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逆さ

2016.07.05 (Tue)
大学のときの話ですね。都市伝説研究会というのに所属してたんです。
まあでも、地方大学ですので田舎伝説と言ったほうがいいのかもしれませんが。
それで、俺が3年のときです。学祭での発表のためのテーマに選んだのが、
地元で「逆さトンネル」と呼ばれてる場所についてです。
これ、郊外の鉄道の下を通る大きなトンネルの脇にある、
人しか通れないトンネルです。封鎖されてるけど今もありますよ。
俺が大学当時も、もうすでに封鎖されてたんですが、
そのときは両方の入り口に、あの側溝に使うコンクリブロックが
逆さに積み上げられているだけで、入ろうと思えば入れたんですよ。
今はダメです。完全にコンクリで塗り込められちゃってますから。
ああ「逆さ」がついた理由ですか。それを今から説明します。

これね、俺らが大学の当時ってのが、今から7年前ですけど、
その頃にはもう真偽不明の古っるい伝説になってました。
俺もそうでしたけど、地元の市の出身者なら、
中学校のときにこの話聞くんじゃないかな。ええ、まず知ってますよ。
そのトンネルだけど、中を通ってた女の人が襲われて殺されたってのが発端。
その事件があって、しばらくしてトンネルは立入禁止になったんです。
でも事件後しばらくは、両側に立入禁止の移動柵が置かれてるだけで、
だれでも簡単に入れたんだそうです。
で、事件が風化し始めた3年後、あるグループが怖いもの見たさで、
夜にそのトンネルに行った。軽自動車の男女4人、って言われてます。
たぶん男2人、女2人。これねえ、最初の女の人が殺された事件は、

本当にあったことですよ。新聞に出ましたから。
その縮刷版のコピーも持ってきてます。犯人は、
その場で凶器を持って立ち尽くしていたところを逮捕されてます。
被害者とは知り合いじゃない、通り魔的な犯行だったみたいです。
あ、すみません。説明がごちゃごちゃしてしまって。
ただ、最初の事件は伝説でも何でもないって言いたかっただけで。
でね、その後の男女ですけど、なんと通行止めの柵を寄せてから、
車でトンネル内に侵入しちゃったんです。はい、入ろうと思えば入れます。
幅は2mくらいありましたから、軽自動車ならギリギリなんとか。
それでトンネルは高さも2mちょっとで。
これ重要なことなんですよ。というのは、その軽自動車。

伝説では、トンネルの中央部分でひっくり返った状態で
発見されたことになってるからなんです。でも、それってありえませんよね。
軽の長さって3.4mってなってるじゃないですか。
それが横幅ギリギリ、縦が2mの場所でどうやってひっくり返ることができます?
1回つぶしてだったらできるかもしれませんけど、まさかねえ。
うーん、この話の裏はまったくとれてません。
市の交通死亡事故もかなり遡って調べたんです。でも、
あのトンネル内で起きたという新聞記事は出てきませんでした。
たしかに古くからあるトンネルではありますが、
それだって昭和40年代にできたものなんです。
まあね、話自体は、この時点でガセってわかるんですけど、

じゃあそういう伝説がそうしてできたのかってことも、
それはそれで興味深いじゃないですか。ぶっちゃけた話をすれば、
都市伝説と言われるもののほとんどは信憑性の薄いデマでしょ。
でも、どうしてその伝説、例えば100kキロ婆とかができたのかを探るのは、
現代の民俗学として意味があることじゃないですか。
でね、まずは実地調査ってことで出かけたんです。やっぱ軽自動車で。
その伝説と違うのは、夜じゃないこと、車では入れなくなってたこと、
あと男ばっか3人だったことですね。平日の午後でしたから、
人なんかいませんでしたよ。やや離れた場所の大きいほうのトンネルを、
時おり車が通るだけで。でね、やや離れた草地に車を起きまして、
3人で伝説のトンネルの前に出ました。

