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火車と魍魎と猫

2018.01.04 (Thu)
今日は妖怪談義とします。取り上げるのは「火車(かしゃ)」。
下図は、いつものように鳥山石燕の絵なんですが、
燃えさかる炎につつまれた獣の姿が描かれているものの、
車らしきものは見あたりません。また、詞書による説明もないため詳細は不明ですが、
この獣は猫だと思われます。妖怪の火車は猫に結びついて語られることが多いんです。

「火 車」


ただ、もともと火車が猫の妖怪だったかというと、そうでもないんですね。
鎌倉時代前期の説話集『宇治拾遺物語』には火車が出てきいて、こんな話です。

『薬師寺の別当僧都という人がいて、極楽に行くのみを願って正直に暮らしていた 。
年老いて病み、臨終を迎えるとき、弟子たちに囲まれ、
念仏を唱えながら逝こうとしたが、火の燃えさかる車が迎えに来た。
別当が、「これはどうしたことか」と驚くと、

車についた鬼が「お前がある年、この寺の米を五斗借りて、まだ返さぬから、
その罪で迎えに来たのだ」と言う。別当は、そのくらいのことで
地獄に行くのは嫌だと思い、弟子に命じて米一石を読経料として供えさせた。
それで火車は帰っていき、やがて別当は、
極楽からの迎えが来たと言って息を引き取った。』


地獄や極楽の思想が盛んな頃の話ですので、こんな内容になっているんですが、
ここでは猫の姿はありませんね。また、江戸時代の『新著聞集』には、
増上寺の音誉上人という僧が、極楽から迎えに来た火車に乗って往生する様子が
描かれています。これらから考えると、元々の火車というのは、
地獄または極楽から来る迎えの車のことであって、
運び去るのは、死んだ人の魂であったようです。

『今昔物語』の「火車」
ダウンロード

それが、死んだ人の死体を盗みとる妖怪に変化してしまったんですね。
死体をとる怪物と言えば、西洋ではグールなどと言われますが、
日本では、「魍魎(もうりょう)」と呼ばれていました。
下図は、同じ石燕が描いた魍魎の絵です。
『形、3歳の幼児のごとし。色浅黒く、目赤く、耳長く、髪うるわし。
このんで亡者の肝を食うという。』

この詞書は、前漢代の中国の思想書『淮南子』からそのまま取られたもので、
中国由来の妖怪と考えられます。

「魍 魎」


で、この魍魎が、いつのまにか火車と同一視されるようになったんですね。
江戸時代の根岸鎮衛の随筆『耳袋』には、
『柴田という役人のもとに、一人の忠義者の家来がいたが、
ある晩に「自分は人間ではなく魍魎です。」と言っていとま乞いをした。
柴田が理由を尋ねると、人間の亡骸を奪う役目が回ってきたので、
ある村へ行かなければならないとのことだった。翌日、家来の姿は消えており、
彼の言った村では葬儀の場が急に黒雲で覆われ、
雲が消えると棺の中の亡骸が消えていたという。』

こんな話が出てきますが、ここではまだ猫ではありません。
ただ、猫は魔性の生き物であるという考え方は、日本に古くからありました。
猫が年を経ると、尻尾が二つに分かれ猫又という妖怪になるという話もありますし、
「猫を死人に近づけてはならない」 「猫に死者の体をまたがせてはならない」
「棺桶の上を猫が飛び越えると、棺桶の中の亡骸が起き上がる」
などという言い伝えが残っています。
もしかしたら、死体を猫が食べてしまうなどということが、
実際にあって出てきた話なのかもしれません。

甲府市の龍華院という寺院には、近くに火車が住んでいて、
たびたび死体を盗まれることがあったので、
葬式を2回に分けて行い、1回目は棺の中に石を詰めておいて
火車に襲わせ、そのすきに本当の葬式を出したというような話が残っています。
ここでは、死体を汚されてしまうと極楽に行けないという考え方があるようです。

火車と魍魎と猫が重なった状態


さてさて、そろそろまとめます。
はじめ、平安から鎌倉時代に考えられていた火車は、死者の魂を迎えに来る、
地獄、または極楽からのお使いのことでした。
地獄から迎えに来る車についているのは、地獄の鬼、獄卒です。

