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顔の写らない兵隊の話

2020.07.04 (Sat)
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頭の消えた画像

今回はこういうお題でいきます。心霊画像と呼ばれるものの
一種に、手や足の写ってない写真というのがありますよね。
一番多いのが、スナップ写真である人物の片足がないという場合。
これを、霊障であり、足に気をつけるよう守護霊が警告しているのだ、
などと解説する霊能者の方もいますが、

多くの場合、ただその足を後ろに跳ね上げているだけです。
手のない写真は、足と違って関節が後ろに曲がりませんが、
昔のフィルム写真の場合、ブレがまず考えられます。被写体が
たまたま手を速く動かしてるところでシャッターを切ってしまった。
あるいは巻き戻しが上手くいかず、フィルム2枚が重なって写ったとか。

最初に上げた画像は、頭の消えた写真として紹介されてるんですが、
なんのことはない、ただうつむいてるだけです。こんなのを
取り上げる雑誌社の人は、バカバカしいと思わないんでしょうか。
ただ、正面から写した写真で、顔だけがないというのは珍しいんです。
そういう形になる撮影ミスというのは考えにくいですよね。

パパの体がない!
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さて、今日ご紹介するのは、「週間漫画TIMES」昭和34年9月2日号に
載った体験手記です。体験者自身が語っていますので、実話怪談と
言っていいでしょう。その人物は、東京都荒川区に住む坂場敏男さんで、
彼は日中戦争中、工兵隊の分隊長として山東省にいました。

昭和15年7月、坂場氏は鉄道工事が一段落したので、中国人の写真屋を
呼び分隊全員の記念写真を撮りました。すると、列の中ほどにいた
手塚という上等兵の顔だけが写っていない。まさに顔だけなんです。
軍服や、そのときかぶってた軍帽ははっきり写ってる。ところが
手塚の顔はなく、後ろの列の兵の金ボタンが見える。

不思議ですよね。現代ならいくらでも加工できますが、当時の
白黒写真では考えられません。で、この手塚は大学出のインテリ。
招集されてノイローゼ気味だったようです。手塚の父は将官であり、
兄弟も士官なのに、手塚だけは幹部候補生になろうとせず、
一兵卒として従軍していたんです。このあたりは不自然に思えます。

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坂場氏はそんな手塚を、自殺のおそれありとみて特別に注視していました。
その写真を見たものは3人しかいなかったので、坂場氏は口止めし、
写真が失敗したことにして撮り直しました。ですが、やはり手塚の
顔だけが写っていない。不気味に思った坂場氏は、今度は分隊のカメラで
何度か手塚だけを撮ってみましたが、どうしても顔が写らないんです。

手塚本人は、何度も写真を撮り直されるのを奇異に感じ、憔悴して
休暇を取り、分隊の宿舎で休んでいました。心配した坂場氏が
様子を見に行くと手塚は熱心に銃器の手入れをしており、弾は抜いて
いるので、「関心だな」とほめて部屋を出たとたん、大きな銃声が響き、
急いで戻ると、手塚は自分の喉を撃ち抜いて死んでいたんです。

まあ、ここまではよくある話です。顔が写らなかったのは自殺の
前兆というか、予告であったでオチがつきます。ですが、
これは前編で、後編はもっと不気味で不可解な話になります。手塚の
私物からは両親らにあてた遺書が見つかり、覚悟の自殺だったようです。

日中戦争(支那事変)
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で、この当時、自殺する兵士は多かったんですが、それをそのまま
発表すると士気が下がりますし、将官である手塚の父親も面目が
立ちません。そこで、坂場氏は部隊長と協議の上、手塚上等兵は、
急に勃発した戦闘で雄々しく戦い戦死を遂げたということにしたんです。

さて、その後分隊は別の場所に移動することになり、傷病者は
内地に帰還を許されました。その船が青島から出るため、坂場氏は
見送りに行きますが、病院船の乗船名簿に手塚の名前があったんですね。
もちろん手塚は死んでいるし埋葬も済んでいる。何かの間違いだろうと
確認しようとしたときには、すでに船は桟橋を離れていたんです。

