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軟弱登山

2014.06.30 (Mon)
*これも前にネットに書いたものです。書いたこと自体忘れてました。

北陸方面の岩峰に、8年前の夏に登ったときの話。
本格登山じゃなくロープウエーを使った軟弱登山。
本当は麓から登りたかったんだが、休みの関係でどうしようもなかった。
5時間ほど稜線を歩いて山小屋で一泊して帰る予定だった。
有名な山だと人出でにぎわってる時期だけど、ここは予想通りそんなに人がいなくて、
10時のロープウエイも数人しか乗ってなかった。
山頂駅から少し歩いて稜線に出るとあとはずっと岩場で、前に登山者の姿がちらほら見えた。
天気は晴れの予報で、このときは実際日差しがまぶしいくらいだった。

前の二人連れが大岩の上に立ったときに逆光で黒く見えたんだが、何か違和感を覚えた。
普通に足があるんだが、上半身に手がたくさんついているように思ったんだ。
変な例えだが、上半身に蛸をかぶったような感じ。
目をこらしてもう一度見るとそのときは普通だったんで、
ウエアの関係でそう見えたんだろうと思った。
それでも気になったんで足を早めて進んでいった。
ここは稜線の縦走で高低差はほとんどないからスタミナはあまり使わない。
5分ほどで前の2人連れがはっきり見えてきて、
まだ60歳手前くらいの男女でおそらく夫婦だろうと思った。
おそろいのウインドブレーカーにザック姿で、さっきのはなんかの見間違いだろうと考えた。
それにしても、この歳で先のクサリ場を登れるんだろうかと少し心配になったが、
手助けし合いながら登って行くんだろう。

追いついてから、脇にそれ「こんにちは、お先します」と声をかけて追い越した。
奥さんらしい方が「ああ、どうぞ」と言ったが、ご主人は黙ってたな。
そのとき雨が落ちてきた。しばらく日は出てたんだが、急にかげって暗くなった。
滑りやすくなるんで気をつけようと思いながら進んで、クサリ場に入った。
全体としては中学生なら登れる程度なんだが、何ヶ所か垂直に近いところがあって、
ナイフリッジだから横に落ちるとそのまま滑落してしまう。
慎重に、慎重に登って連峰の一つのピークに着いた。
本当ならここで昼飯にする予定だったが、雨が降ってて食べる気にならない。

写真も上手くは撮れないだろうし先を急ごうとした。
あたりを見回すとさっきの夫婦が50m以上下にいて、
ちょうどクサリ場に取りついているところだったが、ご主人のほうが10mくらい遅れてた。
ああ、待って手助けしてやればいいのに、と思って見ていたら、
奥さんのほうが中途の岩の上に立ったとき、嘘だと思われそうだが、
奥さんの両手がぐーんと伸びたんだ。
見間違いなのかもしれないけど、
10m近く伸びて岩の上に体を起こしたご主人を突き飛ばした。
「あっ」と思った。ご主人はゆっくりと横に滑って転がり、稜線の下まで落ちて見えなくなった。
あわてて戻った。岩の上に座り込んでいる奥さんに、
「ご主人落ちましたよね」と叫んだが、返事がない。

そこまで降りて唖然とした。
足を抱えて体育座りをしている奥さんの顔が登山帽の下でニヤニヤ笑ってたんだ。
それで俺に「見てられましたよねえ。
 主人はあんなに離れたところから一人で落ちたんですよね」。
そう言ってご主人が落ちたあたりの岩を指さした。
俺は絶句しながらも、そこまで降りて右の谷を見たが笹の斜面にご主人の姿はなかった。
なんとか笹の茎をつかみながらギリギリまで降りたが、岩壁の下は見えなかった。
あれから落ちたんなら間違いなく助からないと思った。

それで奥さんのところまで戻り、
腕を取って「まず山小屋まで行きましょう」と言ったが立ち上がろうとしない。
相変わらずにたにた笑いながら「主人とは結婚25周年なんですよ、ええ、ええ」と言った。
「雨がもっとひどくなるかもしれません。ご主人は助けられそうもないです。
山小屋までいったん行きましょう」そう言っても動こうとしない。
ここは携帯も圏外だし、どうしようかと迷っていたら、
後ろから若い3人組の姿が見えてきたので、
事情を話し奥さんをまかせて俺一人で山小屋まで急いだ。
さっきの滑落を見ているため、あまり足が進まなかった。

それでもなんとかたどり着いて管理人に滑落のことを話し、
管理人はすぐに山岳救助隊に連絡した。
すっかり暗くなってから3人組が奥さんを連れて小屋についた。
救助隊は出ているようだったが、距離がありすぎてこの山小屋はベースにしないとのことだった。
山小屋は混んでおらず奥さんとは別部屋で、
訪ねていって話をすることもできたが、さっきの出来事を思い返すと怖くなってそうしなかった。
3人組がいろいろ世話を焼いていたようだ。
翌朝、警察が来て事情を聞かれたが、腕が伸びて突き飛ばしたように見えたことは言わなかった。
奥さんとはかなり離れた岩から落ちたとしか。
ご主人が亡くなったというのは2日後、東京に帰ってきてからわかった。




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名前

2014.06.30 (Mon)
あれは・・・小学校6年の夏休み前。今年みたいにかなり暑い夏だったな。
日曜の放課後、悪ガキ4人でバケツと手網を持って用水路で生き物をとってたんだ。
小鮒とか、ミズカマキリ、タガメ、ガムシなんかの水生昆虫。
とったのは家に持って帰って飼うんだけど、小さいプラケースで濾過装置もなかったし、
何より夏場は水温が高くなってしまってあんまり長生きしなかったな。
浅い用水路の水にズックのまま入って、水草の下から網ですくい上げたり、
泥ごと底をさらったりすれば、ドジョウとか必ずなんかの生き物が入ってたな。

アスファルトの農道に上がってた石田ってやつ・・・これがリーダー格だったんだけど、
何か踊るような奇妙な格好をして飛び跳ねた。
「何やってるんだよ」と俺が見にいったら、
道路に10cm以上ある大きなカエルがつぶれてた。
今、石田が踏んだんだと思った。カエルはまだ生きてたが、腹が割れて少し汁が出てたな。
「おーでけえ」と俺が言うと、林も寄ってきて、
「これ、植村にそっくりじゃないか」と言った。
植村というのはクラスで少しイジメられてる太ったやつで、そのイジメの主犯格は石田だった。

「おーほんと、よく似てる」石田が笑いながら言い、
「このカエル、植村って名前つけてやろ」と続けた。
「・・・でもよ」最後にやってきた橋見が、
「うちのばあちゃんに聞いたけど、死んだ物に戒名以外の名前をつけるとよくないんだって。
 生きても死んでもいない変なのが生まれてくることがあるって」やや遠慮がちにこう言った。
「まだ死んでないだろ」と石田。たしかにまだカエルは弱弱しく片方の手足を動かしてた。
「そんなの迷信だろ。年寄の言うこときくのか」林がかさにかかったように言ったんで、
橋見は黙った。

それから10分くらいで帰ることになったが、さっきのカエルを見ると、
日に照らされて表面が乾いてた。ピクリとも動かなかったんで死んでると思ったが、
石田が木の枝の先で尻を突き刺すと、弱弱しく手を動かした。
「まだ生きてるんか」「すげえ生命力だな」
石田は「どうだ植村、苦しいか?」そう言いながら枝ごとカエルを持ち上げ、
「これ持ってって、植村んちに投げ込んでやろうぜ」と言った。
帰り道で、住宅地に入る最初の家が植村のところだったんだ。

俺らは網とバケツを持ち、
石田はカエルが刺さった木の枝を捧げるようにして歩いていったが、
道々カエルに「植村苦しいか、?もう死んだか?」と話しかけてたな。
やがて植村の家の塀が見えてきたが、これが50mも続くほど長い。
今考えれば、金属加工の工場が併設されてたんだと思う。
その中ほどくらいまできたとき、「んじゃあな。植村くんお家に帰りなさい」そう言って、
石田が塀の中に枝ごとカエルを放り込んだ。
・・・もうこのときは動いてなかったし、確実に死んでたと思う。

翌日学校に行ったら、植村も普通に来てたし、カエルのことも何も言わなかった。
まあ敷地の中の草むらに落ちてだれも気づかなかったんだろう、くらいにしか思わなかった。
その日は朝から図工とか面白い授業があって、植村をあんまりかまわなかったが、
同じ班だった橋見が何か話をしてたようだった。
で、給食中、植村が太った体を奇妙に動かしながら先生のところに行った。
先生は植村の手や、シャツをまくりあげて背中とかを見ていたが、
そのまま植村をどっかに連れていった。
植村の班の女子に聞いたら「手に大きいぶつぶつがいっぱい出てた」と言ってた。

先生が戻ってきて「植村はジンマシンが出たので早退することになった」と告げて、
ランドセルに机の中のものを入れて持っていった。
いつもの仲間で昼休みに連れ立ってトイレに行ったとき、橋見が、
「さっき植村のやつから聞いたんだけど、部屋に新しく90cm水槽セットしたって」と言い、
「すげえ、あいつんち金持ちだからな、アロワナでも飼うんかな」
「それだと90cmでも小さいだろ」「見にいってみないか」
「でも、今日はジンマシンで帰ったんだから無理だろ」
「ジンマシンなんて俺もなったけど、注射一本で治るよ。
 やつもさっき帰ったんだから5・6時間目の間に医者にいってるだろ」
こんな会話になり、寄ってみることにした。

植村の家は市街地にある学校から一番近くて10分もかからずに着いた。
でかい門の前で、呼び鈴を押すと使用人らしい人が出た。
遊びに来たことを告げると、ややあって玄関から植村が出てきたのが見えた。
門を開けたので「もう治ったのか」と石田が聞いたら、うなずいた。
「水槽見せてくれよ」と言うと、これもうなずいただけで先に立って玄関を入っていった。
俺らは「おじゃましまーす」と言って植村の後について階段を上り、
前に何回か来たことのある植村の部屋に入った。
部屋には真新しい縁なしの水槽がセットされていて、もう水が張ってあり照明でギラギラ光ってた。
「これ2階だろ。どうやって水換えするん?」
「・・・2階にもトイレがあるんだ」植村は苦しそうな感じでそう言った。

「何を飼うつもりだ」と石田が聞くと、植村は黙って水槽の下のほうを指さした。
もう底に青黒い砂利が敷かれてあったが、植村の指の動きにつられるようにして上がってきた。
「!」と俺らは息をのんだ。
大きなカエルだった。両目は白く濁り、体は半透明な粘膜のようなのに包まれてて、
しかも内臓がはみ出して体の後ろになびいていた。自分で泳いでるようには見えなかった。
昨日石田が塀の中に放り込んだやつだ、と思った。
呆然と見ていると、水面近くまできたそれを植村が無造作に手でつかみ上げ、
そのまま大きく口を開けて頭からくわえ込んだ。強い腐臭がした。
「あ、あ、あ」と言いながら石田がドアのほうにいきかけた。
植村はくちゃくちゃと口を動かしながら、石田のほうを向いて手を上げた。

その両腕一面にぶわっとそら豆大のジンマシンが浮き出いた。
「うわわ」と言って、俺ら3人も石田のほうにいき、石田がドアを開けた。
そっから4人でもつれるようにして広い階段を駆け下り、
「おじやましましたー」と叫んで、ズックをはくのももどかしく玄関を転がり出た。
最後に見た、部屋のドアのところに立った植村の顔・・・
口からはカエルの白くなった足がのぞいていたよ。




雑談(ブログ1周年)

2014.06.29 (Sun)
 あと明日1日で6月も終わりですが、当ブログを始めたのが去年の7月なので、
もうすぐ1周年ということになります。
とは言っても、昨年の7月8月は、
ネットの掲示板に書いたものをコピペして貼り付ける作業が中心でしたので、
本格的に新作を書き始めたのは10月くらいからなんですが。
以来、海外の仕事による中断もありましたが、
1日1作のペースで何とかここまでやってきました。

 われながらよくネタが続いたなあと思います。
もちろんどうしてもネタが出ない日や忙しい日もあって、
そういうときは、こうした雑談やら古代史、妖怪の話等で何とかしのいできました。
その間、のべ2万人を超えるお客様に訪問していただき、コメントも頂戴しまして、
感謝という他はありません。
話の数も、怖い話、ナンセンス話、黒民話合わせて240くらい。
総記事数は400を超えました。

 で、毎日書いてるのでやはり駄作はかなりあります。
駄作は書いている途中で、さすがに「ああ、これはダメだ」と自分でわかるので、
最初は載せないことにしようかとも思ったんですが、
どうせ書いたのは自分なんだし、駄作でもあとで読み返してみればそのときに
考えていたことがわかるだろうと思って、日記がわりに掲載することにしました。
ですから、ネットならば散々罵倒されるようなのも含めて読んでいただいた方々には、
ほんとうに感謝の言葉しかありません。

 さて、今後の方向性ですが、実話風の怪談が中心なのは変わらないと思いますが、
そろそろ1人称独白体以外の書き方も試してみようかなと思っています。
よりホラー小説風になっていくかもしれません。
それと、できれば・・・ですが、連載形式もやってみたいです。
長編小説は無理でしょうが、原稿用紙で50枚程度のホラー短編を5・6回くらいに
分けて掲載するような形です。
自分で書いていて、ああこれは長くしてももつネタだし、
長くしたほうが深みが出るだろうと思うようなのもあるんです。
ただ、話を書くのに1日1時間以上かけるのは難しいですので、できるかなあ・・・

『蝙蝠と蛞蝓の宴』ギュスターブ・アドルフ・モッサ





影響を受けた短編②

2014.06.27 (Fri)
・「ふな屋」別役実
これはもともとNHKの番組用に書かれた童話で、怖い話ではないんですが、
このうら寂しいというか、人恋しいというか、
一種独特の作品世界の雰囲気は参考にさせてもらっています。
出てくるのはみな善い人たちで、しかもどこか心寂しい。
まるで生きていること自体が悲しいもののような気がしてきます。

・「手」クライブ・バーカー
『血の本』の中では自分はこれが一番好きですね。
バーカーというと、映画の『ヘルレイザー』や『ミッドナイト・ミートトレイン』
のイメージが強くて、ベタベタのスプラッタ作家と思う人が多いでしょうし、
実際そのとおりなんですが、正統派英国怪談やユーモアも書ける人です。
作品は多数映画化されてますが、本を読んでても、場面が詳細に脳内に浮かぶときがあります。
文章に視覚的なしかけが施されてあるんですね。

・「少女地獄」夢野久作
『ドグラ・マグラ』は長編なんでこれにしました。
この作者は奇想の人ですよね。どういう頭の中身をしてればこれを思いつけるのか、という。
あと偏愛、執着の人でもあります。
これも異論があるでしょうが、京極夏彦氏がこの系譜を受け継いでる気がするんです。
青空文庫で読めます。

・「海を見る人」小林泰三
この作品はホラーというよりSFとして評価されてますね。
どの話を読んでも、底にひじょうに知的なものが流れているのがよくわかります。
科学ベースでつくり出されたオカルトという感じで、自分はマネできないです。

・「死者の書」折口信夫
これも青空文庫にあったような気がします。
歌人らしく情景描写に優れているのと、古代への憧憬がひしひしと伝わってきます。
文章が難しいですので、お薦めと言えるかは微妙です。

・「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン
安楽椅子探偵物に分類されるミステリー短編ですが、これもかなり奇想です。
なんですが・・・読んでいる限りではチェスタートンより飛躍や作り物っぽさは感じません。
一本作品に論理の筋を通して、パーツを組み上げていくという技ですね。

・「百姓の足、坊さんの足」新美南吉
これも童話で、やはり青空文庫で読めます。仏教的な応報の物語ですし、
正しい一生を終えたと思っていた坊さんが地獄に落ちる予感で終わる結末は、
かなり皮肉で逆説的でもあります。
菊次が米を踏みにじる場面は子供心に怖かったですね。

・「桜の森の満開の下」坂口安吾
幻想小説です。同じ系譜の「夜長姫と耳男」も好きでした。
この傾向のをもっと書いてほしかったです。
これら安吾作品の影響を感じる短編は現代でも多くあります。

・「時間の墓標」J・G・バラード
これもニューウエーブSFの代表作の一つです。
バラード作品には科学的な知識はあまり出てこず、かわりに独特な比喩が頻出します。
あとたいへんにロマンチックな主題が多いと自分は思ってます。

・「きょうも上天気」ジェローム・ビクスビイ
古典に属するSFなんですが、怖いです。
下手なホラーよりずっと怖い。しかも上手いです。結末はまったく救いがありません。

こう並べてみると、かなり奇想天外な作品が並びますね。
自分の怪談は「実際にありそうもない」と言われることが多いんですが、
こういうのを好んで読んできたので、そうなるんでしょうか。
今回はこのへんで。





おまけ

2014.06.25 (Wed)
 昨日はかなり2chオカルト板の霊スレ『幽霊は存在するのか 心霊現象は実在するのか?9』
というところに書いたので、それを載せてみます。
2chは転載禁止ですが、自分のブログは完全な非営利だし、
多くは自分のレスなんで問題ないと思います。

611 自分
超弦理論の産まれる一つのきっかけが
マックスウエル方程式を4次元で展開することじゃなかったっけ
あんまり自信ないが


612 名前:本当にあった怖い名無し
特別な周波数みたいなものがあう、までは俺も別にああ、そんな事もあるのかなあと思うんだけど、
視認となるとやっぱりおかしくない?
視神経の作りが一般人とは違うって事にならない?

