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画像の話 2題

2020.01.31 (Fri)
今回はこういうお題でいきます。今は画像の保存や整理が簡単に
なりましたよね。例えば、どこかに旅行に行ったときなど、
家族の写真をデジカメで撮って、パソコン等に保存しておく。
そのうち気に入ったものを自宅のプリンタで印刷する。
たしかに便利なんですが、昔のフィルム写真ほどありがたみが
なくなった気もします。昔は写真屋さんに現像してもらった
写真ができてくると、家族が集ってわいわい言いながら見て、
その後、大切にアルバムに貼ってましたよね。ところが今は、
ずらずらっとパソコンで見て終わりということも多いですし、
写りが悪いものは、クリックひとつで削除できます。あと、
メールに添付できるので、外部とのやりとりも簡単です。

画像のオカルトというと、まず一つは、なぜかフォルダに保存した
覚えのない、見たことのないものが入っている場合。
ただこれ、自分で保存して、そのことを忘れてしまってることも
多いんだと思います。この逆もありますね。たしかに保存してた
はずの画像が、いつの間にかなくなってしまっているケース。
こちらも、お酒を飲みながら画像を見ていて、何気なく削除して
しまったとかかもしれません。あと、怪談によく出てくるのは、
見覚えのある画像だけど、前とは何か違っているように思える場合で、
遠くに写っていた人物が、見返すたびに近づいてくるなんて話も
あります。今回は、自分が聞き取りした話の中から、
そういったものをご紹介したいと思います。

美容師 三村瑛美さんの話
三村さんは20代後半の美容師さんで、自分がよく行く美容院の
スタッフの方です。こんな話をお聞きしました。
「私、食べブログをやってるんですよ。ほら、仕事場の美容室は
 繁華街の中にあるでしょ。だから、昼食休憩のときに毎日違う店に
 行って、お店の人に断ってスマホで写真を撮り、ブログにあげてるんです」
「ははあ、アクセス数は多いんですか」 「うーん、まあそれなりですね。
 お給料が安いから高い店には行けないんです。だからグルメブログって
 わけじゃないし」 「ああ、でも庶民的でいいじゃないですか」
「それで、画像はパソコンに保存してるんですけど、2ヶ月くらい前、
 たまったのを整理してたんです」 「はい」 「そしたら、一枚だけ、
 自分で撮った覚えのない画像があって」

「それはどういう」 「戸棚の中に瓶(かめ)が2つ並んでるんです。
 戸棚は腰の高さくらいで、木が真っ黒になった古いもので、その中に
 50cmくらいの瓶が2つ。蓋がついてて、たぶん梅干しを漬けたり
 するようなやつです」 「まったく記憶がない?」
「はい」 「それでどうしました」 「そのときは自分が保存して
 忘れてるんだと思いました。けど、どう見ても必要なさそうなんで
 その他のフォルダに入れたんです」 「で?」 「そんなこと、
 すぐに記憶から消えちゃいますよね。で、1ヶ月前です。
 仲のいい同僚の子と、連休を利用して古民家宿泊することにしたんです。
 場所は奈良のほうで、囲炉裏のある古民家で一泊してキノコ鍋を
 食べるっていう」 「癒やされそうですね。それで?」

「午前中に電車で出て、お昼に向こうに着きました。世話役の方が
 駅で待っててくれて、古民家に案内されたんです」
「藁葺き屋根の?」 「はい、でも中は隅々まできれいになってました」
「で?」 「世話役は近所の主婦の人なんです。お昼はその人たちが
 打ったお蕎麦をごちそうになって、その後にベリー狩りをしました」
「ベリー?」 「地域おこしでブルーベリーなんかを栽培してるんです」
「あ、なるほど」 「で、その後、古民家に入りましたが、部屋は4つ
 くらいだけど板敷きで広いんです。台所は土間で、かまどが2つありました」
「で?」 「下のほうに戸のない棚があって、そこに2つ瓶が並んでて・・・」
「画像で見たやつってことですか」 「はい、それ見てなんか変な感じがして、
 ややあって、あ、前にパソコンに入ってたものだって思い出したんです」

「まったく同じでしたか」 「それは前の画像は完全に覚えてないけど、同じだと
 思ったんです。不思議でした」 「そうですよねえ」 「まだ世話役の人が
 いたんで聞いてみたんです。そしたら、昔使ってたものだけど、
 中は空ですって」 「開けてみましたか?」 「それが・・・なんとなく
 気味が悪くて、そのときは開けなかったです」 「で」 「地元の温泉に行き、
 夕食はさっき言ったようにキノコ鍋や山菜料理、それからお酒を飲んで、
 敷いてあった布団に寝ました。そのとき、同僚の子に話してみたんです。
 そしたら、前に来たことがないなら、ただ似てるだけじゃないかって」
「まあ、ふつうそう思いますよね」 「気になるなら、明日の朝いっしょに
 開けてみようって言われて」 「で」 「朝になって、顔を洗った後に
 開けたんです」 「三村さんが?」 「はい、そんなことが怖いと
 
 いうのも変ですから」 「中は?」 「どっちも空でした。中もきれいに
 なってて何もなかったんですが・・・」 「が?」 「戻すとき、
 手前のほうの蓋を下に落としちゃったんです。そしたらぱっかり2つに
 割れて」 「ケガしなかったですか」 「大丈夫でした。
 古民家を立つとき、世話役の人に話をして、弁償しますって言ったら、
 そんなもの別にいいですよって」 「ははあ」 「それで大阪に戻って、
 すぐパソコンを開いてその画像を探したんです」 「ありましたか」
「はい、ですが・・・今プリントして持ってきてるので見てもらえますか」
「いいですよ」 「これです」 「・・・手前の瓶の蓋が開いてますね」
「前はどっちも閉まってたはずです」 「たしかに?」 「だと思います。
 それと・・・暗くて見えにくいんですが、底に細長い白いものがあって

 人の指に見えませんか」 「え? あ、そう言えばそう見えるかも」 
 画像データをメールで自分の共同事務所に送ってもらえますか。拡大して
 調べてみます」 「お願いします。最初に見たときはどっちも蓋が
 閉まってたと思うし、その画像、bigbossmanさんのほうで処理してください」
で、事務所に戻ったらメールが来てたので、画像をフォトショに入れ、
ノイズを処理して明度を上げ、拡大してみました。そしたら、たしかに人の指、
右手か左手かは判別できないものの、ネイルをしている女性の人差し指に
見えましたね。おり返し三村さんに連絡し、元画像の痕跡を完全に消去し、
指のケガに注意するよう話したんです。迷ったんですが、京都のある神社で
お祓いも受けてもらいました。そのおかげかはわかりませんが、
三村さんには特に異変はありません、今のところは。

占星術師 bigbossmanさんの話
自分は趣味でオカルト研究をしていまして、オカルトならほぼすべての分野に
ついて調べてるんですが、収集してるのは19世紀から20世紀前半にかけての
ヨーロッパとアメリカの心霊主義時代の霊媒師や降霊会の画像です。
で、これ、数千枚の画像がHDDに入ってる中で、一枚だけ
やっかいなのがあるんです。詳しい人ならわかると思いますけど、
アメリカの降霊会で女性霊媒師が呼び出した霊体を赤外線カメラで
撮影したとされるものです。まあ、インチキ写真だという評価が多いんですが、
自分の場合、なぜかこの画像があちこち勝手に移動するんですよね。
フォルダの画像をクリックして見て、それだけなのに、もうその画像が
見つからなくなる。毎回というわけではないですが、これは不可解です。

で、画像名でパソコン内検索をすると、ありえない場所に移動してるんです。
消えてなくなるわけではないんですね。画像が入ってるのは外づけのHDDなので、
パソコンを変えても同じ現象が起きます。それと、この画像を開くと
高確率で家の電気製品が止まるんです。今までにも、エアコンや電池式の
目覚まし時計が止まりました。偶然だと思われるでしょうが、電池は取り替えた
ばかりで、1回電池を外して入れ直すと普通に動きました。自分は海水魚を
飼育してるので、冬場はヒーターが止まると全滅してしまうかもしれません。
(いちおう複数ヒーターは入れてますが)そのため、その画像は
このところ1年近く開いてないんです。もちろん原因はあれこれ考えてみたものの、
わからないと言うしかないですね。画像は海外のホームページから
コピーしたもので、そのホームページは今は見られなくなっています。






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干将・莫耶と呉越の話

2020.01.30 (Thu)
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今回はこういうお題でいきます。刀剣シリーズの一環ですが、
怖い世界史のカテゴリに入れておきます。ただし、ここで出てくる
内容が史実かどうかはかなり疑わしく、後世の脚色がだいぶ
混じっていると思いますので、そこはご承知おきください。

さて、みなさんは「呉越同舟」という故事成語はご存知でしょう。
ときは紀元前500年頃、中国の春秋時代のことです。
現在の蘇州周辺を支配した呉と、浙江省のあたりにあった
越の国はたいへん仲が悪く、戦いをくり返していました。

この両国の数十人が、国境にある川で舟に乗り合わせましたが、
互いに気まずい様子で押し黙っていました。すると、急に天候が
変わって強い風が吹きすさび、舟は帆を降ろさないと転覆して
しまいますが、波風に激しく揺られてロープがほどけません。

春秋時代の呉と越
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そこで、それまで敵対的だった両国の人が協力し、ロープを
ほどいて助かったという故事から、「本来は、仲の悪い者
同士でも、災害時や利害が一致すれば、協力したり助け合う」
という意味で使われます。『孫子』に出てきます。

では、この呉越の戦い、どっちが最終的に勝ったか。これは
「臥薪嘗胆」の故事で有名です。まず呉が戦いに負け、王は
死に際に後継者の夫差に、「必ず仇を取るように」と言い残します。
夫差は「3年のうちに必ず」と答え、敗北を忘れないよう並べた薪の
上に毎日寝て、兵を鍛え国の軍備を充実させました。これが「臥薪」。

「臥薪嘗胆」
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まもなく、夫差は越に攻め込み、越王勾践の軍を破ります。勾践は降伏し、
夫差によって馬小屋の番人にさせられますが、やがて許されて国に戻り、
屈辱を忘れないため、毎日苦い胆を嘗めます。「嘗胆」ですね。
その後、呉は覇者をめざして各国に兵を出すなど国力を疲弊させ、
ついに越に滅ぼされ、夫差は自殺します。『史記』のエピソードです。

