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聞いた話(ガラスオブジェ)

2015.10.01 (Thu)
これは某私立大学の附属病院で看護師を務める30代前半の女性、
Kさんから聞いた話で、全体的に深刻な内容を含んでいます。
Kさんは看護短大を卒業して以来、ずっとその病院勤務なのですが、
それ以前には霊が見えるということはなかったそうです。
病院に勤務してからも、最初の4年ほどはおかしなものが見えた、
という経験はありませんでした。以下はKさんんから伺った体験談なのですが、
これがいわゆる霊能・霊感がある人に普遍なものとは思えません。
様々な人から聞いた話とは、いろいろ相違点があるのです。
ですから、あくまでKさんの目からはそういうふうに見える、
ということで受け取ってもらったほうがいいでしょう。
これをお話している私は、まったく霊感などはありませんので、判断はできかねます。

初めてKさんがおかしな体験をしたのは、夜勤明けの朝のことでした。
その日は金曜日で、9時過ぎに病院を出て、それから土曜にかけて休みになります。
ですので足どりも軽く職員駐車場に向かったところ、
Kさんの車の置いてあった近くにBMWの高価なワゴン車が入ってきたそうです。
何気なくそちらを見ていたら、人が車から降りた瞬間に、
車の天井に、にょきにょきと透明なものが立ち上がったそうです。
これを説明するのは難しいんですが、できるだけKさんの話にしたがうと、
ガラスを5cmほどの破片に砕いて、それを接着剤でくっつけながら、
積み上げていったようなものだったそうです。
全体としては西部劇に出てくるサボテンのようになりました。
左右に太くて短い枝が突き出たような形ということですね。

ただし棘などはなく、透明で向こう側が透けて見えたそうです。
うまく像が頭に描けたでしょうか? まあ、要はガラスでできたオブジェみたいなもの、
ということです。それで、その枝分かれしている先端には、
やはり透明の風船大の丸い玉がついていて、
その表面は、よく見るとシャボン玉のように少しずつ動いていて、
うっすらと顔が浮き出ているようだったそうです。
それぞれ別の顔で、5つか6つあったということでした。
車から出てきたのは外科の30代後半の医師で、Kさんは循環器科だったですが、
顔は知っていたので、「お早うございます」とあいさつをして、
自分の車に乗り込みましたが、すぐには発進せず中から見ていると、
外科医が病院のほうに歩み去っていくにつれ、

車の上のガラスのオブジェは薄くなって消えたそうです。
その医師は、これは後で知ったことですが、主治医として執刀した手術中に、
何人もの患者が亡くなっています。それが医療事故なのかどうかはわかりません。
当然ながら、成功した手術のほうが多数ですし、
亡くなった患者の多くは末期的な症例で、手術をしなければ、
どのみち助からない命だった患者がほとんどだったのです。
とにかくそれ以来、Kさんには日常的にガラスのオブジェのようなものが、
見えるようになりました。といっても見えてしまうのは1ヶ月に数回程度です。
kさんは「幽霊というと違うような気がするの」とおっしゃっています。
なぜならそれらは、自分の意志でさまよい歩いているのではないのです。
生きた人の物にくっついてしか現れることができないのだということでした。

例えば、ある医師が脱いで椅子にかけてあった白衣、
そこから急に、さきほど説明したガラス片でできたオブジェがぬーっと立ち上がり、
天井近くで丸く透明な風船がふくらんで、そこに顔が現れる。
そして右に左にふらふら揺れるわけです。Kさんはなるべく注視しないようにしていましたが、
持ち主がその場を離れてしばらくすると消えてえしまうのだそうです。
顔は多くの場合は一つで、外科医のようにいくつもあるケースはごく稀だったということでした。
「かならず何か物にくっついているし、その物の持ち主がいなくなれば消えてしまいますから、
 世間で言われている幽霊とは、ふるまいがぜんぜん違うでしょう」
確かにそうなのでが、これは私にも解釈や説明はできません。
とにかくKさんに実害はないので、できるだけ気にしないようにして、
先輩看護師に相談するなどのこともしませんでした。

それで先月の話ですが、彼女の実の父親が亡くなったのです。
事故死、ということになっています。夜遅く風呂に入ったのが、
いつまでもあがってこないため、Kさんの兄嫁が様子を見に行くと、
うつ伏せになって湯に浮かんでいました。呼吸も脈もなかったので、すぐに救急車を呼び、
電話の指示にしたがって、Kさんの兄が人工呼吸や心臓マッサージをしました。
救急車内でも、救命士が措置を試みたのですが、
病院についてから30分ほどで死亡が確認されたのです。
Kさんは一人で部屋を借りて住んでいて、父親は兄の家庭で同居していたのです。
ですから、Kさんはこの一連の出来事には立ち会ってはおらず、
兄からの電話で病院に駆けつけたのですが、死に目にあうことはできませんでした。
それで、実はKさんは、昔から父親のことが大嫌いだったのです。

若い頃から酒乱の気がある人だったんですね。
素面のときもあまりよい性格ではなかったとのことでしたが、
酒が入るとそれに一層拍車がかかり、Kさんも兄も母親も何度も殴られたことがあったそうです。
父親の酒乱は、Kさんの母親が病死し、兄の家に引き取られてからもときおりあったそうで、
その話を兄や兄嫁から聞くたびに、申しわけないような気持ちになったそうです。
ですから、家を離れて自活するようになってほっとしたと言ってましたし、
父親が亡くなっても強い悲しみなどはなかったのです。
「ただ、これでひとくぎりついたな、と思ったくらいですね」
その後葬儀があり、Kさんは病院を1週間忌引しまして、
受付をやったり料理の手伝いをしたりで、それは忙しかったそうです。
葬儀は葬祭会社の会館で行ったのですが、その後に親戚一同での会食があり、

5時過ぎに、泊まり込んでいた兄の家に戻ってほっと一息つきました。
「やっとこれで一段落、明日からは自分の部屋に戻れる」
そう考えたとたんどっと疲れが出てきて、リビングのソファでうとうとしてしまいました。
そしたら兄嫁がタオルケットをかけに来てくれ、はっとして立ち上がり、
「ああ、いいです。だいじょうぶですから」こう言いました。
兄嫁は微笑んで、そのタオルケットをソファの肘かけ畳んで掛けたんですが、
そのとき、タオルケットからにょきにょきとガラスのオブジェが立ち上がりました。
それはこれまで見たものよりもずっと複雑な入り組んだ形をしていて、
先端にはやはり風船状のものがついてましたが、それは亡くなったばかりの父親の顔だったのです。
しかもうっすら浮き出てるのではなく、Kさんが子供のころ見ていた酒に酔って暴れるときの
顔そのままでした。父親の顔は長い間あたりを睥睨(へいげい)し、そして消えたそうです。