中は照明を切ってるはずなんで、懐中電灯は人数分用意してまして。
側溝ブロックをよじ登って、隙間から中に入っていったんですよ。
それで、その日もだし、前1週間くらい雨降ってなかったのに、
トンネル内はかなり湿ってまして。ポタポタ天井からしずくがたってました。
いやあ、地下水ってことはないと思うんですけど、理由はわかりません。
ああ、大事なことを言い忘れてました。トンネルの長さは100mもないんです。
走ればあっという間に向こうに着いちゃう。あちこち照らしながら
3人で進んでいきました。いや、最初の事件の現場はわかんないです。
でもそのほうがよかったっていうか、怖いじゃないですか。
で、写真を撮りながら、車がひっくり返ったっていう中央部分まできたんです。
そこで念入りにあちこち照らしてましたら「あっ!」という声が同時に上がったです。

俺以外の2人です。一人は天井を指差してて、一人は地面です。
まず地面のほうから説明しますね。ぼこぼこになったコンクリ面に何か白いものが
突き刺さってたんです。声を上げたやつが手を出してそれ抜いてみました。
何だったと思います? 高さが25cmくらい。太さは手首より細いくらいの
観音像だったんです。それが逆さになって、頭を下にした形で埋まってまして、
コンクリが10cmほどくぼんでたんです。それね、俺も持ったんですが、
以外に軽かったですよ。象牙とか、何かの骨とかそういう材質に感じました。
「どうする?」って言われたんで、
俺が「それ仏様だよな、何かの供養かもしれないから、元に戻しとけよ」って。
だって、ただ捨てたのならコンクリがくぼむはずないでしょ。
明らかに道具を使って掘り、そこに埋め込んだものですよね。

あと天井のほうですけど、なんと懐中電灯の丸い光の中に、
車のタイヤ跡が見えたんです。天井もコンクリで一面に黒く濡れてるわけだから、
それが見えるってことは、よっぽど強くこすりつけたかなんかで。
これが地面なら急ブレーキを踏んだ跡と言えるんでしょうけど。
あとね、これ混乱しないように分けて話してるんですけど、
実際はこの2つのことが同時に起きたんです。だからね、頭が混乱しました。
天井のタイヤ跡は伝説の車のものだろうか。?それを供養するために、
何ものかが観音像を逆さに立てたんだろうか?
そんな風に考えたのは、トンネルを出てからのことです。中ではみなそれぞれ、
イヤーなことを考えたんですね。「もう出ようぜ」ってことになりました。
引き返すと、側溝ブロックの外はこうこうと明るくて、

安心感がありました。みなが足をかけて登ろうとしたとき、
3人とも時間差でひっくり返りました。それで脳天を打ったんです。
俺と天井のタイヤ跡を発見したやつはコブだけで済んだんですが、
観音像を最初に見つけたやつは頭を切ってかなり血が出たんです。
まあ医者に行くほどではなかったんでねすけど、でも、いくら慌ててたとはいえ、
3人が3人とも、ほぼ同時に転ぶってありえないですよね。
しかも後ろに倒れたんなら後頭部をうつか、手をついて受け身をとるでしょ。
ええ、俺の場合は滑ったわけでもなんでもなく、
ポンと弾き飛ばされた感覚がありましたね。だからね、あのトンネル、
やっぱ何かがあるんです。そう思って、そこで研究はやめました。
うーん、3人とも、その後は特別なことはないんですけども。

indexええっdっrっtyy





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ブログ3周年

2016.07.04 (Mon)
当ブログも3周年を迎えまして、めでたいということもないんですが、
飽きっぽく、かつ面倒くさがり屋の自分が、よく3年も続けたなあと、
われながら感心しているところです。
当面の目標が、少なくとも3年間続けようということでしたので、
今後どうしようか迷っているところではあります。
ブログを始めた目的の9割は「自分が怖い話を書く」ということで、
750話ほどになったので、駄文ではありますが、
量だけはまあ達成できたかなと思います。