越の勝ちだったんですね。で、この呉越の物語には、2本の名剣が
登場します。干将(かんしょう)と莫耶(ばくや)です。
2本あるのは、陰陽をあらわす雌雄の剣ということで、
現存してないので詳細はわかりませんが、おそらく両刃の片手剣、
短いものだったのではないかと思います。

丹下左膳
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陰陽剣という言葉があります。剣は2本セットでつくられ、
互いに呼び合うという考え方で、これは創作ですが、林不忘の
時代小説『丹下左膳』には、関の孫六作の乾雲と坤龍という
妖刀が出てきて、互いに求め合って血を呼びます。

干将・莫耶というのは、もともとその剣をつくった鍛冶夫妻の名です。
2世紀ころの史書『呉越春秋』によれば、鍛冶夫婦は夫差の先代の
呉王から剣の製作を依頼されますが、どうしたことか鉄が溶けません。
そういった場合、鍛冶師が鉱炉に身を投げれば溶けると言われるものの、
そこまではせず、妻の莫耶が自分の髪と爪を入れるんですね。

そうして2本の剣ができましたが、夫はなぜか雌剣の莫耶のほうだけを
呉王に献上します。剣は宝物として扱われましたが、その後、
呉を訪れた魯国の使者が、剣を見せてもらったときに刃こぼれを
発見し、呉の滅亡を予言することになります。

越王勾践剣
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この他に、この鍛冶夫妻の子どもである赤(せき 眉間尺)が出てくる
話もあるんですが、こちらはあまりに荒唐無稽なので割愛します。
で、不思議なのは、雄剣の干将のほうはほとんど歴史に
登場しないんです。理由はよくわかりません。

さて、なぜこの話が出てきたか。じつは古代中国で青銅器から鉄器に
切り替わるのが、ちょうどこの春秋時代あたり、前600年頃
なんですね。おそらくそれで、こういう逸話になったんだと
思われます。あと、越王の句践は名剣を集めていたと言われ、
8本の剣を所有していたとされます。

特殊な字体で書かれた越王勾践剣の刻字
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伝説と思われてましたが、1965年、その1本であるとされる  
銅剣が湖北省江陵県望山1号墓より出土したんです。ターコイズと
青水晶とブラックダイヤモンドで象嵌された見事なもので、
刀身には「越王勾践 自作用剣」と刻字されていました。うーん、
中国当局は本物と見て、国外持ち出し禁止の国宝扱いになっています。

この剣は、2000年を越えた古いものなのに錆一つなく、
X線回折法で分析したところ、表面を硫化銅の皮膜でおおって
あったとされます。銅剣というところに着目してください。
干将・莫耶は鉄剣とされますが、これはおそらく観賞用でしょう。

呉王夫差矛
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あと、句践の好敵手であった夫差は、「呉王夫差矛 ごおうふさやり」
という矛を持っていたと言われ、じつはこちらも湖北省江陵県
馬山5号墓より出土してるんです。やはり錆は見られません。
これも本物だとしたらすごい話ですよねえ。

さてさて、ということで、あんまりオカルトな内容にはなりません
でした。まだ取り上げてない西洋の剣もいろいろありますので、
刀剣シリーズは今後もぼちぼち続けていくことになると
思います。では、今回はこのへんで。

関連記事 『刀剣シリーズ』

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アーカイブ 虹の神様の話

2020.01.30 (Thu)
※ これは自分にしては珍しいUMA怪談です。

あ、どうも今晩は。私は永沢と申しまして、電力関連会社の海外事業部に
勤務しております。さっそく話を始めますが、もしかしたら本当に
あったこととは信じてもらえないかもしれません。
なんというか、全体がファンタジー小説みたいな内容ですから。
それに、怖いかといえば、それほど怖いというわけでもない。
でも、実際にあったことなんです。あ、スミマセン、前置きはこれくらいに
しておきます。私ね、子どもの頃、喘息だったんです。
今思えば、アトピーからきてるものだったんでしょうけど、
当時の医者はよくわかってなくて。いったん咳が始まると、
ほんとに死ぬんじゃないかと思うくらい苦しい。東京で生まれたので、
父親は空気が悪いからだろうって言って、小学生のときは

ずっとマスクをつけさせられてたんです。今でこそ、マスク姿は
珍しくないけど、当時は恥ずかしかったですよ。それでも、
大きな発作は年に何回か程度でしたけど。あ、ここからの話は、
詳しい地名などはふせさせていただきます。迷惑がかかるかもしれませんから。
ええと、小学校2年のときからかな、なるべく東京から離れたほうが
いいだろうってことで、夏休みはほぼずっと、沖縄のある島に
長期滞在してたんです。いや、うちは特に裕福なほうではなかったです。
父は普通の会社員でしたし。父の兄、私にとっては伯父さんにあたる人が、
当時沖縄に住んでまして、そこに行ってたんです。
その人、会社員だったんですが、趣味のスキューバダイビングが高じて、
脱サラで家族ともども沖縄に移住してしまったんです。

向こうで、ダイビングと釣りのショップを開き、ダイビングのインストラクター
も始めました。父とは似てなくて、背が高く筋骨隆々でした。
まだ存命で、今でもその面影は残ってます。
沖縄での生活は楽しかったですよ。海はきれいだし、暑いといっても
私には東京のほうがむし暑く感じられました。ただ、この沖縄滞在は、
小学4年生、10歳のときに終わってしまったんです。
そのいきさつも不思議で。伯父さんの家族は、奥さんと娘さんが一人。
娘さんは私より2つ年上の小学6年生でした。名前を岬さんと言ったんですが、
もう亡くなってしまってるんです。奥さんは優しかったんですけど、
岬さんはすごく性格がきつくて、私からすればこわいお姉さんって感じでした。
学校の宿題は全部向こうに持ってってましたから、

それを教えてもらうときなんか特にね。でもほら、お互いに一人っ子だから、
毎年私が来るのを楽しみにしてくれてたそうです。あ、スミマセン、
話がなかなか前に進まなくて。その日は8月の終わりに近く、
もうすぐ夏休みが終わって東京に戻らなくちゃならない時期でした。
伯父さんのモーターボートで、岬さんと2人、無人島に連れてってもらったんです。
伯父さんは新たなダイビングスポットを開発するつもりだったんでしょう。
島に着くとすぐアクアラングをつけて潜っちゃって。
私と岬さんはずっと磯で遊んでました。いや、危険なことはなかったです。
ずっとサンゴ礁が続く遠浅で、膝くらいの深さのところに
色とりどりの魚がいました。2人でそれらをすくったりしてたんですが、
ケンカしちゃったんです。原因が何だったかとかは覚えてないです。

それで別行動になりまして、私が海沿いの岩場を歩いてると、波打ち際に
丸い青いものが浮かんでたんです。そのときは生き物だとは思わなかったですね。
人工物のような青さでしたから。フリスビーか何かじゃないかって。
けど、下りていくと、かなり大きいものだってわかりました。
直径が1mくらいでタライのように漂ってる。手で触れるとこまで近づきました。
青い表面が水から出てたんで、指で触ってみると柔らかかったんです。
うーん、何というか、ごく細かい青い砂を大きなお盆に敷きつめた感じで、
なぞったとおりに白く跡がついたんです。面白かったんで、
自分の名前なんかを書いてみました。そのときはピクリとも動かなかったん
ですけど。背後で「あっ!」という岬さんの声が聞こえました。
続けて「ダメ! それ神様だよ」驚いてふり向くと、岬さんがすごい勢いで

走ってきて、私のシャツの背中をつかんで引っぱったんです。
そのとき、その丸いものがギラッと輝き、一瞬で鏡面に変わったんです。
私と岬さんの顔がはっきり映りました。同時に、鏡のまわりから何本も
触手が水面上に出てきました。蛸の足のようなのではなく、
クラゲのヒレに近い形でした。それは触手をウネウネと動かし、
ギラギラ光る鏡面のまま、すっと波打ち際を離れ、10mほど沖に出て
海に潜っていったんです。「今の何?」私が聞くと、岬さんは、
「ヌージヌウカミ、虹の神様って意味。前にも見たけど、お父さんから
 さわっちゃいけないものだって言われた」こんな答えが返ってきました。
そのうちに伯父さんが海から上がってきたので、持ってきた弁当を食べて
帰ったんですが、私も岬さんもその話はしなかったです。

いや、あれが生き物だとは思えませんでした。鏡みたいに光る生物なんて
いないですよね。当時はネットなんてなかったんで、図鑑で調べてみたけど、
もちろん載ってなかったです。でね、ずっと後年になって、この神様とは
再会することになるんです。翌年から、沖縄には行けなくなりました。
伯父さんが店を畳んで本土に戻ったからです。店をやめた理由は、岬さんが
亡くなったため。小児性白血病という病気で、中学生になったばかりでした。
ここから話は一気に飛びます。私は工科大学を出て、最初に話したように
電力関連会社に就職したんです。入社して3年目くらいから海外事業部に
配属になり、それからはずっと東南アジアを中心に海外出張をしてます。
で、2004年のことです。この年に起きた大きな出来事というと、
マグニチュード9.3と言われたスマトラ島沖地震です。

あのとき、私はタイのビーチのリゾートマンションの配線工事を
担当してました。朝、出勤の途中でした。あの地震と、
その後の津波に遭遇したんです。海が高く高くビルのように盛り上がって、
あっという間に波にのまれました。いや、あれほどの津波が来るとは、
地震の後、誰も考えてませんでしたよ。
タイでの死者は5000人以上、有名ビーチを直撃したので、
その中には外国からの観光客も多く含まれてました。
私はすぐに気を失って、どのくらい時間がたったか・・・
ふっと気がつくと、瓦礫が積み重なった上に
仰向けに寝てたんです。体はまったく動きませんでした。
瓦礫の下1mまで海水がきてて、ぼんやりとそこに目を向けていると、

泥色の水から、青いものが浮き上がってきたんです。
何かはわかりませんでしたが、前にこれ、見たことがある。
そのとき、その青色に字が浮き上がったんです。
私の名前でした。あ、これ、自分で書いたものだ・・・あの日、沖縄の島で。
それから急に光りだして、青色が鏡に変わりました。
最初は灰色の空を映してるだけだったんですが、人が2人浮かんできました。
並んで立っている、子どもの頃の私と岬さんです。やがてそれは、
私たちの姿を映したまま沈んでいったんです。救助されたのは
まる1日後です。その間に、いろいろなことを思い出しましたよ。
虹の神様という言葉もね。神様が助けてくれた?
・・・そうなのかもしれませんが、違うような気がするんです。