それが、魍魎という死体を食べる中国の妖怪と結びつき、
火車は死体を盗みとって食べるものへと変化していきました。
死体を汚されてしまうと極楽へは行けません。
さらに、猫が死体に悪さをするという話が習合して、江戸時代には、
火車は、死体を盗みに来る猫の妖怪ということになったのだと思われます。

水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』の火車 山猫と鬼が混ざったような姿です








霊的巨人 天武天皇

2018.01.03 (Wed)
天武天皇


みなさんは日本の霊的指導者と言えば誰を思い浮かべられるでしょうか。
聖徳太子? 弘法大師 空海? 日蓮上人? 出口王仁三郎?
・・・まあ、いろんな名前があがると思いますが、
自分は天武天皇をあげたいと思います。

兄であった天智天皇は、積極的な施策を次々に打ち出した人ですが、
弟である天武天皇も傑出した人物でした。
これはやはり血筋のなせるわざなんでしょうねえ。
天武天皇といえば、幼名を大海人皇子といい、天智天皇の子、
つまり自分の甥である大友皇子と壬申の乱で戦って勝利し、

飛鳥浄御原(あすかのきよみはら)に都を築いた。
このあたりが一般的な知識ではないかと思います。
ですが、天武天皇についてちょっと深く調べてみると、うーむ、
すごい人だったんだなと改めて唸らされる事実がいろいろ出てくるんです。

まず、天武天皇は道教的な知識に精通していました。
そのことは『日本書紀』にくり返し出てきます。「道教的な知識」と書くと、
仙人などが出てくる世界を思い浮かべられる方が多いでしょうが、
天文学や易学なども含まれる、この当時の最先端科学の
ようなものだったんです。

天武天皇というのは後世の諡(おくりな)であり、本名(和風諡号)は
「天渟中原瀛真人天皇(あまのぬなはらおきのまひとのすめらみこと)」です。
ここに出てくる「瀛」は道教における東方三神山の一つ瀛州(えいしゅう)
のことで、「真人(しんじん)」は優れた道士に冠せられる言葉です。
つまり、名前自体がひじょうに道教的な響きを持ってるんです。

天武天皇は684年、八色の姓(やくさのかばね)という氏姓制度を定めましたが、
その第一位にくるのがやはり「真人(まひと)」です。
『日本書紀』の天武紀の冒頭には、「能天文遁甲」という文が出てきます。
これは「天文と遁甲に精通していた」という意味で、
遁甲は、中国的な一種の占いのことです。

また『日本書紀』には、壬申の乱の最中、ゆくてに暗雲が垂れ込めると、
「則舉燭親秉式占曰」天武天皇みずからが式盤をとって、
戦いの吉凶を占ったことになっています。
式盤とは、下図のような占術のための用具です。

自分は占星術師ですので、ホロスコープというものを使いますが、
式盤の用途はこのホロスコープと似ています。
さらに、日本で初めての占星台をつくったという記述も出てきます。
天武天皇は、われわれ占星術師の大先輩と言っていいかもしれません。

式盤とホロスコープ
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「天皇」という称号についても、天武朝で初めて用いられたとする
学説が有力ですが、これは中国の「皇帝」を意識した道教的な言葉なんです。
道教では、「天皇大帝」という神があり、天の北極(北辰)を神格化したものですが、
日本の「天皇」という称号の起源の有力な候補の一つと考えられています。

上の式盤の画像の中央部分に北斗七星(天の北極)が描かれていて、
自分は、天皇の称号はここから来たものではないかと思います。
さて、このように天武天皇は道教を学んだ当時の最先端知識人だったんですが、
天武天皇のすごいのは、それ以外の宗教、仏教と神道についても
手厚く保護しているところなんですね。

道教の「天皇大帝」


神道について。前にも書きましたが、天照大神という神をつくり出したのは
天武天皇であるという説があります。これは現状では定説であるとは
言い難いですが、自分はかなり有力であると考えています。少なくとも、
伊勢神宮を五十鈴川沿いの現在地に建て、娘の大来皇女を
斎王として送り、式年遷宮を始めたことは確実視されています。

関連記事 『アマテラス 2つの疑惑』

それまで、各豪族がばらばらに行っていた神道的な祭祀を、
天照大神を中心とした国家的な祭祀に引き上げたのが天武天皇なんですね。
『日本書紀』の編纂により、天照大神の子孫が天皇家であることを
周知させるとともに、それを中心として神々の体系を整理し、
各地の神を祀る祭儀を朝廷公式の儀礼の中に取り込んでいったんです。