その後、坂場氏の分隊は南方に移動しますが、そこで旧知の木内伍長に
会います。話をしているうち、木内は「お前のところにいた手塚な、
今、うちの部隊にいるぞ」と奇妙なことを言い出します。
「そんなはずはない、その手塚なら死んで葬式も済ませてある」
と返すと、「いやいや確かにいるから」

兵員輸送船
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不審に思い、坂場氏は木内氏の分隊を訪れます。手塚に面会を
求めると、今、便所に入っていますと言われ、30分ほども待ったが
手塚は現れません。手塚の同僚の兵に便所まで案内させ、
同僚が「手塚上等兵、面会人だぞ」と叫んでも答えがない。
すべての便所の戸を開けても誰もいない。

同僚は、「さっき便所に入る手塚とすれ違ったんです」と言います。
そして手塚はそのまま、二度と現れなかったんです。
もちろん、同姓同名の別人なのかもしれないですが、その部隊にも
手塚の写真はありません。ただ、部隊の者多くに聞き取りを

部隊の記念写真
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行ったところ、人相風体、性格行動すべてが死んだはずの
手塚とそっくりだったんです。・・・不可解な話ですよね。
前の手塚が死んでるのは間違いありません。また、後の手塚が
脱走したとしても、そんな南方で逃げおおせるのは難しいでしょう。
まして、この当時、日本はまだ勝ち戦の最中でしたし。

さてさて、みなさん、どう思われますでしょうか。坂場氏の
戦争を題材にした作り話なんでしょうか。それにしては
できすぎていると思いませんか。作家になれますよ。あるいは、
手塚の幽霊が他の部隊で戦おうとしていた? 
それとも妖怪の類?? では、今回はこのへんで。





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家ものホラーの具体的怪異

2020.06.29 (Mon)
今回はこういうお題でいきます。怪談論ですね。
「家ものホラー」というのは、怪談、ホラーの中でも一つの
大きなジャンルを占めていて、小説でも映画でも、あれこれと
作品名が思い浮かびますね。日本映画だと、代表的なのが
『呪怨』でしょう。入ったら必ず死んでしまう家。

さて、家ものホラーについては、過去記事でも何度か取り上げて
ますので、なるべくくり返しにならないよう、今回はより
具体的に、どのような怪異が考えられるかを列挙してみたいと
思います。もしやみなさんの中で、今後、家ものホラーを書いて
みようという方いれば何かの参考になるやもしれません。

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では、シチュエーションを決めましょう。主人公のあなたは
30代の主婦です。夫の転勤にともない、中規模の地方都市に
引っ越してきました。子どもは小学校5年生の姉と
2年生の弟の2人としておきましょう。

家は住宅地にある一軒家。夫の会社が転勤者用に借りている
もので、社宅というわけではありませんが、大きく家賃を
補助してくれます。2階建てで全部で4部屋、キッチンに
バス・トイレ。あと、せまいですが塀で囲まれた庭があります。
2階の2部屋は子供部屋にしました。それぞれ自分の部屋が

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持てるようになり、子どもたちは喜んでいます。1階は居間と
夫婦の寝室。まあこんなとこでしょうね。アメリカだったら、
屋根裏部屋や地下の貯蔵室みたいなのがついてたりしますが、
日本の家屋ではそこまでは無理でしょう。

さて、ではどんな怪異が起きるのか。① 家そのもの ② 家族
③ 自分 の3つに分けて考えてみましょう。自分は多数の
ホラー映画を見てますので、それらから拝借したシーンが
多くなると思います。

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① 家そのもの 「キッチン」
物が腐りやすくなる。買ったばかりの食パンにすぐカビが   
生えてしまう。冷蔵庫は冷えてるのに、中の食品がどんどん
ダメになっていく。これはよくあるパターンですね。
霊障があるとそういうことが起きやすいと言われます。

