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黒いお堂と夕方の辻の話

2018.12.31 (Mon)
これ、だいぶ昔のことなんですけど、それでもいいでしょうか。
じゃあ、話していきます。今から40年ほど前のことです。
私は京都の大学の2年生でした。あ、こんなことを言うと齢がばれてしまいますね。
その頃の友達で、仮名にしますが、直美って子がいたんです。
同じ京都市内出身で、高校の同級生だったんです。あの当時は、
まだ本格的なバブル期には入ってはいませんでしたが、かなり派手な時代だった
と思います。私も直美も学業そっちのけで、毎日遊び暮らしていたようなものです。
今から考えると、そんな時代が不幸を呼び込んだのかもしれません。
ああ、時代のせいにしてはいけないですね。私にも直美にも、
つき合ってた人がいて、直美の彼は別の大学の3年生でした。カップル同士で、
あちこちに遊びに行ったりしてたんです。

背が高くかっこいい人でした。直美本人も美人でしたから、
とてもお似合いだったんですが・・・その彼が、夏休み明けに急死したんです。
自動車の自損事故でした。休み中に免許を取って、これでどこでも自由に出かけられるぞ、
って張り切ってたんですが、家の車を持ち出して高速道路で事故を起こしたんです。
ふつうはお葬式で、棺に顔の見える窓が開いてますよね。
ですが、それもできないほど、事故の状況はひどかったみたいです。
はい、直美の悲嘆はたいへんなもので、泣いて泣いて、ずっと泣き続けてる状態でした。
それで、大学に出てこなくなっちゃったんです。直美は実家からの通いでしたから、
何度も訪れてみたんですけど、やつれた顔のお母さんが出てきて、
「誰にも会いたくないって部屋に閉じこもってるの。
 せっかく心配して来てくれたのに、ごめんね」そんな感じだったんです。

今になって考えれば、時間がいちばんの薬だったのかもしれません。
なんであんなことをしてしまったのか、ただ後悔があるばかりです。
最初に言わなかったんですが、私の父は京都のある神社で神職をしていました。
観光案内に載るような大きなところではないんですが、
副業などもせず暮らしていけたんです。ただ、人手が足りず、
母も神社のお務めを手つだうことが多く、私が小さい頃はよく連れていかれて、
境内で遊んで過ごすしたりしてました。そんな中で、出入りの業者さんから、
ある噂を聞いたことを思い出したんです。はい、こんな話です。
京都市内からやや外れたところに、小さなお堂があって、一人の老人がそこを守っている。
神社なのか、お寺なのかもわからない、真っ黒なお堂。でも、そこを訪れる人は多い。
なぜなら、亡くなった人にもう一度だけ会う方法を教えてくれるから。

もちろん、最初はそんなことありえないと思っていました。ですが、
かなりの年月の間に、同じ内容を別の3人の人が話しているのを聞いたんです。
ただ、そのお堂のことを言うときは、みな声をひそめてましたから、
実際にあるのかもしれない。でも、よくないことなんだろうなって、思ってました。
だから、父や母にも尋ねたりはしなかったんです。はい、
引きこもってる直美にそのことを知らせれば、少しは希望が持てるんじゃないかという、
浅はかな考えで。そのお堂のさがすのは大変でした。今とは違って、
インターネットなどない時代ですし、私の彼にも手伝ってもらって、
京都の外れのほうをあちこち歩きまわり、土産物店などに入って情報を集めました。
それで、場所がわかるまでに半月ほどかかったんです。田んぼの中に、
島のように小さな森になっている場所があり、その中に建っている真っ黒なお堂。

鳥居もありませんし、狛犬などもいない。その横に、つぶれかけた小屋のような建物があり、
堂守の人が住んでいるようでした。直美の家を訪ねても、やはり出てこないので、
夜の12時ころに行ってみると、2階の部屋に明かりがついていたので、
道路から窓に向かって小石を投げました。2つ3つぶつかったところで、
窓が開いて「誰?」という声が聞こえ、私は「○○、直美、出てきてよ。
 亡くなった△△君にもう一度会えるかもしれない」こう叫んだんです。
ややあって、玄関からジャージ姿で出てきた直美は、髪はぼさぼさで、
痩せて顔中吹き出物だらけでした。また引っ込んでしまいそうだったので、
急いでそのお堂の話をしたら、暗い顔がぱっと輝いたんです。その週の土曜日、
私と私の彼、直美の3人で、お堂を訪ねてみることにしたんです。
もう季節は秋に入っていました。田んぼの収穫も終わって、

刈り取った稲わらが干してある中を、3人で歩いてそのお堂に行きました。
お堂の扉は固くしまってあり、脇にある小屋の戸を叩いて声をかけると、
しばらく間があってから、「ああ、今行くが」としわがれた声が聞こえました。
出てきたのは、黒い作務衣を着た小さなおじいさんだったんですが・・・
一目見て悲鳴を上げそうになりました。片方の目がなかったんです。目がなくても、
義眼を入れたりしてるのが普通だと思いますが、そうじゃなく、黒い穴になってたんです。
まぶたもなかったのかもしれません。それと、右手が肩からありませんでした。
これは後になって気がついたんですが、左手の指も何本かなかったです。
彼が、その堂守の人に事情を話してくれました。堂守の人は黙って聞いてましたが、
こんな内容をぼそぼそと話し始めました。「亡くなった者に会うことはできるが、
 たった一度だけだぞ、しかも代償がいる」 「代償って、どういうことですか」

「自分の身体を犠牲にして、その者の姿を見ることはわずかな時間。
 けっして話しをしてはならない。それだけのことなのだが」 そのときに直美が、
「会うだけでもいいです。お願いします。どんな代償を払えばいいんですか」
すがるような声で聞き、堂守の人は、直美の姿をためすがめつ見て、
「あんたならまだ若いから、髪を切って捧げるだけでいいだろう」こう言いました。
私が、「どうして話をしてはいけないんえすか」と聞くと、
「人の魂は、和魂と荒魂からなっているが、呼び戻すことができるのは荒魂だけだ」
こういう答えが返ってきたんです。はい、私は神社の生まれなので、
意味はわかりました。荒魂は、その人の荒々しい、暗く怖ろしい面を表したものです。
堂守の人は、「本気かどうか、この人と話をするから、あんたらは帰りなさい」
強い調子でこう告げられたんです。直美が「大丈夫」と言うので、

私と彼は、直美を残して帰ったんです。その夜遅く、直美から電話がありました。
「髪を切ってお堂に捧げた。それから精進潔斎して薬草のお茶も飲んだ。
 来週の土曜日の夕方に、○○橋の辻で彼と会えるんだって。
 これからまだ準備しなきゃならないことがあるから、
 それまで連絡できないかもしれないけど、怖いところもあるから、そのときに来て」
こういう内容で、不思議な話だと思いました。○○橋は有名な観光地で、
今の時期は夕方でも人通りが多いんです。そんなところで、
亡くなった人に会えるものなのか。それと、私たちが見にいっても大丈夫なんだろうかとも。
土曜日になりました。それまで直美との連絡はつきませんでした。
夕方といっても時間幅は広いので、私と彼は4時前から○○橋のたもとで待っていました。
やはり、観光客の家族連れや、修学旅行の生徒がたくさん歩いていました。

2時間ほどたって、橋の向こうから直美が歩いてくるのが見えました。
一番お気に入りの服を着て、髪は少年に見えるほど短く切ってたんです。
私と彼は声をかけずに見ていましたが、何かあったらすぐ駈け寄れる距離でした。
直美は橋を渡り終わり、きょろきょろ人波の中を見ていましたが、
急に顔を輝かせ、歩道に駆け寄っていきました。でも、そこには誰もいなかったんです。
直美は立ち止まり、さもうれしそうに何か話し出したんです。「あっ?」と思いました。
話すことは、禁じられているはずだから・・・それからすぐ、直美はゆっくりと
うずくまるようにして倒れたんです。私と彼が駆け寄ると、顔を涙でびしょびしょにして、
意識がなかったんです。近くの店から救急車を呼び、直美の実家にも連絡しました。
病院でもなかなか意識は戻らなかったんですが、検査で脳などの異常はありませんでした。
直美の両親が病院に着いて1時間くらいして、直美は気がついたんですが、

私の顔を見るなり、ベッド脇にあるものを投げつけてきて「出ていって!出ていけ!」
って叫んだんです。・・・ここから先のことは話したくはないんですが、
話さないといけませんよね。直美は、前よりもひどく引きこもってしまったんです。
お母さんから連絡があり、「あなたのことをとても恨んでるみたいだから、
 見舞いにはこないで。どういうことか何も話してくれないの、ごめんね」ということでした。
それからまた1週間が過ぎ、夜遅く、家の電話が鳴って、出てみると直美でした。
私が「どうしてるの今、大丈夫?」と聞くと、しばらく沈黙があり、
「彼と話した・・・彼は、私よりあんたとつき合ったほうがよかったって言ってた・・・」
こう、暗い、暗い、地獄の底から響くような声が聞こえて、そこで電話は切れたんです。
「ちょっと待って、直美、直美!?」 その翌日の夕方、直美がまたあの橋の辻で倒れた
という話を聞きました。前と違ったのは、片方の目を自分でくり抜いていたことです。


 




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インドの骨の話

2018.12.29 (Sat)
インド・ビハール州の鉄道警察は11月下旬、サラン地区にある
チャプラ・ジャンクション駅である男性を逮捕した。鉄道警察では酒類の密輸を
定期的にチェックしており、それに引っ掛かったのが、
サンジェイ・プラサード容疑者だったのだが、彼は酒の密輸で捕まったわけではない。

プラサード容疑者が密輸していたのはなんと!大量の人骨だったのだ。
しかも大量に。警察によるとプラサード容疑者は、ブータンに人骨を密輸しようと
していたことを認めた。人骨はインド北部のウッタル・プラデーシュ州バレーリーで
購入したもので、黒魔術とオカルトの儀式に使用される予定だった。
(カラパイア)

「India Times」から、押収された頭蓋骨
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今回はこのお題でいきます。自分はオカルト研究をしているので、
その関係のニュースはできるだけチェックするようにしているんですが、
これはちょっと意表をつかれました。特に「ブータンで黒魔術」というところです。
ただまあ、考えてみると、いろいろ納得できる点があります。

まず、ニュースをもっと詳しくみてみましょう。プラサード容疑者がブータンに人骨を
密輸したのはこれが初めてではなく、過去に2度ほど運んだ経歴があるようです。
押収された人骨は、頭蓋骨16個、大腿骨34個。なるほどねえ。
これらは容疑者が集めたのではなく、インド北部のウッタル・プラデーシュ州の都市、
バレーリーで購入したもののようです。

では、このニュースを3つの点から読み解いてみましょう。
どれからいきましょうか。まず一つめ、もともとインドでは人骨が売買されていたこと。
インドは18世紀に、イギリスの東インド会社が設立され、
実質的な植民地になりましたが、そのころからすでに、インドヨーロッパの
人骨輸出ルートがあったと考えられています。

その人骨は何に使われたかというと、最も需要があったのは骨格標本です。
ヨーロッパの各大学には医学部があり、解剖学の講義が行われていましたが、
そこで骨格標本は必需品でした。あとは美術学校がデッサンの授業のために買うとか、
貴族が館に展示するためとか、用途はいろいろですが、秘密結社が流行していた
時代なので、もしかしたら黒魔術の儀式に使用されたものもあるのかもしれません。

骨格標本
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標本は幼児から大人のものまでそろっており、大学のあるような都市には、
骨を油抜きして漂白する職人がおり、腕が良ければかなりの収入を得ていました。
この他、死体の皮膚をなめす職人なんかもいたんですね。人間の皮膚は、
本の装丁に使われたり、死刑執行記録を書くための用紙になったりしました。

本になるのは、主に、故人が「自分の皮で本をつくって家族に渡してくれ」
などと遺言した場合ですね。骨格標本にはランクがあり、
体格のよい一人の人物の全身骨格がAランク。複数の遺体からパーツを集め、
つなぎ合わせてつくられたのがBランクです。

骨格標本が壊れてしまった場合のパーツも保管されていました。
この当時、紙パルプで人工的に骨格標本をつくる技術もあったんですが、
それは精度が低い上に、値段も割高になってしまいます。ですから、
流通していたのは本物の人骨で、多くはインド人のものでした。

日本でも、明治時代に創設された大学には、ドイツから輸入された人骨標本が
あるという話は聞きますね。2つめ、人骨はインドでどうやって集められたか。
これもほぼ推測できます。ウッタル・プラデーシュ州というのは、
ブータンとの国境近くなんですが、この州には、ガンジス川沿いに位置し、
ヒンドゥー教の一大聖地として有名なヴァラナシがありますよね。

ヴァラナシのバーニングガート
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ヴァラナシは「死に出の地」としても知られ、ヴァラナシのガンガー(ガンジス川)
近くで死んだ者は、輪廻から解脱できると考えられています。
ですから、インド各地から、多い日は100体近い遺体が運び込まれます。
ガートという傾斜した階段状の沐浴場があるんですが、
火葬場としての役割を果たしていて、死者はここでガンガーに浸されたのち、

ガートで焼かれ、遺灰はガンガーへ流されます。ヴァラナシに行かれた方は、
目にされたんじゃないでしょうか。ただし、乳児や妊婦、
それと毒蛇に噛まれて死んだ者の遺体は焼くことを禁じられていて、
布でくるんで重しをつけ、ガンガーに沈められます。おそらく、
上記ニュースの骨は、そこで焼け残ったりして放置されていたものでしょう。

さて、3つめ、それらの骨は、いったいブータンで何に使われたんでしょうか。
「黒魔術」ということはないですよね。これは、西洋の反キリスト教的な概念です。
ブータンというと、「ほほえみの国」とか「国民の幸福度世界一」とか、
そういうイメージがあります。このあいだ、若い国王が来日してたんじゃないかな。

ブータンの僧院
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ブータンの宗教は、「チベット仏教」です。チベット仏教といえば、
ダライ・ラマが何度も輪廻転生して衆生を導くことが有名ですが、
たしかブータンにも化身ラマがいたはずです。
では、仏教国であるブータンで、人骨は何に使われたのか。

押収されたのは、頭蓋骨と大腿骨ですよね。ずばり、大腿骨は「骨笛」でしょう。
仏教儀礼には骨笛が使われていたはずです。頭蓋骨も同じく、
仏教儀礼での飲み物の器です。ブータンにいくつもある僧院では、
これらはたいへん需要が高いんですね。

あとは、骨の粉末を薬として用いてたなどのこともあるかもしれません。
それにしても、インドで解脱を求めて亡くなったヒンドゥー教徒の骨が、
ブータンでの仏教儀式に使用されるというのは、
皮肉と言えばいいのか、よくわからないですねえ。

骨笛
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ちなみに、頭蓋骨には特別な魔力があるとして、西洋でも東洋でも、
宗教儀式に使われています。日本では、弾圧されて消滅した「真言立川流」で、
髑髏本尊とされたことは有名ですが、それが実際にあったことかどうかは、
はっきりとはわかりません。後世の伝説かもしれないです。

さてさて、ということで、素人の自分でもこれくらいわかるんですが、
オカルトの専門サイトが、「ブータンで黒魔術」は変じゃないでしょうか。
それとも、ブータンに遠慮してわざとぼかしてあるんでしょうかね。
その可能性もあるのかな。では、今回はこのへんで。

ジュルジュ・ド・ラトーゥル『懺悔するマグダラのマリア』
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捕鯨問題について

2018.12.28 (Fri)
各報道によると、菅官房長官は26日、日本が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することを
正式に発表した。年内に加盟・脱退手続きの窓口となる寄託国の米国に脱退を通告する。
日本は来年7月から、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)で、
約30年ぶりに商業捕鯨を再開させる方針だ。

IWCは日本などの捕鯨国とオーストラリアなどの反捕鯨国との間で、
長きにわたって意見の対立が続いており、すでに反捕鯨国からは日本の決断に
批判の声が相次いでいる。オーストラリアのプライス環境相は、「あらゆる形の商業捕鯨と、
いわゆる『調査捕鯨』に反対する」と表明している。
(tokana)

歴史的に古くから行われてきた日本の捕鯨
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今回はこういうお題でいきます。当ブログはオカルトブログですので、
この手の時事的な話題を取り上げるのは珍しいんですが、
この問題はさまざまな観点を含んでおり、自分はたいへん興味深く感じています。
ただし、内容は一方的な意見文にするつもりはありません。

まず、自分が考えることのひとつ目は、日本が捕鯨を行うことの是非と、
国際捕鯨委員会を脱退することの是非は、
ある程度分けて考えたほうがいいということです。
脱退にあたっての日本の言い分は、「IWCが組織として機能不全に陥っており、
まともな議論が成り立たない」というものですが、これはほぼ事実です。

もともと、IWCは1948年、アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリアなど、
当時の捕鯨国15ヶ国によって創設されました。その目的は、
資源管理をしながらも鯨を有効利用していくためと、国際捕鯨取締条約に
記載されています。日本がこれに加盟したのは1951年でした。

ところが、各国で環境保護、動物愛護の意識が高まるにつれ、上記の設立国は
捕鯨反対に転じ、また、歴史的に捕鯨とはほとんど関係がない国が次々に参加してきて、
現在は90ヶ国あまりに増えています。その中で、日本がいくら学術論文を提出しても
内容は十分に検討されず、数の論理による多数決で、日本の商業捕鯨は感情的に
否定されてきました。ここまでのところも事実として間違いないと思います。

ぶっちゃけた話をすれば、国際機関というのは、どうやっても腐敗する構造になっています。
国際オリンピック委員会(IOC)なんかがいい例だと思いますが、接待や賄賂が飛び交い、
クリーンとはほど遠い状況です。IWCも、そこにある利権をめあてに参加して
いる国が多数存在する現状で、組織として機能しないのであれば、
脱退するのが悪いとは自分は思いません。どのみち自由参加なんですから。



さて、ではIWCを脱退した日本は、日本近海(排他的経済水域内)で、捕鯨を続ける
べきなんでしょうか。これは難しいですね。いろんな意見をそれぞれ見ていきましょうか。
「クジラは絶滅危惧種であり、保護対象であるべきだ」 たしかに、
すべてのクジラ類が絶滅を心配される状況にあれば、これは当然保護すべきです。

しかし、多数あるクジラの種でも、減っているものと増えているものがあります。
そして日本の主張は、増えているものだけを捕るということです。
まあ、日本の調査が間違っている可能性もあるでしょうが、
日本に、ある特定種のクジラを絶滅させようという意図がないのも確かです。

「クジラは知能が高い動物で、殺すのは倫理的に間違っている」
この意見は欧米でよく聞かれますよね。クジラは鳴き声を使って群れの中で
意思疎通をしていますし、動物の中で知能が高いほうなのは間違いありません。
ですが、動物の知能を厳密に測る方法というのはないんですね。
動物に知能検査を受けさせるわけにいきませんし、それ以外の方法、

例えば、体の体積に占める脳の割合とか、脳のニューロンのつながり方
などを調べたとしても、それで絶対的な知能がわかるというエビデンスはありません。
自分は、クジラよりチンパンジーのほうが知能は高いと考えますし、
もしかしたら、カラスやヨウムのほうが高い可能性もあります(笑)。
しかもこの議論、バカは死んでもいいと言ってるようなもんじゃないですか。

「クジラ肉の需要は少ないし、味も不味い」 需要が少ないのは流通が少なかった
からでしょう。安く出回るようになれば、買う人がいるかもしれません。
そこは市場原理というものがありますから、本当に需要がないのなら、
クジラ肉は売れず、採算が合わなくて捕鯨も取りやめになると思われます。
生産者に補助金が出るという話もありますが、それには反対です。

あと、味については、絶対基準というものはないので、
個人の好き好きなんじゃないでしょうか。現在、ジビエブームと言われますね。
自分は、イノシシやシカの肉はあまり美味しいと思わないので、
積極的に食べることはしませんが、食べる人を非難するつもりもありません。
もし、クジラ肉が多くの人にとって不味いのなら、売れなくなって終わるだけでしょう。

「日本がクジラを捕ることで、国際的なイメージが悪くなり、国益を損なう」
これは間違いなくあるでしょう。「日本は野蛮な国」というレッテルを貼られて、
いいことはあまりないと思われます。ただ、そういう問題は「死刑廃止」など、
他にもいろいろあるんですよね。日本が死刑を行っていることで、
批判している国は、特にヨーロッパに多くあります。

隣の韓国は、死刑判決自体はあるものの、EUとの関係から執行を停止して
長い期間がたっています。ですが、韓国内では死刑存続を求める声は多いんです。
自分は、問題によっては、他国の意見に左右されず自国だけで決めても
いいんじじゃないかと考えています。それが国家のアイデンティティなわけだし、
世界がすべて同じ法律や慣習で動くなら、国家なんていらないことになってしまいます。
問題は、はたして捕鯨が、日本が意地を張るのにふさわしいものなのかどうか?

さてさて、これ以外の論点も山ほどあるんですが、とうていすべては書ききれません。
自分の考えは、「捕鯨存続かどうか」で国民投票をしてみたら面白いんじゃ
ないということです。もしこれが、憲法改正の国民投票だったら、
右派左派入り乱れて大騒ぎになるでしょう。あちこちでデモが起こって、かなり収拾の
つかない事態が起きそうですが、さすがにクジラでそれはないと思われます。

で、投票の結果に政府はすんなりしたがう。これでどうでしょう。
あと、これは皮肉なんですが、もしも絶滅が心配されるシロナガスクジラから、
寿命を延ばすとか、画期的な若返りの薬効成分が発見されたらどうでしょう?
欧米諸国は、それでも捕らないと言い続けることができるのか、
それとも養殖でもするのか。人間性が試されますね(笑)。

最後に、メルヴィルの小説『白鯨』に、油を絞って廃棄されるマッコウクジラの尾から、
一等航海士スターバックが、自分だけのために一片の新鮮な肉を切り取り、
ステーキにして宝物のように食べる場面があるんですよね。
じつに印象深いシーンだったと思います。では、今回はこのへんで。

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「潜水空母」って何?