613 名前:本当にあった怖い名無し
その場合は霊がいる根拠にしなくていいんじゃないの

614 名前:本当にあった怖い名無し
なんか子どもさんが多いみたいだな

615 名前:本当にあった怖い名無し
アレだろ、側頭葉だっけ?の一部を刺激したら霊が見えるとか
幽体離脱の感覚とか神の存在を感じるてやつ

616 自分
一つ電気の話題を提供すると、漏洩電磁波というのがあって、
過去の実験でパソコン全体から発する電磁波を数m離れた場所でアンテナを使ってキャッチし
モニタの画像を再現した例があるというな
ただしこれは、電磁場の発生が大きいブラウン管モニタだったけどな


617 名前:本当にあった怖い名無し
それじゃ子供みたいな事をひとつ
よく怖い話で、調べてみたらお墓がずたぼろに汚れてたから、
それで怒った先祖が出てきたとか聞くけど、

そんな事で自分の貴重な子孫を懲らしめたりするか?w

618 自分
祖先霊がずっとどっかにいてお盆に帰ってくるのか
それとも輪廻して祖先霊は消えてしまうか
このあたりは日本のスピリチュアルで解釈がわかれているようだが
今の日本人は祖先霊信仰が大きくて
輪廻して祖先はいなくなったとはあまり考えない

スピリチュアルでもその考えに迎合しようとしてか
輪廻◯%、祖先霊化◯%とか書いてるブログもあったな


619 名前:本当にあった怖い名無し
>>616
PCの画像出力の仕組みと脳で互換は無いでしょ
電気ってだけでその話は意味が無いと思う
それにそれだと目を瞑っていても見えるって事だろうし
それは夢や空想と何も変わらないけどんじゃ

620 名前:本当にあった怖い名無し
変わらないんじゃ、でした

621 自分
>>619
もちろん現時点では互換はまったくない


622 自分
ただ電気を用いて脳に刺激を与えることはできる
これは電極を刺すとかだけじゃなく、強力な電磁波や電場なら
遠隔でもできるだろうな


623 名前:本当にあった怖い名無し
>>616
いやそんな事じゃなくて、自分が死んで仮に霊になって、そんな事で怒る?
よくあるオチだと思うから、そういう気の短い人もなかにはいる、だと納得出来なくて

624 自分
しかし漏洩電磁波というのも面白いよ
技術的な困難はあるが、ハッキングという方法ではなく
お前らがエロ画像見てるのを遠隔からキャッチされる可能性があるわけだ


625 自分
>>623
つーか、それは霊が天国や地獄にいくのか
輪廻するかで違ってくるじゃね


626 自分
あと「あなたの知らない世界」だっけか
あれの放送作家だった新倉イワオ氏が
「自分の番組で心霊を娯楽としてみる風潮ができたが、
何でも祖先の霊のせいにする人がでてきてしまった。自分の祖先が大事な子孫を
そんなことで不幸にするわけがない」といったことを
著書で書いていたな


627 自分
もし祖先の霊障というのがあるなら
まずそれを主張する霊能者とかを問い詰めてみるしか方法はないんじゃね
そいつがどこまで霊界のしくみを整理統合してるかどうか


628 名前:本当にあった怖い名無し
>>626
あなたは輪廻派なの?
高次元がどうとかでなくて?
高次元て事なら常にどこにでも、いつの時間にでもいるとかそういう事でしょ?
それなら輪廻は100パー無くない?

629 名前:本当にあった怖い名無し
俺おっさんだから、あなたの知らない世界好きだったなあ

630 自分
サルになった


631 名前:本当にあった怖い名無し
>>564
この意見は貴重だよ

これは誰もが思ってるはず、霊がもし見えるなら?霊が見える人同士が集まって検証すればいいんだが、
俺が知ってる限りでは、霊能者は誰も共通項というか誰一人同じもは見えなかった。
即ち、霊能力者というものは、所詮は、その人の脳内現象であり、
誰にも共有できない、その人の脳内だけの世界なのである。

霊能力者がそうならば、一般の人のたまたま見たなんてものが、
それこそ、誰にも絶対に共有しがたい見えないものである可能性が高い。

即ち、それは、その人の脳内現象に他ならないという可能性が異常に高いと分かるはずだ。

632 自分
サルになったんで再起動してしまったじゃないかw

次元と言ってもなあ・・・この世界を空間3次元、時間1次元と考える人は多いが
もし空間の4つ目の次元があれば、数学的には4次元住人から見れば3次元空間は
ぽっかりどっか穴が開いていることになるか

時間が2次元だとすれば、過去へも未来へも自在に行けるのか
時間のほうはほとんどわかってないので、これが正しいかはわからない

で、われわれ2次元住人から見て2次元や1次元の生物?はいるのか
ウイルスとかは1次元的だがやはり違うし
2次元アニメの美少女とかはもちろん違う


633 名前:本当にあった怖い名無し
>>572
遺伝、即ち、先天的な異常な遺伝子を持った相続者達

634 名前:本当にあった怖い名無し
>>631
見る人によって見えかたは違うとか言って終わりなんだろうね
そもそも霊が死んだ瞬間の姿だったり若い頃の姿だったり首が無かったりとか、設定が無茶苦茶だし

635 自分
むしろ今の物理学の仮説は
次元というものを柔軟に考えるようになってきた
これまで点とみなされてきた素粒子を、振動する空間10次元のヒモと考えたのが超弦理論
3次元は幻影で、すべてが2次元に記された情報の投影ではないかと考えるのが
ホログラフィック宇宙論


どっちも現段階では理論でしかないが

636 名前:本当にあった怖い名無し
>>575
だから、誰もが体験できる環境状況を語るべきでは?
誰もが体感すれば納得するんだろ?

ある意味、科学的に実証できない証明できないのに、
体験しないと分からないという、論理は異常と思った方が良い

ディズニーランドのように誰もが体感できるようになってから、
お前の論理は成り立つという事を理解してくれ

637 名前:本当にあった怖い名無し
そこで四次元周波数カメラです

638 名前:本当にあった怖い名無し
次元の違うものを、カメラって事は画像としておさめるて事でしょ?
意味がわからない
高次元がどうとかはその道の第一線の人がいないとこで
話が進んだり解決したりはしないと思うよ

639 自分
まあ世界宗教者平和会議とかいうのがあるからなあ
キリスト教とヒンズー教、仏教とかでは死生の考えが大きく違ってるが
かといって異宗教間での論争が盛んというわけでもない
霊能者とかいう人は、スピリチュアルを含むどれかの教義を援用し、
独自解釈を加えてるわけで
霊能者同士で共同研究や討論が難しいのは
本家宗教と同じような事情


640 自分
本当に幽霊やら未来やら過去が見えるという人は
勇気を持って実証研究の場に身を投じてほしいものだがw


641 名前:本当にあった怖い名無し
ただね意識と肉体の分離現象はあるの 死後もあるかは謎

642 名前:本当にあった怖い名無し
>>641
分離があるなら、誕生の時はどう解釈したら良いのかな?
肉体に意識が伴って産まれるのでは無いって事だよね?
意識は肉体に依存してないって事だから
母親の意識が分裂?それなら父親の意識というか遺伝子は肉体的特徴のみかな?
どこかからやってくるなら、それは成熟した記憶を持ってそうだし
どう理解しているのか聞きたい

643 名前:本当にあった怖い名無し
工場みたいなところで新しく魂作られてんじゃないの
んで輪廻ってのはリサイクルだな

644 自分
誕生時というか胎児のときでもいいが
意識はどこからくるのかというのは面白い論題だけどね
例えば脳の発生メカニズムと意識の生成とかね
できる人は少ないだろうけど


645 名前:本当にあった怖い名無し
普通に脳が出来ていくにしたがって少しずつ処理できる情報量がふえていって、
それが意識になるんだと思うけど、
分離があるとなるとそれは間違いな訳で

646 名前:本当にあった怖い名無し
全てが、お前らが生きてるお前らの妄想の範囲でしかない!!

死んだ人から、皆が納得する物理学的現象の証拠証明で、幽霊を語ってくれや!w
無理だろ???

無理っていうことは無いんだよ?お前ら、諦めろや!幽霊信じるバカども!w

証拠も出さずに、いい加減、ゴチャゴチャ言うのは飽きたし、
もういい加減反論するのも、アホ臭いわ!バカども!

647 自分
まあね
ただ、脳ができる前に意識があるとわかれば
これは心脳2元論派は勢いづくだろうがw

このスレでは物理ガーと言われることが多いが
生命や意識の問題については生物学は頑張って欲しい





臨時の仕事

2014.06.25 (Wed)
みなさんどうも。うまく話せるかちょっと自信ないスが、まあ聞いてやってください。
えーちょうど10年前のことスね。ここ10年ずっとね東南アジアを回ってて、
つい1週間前に帰ってきたばっかなんス。
たった10年でも、浦島太郎になったような感じっス。日本語変じゃないスか?
当時パチプロをやってて・・・地グマってやつです。

ある一店を拠点にして食いつないでいくシノギで、
開店ねらいなんかに比べると効率悪いんスが、自分の性には合ってたんす。
ところがね、ちょっと下手打って根城を出禁になっちまった。
しょうがないんで他店に回ったんスが、これがドツボにはまって負けるわ負けるわ・・・
まあ、今考えれば自分の腕の問題なんスけど。

少ない残り金で居酒屋で飲んでたら顔を知ってる地回りがきてね、
なぜか「景気悪そうなツラしてるから奢ってやる」って、
高級クラブに連れてかれたんス。
まあね、ゴミカスパチプロにただ酒飲ませるわけはねえんで、
何か魂胆があるんだろうと察してはいたんスよ。

そしたら案の定「ヤバくも危険でもねえ1日仕事で15万、受けるか?」って聞かれて、
「んなわけねえだろ」とは思ったんスよ、当然。
簡単な仕事なら組の若いもんはいくらでもいるんだし、俺に特殊技能があるわけでなし。
報酬も法外で、キナ臭いったらありゃしねえ。
でもね、受けちゃったんスねえ。

そんなに非道いことにならないだろうとも思ってたんス。
というのは、俺の叔父貴が・・・これは本物の親戚なんスが、
そいつらとは別の組でけっこうな顔だったんス。そいつらもそれは知ってるから、
俺がパクられるとか、ケガするようなことはまずないんだろうってね。
もしかしたら叔父貴が手を廻して、俺に稼ぎ口を提供してくれてるんじゃねえかって、
そんなことまで考えたんス。

で、仕事ってのは、場所は言えねえけどある地方空港に客2人を迎えに行って、
そいつらの言うとおり半日街を案内して、それからホテルに送り届ける・・・これだけ。
「俺は車持ってねえ」って言ったら、そいつらのミニバンを貸してくれるって。
ナビもついてるそうだから確かに難しい話じゃないんス。
あと、その2人は美術品を持ってるから扱いに気をつけろって言われて、
それで合点がいったんスよ。実はこう見えても、美術の専門学校行ってたんス。

で、当日11時に空港前の道路に黒のアルファードを横付けして待ってたんス。
ロビーまで迎えにいく必要はないって言われてたから。
・・・約束の時間を過ぎても誰も来ないんで、不安になって車外に出てたんス。
そしたら近くの出口から2人組がでてきて、一人は小柄なアジア人で、
もう一人は巨体の黒髪の外人。

どっちもビシッとスーツ着て、ボストンバッグを持ってたっス。
アジア人のほうはその他にもう一個、大き目の帆布製のバッグを肩にかけてて、
それが美術品じゃないかと思ったっス。
「◯◯さーん」アジア人のほうが俺を見て手を上げ名前を呼んだんで、
これがめざす相手だってわかったんスよ。
いや別に符牒なんか決めてないって、そんなのテレビの中だけの話っス。

アジア人のほうは30代かなあ、若ハゲで色の黒い精悍な顔をしてたっス。
外人は年齢不詳で、ずいぶん年がいってるような感じがしたけど、髪は真っ黒だし、
シワもほとんどないんス。ただ動き方とかが老人じみてて・・・
あと膚が漂白したように白いんス。
2列目の座席に乗ってもらい3列目にボストンバッグを入れると、アジア人が
「駅前に行ってください」って流暢な日本語で言ったんス。

これは道知ってるんで30分ほどかかって大通りに出ると、
信号のない角のさびれた感じのビルの前で、
「ここで停めてください。1時間後に迎えに来て」と言われたんス。
アジア人が帆布製バッグだけ持って2人は地下への階段を下りていき、
駐車できるとこじゃないんで、
俺は近くに有料パーキングを見つけてずっとそこにいたんス。
・・・1時間後に行ってみると、2人は歩道に立って待ってたスね。

急いで乗り込んでもらったんスが、そときにね、俺の気のせいかもしんないけど、
紙のように白かった外人の顔色が、なんか血色がよくなってる気がしたんス。
次は、アジア人がメモを渡してよこして「ここへ」とだけ言ったんス。
電話番号だったんでナビに入力したら、小一時間はかかる市の外れだったんス。
目的地は何かの工場みたいだったんスが、ナビは「個人宅です」としか言わなかったス。
道中、2人とも一言もしゃべらないし、もちろん俺から話しかけることもしなかったス。

で、田園地帯に入ってしばらく行くと、ナビが「目的地周辺です」と言ったのが、
やはり工場らしい高い塀の前だったんスよ。
ただ・・・廃工場って感じで薄汚れて見えたっスね。
門まで行っても何の看板もなかったし、柵とかチェーン張ってるということもなし。
なんとなく食品加工っぽいとこだとは思ったんスけどね。
2人はまた例のバッグだけ持ってそこに入っていき、俺は門の前の道で待ってたんス。
時間は2時前かなあ・・・人通りも車通りもまったくなかったっス。

1時間過ぎ、2時間過ぎ・・・今度はなかなか出てこなかったんス。
俺は9時ころ飯食ったんスが腹減ってきて・・・
よほどコンビニでも探そうかと思ったんスが、
その間に出てこられたらマズイと思って我慢したんス。
でね、2時間半すぎて2人が出てきたとき、
アジア人がさっきのバッグの他にでかい箱型の袋みたいなのを苦労して持ってたんスよ。
俺も手伝ってそれを後部座席に積んだときに、中はクーラーボックスじゃないかと思ったっス。

乗り込むとアジア人がホテルの名を言ったんで、
「ああ、これで終わりか・・・実働5時間じゃね」って思ったんスよ、「ラッキー」って。
・・・市街に向かって10分くらい走った田んぼ中で、
アジア人が何か切迫した声を出したんス。
外国の言葉で意味はわかんなかったス。俺にじゃなくつれの外人に言ってるみたいだったス。
ミラーで見ると、外人が長い体を伸ばして後ろからさっきの箱の袋を持ちだそうとしていて、
アジア人がそれを止めようとしてるみたいだったス。

俺は・・・どうしたらいかわかんないんでそのまま運転してたら、
アジア人が「止めて、止めて」と日本語で言ったんス。
俺にだと思ったんで路肩に車を寄せ、後ろを向くと、
ちょうど外人がアジア人の肩に組んだ両手を叩きつけたとこだったんス。
アジア人は悲鳴をあげてシートの間に転がったっス。
外人は大きな袋を膝の上に抱えてチャックを開け、さらに中の容器のフタも開けたんス。

そのとたんムッと生臭い臭いがしたんス。外人は手で中のものを掻き出す仕草をして・・・
生肉だと思ったっス。それをむさぼるように音立てて食いはじめたんス。
青黒い塊のような肉で、内蔵・・それも腐ってるような臭いがする・・・
アジア人がやっと起き上がってきて、俺に向かって「車から出て、連絡して」と叫んだんス。
言われたとおり車外に出ようとしたとときに、
アジア人は帆布製のバッグから油紙にくるまれた何かを取り出そうとしてるように見えたっス。