残りの1割は「オカルト文化への効験」という大それたもので、
慣れないながらも怪談論やオカルト論を通して、
恐怖というものについて考察してきました。
どれほどのことができたかわかりませんが、
何らかのお役に立てば幸いだと思っております。
当ブログをお読みくださっているみなさんの、拍手や温かい励ましの言葉、
ほんとうにありがとうございました。

*本日はこれ以外の記事はありません。

rain1のコピー





胸像マネキンの話

2016.07.04 (Mon)
みなさん、人形の怪異って信じますでしょうか?
私は大変怖い目にあいまして、その顛末をこれからお話するんですけど、
もともと命を持ってない作りものの人形が、
何か生きた人間に影響を与えたりすることってないと思うんです。
ああ、それは人形を可愛いがるなどとは別の話ですよ。
そうじゃなく、動き出したりしゃべったりするようなことです。
もし、そういうことがあったとしたら、それは人形にそうさせている
生きた人間がいるんじゃないかと思います。
すみません、前置きが長くなってしまって。私はあるデパートで、
貴金属売り場のマネージャーをしているんです。
商品はジュエリーがほとんどですが、金銀製品も扱います。

仕事は、仕入れはしませんが売り場担当マネジャーとして、
売上の数字や販売スタッフ、商品などの管理に携っています。
スタッフはセールスが4人と経理事務が2人、全員女性です。
それで、売り場には全身マネキンというのは少ないんです。
そのかわり、胸像マネキンは十数体あります。
ほら、胸から上だけ、あるいはそれに腕がついているもの。
それにネックレスや指輪をつけさせ、ショーケースの後ろなどに
展示するんです。これらのマネキンの多くは、顔の造作はあるものの
目は入っていません。貴金属は近くから見るものですので、
瞳が開いていると、いくら精巧にできていても不気味な感じがするんです。
ああ、すみません。また余談になってしまいました。

先週の日曜のことです。私のシフトは月・火が休みで水から日までの5日間。
売り場は8時なんですが、その日は残って売上の集計などを見ていたんです。
前年同月比などの統計を出すためですが、ソフトに打ち込むだけ。
うちのデパートでは残業は少ないんです。
いつもその手の仕事は開店前にやるんですが、2日の休みに入るので。
貴金属売り場のスタッフはみな帰ってましたけど、
他の売り場には何人も人が残ってました。パソコンを閉めて、
さあ私も帰ろうとなったとき、ブーンという、
何かが振動するような音が聞こえました。売り場の中でです。
機械類の電源が落ちていないものがあるか最終確認をしたんですが、
そういうものはなかったです。そのうちに音は止みましたので、

バッグを持って立ち上がったとき、「ふふふっ」という
含み笑いのような声が聞こえました。すぐ近くで。
女の声だと思いました。でも、人がいるはずはないし・・・そこでまた、
「ふふふっ」こう言いますと、可愛い声と思うかもしれませんが、
そうじゃなく、なんとなくイヤーな感じのする笑いでした。
しかたなくもう一度見まわったんですが、当然人はおらず、
どこか他の売り場の声が天井などを伝わって聞こえてきたのかと
考えるしかなかったです。もう本当に帰ろうと想ったとき、
すぐ前で「ふふふっ、ハハハハハ」って。でも、目の前には
胸像マネキンが2体並んでるだけでした。
一体は帽子をかぶり純金のネックレスをつけたもの。

もう一体はサングラスに指輪。このとき初めて怖くなりました。
マネキンが笑った?! もちろん2体のマネキンは動かして調べました。
でも声なんか出すはずはないんです。1・2分待ってみました。
もしまた聞こえるようだったら、フロアマネージャーに話しに行こうと考えた
んですが、もうそれ以上は聞こえることはなかったんです。
翌週の水曜日ですね。その日は午後から、
上得意の奥様が来店されていたんです。
季節に数回いらっしゃって、一点数十万の商品をいくつもお買い求めになられる。
ですから、私も売り場に出てお相手をしていました。パールのネックレスを
お薦めしていたときです。奥様が「うっ!」とおっしゃって
胸を押さえられました。「どうなさいましたか」声をかけたのですが、奥様は、