「風呂・洗面所」特に何かを流したわけではないのに排水口が
つまってしまう。針金などで掻き出すと、白髪交じりの髪の毛が
ごっそりと出てくる。家族には誰も白髪の人物はいないのに。
こういうのは生理的に嫌ですよね。越してきたときにはピカピカ
だったバスルームのタイルにみるみるうちに黒カビが生える。

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洗面所で顔を洗ってると、鏡の端に何かが映ったような気がする。
でも、見直してもふり返っても誰もいない。あと、トイレって、
なかなか映画などに出てきませんよね。ふつうに考えれば、
密室なのでトイレで怪異が起きたら怖いはずですが、その後、
パンツをずり下げたまま逃げ出せば、ホラーの雰囲気がぶち壊しに

なってしまいます。襲われて閉じこもるなどのシーンはありますね。
「庭・ベランダ」青々としていた芝生や庭木が黄色くなって枯れる。
逆に、蔓草が急速に伸び始め家を覆っていく。朝、うるさいので
見に行くと、サッシの外にカラスが群がっている。門を閉めているのに、
犬や猫の死体が玄関先に落ちている。こんなとこでしょうか。

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「居間・寝室」壁や天井から異音がする。夫に天井裏を見てもらうが、
ネズミなどがいた形跡はない。部屋と部屋の間の壁が異様に厚い
気がする。夜中になぜかテレビがついてて、放送のないチャンネルに
なっている。夫が趣味でやってる熱帯魚の水槽が、特に原因は
考えられないのに、一夜のうちに全滅し、ドロドロに腐っている。

② 家族 夫が夜うなされるようになる。起こすと悪い夢を見ていたと
言うが、内容は教えてくれない。上の娘が学校に行きたくないと言い出し、
部屋に閉じこもってしまう。様子を見に行くと、ベッドの上で異国の
言葉のようなものを唱えている。下の息子が体調を崩し、食事をとると
すぐに吐いてしまう。病院で検査を受けても異常はない。

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そのうち、下の子は見えない誰かがいるように話をするようになる。
聞くと、「〇〇ちゃんだよ」と知らない名前を答える。
夫が夜中に家を出るようになり、泥だらけになって朝方戻ってくる。
「どこに行ってるの」と尋ねると暴力的になる。
学校や仕事があるのに誰も起きてこなくなる。

③ 自分 いつも体調が悪く、何をやるのも気力が出ない。
家の中のある一ヶ所が理由もなく怖くなり、そこに近づくことができない。
そんなはずはないのに、この家に以前住んでいた記憶が蘇ってくる。
夜中にふと気がつくと、スコップを持って庭に立っている。
夫の背中を見つめて包丁を握りしめている自分がいる。

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さてさて、まだまだあるんですが、もうすぐ字数が尽きてしまいます。
家ものホラーというのは長編の場合が多いので、いきなりドカンと
怪異が出てくることはまずありません。あくまでも少しずつ、
じわじわと不吉な雰囲気が増していく場合が多いですよね。
それと、自分だけではなく家族全体が冒され、ダメになっていく

恐怖というのもあります。そういうところは日本映画が上手いんですが、
ただ、日本って住宅が密集してるんですよね。これがアメリカ映画だと、
隣の家との距離があり、簡単に助けは呼べない。警察に通報しても
来るまで時間がかかるなどの点がホラーとしては有利です。
では、今回はこんなところで。





ホテル怪談に関する一考察

2020.05.11 (Mon)
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今回はこういうお題でいきます。怪談論ですかね。地味な
内容になると思われるので、スルーされたほうがいいかも
しれません。さて、怪談の中には「ホテル系怪談」と
呼ばれる話があります。みなさんも何かで
読まれたことがあるんじゃないでしょうか。