何かの・・・マスクだと思ったっス。変な顔のお面みたいなブサブサした粗い作りの。
それを・・・夢中になって肉を喰ってる外人の顔に下からかぶせて・・・
外人は少し抵抗したんスけど、すぐにぐったりして、
面をつけたままシートにもたれかかったんス。
俺が車外で立ってると、アジア人がウインドウを少し開け、
「あんた、すぐ離れて、ここ離れて電話して応援呼んで」と怒鳴ったんで、
田んぼの畦まで下りて、あらかじめ聞いていた連絡用の番号にかけたんス。

すぐに連絡がついて、出たやつに事情を説明すると、居酒屋で会った兄貴分に代わって、
緊張した声で「トマスが出たって? お前・・・車はそこに置いていいからすぐ駅に行け。
 とにかくその場を離れろ。後は俺らが処理するから」こう言って切れたんス。
・・・もちろん言われたとおりにしたっス。駅に行って電車で帰ってきたんスよ。
その後はまったく連絡なし。
で、翌日アパートにいたら叔父貴から電話が入ったんス。

叔父貴は「お前にいいと思ってやったんだが、マズイことになった。今から迎えに行く」
で・・・そのままどこかの山奥に連れてかれて軟禁状態、
あとパスポートを取らせられてアジアの某国に行かせられたんス。
その間、何がなんだかわからないし、叔父貴からも一切の説明はなし。
まさかこんな大事になるとは・・・向こうでいちおう仕事は用意されてたんス。
「15年は日本に戻らない方がいい」と言われてたんスが、
途中でバックレて別の国に出て、なんとかこうやって戻ってこれたんスよ。ね、変な話っしょ。

関連記事 『血のトマス』

関連記事 『血のトマス2』





雑談(幽霊を見た時の反応)

2014.06.23 (Mon)
 忙しくて今日も話が書けませんでした。
で、youtubeで、自分が気にいってる霊関係(ホンモノ?ではない)の映像を3つほど紹介します。
自分の書くものより面白いでしょう。
一つ目はブラジルのcandid camera(ドッキリカメラ)で、
イスを投げたりする体格のいい女性の反応がすごく面白いです。
最後は車が壊れてしまいます。

『Best Brazilian Scary Prank woman almost died』


 次もドッキリカメラ・・・というか、元々は心理学的な研究のようですね。
ハリウッド版貞子のような女の子を見たときの、外国人の反応です。
絶叫というより、息を飲んで立ちすくむという形が多いようです。
半信半疑で「まさか」という気持ちもあるんでしょう。
このあたりも。怖い話を書く場合の参考にしています。

『海外ドッキリ☆新作 ─ 「絶叫の館」ホテルの廊下に立つ少女』


 最後は『Just for laughs』というカナダのテレビ番組なんですが、
自分はこれが好きで、よく見ています。なかなかブラックな味がありますし、
下ネタもかなり多いです。これは、死神を見たときの反応。

『Hidden camera death』


 


雑談(車について)

2014.06.22 (Sun)
 車と幽霊の話といえば定番なのが「タクシー幽霊」ですよね。
いつのまにか乗ってたお客さんがいなくなっていてシートが濡れていた、という。
あとはよく出てくるのが、心霊スポット帰りに何かあって、後で車の後部を見たら、
びっしり手の跡がついていたというやつ。
ホラー映画などでは、逃げようとする場面で車のエンジンがかからなくなり、
セルモーターの回る音が響く・・・とか。
そういえば、最近のキーレスではあまり見なくなりました。
陳腐化したということでしょうかね。
  関連記事 『心霊事件簿2』

 あとアメリカの都市伝説では車に関するものはいろいろあります。
一番有名なのが「後部座席の殺人鬼」というやつかな。
女性が車を運転していると不審な車に後をつけられる。
怖くなった彼女が速度を上げると不審車も速度を上げてくる。
意を決した彼女が車を止め、後続車の運転手を問い詰めると、男性は言った。
「あなたの車の後部座席に刃物を持った人が乗っている。あなたは危ないところだったんだ!」
ガソリンスタンドに給油に下りると、店員が・・・というバージョンもあります。
そういえば、Volvo車には脈拍感知対人センサーというのがついてる車種があるみたいです。
車に侵入者がいた場合、その脈拍を感知してキーに情報を送信するという・・・
ヒッチハイク系もいろいろありますね。映画でも『ヒッチャー』とか。

 自分の話にも車が出てくるものがあるんですが、できるだけ車種を書くようにしています。
少ない字数で、登場人物の印象を語るための一つのアイテムになると思ってです。
といっても、かなりステロタイプではありますが。
フルスモークのベンツ、さらにAMGがつけばこれはその筋系。
ノアとかステップワゴンなら家庭を大切にしてるお父さん。
今は北米向けに車体が大きくなってしまいましたが、昔のレガシイのターボワゴンなら、
若いころに走り屋だった人とか。
クラウンなら功成り名を遂げた会社人間とか、アリオンなら年金生活のおじいさんとか。

 これは自分がクルマ好きなためもあるんです。
ここ3代ほどはアメ車のジープを乗り継いでいます。その前はランクルでした。
アメ車といえば、今TPPでいろいろ無茶な要求をアメリカ側がしているみたいですが、
何をどうしようと、今以上に日本でアメ車が売れるようになるとも思えないんですが・・・
買うのは自分と同じような物好きだけなんじゃないでしょうか。
 乗ってみてわかったのは、そうは壊れないということです。
電装系がやや弱く、3代の間にワイパーのモーターが一回、カーナビが一回壊れましたが、
せいぜいそれくらいです。エンジン、ミッションなんかはまったく問題がないですね。
あとは日本車のように収納がたくさんついているとか、
シートアレンジとか至れり尽くせりにはなってないです。

 今乗ってるのは、ジープ・グランドチェロキーというやつで5年目です。
燃費は町中だとリッター4kmくらい。
しかしこれはトヨタのランクルでも似たようなものでしょう。
車重2t超だし、4700ccエンジンだし、わかってて買ったので文句は言いません。
ただ、ガソリンをまき散らして走ってるようなものなので、
この省燃費時代にちょっと人の目が気にはなります。
自分は林道を走ったり、山中で車中泊することもよくあるんですが、4駆性能は満足でした。
車幅が大きいので、林道の木の枝があたって細かい傷がたくさんついてしまいましたが、
クロカンはそれが常道と思って下取りとか気にしてないです。  

 2回目の車検を終えて、買い換えを迷っていますが、
グランドチェロキーの代替にはしないつもりです。
新型は大きすぎるのと、デザインが好きじゃないので。
・・・ヨーロッパ車、ドイツ車はたぶん買わないと思います。やはりSUV系がいいんですが・・・
マツダのディーゼルは魅力ですが、これもデザインが都会的すぎて自分にはちょっと。
トヨタから新たにランクル70を発売するという話があり、興味を持っています。
自治体の災害対策車みたいな買われ方をするんだと思います。
おそらくマニュアルだけでしょうが、どうしようかなあ。

『グランド・チェロキー』




電気猫!?

2014.06.21 (Sat)
OLをしています。この間部屋を移ったんです。
前は6畳のキッチン・バス・トイレ付アパートだったんですが、
もう少しいい部屋に、と思って賃貸マンションと呼んでもおかしくないところに引っ越しました。
ダイニングと寝室が分かれた2部屋です。家電もいくらか新しいのを買いましたよ。
・・・独身です。もうアラフォーですから、一生独身覚悟で、
そのうちマンションを買うことになるかもしれません。
あ、すみません。ネガティブな愚痴を聞いてもらう場所じゃないんですよね。
金曜日に業者に荷物を運びこんでもらって、
その日はあいさつ回りをしたり、物の整理で一日つぶれて、
ビールと焼酎を少し飲んで早く寝たんです。

その夜のことです。「ジジジジ」という音で目が覚めました。
薄目を開けてそちらを見ると、なにか青白く光るものがいました。
蛍光塗料・・・という光り方じゃなくて、電気を帯びているような感じですね。
火花も飛び散っていました。
猫です。黒いんだと思いましたが違うかもしれません。青い光でよくわからなかったんです。
ただ、模様のない一色だけのように見えました。
その猫はベッドの足元のほうにいて、伸びをするような仕草をしましたが、
とんとん、と軽快に走って窓の下あたりで消えたんです。その間、数秒でした。
「ええっ」と思って起き上がり、電気をつけて部屋の中を確かめました。
でも、何もいなかったんです。怖くはなかったし、夢だったんだろうと考えてそのまま寝ました。

次の晩ですね。翌日は日曜日なので、遅くまでベッドで本を読んでたんです。
午前2時をすぎたあたりで、昨夜と同じ「ジジジジ」という音がまたしました。
見ると、やはり帯電したような猫が前の夜と同じあたりにいるんです。
ただ・・・体が半分になってました。
何と言ったらいいか・・・後頭部から背中に線を引いたように、縦に真っ二つに切れていたんです。
だから足は前後2本しかないし、体を動かすたびに切断面が見えたんです・・・内臓とかいろいろ。
猫は、2本しかない足なのにしなやかな動きで前と同じあたりで消えました。
この日はお酒も飲んでないし、意識もはっきりしてました。絶対に夢じゃないんです。
それで、こういうことに詳しい人が会社の庶務課にいると知ってたので、
翌週すぐに相談してみました。

「それは電気猫ね」昼休みの社員食堂で、先輩はこともなげに言いました。
「何ですか? 電気猫!?」
「そう。噂としては広まってないけど、けっこう目撃例があるのよ。
 電気を帯びてるように見えたって言ったじゃない」
「そうですけど・・・それって本物の猫なんですか?」
「わからない。猫の見る夢とも言われてるし、猫型の妖怪じみたものという説もあるわ」
「・・・じゃあ、次の日半分になってたのはどうしてですか?」
「電気猫はね、部屋のコンセントの差し込み口があるでしょ。
 あれから、あれへと移動するの。猫が出たあたりと消えたあたりに差し込み口があるんじゃない?」
確かにそうでした。でも・・・電気猫!! とても信じられません。

そう言うと「じゃあ、夢を見たってことでもいいわよ。出なくするのは簡単だから」 
「どうやるんですか」
「2日目の夜は体が半分になってたって言ったわよね。
 えーと出たほうの差し込み口はベッドの足元だっけ」 「そうです」
「そこのコンセントの一方を使ってなかった?」
そう言えば、そこから電源をとって枕元にアーム式のスタンドライトをつけてました。
「電気猫はね、コンセントが縦2つ並んだとこからしか出てこられないみたいなの。
 それから、消えるときも縦2つ並んだコンセントから出ていく。出口があるのがわかるみたい。
 体が半分だったのは、猫も昨日の今日で油断してて、うっかり間違えたんじゃないかな」
 だから一般の家庭だとあんまり見ないのよ。使ってない部屋には出てるかもしれないけど、
 夜中見にいくこともないだろうし」

「!?」
「だからね、差し込み口使っちゃえばいいの。それだけで解決するから」
自信たっぷりの口調に、なんとなく納得させられてしまいました。
「それにしても、世の中には不思議なことがあるもんですねえ。
 先輩はそういう知識をどこで得られるんですか?」
「フフン、それはまあいろいろ。不可思議はたくさんあるし、
 私たちが生きてるのは、ある意味そういうものをうまくすり抜け、やり過ごしているからよ。
 あなたの場合も、出たのが電気猫だったのはラッキーだから」
「どういうことですか?」
「・・・聞いた話だと、電気河童というのもいるみたいよ」
「カッパ!? って妖怪の河童ですか、皿のある。それが出るとどんなことになるんですか?」
「尻子玉が・・・ああ、知らないほうがいいわね」 こんなやりとりで終わりました。



幽霊スロット

2014.06.19 (Thu)
*かなりナンセンスです。

引っ越したんです。えーアパートからアパートにです。
いや、理由は大学の学舎のある場所が3年の専攻課程から変わるってことで、
前々からわかってたことだから、春休み中に友だち数人を頼んで自前でやったんですよ。
まあ4畳半から4畳半への転居だし、建物がボロなのも同じなんで、
気の浮き立つようなことはまるでありませんでしたね。
ただ、敷金・礼金がなかったのは幸いでした。

で、荷物もたいしてなかったんですが、部屋に運び込んですぐ友だちと酒盛りになって、
一人になって寝たのが3時過ぎです。
まだ何も整理できてなかったんですが、ベッドだけは組み立ててありました。
仰向けになって毛布と布団をかけ・・・一瞬で寝入ったんですけど、
チリーンという鈴の鳴る音で目が覚めました。
そのとき連想したのが、巡礼の人が持っている鈴の音でした。
四国出身なので身近に聞いていたせいもあるかもしれません。

何だろう・・・隣かな・・・しかしベッドの下のほうから聞こえてきたよなあ。
でもここは一階だし・・・とか考えていると、布団の横のほうでよくない気配がしました。
ベッドは壁とくっつけてあるんですが、そっちの側でした。
・・・じつは自分は、いわゆる「見える人」なんです。
これまで、小さい頃から何度も幽霊らしきものを見ているんですが、
その前触れとなるぞくぞくする気配とよく似ていたんですよ。
そっと目を開けてみました。

自分の横に、壁まで人ひとり入れるくらいのスペースがあって、
その布団から、じわーっとにじみ出てくるものがありました。
透けてるとかということもなかったですね。実際の人間と変わんなかったです。
苦悶の表情を浮かべたジイサンでした。80歳くらいでしょうかねえ。
老衰死で不思議のないように見えるジイサンがブリーフ一丁で布団から浮き上がってきて、
寝姿のまま中空に漂い、どんどん上に昇って天井に消えたんです。
・・・まあ、この程度のものは何度も見ていますから、怖いということはなかったんですが、
さすがにこの至近距離は・・・と思いました。

ところが、霊が出る前のイヤーな気配はまだ消えていなくて、
さっきジイサンが出てきたのと同じ場所から、今度は女の人が出てきました。
年齢は・・・よくわかんなかったですが、おそらく40代くらいの主婦・・・
だと思いました。エプロンをつけてしたから。
さすがに驚いて、転がるようにしてベッドから抜け出しました。
その女の人は、なんだか夢を見ているような表情のまま、
ジイサンと同じように天井に消えましたよ。

んで・・・2分に一体の割合で、次々とそっから霊が出てくるんです。
年寄りが多かったんですが、子供もいましたし、若い女性も・・・
ははあ、これは霊道というものなんだろう、と思いました。
話には聞いていましたが、見たのは初めてでした。
前の住人には自分のようには見えなかったんでしょうが、嫌な気配は感じてたんだと思います。
で、ちょっとよからぬことを考えたんです。
いやあ・・・言いにくいんですが、せっかくの霊道なんだから、
若い美人が出てきたときに、この部屋に閉じ込められないかって。

いやほら、どうせ霊道があるんだし、次々に別の霊が出てくるのはうっとうしいでしょ。
出てこないようにすることも工夫すればできるかもしんないけど、
そんなに苦しそうにしてない若い子の霊がフワフワ漂ってるなら、それもまたいいかと。
まあねえ・・・多少酔いが残ってたんでしょうねえ。
で、少し考え、引っ越し荷物をあれこれ引っ掻き回して、お守りを一個見つけました。
実家の母親がこっちに出るときに持たせてくれたやつです。
あともう一個・・・ああもしやと思い、外に出てスクーターを調べたら、
リアボックスの底に小さい交通安全のお守りがありました。もう空がだいぶ白んできてました。

そうしているうちにも、霊は30体ほども、
ベッドから出て天井に消えるというのをくり返してました。
でね、お守りで天井とベッドの下からはさみ込んでやればいいかもと考えついたんです。
お守りに丸めた両面テープをくっつけたのを持ってじっと見てたんですが、
ジイサン、バアサン、オッサン、警察の制服を着た人、赤ちゃん、ジイサン・・・
次に女子高生らしい制服が出てきたんです。長い髪で・・・化粧っ気のない美人でした。
顔は大事なんでちゃんと確認してたんですが、その間に霊は中空まできてしまってました。
布団からは次の霊が出かかっていましたね。
やっとばかりにベッドに飛びのってさらにジャンプし、お守りを天井に押しつけました。

ところがです・・・天井のホコリのせいで両面テープがうまくつかず、
何度かジャンプをくり返してるうちに、女子高生はスーッと天井に消えてしまいました。
次のはガタイのいい髭の濃いオッサンで、工事のヘルメットを被ってました。
チャンスはまだまだ・・・と思ったんですが、
そのとき、ゴーンという鐘の音が耳元で大きく響いたように感じました。
すると、工事のオッサンがちょうどベッドと天井の中間で、
横になった姿勢のままくるくる縦回転し始めたんです。
えー何でしたけ、あの体操の有名な・・・白井選手でしたっけ。
あのクルクルをあれより速いスピードでその場でやってるんです。