「あれ、あの顔、あの顔は」絞りだすような声で私の背後を指さされたんです。
「え?」振り向くと、奥の棚の上に2体のマネキンがあって、
それは前に笑い声が聞こえたと思ったものでした。奥様は、
「こんなところまで出てきて!」悲鳴のような声をあげながら、
ショーケースの間を入っていって、1体のマネキンの帽子を取ったんでです。
そのとき、私にはマネキンに顔があるように見えました。年配の女性の、
憤怒の形相というんですか、怒りが噴き出しているような顔です。
奥様はそのマネキンを両手で持ち上げようとしましたが、
そのまま前のめりに倒れてしまったんです。駆け寄って抱き起こしましたが、
口から泡をふいておられて・・・救急車で搬送されたものの、
そのままお亡くなりになったということでした。

その騒ぎの中で、横倒しになったマネキンの顔を見たんですが、
なんでもない、目を閉じた白い無表情に戻っていました。
私が見たと思ったのは幻覚だったんだろうか。でも、奥様もこのマネキンを
両手でわしづかみにして何か言おうとしてた・・・わけがわかりませんでした。
スタッフの手を借りてマネキンを起こし散らばったものを元に戻しまして、
平常業務に戻ったんですけど、私は混乱してしまって、
奥の事務室に入ってしばらく頭を抱えていたんです。
その日の終業のときです。「お先いたします」と言ってスタッフが帰り始め、
事務の子の一人が大きな紙袋を持って、エレベーターに向かって行きました。
「あれ、何? あの重そうなものは?」疑問に思い、
反射的に昼の騒ぎのときのマネキンを見ましたら、なかったんです。

それで、迷ったんですがその子を更衣室まで追いかけていきました。
それで入り口前でつかまえたんです。「ちょっとその紙袋」
私がそうささやくと観念したような顔になったので、そのまま袖を引っぱって、
その階の空いている部屋に連れていったんです。
「訳を話してくれるよね」そう言いましたら、その子は黙って
紙袋の中からあの胸像を取り出しました。
そしてうつ伏せの形でテーブルに載せると、バッグからピンを出して、
胸像の背中の部分をこじりました。そしたらパカっと開いたんです。
継ぎ目がわからないようフタがされてたんですね。
中はかなり広く空洞になっていて、髪の毛の束が見えました。

亡くなった上得意の奥様と同じ髪の色でした。
「これ、ヘアーサロンの知り合いからもらったんです・・・
 呪いに使うために」その子はそういいながら、胸像の奥をさぐって
一枚の写真を取り出しました。奥様とは別の人が映っていて、
同年輩くらいの地味な感じの女性でした。マネキンに浮き出た顔と
似ている気がしました。その子は「母です」と言い。それから、
奥様を恨むようになった経緯を聞いたんですが、申し訳ありませんが、
それはここではお話しないことにさせていただきます。
その子の話したことが本当なら、十分に同情に値する内容でした。
ただ・・・今後、私はマネージャーとしてどうしたらいいのか。
こちらのみなさんにアドバイスをいただきたいと思いまして。








変な話(公園)

2016.07.02 (Sat)
まだ20代の頃ですね。当時は出身地の県にいて、
警備員のアルバイトしてたんです。
いや大手じゃなく、その県のしかも県北だけでやってる会社です。
そのときにあった話ですね。最初半年はビルの施設警備でしたけど、
その後に公園の夜間警備に回されまして。昼夜逆転の生活になったけど、
これはありがたかったです。一つは人目がないことで、ほら、
ビル警備だと社員の人の目をつねに気にしてなくちゃなんないでしょ。
それに来客対応なんかもあるし。あと夜間だとバイト料がいいんです。
あーラッキーだなと思いました。仕事は、横田さんという50代のベテランの人と
2人組でやるんです。仕事先は○○平和記念公園。
あのあたりでは一番大きいんです。それと自分の部屋からも近かったんで。