出張で行った先のビジネスホテルに泊まって、そこで怪異に
遭遇する。これはホテルでなく日本旅館の和室でもありますよね。
あるいはアウトドアのテント泊でもいいかな。要は、
いつも寝ている自分の家、自分の部屋以外で起きる怪談です。

なぜ、そういうことが起きるのか。うーん、まず一つには
先入観ということがあると思います。過去にその部屋で、
何か事件が起きてるんじゃないか。例えば、ホテルのシングル
ルームに泊まったとして、その部屋が1年間のうち3分の2
稼働したとすれば、のべ240人が宿泊したことになります。

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さらに、そのホテルが20年間営業してるなら、それまでに
その部屋で4800人の宿泊者があるわけです。ここで、
日本の年間10万人あたりの死亡者数を見てみると、
約900人です。とすると、5000人あたり45人程度。

ただし、そのホテルに24時間いるわけではないので、
8時間滞在するとして45に3分の1をかけて、15人。
この計算はまあ怪しいんですが、あなたが泊まったホテルの部屋で、
過去に15人ほどが亡くなっているかもしれません。
またそれが、自然死ではなく自殺かもしれないんです。

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有名な政治家の例もありますが、ホテルの部屋での自殺って
けっこう多いんです。そのホテルには迷惑な話ですが、一人暮らしの
人が自宅で自殺すると、長期間発見されないおそれがあります。
あと、賃貸住宅などだった場合、大家さんや隣近所に迷惑をかける。
自宅なら、家族を無残な死体の第一発見者にしたくない。

まあ、こういった理由からだと思います。それと「御札」の
怪談もありますよね。ホテルには幽霊が出る部屋があって、
それを封じるために、部屋のどこかに御札が貼られている。
もしかしてみなさんの中にも、飾られた絵の額縁をひっくり返して
見たりした方もおられるんじゃないでしょうか。

『シャイニング』
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さて、ここで少し話を変えて、「枕が変わると眠れない」と
言われたりしますよね。これは自宅での話ではないと思います。
まあそれは、自分のベッドでも、新しい枕にすれば高さや
固さが変わって眠れないということもないわけじゃないでしょうが、
一般的には、ふだんと違う場所で寝たときのことを言います。

ここで、面白い研究があるんですね。アメリカ、ブラウン大学に
所属する日本人の睡眠生理学者、玉置應子氏のグループは、
初めての場所では眠れなくなる現象を、「第一夜効果」
(the first night effect)と名づけました。
これが実際にあるのは確認されています。

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寝場所が変わっただけで眠りが浅くなるのは、脳の覚醒度 が
高まるためで、覚醒度が上がるとは、簡単に言えば、脳が睡眠に
入りにくくなる状態をさします。例えば、普段は就寝するような
時刻になっても、脳波の周波数が速いままで
眠気のある脳波が出にくくなるわけです。

このような脳の反応は、環境が変化したときに動物が無意識に
抱く警戒感によって生じるごく普通の反応だそうです。動物には、
いつ襲ってくるか分からない外敵に対峙するための「生体警告系」
と呼ばれるシステムが備わっているんですね。

ここまで読まれて、西部劇あるいは剣豪小説なんかのシーンを
思い浮かべた方も多いと思います。西武の荒野で2人の男が出会い、
いっしょに旅をすることになった。その夜、焚き火の横で両者が
寝ているが、片方がそっと起き上がってナイフを出し、
もう一人に近づきます。刺し殺すためです。

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ところが、相手のかけた毛布の下でカチッという音がする。
銃の撃鉄を起こした音ですね・・・ 生体警告系は、脳だけではなく
体全体で作動します。周囲の物音、風景、臭いなどから危険を察知
すると、心拍数や血圧が上がり、体温が高まり、ホルモンが
分泌されて、いつでも、闘うか、逃げるか(Fight or Flight)を