カーテンのすき間から強い光が差し込んできて、太陽が昇ったんだとわかりました。
そのせいなんでしょうか。
オッサンはクルクル回りながら、だんだんぼんやりとしていって消え、
次が出てくることもありませんでした。
まあ夜になったらまた違うかと思い、ベッドの下に布団をひいてもう一眠りしたんですよ。
・・・でね、結局ダメでした。その日も夜中ずっと起きてましたが、朝の4時過ぎ、
昨日のオッサンが中空に現れてクルクル回ってるだけなんです。
変なことをして霊道が壊れちゃったんでしょうか・・・
いや引っ越してはいません。そんな金ないですから。で、今もね、回ってるんです。
見える人は見にきてもいいですよ。



血のトマス2

2014.06.17 (Tue)
私は都内で美術商をやっておりまして・・・自己紹介はこれだけしか言えませんね。
昨夜、この場で「血のトマス」という言葉が出てくる話をされた方がいると聞きまして、
やってきたんです。え、お見えになってない。
そうですか、それは残念です。まあ、せっかく来たんですから話はしていきますよ。
私自身も不可解に思っていることでして、事情が少しでもわかれば有難い。

2か月ほど前のことです。油絵のあるグループ展を見にいきました。
・・・私らは美術商ですので、転売専門のブローカーとは違うんです。
有望な新人を発掘して業界の隆盛のお手伝いをしたい。
儲けが二の次というわけではありませんがね。
だから、あちこちの個展や卒業制作展なんかをこまめに見て回っているんですよ。

そのグループ展は、同じ美術の専門学校を卒業したという4人が開いたものでしたが、
正直とるべき作品はないと思いました。
ところが、その4人以外の作品が一点だけあったんです。
その絵の題名が「血のトマス」でした。不気味な絵でねえ・・・キャンバスは60号。
広間のようなところに逆Y字型の柱が立っていて、
足を広げた人が縛りつけられてるんです。

男の体つきでした。全身にぼろ布をまとっているんですが、
ところどころ破れていて見える膚から血がにじんでいるんです。
そのまわりを10人ほどの人物がとり囲んでいるんですが、
それらの人はヨーロッパ中世風の衣装で、みな不気味な仮面をつけているんです。
仮面は一つ一つ違った意匠で、おそらくモデルがあるんだろうと思いました。

構図の全体は古典的なキリスト教徒の殉教図に似ていないこともありません。
それから柱に縛りつけられている人物も、
俯いているんですが仮面をつけているように見えました。
ただ・・・他の人物の人工的な仮面とはちょっと色合いが違ってたんです。
赤黒い、それは不気味な、不安を掻き立てるような色彩が出ていまして・・・
そこに才能を感じたわけです。正式な絵の題名は「血のトマスⅣ」でした。

気になったので、グループ展の同人の一人に、
その絵の作者について聞いてみたんです。
何でも・・・彼らがグループ展を開くと決まってから、
彼らの5年上の卒業生と名乗る人物から電話があり、
ぜひ一点でいいから一緒に絵を展示してほしい、という内容だったそうです。

卒業生名簿を調べてみると確かにその人物の名前があり、
しかも送られてきた絵は一種異様な迫力があったため、
実害はないどころか、むしろ宣伝効果があるだろうと考えて展示しているとのことでした。
彼らから連絡先を教えてもらいましたが、関東の有名保養地が住所でした。
電話をかけ、単刀直入に「絵を見て気に入った。他の作品も見せてほしい。
場合によっては購入と制作資金援助の契約をしてもよい」と話しました。

相手は了承し、日時を決めてこちらから会いにいくことになったんです。
その日、私が車で2時間ほどかかってたどり着いたのは、山間の別荘地でした。
その中でも、とりわけ壮麗な一軒を訪れると、
30代と思われる痩せて髪の縮れた男性が出てきました。

男性は「別荘の管理を仕事にしている。
暇な時間を使って地下室で制作に取り組んでいる」と、無愛想に話しました。
お茶一杯出ることもありませんでしたが、
芸術家にはそうした気質の人も珍しくはありません。
私は電話の用件をもう一度くり返し、さっそく絵を見せてもらうことになりました。

別荘内は何部屋あるかわからないほど広く、
その一角にあるキッチンの床下から、石の階段で地下室へと下りていきました。
食品貯蔵用の部屋ということでしたが、
中はコンクリ打ちっぱなしで10畳以上の広さがあり、
絵の具の溶き油の臭いが充満していました。

10枚ほどのキャンバスが画架に立てられており、完成作は5点ほどでした。
見せてもらって、はっきりと失望しました。どれも同じモチーフの作品だったんです。
みな「血のトマスⅣ」と同じ場面を、やや構図を変えて描いたもので、
画面に登場する人物の人数や、
トマスと思われる人物の大きさに多少の違いはあったものの、
印象はどれも同じでした。・・・このような例はけっこうあるんですよ。

ある一つのモチーフに取り憑かれたようになって、
同工異曲の作品ばかりを描いている人です。
本人にとっては細部の違いは重要なのでしょうけど、
まったく売り物であることが意識されておらず、これではどうしようもありません。
はっきりそう言おうかとも思ったんですが、見放してしまうには惜しい点もあったんです。

それで一枚だけ購入させてもらうことにしました。
そうやって関係だけは保っておこうと考えたんですね。
絵をもう一度よく見て、トマスが最も大きく描かれているものを購入したいと申し出ました。
やや高いところから見下ろした構図で、トマスの頭頂部の髪、
その下に分厚い赤黒いパンのように垂れ下がった顔面がのぞいていました。
「血のトマスⅡ」という題名でした。

私が◯十万の金額を言うと、男性はぱっと顔を輝かせ、
お金に困っていたのか、揉み手をせんばかりに卑屈な態度になったんです。
時期は4月でしたが、暖房を入れていない地下室はかなり気温が低く、
また男性の態度の急変も嫌らしく感じたので、早々においとますることにしました。

いつもワゴン車の荷室に載せている薄葉紙とエヤー梱包材で購入した絵をくるみ、
送ってきた男性に玄関先で別れを告げて、帰路につきました。
・・・ところがです。10分もしないうちに、
絵の細部を見るのに使った老眼鏡を忘れたことに気がつきました。
無意識のうちに今日あった出来事を反芻していて、思い出したんです。

面倒でしたが、引き返すことにしました。何度か曲がってその別荘に戻ると、
建物の横手・・・さきほど私が車をおいたところに、
黒のベンツの大型SUVが停まっていたんです。
運転席のウインドウにまで、違法のスモークが施されてありました。
来客だろうか、この手の車は別荘の管理元の不動産屋かもしれないなと考えながら、
庭を通ってドアの呼び鈴を鳴らしました。

ところが、いくら待ってもインターホンからの返事ありません。
ノブに手をかけて回すと鍵はかかっていないようでした。
少しだけ開け、中に頭を突っ込むと、
草刈機のようなキーンという音がかすかにしていました。
「すみませんーん、先ほどの◯◯でーす。□□さーん、おられますかー」と叫びました。

そのとき、広い玄関につながった廊下の奥のほうから、
「オーン、オオオオオーン」という雄牛の鳴き声のような声が響いきました。
いや・・・人の声ではなかったと思いますよ。
人間があんなに大きく、あんなに動物じみた声を出せるわけがありません。
鳴き声のようなのはそれ一度だけで、草刈機のような音も消えてしまいました。
その後はいくら呼びかけても静寂が続くだけでしたね。

しょうがないので、老眼鏡は後で電話をかけて送ってもらおうと思い、
都内の私のギャラリーに戻り、
そこのガラクタ倉庫に「血のトマスⅡ」を放り込んでおきました。
で、2日後です。ギャラリーに侵入者があったんですよ。これが不思議で、
警備保障会社と契約して赤外線センサーもつけてあるのに、まったく反応なし。
高価な作品も多数置いてあるのに、いっさいなくなった物はなかったんです。

じゃあどうして侵入者があったかわかったかというと、倉庫の鍵が壊されていたんですね。
まあここは、なくなっていいようなものしか入れてない物置なんですが、
中の物の配置が変わっていて、「血のトマス」の梱包が破られていました。
キャンバスはそのままでしたが、絵の面に何かの薬品がかけられて、
完全にダメになってしまっていました。

焼け焦げたようになっていたので、酸の一種ではないかと思いましたが、私にはわかりません。
それと・・・ほら、これを見てください。革製のマスクに見えますでしょう。
これが油紙に包まれて、キャンバスの脇に落ちていたんです。
皮革製品は専門外もいいとこですが、急いでなめした仕上げのように思えます。
素材は何なんでしょうねえ。

そして、このマスクの裏側のツヤのないほうに、
「警察には連絡するな」と書かれていました。・・・だから警察には連絡していません。
いやいや、脅しに屈したとかじゃあないんです。
私だって、長年この闇の深い業界を生き抜いてきたんですからね。
むしろ面白いです。裏に隠されたものがあるんでしょう。探ってやろうと思ってますよ。

ああ、あと「血のトマス」の作者の男性ですが、
老眼鏡のことで電話しても連絡がとれないんです。
携帯もそうだし、別荘の電話もどっちも「現在使われておりません」になってるんです。
まあもう一度訪問するつもりですから。
その後また、わかったことがありましたらこの場でお話したいと思います。
楽しみにしていてください。

関連記事 『血のトマス』

関連記事 『臨時の仕事』




影響を受けた短編作品①

2014.06.16 (Mon)
今日はネタがないので自分が影響を受けた短編作品について。
前に書いたのとダブってる部分もありますが、未読の方にはおすすめです。
あと、ホラー・怪談の範疇に含まれないのもあります。

・「夢判断」ジョン・コリア
これを読むと、この作者が天才であることがわかります。
自分も夢が出てくる話はたくさん書いてるんですが、
ただただこの発想に感服するだけです。

・「笑い男」J・D・サリンジャー
これを怖い話に含めると怒られるかもしれません。
短編集『ナイン・ストーリーズ』に含まれるサリンジャーの短編の代表作ですね。
コマンチ団団長のガールフレンドの人物像が、行動だけでとても印象的に描かれています。

・「くじ」シャーリー・ジャクスン
これはオカルト的な要素はないんですが、怖いです。
この作者の特徴である残酷性は、自分も参考にしたいと常々思ってるんですが、
自分はやっぱりここまで救いようのないことは書けないです。
あと、昔アメリカのハイウエイを車で旅したこともありますが、
次々に通り過ぎていく小さい町には、このような風習を残したところもあるんじゃないかと、
幻想がふくらみます。著作権が切れているようでネット上で読めます。

・「変身」フランツ・カフカ
えー古典的な名作で、ホラーではなく文学でしょうし、
短編というには少し長いかもしれません。
自分は中学生のときから、
J・G・バラードなどに代表されるニューウエーブSFというのを多読していて、
奇抜な設定には慣れているつもりだったんですが、
高校時代にこれを読んで衝撃を受けました。
現実には絶対ありえない話でありながら、
写実的な作品よりも鋭く現実を描き出すという手法に対してです。

・「開いた窓」サキ
サキは職人芸と言われることが多く、これもその典型なのだと思います。
ホラーのようでいて実際はホラー要素はまったくなく、嘘つき娘が話の中で躍動しています。
これなんかも、自分のナンセンス話の目標とするところです。
ネット上で読めます。

・「鍵」筒井康隆
敬愛する筒井康隆のホラーです。現実にこのようなことが起きるとは思えない内容で、
昔使っていた鍵が保存されていて、次々に見つかるなどということはありえないでしょう。
ですから、これは人間の持つ罪悪感をすくいあげた悪夢なのだと思います。
悪夢と現実の境目がわからなくなる・・・というより悪夢が現実を侵食してくる
というほうがいいのかもしれません。

・「世界の中心で愛を叫んだけもの」ハーラン・エリスン
カフカのところで書いたニューウエーブSFの代表作の一つでしょう。
暴力的な部分に目がいくかもしれませんが、
実に奥深くまで考えられ精密に組み立てられた話です。エリスン作品はみなそうですけど。
日本ではフィリップ・K・ディックの評価が高く、もちろん素晴らしいのですが、
この作者もけっして負けるものではないと思います。

・「棒」安部公房
これも一読、不思議な話ですが、不条理文学としては王道をいく設定だと思います。
ビルの屋上から落ちた男がいつの間にか棒になっていて、
人間ではないらしい教授と学生が、その棒について論評する。
その中で、棒になった男の人生がありありと見えてくるんですね。

・「失踪」W・デ・ラ・メア
Wikiにはこうあります。
『 恐怖の対象を直接描かず、言外の意味を以て読者の恐怖感を喚起する手法、
 いわゆる朦朧法を用いた怪奇・幻想作品は高く評価される。』

この朦朧法は自分の話の中でもよく用いられています。、
血まみれの生首なんかを出しても、怪談としては虚しい気がするんですよね。
何だかわからないけれど、とてつもなく怖ろしいものの一部分だけに触れている。
そんな気を読者に起こさせる手法です。

・「黒い本」シリーズ 緑川聖司
これは子供向けの本で、出てくる怪談もどこかで聞いたことがあるものが多いのですが、
書き方はたいへん参考にさせてもらっています。
自分のお薦めは「白い本」かな。



血のトマス

2014.06.16 (Mon)
昨夜の晩、寝る前のことです。妻からこんなことを聞かれました。
「ねえ『血のトマス』って話、知ってる?」
「何だいそれ、映画かなんかの題名?」
「うーん、たしかに映画っぽいけどね。でも違うみたい。
 私が職場で聞いたかぎりでは怖い話らしいよ。ほら『口裂け女』みたいな」
「ああ、都市伝説ってことか。で、どんな内容なの?」
「それが、私に教えてくれた人も題名しか知らないみたいなの。
 それであなたに聞いたのよ」
「いや、知らんな。まあ有名な話ならすぐわかるだろ。明日調べてみるよ」

私はフリーのライターをしていまして、ホラー雑誌なんかにルポを書いたり、
怖いマンガの原作なんかもやってるんです。
だから妻が聞いたんでしょうが、知らなかったのがちょっと癪にさわりました。
妻は大きなチェーンの美容院で働いてるので、
そういうとこまで広まってる話ならすぐにわかるだろう、とも思いましたけどね。
それで・・・その後すぐに寝て、夢を見たんです。
私は、ヨーロッパの街の広場にあるような高い塔にいたんです。
と言っても、せいぜいビルの3階くらいの高さですね。

下は街路で、石畳の道の両側にたくさんの人が集まってて、
何かを待ってるような雰囲気なんです。
で、私は必死になって塔の鐘を鳴らしてるんです。ロープを引いて鳴らす式のやつです。
とにかく無我夢中で息を切らして鳴らしてる。
・・・すると、下の群衆がワーッとざわめき、そしてすぐに静まりました。
街路の向こうから何か大きなものがやってきたんです。
馬3頭に曳かれた、カーニバルの山車のような巨大な馬車でした。
馬車の中央には奇妙な柱のようなものが立っていました。
逆Y字型と言えばいいんでしょうか。「人」の字にも見えるような木の柱が据えつけられ、
そこにボロをまとった人が一人、脚を広げて縛りつけられていたんです。

その人物はうつむいているため、顔がよく見えませんでした。
道の両脇を埋めた観衆の中を馬車はしずしずと進んできました。
そのとき、その前の道に身を投げ出したものがいました。女と小さな男の子でしたが、
それが遠目に、妻と私の息子のように見えたんです。
どちらも昔のヨーロッパ風の衣装を着ていました。
すぐに衛兵が出てきて、道にうずくまっている2人を槍先で厳しく排除しました。
2人は泣き喚きながら見物人の中に下がったんですが、
不意に、柱に縛りつけられている人が頭を上げました。
するとその人は、画家のアンソールの絵に出てくるような仮面をつけていたんです。

私は変わらず、塔で狂ったように鐘を鳴らしていたんですが、
その人物が顔を上げた瞬間、ふっと意識が飛んだような気がしたんです。
何と言ったらいいか、私自身がその仮面の人物で、
その目を通して前を見ているような感覚でした。
街路の石組みが一つ一つはっきりと見えたんです。
それから・・・言葉では言い表せないほどの絶望感がありました。
そこで目がさめたんです。心臓の鼓動がものすごく激しくなって、
横になっていてもドキドキするのがよくわかりました。
あたりはもう明るくなっていましたね。

病気になったのかと思ったほどですが、朝食時にはおさまっていました。
その場で、妻に『血のトマス』の話を出してみたんです。
そうしたら「何それ、知らない」って言うんです。
「だってお前のほうから、同僚から聞いたって、この話を出したじゃないか」
「そんなことない。今はじめて聞いた」
こんな感じで、どこまでも食い違うばかりでしたね。
夢のことといい、不可解に思いながら妻と小1の長男を送り出しました。
妻が小学校に車で送ってから出勤するんです。
私はライターですので、基本的に仕事は家のパソコンでやります。

さっそく『血のトマス』で検索してみたんですが、何もひっかかりません。
関連がありそうなのは、使徒トマスというキリスト教初期の聖人が出てくるくらいでした。
キリストが復活したとき、脇腹の傷に手を入れて確認した人物ですね。
・・・それで、まさかとは思ったんですが、「血のトマス・塔・鐘・仮面」で調べました。
まあ私の夢の話ですからね、何か収穫があるとは思わなかったんですが、
1件だけ個人のホームページと思われるのがヒットしたんです。
内容は何やら難しい聖書の話で、専門外の私にはよくわからなかったんですが、
よく読んでみると聖書の文献批判のようなものでした。
聖書のこの部分はずっと後代に書かれた内容だ、みたいな。
そのホームページの過去記事の一つに、『塔のトマス』というのがあり、さっそく見てみたんです。

真っ白いページの中央に赤い字で、
「次なるトマスよ、血まみれのトマス、汝に神の祝福のあらんことを」と書かれているだけでした。
頭の中が「???」になったとき、携帯電話が鳴りました。出てみると女性の声で、
「あなたが新しいトマスですね。おめでとうございます。身辺の整理を済ませておいてください。
 今日真夜中にお迎えにあがります」こう言って切れてしまいました。
その声が、どうもねえ・・・妻の声に似ていたような気がするんですが、確信はありません。
相手の発信元は「通知不可能」となっていました。まさか国際電話とかなんでしょうか。
・・・今日真夜中というのは今晩のことだと思います。
それで気になって・・・ここはオカルトに詳しい方の集まりだと聞いてたんで話をしにきたんです。
どなたか何かお分かりになる方、おられますか?