2018.12.26 (Wed)
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今回はこういうお題でいきます。現在、日本の自衛隊は、
公式には、航空母艦を所持していないことになっています。
これは、憲法の規定によって、日本は交戦権を持たず、自衛隊は、
専守防衛を目的とするものであるため、航空機を遠方まで運用する
必要性がないと解釈されてきたためです。

ただし、2000年代に入って、「いずも型」 「ひゅうが型」などの、
「ヘリコプター搭載護衛艦 DDH」、通称「ヘリ空母」を開発・運用しています。
いずも型のほうが排水量が大きく、19500 tで、
戦闘ヘリ14機を搭載することができます。また、ひゅうが型は11機です。

これらの艦艇は、将来的には、わずかの改造で航空機が搭載可能であるという
議論がありますね。たしかに、「F-35B ライトニングII」戦闘機は、
垂直離陸が可能なため、カタパルトなどの航空機発射機能を持たなくても、
搭載することができます。この議論のゆくえはわかりませんが、
もしそうなれば、日本の空母所持の復活ということになります。

さて、「艦これ」というゲームがありますよね。このせいで最近、
旧日本軍の艦船に詳しい人が増えてきましたが、
アニメになった「大和」や「武蔵」などの大型戦艦に比べて、
昔の空母について知っている人は多いとはいえません。

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旧大日本帝国海軍の空母は、瑞鳳型、翔鶴型などかなりの数がありましたが、
それとは別個に、「潜水空母」と呼ばれるものが存在していました。
これは当時としては、異次元の発想でつくられたものです。
発案者は、連合艦隊司令長官の山本五十六とされることが多いんですが、
確証があるわけではありません。

ただ、山本は、太平洋戦争を、「アメリカ本土に直接打撃を与え、
日本に有利な形で早期に終戦に導く」という構想を持っていましたので、
彼の戦略思想からみて、ありえないことではないと考えられています。
さて、これがつくられた背景として、当時の航空機は、
給油なしに日本から直接アメリカに飛んでいくことができませんでした。

イ400型の特殊ハッチ(模型)
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当然ながら、アメリカも同じです。ですから、日本とアメリカの戦闘は、
ラバウル、硫黄島など、太平洋の島々のとり合いになったわけです。
航空母艦の利点は、もちろん航空機を搭載できることですが、
敵国に近づくとすぐに発見されてしまいます。

また、潜水艦の最大の利点は、敵に探知されずに潜航できることですよね。
この2つの利点をあわせ持つ形で構想されたのが、「伊四百型潜水艦」なんです。
これには、イ400、イ401、イ402の3隻がありましたが、
イ402は実際に戦役には就いていません。

ちなみに、イは「いろは」のイで、排水量1000t以上のものを指しました。
その下は呂(ロ)号潜水艦です。ドイツのUボートを範としてつくられています。
イ400の全長は122mで、Uボートの約2倍。
艦の体積をあらわす排水量は6560tで、Uボートの約8倍。
当時就役した潜水艦の中では世界最大です。

イ400型の安全潜航深度は100メート。約50秒で潜航ができ、
これは大型艦ではかなりの急速です。燃料は重油1667トンを積むことができ、
16ノットで31000海里の航続力があったため、
一度も燃料を補給せずに地球を一周することも可能でした。

これだけの大きさがあったのは、航空機を艦載するためです。
「特潜型」ともよばれたこの潜水艦は、3機の航空機を搭載しており、
世界で唯一の「潜水空母」だったんですね。
3機 艦載された攻撃機「晴嵐」は、このために特別製造されたもので、
主翼が折り畳み式になっていました。

攻撃機「晴嵐」(模型)
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画像をみればおわかりかと思いますが、丸い穴が攻撃機を搭載するための
ハッチです。ただ、欠点もたくさんあり、一番大きいのは、
潜水艦が浮上し、晴嵐を出して翼を伸ばし、人力でフロートをつけなければ
ならなかった点です。晴嵐は帰還する際、せまい艦上に下りることはできず、
海に着水したものを回収するしかなかったんですね。

ですから、兵器としてはたいへんに効率が悪いわけです。
ただし、太平洋戦争の初期において、もし計画されていたサンフランシスコ爆撃が
実行されれば、アメリカはパニックに陥ったと考えられます。
突如、どこからともなく現れた攻撃機が爆弾を落としていくわけですから。

戦果は少なかったでしょうが、心理的な効果は大きかったでしょう。
ですが、同盟国であったドイツが降伏したことで、大西洋方面の米英艦隊が
太平洋に移動してくることが予想されたため、攻撃目標はアメリカ本土から、
パナマ運河のゲートを爆撃して破壊することに変更されました。

ハワイ沖海底のイ400とみられる画像
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そうこうしているうち、太平洋戦争は日本の敗戦に終わり、3隻の潜水空母は、
戦果を出せないまま、イ400、イ401はアメリカ軍に接収され、
ハワイ沖で撃沈処分。未就航のイ402は東シナ海で撃沈処分となりました。
この理由は、第二次世界大戦の戦勝国として一枚加わったソ連が、
潜水空母の構造に興味を示したため、秘密保持としてと言われています。

さてさて、ということで、ほとんど役に立たなかった潜水空母ですが、
潜水艦が敵国の都市を攻撃するという、当時としては異次元の発想は、
現在の「潜水艦発射弾道ミサイル SLBM」となって甦っているんですね。
では、今回はこのへんで。

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ルルドの泉と無原罪の御宿り

2018.12.25 (Tue)
今日はクリスマスですので、それらしい内容にしたいと思いますが、
なにぶん、地味なキリスト教の話なので、スルーされたほうがいいかもしれません。
さて、キリスト教の教義の根本になっている概念の一つに、
「原罪 original sin( 英語) peccatum originale(ラテン語)」というものがあります。

フランス ルルドの泉
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原罪は、ひとことで言うと「アダムとイヴから受け継がれた罪」のことです。
『旧約聖書』の創世記では、神が創った初めての人間、アダムとイヴを楽園におき、
あらゆるものを食べてよいと命じましたが、善悪を知る「知識の木の実」だけは、
「取って食べると死ぬであろう」として禁じました。しかし、蛇にそそのかされた
イヴが木の実を食べ、イヴに勧められたアダムも食べてしまいます。

これによって、アダムとイヴは楽園を追放されてしまうわけですが、
その罪は、神に命じられたことに背いた「不服従の罪」なんですね。
ここでイブは、あくまで蛇に食べることを勧められただけであって、
強制されたわけではありません。また、アダムも同じで、
自らの意志で神の言いつけに背いてしまったと、一般的には解釈されます。

楽園からの追放
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このため、われわれ、アダムとイヴの子孫である人間は、
等しく原罪を背負うことになってしまうわけです。ただまあ、それだと、
キリスト教徒ではない人間も原罪を持つことになってしまいますが、
そのあたりのことは、あいまいにして避けられる場合が多いですね。

さて、救い主イエス・キリストは原罪を持たないのはご存知だと思います。
イエスは、神の意志によってこの世に送られたのであり、
形としては聖母マリアの「処女懐胎」ということになります。現在では、
イエスの存在は、「父・子・精霊」の三位一体説がとられています。

大工であったヨセフは、婚約者のマリアが結婚前に身ごもっていることを知り、
当時のユダヤ法にしたがえば、マリアを不義姦通として世間に公表し、
石打ちの刑にしなくてはなりませんでしたが、マリアの話を聞いて
すべてを受け入れ、マリアと結婚します。

マリアへの天使ガブリエルによる受胎告知
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ということで、キリスト教の初期には、原罪を持たないのは
イエスだけだったんですが、カトリック派において、だんだんにマリアに対する
聖母信仰が高まってきました。9世紀頃から、マリアもまたイエスと同じく
無原罪で生まれたという説が唱えられるようになりました。

ですが、その説については否定的な意見が多かったんですね。
13世紀の神学者トマス・アクィナスも、はっきりと否定しています。
マリアも無原罪だったとすれば、イエスの特別性が失われるからです。
しかし、イタリアやスペインなどのラテン地方では、ますますマリア信仰が高まり、

ついに1854年、教皇ピウス9世の回勅によって、マリアの無原罪説が認められました。
マリアもまた、神の特別なはからいによって母親の胎内に宿ったのであり、
マリアのことは「無原罪の御宿り Immaculata Conceptio Beatae Virginis Mariae
(ラテン語)」と呼ばれるようになったんです。 

さて、「ルルドの泉」の話に移ります。1858年、フランス・ルルド村の14歳の少女
ベルナデッタ・スビルーが、郊外の洞窟のそばで薪拾いをしているとき、
若い女性が出現したとされます。ベルナデッタは最初、
自分の前に現れた女性を聖母とは思わず、「あれ(アケロ)」と呼んでいました。

ルルドの泉の水質 かなりの硬水
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当然ながら、この話を聞いた、教会関係者はじめ多くの人々は疑いを持ちました。
その女性はベルナデッタにしか見えなかったからです。ベルナデッタが、
「あれ」がここに聖堂を建てるよう望んでいると伝えると、
神父はその女性の名前を聞いて来るように命じます。

そして、何度も名前を尋ねるベルナデッタに、「あれ」は自分を「無原罪の御宿り」
であると告げたとされます。これを聞いて周囲は驚きました。ベルナデッタは、
ラテン語どころか母国フランス語の読み書きも満足にできなかったからです。
このことを証拠として、聖母出現は真実とされることになりました。

聖母は、ベルナデッタに「顔を洗いなさい」と言い、近くに水がなかったので、
聖母が洞窟の岩を指さすと、そこから水が湧き出し、最初は泥水であったのが、
だんだんに澄んできて、飲めるようになりました。そこに聖堂が建てられ、
次第に多くの参拝者が訪れるようになり、やがて重病人が泉の水を飲むと、
病気が治る「奇跡」が起きると言われるようになっていったんです。

この奇跡の認定基準はかなり厳しく、「医療不可能な難病であること、
治療なしで突然に完全に治ること、再発しないこと、医学による説明が不可能であること」
となっていますが、現在まで68例が奇跡としてローマ教皇から公認されています。
その中には、1879年(明治12年)、悪性腫瘍で余命いくばくもないと
医師に宣告された、弘前市に住む新谷雄三少年が快癒した例も含まれます。

聖ベルナデッタの不朽体
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ベルナデッタは修道女となり、肺結核35歳で亡くなります。
自分には泉の効果がなかったのか。それとも神が早くに天に召されたのか・・・
遺体は聖人として保存されており、腐敗しないとも言われます(不朽体)。
ただし、上の画像では、遺体の顔と手指ににはロウ製のマスクが被せられています。

さてさて、ここまで読まれてどう考えられたでしょうか。1854年に、
「無原罪の御宿り」の教義ができ、そのわずか4年後にルルドの泉の聖母出現が起きる。
不信心な自分なんかは、かなり怪しいなあと思ってしまいます。
まるで新教義の宣伝みたいじゃないですか。とはいえ、ルルドの泉の治癒例には、
現代医学で説明ができないものがあることも確かなんですね。では、今回はこのへんで。

エステバン・ムリーリョ『聖母マリア』
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夜が来る話

2018.12.25 (Tue)
今晩は、都内の大学に通っている山尾と申します。よろしくお願いします。
私、大学の3年生なんですけど、今年の10月にアパートを引っ越したんです。
はい、前のアパートが、道路の拡張工事に引っかかって取り壊されるためです。
そのことは前から言われてたので、8月ころから新しい部屋を探してました。
不動産屋さん回りをしてたら、すごく条件のいいところが一ヶ所あったんです。
前のところよりも大学に近くて、電車を使わずに通えそうな距離で、
しかも家賃も1万円ほど安いという。それで、現地を見にいったとき、
不躾かと思ったんですが、不動産屋さんに、「こんな家賃なのは、
なにかわけがあるんですか?」って、思いきって聞いてみました。
そしたら、不動産屋さんはちょっと困った顔をしましたが、
外に出て、アパートの裏手側に回ったんです。

そこですね、道をはさんで墓地になってたんです。もちろん高い塀に囲まれてるので、
外からは墓地だとはわからないんですけど。
でも、私はあんまり気にならなかったんですよ。というのは、空いていた部屋は
2階のいちばん端で、お寺の区画は切れてて、窓からはお墓が見えなかったんです。
不動産屋さんは、「所有者からははっきり聞いてはいませんが、こういう事情で
 他所よりお安いんだと思います」こう話してました。
それで、立ち退きの期限もあったので、そこに決めちゃったんです。
それとですね、今回の話に関係があるんですけど、キッチンのついた一間の部屋の
中を見せてもらってるとき、ガス台の上、換気扇があるところの横に、
金属の赤い箱があったんです。はい、天井から10cmほど下で、
もちろんイスとかに上がらないと手が届かない高さです。

「あれは?」って聞いたら、「ああ、ガス検知器です」という答えで、
たしかに、真ん中に小さなライトが一つ点滅していました。
そのときは納得したんですけど、今考えれば赤い色って変ですよね。
で、引っ越しをしました。荷物が少なかったので、業者には頼まず、
大学のサークル仲間で免許を持ってる人が運んでくれたんです。
その日の夜は、お礼に、新しい部屋でピザなんかをとって、
少しお酒を飲んだんですけど、一人、「この部屋、なんかなあ」っていう友だちがいて、
「何?」って聞いたら、「気を悪くしないでね。ケチをつけてるわけじゃないんだけど、
 この部屋、暗く感じない」じつは、私もそう思ってたんです。けどそれは、
部屋の照明が古くなっているせいだと考えてました。蛍光灯だったので、
新しい大家さんに、LEDとかに変えられないか話してみようと思いました。

それから、1ヶ月は何も起きなかったです。照明のほうは旧式で、
LEDは無理だったんですけど、蛍光管を変えたら明るくなりました。
先月のことです。夜の8時ころでしたか。バイトから帰って、
キッチンで料理してました。簡単な献立ですけど、生活費節約のために、
毎日自炊してたんです。そしたら、フライパンの油がパチンとはじけて顔にあたり、
びっくりして横の壁にドンとぶつかってしまって。そのとき、ウインウインって
サイレンの音がすぐ上から聞こえて、見るとガス検知器のライトの点滅が激しく
なってました。あわてて火を消したんですが、ガスの臭いはしなかったです。
私がぶつかったせいだと思って、見てみようと机からイスをひっぱり出してるうち、
音は消えて、点滅も収まったんです。はい、それから2週間後くらいですね。
その日は遅く、11時ころに部屋に戻りました。

冷蔵庫から飲み物を出してると、携帯が鳴ったんです。出てみると地元にいる母でした。
「あ、お母さん、どしたの、こんな時間に?」実家は夜が早くて、
ふつうはもう寝てる時間なんです。母はいつもののんびりした声で、
「お父さんの具合が悪くってねえ」 「え?どういうこと?」
変なことを言うなあと思いました。私の父は4年前に病気で亡くなってて、
母は、実家で兄の家族と同居してるんです。「お父さんてどういうこと?」
そしたら少し沈黙があって、「・・・そっちは停電してないのかい?」って。
「何言ってるのよお母さん、私のとことそっち、すごく離れてるじゃない。
 お母さんのほう、停電なの?」 「そうかい、停電じゃないのかい・・・
 じゃあ、が来るよ」そこで電話は切れました。その途端、
部屋の電気がぱっと消えたんです。「え、え? ホントに停電?!」

ウワンウワンウワン・・・ガス検知器がまた鳴り出したんです。
赤い光の点滅で、天井がまだらになって見えました。「ああ、どうしよう?」
暗い中をキッチンまで行きましたが、もちろんガスはついてないです。
まずこれを止めなきゃと思ったんですが、まごまごしてるうちに音と光が消え、
真っ暗闇になったんです。窓のカーテンを開けてみました。
下は道なので、街灯とかの光が見えるはずなんですが、それもなくて、
この地域一帯が停電なんだと思いました。でも、地震があったわけでも、
台風でもないのに。とにかく暗くてどうにもならず、手探りで机の引き出しから
懐中電灯を出したんです。スイッチを入れると、一瞬だけつきましたが、
すぐに消えて、また真っ暗に。ああ、こんなときに電池切れ。
玄関のドアを開けて外の廊下に出てみました。そしたらやっぱり街全体が真っ暗で。

「そうだ、隣はどうしてるんだろう」はい、私の部屋は端なんですけど、
右隣の人はあいさつをして知っていて、私と同じ大学生だったんです。
インターホンを押しましたが反応ありません。ああ、停電でこれも切れてるんだと
考えて、ドアをドンドンとノックしました。そしたら、ドアが少し開いて、
「誰?」という声がしたので、「あたし、隣の山尾」そう言うと、
チェーンロックを外す音がしてドアが開きました。「あ、すみません、
 急に停電になったので、何かわかることないのかと思って」
「入って」中はぼうっとオレンジ色の明かりで、部屋のテレビ台の上にロウソクが
立ててあったんです。「あ、準備いいですね。うちは懐中電灯もつかなくて。
 どうして停電になってるかわかりますか?」 「・・・が来たから」
「え? どういうことです?」 「ほら、こっち来てみて」

隣の人は、窓に寄ってカーテンを開けました。外をのぞくと、
私のとこからは見えない塀の中のお墓が青白く光ってて、たくさんの人がいるように
思ったんです。「え、あれは?」 「死んだ人が少し出てきてるの。だから」
「ええ?」 ここで急にすごく怖くなったんです。ロウソクの光に照らされた顔が、
別人のように思えてきて。「私、戻ります」そう言って、
逃げるようにして部屋に戻ってきました。でも、相変わらず真っ暗で。
また、携帯が鳴ったんです。番号は実家から。おそるおそる出てみると、
やはり母でした。「お母さん、こっちも停電、これ、どうなってるのよ?!」
「だから、が来たんだって。もうすぐお父さんがそっちへ着くよ」
私は携帯を放り出し、部屋の鍵をかけてベッドに飛び込みました。
布団をかぶっていると、ドンドン、ドンドン、ドアをノックする音が聞こえ、

それはドカンドカンと蹴りつける音にかわりました。
でも、私はずっと布団か出ず、そのうちに音は聞こえなくなり、眠ってしまったんです。
目を覚ますと朝の気配がしました。はい、外が明るくなってたんです。
時間は9時を過ぎてましたが、その日、大学の授業は午後からでした。
まず携帯を見ました。でも、実家の母からの着信はなかったんです。あと、
電気もつきました。すごく怖かったんですが、隣の部屋の前に行ってインターホンを押すと、
隣の人が出てきて、「どうしたの?」と聞くので、「昨日、停電ありましたか?」
「いや、気がつかなかったけど」こんなやりとりになったんです。
この調子だと、私が部屋に入ったことも否定されるだろうと考えて、言い出しませんでした。
・・・ここまでくると、全部が夢だったって思いますよね。
私は昨日、帰ってきてすぐに寝て、停電する夢を見てた。

そうとしか解釈しようがないです。念のために、母に電話してみました。
母はすぐ出て「これからパートに行くんだけど、どしたの?」 「昨日の夜、電話した?」
「いや、してない」・・・あとは、あのガス検知器だけです。イスに上がって金属の箱を見たら、
4隅がネジ止めされてたんです。そのときはどうにもならず、大学の帰りに
ねじ回しを買ってきて、箱を開けました。中は真ん中に一つだけ、
ブレーカーのような大きなスイッチがあって、上にあがってました。下側に白い紙が貼ってあり、
そこに筆字で「」ってあったんです。大家さんに連絡したんですが不在で、
不動産屋にかけました。担当者が出たので解約したいって話すと、理由を聞いてきたから、
一言だけ、「ガス検知器の中を見ました」そう言ったら、「・・・ああ、わかりました。
 解約は了承します。・・・次のお部屋はお決まりですか?」頭にきたので電話を切り、
友だちからつてをたどってこちらの話を聞いて、相談しに来たんです。






海底都市ってどうなの?

2018.12.24 (Mon)
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さて、いよいよ師走も押しつまってきました。今年もあと1週間を残すのみです。
みなさんは、会社の忘年会など終わりましたでしょうか。
自分は、商業誌に雑文などを書いているため、あちこちから忘年会のお呼ばれがあって、
この時期はヘロヘロです。病院で血液検査をすれば、
確実に肝臓、腎臓の数値が悪くなっていると思います。

さて、ここのところ宇宙関係の話が多かったので、今回は「海底都市」について
考えてみました。子どもに未来の絵を描かせると、ドーム型の海底都市のまわりを
魚が泳いでいたりしますよね。また、SF小説やアニメでも、
海底都市ものと呼ばれる作品が、いくつか頭に浮かんできます。

ただ、海底都市ってなかなか難しいんですよね。というのは、
海の中に都市をつくるのは、地上につくるよりもはるかにコストがかかりますが、
そのコストに見合うだけの理由が、現状では見つけにくいんです。
ですから、SFなんかでも、地上が極度の大気汚染などで
住めなくなってしまったという設定が多いんです。

まず、難しさの1つめは水圧です。海中では、10m深くなるごとに、
圧力が1気圧ずつ増えていきます。日本には、「しんかい6500」という
潜水調査船がありますが、これの耐圧殻はわずか直径2m、
トイレはなく、乗員は3人だけです。

「しんかい6500」耐圧殻
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この耐圧殻は球形になっています。それは、真球に近ければ近いほど、
周囲からまんべんなくかかってくる水圧に耐えることができるからです。(上図)
現代技術の粋を結集しても、たった3人しか乗ることができないんです。
それと、水圧にともなって、浮力の問題が出てきます。

海中の建造物には空気を満たさないと人間は住めません。
で、水深が深くなるほど、浮力の問題がやっかいになってくるんですね。
現状では、深い水深に「海底」都市をつくるのは無理があります。
そのかわり、「海中」都市ならできるかもしれません。

次に難しいのは、酸素がないことです。それと深海には光が届かず暗く、
水温が低いこと。どこからが深海かという、はっきりした定義はありませんが、
一般的には、太陽の光がほとんどなくなる、
水深200m以下を言うことが多いんです。
ただ、これらの問題は、水圧に比べれば解決はしやすいと思われます。

あとは、海水による金属の腐食とかですね。自分は、趣味で海水魚を飼育して
るんですが、海水の場合、水槽台に鉄製のものを使うのはご法度なんです。
いくら塗装してあっても、どっからか塩水が入ってきて内部を錆びさせ、
崩壊してしまう危険性があります。

bigbossman家の海水水槽
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さて、みなさんは、「深海未来都市構想 OCEAN SPIRAL」
というのをご存知でしょうか。東京に本社を持つ大手ゼネコン、
清水建設による、未来都市コンセプトです。
建築会社は、こういう大規模建築のモデルを提示することは多いんですが、
そのほとんどは机上のプロジェクトです。

設計図を書き、予算を見積もってはみたものの、実際にはつくる予定はない。
それに対し、OCEAN SPIRALの場合は、本社に20名ほどからなるチームを結成し、
わりとガチで計画が進められているみたいです。概要は、人間が居住するのは
海面近くに位置する直径500mの、人口5000人を収容できるドーム。

「深海未来都市構想 OCEAN SPIRAL」
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そこから、特徴的なスパイラル構造物が3000~4000mの海底まで延び、
海底資源の開発・育成を行う直径1000mほどのアースファクトリーまで、
「深海ゴンドラ」で行き交う計画となっています。
要は、潮などで流されないよう、ドームを螺旋状の鎖のようなもので、
海底につなぎとめておくということです。

これなら、海底掘削基地や海に架ける大型の橋のノウハウを持つゼネコンには、
そう難しくはないのかもしれません。エネルギーは、主に海中の水圧の
差を利用して発電してつくります。また飲料水も、水圧によって海水からつくる。
空気は地上から取り入れるが、電気分解によってもできる。
こんな計画みたいです。

さて、現代において巨大建築をつくるには、環境に配慮した側面も必要です。
清水建設では、地球温暖化につながる二酸化炭素を海底にパイプラインで運び、
高圧で処理して天然バイオガスに変えるとしていますが、
この実現はかなり難しいでしょうね。

海底部の化学工場
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最後に、気になる費用と工期ですが、目標として、2030年までに
必要技術を確立するとなっています。費用は、不透明な部分が多く、
なかなか試算はしにくいでしょうが、一説には1基2兆円という話も出ています。
清水建設さんには、諦めずに、ぜひ実用化させてほしいですね。

さてさて、ということで、海底都市についてみてきました。
最初のほうで書いたように、月や火星に植民都市を建設するよりは簡単でしょうが、
地球上でやることなので、環境汚染の心配もあります。
まだまだ先の話でしょうけど、注目していきたいと思っています。
では、今回はこのへんで。

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魔法植物の話

2018.12.22 (Sat)
引き抜くと叫び声を上げ、聞いた人は死んでしまうなどの言い伝えがある
伝説の植物「マンドラゴラ」の花が、兵庫県南あわじ市八木養宜上の観光施設、
「淡路ファームパーク イングランドの丘」で開花した。
同施設では初めてで、国内でも珍しいという。

マンドラゴラはナス科の多年草。古くは薬草として用いられたが、
根には幻覚や幻聴などを伴う毒があり死に至ることもあるという。
根は人に似た形状に成長することがあり、
「人の姿の根が発する叫び声を聞くと死ぬ」などの伝説が中世ヨーロッパを
中心に広まり、映画「ハリーポッター」などにも登場した。
(産経WEST)

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今回はこういうお題でいきます。マンドラゴラの花が咲いたというニュースです。
マンドラゴラは、別名をマンドレイクとも言い、絞首刑になった無実の罪人が、
苦しみのあまり射精した精液がしたたった地面から生える、などと伝えられますが、
実際にある植物なんですね。ナス科マンドラゴラ属で、根はニンジンのような形、
二股に分かれていることも多く、人間の足のように見えます。

そこから、抜かれた根は地面を歩き回るとか、抜かれる瞬間に叫び声を上げ、
それを聞いたものは死んでしまうなどとも言われました。実際、
根には数種類のアルカロイドが含まれ、麻薬作用を持ち、鎮痛薬、鎮静剤、
下剤などに使われていましたが、毒性が強く、
死に至ることもあるため、現在はまず使用されることはありません。

マンドラゴラの花
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マンドラゴラの伝説は、主にヨーロッパの中世で、錬金術の材料として
広まりました。抜くと死ぬという伝説も、そのときにできたものと考えられます。
映画の『ハリーポッタ』シリーズに登場したときは、耳を押さえて抜くという
ごく簡単なやり方でしたが、犬のしっぽに結びつけ、遠くから主人が犬を呼んで
抜かせるなどの方法が魔術書に残っています。

前に少し書きましたが、錬金術は、上流階級を騙すために悪用される場合が
多かったんです。錬金術師が本を書いて、王侯貴族に高い値段で売りつけます。
本の中には、不死の薬とか空を飛べる薬の作り方が書いてありますが、
それに使われる材料の多くは、まず手に入らないものだったんですね。

例えば、これは映画の話ですが、ハリー・ポッタのポリジュース(変身薬)の
材料は、「クサカゲロウ、ヒル、満月草、ニワヤナギ、二角獣の角の粉末、
毒ツルヘビの皮の千切り、変身したい人物の一部」でしたが、
二角獣の角なんて、実際にはこの世には存在しません。

ですから、当然手に入れることはできず、薬は完成しません。したがって、
錬金術師のイカサマもばれることがなくて済むわけです。マンドラゴラについても、
貴族がそれを手に入れて薬を作り、効果が表れなくても、錬金術師は、
「これは本物のマンドラゴラではありません」とでも言っておけばいいわけです。

北欧神話のフェンリル狼
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巧妙な手口すよね。では、この手の話のルーツはどこから来たかというと、
おそらく古い神話からだと思われます。北欧神話では、フェンリルという
巨大な狼の怪物が出てきますが、これをつないでおくための魔法の鎖の材料は、
「猫の足音、女のあご髭、山の根元、熊の神経、魚の吐息、鳥の唾液」でした。
どれも、当時は存在しないと考えられていた品々です。