決めて、即座に行動に移すことができるよう準備を整えるんです。
このような生体警告系の反応が大きな人ほど、「枕が変わると眠れない」
という経験をするようです。これは人間だけでなく、例えば
クジラやイルカは完全に眠らず、脳の半分を眠らせないことで、
危険に対処できるようにしているということです。

睡眠障害
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ここまで読まれて、自然の自己防衛反応なんだからいいことじゃないか、
と思われたかもしれませんが、じつは、長期的な研究で、
この生体警告系の反応が過剰な人は、将来的にうつ病などになる
危険性が高いとする研究結果も出されているんです。

さてさて、お時間になりました。ホテル系の怪談が多いのには、
こういう理由もあるのかもしれません。まあねえ、日本のホテルは
まず安心ですが、海外は油断できません。従業員が犯罪者とグルに
なってることもあるからです。みなさんもお気をつけください。
では、今回はこのへんで。

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怪談における主人公の責任

2020.02.17 (Mon)
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『アントラム』

今回はこういうお題でいきます。カテゴリは怪談論です。
今、『アントラム』という映画が公開されています。
けっこう観客は入ってるようですね。2018年に制作された
カナダ映画なんですが、「観たら死ぬ」というキャッチフレーズが
ついています。「アントラム」という題名の映画が1970年代に

アメリカで制作されたものの、観た者に不幸をもたらすとして
封印される。しかし1988年、ブタペストで世界初上映が行われると、
上映中に火災が発生し、56人の犠牲者を出す大惨事となる。
その後も、様々な映画祭で「アントラム」上映が企画されるが、
関係者が次々と謎の死を遂げ、そのうちにフィルムが紛失。

それが、この呪われた映画を長年にわたり調査していた
ドキュメンタリー映画作家により40年ぶりに発見され、新たに撮影
された関係者や研究者たちの証言を交えてまとめられた・・・
というモキュメンタリー作品です。この手のホラーを日本では
「自己責任系」と言いますが、責任を取らせられるのは観客です。

巻き込まれ系ホラーである『呪怨』
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さて、怪談を分類する場合、さまざまな観点があります。
「部屋もの」 「人形系 」 「時空系」などですが、今回は
その話の「主人公の責任」ということを中心に、できるだけ
具体的な例をあげて考えてみたいと思います。

①「見てしまう」系 もっともストレートな形です。夜道を歩いてたら
何かを抱えた人影が走り出て、よく見るとその女には首がない。
あ然としていると、女は自分に近づいてきて、抱えていた生首を
ポーンと放ってよこした。まあこんな感じです。これだと
主人公には何の責任もないですよね。運悪く怖い目に遭った。

因果もの、勧善懲悪の『四谷怪談』
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②「巻き込まれる」系 ①と似ていますが、ただ怖いだけでなく
主人公に災いが降りかかってきます。2ちゃんねるで有名になった
「八尺様」がそうですね。たまたま出会ってしまった長身の女に
なぜか好かれてしまい、後を追いかけられる。自分が引っ越した
部屋に幽霊が出るというのもこれに入るかな。

③「地雷を踏む」系 自分が何気なくした行為によって、呪いや祟りの
封印を解いてしまいます。仲間と廃墟の探索に行って、そこにあった
仏壇の引き出しを開けてしまった。アンティークショップにあった
鏡台をひと目で気に入り買ってきた。落ちていた手紙を拾い、
そのままバッグに入れて忘れてしまった。

実際には。この①~③は重なっていて、きちんと分けるのが
難しいことが多いですね。『リング』では、そうとは知らず呪いの
ビデオを見てしまう。『呪怨』では、何らかの理由で呪われた家に
入ってしまう。プロの作品でもこの形はたくさんあります。

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④「因果」系 自分の「よくない」行為により恨みが発生して
怪異が起きる。ひどい形で振った女が自殺し、その霊に祟られる、
会社の上司と浮気して、その奥さんの生霊に悩まされる。
『四谷怪談』がそうですよね。この場合、話の主人公は
読者に同情してはもらえないでしょう。