現地の病院で、体が動かないのはひどい貧血状態になってるからだって
わかったんです。どこにも大きな傷はないのに、体内のかなりの血液が
失われてるって。いやまあね、極限状態で幻覚を見たんだろうと
言われれば反論できませんし、貧血になったのも説明は
つかないこともないでしょう。まあ、こんな話なんです。これも後になって、
岬さんの墓参りで伯父さんと会ったときにこのことは話しました。
伯父さんは首を振り、「あれはよくないものだと言われてる。
 海で見つけても誰も近づかない」って。
それからは一度も見てませんね、海にもできるだけ行かない
ようにしてます。だって海はつながってるし、
またいつどこで出会うかわかりませんから。







家電のオカルト

2020.01.29 (Wed)
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『ポルターガイスト』 この子役の少女は第3作撮影後、12歳で亡くなっています

今回はこういうお題でいきます。どんなことが書けますでしょうか。
まず、最もオカルトに使われる家電はテレビかなと思います。
頭に浮かんでくるのは、1982年のスピルバーグ製作、
トビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』で、
少女が砂嵐になったテレビと話しているシーンです。

それまでは、電気製品はオカルトホラーとは縁遠いものと思われ
てたんですが、このあたりから家電とオカルトをからめた内容の
映画が増えてきました。これは余談ですが、『ポルターガイスト』で
怪異が起きる原因は、古い墓地をつぶして宅地造成したためで、
こういう日本的なオカルト解釈もアメリカでは珍しかったんです。

それと、みなさんの中には『リング』で、呪いのビデオを
見てしまってから1週間後、貞子がテレビの画面から
這い出てくるシーンをあげられる人もいるかと思います。
ただこれ、鈴木光司氏の原作にはないんですよね。

『リング』原作の小説にはこのシーンはありません
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原作と映画では、ビデオを見た直後に、正体不明の無言電話が
近くにある固定電話にかかってきます。うーん、貞子がテレビから
出てくるシーンは、おそらく呪われた犠牲者にしか見えない
幻覚のようなものなんですが、電話は実際にかかってくるんです。

なぜ霊が電話をかけることができるのか。映画では、無言電話が
かかってきた電話機や、呪いのビデオを再生中の
ビデオデッキの周辺には、わずかな空間のゆがみが生じると
説明されていました。リングウイルスが電磁場を媒介にしている
ということなのかもしれません。

あと最近多いのはスマホ、携帯電話に関連したホラーですが、
携帯電話は家電ではありませんので、今回はのぞきます。
ビデオデッキ、DVDプレイヤーというのも最近は使う人が
少なくなりましたね。映画などはオンライン配信で見るという
人が増え、レンタルビデオ屋の経営も難しくなっているようです。

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どんどんいきましょう。冷蔵庫というのもオカルトホラーには
よく出てきます。どっちかというと心霊よりもサスペンス系が
多いかもしれません。理由はおわかりですよね。冷蔵庫には
死体などの生ものを入れて保存できるからです。
これは超自然的な要素はありませんが、阿刀田高氏の短編

『冷蔵庫より愛を込めて』は、じつにブラックな作品で、
当時まだ目新しかったコインランドリー業を失敗した
主人公は、次に貸し冷蔵庫業を始めます。その冷蔵庫の中には
もちろん・・・と言いたいところですが、結末はさらに
もうひとひねりしてありました。未読の方にはお薦めです。

よく見ると水回り用のゴム手袋です
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自分も冷蔵庫が出てくる話はいくつか書いています。
家庭用の冷蔵庫の場合、いくら大型といっても人間一人を
そのまま入れるのは不可能で、切り分ける作業が必要です。
そのあたりがホラーに使われやすいのかもしれません。

洗濯機というのはどうでしょう。これが主な役割を果たしている
ホラー作品なんてあったかな。今の洗濯機は全自動になって
たいへん便利です。フタを締めたまま給水から脱水までやって
くれるので、中に子どもが落ちるなんてこともまずありませんしね。

都市伝説?
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次は電子レンジ、これで自分の記憶に残っているシーンは
映画『グレムリン』で、レンジの中に入ったグレムリンを
一家の母親がダイヤルを回して爆発させるシーンです。
『メン・イン・ブラック』では、電子レンジは宇宙人の超技術を
もとにしてつくられ、秘密組織MIBの資金源になっていました。

次はエアコン、大阪の夏は暑く、エアコンがないと死んでしまうかも
しれません。実話怪談本で、火葬場の業務用エアコンに
遺体の灰がつまって怪異が起きるという話を読んだことがあります。
中に何か仕掛けがほどこされてたりしたら嫌ですよね。

『グレムリン』の電子レンジシーン
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扇風機はどうでしょう。自分は学生時代ずっと柔道をやってたんですが、
高校で、夏休みの稽古中に熱中症で倒れる部員がけっこういたんです。
そうすると、窓を開け放した更衣室に寝かされ、部費で買った
業務用大型扇風機で風をあてられ、渡されたスポーツドリンクの
ペットボトルを飲む。それでだいたいは治ってました。

幸い大きな事故は起きませんでしたが、今考えると怖いですね。
あと、扇風機をあてたまま寝てしまうと脳が腫れて死んでしまう、
という話がありますが、どうやら都市伝説のようです。絶対とは
言えないものの、そうなる可能性はないに等しいみたいです。

つねに映っている開いたドアが効果的な『パラノーマル・アクティビティ』
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さあ、だんだん終わりに近づいてきました。あと家電って何が
あるでしょうか。家庭用ビデオカメラとかかな。これは前にも
書きましたが、『パラノーマル・アクティビティ』のような、
一般人が撮った映像というふれこみの疑似ドキュメンタリー
映画は多くなりました。予算もあまりかかりません。

さてさて、ということで家電のオカルトを見てきました。
この他にも家電にはドライヤー、アイロン、ミシン、電気炊飯器、
掃除機なんかがあって、それぞれ思いうかぶ映画もあるんですが、
今回は割愛させていただきました。では、このへんで。

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夜に骨を拾う話

2020.01.28 (Tue)
あ、どうも、俺、塚本って言います。ある大学の4年生なんです。
いや、就職はまったく決まってません。そのかわりっていうか、
バイトをたくさんやってます。定期も臨時も、とにかく時間の
あるかぎりバイトを入れてるんで、ものすごく忙しいんです。
え、何で就職活動しないのかって? それね、ちょっと事情があって。
あ、そのことを最初に話したほうがいいのかな。
うち、じつは神職の家系なんです。父親も祖父も、先祖代々ずっと、
場所と名前は言えませんけど、ある神社の宮司を務めてるんです。
だから、俺も当然、大学を卒業したら家を継ぐもんだって
子どもの頃から決められててね。ええ、大学もそれ系の学部です。
でもね、俺、嫌なんですよ、神職になるの。

何でかって言うと、まず、最初からレールの敷かれた人生なんて
面白くないじゃないですか。自由に自分の可能性を試したい・・・
それでね、今バイトしてるのも金を貯めるためなんです。
できるだけ現金を蓄えて、卒業と同時に海外に出ようと考えてます。
いや、神社のほうは弟が2人いますから、なんとでもなると思いますよ。
すみませんね、長々と関係ない話をしてしまって。
この間やったバイトのことなんです。俺ね、夕方から夜中までは
料理屋で働いてるんですけど、そこの座敷で宴会があって、
注文の酒、運んでったんです。そしたら、何か異様な雰囲気で。
座が乱れてるってことじゃなく、お客さん方、みな料理に手もつけず
深刻そうな様子で・・・ それとね、上座に座ってる2人の男性、

どっちも40代くらいに見えましたけど、束帯姿だったんです。
生地は薄緑色でした。いや、神社のものとは細部が違ってて、
よく新興宗教の人が着てるようなやつでした。長テーブルを
回ってビールを置いてくと、その上座の一人が、「あ、君ね、もしかして
 実家が神職とかじゃないかな」いきなりこう言ってきて、
ドキッとしました。そこのバイト先の誰にも話してなかったし、
何でわかったのかと思ったんです。するともう一人が、「この子が
 そうなんだよ。御骨拾いに加わってもらうことに決まってるんだ」
こんなことを言い出して。いやもちろん、そのときは
どういう意味かまったくわかりませんでした。何かよくない
感じがしたんで、ビールを配り終えると早々に引っ込んだんですよ。

その宴会は1時間半くらいで終わったんですが、仲居さんから、「何かね、
 今の人たち、あなたに話があるみたいよ。店の外で待ってるって」
こう言われました。ヘマした覚えはないし、何だろうと出ていくと、
あの和装束の2人が立ってて、店が終わる時間を聞き、その後に
駅前の〇〇ってチェーンの喫茶店に来てほしいってことだったんです。
「どういうことですか?」当然そう聞きますよね。そしたら、
「あなたに短期のお仕事をお願いしたいんです。時間帯は深夜に
 なりますが、時給は1万円お支払いしましょう」
ええ、喫茶店には行きました。時給1万たら破格ですから。話だけでも
聞いて、もし違法なことだったら断ろうと考えたんです。
喫茶店で待ってたのはさっきの2人ですが、スーツに着替えてましたね。

話は、店の前で聞いたのとそう変わらなかったんです。毎日じゃないけど、
連絡があった日の夜2時過ぎ、駅前に出てれば車で迎えに行く。
それからだいたい3時間ほどで仕事は終わるので、また駅まで送る。
つまり1日3万円てことです。で、肝心の仕事の内容なんですが、
これが要領を得なくて。「骨を拾う」って言うんです。
そう聞いてもわかんないでしょ。遺跡の発掘とかとも思いましたが、
そんな夜中にやるわけはないし。違法性はない、とは強調してました。
ただ落ちてるものを拾うだけで、それも持ち主不明だし、一般人には
価値もないって。考え込んでたら、その場で返事がほしいって言われて・・・
やることにしたんです。ええ、なんと言っても金額が魅力で。
でね、最初の仕事はその3日後にありました。

その日は料理屋のバイトもあって、かなり疲れてたんですが、
駅前で待ってると、あれはアメ車のリンカーンですかね、でかいSUVが
来て、俺を拾って郊外に向かったんです。乗ってたのは若い運転手、
それと喫茶店で話した一人、それから、あと一人は女性で、
乙姫様?みたいなひらひらした着物を着てたんです。和服とも中国服とも
わかりませんでした。40分くらいかかって着いたのが、
これも場所は言えませんが、ある自然公園内にある沼なんです。
そこはね、心霊スポットとしても有名で、俺も知ってました。
公園と言っても柵とかがあるわけでもなく、警備員なんかもいないみたいで、
とがめられることもなく沼のほとりまで来ました。真夜中でしたが、
公園内には街灯もあって、真っ暗というわけじゃなかったです。