ええ、会社に顔を出す必要はなく直行、直帰でOKでした。
会社からは、仕事内容は横田さんに聞けって言われて。
どんな人か心配だったんですが、柔和な人でしたよ。それに柔道3段ってことで、
体が大きく頼りがいもありましたね。あんなことになってしまって残念です。
勤務は夜の8時から朝6時までです。公園の正門のところに
駐車管理センターがあって、夜間はそこが警備員詰所になるんです。
初日は7時40分に顔を出せって言われて、行ったら横田さんが待っていました。
巡回は2時間おきで、あと緊急事態への対応。
まあでも、緊急事態なんてなかったんですけどね。それで、
その日の最初の巡回のときに、横田さんから巡回の経路とコツを教わりました。
うーん例えば、その公園は8時で立入禁止になるんですが、

柵に囲われてるわけじゃないので、アベックなんかが入り込むことが
あるんです。そんな人たちに帰ってもらう、やんわりした言い方とか。
あとアベックをねらってくる、いわゆるのぞきへの厳しい対応の仕方とか。
でも、巡回は2人組でやる決まりでしたので、
ほとんどの場合は横田さんがそういう対応をしてましたね。
だから楽だったですよ。詰所で座ってラジオ聞いててもいいんですから。
ただね、最初に横田さんの話を聞いたときは面食らいました。
ちょっとおいそれとは信じられない内容が含まれてましたからね。
「この公園なあ。俺はもう8年担当してるんだが、楽な仕事だよ。
 ただな、注意しなくちゃなんないことが3つだけある。それ覚えておいてくれ。
 俺もいつ配置換えがあるかわかんねえしな」

それで巡回中にその3つのことを聞いたんです。
「一つ目はな、ほらそこのトイレ。男子のほうはチェックは必要だが、
 女子のほうは見る必要がねえ」 「え、いいんですか」
「見たことにすればいいんだよ。会社のほうでも了承してることだ。
 俺らの警備が入る前に、女子トイレの後ろに覚醒剤の売人が入っててな。
 嫌な事件があったんだよ。それからいろいろおかしなことが起きてなあ」
「ははあ、でも一般の利用者も入るんでしょう」
「昼は大丈夫なんだ。ただ、さっき話したアベックなんかが
 たまにあのトイレに入って、青い顔をして詰所に駆け込んでくることがある」
「ははあ」 「そういうときはなだめすかして帰ってもらうんだが、これ見ろや」
そう言って横田さんは制服の胸ポケットからボールペン抜いたんです。

「これな、特別な仕掛けがしてあって、ポッチ押すとお清めした塩が出るんだよ。
 それをトイレでな何か見たって人の背中にサッサッっと振りかけてやるんだ。
 気づかれないないようにな」 「厄払いってことですか」
「まあそうだ。悪い噂が立たないようにするためのアフターサービス」
またしばらく歩いて、「あの林の中の小道があるだろ。あそこなあ、狸が出るんだ」
「狸!?ですか」 「ああ、どうやら何家族かいるらしい。
 別に珍しいことじゃねえ、東京だって、ヌートリアが
 繁殖してる公園があるっていうじゃないか」 「ああ、聞いたことあります」
「でな、狸は化かすんだよ」 「きれいな女の人に化けてとか?」
「いや、そうじゃないが、突然街灯が全部消えたり・・・まあそう見えるだけなんだが。
 あと、ふっと気がついたら藪の中に座り込んでいたり」