関連記事 『日本書紀成立の3事情』

さらに、天武天皇は仏教も保護・奨励しました。書写の事業を推進し、
685年には、「家ごとに仏舎を作って礼拝供養せよ」という詔を下し、
これにより全国各地に寺院が建てられていきました。
奈良の薬師寺は、天武天皇が創立者となっています。

仏教を管理し、「国家仏教」として、国家と天皇家のために
祈らせようとした強い意図が、その政策から読みとることができます。
この考え方は天武朝以後も続いて、聖武天皇による
奈良の大仏建立へとつながっていくわけですね。

世界遺産 奈良の薬師寺


さてさて、道教、神道、仏教、この3つを並立して推進した
天武天皇のねらいは、宗教を通じて、日本の霊的な支配を確立させよう
とすることであったと自分は考えます。天武天皇は、701年に制定された
「大宝律令」の前身と考えられる「飛鳥浄御原令(現存していない)」
を定めましたが、国家を治めるにあたって、

法律による支配だけでは限界があることを知っていたんだと思います。
小難しい内容になってしまって申しわけないですが、
このような面から、自分は天武天皇を日本の霊的指導者として
有数の巨人であったと考えているんです。





当ブログの周辺事情

2018.01.03 (Wed)
※ これは裏話ですので、スルーされるのがよいかもしれません。

このブログも、途中1年半ほど中断しましたが、4年目に入りまして、
記事数は1200台に乗っています。
ふり返ってみると、われながらよく書いたなあと思います。
今はオカルト論などが多くなってきていますが、
前はほぼ毎日怖い話を書いていたので、ネタ探しがたいへんだったものの、
最近は、怖い話は3日に1編くらいなのでだいぶ楽になりました。
大病をしましたので、無理をせず続けていければと思っています。

長くブログを続けていますと、外部の方からいろいろなお話をいただきます。
まず、怖い話をまとめて本にしないかというお話があったんですが、
考えた末に、これはお断りさせていただきました。
理由は、とても商用になるレベルのものを書いてはいないからです。
自分の怖い話は、だいたい1話30分程度で書きます。
ガガガガとキーボードを打って、書き飛ばしているといった感じです。

書いた後にいちおう誤字脱字はチェックします(それでもたくさんあります)が、
推敲して書き直すなどのことはしていません。
いいかげんな、と思われるかもしれませんが、
そうでないと、とても毎日は続けられないんです。
書いている途中で「ああこのネタはダメだ」とか「オカルト的に変だ」と
思うこともありますが、それでも最後まで書いてしまいます。
ですから、話にはかなり出来不出来のバラツキがあると思います。

ということで、とても本として出せるようなレベルではないと考えてるんです。
無料のネットだから読んでいただけているのだと思います。
もし出版するとなれば、1つの話に1週間近くかかってしまうでしょうし、
現状、自分にはそんな時間はとてもありません。

それから、ネットラジオの番組で朗読させてほしいというお話があり、
これは喜んで了承させていただきました。
自分としては、ネットに書いたものについては著作権はないものと考えています。
まあこれは自分だけに関してで、他の方について言ってるわけではありません。

どのみち、「2ちゃんねる」に書いた最初のほうの話は、
あちこちのまとめサイトに転載されたり、youtubeで朗読されたりしていますので、
いまさらという感じもあるんですね。それに、まとめサイトからは
「反則企画」と称して、自分も逆引用させていただいてますし。

それと、怖い話というのは広まってナンボのものだと思うんです。
「くねくね」や「八尺様」、都市伝説などもそうですが、
この手のものは、一種のミームとして存在しているのではないでしょうか。
いろんな媒体に乗って広まっていくのは願ってもないことです。
ですので、さすがに無断で転載されるのは困りますが、
連絡していただければ基本的に問題はありません。

あと、ついこの間もネットコンテンツとして配信したいというお話があり、
上記のように、それ自体はかまわないんですが、
報酬を支払いますと言われるのが非常に困るんですね。そうなると、
どうしても一定の読者に向けて、気に入っていただけるような
内容を書くことになってしまいます。
そうすると、ホント仕事と同じになっちゃいますからねえ。