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『ジェームズ・アンソールの仮面』






こをとろ2

2014.06.14 (Sat)
小学校4年生のときの話です。
その年の初めにクラス替えがあって、はじめは出席番号順に並んでいたんです。
私の姓は山本ですので女子の後ろから2番目で、女子の人数のほうが多かったので、
番号が最後の人と机を並べることになりました。
その子は「律」というこれまで一度も見たことのない名字で、
前年に合併になった山のほうの小規模校から来たんです。

だからクラスにあまり友達がいないみたいで、すぐに仲よくなれたんです。
その子は話す話題も普通でしたし、特別変わったところもなかったんですが、
いつも首からひもで、お守り袋のようなものを下げていました。
じゃまになるので普段は服の中に入れていましたが、
体育で着替えるときなどに目立つので、「それなに」と聞いてみました。

べつだん隠すようなものではなかったようで、
「集落に伝わってるお守り」と答えてくれました。
それ以上の詳しいことは彼女も知らないようでした。
さわらせてもらったら、細い木の枝が何本か入っているような感触でした。
・・・私たちの学校は町の中心部にあり、校庭はせまいのですが、
グランドのわきに中規模の児童公園があって彼女は放課後、よくそこで遊んでいました。

これは道草をくっているのではなく、彼女たちの集落の子は遠いので、
町のバスで送り迎えをされていたんです。
例えば4年生が5時間で、6年生が6時間というときなど、
その児童公園の遊具で年下の子らと時間をつぶして、バスがくるのを待っているのです。
雨の日などは、学校の図書室で時間を過ごしていたようです。

6月の風の強い日のことでした。その年から始まった児童会で私は飼育委員会に入り、
金魚の水替え当番で少し遅くなってしまいました。
帰り際にその公園の横を通ると、律さんやそれより下の子たちが遊んでいるのが見えました。
そういうことはこれまでにもあり、そのときは手を振って通り過ぎただけでしたが、
その日は見たことのない遊びをしていたので興味をひかれました。
手つなぎ鬼のような感じですが少し違っていました。

一人の子が両手を広げ、
その後ろに他の子たちが一列になり前の子の服をつかんで並んでいました。
その先頭の子の前に一人だけ子どもがいて、これがどうやら鬼のようでした。
鬼の子が大声で「子をとろ、子をとろ」と叫び、
手を広げた列の先頭の子が律さんで、「子どもは渡さん」と
やはり大声で叫んでいました。これまで一度も見たことがない遊びでした。

本当はいけないのですが、とても面白そうに見えたのでそっちに駆けていきました。
律さんと数人の4年生が一番学年が上のようだったので、混ぜてもらえると思ったんです。
私が走ってくるのを見て、律さんは「ちょっとタイム」と言って遊びをやめました。
「この遊びなに」と聞くと、「子とろ鬼っていうんだって」と律さん。
「前から知ってたの?」

「ううん、この間そこのベンチにいた知らないおばさんに教えてもらった。
 一人が鬼になって、列の最後の子どもにタッチしてとろうとするのを、
 先頭の親が手を広げて守るの。
 あと手を離して列から外れてしまった子も鬼はタッチしてもいい」
こう説明を聞いていたとき「バザッ」という大きな音が聞こえました。
音のしたほうを見ると、繁みの前にあるゴミ箱の袋・・・当時はまだ黒いゴミ袋でしたが、
それが外れかけていて、風に叩かれて鳴った音でした。

少しだけ遊んでいこうと思い、仲間に入れてくれるよう頼みました。
そして私が鬼になったんです。
少し恥ずかしかったけれど、大きな声で「子をとろ」と叫びながら
列の横に回りこもうとしましたが、これがなかなか難しかったんです。
親がジャマするのはいいとしても、
後ろの子どもたちが慣れていてうまく向きを変えるんです。
思わず夢中になってしまいました。

・・・大粒の雨が顔にあたりました。
まわりが急に暗くなり、砂ぼこりが舞い上がってきました。
どっと一気に雨が落ちてきて土砂降りになりました。
遠くのほうの空が不気味な褐色になり、
長い柱のようなものが、低い空にたれ込めた雲にまでのびていました。
「学校に入ろう!」だれかがそう叫び、
子どもたちの列はばらけ、みなちりじりになって走り出しました。

私も10秒ほどでずぶ濡れになり、校門めざして駆けだしましたが、
後ろでひときわ大きく「ザババッ」という音が聞こえ、思わず振り返りました。
ゴミ箱の後ろの繁みから、大きなものが飛び立ったように見えました。
「えっ」と思う間もなく。「バサッ、バサッ」という羽搏きが聞こえてきたんです。
それは私を追い越し、数m前を走っていた律さんの背中に飛び乗って押し倒しました。

大きな、6年生の身長よりも大きく見えるこげ茶色の鳥でした。
鳥は律さんに覆いかぶさりながら羽搏き、
足を止めた私にまで水しぶきがかかってきました。
うつ伏せに倒れていた律さんは激しくもがき、仰向けになりました。
そのとき鳥が頭を横にねじりました。
・・・人間の横顔だと思いました。ぼさぼさの髪の青ざめた大人の女の顔。

その鳥・・・女は律さんの胸に顔に口先をうずめましたが、
「グエエッ」と大きな声を上げ、律さんの体を離すと前方高くに飛び上がりました。
私は勇気を出して走り、律さんの腕を抱えて引き起こしました。
そのまま背中に手を回して学校まで駆けに駆けたんです。後ろは振り返りませんでした。
他の子らと、ずぶ濡れになって昇降口に立っていると、
職員室から先生方が出てきて、
「竜巻が近づいていると地域の方から連絡があった」と言いました。

私たちはタオルをもらい、外に面した窓のない廊下に誘導されました。
律さんの頬にはいく筋も傷があり、雨水と混じった血が流れていました。
「・・・さっきの鳥」律さんがぽつりと言いました。「子とろ鬼を教えてくれた人と同じ顔だった」
律さんは胸の前でお守りを握りしめていましたが、私が「行こう」と腕をとったとき、
片手が離れて、お守りから固いものがパラパラと床にこぼれ落ちました。
それは鉤爪のある、何本もの鳥の足でした・・・

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語り文について

2014.06.13 (Fri)
 自分の書いている話は大きく分けて怖い話(黒民話含む)と、
ナンセンス話に分かれているんですが、
そのどちらも1人称による独白体で書かれています。
今回はちょっとその話をしてみたいと思います。

 プロの先生方が書かれる実話怪談というのは、
取材した内容を、テープやメモを参照しながらリライトするという形がほとんどですよね。
つまり、取材対象があれこれしゃべったことの時系列や内容を整理して書いているわけです。
だからその時点で作者の文体として統一することができます。
また、話につじつまが合わないと感じる箇所があったり、
もっと詳しく知りたい部分があれば、
質問をして聞き出したというように書くことができますよね。

 ところが自分が書いている形式は、
実際に怪異を体験した人が、それを語る場にきて話した内容ということになっています。
怪異の体験者は、老人も若者も、男も女も、固い職業の人もチンピラもいるわけです。
ですから、それぞれに合わせて敬体にしたり常体にしたり、
文末を「~っスね」に統一したり、女言葉を用いたりしなくてはなりません。
これはなかなか難しいんですが、
 一方で話の雰囲気にバリエーションが出るということでもあります。
また書くほうの自分としても、気分転換になって飽きがこないという点もあるんです。
ただやはり、語り手を主婦や女子高生などにすると書くのに時間がかかってしまいます。
話を読んだ方の中には「こんな言い方フツーしない」
と思われてる方もいるだろうと考えると、冷や汗ものでもあります。

 それから、普通 語りというのは、途中で時系列が混乱したり、大事なことを言い忘れたり、
同じことを繰り返したりしながら進んでいくものです。
矛盾点やよくわからない部分を途中で聞き手に質問され、
それに答えて内容を修正しながら話すというのが実際だと思います。
ところが自分の話では、語りでありながら、
何が起きたかをきっちり説明しきらなくてはなりません。
そうでないと読まれる方が混乱してしまいます。

 ですから、一人称の独白体といっても、実際の語りとは様々な点で異なっているわけです。
それと「」の会話の部分なんてのも、語りにはあまり出てこないと思います。
他人の話した内容をそんなに詳しく覚えてるなんてこともないでしょう。
しかし、「」を入れず地の文だけで進めていくと内容が地味になる気がして、
多用はしませんが、実際の語りとは違うよなあ、と思いながら使ってはいます。

 あと、これはくり返し書いてるんですが、
情景描写と心情(心理)描写はできるだけ省いています。
一般に怖い話というのは、
雰囲気を書き込むことによって恐怖感が高まっていく面があると思うのですが、
語りの言葉として、
「暗い海が泡立つようにさざめき、そこに赤い夕陽が切れ切れの影を落としていました」
なんてことを言うわけがないです。(これは今考えた極端な例ですが)
 また、自分の感情を述べる場合も、
せいぜい「とても驚いた、やりきれない気持ちになった」くらいで、
心の中を絞りつくすように話すなんてこともあまりないと思います。
ですから、できるだけそのようなのを入れないで話を組み立てていくわけです。

 自分はわりと様々なタイプの本を読んでいて、
その中にある優れた描写や表現を学ばせていただいているつもりなんですが、
そういうのがほとんどこの形式では生かされないのは、少し残念に思っています。
3人称のホラー小説とかで書けばこの悩みは解決されるんでしょうが、そうする時間がない。
いつか技巧を凝らした本格的なホラーを書いてみたい、
と思いながら、いつまでもできないんですねw

『描く手』マウリッツ・エッシャー





木妊

2014.06.12 (Thu)
今月のことですが、山菜採りに行きました。ヤマウドやフキなんかが目あてです。
けっして高い山じゃなく、標高にしたら100mもないところですが、
けっこう奥まで入ります。ああ、山主にはもちろん許可を得てありますよ。
・・・ここいらでは毎年この時期と、
秋のキノコ採りのシーズンは山での行方不明者が多いんです。
大々的な捜索をしても、半数以上は亡くなってしまいますね。
だから私も、食料や熊よけ、その他の装備は厳重にして出かけるようにしています。

その日も朝早くから山に入って、山菜採りをしていました。
毎年、同じ場所に入るので道がわからなくなるということはないつもりです。
山の中には目印になる木や岩もありますしね。
昼近くになって、ザックがいっぱいになったのでもう下りようと思いましたが、
ふと、近くにあるクスノキに挨拶していこうという気になりました。
それはここから数十mほど上ったところにある、
大人ふた抱え以上もある大木なんです。

上っていくと草に踏み跡があるような気がしました。
10分ほどでクスノキが見えてきましたが、何か様子が変でした。
近くまでいってあっと驚きました。
道に向いたほうの木の皮が横1m、縦2mばかりに大きく剥がされていたんです。
動物の仕業ではないことは一目でわかりましたよ。
剥がした跡が直線になっていましたし、
何より剥がしたところに彫刻が施されてあったからです。
等身大の裸の女性像が、木からか体を手前に斜めに突き出すようにして彫られていました。

生木ですから、ここまで彫るのはかなりの時間がかかるはずです。
おそらく1日では不可能でしょう。
しかも彫り跡は新しく、あたりに木の香が立ちこめていたんです。
近くに寄ってみると全体は荒々しい感じで、ナタなどで彫ったようですが、
顔とお腹の部分だけはひじょうに丁寧に、
表面がつるつるになるまで仕上げられていたんです。
女性像はお腹の部分が丸く大きく張り出していて、妊婦なのだと思いました。
脚の太もものあたりまで彫って、その下は木肌に溶けこむように消えていましたね。

それから女性像の顔なんですが、見覚えがある気がしました。
近くの市にある総合病院の消化器科の女医さんによく似ていると思ったんです。
私は胃弱の持病があり、昨年も一ヶ月おきくらいに市の病院を訪れ、
その女医さんの診察を受けていたんです。
ふせた顔を覗き込むようにしてしげしげと観察しましたが、
やはりその人としか考えられない。それくらいよく特徴がとらえられていました。
ただ、その女医さんは30代前半くらいでしたけど、
妊娠しているという話は聞いたことはありませんでした。そもそも独身だったと思います。

・・・さて、どうしようか思案しました。
携帯のきく範囲ですので、警察に連絡しようかとも思ったんですが、
考えてみれば大犯罪というわけではないし、警察がくれば大事になってしまうでしょう。
そこで山主と、近くにある森林管理署に一報だけしようと考えたんです。
そうすれば、警察を呼ぶかどうかはその人たちが決めるだろうと。
幸い連絡先は携帯に入っていましたので、下りる道すがらかけてみました。
山主はあいにく不在でしたが、管理署には連絡がつき、
すぐに署員がそちらに向かうから、待っていて道案内をしてほしいと言われました。

ああ、やっぱり時間がつぶされてしまうか、あの木を見に行かなきゃよかったと思いました。
下の道沿いの倒木に腰かけて待っていましたら、
署員の方と、顔を知っている作業員1人が車でやってきました。
「ご苦労さまです。国有林でもないのにすみませんね」
「いやこちらこそ、通報感謝します」
こういうやりとりをして、また木のあるところに戻ったんですが、
遠目でもさっきと様子が違っていることがわかりました・・・
よく見えるところまできて、さきほどよりいっそう驚きました。

女性像の腹のところに、生後まもない仔猿が張りつけられていたんです。
四肢を伸ばした先が、すべて太い釘で木に打ち込まれていました。
仔猿は頸が折れているように見えましたが、それ以外の外傷は見あたりませんでした。
それと奇妙なことに、先ほど見た見事に丸く突き出た腹部が、平らに削られていたんです。
それだけではなく、女性の顔の部分も人相がわからなくなるところまでそがれていました。
・・・奇妙といえば、もちろん全部が奇妙な出来事なんですが、
それにしても、先ほど最初に木を見てから、
ふたたびここに来るまで1時間半くらいしかたっていません。
このように腹や顔を削って猿の子を張りつけることなんてできるものなんでしょうか。
しかも下の地面には削りカス一つ落ちていなかったんです。

それともう一つ、自分は道なりに下りていきましたし、その道の入口で待っていました。
もちろん山ですので、藪こぎをすればどこからでも入ってこれるし、
下りることもできるわけですが・・・それはたいへんな難儀です。
見つかるかもしれない危険を犯して、
そこまでするのはどんな意味があるんだろうかと思いました。
管理署の方も作業員も、木の様子を見て驚き呆れていましたが、
山主と相談して今後の方針を決めると言っていましたね。まあこれだけの話です。
ああ、市の病院の女医さんですか・・・気になりますでしょう、それは。

私ももちろん気になっていまして、
これまでのところ、亡くなったとかその他の悪い噂は聞こえてきてないんです。
で、来週に確かめに病院に行ってこようと思って、今日予約を入れたんです。
その病院で今も勤務されているのは間違いないようでしたよ。
何かわかりましたら、またこの場でご報告したいと思います。