では、ここからは、魔法の植物についてみていきましょう。
有名なのは、ギリシア神話に登場する「黄金の林檎」でしょうか。
神々が若々しさを保つための食べ物であり、不老不死の魔力を持つとされていました。
神々の祝宴に招かれなかった争いの女神エリスは、宴の最中に黄金の林檎を
投げ入れ、それには「最も美しい女神に」と書かれていました。

アンゼルム・フォイエルバッハ『パリスの審判』
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そこで、美貌が自慢の3人の女神、ヘラ、アテナ、アフロディーテが、
それぞれ自分のものだと主張して言い争いを始め、主神ゼウスが、
人間の羊飼いパリスに審判をさせることに決めます。そこで、ヘラは「王の座」、
アテナは「戦いの勝利」、アフロディーテが「世界で最も美しい人間の女」を
パリスへの贈り物とします。西洋絵画の主題となっている場面ですね。

パリスはアフロディーテを選び、世界で最も美しい女がトロイアのヘレナだった
ことから、木馬のエピソードで有名なトロイア戦争が始まることになります。
ところで、ここまで読まれて違和感を感じませんでしょうか。
リンゴは、日本では青森県や長野県など、寒冷地の特産品で、
地中海気候のギリシアにあったとは思えないですよね。

現在、黄金の林檎の候補として、「オレンジ説」 「マルメロ説」に分かれていて、
はっきりした結論は出ていません。この両者の果物も、
古代ギリシアにはありませんでした。オレンジはインド原産、
マルメロは西アジア原産で、当時文明の中心だったギリシアには、
輸入という形で入ってくる、遠い異国の産物だったんですね。

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さて、東洋にも神々の食べる不死の果実がありますよね。桃です。
これは特殊な形をした蟠桃(ばんとう)という種類です。
中国神話の最高位の女仙、西王母は、その誕生日(3月3日)に、蟠桃会という
桃を食べる祝宴を開きます。これが、日本のひな祭りのルーツなんですね。

この桃を食べるとたいへんな長寿になります。『西遊記』では、天界の果樹園の
番人にされた孫悟空が、自分だけ蟠桃会に招かれなかったことに怒り、
果樹園の桃をむさぼり食って大暴れします。これによって悟空は不死の体になり、
お釈迦様によって五行山という岩山の下に封印され、
天竺へ向かう三蔵法師が通りかかるのを待つことになります。

で、この桃が神聖な果物であるということが日本に伝わってきて、
イザナギ、イザナミの黄泉返りの神話で、追いかけてくる黄泉国の軍勢に、
イザナギが桃を投げつけて追い返す話になってるんですね。
桃は、日本ではこの当時、オオカムヅミ(大神実命)と呼ばれていたようです。

桃を投げて黄泉の軍勢を追い返すイザナギ
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さてさて、ということで、ギリシア神話の黄金の林檎が、シルクロードを経て、
日本神話へとみごとにつながりました。魔法植物については、
まだまだ書く内容があるんですが、もうだいぶ長くなってしまいました。
続きはまたの機会にしましょう。では、今回はこのへんで。




焦げた人形の目の話

2018.12.22 (Sat)
山根ともうします。よろしくお願いします。何から話せばいいのかな。
私、高校を卒業してから、就職しないでずっとアルバイトをしてるんです。
勤め先は出版社で、でもバイトだから、編集とかじゃなく配本の仕事です。
あとは資料の整理とか、簡単なイラストを描いたりもしてるんです。
はい、実家に住んでますから、そんなに生活にお金はかからないんです。
それで、半年くらい前ですね。カレシと別れちゃったんです。
それもちょっと傷つくっていうか、嫌な別れ方で。
そういうとき、今までは旅行とかしてたんですけど、バイトのほうが忙しくて、
まとまった休みがとれなかったんです。むしゃくしゃした気分が治まらなくて、
その月のバイト代で、ネットで手当たり次第に買い物をしました。
高いものは買えないんですけど、洋服とかアクセサリーとか。

それで、あるネットオークションのサイトで、ぬいぐるみの人形が目についたんです。
そんなに大きなものじゃなく、説明には高さ40cmとありました。
クマのぬいぐるみなんですけど、リラックマとかプーさんとか、
そういうキャラクターものではなく、黒い巻き毛の中に黒目がキラキラ光る
子グマの人形。ひと目見てほしいなって思いました。
私、ぬいぐるみを集めてるんです。いえ、そんなに数はありません。
子どもの頃にもらったのとか、あと自分で年に2、3個買うくらいで、
全部で20個もないくらいです。はい、全部がぬいぐるみで、人形じゃありません。
ただ、ネットオークションで買うのは初めてだったし、
前に持ってた人がいるのは嫌だったんですけど、その子グマ、新品って書いてたんです。
はい、デッドストックってことです、誰にも売れないまま、ずっとしまわれてた。

あと、安かったのもあります。それで、スタートの金額に規定どおり上乗せして
ポチしたら、他にだれも入札する人がいなくて、私のものになったんです。
現金引換にして、2日後、宅配便の人が届けてくれました。
さっそく箱を開けてみると、写真そのままのかわいいクマちゃんだったんですが・・・
ちょっと違和感がありました。持った感じが見た目より重くて硬かったんです。
巻き毛はもちろん柔らかいし、きれいだったんですが、中のほうがちょっと硬い。
ほら、赤ちゃんの人形とかで、お話をしたり目を動かしたりするのがあるじゃないですか。
あんな感触で、もしか電池で動いたりするのかと思って後ろを見ても、
そういうのはありませんでした。あと、かすかにですが臭いがあったんです。
ほんの少し焦げくさい・・・のと、お香のようなのが混じりあった臭い。
気になったので、ぬいぐるみ用のブラシでとかしたら、すぐわからならなくなりました。

それで、他のぬいぐるみはクローゼットの上に上げてあるので、
その中の前のほうに置いたんです、よく見えるように。それから、
しばらくは何も起きませんでした。1週間後くらいだったと思います。
バイトから帰ってきたら、母が、「お前の部屋、焦げ臭いよ。何か燃やした?
 それともタバコでも吸った?」こう聞いてきたんです。「え、そんなことないよ」
部屋に行ってみたら、たしかに少し焦げ臭くて、最初にクマのぬいぐるみが来たときに
感じた臭いに似てると思いました。クローゼットの上を見ると、「!?」
子グマの両側の人形がなくなってスペースが空いてました。
「そんなはずは」イスに乗って確認したら、どういうわけか両隣のぬいぐるみは、
後ろの壁にあたるとこに倒れてました。でも、自然にそうなるはずはないんです。
だって、子グマは1列目で、その後ろにもう2列並んでるんですから。

ひとりでに飛んでくわけはないし、夕食に下に降りたとき母に聞いたんです。
「クローゼットの上、そうじとかした?」って。でも、母は、「焦げ臭くて部屋には入って
 みたけど、お前が怒るから何にも触ってない」って。その夜ですね。
スマホで友だちにメールしたり、音楽を聞いたりして、12時過ぎに寝ました。
それからどれくらいたったか、すごく胸の上が重くなって・・・
目を開けようとしたんですが、開かない。手も動かない。「これって、金縛り?」
そういう状態になったのは初めてで、よくわからなかったんです。ただ、
胸の上に何かが乗ってるのはわかりました。「うーん」自分がうなったのが聞こえてきたんで、
声は出せたんです。そうしてるうち、閉じた瞼の上がチクチクする感じがしました。
何か尖ったものでつつかれてるんだと思いました。ちくちくちく・・・
痛いというほどではないんですが、何をされてるのか見えないのが不安で。

「あーっ」って大声で叫んだんです。そしたら、急に両方の目が開きました。
胸の上に、黒いかたまりが乗ってたんです。いえ、クマのぬいぐるみじゃなく、
丸い頭の赤ちゃんみたいなものでした。「いやーっ」手で払いのけました。
その勢いで上半身を起こし、部屋の電気をつけました。ベッドまわりには何もなし。
クローゼットの上も見ましたが、そのときは何も変わってないと思ったんです。
気がついたのは次の日の夜です。昨日のことを思い出して、またイスに乗って
クローゼットの上を見ました。そしたら・・・、子グマはなんでもなかったんですが、
他のぬいぐるみの目が、どれもゆるゆるになってたんです。どういうことかっていうと、
ぬいぐるみの目って、ボタンを縫いつけただけのものや、プラスチックの玉を埋め込んだ
ものまでいろいろですよね。それが、縫ってあるものは糸が切れて垂れ下がり、
貼りつけたり埋めてあるのは下に落ちていて、それ見て、背中がゾーッとしたんです。

はい、無事だったのは子グマだけでした。子グマを持ち上げると、
やっぱり焦げた臭いがしたので、怖くなって、クローゼットに放り込もうとしたんですが、
気が変わって弟の部屋に持っていきました。あ、最初に言わなかったんですけど、
うちには工業高校に通ってる弟がいて、ずっと部活の合宿だったのが、その日から
帰ってきてたんです。「ちょっとこれ見てくれない」弟は、「ただのぬいぐるみじゃね」って、
めんどくさそうに言ったんですが、持ち上げると「なんか固いな、中に何か入ってる。
 でも開けるとことかもないなあ。姉ちゃん、これ切ってもいいか?」
そう言うので、「いいよ、やってみて」弟はカッターを出して、背中の毛の中を
縦に切りました。すると、ぶわっと焦げ臭い臭いがたちこめて、
弟は咳き込みながら、「これ、焼けてる」切れ目を手で裂いて、中から真っ黒なものを
ひっぱり出しました。黒いのは焦げてるせいで、やっぱり人形に見えました。

「キューピーみたいなやつだな。あ、後ろが開く」弟はカッターの先で背中をこじ開け、
そしたら、にぎりこぶしくらいの固まりが、ゴンと下に落ちて転がったんです。
「何だ?」拾い上げた弟が「うえええ」と言って放り出しました。
何だったと思いますか。赤黒い布切れにくるまれた目玉。本物じゃなく、義眼っていう
ものじゃないかと思いました。「何だよこれ、姉ちゃん、冗談がすぎるよ」
弟も怖がってたんですが、2000円小遣いを渡して、クマのぬいぐるみの皮、
中の焦げた人形、義眼もすべて捨ててきてもらったんです。弟は、近くの橋から、
用水路に投げ込んだって言ってました。次の日、ネットオークションの店の
メアドがわかってたので、連絡してみました。長々と事情を書いて出してやったら、
すぐに返金するって電話が来たんです。ぬいぐるみは、おもちゃ会社から一括して
買い取ったものの一つで、その会社は倒産してもうないってことしかわかりませんでした。

ただ、はっきりしたことは言いませんでしたが、他にも苦情があるような口ぶりだったんです。
これで、全部が終わったと思っていました。実際、それ以来おかしなことは
なかったんですが・・・ええと、最初に、カレシと別れたって言いましたよね。
それで。友だちがいろいろ気を遣って、合コンとかに誘ってくれて、
新しいカレシができたんです。電力会社に勤めてる年上の人で、
しかりしてて優しくて、すぐにおつき合いが深くなって、この人と結婚するのかも、
って思ったんです・・・それで、大晦日の日です。彼はアパート生活だったので、
一緒に部屋で過ごして、新年になったところで、初詣に出かけました。
お参りしたのは、歩いていける近くの護国神社でした。有名な神社ではないんですが、
近所の人がけっこうきていて、境内に篝火が焚かれ、テントの中で甘酒が
ふるまわれたりしてました。2人でお参りをして、それからおみくじを引いたんですけど、

見せ合うと、私が末吉、彼が凶だったんです。「新年早々縁起悪いなあ」とか言いながら、
参道から外れて、松の枝におみくじを結びにいくと、御神木の陰から
ふらっと人が出てきました。暗くてはっきりしなかったんですが、
髪の長い女の人で、下は雪があるのに、薄い病院着のようなのを着ていました。
髪の上から頭に包帯を巻いていて、片方の目が隠れていました。
その人が、おみくじがたくさんついた木の後ろ側に来ると、彼が気がついて、
「ああ、お前・・・」って言ったんです。その人は黙ったまま、片手に持っていた
黒いものを上にあげました。「きゃーっ」今度は私が叫ぶ番で、
それ、闇に溶けてましたが、あの子グマのぬいぐるみだと思ったんです。
彼が私の手を引いて、走ってその場を離れました。神社の鳥居から表通りに出て、
「今の誰?」って聞いても、どうしても教えてくれなかったんです・・・

                              



クリスマスあれこれ

2018.12.20 (Thu)
っっs (4)

さて、もうすぐクリスマスということで、今回はこういうお題でいきます。
日本は、宗教的には仏教国に分類されることが多いですが、
神道も盛んです。また、キリスト教的な行事であるクリスマスも、
たいへん盛り上がっていて、ちょっと街を歩けば、たくさんの飾りつけを
目にすることができますし、クリスマスソングも流れています。

ツリーを飾る家庭は多いでしょうし、寝る前に、枕元にくつしたを下げるお子さんも
いると思います。ただ、クリスマスの儀式というか習慣って、
日本に取り入れられているのは全体の一部分なんですね。ここでは、
自分がアメリカに住んでいた時代に目にしたことを中心に、それ以外も含めて、
日本ではあんまり知られていないものをご紹介したいと思います。

・棚の上のエルフ(Elf on the shelf)
エルフはもともと、北欧神話に登場する妖精です。それが、J・R・R・トールキンの
ファンタジー『指輪物語』で、長身に痩せぎす、耳の長いイメージで描かれ、
映画などで広まりました。でも、もともとはそんなに大きくはないんですね。

「棚の上のエルフ」は、アメリカのクリスマスのギミックの一つで、
たぶんそれほど古いものではありません。現代の絵本で広まったんじゃないかな。
下の画像のような人形で、サンタクロースのスパイとして、
12月になると子どもの部屋に現れます。ただし、現れる場所は毎日違うんです。

Elf on the shelf
っっs (3)

エルフは、子どもたちがクリスマスまでの1ヶ月間、どんなことをしているか
監視する役割なんです。そして、子どもたちが寝てから、北極まで飛んで、
良いことも悪いこともすべてサンタに報告します。で、その内容によって、
もらえるプレゼントが決まることになります。もしすごく悪い子だった場合、
プレゼントなしになることもあるみたいです。

子どもは、このエルフにはさわってはいけないことに決まっています。
まあ、実際には、子どもが寝てから、親がエルフ人形を部屋のあちこちに
動かしてるわけなんですが、「Elf on the shelf」で画像検索すると、
さまざまな場所にいるエルフ君の姿を見ることができます。

・サンタさんへのお礼(milk and cookies for Santa)
みなさんの家庭では、サンタクロースへのお礼などを、準備されているでしょうか。
アメリカ、カナダでは、クリスマスイブの晩餐の後に、
ミルクとクッキーの皿をテーブルの上に残しておく場合が多いですね。(下図)

っっs (5)

ヨーロッパだと、シェリー酒やビール、砂糖粥のようなものが用意されます。
あと、サンタの橇を引くトナカイ用に、ニンジンが残されている場合も多いですね。
これ、昔は石炭だったみたいですが、だんだんにニンジンに変わっていったんです。
石炭といえば、それが子どもへのプレゼントになる場合もあります。

・ループレヒト(Knecht Ruprecht)
これはアメリカではあまり聞かず、主にヨーロッパのドイツ系の伝説です。
サンタクロースはクリスマスに一人で各家々を回っているわけではなく、
ループレヒトという妖精と一緒に来ることになっています。

ループレヒトは顔じゅう黒ひげで、フードをかぶり、手に麻袋と小枝の束を
持っています。(下図) これは悪い子を叩くためのものです。ヨーロッパの伝統では、
クリスマスのプレゼントは一種の契約なんですね。1年間良い子にしていたなら、
サンタからプレゼントをもらえますが、そうでなかった場合、
子どもは、ループレヒトにムチで叩かれたり、袋に入れて連れて行かれたりします。

っっs (1)

また、石炭などのつまらないプレゼントを与えられることもあるんです。
youtubeで「bad present」で検索してみてください。
下の動画では子どもたちがプレゼントの箱を開けると、腐ったバナナとか、
タマネギなんかが出てきて泣いてしまいます。
(もちろん、ちゃんとしたプレゼントがその後に渡されます。)



・その他
あとはそうですね。自分がいたアメリカの中西部では、数十mもある
巨大なイルミネーションを持ってる家が多く、庭や屋根までに広げてピカピカ
光らせてました。ですから、夜に住宅街を歩くとかなり壮観でした。
これは、自分の家だけではなく、地域全体で祝おうという意識が強いからです。

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映画の『グレムリン』では、「クリスマスなんてくだらない」と言って、
何も祝おうとしなかった金貸しのイジワル婆さんが、街で一人だけ、
グレムリンの騒動で屋根から放り出されて死ぬことになってましたが、
それも、このあたりのことを踏まえてなんですね。自分と恋人、家族だけで
楽しむのではなく、チャリティーも活発に行われています。

それから、日本ではクリスマスケーキを食べますが、
アメリカでもないわけではないものの、あんまり用意する家は多くないんです。
そのかわり、クッキーとミルクは必ず出ます。七面鳥は食べますが、
日本のようにチキンのモモ肉とか唐揚げはまず出てこないです。

さてさて、ということで、日本に入ってきているのはクリスマス儀式の一部分ですし、
考え方もずいぶん違っています。いいのか悪いのかわかりませんが、
日本人好みのクリスマスに変質してしまっているんですね。まあでも、
日本では宗教ではなく年中行事なので、それもしょうがないのかもしれません。
では、今回はこのへんで。





宇宙兵器とミリタリー

2018.12.19 (Wed)
米国のトランプ大統領は18日、「宇宙統合軍」を創設する指示書に
署名したと共同通信ら多数のメディアが報じています。
「宇宙統合軍」は、中国・ロシアの宇宙開発に対抗するもので、
今回創設される「宇宙統合軍」は、陸海空軍の下部にあたる統合軍。

2020年末までには5軍と同格の、独立した「宇宙軍」として昇格を目指します。
また、副大統領のマイク・ペンス氏は宇宙軍創設に関して、
中国やロシアの宇宙空間の衛星攻撃兵器(ASAT)の開発などの軍事利用化を
懸念しており、宇宙においても米国の優位性を確保することを主張しています。

(RakutenNews)

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今回はこういうお題でいきます。ただ、後半のほうは自分の趣味の話になるので、
スルーされたほうがいいかもしれません。さて、引用記事の「統合軍」
というのは、独立した正規軍ではなく、現在ある5つのアメリカ軍の下部組織に
あたるものになります。アメリカ5軍は、陸軍(Army)・海軍(Navy)・
空軍(Air Force)・海兵隊(Marine Corps)・沿岸警備隊(Coast Guard)。

海軍と海兵隊の区別がわかりにくいかもしれませんが、
海軍は基本的に艦船にのって戦闘を行い、上陸することはまずありません。
それに対し、海兵隊は先遣隊を務め、敵国の海岸部に上陸して戦闘拠点を築きます。
陸軍との違いは、継続的な陸上での戦闘は意図されてないことです。

あと、沿岸警備隊は、日本の海上保安庁のような役割を果たし、
アメリカの領海、海岸線の警備を担当します。日本と違って、アメリカの海岸線は
長大で、カナダを間にはさんだアラスカ州のような飛び領土もありますので、
たいへん重要な役割ですね。記事のとおり、2020年には「宇宙統合軍」の
「統合」の文字がとれ、独立した軍種(US Space Force)に昇格すると考えられます。

では、宇宙軍を創設する意図はどこにあるんでしょうか。
これは、中国、ロシアの宇宙での軍事活動に対抗するためのものと説明されます。
あれ、でも宇宙の軍事利用は、1967年に発効した「宇宙条約」によって
禁止されているはずですよね。ですが、物事には必ず裏が存在します。

最近、大国間で競うように宇宙探査機が打ち上げられており、
学術探査を目的としてうたっていますが、当然ながら、そこには軍事的な意図も
混ぜ込まれています。相手国の優位に立つためには、
使えるものは何でも使いたいのが本音で、宇宙もまた例外ではありません。

さて、宇宙の軍事利用として一番に考えられるのが、宇宙から地上を攻撃することです。
アメリカは、宇宙兵器「神の杖 Rods from God」を開発しているのではないかと、
早くから噂されています。これについては前にも書きましたが、
衛星から、タングステンなどの固い棒状の物体を、目標に向かって落とすものです。

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これには、爆薬などの弾頭はありません。衛星の高度にもよりますが、
神の杖が地上に到達するまでには、マッハ20レベルの高速になり、
迎撃は現在の技術ではかなり難しいでしょう。落ちてきた神の杖は地下深くまで潜り、
相手国の地下施設を、相当な深度まで破壊することができると言われます。
一種の運動エネルギー弾なんですね。

ただし、これは明らかな宇宙条約違反ですので、もし開発して使用した場合、
核兵器を使用したのと同様な、国際的な批判はまぬがれないでしょう。
それに、この兵器の理屈は、地上から高高度までミサイルを打ち上げて落下させるのと
あまり変わらないんですよね。ですから、開発はしているんでしょうが、
アメリカが実際の戦闘に使うとは考えにくいです。

では、使われる可能性のある兵器はどんなものかというと、
相手国の軍事偵察衛星を無力化させるためのものです。偵察衛星の存在は
たいへんやっかいです。最近は、偵察衛星の地上情報の解像度はますます
高くなっており、1m以下とか、どこまで本当かわかりませんが、
広げた新聞の文字が読めるなどとも言われたりします。

偵察衛星からの画像
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1985年、アメリカはF15戦闘機から、対衛星ミサイル(ASAT)の発射実験を行い、
衛星の爆破に成功しています。ただこのとき、たくさんの宇宙ゴミ(space debris)
が生じ、アメリカ議会が反対したこともあって、計画は中止されているんですね。
それが2007年、中国が、老朽化した気象衛星の廃棄を口実に、
対衛星ミサイルを発射して爆破に成功しました。

しかし、このときも宇宙ゴミが大量発生して、中国政府は各国から非難を受け、
現在は計画を自粛しているところです。で、現在の宇宙兵器の主流は、
自国の衛星によって、相手衛星の動きを止めようとするもので、
必ずしも物理的に破壊する必要はなく、レーザーやマイクロ波、
ジャミング(電波妨害)などの電磁的な攻撃が主力になります。

クリックで拡大できます
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これが、アメリカ宇宙軍創設の背景なんですが、中国外務省は、
アメリカの動きに対して、公式に強い不快感を表明しています。
さて、ここからは余談になります。みなさんの多くは会社勤めをされていると
思いますので、ふだんはスーツなどを着ておられるんじゃないでしょうか。

自分は自由業ですので、スーツを着るのは何かのパーティくらいで、
私服で過ごしていることが多いんですが、じつは大のミリタリーファッション
のフアンなんです。アメリカのフライトジャケット、フィールドジャケット、
あとドイツ軍やフランス軍のものなど、たくさん持っています。今日も、
レベル7ジャケットという、防寒用のものをずっと着ていました。

古着のG1ジャケット
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で、それらは、一部に民生品として売られているものもありますが、
ほとんどは実際に軍務で着られた古着なんです。ですから、ほつれやかぎ裂き、
袖のところには、銃器を手入れしたときについた油染や、
裾に射撃訓練での焼け焦げが残っているものもあるんですね。

怪談だと、そういうものには兵士の執念が染みついていて、
怪異が起きたりする話もありますよね。自分はベトナム戦争時のものとかも
持っているんですが、怖い体験は、残念ながら今のところありません。
古着って、前の持ち主がどういう人物だったか、想像する楽しみがあるんです。

さてさて、ということで、アメリカ宇宙軍では、どういうジャケットや記章が
採用されるのか、たいへん注目しているところなんです。
これは自分だけでなく、世界のミリタリーフアンはみな同じだと思います。
最後に、何度も書いているんですが、宇宙に関しては、条約の精神を遵守し、
どの国も平和利用に限定してほしいものです。では、今回はこのへんで。

関連記事 『月面核爆発計画って何?』  『器物の怪談とサイコメトリー』

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心霊理論の話

2018.12.19 (Wed)
ひと月ほど前のことです。自分(bigbossman)が共同事務所で仕事してると、
訪ねてこられた人がいまして、出てみると、30代に見える男性でした。
占星術だったら予約を取ってくださいと言ったんですが、
そうではなく、心霊現象に関する内容ということでしたので、
応接室に入っていただいて、話をお聞きしました。
お名前はMさんとしておきます。Mさんはミニコミタウン誌の編集をされている
ということでした。「幽霊とか、そういう関係にお詳しいと知人から聞いて、
 うかがいました。よろしくお願いします」 「いや、こちらこそ」
「最初から順を追ってお話していきます。僕が編集をしているミニコミ誌ですけど、
 〇〇市のものなんです」 「はい」 「それで、先月号で、市の今と昔という
 特集をやりまして」 「ははあ」 「市役所の資料室から昔の写真を借りてきて、