「うわ、横田さんは化かされたことあるんですか?」 
「あるある。恥ずかしい話だが、ここに来た最初の頃に何回か な。でも対処法がある」 
「それは?」横田さんは今度はポケットから百円ライターを出し、
「小道に入る最初に、これでカチカチ火を出すんだ。
 やっぱ畜生だから火が怖いんだろう。これだけで悪さはしてこねえよ」
「ははあ」このあたり、半信半疑というより疑のほうが大きかったんですけどね。
で、公園の中央に来まして、そこにかなり大きな噴水の池があるんです。
「あの池な。あれが一番危ないらしい。らしい、ってのは、
 俺も何か見たわけじゃなく、前任者からの申し送りなんだ。雨模様の夜に、
 あの池からバシャバシャ音が聞こえるようなら、絶対に覗いちゃいけないって」
「もし覗くとどうなるんですか?」 「命をとられるそうだよ」

こんな感じで説明されたんですけど、これ横田さんが冗談を言ってるんだろうか、
よくわからなかったんです。実際、半年間は何事もなかったですから。
ああ、狸の姿は何度か見ましたよ。でも悪さはしてきませんでした。
でね、一冬過ぎて春になったあたりです。夕方に会社から呼び出しがあって、
そこで横田さんが亡くなったことを聞かされたんです。
買い物中のスーパーで脳梗塞で倒れたって。病院に搬送されてすぐ死亡確認。
これショックでしたよ。前日までなんともなかったんですから。
横田さんは一人暮らしで、急いで息子さんがこっちに向かうそうで、
葬式には会社の上司ともに自分も参席させてもらいました。
でね、その日の夜から新人とペアを組んで警備にあたりました。
横田さんから説明された3つの注意事項ってのも説明したんですよ。

まあこっちが信じてないせいもあったでしょうが、新人も、
そんなことあるわけねえって顔をしてましたね。これ、無理もないです。
でもね、自分はタバコ吸わないんですが、百円ライターのカチカチは
やってました。でね、1ヶ月ばかり過ぎた雨の夜のことです。
12時の巡回をカッパ来て回ってましたが、あの中央部の池に近づいたとき、
水面は一段低くなって見えないんですが、けっこう大きな水音がしてたんです。
バシャン、バシャンって。もしや横田さんが言ってたのはこれかって思いました。
で、新人君に「近づくなよ」って言って離れようとしたんですが、
「いやあ、泳いでるのは狸とかでしょう。もしかしたら侵入者かも」
そう言って、池の縁まで行っちゃったんです。止めようもなかった。
「ああああっ!」新人君が大きな悲鳴を上げ、すぐに走り戻ってきました。

「何だった? 何を見た」 「警備員です。たぶん俺らと同じ制服を着た
 体の大きい人。その人がバタフライ・・・じゃないな。ウナギみたいな泳ぎ方で、
 噴水台の向こうに消えていったんです。あれ、生きた人じゃないですよ」
これ聞いて、もしかしたら亡くなった横田さんじゃないかって思ったんです。
もう水音は聞こえなくなってたんで、よっぽど見にいこうかと思ったんですが
やめておきました。明るくなってからの巡回で調べようと思ってたんです。
でね、その次の巡回時間になる前に、新人君が急に胸が痛いって言い出して。
立ってられない状態だったんで、救急車呼んだんですけど、
病院で緊急手術中に亡くなっちゃったんです。心筋梗塞でした。これで俺、
ぶるっちゃって仕事辞めちゃったんです。その後こっちに出てきまして、
あの公園の警備がどうなったかわかりません。知りたくないですよ。

へねjっしsかおあ



 
 

海の怪談

2016.07.01 (Fri)
7月に入っていよいよ夏らしくというか、本格的に暑いですね。
みなさんは海などに行かれるご予定はあるでしょうか。
自分は昔は遠泳なら数時間はできたんですが、今はぜんぜんダメです。
素潜りもダメになってしまいました。
さて、海の怪談は大きく釣り系と海水浴系にわかれるようです。

