ですね。

これも理由はおわかりだと思います。警備員は夜の仕事で、
怪異は夜間に起きることが多い。警備員の仕事は大きく
交通誘導警備と施設警備があるかと思いますが、
どちらの話も自分は書いてます。特に施設警備の場合、
巡回する場所は学校や寺院など、なんとでも設定できます。

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次に多いのは不動産屋の職員。これは時間というより場所が
関係してきます。怪談の大きなテーマとして『ヘルハウス』のような
「家もの」があります。ただ、家ものはどうしても長くなるので、
短編の実話怪談の場合「部屋もの」になることが多いです。

そしてそれらの一軒家やアパマンの部屋を管理しているのが
不動産屋。怪談の主人公になりやすいのはおわかりでしょう。
それと、やはり場所が関係してくるのが、建設業、土木業などの
いわゆる工事業務です。家の新築、解体、トンネル掘削、
井戸埋め、地鎮祭など、怪談になりそうな材料が目白押しです。

ホテルの場合、どちらかといえば宿泊客が怪異を体験するケースが多い
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あとは、フリーターやプー太郎、チンピラなんかも怪談には
もってこいで、やはり時間の自由がきくからです。自分の書く
話のパターンの一つに、パチンコ屋とか競輪場でプー太郎が
奇妙な儲け話をもちかけられ、怪異の中に入っていって
しまうというのがあります。

次あたりにくるのが交通関係でしょうか。駅員やタクシー運転手。
不特定多数のお客に接するので、中には怖いものがまじっている
可能性もあります。よく聞く「青山墓地まで・・・」という
タクシー怪談なんかはまさにそれですよね。

接客業であるホテルマン、店員、理美容業なんかもそうですが、
怪異に出会っても、基本的に仕事中なので逃げ出すわけにも
いきません。心霊でなくても、最近は危険な人が街を
うろついているという「人怖」の話も増えました。

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それから、自分の場合は神職が出てくるのがかなりあります。
数ある宗教の中でも、神道はすごく自由度が高いんですね。
ほとんど何でもありと言ってもいいでしょう。乱神、邪神を    
勝手につくっても変ではありません。キリスト教の怖い話が
神に敵対する悪魔という概念に縛られるのとはまったく違います。

さて、では怪談の登場人物に向いてない職業。これはここまで
書いてきたことの反対を考えてみればいいです。
時間に縛られる職業、お固い職業ということです。
自分は中高の社会教師の免許を大学のときに取りまして、
教育実習にも行ったんですが、学校の先生はとにかく忙しい。

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絶対にならないぞとそのとき思ったんですが、怪異に巻き込まれてる
暇なんてないんですね。これは勤務医なんかも同じだと思います。
ですから、「病院の怪談」というテーマがあるわりには、
医師が主人公になってる話は多くはないんです。

さてさて、ということで、ここまでの内容は、みなさんが
怪談を書こうとするときのヒントになるんじゃないかと思います。
ただ、やはりその職業特有の知識は必要で、間違ったことを書けば
読者が興ざめして、それ以上読んでもらえなくなることもあるので
ご注意ください。では、今回はこのへんで。

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