 何ヶ所か、同じ場所の現在の画像と比較しようと思ったんです」
「なるほど、で?」 「7ヶ所の比較をしたんですけど、そのうちの1か所ので、
 奇妙なことに気がつきました」 「はい」
「その古い写真のほうは、昭和26年に撮られたもので、JRの駅に近い、
 線路に沿った道です」 「昭和26年というと、終戦後の、まだ米軍の占領下の時期
 ですよね」 「そうです。ご存知ではないと思いますが、〇〇市は、
 昭和20年の春に大規模な空襲がありまして、市街の大部分が焼けてるんです」
「はい」 「その6年後ですから、まだまだ復興はなっておらず、
 高い建物はなくて、道沿いにずっとバラック小屋が立ち並んでました」
「はい」 「で、うちのスタッフが、その同じ場所を撮影したんです。現在はね、
 典型的な駅裏の飲み屋街になってるんですが、道路はほとんど変わってません」

「それで」 「タウン誌の1ページの上下に、昔と今の写真を並べて、
 Macでレイアウトをしてたんです。そしたら、おかしなことに気がついたんです」
「どんな」 「昔のほうの写真、通行人が何人か写ってるんですが、
 奥のほうに防空頭巾にモンペ姿の女性が見えたんです」 「それが?」
「変じゃないですか。もう戦後ですから、空襲なんてないわけですし」
「その写真、雑誌に載せられたんですよね」 「いいえ、でもゲラはあります」
「今、持ってこられてますか」 「ああ、はい、これです」
「えーと、あ、この人のことですか。たしかに防空頭巾に見えますが、
 ピントが合ってなくてはっきりしませんね」 
「それで、下の現在の写真を見てください」 「はい・・・え、これ、
 防空頭巾の人がいますね、いやまさか、現代ですよねえ」

「ね、不思議でしょう」 「うーん、不思議です。今どきそんな格好をしてる人が
 いるわけないし、ドラマの撮影とかじゃないんでしょう」 「そうです。でね、
 上はモノクロで、下はカラーですけど、同じ人物に見えませんか」
「・・・ああ、ほんとですね。上の写真は小さくてはっきりしないけど、
 モンペの柄が同じに見えます」 「で、これ、その人物だけを拡大したものです」
「防空頭巾で隠れてるけど、若い女性ですよね。そうですねえ、似ていると思います」
「ええ。でも、ありえないですよね。昭和26年は、今から67年前です。
 そんな長い時間を経て、同じ人物が同じ場所で写真に撮られてる。しかも防空頭巾姿で」
「あの、下の写真を撮られたスタッフの方、そのとき、この人物に気がついてたんですか」
「聞いてみました。そしたら、写真を改めて見てびっくりしてて、 
 こんな人がいたのなら、絶対にわかったはずだって言うんです」 「ですよねえ」

「それで、特集には採用できなかったんですけど、個人的に気になりまして、
 自分で同じ場所に行って撮影してみたんです」 「で」
「そしたら何もおかしなものは写ってなくて」 「はい」 「でもね、
 まだ納得できなかったんです。それで、ほらここ、飲食店が入ったビルがあるでしょ」
「ええ」 「前に取材して、そこのオーナーを知ってるんですよ。頼み込んで、
 ビルの植え込みの横にビデオカメラを設置させてもらったんです」 「ほう」
「ただ、一日中写してたんじゃ、見るときにたいへんですよね。だから1時間おきに、
 10分間だけ撮影するようタイマーをセットしました」 「で」
「そしたら、夕方の4時から4時10分に、この人物が写ってたんです」
「データありますか」 「はい、ここのMac、お借りできますか」 「かまいません」
ということで、その動画を見せてもらったんです。

そしたら、4時2分の表示のとき、写真と同じ店の前に、ぼうっと防空頭巾姿の女性が
現れたんです。その姿は透けてるとかではないんですが、なんというか、
生きてる人間には見えなかったです。書き割りみたいにその場にたたずんで、
ピクリとも動かなかったせいかもしれません。うつむいた防空頭巾の下の顔が少し、
服やモンペの柄が確認できましたが、写真と同じでした。10分で映像がきれるまで、
ずっと写り続けてたんです。「他の時間帯には写ってなかったんですよね」
「そうです」 「なんで夕方のこの時間なんでしょうね」
「僕も気になって、少し調べてみたんですが、昭和20年に空襲があったって言いましたよね。
 その時間帯がちょうどこのあたりなんです」 「ははあ、じゃあこの女性、
 そのときの空襲で亡くなった人なのか」 「そうだと思います」
「この話、続きがあるんですね」 「はい。出現する時間帯がわかったので、
 
 翌日ね、その時間に直接行ってビデオ回したんです。もっと性能のいいやつを」
「はい」 「結果から言うと、何もおかしなものは写りませんでした」
「で」 「ただ、その撮影中に、すごく気分が悪くなったんです。頭がグラグラして、
 植え込みの陰で吐いてしまいました」 「うーん、で」
「その日から、体調が絶不調になったんです。だるくて朝起きられないし、
 無理に起きるとめまいがする。それで、同棲してる彼女に病院に連れてって
 もらったんですが、いろいろ検査しても、はっきりした異常は見つからなくて」
「霊に憑依されたってことですか」 「そう思いますよね。僕、そういう心霊現象とか
 信じてなかったんですけど、体調がどうにもならなくて、
 大阪の霊能者を調べて相談に行きました」 「何という方ですか」
「〇〇先生です」 「ああ、お名前は聞いたことがあります。それで?」

「先生が言うには、霊が憑いてるには間違いないが、僕のことを恨んでるのではなく、
 何かかなえてもらいたいことがあるみたいだって」 「かなえてもらいたいこと?
 その女性の身元とかわかったんですか?」 「いえ、〇〇先生にもそこまでは。
 ただ、空襲のときに死んだのは間違いないだろうし、望んでることは、
 立ってる場所に関係があるんじゃないかと」 「うーん、これ串カツ屋の前ですよね。
 まさか串カツが食べたいわけじゃないでしょうし」 「それで、自分では動けないんで、
 彼女と雑誌の編集スタッフに頼んで、その場所を調べてもらったんです」 「で」
「でも、飲食店街ですから、店は何代も替わってるし、すごく大変でした。
 それでもなんとか、戦争中のところまでたどり着きまして」 「すごい、それで?」
「その場所は市街地だったんです。B家という家族が住んでました」
「で」 「ただ、娘さんはいなかったんです。息子さんが2人いて、

 その長兄のほうが戦争で亡くなってます。でね、その人には、出生前に婚約した
 許嫁がいまして、名前もわかりました」 「B家の人たちが、今どこに住んでるか
 探し出せたんですね」 「はい、その市からは出てましたが、
 大坂府内に弟さんが健在でした」 「で」 「その頃には、すごく体調が悪くなってて、
 歩くのもやっとだったんですが、〇〇先生やスッタフに助けられてBさん宅まで行き、
 事情を話して、仏壇にお参りさせてもらたんです」 「ははあ」
「仏壇には、戦死したお兄さんの遺影もありました。でね、手を合わせたとたんに、
 すうっと体が軽くなったんです」 「うーん、女性の霊が離れた」
「そうです。〇〇先生の話では、それで女性が成仏したんだろうって」
「なるほどねえ、で、現在は?」 「あれ以来、ごらんのように体調は元に戻りました」
「それはよかった」 「でもね、いろいろわからないことがあるんです」

「というと?」 「まず、そのときの空襲で亡くなった方は3000人ほどです。
 その中には、苦しんで死んだり、この世に未練を残した人はたくさんいたと思うんです」
「おそらくそうでしょう」 「なのに、何でその女性だけ霊となったのか」
「・・・」 「それと、もう一つわからないのが、その女性は空襲で亡くなってる。
 それから婚約者は南方で戦死してるわけで、どちらも故人ですよね。
 もし、霊界とかそういうものがあるのなら、2人はそこで出会うことができるんじゃ
 ないんでしょうか。幽霊になって、この世にずっと とどまってる意味がわからないです」
「・・・確かにそう言われてみればそうですね。あ、そうだ、〇〇先生はどうおっしゃって
 いたんです?」 「それが、それは先生にもわからないそうです。霊に関することは
 対処療法しかできず、われわれにも詳しい原理みたいなものは理解できてないって」
「いや、貴重なお話、ありがとうございます。ブログに載せてもかまわないでしょうか?」
 





異界の話

2018.12.17 (Mon)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論ですか。
さて、ラノベとかアニメ、ゲームなんかで「異世界もの」というのが
たいへん流行っていますよね。現実世界ではニートとか、まったくモテないとか、
さえない主人公が何かのきっかけで異世界へと転生し、
そこで大冒険するみたいな内容です。

この設定は便利ですよね。ひじょうに応用範囲が広いと思います。
なんといっても「異世界」ですから、その環境は作者が自由に設定することができます。
また、現実世界では弱虫だったのに、異世界内では勇者として怖れられる存在になるとか、
ギャップが大きいほど読者の関心を惹くでしょう。

この元となったのが「異界」の概念ですね。異界とは、Wikiによれば、
「人間が周囲の世界を分類する際、自分たちが属する(と認識する)世界の外側のこと」
こんなふうに出てきます。異界には「他界=霊魂が行く死者の世界」も含まれます。
また、異界の住人を異人と言うこともあります。

さて、異界をわかりやすく説明する例として、何がいちばんふさわしいかを考えてみると、
ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』がいいかと思います。
あの話は、異界をとりまく約束事を守って組み立てられているんです。
約束事の一つめは、この世と異界は重なり合っているんですが、
そこに行くためには境界を通らなければならないということです。



映画だと、千尋の家族は車で奇妙なトンネルに入っていきますよね。
あれが、この世とつながる境界なんです。次に、異界にとどまるための条件があります。
千尋の両親が、ずらっと並んだ無人の屋台で、「金は後から払えばいい」と言って、
食物を口にしてしまいます。そして豚に変わってしまう。
これは、異界の側に借りができてしまったことになるんです。

人間が豚に変わるところは、西洋のおとぎ話の影響もあります。
この間ちょっと触れましたが、紀元前8世紀に書かれたホメロスの
『オデュッセイア』では、オデュッセウスの一行は魔女キルケーの島に上陸し、
キルケーの差し出す食べ物を口にして豚に変えられてしまいます。

西洋の童話では、魔法でヒキガエルに変えられた王子なんかが出てきますが、
その大もとは、おそらくギリシア神話なんじゃないかと思います。
変身の呪いを解くため、主人公の千尋は異界の中でさまざまな働きをします。
よく考えられたストーリーだと思いますね。

黄泉比良坂
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さて、『千と千尋の神隠し』と構造が似ているのが、日本神話のイザナギ、イザナミの
黄泉国の話です。亡くなった妻のイザナミに、黄泉国まで会いにいったイザナギは、
けっしてふり向いてはいけないという約束を破って、腐り果てた妻の姿を見てしまう。
そして、怒ったイザナギに追いかけられますが、
黄泉国とこの世の境界が、「黄泉比良坂 よもつひらさか」です。

また、「黄泉戸喫 よもつへぐい」ということもあり、
これは、イザナミが黄泉国の食物を口にしてしまっており、
すでに黄泉国の住人になってしまっているとして、
最初は地上への帰還を断られ、イザナギがどうしてもと頼み込んだことで、
後ろをふりかえってはいけないという条件がつくんです。

で、さらにこれとそっくりなのが、ギリシャ神話の「オルフェウス」の話です。
できあがったのは、もちろんギリシア神話のほうが古く、神話学者の
吉田敦彦氏によると、ヨーロッパから中東、アジアを経て日本に伝播したために、
内容が類似しているのだということですが、ありえないことはないでしょう。
こうしてみると、ギリシア神話の影響力って大きんですね。

妻と冥界から逃れるオルフェウス
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さて、日本の異界には、「隠れ里」 「迷い家」なんてのもありますが、
山の中で道に迷って入っていく場合が多いんですね。ですが、現代だと、
登山ルートは決められていますし、入山して下りてこなければ、
遭難ということになって、捜索隊が出されます。

そこで、現代の都市伝説では、乗り物が一種の異界へのルートになっていることが
多いんですね。前に2ちゃんねるで話題になったのは、エレベーターに乗って
異界に行く方法でした。4階、2階、6階、2階、10階と複雑な操作で移動し、
さらに5階に下りると、人ではない雰囲気を持った女が乗ってくる・・・

sっっd (1)

「きさらぎ駅」というのも乗り物がらみです。投稿者の女性が、新浜松駅から
いつも利用している電車に乗車したら、電車はなぜかどこにも停車せずに走り続け、
他の乗客はすべて眠りこけている。そしてやっと停まったのが、
「きさらぎ駅」というあるはずのない駅・・・

エレベーターも鉄道も、日常的に利用している人が多いですので、
山の中に入っていくよりはリアリティがあるでしょう。あとはそうですね、
物理学で、量子力学の波の収縮の解釈として、エバレット3世が多世界解釈を示し、
そこからSF作家がアイデアを発展させて、「平行世界」という概念ができました。

sっっd (2)

多世界解釈だと、他の世界とは行き来できないはずですが、
それだとつまらないので、何らかの方法で行くことができる設定にします。
これもネットで、縦横5センチの正方形の紙に六芒星をペンで書き、
その真ん中に赤字で「飽きた」と書いておくと、寝ている間にパラレルワールドの
自分と入れ替わることができる、という方法が話題を集めました。

さてさて、ということで、異界について書いてきましたが、まとまらない内容になって
しまいました。ただ、やはり昔からの約束事というのはありますので、
異世界の話を書こうと考えている方は、それらに留意してストーリーを考えて
みるといいんじゃないでしょうか。では、今回はこのへんで。

関連記事 『ロビンソンとガリバーの間』

sっっd (3)





火星移住の話

2018.12.16 (Sun)
『How We'll Live on Mars』などの著書を持つ、
作家のステファン・ペトラネック氏によれば、我々人類の火星移住は
運命づけられた未来であるという。地球は完全絶滅に向けて動き出しているのであり、
小惑星の衝突、破局的な火山噴火、太陽フレアなどによって、
滅亡へと向かう勢いが加速するということだ。

また、作家のマイク・バラ氏は、「人類が火星で十分に長い期間を経て進化すれば、
彼らの身体は大型化し、特に頭は不自然なまでに大きくなり、
手足はひょろ長くなります。そして地球よりも太陽から離れている火星は、
昼でもあまり明るくないため、ものがしっかり見えるように目が大きくなる。」
と述べています。
(tocana)

今回はこういうお題でいきます。今、宇宙関係の話題がすごく盛り上がっていますね。
前にお伝えした、中国の、月の裏側を探査する「嫦娥」。
それと、アメリカ、NASAの探査機「インサイト」による火星からの画像送信。
まさに、米中の宇宙開発競争の幕が開けたという雰囲気になっています。

火星の低気圧にさらされると
sssss (6)

上掲の記事は、アメリカ人の作家などが、人類の火星移住における身体的な変化に
ついて述べたものですが、自分にはいろいろと疑問のある内容です。
まあ、これは科学的な専門家の意見ではないので、しょうがないのかもしれませんが、
どうしても人類を、「体がひょろ長く目が大きい」ステロタイプの宇宙人に
進化させたがっているという気がします。

さて、人類の火星移住の可能性については、当ブログでも前に書いていますが、
さまざまな困難が予想されています。まず一つめが、
火星は地球よりも太陽から遠いため、寒いことです。
火星の平均表面温度は-43℃、最低温度は-140℃になります。
これだと、南極で暮らしているようなもんですよね。

2つめは、低重力です。火星の表面重力は地球の約1/3ですので、
そのまま暮せば、人間の体にいろんな悪影響が出ると予想されます。ちなみに、
国際宇宙ステーションの宇宙飛行士には、長期の無重力下での滞在で、
筋力の低下、骨量の減少、カルシウム不足等が見られ、
さらに頭部への血流過大なども指摘されています。

火星への移住
sssss (4)

3つめ、宇宙からの放射線による被爆ですね。火星の大気は薄く、
地球のような強い地磁気もないため、ほぼ素通しで放射線に晒されてしまいます。
ですから、何らかの形で体を保護する必要があります。
4つめは、火星大気に酸素が少ないこと。まだこの他にも、
障害はいろいろあると思われます。

で、上の記事は、「火星の低重力で人間の身長が伸び、体がひょろ長くなる」
という意見なんですが、これ、火星移住にあたって低重力対策をしないってこと
なんですかね。しかし、それは無理でしょう。では、低重力にそのまま晒されていると、
どんな危険があるか、もう少しくわしく考えてみましょう。

まず考えられるのは、宇宙ステーション内と同じく、
骨がもろくなることです。人間の体は、地球上では重力によって、
絶えず下方へと引っぱられていて、骨は、それに負けないような
強度を維持しているんですよね。あと、循環器系はどうでしょうか。

探査機インサイトからの「宇宙人の写った」画像
sssss (2)

心臓から出た血液は、地球の重力に逆らって上、つまり頭の方向に上っていきます。
ところが、低重力下では心臓ポンプの勢いが強すぎて、
頭にいく血液が多くなり、足にいく血液はその分少なくなるでしょう。
昔の火星人の想像図は、「頭が大きく、足は触手のようなタコ型」
が多かったんですが、これはこのあたりのことを考えてのことなのかもしれません。

あとまあ、人間の体は細胞から成り立っていますよね。細胞は水の詰まった袋で、
60兆個もあるとされる細胞の一つ一つにも地球の重力が働いています。
それが低重力に長期間さらされることで、どう変化するかはわかりません。
また、火星で妊娠したとして、子宮内の胎児がどのように成長するのかも不明です。
ということで、人類が火星上で「そのまま暮らす」のは無理です。

では、どうやって低重力を克服するか。まあ、最も簡単なのは、
頭部に、地球上での体重の2倍程度の重りをつけること(笑)。
でもそれだと、姿勢を変えるたびに、重りの重心がずれてしまいます。
これは、足の裏に強力な電磁石をつけて、鉄の床を歩くとかでも同じことです。

人工重力として、よくSF小説に出てくるのは、遠心力を利用したものです。
巨大な、そして高速で回る観覧車を想像してみてください。
回転するものには、中心から外側に向かって遠心力が働きます。
この場合、回転の中心が、地球上でいえば上の方向、
円の外周が下の方向ということになります。(下図)

人工重力
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次に、これも超巨大なジェットコースターのようなものをつくり、
地球の重力加速度1Gで走らせる。このときに、進行方向が地球での下になり、
後ろ側が上になります。あれ、人工重力って、なんか遊園地みたい、
と思われた人がいるんじゃないでしょうか。

それは正解です。遊園地の乗り物は、重力(加速度)を操って、
ふだんとは違う感覚を味わわせるものが大部分なんですね。まあ、この他にも、
火星上に大規模な電磁場を発生させて重力のかわりにするとかも
理論的にはあるんでしょうが、それはさすがに非現実的です。

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さてさて、ここまで、主に低重力について書いてきましたが、
おそらく、火星に移住した人類は、厚いドームの中にいないと、
生きていけないでしょう。そのドームの中は暖かく、空気があり、
重力が地球程度で、さらに宇宙放射線から守られている。

こう考えると、人類の火星移住がいかに難しいかがわかると思います。
もう100年程度でできるようになるとは、とても思えません。
フィリップ・K・ディック原作の映画、『トータル・リコール』では、
ドーム内の酸素供給をめぐる利権が、テーマの一つになってましたよね。
では、今回はこのへんで。

関連記事 『Mars hoax』

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神が祟る話

2018.12.15 (Sat)
※ ナンセンス話です。

今晩は。よろしくおねがいします。〇〇市の工務店に勤めている石川と申します。
つい最近、うちの会社で起きたことをお話していきます。
うちの会社は、正規の従業員は25人ぐらいの中小なんです。
そのほとんどは作業員で、内勤の事務は、私を含めて女子4人。
それと、現社長の奥さんが副社長としてやってます。主な仕事は、
冬期の除雪作業ですね。それで年間の利益の半分を超えてます。
あとはほんとに、道路の補修とか、半端な公共事業しか回ってこないんです。
まあ、うちはブルドーザー以外の重機はすくないでので、しかたないんですが。
会社は、先代の社長が一昨年病気で亡くなりまして、長男の現社長が
後を継いだんです。ええ、始めのうちはすごく張り切ってたんですけど・・・
なかなか事業規模は拡大せず、むしろジリ貧になってきまして。

はい、やはり一昨年、選挙で市長がかわって、それまであったコネが効きにくく
なったんです。それであせった社長が手当たり次第に仕事を受注し、そしたら、
いろいろ施工に不具合が出て苦情が来たりして。最近、評判がよくないみたいなんです。
で、先月半ばのことですね。トンネル工事の下請けで道路整備をやってた
うちの会社のブルが、操作ミスで、道の脇にあったごく小さなお社というか、
お堂を倒しちゃったって話があったんです。もちろん元のとおりに立て直したんですけど、
扉や屋根なんかが破損しちゃって。ほら、建設会社って、地鎮祭もやりますし、
そういう縁起みたいなこと、すごく気にしますよね。
それで、現場監督が社長に事情を話して、お社を新しいものに建て替え、
お祓いなんかもしたらどうでしょうって言ったみたいなんです。
そしたら社長、すごく怒っちゃって、「どんだけ経費節減してると思ってるんだ、

 そんな迷信につき合ってるゆとりはないんだよ」って、監督を変えちゃったんです。
これ、どう思いますか。現場のほうはビビっちゃって「事故が起きるんじゃないか」って、
作業員が言い合ってたそうです。でも、その仕事では、特に事故とかはなかったんですよ。
社長には、作業員の噂も耳に入ってたみたいで、「ほら、何もなかっただろ。
 神仏なんて、どれだけ願い事をしたって、かなえてくれたりはしねえ。
 そのかわり祟りなんてのもないからな」みたいに言ってたんだそうです。
けど、工事が終わってしばらくして、会社でおかしなことが起こりはじめて・・・
最初は雨漏り・・・というか、水漏れだったんです。最初に話したように、
事務員は4人だけ。社長の奥さんが副社長というのは名前だけで、
めったに出社してくることはなかったんです。会社の事務所は、
社屋の1階部分の一部屋だけだったんですが、

一番年配の先輩事務員が、部屋の隅のところで派手に転んだんです。
頭を打ちましたけど、たいしたことはなかったです。そのとき、「床が濡れてる!」
って言って、見てみたら、そうですね。茶碗半分くらいの量の透明な水が
こぼれてました。でも、転んだのは出社して直後だったので、
誰も水をこぼした人なんていないんです。みなで雨漏りじゃないかと言って、
天井を見てみたら、水がしみてる様子はなし。というか、事務所は1階なので、
雨漏りするはずはないんです。だから、2階の倉庫も見たんですけど、
倉庫にはなんの異変もなかったんです。まあ、そのときは大したことだと
思わなかったし、私が床を拭いて終わったんですが・・・翌日、私が一番若いので、
最初に出社するんですが、事務所内を軽く掃除してると、
前の日と同じ場所が濡れてるのに気がついたんです。

もちろん拭きましたけど、その水、透明だけど変な臭いがしたんです。
悪い臭いってことじゃなく、なんと言えばいいでしょうかねえ。
一番近いのが「よもぎ餅」でしょうか。薬草の臭いと言えばいいのかもしれません。
それで、拭いている最中に天井を見上げたら・・・
真上に、うっすらと黒い煙というか、もやのようなものが渦巻いてたんです。
「あ、火事!?」そう思って給湯室を確認したんですが、火の気はなし。
会社に出てるのは私だけだからタバコの煙ってこともないし、
2階にもおかしなことはなし。そもそも、本物の煙なら、
火災検知器が作動するはずすよね。ところがそんなこともなくて。
で、しゃがみ込んでた私の上に、その黒い煙から、
パラパラっと水が落ちてきたんです。大粒の雨という感じでした。

急いでその場を離れたんですが、その水からもやっぱり植物の臭いがしたんです。
そうしてるうち、他の事務員が出社してきたんですが、
状況は変わりませんでした。天井付近にある1mくらいの黒いもやから、
ときおりザッと水が落ちてくる。前の日に転んだ先輩が、
「なんか雨雲から雨が降ってるみたいね」って言いました。
それで、現場に直行してる予定の社長の携帯に連絡して事情を話しました。
社長は、「この忙しいときに何をバカな」みたいな反応でしたけど、
みなでかわるがわる訴えたら、事務所に見に来るって言ったんです。
で、それから30分ほどして、社長ともう一人ベテランの作業員が事務所に来たので、
「あれです」ってみなで雲のほうを指さしました。
そしたら雲の中が青く光ったんです。ドドドドンという太鼓を叩くような音がしました。

黒雲は、しゅーっと滑るように動いて、社長の真上まで来たんです。
黒雲の中からバチバチッとオレンジ色のギザギザの光が八方に出て、
まるでミニチュアの稲妻みたいでした。で、大量の水が社長の頭の上に・・・
少し前にアイスバケツチャレンジってありましたよね。あんな量の水を
頭に受けた社長は、「うほほほ~~」みたいな声を出して入口のほうに
逃げたんですけど、黒雲は追いかけていって、第2弾をドシャーッと。
社長が移動すると黒雲はついていきましたが、社長が社屋から出ると、
外には行けないようで、最初にあった場所に戻ってきたんです。
不思議な話しですよねえ。私たちはほら、工事でお社を倒したことを聞いていたので、
そのせいで神様が怒ってるんじゃないかって話をしてました。
それで、社長は作業員と車でどこかへ出かけたみたいで、