釣りだと、後ろから声をかけられたが振り向くとだれもいないとか、
女物の靴が何度も針にかかるとか。
海水浴だと、泳いでる最中に水中から足を引っ張られ、
なんとか浜にたどりついて足を見ると紫色の手形が浮き出ていた・・・

まあこんな話が多いのですが、さすがに単純すぎますよね。
かといってあんまりひねりすぎると現実味がなくなってしまう。
類型的にならないようにするのはなかなか難しいです。
海の話にかぎったことではないのですが、怪談を書くのは、
「ありきたり」と「ありえない」の2つの「あ」の間をさまよってるようなもんです。

漁師村の古いしきたりや因習をからめて書くとか。
漂着物の話もありますよね。海から流れつくものはエビス様と言われて
忌まれていました。エビス様とは、イザナギ・イザナミの2神が産んだものの、
不具であったために海に流して捨てた蛭子(ひるこ)のことです。
自分も漂着物をテーマにして、「持衰の像」という話を書いています。
よろしければご一読ください。  関連記事 『持衰の像』

ただ、現実の海は怖いです。素潜りのできる人ならわかるでしょうが、
沈んだ岩にはびっしりと様々な海藻が生えて揺れ動いている。
海の中では物の色が薄くなって、まるで髪の毛がざわめいているみたいです。
足のたたない場所では何かあっても逃げられないし、
助けを呼んでもすぐには来れない。オカルト的な怖さというより、
死の可能性がすぐ隣にあるんですね。

自分は水難救助の講習を受けたことがあるんですが、
溺れている人を引っぱって安全な場所へ連れて行くのは至難です。
実際、2次災害が起きてしまう可能性は大きいでしょう。
孫や自分の子どもが溺れた家族が助けに行って共倒れになってしまう、
そういうケースはほんとうに気の毒です。

実際にあった事件で、港の護岸から飛び込んだ中学生2人が溺死した
ということがあったんですが、飛び込んだまではいいものの、
船が接岸するための垂直の岸壁ですから、這い上がることができなかった。
泳いで回り込もうにも岸壁は数百m続いていて、
すぐ目の前に陸があってトラックが通ったりするのも見えているのに、
とうとう2人とも力尽きてしまった。

印象に残っってる海の怪談としては、稲川淳二氏の「サーファーの死」
ですね。有名なので、怪談好きならご存知の方も多いでしょう。
サーファー仲間が海にいき一人が暗くなっても戻ってこない。
みなで心配していると、夜遅く警察から連絡があり、
その友人の遺体を収監しているとのこと。身元確認のために警察署へ行くと、
遺体に布がかけてあって、それがなぜか異様に長い。
端をめくると友人の変わり果てた顔が出てきたが、
釈然とせず、警察に布が長い理由を尋ねるとまくってみせた。
友人の足に見ず知らずの婆さんががっしりとしがみついており、
その婆さんは4日前に身投げした人ということだった・・・

これは不思議な話ですよね。なぜ警察は婆さんを引きはがさなかったのか。
それが無理なほど強い力でしがみついていたのか、
それとも証拠保全のためか、そのあたりはわかりませんが。
足に婆さんがしがみついているビジュアルを想像すると、
なんとも不気味な感じがします。怪談というのは、緊密な構成よりも、
この手の感覚に訴えかける部分が怖いんです。

海に関したホラー小説だと、短編はあまり多くはないですね。
小説家になる前に海員をしていた
ウィリアム・H・ホジスンがいくつか書いています。
「夜の声」が有名ですが、ちょっと古い印象があるかもしれません。
映画の『マタンゴ』の原作になった話です。
日本のものでは、鈴木光司氏の『仄暗い水の底から』中の
「夢の島クルーズ」がお薦めです。これはかなり怖い話でした。
まとまらない話になりましたが、今日はこのへんで。