運転手がSUVの荷台から大きな物を出してきて、ゴムボートだったんです。
ボンベで空気を入れると5、6人は乗れるかというボートで、
ハドルもありました。電話で、汚れてもいい服装って言われてたんで、
俺はジャージの上下でした。でね、その沼にゴムボートを浮かべたんです。
マジかよ、と思いましたが、みな大真面目でね。乗ったのは車の中の
全員だから4人です。沼の水は流れもなく、静かに運転手がパドルで
漕ぎ始めました。あと、そのときに懐中電灯型のライトを渡されたんです。
ただ、青っぽい光で、ブラックライトってやつじゃないかと思いました。
「だいたいの場所はわかってますから」女性が言い、みなで水面をライトで
照らしながら、ボートは岸に沿って進んでいったんです。
沼はそれほど汚れてはいないようで、嫌な臭いもなく、ライトで照らした

水面下で魚が動いたりしてました。20分ほど進んだでしょうか。
女性が「ああ、あれです」と言い、その指差したほうを見ると、
ライトで照らされた場所に真っ白い、細長いものが沈んでたんです。
「拾ってきてください」そう言われて、俺が?と思ったんですけど、
「大丈夫、ここは深くないし、底なし沼でもありません」そう言われて、
ボートから水に入りました。5月だったんで、そう冷たくはなかったです。
ブラックライトで照らしながら体をかがめ、白いものを拾いました。
固い、枯れ木のような感触があったんですが、水から出てきたのは
骨だと思いました、15cmほどの。これでその夜の仕事は終わりです。
なんで俺が拾わされたのかはわからなかったです。それから3日おき
くらいに仕事があって、いろんな場所に行きました。

山の中に放置された廃墟のようなところ。あるビルの屋上のにある給水塔。
ドヤ街と言われるところの自販機の裏・・・で、拾うのはすべて骨なんです。
どれも白く乾いて、さまざまな部位のものがありましたね。
ねえ、何ということもない仕事でしょ。最初の沼はきつかったけど、
あとはそこまでのことはなかったし、どんどんお金が貯まっていきましたよ。
夜中の仕事なんで、翌日は眠かったですけど。こうして半年ほど続けたんで、
骨は相当な量になったと思いますが、みなその人たちがもっていきました。
何でこんなことをするかの理由は聞きませんでした。聞けない雰囲気も
あったし、何よりもそのバイトを失いたくなかったからです。
ほら、最初に海外放浪に出たいって言ったでしょ。その目標とする金額まで
もう少しというとこまで来てたんです。去年の11月ですね。

造成中の団地の崖の斜面から骨を掘り出しました。女性が、「やっと
 終わりました。これが最後です。今まで拾い集めた骨を何に使うか、
 さそや不審だったでしょう。このまま、わたくしどもの教団にご案内します」
それから車は2時間ほど走り、山の麓にある豪華だけれども下品な感じの
建物に着きました。予想どおり新興宗教の神殿?でしたね。
中には照明がついており、白いひらひらした服を着た信者が、並んで
俺らに礼をしました。それから、神道ともキリスト教ともつかない礼拝堂の
ようなところに通されました。前方に大きな祭壇があり、その前に
寝台が2つ並べられ、白い布がかけられてました。「これは?」
そう聞くと、幹部の男性が歩み寄って、どちらの布もとったんです。
一つにはうず高く積まれた白い骨。もう一つには・・・

少女の遺体が載っていました。少女は15歳前後でしょうか。死後に
特殊な処置を施されたのか、ミイラ化してるように見えたんです。
「骨が揃いましたので、これから初代の教祖様の復活の儀式を行います。
 感謝の意味を込めてここまでお見せしたんですが、これでお帰り願います。
 お仕事のほうも今夜で終わりです」こう言われ、思い切って聞いたんです。
「あの骨、仕事で集めたやつですよね。何で俺が拾ったんですか?」って。
そしたら、驚くような答えが返ってきたんです。「初代の教祖様は、あなたの
 妹御ですから」・・・混乱しましたよ。実家は男だけの3人兄妹のはずです。
復活の儀式は見せてもらえず、車で駅に送られました。その後、教団から
一切連絡はないし、電話番号も使えなくなってたんです。これ、どういうこと
なんでしょうか。それとなく実家に探りを入れようかとも考えてるんですが。







アーカイブ 植物怪談

2020.01.28 (Tue)
自分はあまり植物怪談は書いていません。
自分だけでなく、植物怪談自体が少ないですね。
できあがったものは、ちょっと毛色の変わった内容になります。

植物園の事故

サボテン園の思い出

間欠熱の話

芥子人形の話







「歴史の謎」について

2020.01.27 (Mon)

本能寺の変

今回はこういうお題でいきます。さて、みなさんは歴史の
謎といえば何を思い浮かべられるでしょう。やはり邪馬台国問題
でしょうか。あるいは赤穂事件の浅野内匠頭の刃傷の理由?
もしかしたら、現代史の3億円事件、グリコ・森永事件などを
あげられる方もいるかもしれませんね。

ただ、現代史の場合、評価が定まるまでにはまだ時間がかかり
ますので、今回は話からのぞかせていただきます。
本屋に行くと、「歴史の謎を考える」みたいな内容の本が
文庫で出ています。日本史と世界史があって、
やはり日本史のほうがずっと多いですね。

3億円事件 犯人のモンタージュ写真


各出版社から出されていますが、取り上げられている謎はどの本も
だいたい同じです。ですから、日本史、世界史、各一冊を
買っておけば十分だと思います。今ちょっと自分の本棚を見てみたら、
「日本人が知らなかった歴史のカラクリ」(歴史の謎研究会編、
青春文庫)というのがありました。

さて、この歴史の謎と言われるものですが、自分は3つくらいの
グレードに分かれるんじゃないかと考えています。
① きわめて重要な意味を持つ謎で、それが解決することにより
 歴史研究が大きく進むもの。 ② 興味深い謎ではあるが、
 あまり歴史的な意味は大きくないと思われるもの。

③ 荒唐無稽でとても謎とは言えないようなもの。
上で例としてあげた邪馬台国問題などは①に入るでしょう。
明治に入って、その所在地について畿内説と九州説に分かれ、
激しい議論が戦わされてきました。また、それ以外の候補地も
名のりをあげています。で、ひとまず畿内と九州にしぼるとして、

邪馬台国はどこに?
キャプチャ2

どちらに邪馬台国があったかは、3世紀の日本の状況を考える上で
きわめて重要です。もし九州だった場合、列島各地に小規模の
政治的なまとまりがバラバラにある状態、逆に畿内だとすると、
かなり統合が進んできていることになります。畿内説では、
このことを「ゆるやかな連合」と呼んでいます。

②については何を例にすればいいでしょうかねえ。あ、そうだ、
歴史フアンに人気の、坂本龍馬暗殺の謎なんかがいいかもしれません。
暗殺の実行は京都見廻組で ほぼまちがいないと思いますが、
実行者に竜馬の居場所を教えた黒幕がいるのではないか、
という説があれこれと出されていますね。

中には、西郷隆盛を中心とする薩摩藩説というのもあります。
ただ、その可能性は薄いですし、もし薩摩藩が黒幕だったとしても、
あまり違和感はありません。西郷は幕府を武力で完全につぶす
つもりで、公武合体論的な竜馬の存在がじゃまだったのは
確かだろうと思います。

近江屋事件 刺客に襲われる坂本と中岡
キャプチャ4

ですから、もしその決定的な証拠が出てきたとしても、
それで日本史の研究が大きく進展するというわけではないでしょう。
最初に書いた内匠頭の刃傷の理由や、今度ドラマになる明智光秀の
謀反の理由なんかもこれに入るんじゃないかな。

③は、荒唐無稽なものはたくさんあります。そうですね、
源義経=チンギスハーン説なんかがわかりやすいかな。
まあありえない話ですよね。検討するのは最初から
ムダなんですが、ただ、義経が衣川の戦いで死なず北方に逃れた
可能性は、わずかながらあるかもしれません。

最近大はやりの「聖徳太子はいなかった説」
キャプチャ

でも、そうだとしても日本史の流れに与える影響はほとんど
ないでしょう。ということで、歴史の謎といったたぐいの本を
読まれる場合は、この謎が解決すれば、それによってどう歴史が
変わるのか、教科書は書きかえられるのか、などのことを
頭に入れておくといいんじゃないかと思います。

あとはそうですね、解決した謎というのもあるかな。
東洲斎写楽別人説なんかはそうですね。江戸中期の浮世絵師、
写楽は活動期間が短く、忽然と画業を絶って姿を消して
いるので、別人が姿を秘して描いていたのではないかという説です。

義経はチンギスハーン?


写楽の候補としては、初代歌川豊国、葛飾北斎、喜多川歌麿、司馬江漢、
谷文晁、円山応挙、山東京伝、十返舎一九、版元の蔦屋重三郎など、
同時代の有名人が数多くあげられています。ですが、信頼性の高い
文献に「写楽斎は俗称斎藤十郎兵衛、八丁堀に住す。阿州侯の能役者也」
と出ていて、斎藤十郎兵衛が実在していた証拠も出てきました。

文献史学的には一定の結論が出た形で、これを覆すには、
新たな有力証拠を持ってこなければなりません。とは言っても、
いまだに写楽別人説を見かけることもあります。歴史の謎というのは
一部のライターや出版社にとっては飯のタネで、
簡単に解決されても困るんですね。

きわめて独特の装飾的な感覚です
キャプチャ3

最後に、誤解されてほしくないので言っておきますが、自分は、
こういう歴史の謎の研究に、アマチュア歴史愛好家の方がこつこつ
取り組まれることを否定するものではありません。キャバクラとかに
通うよりは、ずっと品もよく、お金のかからない趣味だと思います。

さてさて、ということで、今回は歴史の謎の話でしたが、邪馬台国問題
なんかは、これに取り憑かれると家財が傾き、友人を失い、
家族が愛想を尽かして最後には目が見えなくなる、
なんて冗談もあります。十分お気をつけください。では、このへんで。






怪談語りについて

2020.01.26 (Sun)
gwwgrwg (1)

今回はこういうお題でいきます。いちおう怪談論のカテゴリです。
さて、最近、読むほうの怪談はそこまで変化はありませんが、
怪談を語るほうはかなり盛り上がっており、あちこちで
怪談会やコンテストが開かれていますね。