しばらくして大きな袋を持って戻ってきたんです。それ、業務用の粗塩でした。
社長は口の開いた袋を下に置くと、すぐに黒雲が社長の頭上をめがけて飛んできたので、
「こういうのには塩が効くんだろ」と言いながら、相撲取りみたいに
手で塩をつかんで、黒雲めがけて投げ上げたんです。そしたら・・・
黒雲に塩が届くよりも先に、雲の中から真っ白い光の束が出て、
社長の脳天を直撃しました。社長の髪の毛が一瞬逆立ち、それから「うーん」と言って、
社長はその場に倒れちゃったんです。はい、救急車を呼びました。
ここからは聞いた話ですけど、社長は病院に着く前に意識を取り戻し、
病院ではCTなどを撮っても、特に異常はなかったみたいです。
で、黒雲は事務所の隅に戻って、依然としてそこにあるので困ったんですが、
相談した結果、ホムセンから大きなたらいを買ってきて、雲の下に置いておいたんです。

社長には、作業員たちがずいぶん、お社に謝罪や捧げ物をしたほうが
いいんじゃないですかって進言したみたいです。でも、社長は意地になって
「絶対にやらん」って言い張って・・・でも、そうも言ってられなくなったんですよ。
はい、実際の雨が降るようになったんです。それも、うちの会社が受注した仕事がある
日に限ってです。これは困りますよね。今は昔と違って、雨が降っててもできる
工事は多いんですが、うちの会社は中小なので、コンクリやアスファルトを使う
工程が多かったんです。どの仕事も工期が遅れに遅れてしまって、
それにはさすがの社長も音を上げました。で、やっと、
お社の神様に謝ろうってことになったんです。まず、そのお社を管理していた神職に
連絡を取って、しっかりお祀りをしていただくことになりました。
そのために、山海の珍味や五穀なんかを準備し、お社のある場所に行きました。

はい、私は事務所にいたので、作業員さんたちから聞いた内容です。
神職を先頭にして、社長や現場監督たちがお社の前にずらりと並んで、
ご燈明をあげてから、扉を開いたそうです。そしたら・・・
その場にいた全員が「あっ!!」という声を上げ、社長はその場にへたりこんでしまった
そうです。何があったと思いますか? お社に入るほど小さくなった、
亡くなった先代の社長が中にちょこんと座っていたんだそうです。
社長が「父さん・・」と言うと、先代社長は閉じていた目を開け、
「お前のやり方はいかん」そう一言つぶやくと、ぱっと消えてしまって、
あとには御神体の石があるだけ・・・その後、お祓いを済ませて新しいお社を奉納したら、
事務所の黒雲は消え、仕事時に雨が降ることもなくなったんです。
この話、信じてもらえるかわかりませんけど、本当にあったことなんですよ。






プロレスと移動カーニバル

2018.12.14 (Fri)
アメリカの移動カーニバル
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今回はこういうお題でいきますが、できるだけブログの趣旨に沿った、
オカルトな内容にしたいと思います。さて、みなさんはプロレスはお好きでしょうか。
自分はけっこう好きです。ただ、自分は小学校から大学まで柔道をやっていたので、
見始めた少年時代から、プロレスが、いわゆる「本気でたたかう競技」
ではないことはわかっていました。

まず、本気の競技だと、ああいうゆっくりした間にはなりません。
たえず動き回っていなくてはならず、選手同士が互いに技を出し合うという形には
ならないんです。総合格闘技はそうですよね。
また、ブレーンバスターやボデイスラムという技がありますが、
かけられるほうが踏ん張れば、簡単には人間の体は持ち上がりまん。

プロレスはすべて、細かい約束事から成り立っています。
例えば、ヘッドロックという頭を締めつける基本技がありますが、
あれは必ず左手でやることになっています。youtubeで、どれでもいいので
プロレスの試合を見てもらえばわかりますが、ほぼ100%左腕です。

カーニバル・レスラー
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これは、そのほうが、かけられた相手がバックドロップなどで返しやすい
ということもありますし、初顔同士のプロレスラーの対戦でも、
約束事があればスムーズに試合を運ぶことができるからで、ケガの防止にもなります。
数ヶ月に1試合のボクシングとは違って、プロレスは毎日のように興行があるので、
相手にケガをさせないことが大切です。

さて、自分はなにもここでプロレスを貶めるつもりはないですし、
秘密を暴くのが目的というわけではありません。アメリカ文化の一つとして、
プロレスを大いに尊敬しているつもりです。上でボクシングの話を少し書きましたが、
アメリカにおけるボクシングとプロレスはルーツが違います。

ボクシングはもともとヨーロッパで始まったもので、
それが開拓者とともにアメリカにも伝わりました。ボクシングの創成期には、
マフィアがからんだ八百長もありましたが、基本的にはガチの試合です。
これに対し、プロレスには善玉(ベビーフェイス)と悪役(ヒール)がいて、
試合の勝敗も最初から決められています。

フレンチ・エンジェル(怪奇レスラー)
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なぜそうなのかというと、アメリカのプロレスのルーツが「移動カーニバル」
からきているからなんですね。移動カーニバル(traveling carnival)は、
国土の広いアメリカをサーキットして回る興行で、みなさんも、アメリカ映画で
子どもが射的なんかをやってるシーンをご覧になったことがあると思います。

特に、テレビのまだなかった時代には、移動カーバルが町にやってくるのは、
娯楽の少ないアメリカの田舎町の住人には、たいへんな楽しみだったんです。
ちなみに、アメリカは南北にも広く、北部は冬とても寒いので、
移動カーニバルは基本的に、夏の暑い時期に北部、
冬場は南部のほうを回ることになっていました。

この移動カーニバルがアメリカ文化に与えた影響って、ひじょうに大きいんです。
SF作家のレイ・ブラッドベリには、長編『何かが道をやってくる』、
短編集『黒いカーニバル』がありますが、どちらも、
子ども時代のカーニバル体験への郷愁から書かれた作品です。
トルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』なんかもそうですね。

カーニバルは楽しいだけではなく、不気味な出し物もありました。
怪しげな占い師がソロテントの店を出していたり、
エレファントマンのようなフリークス(畸形)のショーもありました。
アメリカのホラー映画では、ピエロが出てくるものが多いですが、
それも子どもの頃のカーニバル体験からの連想です。

フリークショーの4本足の少女
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さて、19世紀にアメリカで大人気だった降霊術も、カーニバルのように
各地を巡業して回りました。このときにアメリカでは、幽霊は勝手に
さまよい歩くのではなく、霊媒師が呼び出すものだという認識が広まったんですね。
ただこれは、日本製のホラー映画の影響もあって少しずつ変化してきています。

また、アメリカの各地で、現在でも霊媒師(ミーディアム)が活動しているのも、
その心霊主義の時代の影響が残っているからなんです。
なかなかプロレスの話にならないですね。みなさんはイタリアの映画監督、
フェデリコ・フェリーニの『道』という作品はご存じでしょうか。
あれには、ザンパノという力技のカーニバル芸人が出てきますよね。

フェリーニ『道』のザンパノ


初期のプロレスラーも、そういうところから生まれてきたんです。
カーニバルのテントの一つに簡単なリングを作り、賞金を賭けて、
その町の腕自慢の素人の挑戦を受ける。これにはかなりの実力が必要です。
また、入場料を取ってカーニバルレスラー同士の対戦を見せる。

このときに、観客の憎悪を買う悪役レスラーが最初からいたんですね。
悪役レスラーは体が大きく、ひげもじゃの怖い風貌をしている。
それに対し、善玉レスラーは体は小さいですが、若々しくスマートで、
はじめは苦戦するものの、最終的には悪役レスラーを倒して観客の喝采を受けます。

この形が発展したのが、アメリカンプロレスなんです。
ですから、始まった当初から勝敗の決めごとがあったわけです。
勝ち負けはその地のプロモーターが決め、それに逆らうことはできません。
もし決めごとを破ってガチを仕掛けたりしたレスラーがいれば、
アメリカ全土にお触れが出て、そのレスラーは干されることになります。

ハーリー・レイス(レスラー)
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ヨーロッパ出身で、日本で「プロレスの神様」と呼ばれたカール・ゴッチも、
干されたことのある一人です。NWA世界ヘビー級王座を通算8回獲得し、
「ミスター・プロレス」の称号を持つハーリー・レイスは、本人は明言してませんが、
15歳でカーニバルレスラーとしてデビューしているんです。
では、今回はこのへんで。

レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』
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お茶の話

2018.12.13 (Thu)
インフルエンザウイルスの表面は、「スパイク」と呼ばれる突起状の
たんぱく質で覆われています。ヒトに感染する際、このスパイクが呼吸器粘膜の
細胞表面に吸着、侵入するうえで重要な役割を果たしているのです。

紅茶ポリフェノールには、この「スパイク」に付着し、
ウイルスが細胞に吸着する能力を奪う力があり、ウイルスの感染を阻害し、
無力化することが分かっています。
(現代ビジネス)

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今回は、科学ニュースからこういうお題でいきます。みなさんは紅茶派でしょうか、
それともコーヒー派、あるいは日本の緑茶? じつは、自分はコーヒーってほとんど
飲まないんですよね。緑茶もまず飲みません。そのかわり紅茶はよく飲むので、
これはうれしいニュースです。特に、紅茶の中でもハーブティーが好きで、
ブレンドを工夫したりして楽しんでいます。

ハーブティー
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上掲のニュースは、紅茶の持つ抗インフルエンザ効果についての話ですが、
紅茶にインフルエンザ菌を殺す力があるというわけではないようです。
インフルエンザ菌は、人間の粘膜に取りつくためのギザギザのトゲを
持っていますが、それを紅茶ポリフェノールが包み込んで動けなくする、
体の奥に入っていきにくくする、ということみたいですね。

あれ、でも、紅茶、緑茶、ウーロン茶って、どれも同じ「茶ノ木」の葉を
原料にしていますよね。どう違いがあるんでしょうか。
これは、生葉を乾燥、発酵させてつくるさいの発酵度の違いなんです。
まず、まったく発酵をしないのが緑茶です。

そして、半発酵したものがウーロン茶、完全醗酵させたのが紅茶です。
茶の葉に含まれるカテキン(タンニン)は、不発酵なら緑色ですが、
発酵が進むにつれて赤くなっていきます。このとき、カテキンが酸化によって、
「紅茶ポリフェノール」に変化します。

紅茶ポリフェノールの主な成分は、テアフラビンと呼ばれるもので、
緑茶にはほとんど含まれていません。このテアフラビンを含んだアメが売られていて、
なめるだけで風邪やインフルエンザを予防できると言われます。
もちろん、紅茶を飲んでも効果があるわけですが、
味が嫌いだという人は、うがいだけでもいいようです。

さて、当ブログは健康ブログではありませんので、この話題はこれくらいにして、
紅茶やお茶に関する怖い話ってあんまりないんですよね。
自分は、世界のホラー小説や映画はかなり知ってるんですが、
すぐには思い浮かびませんでした。これ、どうしてなんでしょうかねえ。

同じ嗜好品でも、お酒や煙草はあれこれ思いつきます。例えばお酒だと、
ポーの『アモンティリヤアドの酒樽』とかロアルド・ダールの『味』とか。
煙草だと、これはホラーとはいい難いんですが、
芥川龍之介の『煙草と悪魔』なんかですね。

やっぱり、お酒が人を酩酊させるのに対して、お茶類はカフェインが含まれていて、
思考を冴えさせる効果があるせいかもしれません。と、ここまで考えて、
『吸血鬼カーミラ』を書いたアイルランドの怪奇小説家、シェリダン・レ・ファニュに、
そのものずばり『緑茶』という短編があるのを思い出しました。

シェリダン・レ・ファニュ 『緑茶』
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これ、19世紀の、まだイギリスで緑茶が珍しかった頃に書かれたもので、
世界初のドラッグ小説と言われます。筋は、ある牧師が緑茶を飲むようになってから、
真っ黒い子猿につきまとわれる幻覚を見るようになり・・・という内容で、
緑茶が、東洋の神秘を象徴する小道具みたいになってるんですね。
自分が読んだときには、そう怖いとは思わず、あまり印象に残りませんでした。

あ、そうだ、緑茶に関してはきわめつけの話があるじゃないですか。
落語の『まんじゅうこわい』です。日本のものかと思ったら原話は中国みたいです。
ある嫌な男が、「俺は怖いものは何もないが、あえていえばまんじゅうが怖い」と言う。
そこで男を困らせてやろうと山盛りのまんじゅうを出したら、
男はすべて平らげてしまって、最後に「今度はお茶が怖い」・・・

紅茶については何かありますかねえ。ギリシア神話のキルケーの話がそうかな。
キルケーは、ホメーロス作『オデュッセイア』に出てくる魔女で、
気に入った男を自分の島にさらってきて、飽きるとハーブティーを飲ませて
豚に変えてしまいます。ただ、それが茶の葉をベースにした飲み物かは
わかりません。たぶん違うのかな。

ギリシア神話の魔女キルケーとキルケーのハーブティー
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このキルケーの話は、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』のアイデアの一つなんです。
ドイツ文学者の中野京子氏による『怖い絵』シリーズでは、上掲の、
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスのキルケーの絵が取りあげられており、
その出版を記念した特製のハーブティーが販売されています。

さて、歴史的にみれば、お酒はどこの国でも自前のものが古くからありました。
糖類を発酵させることでアルコールはできますので、
日本でも古代から酒造りが行われていたことがわかっています。
『万葉集』にも、お酒を詠んだ歌はいろいろ入ってますよね。

これに対し、コーヒー、紅茶、あとカカオなんかは原種の植物がないと
飲むことができません。で、それぞれ不幸な歴史をかかえています。
カカオは南米原産で、コロンブスなどのスペイン人の探検家が、
中南米を征服するさいに出会って、ヨーロッパに紹介したものです。

アラビアコーヒー
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コーヒーはアラビア原産のものが、ヨーロッパ人によって逆に南米に持ち込まれ、
プランテーションで奴隷に栽培をさせていました。紅茶もそうですね。
インドを植民地にしたイギリスが、現地人に栽培させていたことはよく知られていて、
どれも帝国主義による搾取の上に成り立っていたものなんです。

さてさて、コーヒーやお茶にはカフェインが含まれており、覚醒作用がありますが、
飲みすぎると、夜眠れなくなるだけでなく、不整脈、動悸、悪心、めまい
などが起きると言われています。カフェイン中毒で亡くなった例もかなりあるようで、
摂りすぎにはご注意ください。では、今回はこのへんで。

インドの紅茶摘み
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社史編纂室の話

2018.12.12 (Wed)
あ、横田ともうします、よろしくお願いします。自分、ある証券会社に勤めてまして。
社名は言いませんけど、話の内容で察しがつくと思います。
先月、うちの社長が急逝しました。ゴルフをしている最中に、心筋梗塞の発作を
起こしたんです。救急搬送されたんですが、郊外のゴルフ場だったために、
病院が遠くて時間がかかり、手遅れになってしまったんですね。
はい、このことは新聞でも報道されました。それで、社長の死を契機に、
社内でクーデターが起きたんです。本来なら社長の後を継ぐはずだった副社長が、
取締役会議で解任され、専務の一人が次期社長になったんです。
で、そのために副社長派と目されていた幹部たちも次々に辞めちゃって。
まあね、自分みたいな下っ端には関係ない雲の上の話なんですけど。
そういうことがあったので、新年度でもないのに社内人事が改変されて。

自分もね、新しい部署に変わったんです。営業から総務部にです。
これはね、よかったと思ってました。外回りの営業は重労働だし責任も大きいけど、
総務はずっと会社にいますでしょ。それに、仕事内容も社内の備品を揃えるとか、
そんな程度のもんだと思ってたんですよ。それがまさか、あんな目に遭うとはねえ。
でね、今回の人事改変を契機として、大規模な社内の整理を行うことになったんです。
ええ、廃棄するものは廃棄し、鍵類を確認し、新たに入退室システムを導入する。
まあ、こう言うと大変そうですけど、本社は貸しビルの3階分のスペースで、
そこまでたくさんの部屋があるわけじゃないんです。
でね、自分と部下2人が担当になって、まず1部屋ずつ確認していったんです。
そしたら、会社が入ってるのは17階建てビルの15、16、17階なんですが、
最上階の外れにある一室、これが使われていないことがわかったんです。

ええ、小部屋ですけど鍵はかかります。その鍵を誰も持ってる人がおらず、
入れなくて、いろんな人から話を聞いたら、鍵は亡くなった前社長が持ってるって
ことだったんです。そのときに、妙な噂も耳に入ってきたんですよ。
その部屋は封印されてるって。誰もはっきりしたことはわからなかったんですが、
その部屋は社史編纂室として使われてた。で、社史ができあがったので、
編纂室は解散したんですが、そのときに亡くなった人が何人かいるってことです。
まあでも、社史編纂なんて、こう言うとなんだけど、社内でも窓際になった人が
やるもんじゃないですか。だから、そんなに気にしなかったんですよ。
とにかく入れないんで、業者を呼んで鍵を開けてもらったっていうか、
ドアごと取り外したんです。そしたら、入っていった瞬間、背筋がぞくぞくっとしました。
寒いんです。もちろん部屋のエアコンのスイッチは入ってないんですが、

季節は秋口で、そんなに寒いわけがない。中は、日本間だったら12畳くらいの広さで、
長テーブル4つとパイプ椅子が10個ほどあって、簡単な会議ができそうでした。
けど・・・とにかく様子が変だったんです。まずね、窓が板で塞がれてたんです、
内側から。それも太いネジで壁に板がはりつけられてて、外すには業者を呼ぶしか
ないだろうと思いました。あと、天井から杭みたいなのが4本、
頭を下にして打ち込まれてて。ええ、蛍光灯を避けるようにして等間隔で。
杭って言いましたけど、ほら、映画でドラキュラの胸に打ち込むやつがあるじゃないですか。
金属の尖ったやつ。あれを連想してしまいました。意味がわからなかったですね。
何かを上から吊るすために使ったのか。あと、一方の壁は全面が書棚になってて、
中にはびっしり綴じた書類が入ってたんです。それにも鍵がかかってて、
ガラスを割らないと中のものが取り出せない。

はい、それでまず、内装の業者を呼んだんです。窓の板を外して、
天井の杭を抜いてもらうためです。でね、その作業中に業者に呼ばれて、行ってみると、
窓の板が外されてて空が見えました。17階だから、隣にビルはないんです。
見下ろした下は駐車場でした。で、問題は天井の杭です。すごく長かったため、
業者が天井板を外したんです。ふつうはそこ、パイプ類が通る空間になってるんですが、
中にねえ、黒いものが渦を巻くようにして詰まってたんです。
髪の毛だと思いました。それも長い女の髪の毛が大量に。もっと変だったのは、
その髪の毛が奇妙な機械にからみついてたこと。うーん、なんと説明すればいいか。
昔の真空管のテレビがあるじゃないですか。自分は機械いじりが好きで、
工業博物館に行ったことがあるんですが、そこで見たような古めかしい機械が、
髪の毛がからんだ状態で、天井裏にびっしり詰まってたんです。

何のためのものかわからないし、そもそもその機械には電源が取られてなかったんです。
これには業者も困ってました。自分も、撤去していいのかどうかわからず、
とりあえずそれは保留にしたんです。あと、業者が言うには、
杭は天井を突き抜けて屋上まで続いてるってことで、一緒に屋上を見に行ったんです。
はい、屋上はふだんから出入り禁止で、鍵がないと入れません。
でね、給水塔とかあるんですけど、その杭が出てる部屋の真上に、
お社みたいな建物があったんです。大きさは2間四方くらい。木でできたお社の扉は
固く閉まっていて、その前にあるロウソク立てにはロウが溜まってました。
だれかがお参りしてロウソクをあげてたってことですよね。もうね、
これは自分の手には負えないと考えて、総務部長に相談しました。来てもらって
現場を見せたら、部長も困惑して、とりあえずどうするかは棚上げになったんです。

できることは書棚の整理でした。鍵は開けなくても、サッシ自体を外すことができたんです。
中に入ってたのは、会社がまだ始まったばかりの頃の古い書類、
昔のワープロで感熱紙に打ったのやら、手書きのものまであって、おそらく、
社史編纂の資料なんだと思いました。全部シュレッダーにかけてよさそうでしたが、
万一貴重なものがあってはいけないと考え、部下のA君に整理を頼んだんです。
で、自分は総務の部屋に戻ってたんですが・・・2時間くらいたって、
廊下が騒がしくなり、社員の一人が部内に駆け込んできて、「人が落ちた」って言うんです。
はい、A君です。あの部屋の窓から下の駐車場に飛び降り、17階なので即死でした。
救急車や警察も来まして、たいへんな騒ぎになったんです。A君は結婚して2年目、
まだ子どもはいなかったんですが、奥さんが変わり果てた遺体に取りついて泣いてました・・・
それで、飛び降りたのがあの部屋の窓からってことで、警察が見に来たんですが、

窓が全開になってました。あと、机の上に紐閉じの厚い綴りが広げられてて、それがねえ・・・
開かれてたページは紙が黄ばんだ古いもので、書かれてるのは事務的な内容。
けど、写真が1枚載ってて、それ、A君の結婚式のものだったんです。新郎新婦が腕を組んで、
各テーブルを回ってるときの。ありえないですよね。2年前に行われた結婚式の写真が、
そんなとこに載ってるなんて。綴りに書かれてる日付は、昭和42年だったんです。
それと、そのページの欄外にボールペンで、「この部屋ヤバイです」って
書かれてたんです・・・A君の字だと思いました。
本を棚に戻そうとしたとき、「カッチコッチ」という音が上のほうから聞こえてきて、
警察がいなくなってから机に上がって、天井板が外されてる穴から中を覗いてみました。
ほら、髪の毛がからみついた古い機械があるって言ったでしょ。
それの真空管にオレンジの明かりがついて、歯車みたいなのが動いてたんです。

けど、それは、自分が見てるうちに止まって静かになりました。どう考えても
おかしいですよね。それで、A君の葬儀が済んだ2日後、編纂室に一人で入り、
あの結婚式の写真が入った綴りを出そうとしました。けど、一番手前においたはずなのに、
見つからなかったんです。あれから誰もその部屋に出入りはしてないし、
失くなるわけはないんで、何冊も引き出して開いてみました。その中で、
一枚の写真が目に止まったんです。中学生が何かの行事のときに撮ったクラス写真で、
それ、驚いたことに自分の中学校のときのものだったんです。
「ええ!」で、中に子どもの頃の自分がいました。その3人隣が、
Yという男子で、Yはその年自殺したんです。はい、イジメが原因でした。
恥ずかしい話なんですが、自分もそのイジメに一枚加わってたんです。
「なんでこんなものが印刷されてこんなところに!?」当時の出来事がばーっと甦ってきて、

写真から目を離せなくなりました。中に引き込まれていきそうな感じというか・・・
そのとき耳に、前に聞いた「カッチコッチ」という音が入ってきました。
「ああ、天井の機械が動いてる」そう思って、無理やり綴りのページを綴じたんです。
はい、もう一度開いても、その写真は見つからなかったです。
その後、自分からすべてのことを聞いた総務部長が新社長に相談し、
社史編纂室はそれ以上手つけないことになりました。それから2週間後、
会社で頼んだ神職が何人もやってきて、部屋と屋上の神社のお祓いをしたんです。
日曜日だったので、そのことを知ってる社員は少ないです。で、部屋のほうは、
前のように窓を塞ぎ、天井の機械もそのままにして封印されたんです。
はい、もう入る人はいません。・・・あの部屋、何のためのものだったんでしょう。
こちらで何かわかりますでしょうか?