自分としては、このブログはストレスを発散する場としてもあるんです。
仕事で普段からあれこれと制約の多い文章を書いてますので、
好きな題材を選んで、文章の体裁を気にせずに書けるというのは、
ものすごく気持ちがいいんですね。その利点を失いたくはありません。
上記の申し出に対しては、自分のブログを利用されるのはかまいませんが、
報酬は必要ありません、と返答したんです。

それと、自分にしてみればこのブログは趣味ですので、
飽きてきてつまらなくなったらスパッとやめちゃうと思います。
最近は体調の面も不安ですし、その自由も確保しておきたいんです。
ということで、長々と書いてしまいましたが、
以上のような事情をお察しいただければありがたいです。









目を洗う話

2018.01.02 (Tue)
デザインの専門学校に通っています。よろしくお願いします。
ちょうど1年前、去年のお正月2日のことです。
彼といっしょに初詣に行ったんです。いえ、有名な神社ではありません。
彼が人混みは嫌だって言ったので、お参りしたのは近くにある護国神社でした。
ファミレスで食事をして、9時ころに出かけたんです。
そこはほんとに普通の神社なので、夜店なんかも出てないし、
境内に篝火は焚かれていましたが、何か特別なことをしてるわけでもなく、
それでも参拝の人はそこそこ途切れることなく続いてました。
拝殿にお参りして破魔矢を買い、さて帰ろうかというときに、
篝火の上のほうに黒い大きな風船が浮かんでいるのが目に入りました。
そうですね、地上から3mくらいの高さでしょうか。

風船は直径50cmくらいでまんまる。そのときは、
子どもの持っていたものが手を離れて飛んでるんだと思ったんです。
彼に「ほら、あれ」と言って指差したんですが、
「え、何?」って、よくわかっていない様子でした。それで、黒い色なので、
闇に溶け込んで見えないんだろうと思って、「大きな風船が浮かんでる」
もう一度指差しました。そしたら風船がくるっと一回転して、
真ん中に目がついてたんです。人間の何倍もあるような大きな目でした。
その目が指差している私のほうを見て、すごい速さで近づいてきたんです。
あっという間のことでよけられませんでした。私の頭にあたったと思いました。
その瞬間、パーッと黒い霧のようなものが私のまわりをつつんで、
あたりが見えなくなりました。怖くなってしゃがみ込むと、

「ほら、どうしたん?」彼が言って腕をとって引き上げてくれたんです。
「風船、黒い風船が飛んできて頭にあたった」そう言うと、
「えー、ずっと見てたけど、風船なんてなかったよ。
 急に目をつぶってしゃがんだから、気分が悪いのかと思ったけど」
こんな具合で、やっぱり彼には見えてなかったんです。
まあでも、どこか痛いわけでもなく服も汚れたりしてなかったので、
そのときはそれで終わったんです・・・
ただ、次の日の朝に起きたらまぶたが腫れてました。両方ともです。
鏡で見たら白目のところが赤くなってまして、病院に行かなきゃって思ったんですが、
痛みはなかったし、その日の午後には治ったんですよ。
その後はずっとなにもなかったので、このことは忘れてしまってました。

それから3ヶ月くらいして、学校の帰り、電車通学してる駅のホームにいました。
3時半ころだったと思います。通勤の時間ではないので人はまばらでした。
私は立って電車が来るのを待ってたんですが、急にキリキリという感じで、
目のまわりが痛くなってきたんです。まぶたを触ってみたら熱をもってました。
何度も目をしばたいていると、ベンチに座っていた男性が立ち上がりました。
30代くらいで、カジュアルな服装をしてたので、
サラリーマンの人ではないと思いました。
それで、その人はつかつかと私の立っているほうに歩いてきて、
すぐ近くで立ち止まったんです。何か用事なんだろうか? そう思ってると、
その人は、「そうですか、やっぱりそうですね。わかりました。そうします」
こんなことを早口で言い始めたんです。「あの、何でしょうか?」

私はそう聞き返しましたが、その人は「はい、そうします。今すぐします」と、
何度もうなづきながらくり返しました。
そのとき、視線が私の頭の上のほうを向いてることに気がついたんです。
え、何?どういうこと? と思ったとき、
電車がホームに入るアナウンスがありました。
それからのことは思い出したくないんですが、
その人はこくんと大きくうなづくと、ホームを線路のほうに走り出して・・・
電車の前に飛び込んじゃったんです・・・思わず目をそらしたんですが、
ぱっと赤い霧のようなものが散るのを見てしまいました。
ええ、自殺しちゃったんです。私は呆然としてましたが、
もう電車に乗る気にはなれず、長時間かけて自分の部屋まで歩いて帰りました。