怪談師の方も、タレント、漫才師、落語家、僧侶、怪異収集家と
多士済々です。自分はyoutubeでたまに見る程度ですが、
一人ひとり語り方が違っていて、ひじょうにバラエティに富んでおり、
見ていて飽きることがないですね。自分の場合は、怖がるというより、
この人は何に重点を置いて怖がらせようとしてるかに興味があります。

これもいろいろですね。最初から最後までボソボソと語る方もいれば、
山場で急に声調を変えたり、声を張り上げたりする方もいます。
このあたりは映画に似ているなあと思います。ホラー映画でも、
地味な形で淡々と話が進んでいく心理ホラーと呼ばれるものと、
おどかしギミックがたくさん入っているものとがあって、

これはどちらがいい悪いということではなく、見る人の好みの
問題だと思います。ホラー映画はたくさん出てるので、
自分に合ったものを見に行けばいいわけですね。
怪談もまた同じではないでしょうか。

gwwgrwg (3)

さて、当ブログで書いているのは「実話風の創作怪談」あるいは
「創作の怖い話」ですね。いちおうの決まりごととして、
出てきた人物が一人称で体験談を語るという形になっています。
これねえ、「創作」と明言することで、だいぶ見てくださる
お客さんを減らしていると思います。怪談はやはり、実話なのか

そうでないのかあいまいなところが妙味であって、最初から創作と
言ってしまえば、「それなら見ない」という方も多いんです。ですが、
自分が一人で千以上も怖い話を書いて、全部が実話ですと言っても
通用するはずがありません。しかたなくこういう形で始めたんです。
まあ、どうせ個人的な趣味のブログなわけですし。

自分は当ブログの話を、完全に「読む怪談」として書いています。
ですから、たぶん朗読しても怖くはないだろうと思います。
細部をかなり書き込んでますので、冗長にすぎるんですね。
また、自分の怪談を語り用にリライトするとしても、
多大な労力が必要になると思います。

自分は稲川淳二さんの怪談語りのフアンで、全国ツアーを何度か
見に行ったことがありますが、やはり読む怪談とはだいぶ違います。
まず、一番大きい点は、読む怪談は活字になっているので
読み返すことができるということです。

gwwgrwg (2)

この意味はおわかりと思います。読者の方が、途中で「あれ、変だな」
と思われた場合、前にさかのぼって確認することができるんですね。
ですから、しっかりつじつまを合わせていなくてはなりません。
登場人物の数が変わっていたり、ことわりなく場所が移動して
いたりはできないんです。話の中の時間の管理もあります。

これに対し、怪談語りの多くはライブパフォーマンスですので、
もちろん最低限つじつまが合っているのは当然ですが、
読む怪談ほど気を使う必要はありません。なんというか、
勝負をするのはそこではないんですね。

話の筋も、枝葉の部分はパッパと飛ばして、恐怖が盛り上がる、
お客さんを怖がらせたい部分に力を入れればいいわけです。
おそらくそのほうが、印象に残る怪談になると思います。
あと、稲川淳二さんの怪談の場合でも、聞いてて、あれ変だなと
思う部分はないでもありません。

ですがそれも、怖さのサビの部分を聞くと頭から飛んでしまいます。
そのあたりが語りの持つ大きな強みだと思います。コンビニで、
稲川さんの怪談を書き下ろしたのや、マンガに化したのを
売ってますが、細部が整えられていたりすることが多いんですね。
怖さは、残念ながらライブよりはずっと落ちると思います。

gwwgrwg (1)

あとはそうですね、語りの場合は、その怪談師の方のキャラクターも
かなり重要だと思います。その人なりの味の出し方というか。
そりゃそうですよね。ビートルズとローリングストーンズが
同一曲を演奏しても、まるで違ったものになるはずです。

ですから、怪談師さんも、自分に合った形を早く見つけて、ネタを
増やしていくのがいいんじゃないかと、僭越ながら考えます。
ここで、お前はやらないのかと言われるかもしれませんが、
無理ですね。自分は人前に出るのがたいへん苦手ですし、
なによりやってる時間がありません。

一時は、自動朗読とかでyoutubeに動画を上げることも考えたり
したんですが、上記のような理由から断念しました。
オカルト、怪談関係はこのブログだけでの活動になると思います。
まあ、自分は占い師ですので、本業のほうに力を入れていきます。

さてさて、ということで、怪談語りについて所感を述べてみましたが、
語りのほうは正直よくわかりませんので、見当違いの部分もあるかと
思います。なんにしても、怪談、怖い話が盛り上がるのはたいへん
喜ばしいことです。では、今回はこのへんで。







瞬間移動の話

2020.01.25 (Sat)
みなさんは、超能力についてどうお考えでしょうか。いわゆる心霊とは
違うものだと考えておられる方も、かなりいるんじゃないかと
思います。ですが、この2つ、線引きはあいまいなんです。
心霊については、超心理学のほうから「超ESP仮説」というのが
出されています。簡単に言えば、「死後生や霊魂の存在の証拠とされる
心霊現象も、ESPや超能力によるものだと見なすことで、霊魂を想定
しなくても説明可能になる」というものです。これ、どう思われますか?
例えば、幽霊を見るということは、超能力者が自分の力で過去のビジョンを
見ているというわけです。ただ、こう言えるということは、逆もまた
可能なんですね。すべての超能力は霊の力で生じている、と。まあ、
小難しいことはこれくらいにして、今回は瞬間移動に関するお話です。

小売業 小畑浩一さんの話
俺、青果市場で店やってる小畑って言います。よろしくお願いします。
これな、俺が小学校の5年のときに体験した話なんだ。
昭和のまだ40年代初めだった。当時はほら、ゲームなんてなかったから、
どこの家の子も外で真っ黒になって遊んでたもんだ。
でな、あれは夏休みだった。その日は遅く起きたんで、みなが集まってる
小学校の校庭には行かず、一人で川で魚採りをしてた。
釣りじゃなく、網ですくうやつ。しばらくそうしてたら、
土手から「おーい」って呼ぶ声がした。見ると、同じクラスの三原って
やつだった。そいつ、その頃の一番の親友だったんだよ。
家もすぐ近くだった。「なんだよ~」と返事したら、息せき切って
土手を駆け下りてきて、「おい、スゲえぞ、スゲえこと発見した」

って叫んだ。けど、こう言っちゃなんだが、三原ってあんまり頭よくなくてな。
こいつが興奮してるときって、たいがいくだらねえことだったんだよ。
「スゲえから」って言うんでついてったら、公園に人の糞が落ちてて
ウジであふれ返ってるとかだったり。あ、汚い話でスマン。
「どうした」って改めて聞くと、「ユリ・ゲラーだよ」って答えが返ってきた。
ああ、当時スゲえ流行ってたんだよ。超能力ってやつ。壊れた時計が
動き出したり、あとほら、スプーン曲げ。鉄のスプーンがくねくねに曲がる。
もちろん俺もやったけどな、成功したためしはねえ。
「ユリ・ゲラーって?」 「よくわからんが、テレポテーションってやつじゃ
 ないかと思う」・・・よくガキがテレポテーションなんて言葉を知ってた
と思うだろうが、マンガ雑誌の超能力特集で出てたばかりなんだ。

だから、三原もそれ見て騒いでるんだと思った。土手に上がると、
三原は俺の手をつかんで、「とにかく来てくれ。やってみればわかる」って
言うんだな。「やってみるって、何をだ?」 「オイサキ様だよ」
「え?」 このオイサキ様ってのは、運動公園の裏のほうにある
神社みたいなものだ。みたいってのは、鳥居も何もなくて、ただ小さい四角い
建物があるだけで、回りを大人の腰くらいの鉄柵で囲まれてる。
だから近くに寄れなくて、お参りもできない。賽銭箱もない。
ただ、落ち葉とかが掃き清められてたから、世話する人はいたんだろう。
「俺な、夏休みの自由研究でアリジゴクを飼ってみようと思って、
 あちこち探したんだよ。んで、オイサキ様の下な、砂地になってるのを
 思い出して行ってみた。そしたらアリジゴクの穴がいっぱいあったんだ」

オイサキ様も、俺や三原の家からは近い。「お前、柵、乗り越えて入ったのか」
「ああ、あんなのわけねえ」 「そら、わけねえだろうが・・・」
前にそのあたりで遊んでたとき、柵を飛び越えたりしてたのを大人に見つかって
こっぴどく叱られたことがあった。「でな、あそこ床下が広いだろ。
 もぐり込んで、アリジゴクをつかまえてたら、夢中になって立ち上がっちまった」
「で?」 「したら、頭あたったとこがボカッと抜けたんだよ。割れたって
 ことじゃなく、床に敷いてた板がずれたんだと思う」 「それでどうした?」
「子どもなら入れるほどの穴になったんで、手をかけてのぞいてみた。
 中は暗かったが、少しだけ光が入ってて、台の上に鏡みたいなのがあった」
「それ、御神体ってやつじゃねえか」 「ああ、たぶんな。でな、俺
 上がってみたんだよ」 「うわ、大人に見つかったらヤベえ」

「ああ、でも回りに誰もいなかったし。床は四角い板が並んでて、
 俺が入ったとこだけズレてた。中はガランとして、あるのはその丸い鏡だけ。
 鏡は光ってた。天井に小さな穴が空いてて、そっから光があたってたんだ」
「で?」 「鏡の面が、虹みたいに光ってて、ああ、きれいだと思って
 指でつついたんだよ。したら急に真っ暗になって、俺、地蔵様の
 頭をなでてたんだよ」 「?? どういうことだ」 「ほら、向こう辻の
 とこに地蔵様のお堂があるだろ、そこにいた」 「嘘つくなよ」
俺はすぐにそう言ったよ。地蔵様のお堂は戸がないんで誰でも入れるが、
オイサキ様とはかなり離れてる。「いや、俺も何がどうなったかわからんかったけど、
 これ、雑誌に載ってたテレポテーションってやつじゃねえかと思ったんだ」
「信じられん」 「まあな。だからもう一回やってみようと考えてお前さそった」

てことで、2人でオイサキ様まで行った。大人は周囲に誰もおらず、離れた
市民球場で草野球してる人たちくらいだった。2人で柵を越えると、
たしかに高床の下から入れるくらいの穴があった。最初に三原、俺は
少し躊躇したが、勇気なしと思われるのが嫌で後に続くと、
三原の言ったとおり鏡があった。まだ光はあたってて、水に油を流したように
七色に渦巻いてた。「じゃあ、いっせいので指でさわろうぜ」三原はそう言って、
「いっせいの!」ビビッと電気みたいなのを感じて目の前が暗くなり・・・
また明るくなって、地蔵様の丸い頭の上に手があったんだ。「な!」
俺のほうを見て三原が言ったんで「ほんとだ、スゲえ」俺はもう大興奮だったよ。
「も一回やんねえか」 「ああ、やろうぜ」このとき、歩きながら
三原とこんな話をした。「でもよ、地蔵様ってお寺さんのだよな。