⑤「因縁」系 例えば、遠い先祖が旅人を殺してその金を奪い
裕福になったが、旅人の祟りによって、その家に生まれた男児は、
20歳を前にして事故や病気で死んでしまう・・・
昔の仏教説話などによくあった形ですが、
自分はあまり好きではなく、話も書いていません。

『八つ墓村』も因縁系と言える
キャプチャ

だって、その家に生まれてきた男の子に責任があるとは言えないし、
家系への祟りを除くには大法要でもするしかないですよね。
「祖先の悪行の障りを除くために、この壺を買って飾れ」
みたいな詐欺行為にもつながってくると思います。

⑥「神仏」系 お地蔵様に小便をかけた。神社のお賽銭箱に
手を入れて小銭を盗んだ。そのために罰が下る。
これもねえ、怖いという以前に「ザマミロ」と思いますよね。
主人公はまったく読者に同情してはもらえません。
それがいい怪談とは思えないです。

神罰が直接下る『大魔神』
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⑦「悪意」系 これはどういうことかというと、主人公には
何の責任もないですが、第三者の悪意によって生贄などに
されてしまう。加門七海氏の『三角屋敷』がそうですね。
風水的によくない三角形のマンションが霊的な実験を目的に
建てられ、そこに入った住人は思わぬ不幸に見舞われる。

現代的な怪談だと思いますし、自分もこの形はあれこれ
書いていて、「絵馬の検索」とか「奇妙すぎるバイト」なんかが
そうです。ただ、面白い話にはなりますが、主人公は
犠牲者という形なので、そこまでの内容の深みは出ません。

悪意系の『三角屋敷』
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この他にも「運命」系というのもあるかもしれません。
映画の『ファイナル・デスティネーション』みたいななもので、
死ぬべき運命になっている主人公が、何とかしてそれを
脱出しようと苦闘する。この場合、内容がややSFっぽくなる。

さてさて、ということで、怪談における主人公の責任という
観点から考えてみました。話の深みというのは必要だと思いますが、
あまりそこにこだわると、無理にオカルトホラーにしなくても、
『黒い家』や『冷たい熱帯魚』みたいな形でいいじゃん、
となるんですよね。なかなか難しいです。では、今回はこのへんで。

運命に殺される『ファイナル・デスティネーション』
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幽霊は怖いか?

2020.02.10 (Mon)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリは怪談論ですね。
さて、どっから話していきましょうかね。
「幽霊」という言葉で連想ゲームをすると、おそらく1位か
2位に「怖い」という語が出てくると思います。
では、幽霊って怖いんでしょうか?

まあ、幽霊なんてもともといないから、怖いも怖くないもない、
こんなふうに答えられる方も、かなりの数おられるとは思いますが、
今回は文化的な話としてお読みください。「幽霊=怖い」という
連想が生まれた原因は、大きく2つあるかなと自分は考えます。

『呪怨』


一つは、「娯楽としての恐怖」が氾濫していることじゃないで
しょうか。ホラー映画は毎年、趣向をこらした新しい作品が
つくられますし、ホラー小説も同様です。
「恐怖」は商品になるんです。

ホラー映画に登場するのは、幽霊の他に、殺人鬼、悪魔、ゾンビ、
正体不明の怪物などもいますが、アメリカ映画はともかく、
日本ではあまり一般的ではありません。日本映画で恐怖の主役に
なるのは、やはり山村貞子や佐伯伽椰子のような、
一度死んで悪霊化したものが多いですよね。

ただまあ、ホラー映画や小説はフィクション、作り物ということが
最初からわかっています。だから映画館で見ても一種の安心感が
あるんですが、2000年代に入ってから、日本では「実話」と
冒頭に銘うたれた作品がどんどん出てきました。これは活字も
ありますし、怪談という形でライブで語られたりもします。