2014.06.11 (Wed)
去年の7月のことです。
私の住んでいる地域では、第三週の土日に庚申さんのお祭りがあり、
たくさんの夜店が商店街に並びますし、山車も出ます。
銀行の駐車場ではよさこいを踊る人たちもいるんです。
私の家は昔、雑貨屋をやっていましたが、私が物心つく前にやめてしまっています。
それがこの2日間だけは、もと店だった場所のシャッターを開け、
家の前の通りを歩く人めあてにジュースやかき氷を売るんです。

お祭りは中学生の私にはとても楽しみな行事でした。
その日の5時過ぎに、2人の友だちが浴衣を着て家まで迎えにきてくれました。
夕飯は、これからチョコバナナやヤキソバを飼い食いするので食べていませんでした。
ふだんはそういうのに厳しかった両親も、この日だけは何もいいませんでしたから。
貯めていたお小遣いを入れた財布を持ち、出かけようとしました。
店とは別になっている玄関を出ようとしたとき、
せまい階段がギシギシと鳴り、トレーナーの上下を着た太った人が降りてきました。

・・・私の姉です。姉は4歳年上で、本来なら高校生の年代なのですが、
3年前から自室に引きこもっているため、受験すらしませんでした。
伸び放題の髪の姉は手に大判の本を持って顔をかくしていましたが、
太っているため本からあごや頬の肉がはみ出していました。
・・・引きこもりになる前の姉は、私よりずっときれいだったんですが・・・
こんなことを考えてはいけないんでしょうが、
友だちに対してtとても恥ずかしい気持ちになりました。
と同時に、何で下りてきたんだろうとも思いました。
私の友だちが家にきたときなど、これまでぜったいに部屋を出ることはなかったんです。

「あんた、お祭りに行くの?」姉はしわがれた声で聞いてきました。
「うん。でも学校の規則があるから9時までに帰ってくるよ」
「・・・そう。下社に行ったら面に気をつけて。踏ませようとしてくるけど、踏んじゃだめ」
姉はこれだけ言うと、大儀そうに太った体を引きずって部屋に戻っていきました。
友だち2人は顔を見合わせていましたが、私に遠慮してか何も言いませんでした。
私は姉の言葉を考えてみたものの、さっぱり意味がわかりませんでした。
両親に声をかけて外に出ると、
楽しみが先に立って、そのときのことはすぐに頭から消えてしまいました。

しきたりでは、庚申さんにお参りするにはまず上社に行くことになっていました。
それを終えてから下社に行くんです。
どちらか一方だけに参るのはよくないこととされていました。
家から上社まで歩いて15分くらいなんですが、
道にはピカピカ光るおもちゃや風船を持った子どもずれの家族がぞろぞろ歩いていました。
友だちと話をしながら本通りに出ると、前に進むのもたいへんなくらいの人出でした。
道の両脇ずっとに夜店が並んでいました。

庚申さんは正式には猿田彦神社といって、
鼻の長い天狗のような神様をお祀りしているんですが、
猿のお面が有名で、お祭りでないときにも境内で売られています。
だから夜店でも、たぶん他のとこのお祭りよりお面を売る店が多いんです。
その夜店を見て、さっき姉が言ったことをちらっと思い出しました。
上社に着いてお参りをしました。混んでいるかと思いましたが、思ったほどではありませんでした。
上社は下社に比べて境内が広く社殿も立派でしたし、地元の人は昼のうちに早くここにお参りし、
夜は下社にいくだけということが多いせいもあったと思います。

学校の同級生や、部活の先輩たちとも道々顔を合わせ、手をふったり挨拶したりしました。
見回りをしている先生とPTAの人のクループも見かけました。
楽しみにしていたチョコバナナを買い、食べながら歩きました。ヨーヨー釣りなんかもしました。
下社までは普通に歩けば10分もかからないんですが、
道草を食いながら歩いてたのと、押すな押すなの人出で1時間近くかかってしまいました。
やっと下社の小ぶりの鳥居が見えてきました。
人が参道の幅に長い列を作っているのが見えました。
警察官や、半纏を着た地元のボランティアの人たちがたくさん出て、列の整理をしてました。

友だちと3人で並びましたが、なかなか前に進みません。
待っている間「下社で面を踏まないように」と言った姉の言葉が頭によみがえってきました。
下は玉砂利の参道で、お面が落ちているということもありません。
たくさんの人の足元が見えるだけでしたが、それでもなるべく下を見ながら歩きました。
10分ほどかかってなんとか社殿の前まできました。
離れたところから人の頭ごしにお賽銭を投げ、鈴を鳴らすために木の段を登り始めました。
混んでいるので、前の列の人が一段上にいったら自分も上るという感じでしたが、
足をおろそうとしたときに、ふうっと階段の上に顔が浮き出てきました。

お面ではなく人の顔でした。まだ引きこもりになる前の姉の顔だったと思います。
とっさに下ろしかけた足をそらし、すぐ顔の横を踏みました。
顔は・・・少し悔しそうな表情をしたように見えましたが、そのままにじむように消えていきました。
・・・出がけに姉にああ言われいなかったら、注意することもなく踏んでしまっていたでしょう。
胸がドキドキしましたが、友だちには言いませんでした。
お参りしたあとはいろいろな遊びをし、
お祭はまだまだ盛り上がっていましたが、8時50分頃には友だちと別れて家に帰りました。
このあたりの時間から先生方の見回りがとても厳しくなるんです。

戻ってくると、家の前で両親がまだ臨時の店をやっていましたが、
氷水に入れたジュース缶はなり減っていました。「だいぶ売れたんだな、よかった」
と思いながら家に入ると、階段の降り口に姉が座って待っていました。
やっぱり本で自分の顔を隠しています。
たくさんの発疹が出ていて、いくら病院にいっても治らないんです。
姉は「お面出てきたか?踏まなかったか?」と聞いてきたので、
「出てきた、でも踏まなかったよ」とだけ答え、姉の昔の顔をしていたことは言いませんでした。
「そうか、よかったな。あれを踏むと私みたいな顔になるから」
こう言って、姉ははうようにして階段を上っていったんです。・・・これで終わりです。



シラブル園

2014.06.10 (Tue)
礼拝堂のパイプオルガン

すみません3人も押しかけてきてしまって。
私たち3人が少年時代を過ごした「シラブル園」の話を聞いてもらおうと思いまして。
私は山本と言います。

シラブル園というのは、もうなくなってしまいましたが児童養護施設だったんです。
母体はアメリカのキリスト教団体でした。昭和40年代の話ですね。
そのころはもう孤児院という言葉は使われなくなっていまして、
また、実際に生活しているのも孤児だけではなかったんです。
例えば父だけの片親で、その父親がアルコール中毒で子供を育てられないというような場合。
・・・これが私でした。
それから母親しかおらず、その母親が入院中などの場合もありました。
だから家族の病気がよくなって、比較的短期間に親元に引きとられていった子もいますし、
そのまま孤児になってしまった子もいました。

活動資金はさまざまだったと思います。まずアメリカ本国からの施設への送金、
これは向こうでの慈善活動によるものがほとんどだったと思います。
それから日本での義援金、国からの補助、
親がいる場合はわずかな養育費が送られてくることもあったようでした。
それとおそらく一番大きかったのは、シラブル園を運営する修道会が経営に関っている病院、
この収益金の一部がこの施設で使われていたのです。
シラブル園で生活するのは幼児から中学生までですが、まれに高校生もいました。
高校生はバイトをして、ある程度のお金を入れていたんだと思います。
人数はつねに変動していましたが、だいたい40人くらいだったはずです。

男女で別々の棟にわかれて住んでいました。女子のほうが少なかったでした。
これは世話をする修道女の方の人数が少なかったせいだと思います。
一部屋に3段ベッドが2つあり、6人での生活です。
小さい子は一つの部屋に集められていました。
集団生活ですから不自由なものでしたが、修道士さんたちはみな気さくで冗談好きな人たちでした。
作家の井上ひさしさんが、「天使園」という施設で育った体験を小説に書いておられますが、
あのような感じで、郊外にある園の施設には畑地が付属していて、
そこで交代で野菜を作られていました。
修道士さんたちは、アメリカ人らしく細々したことにはあまりこだわりませんでしたが、
規則を破れば罰もありました。寝坊をすれば朝食抜きとか、
ケンカをしたりすれば礼拝堂で懺悔するなどですね。
私たちはここから、近くにある小学校、中学校に集団で通っていたんです。

説明が長くなってしまいました・・・こんな施設でしたから、怖い話もいくつかありました。
私が体験したのはこんなことです。
シラブル園の本体は元軍用工場を利用した教会で、その両翼に男女別の建物があったんですが、
教会で日曜日に行われるミサには、私たちは学校の都合がつくかぎり参加させられていました。
といっても2時間程度のものです。教団の関係者や一般の信者の方も十数人は来られてましたね。
並んで讃美歌を歌う園の子たちもいましたが、
それは好きでやってるので強制ではありませんでした。
その礼拝堂に、小さいながらも自慢のパイプオルガンがあったんです。
練習用のものだったんでしょうが、壁とくっついて作りつけになっていたんです。
このパイプオルガンから、夜になると人の声が聞こえる・・・という噂があったんです。
まあこれだけだと、学校の音楽室でとか、どこにでもあるような話なんですけれど。

私が中学校2年のときです。けして境遇のせいにするわけではなく、私が悪いんですが、
学校で悪い仲間とつき合いまして、
ときどき部屋の窓から抜け出して、その仲間のたまり場にいくことがあったんです。
その日はかなり遅くなって、おそらく帰ってきたのは10時過ぎだったと思います。
シラブル園の施設は夜が早いんです。消灯は9時半。
修道士さんたちもみな早寝早起きでしたから、
この時間にはまず建物の明かりはついてないんですが、
その夜は教会の明かりがついていました。
それだけじゃなく、何やら音楽のようなのがかすかに聞こえたんです。
気になったので暗い建物の横の草地に入って、
ひび割れをテープで補修した窓の、ブラインドのすき間からそっとのぞいてみました。
ステンドグラスなんかではなく、サッシでもない木枠のガラス窓でした。

中ではロウソクが数十本、多重の円形に床に並べられ、その明かりに照らされ、
一人の人だけが正面のキリスト像の横のパイプオルガンを弾いていました。
その人は白く三角にとがった頭巾をかぶっていましたが、
当時の園長先生かもしれないと思いました。
なぜかというと、園長先生は身長190cmを超える大柄な人でして、
そのオルガンを弾いている人も同じような体格だったからです。
でも他の修道士さんや、ときおり訪ねてくる教団関係の人は総じて大柄でしたので、
違うかもしれませんが。
それから、不思議なことにパイプオルガンからは、いつもの汽笛のような響きはせずに、
人の声が・・・何人もの子どもの合唱する声が聞こえてきていたんです。
讃美歌とはまた違った暗い旋律で、日本語でした。

歌詞もかなりの部分を覚えています・・・印象的でしたし、同じことを繰り返していましたから。
こんな内容でした。
「地下の硫黄の恵みの中で、僕たち(私たちは)生まれ、今またそこに帰ります。
 私たちは、愛も、慈悲も、家族も、何もほしくはありません。
 ただ暗黒の元に帰りたい、ただそれだけです。私を選んでください。すべてを捧げます。
 赤い火と硫黄の国へ、赤い火と硫黄の国へ、いざ帰らん、今は帰らん」
細部は違っているでしょうが、だいたいこういう歌詞だったと思います。
この歌声が伴奏もなしに、パイプオルガンから流れてくるんです。
・・・うーん、テープなのかもしれませんが、ラジカセなんて園にはなかったと思います。
修道士さんたちはみな機械というものをとても嫌っていて、テレビさえなかったんです。
あったのは車と小型の農作業用のトラクターや、丸ノコくらいでした。
それで、この歌を聞いていると、体が冷たくなってきたんです。

いえ、そのときの季節は6月で、暑いくらいでした。
それなのに体が芯から冷えて、腕には一面鳥肌が立ったほどです。
もう部屋にもどろうかと思いましたが、そのときにぴたりと歌声がやみました。
ほっと気がゆるんだ途端、「イアアアーッ」という叫び声が響きました。
これもオルガンから聞こえたと思います。でなければオルガンのある床下のほうから。
今でも耳に残っていますよ。
体がガクガク震えたんですが、中の光景から目を離すことができませんでした。
頭巾をかぶった人が椅子から立ち上がり、何かを低い声で唱えたんです。
・・・英語でしたから意味はわかりませんでしたが、
確かに「オルガンズ」という言葉が入っていたと記憶しています。
ほぼ同時に、床に並べられたロウソクの真ん中の木の床の一部が持ち上がりました。

中から、階段を上るような足の動きで人が出てきました。
その人も大柄で、やはり三角頭巾をかぶっていました。
両手を前に出し、真っ赤な毛布でくるまれたかなり重そうなものを捧げ持っていました。
オルガンを引いていた人はその人のほうに向かってうなずき、
毛布のはじを少しめくって中をのぞき込みました。
そのとき毛布の重なった下から黒いものがチラと見えました。
人の髪の毛だと思いました。
「ああ、自分は今、見てはいけないものを見たんだ」とわかりました。
一瞬でそう悟ったんです。ムリヤリ窓から硬直した体を引きはがし、
そっとそおっと足音を消して生活棟のほうに戻りました。

暗い部屋の窓を開けてそっと自分のベッドにもぐり込みました。
他の5人がそろって寝ているようでした。誰も起きている子はいなかったと思います。
蒸し暑い中で頭からタオルケットをひっかぶりました。
体の震えが止まらず、それだけじゃなくて、とめどもなく涙が流れたんですが、
いつしか眠ってしまいました。
・・・私のはこんな話です。



怪片 3題②

2014.06.08 (Sun)
ポリバケツ

自分はライターをしていて、原稿書きはほとんど自宅のパソコンでやってんですが、
同じライター仲間やフリーの編集者と共同で事務所を借りてて、そこで書くときもあります。
で、こないだ資料を取りに夜の7時過ぎくらいに事務所に寄ったんです。
もう電話番のバイトの女の子は帰ってたから自分で鍵開けて入って、
そこで2時間ばかり仕事をして出たのが9時過ぎ。
地下鉄の駅へ向かおうとしたら、となりの雑居ビルとの間のすき間に、
小学校高学年くらいの男の子が入っていったんです。

この時間に小学生を見るのは珍しいことでもなくて、
近くに10時頃までやってる学習塾があるんです。そこの子だろうと思いました。
でもこのすき間に入ってくのは変です。
なぜなら幅はそれなりにあるものの道ではなく、すぐに行き止まりになってるんです。
気になってのぞき込んでみたら、男の子はこちらに背を向け、
容量200Lのでかいゴミ箱のふたを開けようとしていました。
よくある水色の丸いやつです。

不審に思い「どうしたの?」と声をかけてみました。
すると男の子はこっちをふり向き、はっきりした声で「近道!」と言い、
人差し指を口にあててシーッのポーズをしてみせたんです。
それから蓋を半分ほどずらしてバックをほうり込むと、
自分も頭からズルッと入っていってしまいました。
で、中から手が出てきて蓋が閉じられたんです。
「!」ふざけてるんだろうかと思い近寄ってみました。
いちおう「おーい、開けるよ」と声をかけてから蓋を持ち上げると、
中は底に低く新聞紙の束があるだけで、あとは空っぽでした。



小学校の頃の話です。夏場のことでしたね。弟と庭で花火を見てたんですよ。
当時の家は河川敷に近くて、そこで打ち上げられる花火が見えたんです。
その途中で、家の中から母が、
「サイダーと枝豆ここに置くよ」と呼んだのでとりにいきました。
2人で縁側に腰かけて、足をブラブラさせながら枝豆を食べていると、
「あ、蚊がきた」と弟が言って、手のひらをパチンと打ち合わせました。
するとバチャッと生暖かいものが飛び散り、弟も私も上半身がかなり濡れました。

でも水ではありません。うす暗い中でも真っ赤なのがわかりました
それに生臭いにおいがしました。
「うわ、これなに?」「えー血じゃね!!!」騒ぎを聞きつけた母が見に来ましたが、
私たちの姿を見て大きな悲鳴をあげました。
それは、2人とも頭から真っ赤になってましたからね。
・・・バスタオルで拭かれ、水で洗われましたが、
2人とも、どこにも傷一つなかったんです。

父や祖母も出てきて不審そうな顔をしていろいろ聞いてきました。
縁側の軒の上で動物でも死んでるんじゃないかと調べたりもしましたが、何もなし。
結局、どちらかが鼻血でも出したんじゃないかという話になり、
明日までに具合が悪かったりしたら医者にいくということで決着しました。
その後2人で風呂に入ってから着替えていると、弟が、
「兄ちゃん、これ髪の毛の中に引っかかってた・・・」と言って、
マッチ棒ほどのものをつまんで見せました。よれよれでしたがちゃんと5本指のある、
人間そっくりの小さなちぎれた腕だったんです。

ペットボトル

アパートからアパートに引っ越したんですが、初日から夜中にうなされました。
午前2時ころに目が覚めて、なんとなく気になってベランダのほうを見ると、
カーテンの下のすき間に、
白っぽい顔がガラスの向こうからへばりついてるのが目に入ったんです。
「うわ、霊だ!」と思って、朝まで布団をひっかぶってました。
朝になってベランダを確かめると、人のいた気配はなし。
翌日大学で友人にこのことを話したら「霊感のある人を知ってる」と言って、
2年上の理学部の髭だらけの先輩を紹介されました。

偉ぶらない気さくな人で、その日の午後にアパートを見にきてくれたんですが、
ベランダに入るなり「ははあ、これはいるね」と言い、
バイクのバッグから、1Lのペットボトルを2本持ってきました。
どちらにも透明な液体が、半分くらいまで入っていました。
「ま、これをセットしとけばいいじゃろ」先輩はそう言って、
ベランダの窓に近いところに2本を15cmくらい離して並べて置いたんです。
「あれ、中身は何ですか?」と聞きましたが、「まあ明日」と言われました。

その夜は友人のところに先輩も一緒に泊まり、酒は飲みましたが、
早朝、みなでアパートにいってみました。
ベランダに出ると、向かって右のペットボトルの液体が糊のようにどろどろになっていました。
「フーン、話を聞いて男かと思ったら女の霊だったんだな」
「どうしてわかるんですか?」
「こっちは水酸化ナトリウムを霊的に特殊加工したもん。女の霊はこっちに入る」
「もう一方は?」
「クエン酸」先輩はそう言ってボトルをふりました。

「これ、どうするんです?」「浄霊する」
「どうやってですか?」「簡単、簡単。中和するだけ」
先輩はクエン酸のほうの中身を霊の入った水酸化ナトリウムのほうに注ぎ入れました。
予想に反して大きな変化はなく、どろどろが溶け出し少し熱が出たようでした。
「これで終わり、楽なもんだろ」先輩はそう言うと、
中身たっぷりになった片方のペットボトルをトイレに持っていき、
ジャーと流してしまいました。



天網?