 オイサキ様はあれ、神社のほうだろ。なんでつながってるんだろうな?」
「いや、わからんが、どうせ親戚みたいなもんなんじゃないか」って。
で、このときもオイサキ様のあたりに人影はなし。前より余裕があったんで、
鏡をよく見てみた。大きさは直径20cmないくらい。ガラスじゃなく、
金属を磨いたものだったと思う。裏は鉛色で、墨かなんかで大きく黒く
漢数字の「三」が書いてあった。「いっせいの!」ドンと爆発したような
感じがした。俺は吹っ飛ばされ、地蔵堂の前の舗装してない道に倒れてた。
見上げた空は真っ暗で雷が走ってたな。全身が痛かったが顔を動かすと、
横に三原がやっぱ倒れてたんだ。「うううう」うめきながら立ち上がると、
あちこち痛いがネンザとかはなかった。「大丈夫か」手を取って
三原を起こしたら、俺よりひどくやられてる感じがした。

不思議なのは、さっきまでは晴れてたのに、大きな黒雲が頭上にのしかかってて
今にも雨になりそうだったことだな。気味が悪かったんで「帰らねえか」と
言うと「ああ」三原も顔をしかめながらうなずいた。でな、田んぼに出ると、
道の脇で軽トラがひっくり返って用水路に落ちてた。「あ、事故だ」深い側溝を
のぞき込むと、作業着の初老の男性が泥の中に仰向けに倒れてたんだ。
頭から血が出て、目をつぶったまま小さく何か言ってた。
「助けてくれ」だと思った。俺が「誰か人、呼んできます!」叫ぶと、
その人がギッと目を開け、俺らのほうを見て「お前らのせいだあ!!」
って叫んだんだよ。「わああ」俺と三原は走って逃げた。ああ、もちろん
大人に知らせるつもりだったが、誰とも会わなかったんで、辻の公衆電話に
駆け込んで110番した。警察にたどたどしく事情を話すと、

今から行くからボクたちもそこにいて、ってことだった。わりとすぐ、
パトカーと救急車が来たんで手を振った。パトカーの後部に乗せてもらって
田んぼのとこまで行くと、やはり軽トラが転がってた。俺らも下り、
おそるおそる側溝をのぞくと、さっきの人はうつ伏せに姿勢が変わってて、
泥水の中に顔を突っ込んでた。ピクリとも動かず、生きてはいないと思ったよ。
そんとき、土砂降りの雨になったんだよ。俺らはまたパトカーに避難し、
応援のパトカーが来て、俺も三原も家まで送ってもらった。家には耳の遠い
バアサンしかおらず、しかたなく宿題をやった。やがて家族が帰ってきて、
夕食のときに警察から電話がかかってきた。電話に出た親父は、「いいことした
みたいだな、警察が感謝してるぞ」って言ったが、俺にはまったくそう思えなかった。
あれ以来、俺も三原もオイサキ様の話題は避け、俺は一度も行ってない。

キャプチャ






野菜のオカルト

2020.01.24 (Fri)
fgghh (4)

今回はこういうお題でいきますが・・・野菜なんかで最後まで
記事が書けるんでしょうか、けっこう不安があります。
もしかしたら、かなりスリリングな内容になるかもしれません。
あと、野菜には米をのぞいた穀類も含ませていただきます。

さて、このシリーズでは、取り上げたものの簡単な歴史を
ます最初に書いてるんですが、野菜全体となると、あまりにたくさん
あって、とてもすべてはふれられません。ただ、野菜が世界に
広まるにあたって、歴史上画期的な出来事がありました。

これはみなさんご存知かもしれません。1492年のコロンブスの
新大陸到達ですね。余談ですが、最近は「アメリカ大陸発見」
という言い方について議論があります。独自の文化で
ふつうに暮らしている人の土地に勝手に上がりこんできて、
何が発見だよ、と不快に思う人がいるんでしょうね。

コロンブス一行 十字架を立てて、ここはキリスト教徒の土地だと勝手に宣言
fgghh (5)

その後、スペイン、ポルトガルの征服者たちが
次々に新大陸に渡り、さまざまな物をヨーロッパに持ち帰りました。
野菜や穀物類が多かったんです。代表的なものをあげると、ジャガイモ、
サツマイモ、タピオカイモ、トマト、パパイヤ、パイナップル、イチゴ、
カボチャ、トウモロコシ、トウガラシ、ナンキンマメ・・・

あとは嗜好品としてのタバコ、チョコレート(カカオ)。
これで世界の食生活がだいぶ豊かになったんですね。
例えば、ドイツやアイルランドなんかは、ひじょうにジャガイモ
栽培が盛んで、ドイツではほぼ主食化しています。寒冷地では
麦よりもずっと生産性が高いんです。

ヨーロッパ北部では主食になっているジャガイモ
fgghh (7)

この大航海時代には、新大陸から梅毒がもたらされて、
あっという間に世界に広まったという話があり、異論もありますが、
まず間違いない気がします。で、梅毒が世界を回って日本に
入ってきたのは、上記の野菜よりもだいぶ早かったんです。
まあ、歴史はこんなとこでいいかな。

さて、野菜のオカルトといって自分がイメージするのは、まず
トウモロコシですね。アメリカのホラー映画や小説では、
トウモロコシが出てくるものがすごく多いんです。みなさんは
「コーンベルト」という言葉を聞かれたたことがあると思います。

『ヒューマン・キャッチャー2』
fgghh (8)

アメリカ合衆国中西部では、トウモロコシが主要作物です。
気候や土壌が合ってるんですね。このトウモロコシは家畜の
飼料用のものも多いです。ホラー映画で見られたことがあるんじゃ
ないでしょうか。人の背丈よりも高いトウモロコシ畑に迷い込んで、
何者かに追いかけられる定番のシーン。

向こうの農業規模は日本とは比較になりませんので、
もしトウモロコシ畑の真ん中に放り込まれれば、出てこれなくなって
死んでしまうかもしれません。自分がアメリカ滞在していたときには、
近くの農場で収穫前のトウモロコシ畑に迷路をつくり、
無料アトラクションとして開放していました。

ミステリーサークルではありません 映画『スターウォーズ』とタイアップしたトウモロコシ畑の迷路fgghh (1)

最近の映画では、『ヒューマン・キャッチャー2』で、怪物が
トウモロコシ畑のカカシに化けているシーンはなかなか怖かったです。
ホラーとは言えませんが、日本でもヒットした1989年の
『フィールド・オブ・ドリームス』では、畑を切り拓いてつくった
球場に、亡くなった過去の名選手たちがやってきました。

小説だと、映画にもなったキングの『トウモロコシ畑の子供たち』、
トマス・トライオンの『悪魔の収穫祭』、シャーリー・ジャクスンの   
短編『くじ』には、「六月にくじ引き、とうもろこしはじきに実る」
というセリフが出てきます。どうもトウモロコシの収穫と生贄が
向こうでは結びついているみたいなんです。

『フィールド・オブ・ドリームス』


このあたりも調べてみれば面白いものが出てきそうです。アメリカの
コーンベルトの住人には、トウモロコシは特別な感慨があるんでしょうね。
さて、トウモロコシで話が終わりそうです。カボチャというのも
オカルトな野菜ですよね。アメリカのハロウインで、カボチャの怪人の
ことは「Jack-o'-Lantern ジャック・オー・ランタン」と言います。

もともとハロウインはヨーロッパの風習で、悪賢い遊び人のジャックが
悪魔をだまして、死んでも地獄に落ちないという契約を取りつけたが、
死後、生前の行いの悪さから天国へ入るのも拒否され、行くところがなく、
カブに憑依してさまよい歩いている姿なんです。そう、あれはもともと
大きなカブだったんですが、アメリカに入ってカボチャに変化しました。

ジャック・オー・ランタンは本来はカブ
fgghh (6)

あとはそうですね、カルト映画の一つに1978年の
『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』というのがあって、B級映画
ならぬZ級映画とまで言われています。見ないほうがいいです。
筋は、なぜかトマトが人間を襲うようになり、やがて巨大トマトが
出現して、最終的にはアメリカ軍との戦いになります。

最近の話題としては、ココナッツにキリストの顔が現れたなんてのも
ありました。こういうのは顕現といって、神がその存在を信徒の前に
示すものとされています。壁の木目とか、トーストの焼け焦げとかにも
出てきますが、もちろん正式な奇跡とは認められていません。

ココナッツの実に出てきたイエスの顔
fgghh (3)

さてさて、けっこう書くことがありましたね。もっと野菜らしい野菜と
いうか、キャベツとかについても書きたかったんですが、
字数が尽きてしまいました。考えれば出てくるもんですね、
心配する必要はなかったようです。では、今回はこのへんで。

映画『アナベル』の人形は実話ではキャベツ人形
fgghh (2)





藪入りと死後の世界観

2020.01.23 (Thu)
dfg (3)

今回はこういうお題でいきます。これ、カテゴリは歴史とも
言いにくいし、よくわからないのでオカルト論に入れておきますか。
さて、みなさん薮入はご存知でしょう。旧暦の1月16日と、
7月16日の年に2回、主に年少の奉公人が休日となって、
親元に帰ることができる日です。

新暦だともう過ぎてしまいましたね。自分はずっと実家のある
茨城に住んでたんですが、東日本大震災を機に大阪に移りました。
こっちの人に聞くと、昭和40年代頃までは大きな商家には
まだ丁稚さんがいたということです。うーん、休みが年に2回
だったら厳しいですが、実際はそれ以外にもあったようです。

落語に、「藪入り」という人情噺がありますよね。商家に奉公に
出した息子の亀吉が3年ぶりに帰ってくるということで、
両親はあれも食べさせてあげたい、あそこにも連れて行って
やりたいとあれこれ思案します。そして身長も伸び、
立派になった亀吉が里帰りして、両親は大感激。

閻魔大王
dfg (7)

母親が小遣いを入れてやろうと亀吉の財布を開くと、そこには
3万円の大金が入っている。明治期が舞台ですから、現在の
300万以上になると思います。店の主人が小遣いとして持たせて
くれたとしては、あまりに高額すぎる。悪事を働いたのではないかと
心配した両親が亀吉を問い詰め、大喧嘩になってしまいます。