孝明天皇と韓国併合

2018.12.11 (Tue)
今回はこういうお題でいきます。日本史のカテゴリです。
孝明天皇はご存知の方が多いでしょう。江戸時代の最後の天皇であり、
明治天皇の父君です。幕末の動乱の最中に在位し、1866年(慶応2年)に、
36歳で崩御されています。朝廷が公的に発表した死因は痘瘡による病死ですが、
これまで、根強く暗殺説が唱えられてきています。

孝明天皇
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次に、日韓併合ですが、1910年(明治43年)に、大日本帝国が大韓帝国を併合。
統治は昭和20年まで続いています。孝明天皇の死から韓国併合まで、
50年近いへだたりがあるわけですが、この2つの出来事には、
深い関係性があるんですね。それについてはいろんな人が書いてるんですが、
当ブログで強調したいのは、巷間に流れる「噂の恐ろしさ」ということです。

朝鮮総督府
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さて、孝明天皇が崩御されてすぐ、世間には、暗殺されたのではないかという
噂が流れ始めました。中には、天皇は厠に入っているところを刺殺されたとか、
天皇に新しい筆が献上され、その筆先をなめたとたんに具合が悪くなって床につき、
そのまま急死したなどというものまでありました。

もちろんこの2つは事実ではありませんが、噂はそうとうに広まっていたようで、
イギリスの外交官、アーネスト・サトウの滞在記録に、
「最初、死因は疱瘡と言われていたが、信用できる日本人から、
天皇は暗殺されたと聞いた」と書かれています。

なぜ、こんな噂が流れたのか。それは世間の目に、孝明天皇は暗殺されてしかるべき
と見える理由があったからですね。孝明天皇の主義主張ははっきりしており、
諸外国に対しては「開国反対、徹底的な攘夷」でしたが、当時の識者はみな、
それが無理なことがわかっていました。むしろ、西洋文明を積極的に受け入れ、
日本の国力を高めていく必要があると考えられていたんです。

もう一つ、孝明天皇は徳川幕府に対し「公武合体、佐幕」政策をとっていました。
第十四代将軍の家茂を信頼しており、妹の和宮を降嫁させています。
この2つは、どちらも薩長の志士、開明派の公家にはじゃまでしかたが
ないものだったんですね。孝明天皇がいなくなれば、
徳川幕府を滅ぼして、改革が一気に進むと考えられていたわけです。

岩倉具視
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ということで、動機は十分です。では、もし暗殺だとしたら誰がやったのか。
これは、名前があがっているのは、薩摩藩士の大久保利通、公家の岩倉具視です。
特に岩倉のほうは、「天皇の存在が世を混乱させている。天皇は世間に対して
謝るべきだ」という過激な発言をした記録が残っています。

じゃあ、ほんとうに暗殺だったのか。これはわかりませんねえ。
天皇が発熱した後、天皇を診る資格を持つ医師団による24時間体制の看護が始まり、
痘瘡の診断が出たものの、その後、一度は回復期に入ったときの「御順症」
という状態になってるんです。それが、あるときを境に容態が急変し、
最期は体中から血を出して亡くなったとされます。

暗殺かどうかについては、昭和、平成にも歴史学者による論争が起きていますが、
結論は出ていません。もし暗殺だとしたら、砒素による毒殺。
やはり最も疑われるのは、公家として天皇の近くにいた岩倉具視なんでしょう。
ちなみにこのとき、長州藩士の伊藤博文は鉄砲の買いつけなどをしており、
暗殺の機会はなかったと考えられています。

あと、孝明天皇とともに、皇太子であった睦仁親王も暗殺され、後の明治天皇は、
すり替えられた、かつての南朝の血を引く大室寅之祐という人物だとする
説があります。これ、自分も興味を持ってあれこれ調べてみましたが、
かなりの無理があり、陰謀論というしかないものです。

明治天皇と大室寅之祐(とされる画像)
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さて、ここまででだいぶ話が長くなってしまいました。先を進めます。
伊藤博文はロシアのハルビン駅で、大韓帝国の民族運動家、
安重根によって射殺されました。その最期の言葉は「俺を撃ったりして、馬鹿なやつだ」
と伝えられています。この真意はわかりませんが、伊藤はどちらかといえば、
韓国併合には反対の立場だったはずです。

日本はまだまだ国力を充実させる時期で、韓国併合でよぶんな金をかけるゆとりはない
ということです。ロシア官憲はすぐに安重根らの身柄を拘束して日本に引き渡し、
安は死刑になりますが、裁判において、伊藤暗殺の15の理由を列挙し、
これは、当時の新聞で広く日本や世界に公表されています。

伊藤博文と安重根
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で、その14番めのものが、「今ヲ去ル四十二年前、現日本皇帝ノ御父君ニ当ラセラル
御方ヲ伊藤サンガ失イマシタ。ソノ事ハミナ韓国民ガ知ッテオリマス。」
つまり、明治天皇の父親(孝明天皇)を伊藤が暗殺したこととなってるんですね。
これも謎な部分で、もし孝明天皇の死が暗殺だったとしても、
どうして安が、犯人が伊藤だと考えたのかがわかりません。

不思議ですよね。ちなみに、安重根は韓国国内では反日の義士とされていますが、
日本の天皇の崇拝者でもあったんです。ただしそのことは、
現在の韓国内では広まっていません。こう書くと問題があるでしょうが、
韓国は、都合のよいことだけが周知され、悪いことは隠され、
歴史的な捏造が横行する、たいへんに幼稚な社会です。

伊藤暗殺の翌年、日本政府は韓国併合を促進し、大韓帝国は消滅します。
ですから、安の行動は、韓国併合を加速させてしまったことになります。
皮肉な話というしかありませんし、
歴史のめぐり合わせの不思議さを実感します。

さてさて、ということで、孝明天皇の暗殺の噂、これが50年近い時を経て、
伊藤博文の暗殺から韓国併合につながっていくわけで、
最初に書いたとおり、噂って怖いなあと思います。ある噂が立てば、
それを利用しようとする人が必ず現れるんですよね。では、今回はこのへんで。

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月の裏の話

2018.12.10 (Mon)
中国は、世界で初めて月の裏側に着陸することを目指して、
無人の月探査機を打ち上げました。

無人探査機「嫦娥四号」は8日未明、四川省の衛星発射センターから、
ロケットに搭載して打ち上げられました。月までは数週間かかる予定で、
年明けに月の裏側に着陸して月面の鉱物や表面の構造、
地質などを調査する計画です。着陸に成功すれば世界で初めてとなります。

習近平指導部は「宇宙強国」を国家目標に掲げていて、アメリカなどと並んで、
科学技術で世界の覇権を握ることを目指しています。
(テレ朝news)

月の表と裏
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今回はこういうお題でいきます。自分は占星術師ですので、これまで、
当ブログでは積極的に宇宙の話を取りあげており、月についても何度か書いています。
まず、探査機の名前の「嫦娥 じょうが」というのは、中国神話の登場人物で、
もとは仙女だったが、地上に下りた際に不死でなくなったため、西王母の不死の薬を
盗んで飲み、月に逃げて蟇蛙(ヒキガエル)になったと伝えられています。

この話はかなり古くからあるようで、発掘された前2世紀の「馬王堆漢墓」
の吊画には、月の上に、大きなヒキガエルが描かれています。
中国では、毛沢東の文化大革命によって、古い神話伝承などは捨て去られて、
ほとんど顧みられなくなったんですが、最近は復活してきて、
むしろ積極的に、探査機の名前などに使われるようになっています。

中国の月の女神「嫦娥」
kkkk (1)

さて、月の不思議の一つとして、つねに地球に同じ面を向けている点があります。
地球からは、どうやっても月の裏側を見ることができないんですね。これは、
月の裏側からは電波通信もできないということです。ですから中国では、
嫦娥からの通信電波を中継するための衛星を別個に打ち上げているんです。

では、なんで月の裏側は見られないんでしょうか。この理由は、
月の自転と公転の周期が同じためで、どちらも27.32日です。
これ、一見すると不思議な感じがしますよね。
地球の場合、自転周期は当然ながら1日、公転周期は約365日です。

ですので、オカルト界では昔から、月の裏側には宇宙人の秘密基地がある
などと言われてきました。ただし、惑星と衛星の関係を考えると、
これは不思議でもなんでもないんです。太陽系の衛星は、
例えば、木星のガニメデ、土星のタイタン、火星のフォボスなどなど、
ほとんどが自転と公転の周期が同じなんです。

月の裏側が地球から見えない理由
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ここで詳しい説明はしませんが、これは惑星とその衛星が、
潮汐力によって互いに影響をおよぼし合っているためと考えられています。
その形が、いちばん軌道が安定するんですね。このため、
月の重力の影響によって、地球の自転周期も少しずつ長くなってきてるんです。
はるか遠い将来には、地球の自転も月と同期するのかもしれません。

さて、では、月の裏側には何の不思議もないかというと、これがあるんです。
アポロ11号は、月の「静かの海」に着陸しましたが、
これは月をウサギに見立てた場合、顔にあたる部分で、
一般的に、「月の海」とは、地球から見て暗くなっている場所を指します。

ここで少し、オカルト的な余談になります。海外では、アメリカを中心に、
「アポロは月に行っていない」説というのが流行していますよね。
ところが、日本ではあまり盛んではありません。なんでかというと、
これにはオカルト界の勢力争いが関係してるんです。

アポロ11号の月面到達
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「アポロは月に行っていない」説は、どちらかというと陰謀論になります。
アメリカ政府が、国民にいろんなことを隠しているという内容ですが、
日本人にはあんまり面白くありません。ですから、日本の場合、
「アポロは月に行き、宇宙飛行士が宇宙人と接触した」説のほうが優勢なんです。

話をもとに戻して、月の海は、最初はクレーターの影だと思われていたんですが、
だんだんにそうでないことがわかってきました。クレーターではあるものの、
その中に、黒い鉱物が広がっています。これは、約38億年ほど前、
月の内部にマグマが形成され、クレーターの底から噴出して内部を埋めたものと
考えられます。だから黒く見えるんですね。

で、この海のある割合が、月の表と裏ではまったく違うんです。(最初の画像)
月の表の海の比率は約30%なのに対して、裏側はわずかに2%でしかありません。
これ、不思議ですよねえ。また、また裏側は表側より標高が高く、地殻が厚くなっており、
鉱物の組成もかなり違っています。このことを「月の二分性」といいます。

どうしてこんなことになったのか。いろいろな説が立てられています。
例えば、月ができたばかりの頃は、月の表側は地球からの放射熱でドロドロに溶け、
裏側のほうが早く固まったからとか、月形成の初期に、表側で巨大衝突があり、
表側の高地を構成する地殻物質の多くが吹き飛ばされてしまったためであるとか。
でも、はっきりしたことはわかっていないんですね。

さて、長くなってきたので、そろそろ、月にあるとされる「宇宙遺跡」をご紹介します。
必ずしも裏側というわけではありません。赤丸で囲まれた画像は、
「かぐや姫の遺体」(笑)と呼ばれるものです。
この他にもたくさんあるんですが、みなさんどう思われますでしょうか。

月面の宇宙遺跡とされる画像
kkkk (2)

これ以外にも、日本では、福来友吉博士によって発見された超能力者の一人、
三田光一が、昭和6年に月の裏側を「念写」した写真が残っています。
これ、実際に月の裏側の画像と比較してみればわかりますが、
似ても似つかないとしか言いようがありません。

三田光一による月の裏面の念写写真
kkkk (1)

さてさて、最後に、習近平主席は、中国が「宇宙強国」となることを目指すと
述べていますが、一方のアメリカはこれを受け、トランプ大統領が、
「アメリカ宇宙軍 US space force」 創設を明言していますよね。
また米ソの宇宙開発競争のようなことが始まるんでしょうか。
くれぐれも平和利用にかぎってほしいですね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『月=人工天体説って何?』




夢の神社の話

2018.12.09 (Sun)
今年の春から普通高校に通ってます。よろしくお願いします。
私、バレー部に入ってて、同じ中学校からきた友だちが2人いたんですけど、
その2人に関係した話なんです。2人とももう亡くなってしまったんですが、
仮名でいいですよね。一人は彩花、もう一人は麗美ってことにしておきます。
彩花は中学校でセッターをやってて、あんまり背が高くないんです。
逆に麗美は、中学校時代に県代表に選ばれてて、175cmくらいあります。
私はその中間くらい。私も彩花も、高校のレギュラーはまだまだ遠いけど、
麗美のほうは、新人戦前からベンチ入りしてました。
それで、3人とも同じ中学出身だから帰りが同じ方向で、
いつも同じバスに乗ってたんです。そのバスの中で、いろいろ話をするんですが、
やっぱり、一番多いのは男子のことですね。

ただ、麗美は体が大きいわりに、そういうことにはおっとりしてる感じでした。
まあ、バレー命って感じだと思ってたんです。けど、彩花のほうはすごくそういうの好きで。
で、男子バレー部の2年生のK先輩っているんですけど、
その人に彩花がすごく熱をあげてて。まあでも、ちょっと釣り合わないっていうと
悪いけど、私は、無理だよなあって内心思ってたんですよ。それが・・・
彩花が、K先輩がつき合ってた子と別れたって情報を仕入れてきて、
今フリーのはずだから、告白してみようかなって言い出したんです。
「無理だから」とも言えないし、そのときは「頑張ってね」とは話したんですが・・・
ところが、その告白がうまくいって、彩花、K先輩とつき合い始めたんです。
驚いたんですが、2年生の先輩方の嫉妬がすごい高まってて、
何にもなけりゃいいなって、麗美と話してたんですよ。

で、帰りのバスの中で「スゴイねー」ってその話を出したら、彩花は自慢そうな顔で、
「そういうことに効果のある神社にお参りした」って言うんです。
当然、「それどこ?」って聞きますよね。そしたら、「夢の中に出てくる神社」って。
彩花の話をまとめると、ネットを見てたら、何でも願いことがかなう神社の
サイトがあって、そこで参拝券のようなものを買うと、
夜寝てから、夢の中に神社が出てきて願い事をすることができ、
それは高い確率でかなうってことでした。これも当然「いくらなの?」って聞きますよね。
そしたら、「お試し期間だったからタダ」ってことでした。
タダならほしいじゃないですか。「どこのサイト?」って聞いたら、
「それがもう閉鎖されたのか、見つからなくなっちゃった。でも、私は名前と住所を変えて、
 いくつかもらってるし、親友だから分けてあげる」って言って。

次の日またバスの中で、彩花からお守り袋みたいなのを、それぞれ渡されたんです。
10cmくらいの赤い布の袋です。ヒモがついていて、口のところが固く縛ってありました。
軽くて、中には何かやわらかいものが入ってる感じがしたんです。
あ、今は持ってないです。捨てちゃったんで。彩花は、「まず、神社にお参りする夜は、
 お風呂に入っちゃダメなの。顔とかは洗ってもいいけど、石鹸とか使っちゃダメ、
 歯磨きもダメ。で、お守りを枕の下に入れて寝ると、夢の中でその神社の鳥居の前に
 いるの。でも、それだけだとダメで、特別な形で手を叩く」
こう言って、奇妙な動作をやってみせたんです。手を背中に回して、
指先を下に向けてパンパンと2回叩く。それから一礼して、さらにもう一回。
「これ、あめのさかてって言うんだって」その場で麗美とやってみたんですが、
背中の筋肉がつりそうな感じがしました。

で、もちろんやってみようと思ったんですが、お風呂に入らないっていうのがネックで。
バレー部は毎日、3時間以上の練習があるので、すごく汗臭くなるんです。
でも、月に2回、高体連の取り決めで、土曜日が休みになるんです。
それで、麗美と話をして、次の土曜日にやってみて、どうなったか報告し合おう、
ってことにしました。うーん、そうですね。信じてはいなかったですよ。
でも、ちょっとわくわくするじゃないですか。で、土曜日の夜です。
気持ち悪かったんですが、お風呂に入らず歯磨きもしないで、枕の下に赤い袋を入れて、
11時過ぎに寝ました。でもそのとき、神社で何をお願いするかまでは
考えてなかったんです。はい、夢は見ました。気がついたら、何というか、
廃墟のビルの中のようなところにいたんです。かなりの広さがあって、
体育館半分くらいでしょうか。床はコンクリで、厚くホコリが積もって、

コンクリの欠片が転がってました。あと、見回しても窓がどこにもなかったので、
地下の駐車場みたいな場所かと思ったんです。そのとき、自分で、ああこれは夢の中だって、
わかってました。でも、神社って聞いてたので、意外な感じがして。
どこにも照明は見あたらないのに、うすぼんやり明るかったです。
で、一方の壁に、ペンキで吹きつけたみたいな、鳥居が描かれてたんですよ。
すごい雑で、まるで落書きみたいな。そっちに向かっていったんですが、
すごい、背中がぞくぞくするような感じがありました。鳥居は人の背の倍くらいの高さ。
その前に立って、彩花から聞いたとおり、背中を向けて「あめのさかて」をやりました。
そしたら、頭の中に声が響いてきたんです。「またおなごが来たのか、
 まあよい、願い事を一つ言え」たぶん男の声だと思いましたが、自信はないです。
そのときに、願い事を考えてなかったのを思い出して、とっさに、

「レギュラーでバレーの試合に出たいです」って言いました。そしたら、
しばらく沈黙があって、「わかった。出してやろう。ただし一試合だけだ・・・
 もし、もっと願い事をしたいのなら、次は捧げ物を持ってこなくてはならぬ。
 捧げ物は肉がよいなあ」こういう意味のことが頭の中にわーんと響いて、
壁の鳥居の中が、一瞬青白く光ったように思いました。そこで目が覚め、
枕元の時計を見ると、朝の5時少し前でした。私は体中汗をびっしょりかいていて、
あと、動物みたいな臭いがしたんです。はい、それは私の体じゃなく、
枕の下からでした。あの赤いお守り袋を出してみると、すごい臭いで。
子どもの頃に、家で猫を飼ってたことがあるんですけど、
そのオシッコの臭いに似てるように思いました。それで、お守りは机の引き出しに
入れたんですよ。次の日の日曜日、部活は練習試合で、母に車で送ってもらいました。

そしたら、マネージャーから、彩花が、熱が高くて休む連絡があったって聞きました。
その日は、市の体育館で、他の学校と何試合かしたんですが、
最初の試合で、先輩方が2人ケガをしたんです。それで、かわりに私が出ることになって。
「ああ、夢の中の願い事が、もしかしてかなった?」そうも考えたんですが、
先輩方のケガも軽かったので、公式戦では無理だろうなって思いました。
それでも、監督に認めてもらおうと思って、プレーは必死に頑張ったんです。
で、昼休みの時間になって麗美と話をしたら、見た夢が同じだったんです。
薄暗いビルの中にいて、壁に描かれた鳥居に向かってお祈りしたこと、
頭の中に声が聞こえてきたことも。私は、試合に出たいって願ったことを言い、
「麗美は?」って聞いたら、麗美は、「私、願い事考えてなかったし、
 そのときになって迷っちゃって言えなかった」って。

あと、私が、枕の下のお守り袋が臭くなってたことを言ったら、麗美は、
「私は気がつかなかった。臭いなんてしなかったと思う」こう答えたんです。
それから・・・彩花はずっと学校を休んだままでした。
部の監督の先生から、ちょっと難しい病気にかかってるって話がありました。
無菌室というとこに入ってるので、面会謝絶で見舞いには行けないことも。
メールとかもできなかったんです。それからまたしばらくして、彩花は大きな市の病院に
移ったって聞かされました。それと、麗美のほうは・・・
練習でも試合でも、何か元気がない様子でミスが多く、自慢の強打がまったく決まらなくなり、
とうとうレギュラーから外されちゃったんです。でも、あんまり落ち込んでる様子もなくて。
なんでかっていうと、彩花の入院後、k先輩とつき合いだしたからです。
これ、すごく意外で、私だけじゃなくみんな驚いてました。

それから1ヶ月ほどして、彩花が亡くなったという知らせが入りました。
お葬式にはもちろん出ました。私は泣いてしまったんですが、麗美は平然とした様子だったんです。
ここで私、「もしかして麗美、K先輩とつき合いたいって、あの神社でお願いしたんじゃないか」
そんなことを考えてしまって、家に帰ってから、あのお守り袋を出してみたら、
臭いはまったくなくなってました。その日はお風呂に入らず、もう一度、
枕の下にしいて寝たんです。・・・同じ場所にいました。赤い鳥居もありましたが、
前と違ってたのは、鳥居の前に大量の・・・赤黒い肉が積み重なっていたことです。
夢の中なのに、臭くて近づけなかったんです。その大量の生肉の積まれた後ろに、
人の足が片方見えました。足はバレーシューズをはいていて、もうとっくに火葬されてる、
彩花の足じゃないかって思ったんです。そのときすごく怖くなりました。
体がガタガタ震え、頭の中に前に聞いた声が響いてきたんです。

「捧げ物は持ってきたのか? もっともっとほしい」って。私が頭を振ると、
「ないのか、ならば去ね」・・・それで目が覚めたんです。枕の下からお守り袋を出してみると、
袋が硬くなって破れてました。中から、焦茶色の毛の束がこぼれてて、
気持ち悪かったんですけど全部集めてビニール袋に入れ、家のゴミには出さず、
近くの橋にいって川に捨てました。・・・その後、麗美とK先輩のつき合いは続いてましたが、
完全にレギュラーからは外れてしまって、私のほうが、公式戦でもときどき使ってもらえるように
なったんです。麗美は部活に来なくなり、1週間前に行方不明になりました。
警察の捜索でもなかなか見つからなかったんですが、市の郊外にあるホテルの廃墟の地下で
亡くなってるのが発見されて。解剖の結果は、殺人とかじゃなく急な病死ということだったんです。
ただ、どうしてそんなところに行ったかは誰もわからなくて。あと、これは噂ですけど、
麗美が妊娠してたって話が広まってるんです。本当かどうかはわからないですが。







「入らずの地」について

2018.12.08 (Sat)
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今回はこういうお題でいきます。カテゴリとしては怪談論です。
さて、怪談の一つのパターンとして「入ってはいけない場所」というのがあります。
それは、裏の山だったり、集落の外れの廃屋だったり、
神社の杜だったりするんですが、典型的な筋の流れとしては、

「子どもが、入ってはいけないとつねづね言われてる場所に入り、怖ろしい体験を
して命からがら家に戻り、家人にそのことを言うと、じいさんにしこたま
殴られた上で、寺の住職のところに連れていかれて長い加持祈祷を受け・・・」
こんな展開です。ただしこれ、怪談としてはもう使い古されてしまっているので、
今さら書くとなると、よほどの工夫が必要になってきます。

ではこの、「入ってはいけない場所」のルーツはどこにあるんでしょうか?
まず一つめに考えられるのは、その昔に、朝廷や幕府、あるいは大きな寺社の
直轄領だった土地です。これだと、そこに入ってはいけないし、
草木の一本も持ち出したら厳罰に処されてしまいます。

この他に、他の藩の飛び領地や、「入会(いりあい)地」も含まれるでしょう。
入会地というのは、村が共同で所有、管理している土地で、
主に、藁屋根を葺くための茅の採取に用いられましたが、それ以外にも、
建築用材や薪炭材、馬のマグサを刈るためにも使われていました。
これらの慣習が、江戸から明治に変わっても残っている土地ということです。

次は、神社や寺の跡地。大きな寺社でも、火災や地震などのため、
ふつうは何度か建て替えられています。その場合、やや離れた場所に新しい
社殿を建てることが多く、残った土地は忌地になることがあります。
あとは、昔から古墳ではないかと言い伝えられている場所。

前方後円墳はみなさんご存知だと思いますが、これって、
けっこう削られてなくなってしまったものがあるんです。奈良の平城京の発掘で、
都地造営のために破壊された古い古墳がたくさん見つかっています。
また、小高い前方後円墳は、戦国時代に武将の山城として使われたり、
太平洋戦争時に、高射砲台地にされたりしているケースがあるんですね。

未発見の古墳もまだあると思われます。それと、古墳よりもさらに古い時代の、
山岳信仰の磐座などがある山。奈良の「大神(おおみわ)神社」の御神体は
三輪山そのもので、3ヶ所の磐座がありますが、そのあたりは禁足地で、
詳しい調査はされていません。三輪山は有名ですが、
この手のものが各地にあってもおかしくはないと思います。(下図)

結界が張られた三輪山の磐座
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あとはそうですね、鬼門思想によるものもあるでしょう。鬼門というのは、
北東(艮=うしとら)の方角のことで、鬼が出入りするとされました。
もとは中国の陰陽五行説から来たものです。大きな神社の鬼門の方角には、
竹が植えられて竹やぶになってる場合があります。

「八幡(やわた)の藪知らず」はご存知でしょうか。
千葉県市川市八幡にある森の通称で、古くから禁足地とされており、
「足を踏み入れると二度と出てこられなくなる」という神隠しの伝承が残っています。
地図で見るとせまい土地なんですが、密集した竹林になっていますね。(下図)

「八幡の藪知らず」
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この地の伝承としては、平将門の家臣の墓所説なんかがあるんですが、
場所的に、葛飾八幡宮と葛飾神社の間にあるので、どちらかの神社の鬼門に
あたる可能性が指摘されています。または、前述したように、
建て替えられた跡地なのかもしれません。

次は、「たくさんの人が亡くなった場所」です。戦国時代の古戦場なんかが
そうですが、少し掘れば錆びた矢尻などが出てきたりします。
そういう場所には怨念が残っていると考えられても不思議はないですよね。
現代では、殺人が起きた家やアパートの部屋が「いわくつき物件」と
されますが、そのもっと大規模なものと考えればいいでしょう。

東京の有名心霊スポットである「八王子城址」なんかが好例です。(下図)
ここは16世紀の合戦で、落城時に北条方の婦女子や武将らが滝の上流で自刃し、
次々と身を投じたと言われ、麓の村では城山川の水で米を炊けば、
赤く米が染まるほどであったと伝えられています。
その祟りが現在まで残されているとされるわけです。

「八王子城址自然公園」
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長くなってきたので最後にしますが、牛馬などの解体を生業とする被差別部落が
あった場所が忌地になるケース。「新平民」という言葉をご存知でしょうか。
江戸から明治になって、四民平等の世の中になりましたが、もと一般の農民だった
平民は、旧賤民と同列にされるのを嫌がり「新平民」という蔑称をつけました。
このために「解放令反対一揆」が起きたりしているんですね。

柳田國男
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この差別はその後も長く続き、村で「入ってはいけない場所」といった場合、
その関係であることが多かったんです。少し話は変わりますが、
明治時代に『遠野物語』を書いて民俗学を確立した柳田國男は、
民話の採集にあたって、例えば「夜這い」などの性的な風俗と、もう一つ、
農村における差別問題を徹底的に排除しました。

これは、新たな学問領域を立てるにあたり、興味本位の目で見られたり、
社会問題になるのを避けるためで、ある面でしかたがなかったのかもしれませんが、
この柳田の方針により、江戸時代以前の農村の真の実態が、
よくわからなくなってしまったという批判もあるんですよね。

さてさて、このように「入ってはいけない場所」 「忌地」 「禁足地」には、
さまざまな成因があります。それらの背景を知って怪談を書くと、
内容に深みが出たりするかもしれませんよ。
では、今回はこのへんで。

被差別部落専用の、いわゆる「穢多寺」
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「ブレインテック」って何?