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実話であるからには、日本のどこかで「本当にあった」話なわけで
フィクションよりはずっと身近です。あるアンケート結果では、
「幽霊はいる」と答えた人は、全回答者の40%くらいでした。
(ここで注意しなくてはならないのは、「霊魂はある」という回答とは
違うことです。霊魂はある、と答える人はもう少し多いでしょう。)

ですから、現代の日本では、幽霊を現実的な存在としてとらえている
人もそれなりにいるんだと思います。そして、実話怪談の主流は
「怖い幽霊」です。中には、心温まる幽霊話というのも
ないわけではありませんが、それは箸休め程度ですね。

二つ目の原因は、日本は長く仏教国であり、仏教の因果応報的な
考え方が浸透していたことだと思います。うちの父はもう
亡くなりましたが、テレビで幽霊番組をやっていると、
「何も悪いことをしてないんだから、俺に化けて出てくるやつは
いない」みたいなことを言ってました。

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これが伝統的な日本の幽霊観なんです。あるところに非道い仕打ちを
されて殺された人がいて、遺体は川に流されたので、葬式もしてないし
墓もない。お経もあげてもらっていません。つまり成仏していない。
そのために怨霊化し、自分を殺した人間のところに化けて出る。
『四谷怪談』のお岩さんがそうですね。

鶴屋南北が書いた脚本が上演されて大ヒットしました。觀ている客は、
怖いけれども、祟りにあうのは舞台の伊右衛門であり、自分のところに
危害がおよんでくるわけではない。ですから、現代の映画みたいな感覚で、
幕間に弁当を食べたりしながら見ることができたわけです。しかし、
明治維新後、仏教はまともに信じられなくなっていきます。

1970年代のオカルトブームが一つのきっかけになっているでしょう。
テレビ番組『あなたの知らない世界』で最恐と言われてるのは、
通称「恐山の怪」とか「お歯黒お化け」と呼ばれている回で、
ご存じの方も多いと思いますが、青森の恐山でたまたま女の霊を
見てしまっただけなのに、幽霊は家までついてきて、

『恐怖の心霊写真集』シリーズより
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茶碗の中に出現。その人の家族は全員、歯を真っ黒にされて
しまうんです。これ、自分はビデオで見たんですが、歯が真っ黒に
なるのが唐突で意味不明、そして映像としてすごく怖いんです。
あとは中岡俊哉氏の『恐怖の心霊写真集』シリーズで、
霊は目に見えないが、どこにでもいるという考え方が広まった。

この流れが少しずつ形を変えながら現在まで続いてるんですね。
ただ道を歩いていたり、鉄道自殺を目撃したりしただけで、
何も悪いことをしてないのに霊障に遭うことがある・・・自分も、
先祖の因縁みたいなのはあまり好きじゃないので、この形で
書いた怪談はかなりあります。ただ、それだけだと底が浅い気もして、

最近は、「自分の生き方が怪異を呼び込んでしまう」系の話を
なるべく増やそうと思ってるんですが、これは難しく、書くのに
時間がかかるうえに、内容が普通小説やミステリに近づいて
くるんですよね。試行錯誤中ではあります。

怪談会
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さてさて、では「怖くない霊」はいないかというと、まあ
生きた人間と変わらず、幽霊とわからないケースは別として、
人を助けてくれる霊の話は世界中にあります。よく知られてるのが、
吹雪の山中で道に迷ったりしたとき、誰とも不明なヤッケの
男がピッケルにつかまらせてくれた、みたいな話です。

スマトラ沖地震で、明らかに生者ではないものが瓦礫に
埋もれて生きている人の場所を教えたとか、病院で看護師が
休憩してると、いないはずの古い制服を着た看護師が現れ、
窒息しかけている新生児がいるのを知らせたとか、
さがせばけっこうな数が出てきます。

ということで、「幽霊=怖い」の背景には、エンターテイメント
で売り上げを増やすという戦略が隠れています。
しかし、もし幽霊がいるとして、すべての霊が邪悪な存在とも
考えにくいですよね。では、今回はこのへんで。

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