わけがわからなかったです。何で私に話しかけてきたのか?
ノイローゼだったのか? とにかくショックで、しばらく落ち込んでいたんです。
いまだにその駅には入れません。不便ですけど通学はバスに変えています。
あ、目のほうの痛みはいつのまにかなくなっていました。
・・・これが1回目だったんですが、2回目はもっとひどいことでした。
駅のことがあってから2ヶ月後です。夏に入ってやっとショックも薄れ、
彼といっしょにビルの屋上のビアガーデンにいました。
2人であれこれおしゃべりしていたら、また目が痛みだしたんです。
ええ、すぐに駅でのことを思い出しましたが、そのときよりも強い痛みでした。
「あ、目が痛い」彼にそう言ったら、彼は背筋を伸ばして私の頭上を見てたんです。
それて「はい、そうですよね。わかりました。そうします」って・・・

あのときと同じだ、どうしよう・・・でも、どうしたらいいかわかりませんでした。
彼がテーブルから立ち上がって走り出しました。そして屋上の端まで行き、
かなりの高さの手すりを乗りこえて、下に飛び降りてしまったんです。
ええ、命は助かりました。そこは3階だったんですが、
1階のアーケードにひっかかってから植え込みに落ちたのが幸いしたというか、
両足の骨折で済んだんです。すぐに救急車が呼ばれ、私がついて病院に行きました。
右足のほうが複雑骨折だったので、その日のうちに手術になりました。
これは手術の2日後に彼から聞いた話です。
「あのときビールを飲んでたら、名前を呼ばれたと思ったんだよ。
 で、見たらお前の頭の上に黒いボールが浮かんでた。
 その真ん中に大きな目が一つついてて、その目を見ていると、

 頭の中に声が響いてきたんだ。飛び降りよう、ここから飛び降りようって。
 それを聞いているうちに、どうしてもそうしなきゃいけないと思って、
 走り出してしまった。屋上の手すりを乗り越えたときには、
 もう、嬉しくて嬉しくてたまらない気持ちで・・・」
はい、ボールというのは私が初詣で見た風船と同じものなんだと思います。
それと、あの駅で自殺しちゃった人も、やっぱり風船を見ちゃったんだろうとも。
人に死ぬことを命じる風船が私の頭の上にいるんだ・・・
これ、ものすごく怖ろしいことですよね。どうしたらいいかわからなかったですが、
病院のベッドで彼が、「あの護国神社の神主さんに相談してみたらどうだろう」
って言ったんです。それで、その日の午後に護国神社の社務所に行きました。
宮司さんにこれまでのことを話すと、宮司さんは黙って聞いてくださってましたが、

「うーん、お話は信じますよ。ここで悪いものを拾ってしまったんですかねえ。
 初詣などの際にはいろんな人がさまざまな願い事をするので、
 それを食べにくる妖物がいるなどの話も聞いたことはあります。
 うちでお祓いをしてもいいんですが、護国神社なのでお祀りされているのは。
 戦死された英霊の方々ですから・・・ともかく責任を感じますので、
 他の神社の神職の方々にも相談して方法を考えてみましょう」こうおっしゃられ、
その後、目の病に霊験があらたかだという他の市の神社を紹介していただいたんです。
ええ、そちらに行きましたら、神職の方々が待っていてくださって、
眼病に効くという湧き水で目を洗わされました。
そしたら水につけたとたんに、目がごろんごろんとまぶたの中で転がる感じがして、
涙がとめどなく出てきました。1時間以上も止まらなかったんです。

それから特別に本殿に上がらせていただいて、念入りにお祓いをしていただきました。
いえ、お祓いの最中には特に変わったことはなかったです。
このときから半年が過ぎてますが、おかしなことは起きていませんので、
あの黒い風船のようなものはいなくなってしまったんだと思います。
あんな怖ろしいことはもうこりごりですから。
彼のほうは、長い間松葉杖をついていたんですが、今はほとんど治っています。
それにしても、あれはいったい何だったんでしょうか。宮司さんのおっしゃってたように、
よくない願いを食べにきた妖怪だったのか、私にはわかりませんが、
何か目に関係があるものだったのは確かだと思います。それにしても、
神社の境内の中だといっても安心はできないんですね。・・・私のせいではないとしても、
駅で亡くなった方には申しわけないような気持ちがしています。