2018.12.07 (Fri)
IT企業を中心とする新興企業が、次の市場として狙っているのは人間、
正確には人間の脳だ。神経工学を使い脳を操作する。これをブレインテックという。

今、ブレインテックが熱い。次々とベンチャー企業が起ち上がり、
夢のようなマシンを作り出している。ブレインテックを使って、被るだけでダイエット
できたり、ゲームのスコアを上げたり、明晰夢を見たりできる
「魔法のヘッドセット」が登場したのだ!
(Rakutennews)



今回は、科学ニュースからこういうお題でいきます。
うーん、ブレインテックと聞けば、自分は車好きなので、車のウインドウに貼る
フィルムの会社かと思ってしまいますが、そうではないようです。
「ブレインテック braintech」は、brain(脳) と technology(技術)を
組み合わせた造語で、かなり幅広い意味で使われているみたいですね。

さて、上掲の記事で、どうやって痩せるかといいますと、
「Modius」というヘッドセットがすでに発売されていて(下図)、
これを電極が耳の後ろになるようにかぶり、1日に45分着けているだけで
体重が減るということのようです。

「Modius」


すでに、369ユーロ(約4万7000円)でオンラインストアから買うことができ、
アプリをスマートフォンにダウンロードすることで、ヘッドセットからの電気刺激が
頭蓋骨に加わります。これは、すでに開発され、うつ病の治療などに使用されている、
「tDCS(経頭蓋磁気刺激)」という技術を応用しているみたいですね。

耳の後ろあたりから、脳の前庭部という部分に電気を流すと、
前庭部は平衡感覚を司っているので、そこを刺激されると平衡感覚を失います。
つまり、車酔いや船酔いと同じ状態になるわけです。
気持ちが悪くなるので、ご飯が食べられなくなって痩せる。原理は簡単ですが、
みなさんこれ、健康的なダイエット法だと思いますか?



インターネットの商品サイトには、「効果があった」 「なかった」など、
さまざまな声が寄せられていて、批判的な内容も載せているのは良心的な感じもします。
ところで、余談になりますが、世の中には、いろんな健康食品、
サプリメント、健康器具などがあって、改正された薬事法により、
「〇〇病が治る」 「〇〇病に効果がある」という表現は使うことができなくなりました。

じゃあ、業者はどうするのかというと、「製品の愛用者からのお便り」という形で
宣伝をする場合が多いんです。「これを使ったら、〇〇が数ヶ月で治りました。
とても感謝しています」みたいなものですが、これねえ、サクラが多いんですよね。
ひどいときには、実在しない架空の人物からのお便りだったりします。

前に少し書きましたが、健康食品やサプリメント、〇〇水、浄水器・・・
この手のものは、オカルトと結びついている場合がけっこうあるんです。
また、新興宗教団体が資金集めの手段として健康器具を売ったりもしています。
本来、実際に病気に効果があるものは、きちんとした治験をへて医薬品になります。

それが、そうでないということは、効果のほどは怪しいということです。
治療法もそうですね。手を患部にかざすだけという治療を売り物にしている
宗教団体は有名です。ただしこれも、「治療」という言葉を使ってはいけないので、
「〇〇療法」となっている場合が多いんです。

川島なお美さんも受けた、純金の棒で患部をなでる「ごしんじょう療法」


最近、癌治療をしていることを表明した高須院長は、前に雑誌のインタビューで、
「そもそも、効くものは「医薬品」に分類されるから、医師じゃないと処方できない。
で、効くか効かないかわからないものは「医薬部外品」、
ほとんど効かないものを「化粧品」って呼ぶんですよ。」こう述べていましたが、
この図式は、健康食品でも民間療法でも、まあ同じです。

で、上記の「Modius」も、自分が海外サイトで調べたかぎりでは、かなり怪しいものです。
では、ブレインテックを使って痩せることはできるんでしょうか。
これは、自分はできると思います。人間の食欲を司る中枢は、
脳の視床下部にあることがわかっています。また、そこには性欲中枢もあります。

じゃあ、それを刺激したら、ダイエットができたり、媚薬のような効果を発揮できるのか。
たぶんそうでしょう。上記の「Modius」の場合は、頭蓋骨に電気刺激を与えているので、
マッサージ機と大差ないものです。ですが、脳の食欲中枢に直接電極を刺して
刺激するのは、外科手術ということになって、医師にしかできません。

食欲の起きるしくみ


それと、治験が難しいということもあります。人間の脳に直接刺激を加えるのは、
「人体実験」ではないかという批判があり、なかなか実施することができないんです。
動物実験はできるでしょうが、サルで起きた効果が、
人間でも現れるとは言えません。あと、肥満は慢性病の原因になるでしょうが、
必ずしも、命取りの病気というわけではありませんよね。

これがもし、ひじょうに致死率の高い病気なら、人体実験的な治験も許されるかも
しれませんが、ダイエットのために脳をいじるのは、倫理的な問題があるんですね。
また、ダイエットの場合、標準体重の人でも「もっと痩せたい」と実行して、
かえって体調を崩してしまうこともあります。以上のようなことから、
直接 脳に刺激を与える形のダイエットというのは、とうぶん行われることはないでしょう。

あとはそうですね、脳への直接刺激でできることはいろいろ考えられます。
例えば、麻薬を使ったように幻覚を見せることもできるでしょうし、眠りに誘ったり、
集中力を高めたり、持久力や筋力を高めたりすることもできると思われます。
これは、スポーツ選手が使うとドーピングということになりますが、
薬物使用とは違って痕跡が残りにくいでしょう。

オウム真理教のヘッドギア


このように、脳への直接刺激は、たしかに多くの可能性を秘めているんですが、
同時にかなりの危険性もあります。脳については、わかっていないことが多く、
その要因は、人体実験ができないからというのが最も大きいんです。
上記のニュースでは、今後、ブレインテックの開発が大きく進むだろうとなっていますが、
ここまで書いたように、自分はあんまりそうとは思えないんですよね。

さてさて、ということで、外部から人間の脳を直接刺激することは危険な技術です。
人格をまったく変えてしまったり、思いのままに行動を操ったり、
恐怖や自己保存本能をなくし、良心が麻痺して罪悪感などを感じない、
殺人マシーンのような兵士をつくることも可能でしょう。この技術は、
かなり慎重に扱われるべきものだと考えます。では、今回はこのへんで。

関連記事 『太陽常温説とオカルトの闇』




魚釣りにいく話

2018.12.07 (Fri)
あ、こんばんは、よろしくお願いします。俺ね、ある県の地元の大学の3年生です。
いや、国立じゃなく私立の。でねえ、のっけからこんなことを言うのも
なんなんですけど、将来に希望が持てないっていうか。
ええ、誰でも入れるような大学ですからね。就職先がしれてるんですよ。
県内だと、スーパーとか、市場とかしかありません。
ずっと長い下積み生活だし、そのゴールが、よくてスーパーの店長でしょ。
いやいや、スーパーの店長をバカにしてるわけじゃなくて・・・
若いんだから、もっと夢を持ちたいじゃないですか。
でね、今、成り上がれるっていったらインターネットじゃないですか。
あのほら、ユーチューバーってやつ。調べてみたんだけど、
人気のあるユーチューバーって、収入が億を超えてるんですよ。

単純にうらやましいじゃないですか。まあね、ほとんどのやつはそう思って
始めるんだろうけど、実際は、時間ばかりかかって儲けはスズメの涙。
割に合わないんでやめちゃう人が大部分だってのも知ってます。
だけどね、やってみて悪いこともないでしょ。でね、まず仲間を集めたんですよ。
これは、俺一人じゃカメラが買えないってのが大きかったです。
いいビデオカメラは高いんですよ。あとね、やっぱ一人だと、
何やっていいかわかんなくて。俺、特に趣味もないし、何かに詳しいわけでもないし。
で、石原ってやつと沖田ってやつ、同じ学部から仲間2人を集めたんです。
2人ともすぐ乗ってきましたよ。何をやろうか相談して、とりあえず「釣り」
でいってみないかってことになりました。あの、あるんですよ、
「釣りよか」っていうユーチューブのチャンネルが。

やってるのは俺らみたいな普通の若いやつ。ただ、やつらは海釣りが多いんだけど、
それは用具に金がかかるんです。俺らは、3人で金を出しあってカメラ買ったら、
ほとんどスカンピンで。だから、ホームセンターで売ってる安い竿とかでできる
淡水の釣りにしたんです。でね、去年の夏休みですね。レンタカーを借りて、
ダム湖で釣りをして回るのをやったんです。予定は1週間でした。
俺らの地方は山が多くて、ダム湖があちこちにあるんです。
でね、やってみたら、難しかったんですよねえ。釣りもビデオ撮影も。
まずね、釣りのほうはまったくダメ。最初は小魚も釣れなかったし、
釣師の人に、その仕掛けじゃ釣れないよ、ってバカにされました。それと、
ビデオのほうは、自分らで撮影したのを見たら、画面がグラグラ揺れてて吐き気がする。
やっぱ素人はダメですよねえ。ユーチューブに何本か投稿しても、ほとんど反応なし。

まあ、最初から話題になる人のほうが少ないんで、続けなきゃなんないんだろうけど、
俺ら、その1週間ですっかりメゲちゃって。なんかね、3人の仲も悪くなってきたんです。
それで、もうやめようってことになって。ずっと車中泊だったから体が痛くて、
風呂にも入ってないんで汗臭くってね。だから、もう終わりだから、
最後だけでも旅館に泊まろうってことになりました。けど、そんなに金もなくて、
ダム湖の周回道路を車で流してたら、釣具屋を兼業してる民泊があったんです。
そこに入って。そしたら、店の奥に巨大な魚の剥製がありました。2m以上です。
形はイワナに似てましたね。それと、その回りに写真が何枚も貼ってあったんです。
見ると、どれも古くて黄ばんでましたが、ダムの岸やボートから、
その剥製と同じ魚を釣り上げてる写真です。「すげえ」俺らは興奮して、
店番の親父さんに「これ、何すか?」って聞いたんです。

そしたら、そこのダム湖はもとは自然の湖で、昭和の10年頃まで、
巨大なイワナ型の魚が釣れてた。ただし、釣った人は1年に数人。釣れなかった年もあり、
太平洋戦争が終わったら、まったくと言っていいほど釣れなくなった・・・そういう話でした。
いわゆる幻の怪魚ってやつです。それ聞いて、俺らちょっと興奮しましてね。
もう1回だけ、この湖で釣りをしてビデオに撮ろう。まあ巨大魚は釣れなくてもともと、
この剥製を動画に出すだけでもすごくね、って思ったんです。けども、
最初から出鼻をくじかれちゃって。親父さんに撮影していいですかって聞いたら、
断られちゃったんです。「マスコミで話題になって、湖を荒らされたくない」って理由でした。
でもこれ、釈然としませんよね。釣具店で民泊なんだから、人が来たほうがいいに
決まってるじゃないですか。けどまあ、その日泊まって、翌日はそこのダム湖で、
最後の撮影をするつもりでした。民泊はその親父とおかみさんの2人でやってるみたいで、

奥さんは太った話好きの人でしたね。夕食込みで一泊一人5000円。
高くはないですよね。夕食は、地元のダム湖でとれた魚を中心に豪勢でした。
部屋は8畳間に3人です。で、おかみさんには、「家の中は好きにしてていいけど、
2階には上がらないでくれんね」って言われたんです。風呂は家庭用だったので、
一人ずつ入ったんだけど、その手前に、2階へのせまい階段がありました。
その夜はビールを飲んで寝て、翌朝早くに起き出してダム湖に釣りに行く準備をし、
庭先に停めてあるワゴン車に向かったら、民泊の2階の窓がガラッと開いたんです。
で、そこから「ねえ、釣りに行くの?」女の子が顔を出したんです。
上半身しか見えなかったんですが、高校生くらいだと思いました。それがね、
すごいきれいな人だったんですよ。顔も手も抜けるように白くて、目が大きくてね。
赤い模様の浴衣の袖が見えました。今でも顔を思い出せます。俺ら3人がぼうっとしてると、

その子は、「大きい魚釣ってきてね」そう言って、下にいる俺らに手を振ってから、
中に引っ込んだんです。「見たか、おい」 「ああ、見た。すごいきれいな人」
「この宿の娘さんかな」 「そうだろ、学校が夏休みなんだろうな」
「それで二階に上がるなって言ってたわけか」こんなことを言い合いました。
でね、ダム湖で1日過ごしたんですが、やっぱりまったく釣れませんでした。
ただ、釣師何人かにインタビューをしたんです。巨大魚を見たことがあるかって。
そしたら、知らない人が多かったんですが、ベテランの釣師の一人が、
「お前さんら、あの民泊にある剥製見て、そんなことを言ってるんだろ。あれな、
 木を彫った作り物だぞ。貼ってある写真は本物かもしれんが、なんせ古い話で、
 巨大魚なんて、仲間で釣ったやつはいねえよ」こんなことを言ったんです。
「ああ、それで撮影するなって言ったわけか」俺はそう考えて納得したんですよ。

昼を過ぎて、民泊に寄って荷物をとって地元に戻る予定でしたが、沖田が、
「もう一泊だけしよう」って言い出したんです。「明日も同じことだぞ。
 俺らには巨大魚どころか普通の魚も釣れねえから」そう言っても沖田は、
「いいじゃないか。金はそんなに変わらないだろ。魚よりなあ、俺、2階の子と
 話がしてみてえ」こう言い出しまして。それはねえ、俺らも同じ思いがあったんで、
「じゃあ、そうしようか」ってなったんです。でもね、民泊の娘さんとどうにか
なるとは思いませんでしたよ。だって、ガードの固い箱入り娘みたいだし。
でね、店の親父さんに、もう一泊したいって言って。おかみさんは喜んでました。
夕食の膳を運んできたときに、「2階の娘さん、高校生ですか?」って沖田が
聞いたんです。そしたら、おかみさんは何ともいえない顔になって、
「うちに娘はいません」って答えたんですよ。その夜、寝る段になって、

沖田が、「俺、2階にしのび込んでいってみようかな。夜這いってやつ」こう言ったんですが、
もちろん冗談だと思ってました。女好きだけど、そこまでするやつじゃないし。
でね、酒を飲みすぎたせいか、次の朝は寝坊して、起きたのが7時過ぎでした。
寝床を見たら、沖田がいなかったんですよ。便所でもないし、やつの釣り道具もない。
外に出ると、おかみさんが店の前を掃いてたんで、「連れを見ませんでしたか?」って聞いたら、
「かなり早い時間に一人で出かけられたみたいですよ」こう言われて。
そんなに釣りも撮影も熱心なやつじゃなかったし、変だなあと思ったんですが、
とにかく湖の、昨日回ったとこにもう一度行ってみようと思いました。
でも、どこにも沖田はいなくて。「一人で帰ったんじゃないか」とも考えたんですけど、
車はあるし、鉄道の駅は遠かったんです。もちろんやつのスマホにも連絡したけど、
まったく音沙汰はなし。もしや事故かもしれない、夕方まで探して、

見つからなかったら警察に届けようか。そう石原と話して、周回道路を車で走ってると、
助手席の石原が「あ、あれ沖田じゃないか」湖の回りの林の切れ間に、沖田らしい姿。
それと、隣に白地に赤い模様の浴衣の女の子。「やっぱ沖田だよ。あいつ、宿の娘
 連れ出したんだな。うまいことやりやがって」 路肩に車を停めて、そっちに向かったんですよ。
そしたら、何が起きたと思います?沖田がね、その子と手をつないで湖に入っていったんです。
「おいバカ、やめろ!」そう叫んで走りましたが、草がじゃまでなかなか近づけなくて。
湖はダム湖なので急に深くなってて、そうしてる間に、2人の姿はがくんと沈んで
見えなくなったんです。「あ、あ、あ」 どうしてなのかわからないけど、沖田は、
その子と心中したんだと思ったんです。2人の姿が消えた湖面には大きな波紋が広がって
ましたが、そこからどーんと大きな水しぶきが上がり、巨大な、人間よりも大きな魚が
跳ね上がって胴体をギラリと光らせ、真下に落ちて泳ぎ去っていったんですよ。

すぐに警察に通報しました。「友人と女の子の2人が湖に落ちた」って。
警察が来るまでに時間がかかり、大掛かりな捜索になりました。でね、沖田の遺体はその日の
うちに見つかったんです。水に入ったすぐのところに沈んでて、腹に大きな魚が咥えた
としか思えない歯の跡がありました。ただねえ、女の子については・・・
警察が民泊に問い合わせたところ、その家に娘さんはいなかったんです。
正確には、民泊の一人娘は、10年以上前にダム湖で水死してたんですよ。
警察の中にはそのときの事故を覚えてる人もいました。もちろん、それ以外の女性の
可能性もあるので、警察の捜索は続きましたが、遺体は見つかりませんでした。
あと、そのあたりで行方不明になった若い女性もいなかったですし。
けどね、さっき話したように、俺と石原は、たしかに2人が湖に入ったのを見たんです。
え、巨大魚のビデオは撮ったのかって? まさかですよ。あんな状況ではとても。






元号の話

2018.12.06 (Thu)
今回はこういうお題でいきます。あんまりオカルト的な内容には
なりそうもないですね。さて、今上陛下の御譲位が平成31年4月30日、
5月1日から新元号が使用されることになります。そこで、元号について
自分が知っていることを、あれこれまとめてみました。

まず、元号が始まったのは中国においてです。前漢の第7代皇帝、武帝が、
紀元前115年ころに、「建元」という元号を創始しました。
ですから、元号が使われたのは、中国4000年と言われる歴史の中で、
半分程度の期間なんですね。それ以前は、「○○皇帝の元年、二年・・」
という呼び方がされていました。

漢の武帝
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なぜ、これが始められたかはよくわかっていないんですが、
武帝は神仙思想に凝り、不老不死を追い求めた人物でしたので、
「天命思想」と関係があると考えられます。中国では1911年に、辛亥革命で
清が倒れると元号は廃止されたんですが、日本がつくった傀儡国家と言われる
満州国では、たしか元号が使われていたはずです。

天命思想というのは、天が人間に対して一生のうちにやらなくてはならない使命を
与えるというもので、特に、「天を支配する天帝が、
人間の中から皇帝を一人選んで天命を下し、地上世界の統治をゆだねる」
という場合に使われることが多いんですね。

中国の歴代皇帝は山東省の泰山で「封禅の儀」を行い天命を受ける
ddkdkdi (3)

そうして選ばれた皇帝には、天から与えられた役割として、暦を定める、
度量衡(さまざまな単位)を決めるなどがありましたが、
上で書いた漢の武帝の時代に、元号を定めることもつけ加えられたわけです。
で、中国には中華思想もあり、中華の天子が世界の中心であって、
周辺の蛮夷の国はそれに従うべきと考えられました。

ですから、蛮夷の王は中国に朝貢して冊封(従属的な君臣関係)を受けるべきで、
その場合、中国の暦と元号を使用しなくてはならないとされたんですね。
そのため、中国の属国である期間が長かった朝鮮の各時代の国には
独自の元号がなく、中国のものを使用していた場合が多いんです。

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これに対し日本では、『隋書』に引用される、遣隋使が持っていった日本の国書、
「日の出ずる所の天子、日の没する所の天子に書を致す」に見るように、
中国の冊封体制から外れた独立国家であるという意識が早くからあり、
中国の元号を使用することはありませんでした。
ただし、中国からきた天命思想は、いろいろな形で日本に影響を与えています。

さて、日本で初めて元号が使用されたのは、『日本書紀』には、
皇極天皇の4年を「大化元年」としたのが始まりと記されていますが、これ、
けっこう自分は怪しいと思っています。発掘された当時の木簡をみても、
元号が記されているものはないんですよね。はっきり使用が確認されるのは、
文武天皇5年(701年)に制定された「大宝」からだと考えられます。

で、日本の初期の元号には、天命思想の影響がみられます。
「祥瑞」あるいは「瑞兆」と呼ばれるものがそれで、ときの天子の徳が高く、
よく世を治めている場合、天がそれをほめて、月日の輝きを増したり、
彗星や、珍しい動植物を出現させたりするんですね。

麒麟
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中国では、彗星が現れた年には「光」、麒麟が捕獲された年には「狩」の文字を
入れた元号が立てられるきまりでした。日本でもこれが受けつがれ、
前述の「大宝」は、対馬国から金が献上されたことを記念して立てられたものです。
また、「白雉」は、文字どおり白い雉が献上されたことから。

「天平」は、背中の甲羅に「天王貴平知百年」の文字がある亀が
見つかったことからです。でもこれ、おそらく誰かが彫ったものでしょうね。
あと、「和銅」というのは、日本で初めて銅が発見され朝廷に献上されたことにより、 
これでつくられたのが、日本最初の流通通貨である
「和同開珎」なのはご存知でしょう。

「和同開珎」
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このように、最初のうちはおめでたいことで改元される場合が多かったんですが、
平安時代ころから、「厄運 めぐりあわせの悪いこと」による災異改元が増えてきました。
これは、地震や干魃、疫病の流行などを受けて行われるものです。中には、
御所が火事になったり、皇族が次々に亡くなったことで改元された場合もあり、
多いときには、一人の天皇で6回くらい改元されています。

さて、明治時代以前は、上述したような事情で、一人の天皇のもとで何度も改元される
場合があったんですが、明治からは、天皇一人につき一つの元号という、
「一世一元の詔」が発せられて現在に至ります。ただし、第二次世界大戦の敗戦で、
元号の制定は天皇ではなく、実質的に総理大臣によることになりました。

で、世界で現在、元号を使用している国は、日本しかありません。
現状は、西暦と元号が併用された形になっていて、不便なこともいろいろありますが、
元号を廃止しようという声はあんまり聞かないですよね。
また、「日の丸、君が代」には、戦争を思い起こさせるとして反対する勢力もあるのに、
元号についてはそうでもありません。

これはどうしてなんでしょうかねえ。元号の制定は、かつては天皇の専権事項であり、
その権威を象徴するものだったので、不思議といえば不思議ですが、
「皇紀(初代天皇神武の即位を紀元とする暦年)」が使われなくなったことで、
元号は見逃されているのかもしれません。

さてさて、ということで、元号の歴史を見てきましたが、次の元号が何になるか、
興味深いですよね。M(明治)、T(大正)、S(昭和)、H(平成)で始まる
文字は使われないとも言われますが、これはおそらくそうなんでしょう。
まあ、なんにしても、災厄の少ない世の中になるといいですね。
では、今回はこのへんで。

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P・T・バーナムとオカルト

2018.12.04 (Tue)
今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論です。
昨年、『グレーテスト・ショーマン』というアメリカ映画が公開されましたが、
みなさんの中で、ご覧になった方はおられるでしょうか。この映画、
なかなか評価の難しい内容で、アメリカでの評論家の意見も分かれています。

P・T・バーナム
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さて、映画の主人公になったP・T・バーナムは、19世紀に活躍した
アメリカの興行師です。アメリカの国土はひじょうに広いですよね
しかも、ふだんは娯楽がほとんどない田舎町が数多く点在しています。
かつてアメリカの興行師は、自分の目玉となる展示物をかかえて、
そういう町々を興行して回ることが多かったんです。

そのような見世物の中には、インチキなものがかなり混じっていました。
バーナムが最初に手がけた興行もその類で、1835年、彼は、
年老いた黒人奴隷の女性ジョイス・ヘスを、安価な値段で買い取りました。
これはもちろん、リンカーンによる奴隷解放宣言以前の話です。

で、バーナムはどうしたかというと、「ジョイス・ヘスは今年で160歳になり、
アメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントンの乳母をしていた」というふれこみで、
アメリカ全土を興行して回り、たいへんな成功を収めたんですね。
ちなみに、ジョイス・ヘスが亡くなった後、その年齢が調査され、
70歳を超えていないことが判明しています。