2014.06.07 (Sat)
1か月前、5月の連休のことです。
仕事が忙しくて家族サービスは2日しかできなかったんですが、
そのうちの1日は車で2時間ばかり離れた市にある山に行ったんです。
木を植える神様の話で有名な山といえばおわかりになる人もいるかもしれません。
自分と妻と、5歳の娘とです。
登山というほどのもんじゃありません。なにしろ小学校前の娘を連れてですから。
石の階段を2合目ほどまで登って、そっからはロープウエーで頂上まで行くんです。

山頂広場でご飯を食べて、それから近くの動物園に寄って帰ってくる予定でした。
天気がよく暑かったんですが、
そのせいか階段を登っていく途中で娘がヘロヘロになってしまい、
途中から負ぶったので、自分もかなり疲れてしまったんです。
2合目広場に着くと、娘を空いていたベンチに座らせ、休ませました。
ジュースを飲ませて、しばらくすると元気が出てきたようでしたので、
家族で写真を撮ってからロープウエーに向かうことにしました。

3mほどの金属のモニュメントが崖の手すりの近くに立ってるところがあり、
その前でデジカメで写真を撮りました。
妻と娘、娘だけ、それから3人で写りたいと思って、
だれかシャッターを押してくれる人を探したら、
修行僧のような編笠を被った人が近くに歩いてきましたんで、
お坊さんにどうかなとも思いましたが頼んでみたんです。
快く引き受けていただいたので、
カメラを渡して3人でモニュメントの前に並びました。

60代くらいのお坊さんは、
笠をあげてカメラを構え「はい、いきますよ」と撮ってくださったんです。
・・・妻と自分とに両脇から手をつながれた娘という形だったんですが、
かすかにシャッター音が聞こえたとき、娘と手を握っている感覚がなくなりました。
「えっ」と思って横を見ると、娘の姿がありません。
妻も不思議そうな顔で自分と同じところを見ていました。
「おーい、○○」と名前を呼びましたが、いなくなるわけがないんです。
でも現実にいないですし、
自分らは前を見ていたのでそっちに行ったということはありえません。

モニュメントの後ろに回ってみても誰もいません。スペースもほとんどなかったです。
まさかと思いましたが、そっから手すりを越えて崖下に落ちた?とも考え、
のぞき込んでみました。ただ白い岩が数十m下まで続いているだけでしたよ。
呆然として出てきたら、妻がお坊さんと顔を寄せてデジカメのモニターを見ていました。
自分もかけ寄ってのぞき込むと、
親子3人が手をつないで並んでる姿がはっきり写ってました。
お坊さんはしげしげとモニターを見つめていましたが、
「うん、なんとかなるかもです」こう言いました。

「お父さん、お母さんは、あそこの休屋に事情を話して、このあたりを探してください。
 私はちょっとロープウエーに乗ってきます。
 1時間近くかかるでしょうが待っててくださいよ」
坊さんはそう続けて、ロープウエー駅のほうに向かってしまったんです。
・・・いや内心「何だよ」と思たんですが、休屋に入って事情を話したら、
常駐している観光協会の人と店の従業員の方がいっしょに探してくれることになりました。
その2合目広場は歩いて回っても5分です。休屋の中も、トイレの中も、
ロープウエー駅も、あらゆるところを探したんですが見つかりません。
自分は階段を下まで降り、駐車場で車を見てからまた戻ってきました。

もちろん娘はいませんでした。
広場では、妻が青ざめた顔をして待っていまして、
「さっき警察に連絡して、来てくれることになったの。
 もしかしたら周囲の藪のどこかに落ち込んでるのかもしれないって・・・」
こう言って泣きました。
それからも広場をぐるぐるめぐり、娘の名を呼びながら斜面の藪を見て回ってたんです。
すると・・・「お父さん、お母さん!」と娘の叫ぶ声が聞こえました。
ハッとしてそちらを見ると、ロープウエー駅のほうからニコニコしながら娘が歩いてきました。
さきほどのお坊さんに手をつながれてです。

「山頂神社の階段に座ってるのを見つけました。気丈な子ですね、泣いてませんでしたよ」
ややあって親子ともども落ち着いてから、お坊さんがそう言いました。
信じられませんでした。山頂まではロープウエーで15分はかかるんです。
徒歩での道もあるんですが、娘に登れるようなところではないです。
「神さんに呼ばれたんじゃろうね。・・・さっきの写真もう一度出してくださるか」
お坊さんがそう言ったんで、デジカメのモニターに写すと、
「あなたらには見えんと思うけど、娘さんの頭の上に銀色の網が落ちかかってきてる。
 これは悪いものと思えないし、頂上の神さんに呼ばれたと考えて見にいったら案の定・・」

自分たちには網があるとはどうやっても見えませんでした。
・・・これは今でも不思議です。お坊さんなら自分たちに見えないものが見える、
ということはあるのかもしれませんが、写真のモニター上の画像ですからね・・・
これをプリントしても見えるということなんでしょうか?
この後、観光協会の方に娘が山頂で見つかったことを知らせ、
警察への捜索依頼を取り消してもらいましたが、じつに不審そうな顔をしていました。
それからは何事もなく、お坊さんと別れるときお礼にお金を渡そうとしたんですが、
「いやいや」と、どうしても受けとっていただけませんでした。

動物園の予定を取りやめ、真っすぐ家に戻ることにしたんです。
車の中で娘に「写真を撮った後のことを覚えてる?」と聞いてみたんですが、
「わからなーい」との答えでした。
「空を飛んだりした・・・なんてことある?」妻の問いにも「わからなーい」です。
ただ「上からキラキラしたものが降ってきた」
こうとだけ言ってたんですよ。



自分神社

2014.06.05 (Thu)
夢の話なんですけどいいですか。
じゃあ・・・高校時代のことです。今からもう20年近く前になりますね。
野球部に入ってたんです。
当時わたしの所属してた野球部は県内でもそこそこ強豪チームで、
何度か甲子園にも行ってるんです。
自慢じゃありませんが私は2年生の春からレギュラーになりまして、
夏の県予選のときのことです。
下馬評では私たちの高校はベスト4以上は確実と言われてました。

ところが2回戦で負けてしまったんです。
8回にセカンドを守っていた私のエラーで相手に勝ち越し点が入って。
そのときの気持ちは言葉では言い表せないですよ。
今でも思い出すと、叫びながらあちこち走り回りたくなるほどなんです。
試合後は先輩たちはみな泣いてましたが、
監督の口から出るのはねぎらいの言葉だけで、
もちろん先輩たちからも私を責めるような声はありませんでした。
それがまたいっそう辛さに拍車をかけたんです。
残念会みたいなのは当然設定されてはおらず、その日は親の車で家に戻ったんですが、
まったく気力をなくして早々に寝ました。

その夜、夢を見たんです。
最初は感覚だけがありました・・・
柔らかくせまいところをもがきながら進んでいる感覚です。
私のまわりを囲んだ弾力のある壁は、濡れていてつるつるしてるんです。
黙っていると体にひっついてきて窒息しそうなんで、
両手両足を突っ張って押し広げてなくちゃならないんですよ。
その状態が、夢の中で何十分も続いた気がします。
それでも少しずつ少しずつ前に進んで、
やがて息が苦しくてどうにもならなくなったとき、
ボロッという感じで広いところに落ちました。

・・・神社の境内だと思いました。あたりを見回すと、
そんなに広くはない、周りを林に囲まれた玉砂利の参道で、強い光のあたる日中でした。
そこを社殿に向かって進んでいったんです。
鈴を鳴らし、手を合わせてお参りした記憶もあります。お賽銭はどうだったか・・・
それで、社殿の薄暗い中で神主の着物を着た人が机に向かって何か書いてたんです。
木の階段を上がって畳敷きの中に入っていきました。
すると神主は顔をあげて俺に会釈したんですが、その顔立ちが印象に残ってないんです。
男ではあったと思いますが、年寄か若いかもわからなかったです。
社殿の中はせまく、奥のほうに祭壇とご神体らしい金の鏡が見えました。

神主は木机の上で古風な帳面に筆で何かを書いてまして、自然な感じで質問が口から出ました。
「何を書いてるんですか?」
「今日の記録を整理してるんですよ」
「記録って?」そう言って帳面をのぞき込みました。
難しい筆字かと思いましたがそうではなく、教科書に出てくるようなわかりやすい字でした。
『夏の甲子園 県予選2回戦。1回裏守備機会なし、2回表、初打席ショートフライ・・・』
今日の試合の、自分のプレーについてしか書かれていなかったんです。
「これ、俺のことですよね。何でこんなこと書いてるんですか?」
「ここはあなたの神社だからです」
こんな答えをされましたが、そのときは意味がわかりませんでした。

立ったまま黙って見ていました。
神主の記録は、だんだんにエラーをしてしまった8回裏に近づいてきます。
それと同時に、昼の試合のあのやりきれない思いが胸によみがえってきたんです。
「これ、書きかえるわけにはいきませんか」
「どんなふうにですか」「俺が8回にエラーをしなかった、ってことに」
「それは事実じゃないから、できません」
神主はすらすらと書き進めて、とうとう8回に入ったんです。
「なんとかお願いします!」私は神主の筆を持っている袖を両手でつかみました。
「やめなさい、危ないです」「お願いします!!」

「危ないですって!!現実は変えられるもんじゃない」
押さえつけた神主の腕がするっと滑って、帳面が大きく墨で汚れました。
・・・まぶしい光に包まれました。見ると奥のご神体の鏡がギラギラ輝いていました。
鏡自体の表面が膨張しているように思えましたが、
「ブズッ」嫌な音をたててヒビが入ったんです。
それとともに夢も終わりました・・・どのくらい時間がたったかわかりません。
カーテンのすき間から現実の朝の光が差していました。
少し頭を動かすと強烈な頭痛がし、物がゆがんで見えました。
かろうじてベッドから頭だけ出して嘔吐しました。

なんとか部屋の外まで這いずっていって、大声で親を呼んだんです。
あとは・・・意識が途切れ途切れなんですが、
救急車の中で大声で呼びかけられてたのは覚えています。
完全に意識が戻ったのはなんと4日後のことで、集中治療室にいました。
これは後で説明されたことなんですが、私には先天性の脳動静脈奇形というのがあって、
それが破れて脳内に出血し、開頭手術をしたということでした。
それから長い入院期間があり、
落ち着いてきた頃には野球部の監督、先輩や同輩たちが見舞いにきてくれました。
でも退院した後に野球部はやめ、高校生活自体も1年遅れました。
それ以来ボールは手にしていません。
ほとんど後遺症がなかったのが幸いでした・・・こんな話です。



雑談

2014.06.04 (Wed)
 今日は仕事で北海道に来ていて怖い話が書けませんので雑談。
しかしこんなに暑いとは思いませんでした。ネットで調べたら大阪より気温が高いんですね。
どうやら異常気象の中に入り込んでしまったようです。
暑さには納涼の怪談を・・・ということもありますが、
これもピークは夏休みが始まって、お盆前後のあたりですよね。
自分は寒いのはわりと平気ですが、暑さは苦手です。
まだ6月に入ったばかりなのに、これからえんえん長い夏が続くと思うと、
やや気が滅入ってきます。
この時期は日中と夜の寒暖の差も大きいですので、みなさんも体調に留意してお過ごしください。

 北海道を訪れたのはこれで4度目ですが、
残念ながらWikiで心霊スポットと書かれているところは函館山くらいしか行ってないです。
立派な観光地で、怖いという感じはまったくありませんでしたが、
これは自分が0感のせいもあるのかもしれません。
気温と、食べ物がおいしいせいでだいぶ生ビールが進んでしまいました。
占星術の仕事はいつも深夜から明け方にかけてなんですが、
旅行ではその時間帯で行動するわけにもいかず、時差ボケみたいになってしまいました。
もう限界です。おやすみなさい。



鬼講

2014.06.03 (Tue)
昨年の3月のことです。
私は会計士でして、業種は言えませんが、ある会社の嘱託をやってたんです。
その会社の隣県にある支社が急に税務監査を受けることになりまして、
対応策を指導しに行ったんですよ。
そこは車で3時間ほどの場所で、早朝に部下の運転する車で出かけました。
着いてすぐ駅前のビジネスホテルにチェックインし、
郊外にある支社に着いたときには10時をまわっていました。
資材の整理やら諸帳簿の点検などをしているうちにあっという間に時間は過ぎ、
午後の8時を過ぎてようやっと目途が見えてきました。

残りは翌日に回すことにして、市街のほうに車で戻ることにしました。
ところが、来るときにはしっかり働いていたナビの調子が悪くなり、
なんだか同じような山裾の道をうろうろするばかりになってしまったんです。
「おかしいですね。来たときはこんなとこ通んなかったですよね」
「ナビ切っちゃったらどうだ。下にバイパスが見えるだろ。
 その向こうの明るいほうが市街だろうから、そっちに進んでいけば大丈夫じゃないか」
「そうですね」
Y字路になってる広いほうの道路に入っていったんですが、
JAの大きな倉庫を過ぎると、急に街灯がまばらになり道幅がせまくなってきました。

「あれ、これ違ったかもしれませんね」
「方向は合ってると思うんだがなあ。どっかでUターンしたほうがいいかもな」
9時近くになろうとしていましたが、人通りどころか車通りもありませんでした。
「支社にはまだ人が残ってるだろうから、電話してみるか」
「あ、ほらあそこ。火が見えますよ。なんかお祭りみたいなのやってるんじゃないかな。
 寄って聞いてみましょう」
たしかに、道の先のほうに小学校か中学校に見える建物があり、
そのグラウンドらしき場所に大きな火が焚かれていました。

グラウンドに入っていく道の脇に車を停め、二人でそちらに向かっていくと、
30人ほどの人影がシルエットになって火のまわりに見えました。
大人も子どももいるようですが、
家族ごとに大きな焚火を半周してただ立っているだけでした。
「なんか静かですね。お祭りというより儀式っぽい感じがします」
「このあたりの年中行事みたいなもんかなあ」
近づいていくと、どの人も普段着で、特別な様子はありません。
ただ家族の大人の中に、手に藁包を持っている人がいるのに気がつきました。
「これ、何やってるんですか」
一番近くにいた家族の中の老人の男性に声をかけました。