 
 





新年のご挨拶

2018.01.01 (Mon)


みなさん、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
・・・と、おめでたい年の始めに怪談を書くのもなんですので、
これで終わろうと思ったんですが、それも愛想がないと思い返して、
少しだけオカルト界を展望してみたいと思います。

・心霊・・・オカルト界全体が低調な中にあって、
心霊分野はそこそこ盛り上がりがっていたと思いますが、昨年7月、
残念ながら、やらせではないかと疑われる事件が発生してしまいました。
ご存じの方も多いと思いますが、TBS系列の「世界の怖い夜!」という番組で、
心霊写真として紹介された画像に対して、
写真の持ち主が「写真をねつ造、合成された」と訴えたんですね。

また、この番組で「写真が撮影された現場で事故死した女性の霊」
と鑑定した心霊研究家の池田武央氏は自身のブログで、
「偽造されたものに霊的なものが宿ることが増えている」
と釈明。後に記事を消去しています。

うーん、まあ自分はこれについてあれこれ論評する立場にはないですけど、
またこれで、「心霊=うさんくさいもの」
というイメージが上書きされてしまったのは残念です。
他局でも、この手の番組がやりにくくなったのは間違いないでしょう。

・UFO・・・これは火が消えたようになってしまいました。
やはり矢追純一氏のように先に立ってひっぱっていく存在がないとダメなんでしょうか。
ただこの分野は、日本はダメですけど、世界的にはそうでもありません。
youtubeなどの動画サイトには、次々と世界各地からの投稿があげられています。
日本のUFOフアンの人にも頑張って観測してほしいところですね。

・UMA・・・世界的に低調です。
UMAの場合、最大の問題は「続報がない」ということだと思っています。
○○国の△△海岸に不可思議な生物の死体が流れ着いた、
地元では組織のDNA解析を検討中・・・と、このあたりまで報道されて、
そこで情報がぱったりと途絶えてしまうんですね。
これがずっとくり返されるばかりなので、さすがにUMAフアンも飽きてきています。
報道したメディアは、たとえそれがウバザメだったとわかっても、
最後まで責任を持って伝えてほしいなあと思います。

・超能力・・・これもあんまり新しい話題がないです。
インドのサイババが亡くなって以来、有名な人も出てきていないですし、
「ソ連政府が認めた驚異の超能力者」みたいな神秘性も薄れてきています。
あと、最近のマジックってすごいですよね。youtubeでセロの動画などを見ても、
手品というより魔法としか思えないようなことをやっています。
あれを見てしまった後にスプーン曲げなどを見ても、
どうしてもインパクトに欠けるかもしれません。

・陰謀論・・・これはけっこう流行ってる気がします。
フリーメイソンとかイルミナティとか、
そういうことを言う人が以前より増えたように思えますが、
これはアメリカのポップス歌手レディ・ガガの影響が大きいかもしれません。

・予言・予知・・・これはどうでしょう。
東日本大震災以来、地震の予言をする人がだいぶ増えたんですが、
まったく当たらないので、最近やっと下火になってきた気がします。
ただ、1999年に終わったと思われていた
「ノストラダムスの大予言」が、このところ復活してきていますね。
「ノストラダムス 2018」で検索すると、たくさんのサイトが出てきます。

・古代文明、超科学、オーパーツなど
まあ、もともとそんなに盛んな分野ではありません。
一部に根強いフアンがいて細々と続いているといった感じです。
あとそうですね、UFO分野と重なる部分があるのかもしれませんが、
「NASAが発表した火星の画像の中に人工物が写っている、生物がいる」みたいな話は
海外ではそれなりに盛り上がっていますね。

さてさて、以上のようにオカルト界全体に大きな動きは見られませんが、
日本の場合は特殊な事情があるんじゃないかと思います。
江原啓之氏に代表されるスピリチュアル界が、
オカルト分野のかなりの部分を取り込んでいる気がするんですね。
「チャネラー」とか「サイコメトリー」「幽体離脱」など、
オカルト分野のものだったのが、新たにスピリチュアルの衣を着て説明されています。
これも時代の流れということなんでしょうねえ。

関連記事 『「サイコメトリー」って何?』