こういう形で、何もないところからネタを作って金を産み出すのが当時の興行なんです。
これは日本でも同じでした。日本の見世物の伝統は古く、江戸時代以前からあります。
「大イタチ」という話は有名なので、ご存知の方も多いでしょう。
見世物小屋の宣伝書きに、「○○山中でつかまえた大イタチ」と書かれていて、
木戸銭を払って入ってみると、大きな板があり真ん中にべったりと血がついている。

つまり「大板血」なわけです。小屋の中に入ってそれを見た人は、
最初は「騙された」と憤慨するものの、やがてその洒落っ気に笑いだしてしまう。
もし、どうしても納得しない客がいれば「お代は見てのお帰り」。
木戸銭を取らなければいいわけで、元手はタダみたいなものなので、
それでも商売が成り立つんですね。

「カーディフの巨人」
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「カーディフの巨人」という、この手の有名な話があります。
ジョージ・ハルという人物が、カーディフという町の郊外に身長3mの石膏像を埋め、
自分で掘り出して、井戸掘削のときに見つかった「巨人の化石」として展示を始めました。
誰が見ても、ひと目で人工物とわかるずさんなものでしたが、いったん興行を始めると、
全米各地から、毎日数百人の見物人が訪れたといわれます。

これに目をつけたのがバーナムです。バーナムはハルに、巨人の貸出を持ちかけ、
断られると、自分で、石、粘土、乾燥卵などを混ぜて第二の巨人を制作、
それを用いて全米で興行を始めました。当然、この巨人について、
アメリカの考古学者などから、本物ではないというクレームがつきましたが、
バーナムは、「世間は騙されたがっている」という言葉を吐いて平然としていました。

この話は、オカルトのある一面を表していると言えます。「ミネソタ・アイスマン」
というのを、オカルトにくわしい方なら知っておられるかもしれません。
1967年、ベーリング海峡の氷塊の中から氷漬けのまま発見されたという、
謎の類人猿型未確認生物がミネソタ・アイスマン(下図)。

「ミネソタ・アイスマン」
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この正体は、じつはハリウッドで制作された着ぐるみなんですが、全米各地で
巡回興行されて大評判になりました。もちろん疑いを持つ専門家も多かったんですが、
バーナムの言葉どおりの結果になったんですね。この手のオカルトは、
手を変え品を変え、現在でもいろんなものが出回っています。

「巨人ネフィリム」の生きた化石(笑)


さて、バーナムにはもう一つの名言が知られていて、「どんな人にでも当てはまる
要点というものがある」というものです。アメリカの心理学者ポール・ミールが、
このことを証明しようとして実験を行い、結果を「バーナム効果 Barnum effect」
と名づけました。これは現在でも、心理学用語の一つになっています。

どんな実験が行われたのか。フォアという心理学者が行ったものを見てみましょう。
フォアは、学生たちを被験者にして、簡単な心理テストを行い、その結果として、
「あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、
 それにかかわらず自己を批判する傾向にあります.」

「あなたは弱みを持っているときでも、それを普段は克服することができます」
「あなたは使われず生かしきれていない才能を、かなり持っています」
「あなたは人前では自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります」
などの分析結果を示しました。ですがこれ、心理テストとは何の関係もない、
雑誌などに載っている占いの内容を、適当に組み合わせただけのものです。

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ところが、学生たちにこの結果が自分に当てはまっているかどうかを
5段階評価させると、学生たちの平均は4.6。つまり、ほとんどの学生が、
「このテスト結果はよく当たっている」と考えたことになります。
バーナム効果はくり返し追試され、その正当性が認められています。

その後の実験で、バーナム効果は、
・被験者がその分析は自分にだけに適合すると信じている
・被験者が評価者の権威を信じている ・分析が前向きな内容ばかりである
という3つの条件を満たすときに、最も強く発揮されることがわかっていて、
じつは、これを利用している占い師は多いんですよ。

さてさて、ここまで見てきたように、興行師バーナムは心理学者ではありませんでしたが、
人間がどういうものか、たいへんよく理解していました。それがあったから、
数々の興行を成功させ、現在のオカルトにつながる源流を作っていったわけですね。
では、今回はこのへんで。

関連記事 『リーディングの話2』

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病院のヒルの話

2018.12.04 (Tue)
先月のことです。むち打ち症になっちゃったんです。いやあの、
追突とかじゃなく、自損事故でした。コンビニで買い物してから
車を出そうとしたとき、シートの位置が気に入らなかったんです。それで、
ブレーキ踏んで直そうとしたんだけど、そんときアクセル踏んじゃったんですね。
急発進して通りに出そうになり、あわててハンドル切ったらコンビニの横の壁にドーンと。
いや、コンクリの壁が少し崩れた程度で、そんなに強くぶつかったわけじゃなく、
エアバッグも開かなかったんです。けど、シートに後頭部を打ちつけちゃって。
はい、弁償も車の修理も全部保険で済んだんですが、やっぱ首が痛くて。
でも、そのうち治るだろうとそのままにしてて、翌朝起きたとき、
右腕がしびれたんですよ。それで病院に行って検査をしてもらったら、
外傷性頸部症候群、つまりむち打ち症ってことです。

MRIを撮ったら、頚椎の一部がずれて神経を圧迫してるって言われて、
そのまま入院になっちゃったんです。はい、ずれた位置が悪かったみたいです。
それで、ある大学病院の整形外科病棟に入院しました。
治療は手術とかじゃなく、首をサポーターで固定して牽引するんです。
会社に報告したら、「何やってるんだ」みたいな目で見られたんですが、
まあ、10日程度ってことでしたのでなんとか。最初のうちは、右手がしびれて
物を持てなかったんだけど、毎日牽引してるうちによくなってきました。
首の痛みもとれてきたんで、どうせだから入院期間はゆっくり休むつもりでした。
俺、会社はIT関連で、ブラックとまではいかないけど、かなり激務でしたから。
でね、俺のつけてた首サポーターはかなり長くて硬いやつで、
首がいっさい動かせなかったんです。だから、横のほうを見るときには

体全体を動かさなきゃならない。サポーターは、退院してからもしばらくつけて
ないとダメということでした。整形外科の病棟は7階で、若い人がけっこういました。
ほら、高齢化社会で、内科とかは老人ばっかりなんだそうですが、
整形の場合、ゴルフで靭帯を切ったり、作業中に足を複雑骨折したとか、
そういう人が多いんですよ。ああ、すみません、話を進めます。
朝7時に1階に入ってるコンビニが開くんです。入院中は毎日新聞を買いにいってました。
で開店時間を待ってたように、入院してる年寄りがたくさんきて、点滴のスタンドを
押してる人も多かったんです。でね、コンビニを出ようとして、
体ごと入り口のほうを向いたとき、「あっ!」と声を上げてしまいました。
少し前に入院着のジイさんがいたんですが、その背中に大きな緑色のものが
はりついてたんです。そうですね、長さは4、50cm。

ちょうど背中に背負うバッグくらいの大きさ。でも、バッグでないことはすぐに
わかりました。動いてたからです。それは濃い緑とやや薄い緑がまだらになった色で、
上下にゆっくりと伸び縮みしてたんです。第一印象はヒルですね。
ほら、沼とか田んぼにいる。けど、そんな巨大なヒルはいないと思うし、
病院内で背中にしょって歩いてるなんてねえ。しかもそのジイさん、
すごい痩せてよれよれで足取りもおぼつかない感じだったんです。呆然として
立ち止まって見てたので、どんと後ろからぶつかられ、俺が悪いんで「すみません」
そう言ってもう一度前を見たら、そのジイさんの背中のヒルはなくなってたんです。
まあ・・そのときは幻覚だと思いましたよ。だってそんなのいるはずないし。
次に見たのは翌日の午後でした。課長が病室に見舞いに来てくれて、
それを送って1階の外来まで行ったときです。玄関のところで課長に頭を下げて、

体ごと振り向いたら・・・ほら、病院ってその時間だと、外来の患者の診察は
ほとんど終わって、支払いと処方箋を待ってるんだけど、
その背中に緑のヒルを背負ってる人がいたんです。一人じゃなく何人も。
俺のところからは、ずらっとイスに座ってる上半身の上のほうが見えるんだけど、
イスの背もたれからはみ出すようにして、緑のくねくねしたものが動いてました。
いや、全員じゃないです。5、6人に一人って割合くらい。
色合いが同じだったので、前にコンビニで見たのと同類じゃないかって思いました。
気持ち悪かったけど、もっと近くで見ようと思って、
待合席のほうに近づいていったんです。そしたら、そのヒルたちは、
俺の動きを察したみたいにして、スススッと潜って消えてったんです。
はい、潜ったのは、イスの背もたれの下のようにも、その人の首筋のようにも見え、

どっちかわかんなかったんです。ただね、そのときに気がついたのは、
ヒルが背中に見えた人は、年寄りで、病気が重そうな人ばかりだったんですよ。
車イスをつき添いが押してる患者には、たいがい見えた気がします。
でねえ、これ、そんなのが現実にいるより、俺自身の病気のせいで見えてるんだ、
って思いますよね。ましてほら、痛めた箇所が首だから、何か神経に影響があってとか。
だから、翌日の朝の回診のときに、主治医に話したんですよ。
「変なものが見えます」って。主治医は黙って話を聞いてて、すぐにその日、
脳のMRIを撮る予約を入れてくれました。それまで頭部は、レントゲンしか撮ってなかったんで。
でね、そのときに気になることがあったんですよ。俺が「緑色のヒルみたいなのが・・」
って話をしたとき、主治医は「うーん、たしか前にもそんなことを言ってた人がいたなあ」
って、つぶやくように言って。でね、その日の夕食の時間です。3回目を見たんです。

そこの病院は、食事のトレイは、動ける人は自分でワゴンから取るんです。
俺は自分の分を持ってきて、隣のベッドの患者ののも取りました。隣はアメリカ人で、
地元のバスケチームに所属してる黒人選手だったんです。俺、少しだけど英語できるんで、
いろいろ話とかしてたんです。その人は試合で足を骨折して、自分で動けなかったんですよ。
でね、トレイを持って振り向いたときに、足を吊って寝ている黒人の背中の下から、
あの緑のヒルが顔を出してたんです。ああ、顔と言っても、目も口もないんですが。
それが、俺がトレイを持って近づいてくと、ササッという感じで、
大きな黒人選手の体の下に潜っていって。けど、ベッドと体の間にそんな隙間なんてないし。
で、MIRの結果は、脳はなんともなかったんです。あとね、その黒人選手、
数日後の夜中に胸が痛いって騒ぎ出し、ベッドごと運ばれて帰ってこなかったんです。
いや、足自体は命に関わるようなケガじゃないから、心臓の発作だと思います。

何日か後に、テレビで訃報が流れてました。さすがにね、このあたりで気がつくじゃないですか。
いろいろ実験してみました。で、わかったのは、左側から体ごと振り向いたときに、
人の背中にヒルが見える場合があるってことです。もちろん全員じゃなく、
命の危ない人ほど大きなヒルが背中にいる。何でそれがわかったかっていうと、
整形だと、そんな命にかかわる病気の人は少ないですよね。けど、他の科だと
毎日のように亡くなる人がいる。でね、そこの病院、ひとつ下の階のデイルームに、
入院患者が読んだ本や漫画を置いてった、他の階からきて借りられる書棚があるんですよ。
そこに行ったとき、左から振り向いて、デイルームの中をのぞいてみたんです。そしたら、
いるわいるわ。2人に一人以上の割合で、背中にヒルをついてました。たぶん、癌患者とかが
多いんでしょう。あとですね、トイレの鏡で、自分のことも見てみたんです。
動きが不自由で、はっきりはわかんなかったですが、そのときはいないように思いました。

で、首のほうは、毎日牽引してたおかげで、腕のしびれはとれてきました。退院して、
あとは通院治療になる前の夜です。夜中にトイレに起きたんです。トイレは病室にあるけど、
ドアの開け閉めや水を流す音がするんで、いつも廊下にある共同トイレに行ってたんです。
トイレを済ませて戻ろうとしたとき、廊下の端に、何か動くものがいたんです。
オレンジの照明で色ははっきりしませんでしたが、あのヒルに思えました。
小学生の子どもくらいにまで育ったやつです。人の背中に乗ってないのを見たのは
初めてで、かなりの速さで這ってました。いや、そのときは怖いとは思わなかったです。
後をついていくと、ヒルはナースステーションの横手で曲がって、
非常階段に入っていったんです。その病院は、非常階段にはドアがなく、
緊急時に患者を下ろせるようにかなりの広さがありました。
その階段を2段飛ばしに転がるような感じで、ヒルはどんどん降りていく。

6階、5階・・・でね、その次の階の階段の踊り場に、低いベンチがあったんです。
そこに座ってる人がいました。子どものように小さい体で、頭から毛布を被ってて
顔が見えない。俺がギクッとして立ち止まると、その人は、「よしよし、よく育った」
って言って、その声で女じゃないかって思いました。その人は、足元までやってきたヒルを
赤ん坊のように両手で抱き上げ、口をつけて吸うような仕草をして・・・
俺は怖くなって、後退りするように階段を数段上ったところで、その人が頭を俺に向けて、
「お前もこれがほしいのか」って、しわがれた声で言ったんです。走って逃げましたよ。
翌朝、検温に来た看護師に、非常階段の踊り場のベンチの話をしたら、
「避難のじゃまになるから、そんなのはないはず」って言われました。実際、見にいったら
やっぱりなかったです。俺は退院し、首のサポーターがとれて、少しずつ動かせるように
なりました。でね、あの病院を出てから、ふり向いてもヒルは見えなくなったんですよ。






「シンギュラリティ」て何?

2018.12.02 (Sun)
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今回はこういうお題でいきます。ただし、この記事の後半は、
自分の能力をかなり超えた内容になるので、たくさん間違いが出てくると思います。
そのつもりでお読みくださるか、あるいはスルーしてください。
さて、最近、「シンギュラリティ」って言葉をよく聞きませんか?

自分は、けっこう耳にしていて、「ああ、また新しい洋物言葉が出てきたな」と
思っていました。なんとなくですが、「技術が飛躍的に進歩すること」
みたいな意味でとらえてたんですけど、その手の外来語ってたくさんありますよね。
例えば、「ブレイク・スルー」 「イノベーション」 「パラダイム・シフト」とか。

それらとどう違うのかと思って、Wikiを見てみたら、これって人工知能に関する
用語なんですね。まず最初に、自分で思考し判断する、知性を持った人工知能ができる。
その人工知能は、さらに自分よりも優れた人工知能を開発し、
それが何度もくり返されて、人工知能の能力が飛躍的に高まる。

そして、人間の想像力がおよばないほど優秀な知性が誕生して、人間にかわって、
この世の難しい社会問題を次々に解決していく、というような話です。
これによって、人間は働かなくてもよくなり、さらに人工知能の力によって
医学も進歩して人間は不老不死になる・・・

古代ローマの市民と奴隷
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なるほどねえ、でも、そういう未来ってほんとうに来るんでしょうか?
また、もしそういう未来が来たとして、人間は今よりも幸せになれるものなんでしょうか。
なんかこれ、奴隷を働かせて、自分らは哲学や数学、演劇、
スポーツなどをやっていたローマ時代の市民を思い起こさせます。
はたして、人工知能が奴隷のかわりをやってくれるものなのか。

いずれにしても、現在の人工知能は、まだ外国語の翻訳もまともにできない状態なので、
これが実現するまでには、そうとうな時間がかかると思われます。
さて、ここで話を変えて、「シンギュラリティ(Singularity)」という言葉は
もともと数学や物理学で使われていたもので、「特異点」と訳されます。

自分は数学のほうはよくわからないので、物理学の話をしますが、
ある大きな星の寿命がくると、その星はどんどん自らの重力で崩壊していって、
ブラックホールになるはずです。星は大きさのない一点までつぶれ、
その部分は、圧力無限大・温度無限大になります。

ブラックホールのイメージ
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この無限大というのは非常にやっかいで、数式に無限大が出てくると、
式として成り立たなくなってしまいます。でも、相対性理論から、
特異点は実際にあると考えられています。じゃあ、特異点の中はどうなってるんでしょう。
例えば、ある気体の温度がどんどん高くなっていくと、
中の気体分子の動く速度が速くなっていきます。

もっと温度が上がると、気体分子は原子にわかれ、さらに原子は
陽イオンと電子に分離して、これがプラズマ状態ってことですよね。
やがて原子は完全に崩壊してクオークに、クオークはサブクオークに壊れ、その先が
どうなるかはよくわかっていないんですね。おそらく、人間の現時点での理解を
超えたものだろうと思います。高圧についても同じことです。

これは重力の特異点ですが、こんなのが宇宙にあると困りますよね。
そこで、ロジャー・ペンローズという天才的な人が考え出したのが「宇宙検閲官仮説」。
前にも少し書きましたが、これはポルノ弾圧のパロデイです。
むき出しになっている特異点を、「裸の特異点 naked singularity」と言います。
裸はマズいので、何かで隠さなくてはなりません。

ブラックホールの構造
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じゃあ、裸を隠すための布はどういうものかというと、「事象の地平面」です。
ブラックホールの話を続けると、ブラックホールは2つの部分からなっていて、
その中心が特異点。特異点の周囲には、光でもそこから脱出することが
不可能な空間が広がっていて、それが事象の地平面。

事象の地平面は、もとになる星の質量がわかれば計算で半径を求めることができ、
これは、「シュヴァルツシルト半径」と言います。で、ペンローズによれば、
「すべての特異点は事象の地平面で覆われている。これは宇宙のポルノ取締官が
裸の特異点を許さないからだ」ということになります。

これが宇宙検閲官仮説なんですが、じつは最近の思考実験で、宇宙検閲官仮説が
成り立たないのではないかと思われる例が、あれこれ見つかってきているんですね。
また、コンピュータシミュレーションでも、5次元空間では、
裸の特異点が存在するという計算結果が示されています。

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困りましたね。裸の特異点がもしあるなら、物質も光も、そこに落ちていって
再び出てくることができます。裸の特異点には好きなだけ近づいてじっくり観察し、
また戻ってくることができる・・・これは不思議な話ですよねえ。
どういうことなのか、くわしい方がいればぜひご教示していただけたらと思います。

さて、特異点といえば、ブラックホールの他に、この宇宙の始まりのビッグバンの瞬間も、
温度・圧力無限大の特異点だったと考えられます。故ホーキング博士は、
ビッグバンが特異点から始まるのを回避するために、
「虚数の時間」を考え出しました。ですが、虚数の時間は数式であつかえるものの、
それが具体的にどういうものかは、本人もよくわかっていなかったようです。

ビッグバンの特異点
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さてさて、最初の話に戻って、「2045年問題」という言葉があります。
人工知能が人間の脳を超えるシンギュラリティが起きるのが、
だいたいその頃だろうとする予想ですが、自分は2045年まで生きてられますかねえ。
その頃には、物理学の特異点問題も解決してるのかもしれません。
では、今回はこのへんで。





「肝試し」の歴史

2018.12.01 (Sat)
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今回はこういうお題でいきますが、歴史というほどたいそうな内容でもありません。
さて、「肝試し」は怪談を書く上での重要な素材の一つですね。
学校の合宿などでやる場合もありますし、
心霊スポットと言われる廃墟などに探索に行くのも、一種の肝試しです。

ここで、肝試しの「肝」って何でしょう。字からすると「肝臓」を指している
ようにも思えますが、古典での使い方を見れば、内蔵全体や心臓、
心などを表してる場合もあり、一様ではありません。
まあこれは、しかたのないことでしょうね。

五臓六腑などと言いますが、1774年に杉田玄白らが、『解体新書』を翻訳するまで、
日本では、人間の内臓がどうなってるかはよくわかっておらず、
医師などでも、経験に基づいた治療しかできなかったんですね。
ですから、「肝」という言葉の意味内容が混乱するのもいたしかたありません。

五臓 陰陽五行説からきたもの
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とはいえ、慣用句には「肝が太い」 「肝が冷える」などがあり、
「肝」は、その人物の勇気や豪胆さをつかさどる体内の臓器と考えられてきました。
「肝試し」が最初に文献に現れるのは『今昔物語』ですかね。
源頼光四天王の一人であった平季武(たいらのすえたけ)が、
真夜中に産女(うぶめ)が出るという川を渡る話が載っています。

たくさんの武士が、ある夜、詰所に集まっていろいろ話をしていると、
ある侍が、川の渡し場に産女という怪しのものが出て、「これを抱いてくれ」と
赤ん坊を渡してよこすという話をし始めます。
皆が「こんな夜中にはとても見に行けない」と言い合っていると、
武勇自慢の季武が、「俺が行ってみせる」と言います。

平季武と産女
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あまりに季武が「できる、できる」と言うので、ついに皆と賭けをすることになり、
その場の武士は鎧兜や弓矢、馬などを賭けの品としてその場に積み上げます。
季武は、「確かに行ってきた証拠として、俺の鏑矢を向こう岸に差してくる。
明日の朝行って、見てくればよかろう」こう言い放って出発します。

季武が渡し場まで来て川に馬を乗り入れると、いつしか近くに不気味な女がいて、
「これを抱いてくれ」と泣いている赤ん坊をさし出すので、
「承知した」と赤ん坊を袖の中に入れて馬の足を速めると、
女が後ろから走ってついてきて、「さあ、もう赤ん坊を返してくれ」と叫ぶ。

「いいや返さん」季武は女を振り切って詰所まで戻り、
「どうだ、産女の赤ん坊を取ってきたぞ」と言います。ですが、袖の中を見ると、
いつのまにかたくさんの木の葉に変わっていた・・・皆が季武の勇気を褒めたたえ、
季武は、「当然のこと」と賭物を取らずに返した。こんな話が載っていますね。

まあ、季武は武士ですし、武士階級というのは貴族に代わって戦いを受け持つために
できたものなので、「武勇」という言葉があるように、勇気を示すのは
きわめて大切なことでした。かといって平時に戦いをするわけにいかず、
肝試しの習慣は、そんな中からできあがっていったのかもしれません。

藤原道長
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また、貴族であっても、肝試しをする場合もありました。『大鏡』には、
花山天皇の時代、みなが夜に集まって、これまでに体験した怖ろしい話をしていると、
天皇が、「こんな夜中に宮殿内を回ってくることはできるだろうか」と言い、
藤原3兄弟に肝試しを命じます。この言葉を聞いて兄2人は顔色を変えて
震えだしましたが、末の藤原道長だけは「やってみせます」と言う。

結局、3人ともが肝試しに出たが、2人の兄はすぐに逃げ帰ってしまい、
道長一人だけが大極殿まで行き、実際に来た証拠として、柱を小刀で削り取り持ち帰った。
翌朝、それを柱の傷と比べてみるとぴったり合っていた・・・こんな話が出てきます。
ただ、これが実際にあったことかどうかは何とも言えないですね。

後に名をあげる人物には、若いころから優れていたことを示すための、
こういうエピソードはつきものです。余談ですが、道長は深く仏教に帰依していて、
62歳で亡くなる際には、阿弥陀堂にこもり、阿弥陀仏像と自分の手を5色の糸でつなぎ、
西方浄土への往生を願いながら、僧侶たちの読経の中で息を引きとったと言われます。

平忠盛と怪しい法師
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あとはそうですね。肝試しとはちょっと違いますが、平清盛の父、忠盛が
北面の武士だった時代。夜中に愛人の祇園女御のもとへ行こうとする白河法皇の
警護につき従っていると、前方にぼうっと光る怪しい化け物がいて、
頭に多数のトゲが生え、しかも手に小槌のようなものを持っている。
(「一寸法師」にみるように、当時、槌は鬼が持つ武器と考えられていました。)

他の武士たちが怖れ騒ぐ中、忠盛だけが冷静に前に進み出て、その者をとらえてみると、
辻の灯籠に油を注ぐ法師だったことがわかります。法皇は、弓で射殺してしまわなかった
忠盛の勇気を褒め、褒美として祇園女御を与えます。そうして生まれたのが平清盛。
つまり、清盛は法皇の子だったということになります。この話も、どこまで本当か
わかりませんが、成長した清盛が異例の出世を続けていったのは事実です。

最後に、これも肝試しとは少し違うんですが、水戸黄門として知られる徳川光圀が、
若い頃に辻斬りをした話。酔って友人と歩いていた光圀は、
「人を殺す勇気があるかどうか」で言い合いになり、神社の床下に刀を抜いて潜っていき、
そこで寝ていた浮浪者を刺し殺したという記録が残ってますね。非道な話ですが、
これは実際にあったことのようで、今でいうホームレス狩りに近いものです。

徳川光圀
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さてさて、今回はエピソードのご紹介で終わってしまいました。
ということで、現在、面白半分に行われている肝試しとは違って、昔の武士にとって、
胆力を示すことは、そのまま出世につながるケースが多かったんですね。
逆に言えば、臆病者とされるのは、武士の存在意義にかかわる、
たいへんな恥辱だったわけです。では、今回はこのへんで。