落ちまでは書かないでおきますが、これ、明治期のぺスト大流行と
関係があるんです。さて、藪入りの習慣が始まったのはそれほど
古いことではなく、江戸時代とみられています。それ以前は、
この2日は、嫁に出した娘が里帰りする日だったようです。

古墳時代の舟
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では、なんでこの2日が休日になるかというと、地獄の思想に
関係しています。地獄の冥官である閻魔大王の賽日がこの2日
なんですね。地獄の釜の蓋が開き、その日は閻魔様はお休み、
鬼も休みで、必然的に、罪人たちもその日は責め苦を
まぬがれることができたようです。また、この世では、

亡者ならぬ奉公人もお休みというわけです。ただ、
江戸時代の場合、電車などがあるわけではなく、また厳しい
関所調べもあるため、関東周辺から来た奉公人は家に
帰れませんでした。そこで江戸市中をぶらついて芝居を見たり、
見世物小屋に入ったり、閻魔堂に詣でたりしていたようです。

仏教の六道輪廻
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余談ですが、江戸時代の見世物というのはオカルトの宝庫で、今、
少しずつ調べてるんですが、たいへんに興味深いものです。いつか
まとめて記事にしようと思ってます。「藪入り」の語源ははっきり
してないものの、「宿入り」が変化したという説が有力みたいです。

さて、ここから死後の世界の話に移ってきます。世界の宗教では、
死後の世界観は大きく3つに分かれるかなと思います。
① 此岸(この世)とは別の彼岸に行く。
② 生前の行いによって地獄か極楽(天国)のどちらかに行く。
③ 因果によって輪廻転生する。

道教における冥界の王 泰山府君
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日本の神道は①に近い考え方です。人は死後、黄泉の国、常世国、
根の国などと呼ばれる場所に行く。装飾古墳の壁画には舟が描かれている
ものがあり、おそらく霊魂がそれに乗って別のところへ行くという
ことを表しているんでしょう。神道では、生前の行いによって
死後に裁きを受けるという考えは一般的ではありません。

②はキリスト教がそうですよね。ただ、これにも大きく2つの説が
あって、信仰や戒律の遵守で天国か地獄かが決まるというものと、
人は生まれたときからすでに天国へ行くか地獄へ行くかは
決まっているとするもの(ジャン・カルヴァンの予定説)です。

仙人
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③はヒンドゥー教がそうです。生きることで業が生じ、それによって
来世の転生が決まる。仏教はインド生まれの宗教ですので、
②と③が入り混じったような考え方ですね。六道輪廻と言って、
「天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道」のどれかに行く。
しかし、本来の目的はこの輪廻から解脱することです。

面白いのが中国で、④とも言える考え方がありました。
もうおわかりですね。「死なない」というものです(笑)。中国古代の
神仙思想では、仙道の修業によって生きたまま羽化登仙し、
不老不死になることができるとされました。秦の始皇帝が晩年、
不老不死の薬を手を尽くして求めたことはよく知られています。

キリスト教の神の国(天国)
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ただし、大多数の人間は仙人になれませんので、冥界に行きます。
冥界はこの世とあまり変わらず、紙銭や紙の家、使用人などを
燃やして死者が使えるようにします。冥界を治めているのは、
道教の泰山府君でしたが、仏教の流入とともに地獄の思想も
取り入れられ、もとはインドの神である閻魔大王が支配しています。

中国の古い書物には、輪廻という考え方はほとんど見られませんが、
16世紀、明代の『西遊記』には、三蔵法師が何度も生まれ
変わりながら天竺をめざすという内容が出てきていて、
この頃には輪廻思想が取り入れられていたことがわかります。

神道で、此岸と彼岸をつなぐ黄泉比良坂
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さてさて、ということで、死後の世界観の研究はオカルト的に
重要です。日本の場合、明治維新で仏教から国家神道に急に
切り替わったせいもあり、現代では地獄を信じている人は少数に
なっていますね。では、今回はこのへんで。

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ある失踪の話

2020.01.22 (Wed)
俺、右京って言います。仕事は自動車組み立てラインの工員で、
いちおうは正社員です。独身でアパート暮らしてます。
それでね、ここのところ おかしなことが続いてるんですよ。ここの
ルームのみなさんって、そういう、えーと、超常現象の専門家
なんですよね。いったいどういうことなのか教えてもらいたくて。
あ、ここのことは、神主をやってる親戚がいて、その人から聞きました。
じゃあ話していきますけど、このとおり、しゃべることに慣れてないんで
わかりにくいかもしれません。わけわからなかったら、途中途中で
質問してください。4日前の火曜日です。俺、仕事の後でいっつも
飲みにいくんです。部屋に帰っても誰もいないし、飯つくるのも
かったるいんで、そこのスナックで済ませちゃうんですよ。

で、あれは10時頃だったな。そんとき、店にいたのはマスターと
女の子一人、それから客は俺入れて4人ぐらいだったと思います。
そろそろ帰ろうかってときでした。店のドアが開いて佐藤が
入ってきたんです。あ、佐藤ってのは工場の俺の2年後輩です。
やっぱアパート暮らししてて、場所もわりに近い。
佐藤は入ってくるなり俺を見つけて、「やっぱここにいた。
 右京さん、頼みがあるんス。俺の部屋に来てもらえないスか?」
こう言いました。俺が「え、そりゃ別にかまわねえけど、どうしてだよ。
 なんかいいもんでも買ったのか?」そしたらね、びっくりするような
答えで。「いや、俺の部屋、今、幽霊がいると思うんス。
 それで怖いし、右京さんに見てもらいたくて」

それ聞いたときには、ああ、こいつ酔ってるのかって思ったんですけど、
いつもふざけてるやつがいつになく真剣で。酒が入ってるようにも
見えませんでした。「幽霊!? いきなり何言い出すんだ。どんな幽霊だよ」
「いや・・・それが、うまく説明できないんス。とにかく来て
 見てもらえませんか」まあね、佐藤のアパートは帰り道の途中なんで、
寄るのはわけないんだけど、それにしても幽霊ってのは・・・
それで店の勘定を済ませて佐藤についてったんです。
アパートはそこのスナックから歩いて10分もかからないとこです。
その道々、「どんな幽霊だよ、何で幽霊だと思うんだよ」って、ずっと
聞いたんですけど、佐藤は「とにかく来て見てほしいっス」そう
くり返すだけで、下を向いてスタスタ歩いてくんで、変は変だと思いました。

佐藤のアパートが見えてきて、1階の角部屋なんです。ドアの前に
立つと、佐藤はガタガタ震えだして、「怖い、ああ、怖ええよう」って
泣きそうでした。いや、ふだんそういうやつじゃないんです。でね、ほら、
ドアにのぞき穴ってあるじゃないですか。レンズついてて中から外が
見えるやつ。佐藤がかがんでそこ見て、「あーっ、やっぱいる!」って
叫んだんです。けど、外から中は見えないじゃないですか。
そのことを言うと、「見えないけど、中、暗いのわかるでしょ」って。
「どういうことだよ?」 「俺、出るとき部屋の電気全部つけてきたんです。
 玄関も。だから、穴からは中がオレンジ色に見えるはずです。
 それが暗いでしょ。いるんですよ。幽霊が電気消したか、
 それともドアの後ろにいて、こっち見てるか」 

「んなバカな。・・・鍵貸せ、俺が開けてやるから」いやね、もちろん
幽霊がいるとは思いませんでした。佐藤がなんかで俺をかつごうとしてる
のかな、とは考えましたけど、俺らの工場は上下関係がけっこう
厳しいんで、それも考えにくいんです。で、佐藤が出した鍵を回して
ドアを開けたんです。「えええっ?!」何があったと思いますか。
・・・佐藤がいたんです。電気はついてて、ドアの後ろの玄関に
しゃがみ込んでました。「え、え!? お前今、外にいただろ」
当然後ろを見ますよね、けど誰もいない・・・ 佐藤は立ち上がって、
「ああ、右京さん、来てくれたんですね。よかった」って泣かんばかりの
様子で。わけわかんないですよね。「どういうことだよ」
「まあ、上がってください」佐藤の部屋には何度も来てるんで、

上がって2人でこたつに座りました。「説明しろ、どういうことなんだ?」
「今さっき、ドアの穴から外見てたんです。右京さん、一人で
 しゃべってましたよね。あれ、どうしてですか?」 「いや、だから
 お前とだよ・・・と思ってたんだが、ドアを開けた途端、後ろにいたお前が
 いなくなって中にいた。わけわかんねえよ、手品とかじゃないだろうな。
 もしふざけてんなら食らわすぞ」 「違うっスよ。さっきまで
 中田の幽霊が外にいてドアを叩いてたんス」 「中田ぁ?」
この中田ってやつは、やっぱ同じ工員で佐藤の同期なんです。そう言えば、
部署は違うけど、その週に入って月、火と中田の姿を見てませんでした。
「2日前の日曜日、中田に誘われて心霊スポットに行ったんス。ほら、
 ◯号線沿いにあるドライブインの廃墟」 「ああ、知ってる」

その廃墟は地元でちょっと有名な場所で、週末は探索のやつらが
けっこう来てるって話でした。俺も1度だけ行ったことがありますが、
スプレーの落書きだらけでしたね。変なことは何もなかったです。
オーナーが経営不振を苦にして首を吊ったってのも、嘘だって判明してます。
「で?」 「男2人なんで俺は気乗りしなかったんスけど、中田が
 行こう行こうって言って。でも、それも変なんスよね。ふだん
 そういうことに興味を持ってるやつじゃなかったし」 「で?」
「俺の車で行って、そんときは夜の12時近くで、俺らの他に誰も
 いなかったス。車についてる懐中電灯だけで各部屋を見て回って、
 最後に2階の首吊りの部屋ってとこに入ったんス」 「わかるよ。
 それで?」 「上からロープが下がって輪っかになってたけど、

 あれは誰かのイタズラっスよね。とにかく全部見たんで、
 中田も気がすんだろうと思って撤収したんス。で、ほら割れた1階の
 ガラス戸、あそこから出るとき中田が「うううう」ってうめいて。
 気色悪い声出すなよってそっち見たら、中田じゃなかったんス」
「何だったんだよ」 「・・・粘土の人形みたいなもんだったんス。
 人間と同じ大きさの。暗かったけど、顔がドロドロに溶けてました」
「んなバカな。で、どうした?」 「俺ね、恥ずかしい話スけど、
 腰抜けてその場に座り込んじゃって。そうしてるうち、泥人形は完全に
 溶けて消えちゃったんス」 「信じられねえな。中田は?」
「それからいなくなっちゃったんス。まずスマホにかけたけど圏外。
 でも、今どき市内で圏外なんてありえないスよね」 「ああ」