「・・・おや、あんたらは何かね」
「いや、この奥の◯◯社に来たものなんですが、駅方面に出ようとして道に迷ってしまって」
「ああ、三叉路で広いほうに入ってきたんだろ。もう一本のほうが市街に通じる道なんだが、
 標識もないからな」
「ええ、そうなんです。で、これは?」
「鬼講って言うもんだ。このあたりで信心されてる神さんの縁日なんだよ」
「興味深いですね。ちょっと見させてもらってもいいですか」
「・・・ほんとは集落のもんだけでやるんだが、別に不都合はないな。
 あんたらだって骨は持ってるだろうし」
「骨って?」「ああいや、気にしなくともいいよ」

こんなやりとりをしたんです。
そうしているうちに校舎のほうから何人かがリヤカーほどの山車を曳いてきました。
それには大きめのタンスくらいの木箱がのっていて、
中に何やら像のようなものが入っていました。
それが焚火の向こうに据えられると、火の明かりで箱の中が見えました。
2mほどの座った形の鬼の像でした。
ただし木像などではありません。太い動物の骨で鬼の形に組み上げられていたんです。
顔の部分は牛の頭蓋骨でも扁平に削って使ってあるんでしょうか。
白々とした10cmばかりの2本の角あるのがわかりました。
白い着物を着た40台位の人がその前に歩み出て、祝詞のようなのを唱え始めました。

鬼の像の前に家族4・5人ずつで歩み寄り、
家長らしい人が藁包から何かを出して顔の前に捧げ持ちました。
牛の骨じゃないかと思いました。人間のよりもずっと太かったですから。
家族は頭を垂れて祝詞を聞いている間に、家長がうやうやしい動作で骨を火の中に投げ入れ、
家族は一礼して、その場を下がりました。
そして次の家族・・・ただこれだけを繰り返すようです。
小声で部下に「そろそろ戻ろう」と言いました。「ええ」
次の家族には生まれたての赤ちゃんがいて、家長らしい老人が骨を火に投げ入れたとき、
若い父親が赤ちゃんを両手で高々と掲げました。

・・・これは見間違いだとそのときは思ったんですが、
まだ髪も満足に生えそろっていない赤ちゃんの頭が火に照らさたとき、
その額の両脇に2本の小さな角があるように思えたんです。
そっと音を立てないようにして、部下と車まで戻りました。
Y字路まで戻ってからもう一本の道を進むと、ほどなくして市街に出ました。
まだ10時前でしたので、軽く1時間ばかり居酒屋に入って生ビールを飲み、
ホテルに戻って寝ました。
翌日、また支社へと赴き、監査対策を万全にしてその日のうちに戻ったんです。
後日の監査のときには私も立ち会いましたが、特に問題もなくすんなり通りました。

支社にいるときに、この鬼講について聞いてみたんですが、
その市に住んでいる人も「そういう行事は知らない」ということだったんです。
それどころか「Y字路になった道はたしかにあるが、
そこはJA倉庫を過ぎたあたりで行き止まりになっていて、
奥には集落もないし、学校の建物もない」って言うんですよ。
ただ、年配の人が一人だけ、
「明治の頃にはそのあたりに学校があったという話は聞いたことがある」と言ってました。
まあこれだけの話なんです。

・・・なんですが、今年に入って、
あのとき一緒にいた部下が駅の階段から落ちて大腿骨を骨折しました。
かなりの重症で、手術をして今も入院しています。
・・・ここまでなら偶然ということで済まされるでしょうが、
3ヶ月前、私に二人目の子どもが生まれまして。
男の子でしたが・・・事前の検査では何の異常もなかったはずなのに、
頭の生え際の右側にだけ・・・1cmくらいの角のようなのが生えていたんです。
医師の話では、たいしたものではなく、
皮質過形成だから手術で簡単に取ることができるということでした。
ただ・・・どうしても、
あのグラウンドで見た不思議な儀式と関係がある気がしてならないんですよ。

『鬼の骨』





怪片 3題

2014.06.02 (Mon)
ロッカールーム

事情があって2時過ぎに会社を早引けしたんです。
3月の雨が降ってる日で、ロッカールームにコートを取りに行ったときです。
コートを脇に抱えてロッカーの戸を閉めたとたん、
自分のから左に4つ目の戸がパカっと開きました。
そのときは振動のせいかと思って気にもとめませんでした。
・・・いちおう鍵はあるんですが、かけてる人なんていないと思います。
近寄って閉めると、今度は右に8つ目の戸がパカンと開いたんです。
それでもまだ怖いなんてことは・・・むしろ面白いなあと。

人のロッカーですからね。中はちらっとしか見ませんでした。
やはりコートが掛かってるだけです。その戸は、ゆっくり静かに閉めました。
そしたらね、一番左奥のロッカーがスーッと開いて、中から外人の女の人が出てきたんです。
パーマをかけたような赤毛で、濡れたレインコートを着て傘まで持ってたんですよ。
思わずのけぞりました。人が入れるスペースなんて絶対にないんです。
その人は、こちらをチラッとも見ることはなく、
スタスタとロッカールームから出て行ってしまいました。
追いかけてみればよかったんでしょうが、呆然として一歩も動けませんでしたね。



仕事帰りに駅東口の噴水縁に腰かけて缶コーヒーを飲んでいました。
夕暮れ時で、西日がさしてものの影が長く伸びていましたね。
近くで5歳位の女の子が噴水に手を入れてあそんでいたんです。
それを見るともなく眺めていたんですが、
女の子が右足を上げて、かがんで自分の足首のあたりをさすり始めました。
そのとき気がついたんです。女の子の足の影に重なるようにして、
横から棒のような影が伸びていることに。

少し離れた道のほうで立ち話をしていた母親らしい人が、
女の子に向かって「◯◯ちゃん、いくよー」と呼びかけました。
女の子はすぐそちらに駆け出そうとしたものの、
さっき上げていた右足がその場に残って、前に突っ伏すように手をついてしまいました。
女の子は泣きもせず、そのまま立ち上がって母親の方に走っていきましたが、
転んだあたりで、手のひらの影だけが、
5本指がはっきりわかるように開いてヒラヒラ揺れてたんです。
手のひらの影は、自分が見ているのに気づいたように、フッと引っ込んで消えてしまいました。



チェーン店の床屋で理容師をしています。
この間、年配のお客さんを担当したときのことです。
60代後半くらいだったでしょうかね。
年齢にしては量の多い、ごわごわした白髪だったんです。
まずハサミどおりをよくしようと、霧吹きで水をかけました。
それから櫛でとかしていたら、何か大きなものがボロッと床にこぼれ落ちました。
目を疑いましたよ。足まで入れて20cmはある大きな蟹だったんです。
蟹は甲羅の下のあたりから硬い床に落ちて、汁が少し吹き出しました。

しばらくカサカサもがいていたんですが、体勢を立てなおして、
横走りにすごい速さで、店のタオル蒸し器の下に走りこんでいきました。
唖然としていたら、イスに座ってたお客さんの頭ががっくりと垂れ、
白目を剥いて気絶してたんです。
ゆすっても起きないので店長に声をかけ、結局救急車を呼ぶことになりましたが、
後日、そのままお亡くなりになったということを聞きました。
蟹のほうは、店長に話したものの一笑にふされ、
後で店の中を探してはみたものの見つかりませんでした。
でもね、蟹が落ちたときにこぼれた体液の染みだけは、こびりついたように床に残ってたんです。




不動産業

2014.06.01 (Sun)
*長くなりましたがナンセンス話なんで読みやすいと思います。

中規模の不動産屋に就職しまして、今2年目です。仕事はまあ楽しいですよ。
ずっと会社の中で事務をしてるわけじゃなく、適度に動き回りますし。
外出ついでに、ちょっと神社の境内で休んだりなんてこともできるんです。
で、初年度にあった研修のことを話します。
研修といっても、同じ業種の新人が大量にどっかに集められて、
合宿形式でやるようなのじゃなく、ほとんどが社内でのものでした。
電話の応対から始まって、法律の本を与えられレポートを書かされたり、
1日中先輩について歩いたり、そんなもんでしたね。

でね、事故物件の研修ってのもあったんですよ。
ほら、わけあり物件とかいわくつき物件とかも言ったりするでしょ。
住人の方が事故や事件で亡くなった家や部屋、
自然死の場合でも長期間発見されなかった部屋とか。
そういうやつです。うちの会社が管理してるものの中にも何件かあって、
先輩の山崎さんについてノウハウを教わりながら、回って歩いたんですよ。
え、どんなノウハウかって?それはもちろん、霊への対処のしかたですよ。

お前それ信じたのかって?
うーん正直言えば最初は半信半疑・・・いや疑のほうが7割くらいかな。
だって、霊体験なんて生まれてこのかた一度もしたことがありませんでしたからね。
社用車のティアナで最初に行ったのが、会社から15分ばかりのアパートでした。
築12年ということでしたが、きれいなもんでしたよ。
山崎さんが、キーを持って先に立ち、俺がトランクを持って後をついてったんです。
鉄製の階段を上った2階の215号室。

「ここは6畳一間、キッチン・バス・トイレつき。前の住人は70代男性。
 キッチンの天袋の戸に器用に縄をかけて首吊り。発見は4日後で特別清掃は必要なかった」
 8か月前の話だ」山崎さんは事務的な口調でこう言うと、
ドアの前に立って開錠し、おもむろに声を出した。
「ごめんくださーい」それから俺のほうをふり向いて、
「中に誰もいないのをわかってて、声かけるって変だと思うだろ。だが、かならずやれよ。
 俺も前にこれ忘れて、えらい目にあったことがある」
「えらい目ってどんなことですか?」と聞いたけど教えてくれませんでした。

「ノックするのはあんまり意味がないらしい。『ごめんください』『入ります』とかな、
 中の霊に人が来たことを知らせて、隠れる準備期間を与えるのが重要なんだ」
「霊って隠れるもんなんですか?」
「まあな、あんまり関係のない人に姿を見られたくはないらしい。
 誰彼でもかまわずおどかすってわけじゃあない」
中に入ってみましたが、
家具類は一切なくこざっぱりとかたづいて嫌な臭いもありませんでした。
「ドアはな、完全に閉めずに少し開けておけよ。それから・・・」
山崎さんは押し入れに歩み寄って「開けますよ」と声をかけて戸を一気に引きました。
中は空っぽでした。

「な、こういうとこを開けるときも必ず声かけろよ。
 霊は出ていったわけじゃなく隠れただけだから・・・ここは、まあこんなとこだな」
自分は、首を吊ったというキッチンの天袋のあたりを見ながら疑問を口にしました。
「ここって、2階の左から4番目で、ほんとは214号なのを、
 4の数字を嫌って215にしてあるんですよね。
 そういうとこって不幸が起きやすいとかあるんですか?」
山崎さんは軽く笑って「んなことはないよ。別に統計があるわけじゃないが、
 数字は数字、それに思いがこもるなんてことはない。迷信だな」と答えてくれました。

次に回ったのは分譲マンションの8階。
1階に警備員が常駐していて、かなり高級そうなところでした。
「ここはな、前よりは少しやっかいだ。亡くなった住人は20代の銀座ホステス。
 風呂で手首を切ったものの死にきれず、ナイフを胸にあてたままフロアに倒れ込んだんだ。
 風呂場から出ちまったから特別清掃ありになった。改築はしていない。
 うちで遺族から買い戻して、寝かせて2年目」
山崎さんはドアの前に立つと「入りますよ」と声をかけてから、
俺の持っていたトランクを開け、中から細長い立派な皮のケースを出した。
「これなんですか?」

「オーケストラとかの指揮棒のケースを流用してある。まあ見とけ」
それを開けて取り出したのは、40cmほどの棒。
見るとぐるぐる白い紙が巻きつけてありました。
「これはな、榊の枝・・・よく御払いとかに使うやつだ。
 それに八幡神の御札がたくさん貼りつけてある」
そういえば白い棒の表面に毛筆の字が浮き出ています。
「八幡様のが効果があるんですか?」
「よくは知らんが、本来はその霊の産土神社のが一番いいんだろうな。けど、そこまで調べてない」
山崎さんは開錠し、ドアを細目に開けると棒の先をそっと突っ込んでかき回すような仕草をしました。

「こんなもんだ。使い方はわかったろ」
 山崎さんはハリーポッターみたいに棒を体の前に構えてどんどん入ってきました。
ここも家具はなく、整然とした様子でした。
0感の自分には怪しい気配とかまったくわかりませんでしたよ。
「ここは値下げして売るんですか?」
「そうなるだろうな。てか、もう少し寝かせないと売ることはできんよ。
 今は転売を繰り返したって儲かるわけでもなし」
こうして立派な部屋の中をすべて見て回ったんですが、変なことはありませんでしたね。
ラップ音というのさえなかったんです。
霊を見れるかと期待してた自分にはちょっとがっかりの部分もありました。

「次で今日は終わりだな。一番厄介なんで最後に残してある」山崎さんが言いました。
車を路上駐車して向かったのは、築30年という一軒家。小高い住宅地の丘にありました。
古びたガラス戸の玄関の前に立って、山崎さんが、
「殺人事件なんだよな、ここ。60過ぎの婆さんが殺されて、
 犯人はすぐにつかまったけど、婆さんの甥っ子だった。
 むろん事件のことは地域中に知れ渡ってるから、どうにもならん。
 古いし、社長は解体して更地にすることを考えてるみたいだ」こう言って、
玄関前で声をかけ、お守りの棒を差し込んだところまでは前と同じでした。

それからが少し違ってました。
トランクから薄いパネルのようなのを取り出したんです。
「それは?」
「ほら」山崎さんが見せてくれたのは・・・何だと思いますか?
ここであった殺人事件の犯人逮捕の記事が載ってる新聞をパネルにしたもんなんです。
「殺されたばあさんはもちろん怨んで凝り固まってるからな。
 これ見せれば少しは怒りが和らぐ。本当は裁判の判決文のほうがいいかもしれんが、
 まだ確定してないんでね」

山崎さんが棒とパネルを両手に持って、入っていくと、
前の2箇所と違ってさすがにかび臭く、薄暗かったです。
「電気、水道とか全部止めてあるから、維持費はほとんどかかってない。
 空き家ってことで、警官の立ち寄りも頼んであるし」
家の中は襖や障子はすべて開け放してありました。
「ここだよ、この8畳間で事件があったんだ」山崎さんに続いて廊下から入っていくと、
襖が開いてても空気がどんよりと重い感じがしました。家具類はほとんど残ってましたね。
「どうだ、何か感じるか?」

「んー空気が重いです」「そうだろうな、何か見えるか?」
「いえ、特には・・・・あっ!!」
台所のほうから薄い影がまろぶように入ってきました。かっぽう着のばあさんに見えました。
「見えたか?」「あ、あ、ばあさんです」
ばあさんは居間の隅までくると、壁に向かってうずくまり、両手で頭をおさえましたが、
その後頭部からバッと霧のようなものがあがり、そのままうつ伏せに倒れて消えました。
「ばあさんがどうした?」「今、そこで倒れて消えました。その畳の新しいとこの隅で・・・」
「そうか。正解だ。そこが亡くなった現場なんだよ。・・・まだ繰り返してるんだなあ」

「・・・自分の死んだ様子をですか」
「うん。どうやらこの家から出ていけない霊らしい。
 そんなに怨みがあるなら、出ていって犯人に復讐すりゃいいのにって思うが、そうもいかんようだ」
「・・・これ、お祓いとかは効かないんですか」
「そりゃ効くし、能力者にも知り合いはいるけど、礼金は百万レベルだよ。
 どうせ更地にするんだし、必要ないって社長の判断さ」
「じゃあこのばあさん、成仏しないんですか?」
「更地にすれば、たいがいは消えちまって出ることはないよ」

「・・・はあ、そんなもんですか」「どうだ、研修は。霊が見れて満足したか」
「まあ・・・そうですね・・・」
「実を言うとな、俺は本当に0感で何にも見えないんだ」
「ええ! でも霊障でえらい目に遭ったって・・・」「ありゃ嘘だ」
「えー、じゃあさっきのばあさんも見えなかったんですか」
「そうだ。だから本来はお祓い棒とかパネルも俺には必要ない。何も感じないんだからな。
 お前は・・・0感と言ってたが、あれが見えるならたいしたものらしいぜ。
 ちょうど前の担当者が病休してるんで、変わりはお前に決まっただろうな、これで」
「何の担当ですか?」「そりゃ物件の霊障の調査に決まってるだろ」

・・・こうして、今はその手の仕事をしてるんです。
え?体調はどうかって。いや、まったく問題ないですよ。
健診でも何もひっかったとこはありませんし、健康そのものです。
え、え、私の前の担当者が3人続けて病死してるって・・・
本当ですか? どうして知ってるんです? うちの会社と20年前から取引してる!!
え、え、え、いやあ、すぐ前の担当者が入院してるのは知ってましたが、
まさかそんな。