「中田の部屋の固定電話にもかけたけど、ずっと呼び出しだったんス」
「ドライブインの中も調べたんだよな」 「そんときは怖かったんで、
 明るくなってから行ってみたんスけど、誰もいなかったス」
「うーん、中田が今週休んでたのは確かだな。そのこと会社に話したのか」
「・・・・」 「バカ、じゃあ中田は無断欠勤になってるだろ。
 何やってんだよ、馘になるぞ。それに本当に行方不明なら警察に連絡
 しねえと」 「スンマセン」 「で、さっき外に中田の幽霊がいたって
 言ったよな。何で幽霊だと思ったんだ。本人かもしれないだろ」
「ドアののぞき穴、あれから見たんス。そしたら泥人間だったんス。
 全体に青緑色で、顔が溶けてるんだけど、中田の顔になったり、
 またドロっと崩れたりして。だから、そいつがチャイム鳴らしても

 ドア開けなかったんス。そしたらドンドンドンドン叩き出して」
「で?」 「しばらくそうして消えたんス。俺、部屋を逃げ出そうかと
 思ったんスけど、外に出るのも怖くて。そうやってるうち、
 右京さんが来たんス」 「・・・・」佐藤のやつが嘘ついてるとも
思えなかったんです。そんなことする意味ないですよね。思いついて、
佐藤の部屋からスナックに電話してみました。他の客は帰っただろうけど、
マスターは佐藤が入ってきて俺と話してるのを見てたはずですから。
ところが、マスターが言うには、俺が急に立ち上がって、誰かと
話してるように一人ごと言いながら勘定を済ませて出てったって・・・
ともかく、その夜はしばらく佐藤のアパートにいたんです。
やつのウイスキーずっと飲んでて、佐藤がつぶれて寝たんで、

敷きっぱなしの布団に寝かせ、目覚ましセットして自分の部屋に戻りました。
もう3時頃になってましたが、3時間は寝て工場に出たんです。
そしたら・・・佐藤は出社せず、なんと中田が出てきたんですよ。
この2日、風邪で熱が出て、ちゃんと連絡して休んでたって・・・
佐藤とドライブインの廃墟に行ったかも聞きました。そしたら、
行ったけど特に何も起きなかった。泥人間なんかも見てないけど、
ただ、2階から下りるときから佐藤がも物しゃべらなくなって、
ずっと車の中でも無言だったそうです。あと、ドライブインに誘ったのは
佐藤のほうからだったとも。でね、佐藤はその日以来 行方不明なんです。
工場長に話し、アパートの大家といっしょに部屋を見たけど いませんでした。
もう1日探して所在がわからなければ警察に届けることになってるんです。

 





生命についての疑問

2020.01.21 (Tue)
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リンはDNAを形成し、地球上で生命を生み出す元素だが、宇宙では
まれな存在だ。地球がどうやってリンを獲得したのかはわからないが、
科学者は、誕生したばかりの星の周りに、リンを運ぶ分子が
形成されるのを発見した。

そして、木星軌道付近の彗星で同じ分子を発見した。
新たな研究によると、生まれたばかりの恒星からやってきた彗星が、
リンの酸化物の形で生命を与える元素を地球に運んだ可能性がある。

(Business insider Japan)

今回は科学ニュースからこういうお題でいきます。まあ、半分
自分の妄想みたいな内容ですので、読むのはスルーされたほうが
いいかと思います。昨今、分子生物学、遺伝子生物学の
進歩は目をみはるものがありますが、じゃあ、生命について基本的な
ことがわかってるかというと、そういうわけでもありません。

生命の自然発生説を否定したパスツールの実験
thht (9)

よく生命について引き合いに出されるのが、「生命はどうやって
発生したか?」という疑問で、「生命の起源」と言い換えても
いいかと思います。そうですね、歴史的に大きく分けて3つの説が
あるかと思いますが、そのうちの一つは完全に脱落しています。

脱落したのは、生命は何もないところから生まれるとする
「自然発生説」。例えば、肉のスープをほっておくと、
いつのまにか微生物が中に見られる、といったものです。これが
ヨーロッパでは2000年以上にわたって信じられてきたんです。

最初に唱えたのは、アリストテレスなどの古代ギリシアの哲学者たち。
腐った肉からはウジが発生する・・・今なら、ハエが卵を産みつけだ
だけだろ、と一言で否定されますが、これが完全否定されるには、
1861年のパスツールの実験を待たなくてはなりませんでした。
わずか150年前のことなんですね。

生命の化学進化説を証明するためのミラーの実験
thht (4)

これを受けて出てきたのが、生命の「化学進化説」です。
簡単に言えば、生命は単純な物質が化学反応によって複雑化する
過程で生まれたとするもので、ロシアの科学者オバーリンという人が
最初ですが、みなさん、有名なミラーの実験をご存知でしょう。

フラスコ内に、原始地球にあったと考えられるメタンやアンモニア、
水素などを入れ、まず熱して水蒸気にします。それに、さらに
雷を模した放電をくり返しかける。すると、数日後には
アミノ酸が生じたんですね。その後は、アミノ酸がさらに
複雑化し、どこかの時点で生命が生まれた・・・

原始生命誕生のイメージ
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ただ、この実験は現在では批判が多いです。まず、原始地球の大気は、
化学反応しにくい窒素や二酸化炭素だったことがわかってきました。
それだと、雷の放電程度では複雑な物質は生まれない。そこで現在では、
生命の誕生には高エネルギーの宇宙線がかかわっている説、
生命は海底の熱水噴気孔で生まれたという説などが出てきています。

最後の3つめは、「パンスペルミア説」ですね。生命は宇宙から
隕石などによって運ばれてきたとするものです。これ、
DNAの2重らせん構造を発見したクリックなど、けっこう有名な
科学者が支持してますが、まだ確実と言えるほどの証拠は
見つかっていません、

海底の熱水噴気孔 生命はここで生まれた?
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そこで、化学進化説とパンスペルミア説の折衷案のようなものが、
現在は多方面で研究されています。引用ニュースのような、宇宙から、
生命そのものではないが、生命の材料になるものが隕石などによって
地球に運ばれたとする考えです。これだと、出来あいの化学物質が
使えるので、生命誕生までにかかる時間が短縮できます。

まあねえ、もしパンスペルミア説が正しいとしても、じゃあ、
その宇宙生命はどうやって誕生したのという話になりますし、
パンスペルミア説では、それは答えようがありません。あ、ここまでで
こんなに長くなってしまいました。最後までいけないかもしれません。

パンスペルミア説のイメージ
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次の疑問として、「生命とは何か?」というのがあるかと思います。
これを生物学者にぶつけると、ウイルスと細菌の違いで説明する
人が多いんですね。細菌は生命(生物)、ウイルスは非生命と考えられる
ことが多いですが、生命の条件としてよく出されるのが、「自己と
外界との境界」 「エネルギーと物質の代謝」 「自己複製」です。

「自己と外界との境界」というのは、細胞膜などを持っているという
ことで、この3つは細菌にはあっても、ウイルスにはできません。
ただこれも、地球にいる生命を基準にして人間が決めたもので、
みなさん、「生命とは何か?」に対する答えになっていると思われる
でしょうか? 生命と非生命の境界はきわめてあいまいです。

探査衛星はやぶさの目的の一つが、宇宙での生命物質の発見
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次、「生命はいつ誕生したか?」 地球上でということなら、
だいぶわかってきています。地球が誕生したのは46億年前、
その地球で生命と呼べる単細胞生物が発生したのが38億年前
くらいです。ただ、ここまで書いてきたように、宇宙には
地球よりももっと古い生命体がいるのかもしれません。

次、「生命はどこで誕生したか?」これも生物学者に問えば、
海と答える人がほとんどでしょう。水中だとアミノ酸などの化学物質が
自由に移動できます。海底の熱水噴気孔、淡水の熱水などで発生し、
長い年月をかけて進化して地上へと上陸した。

生物学とオカルトの関係は?
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さてさて、生物学は数学が適用しにくい学問分野です。
進歩はゆっくりとしかできませんでした。ですが、電子工学の
進展によって、電子顕微鏡、DNAを短時間で解析できる
次世代シーケンサー、DNAを切り貼りするクリスパー・キャス9
などが開発され、現在はすごいスピードで進んでいます。

それでも、「生命とは何か?」といった哲学的な疑問に答えるのは
難しい。アリストテレスの時代から、そう大きく理解が進んだ
というわけでもないんですね。そこに、霊魂とか幽体など
オカルトが入り込む余地があるんです。では、今回はこのへんで。

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「太歳 たいさい」って何?

2020.01.20 (Mon)
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台湾にある太歳星君の像

今回はこういうお題でいきます。いちおう妖怪談義に入れて
おきますが、これは中国占星術においては、きわめて重要な概念です。
さて、みなさん木星はご存知でしょう。太陽系で内側から5番目に
位置する巨大ガス惑星です。英語名は Jupiter(ジュピター)。
直径が地球の11倍程度あります。

1610年、イタリアの天文学者ガリレオが、手製の望遠鏡を用いて
木星の衛星を観察したことは有名ですが、紀元前364年、
中国人の占星術師、甘徳が、木星のすぐ脇に暗い小さな星を発見して
いるという話があります。ただし、これが事実だとしても、甘徳の
ころには衛星という概念はありませんでした。

木星


で、今回は木星の話ではありません。天球上で、木星と対になる
(線対称の位置にある)太歳という星についてです。
あれ、でも、太陽系にそんな惑星はありませんよね。
これは古代中国で、ある事情から考え出された架空の星なんです。

なぜこれが考えられたのか、事情は複雑です。木星は12年で
天球上を一周します。これを1年ごとに分けたものを十二次といい、
木星は1年で一次ずつ「西→東」と進んでいきます。
ここで、中国には十二支がありますよね。みなさんご存知の
子・丑・寅・卯・・・というやつですが、この回りは「東→西」です。

十二支と方位
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木星の動きとは逆なんです。そこで、木星とは正反対の位置にあり、
十二支を司る架空の惑星、太歳が考え出されたというわけです。
しかし面倒な話ですよね。ということで、最初は太歳は天にあったん
ですが、時代が進むとともに、天にある木星と対比して、
太歳は地面の下にあると考えられるようになってきました。

そして、だんだんに太歳は災厄を受け持つ神とされるように
なります。道教で、太歳を神格化したのが太歳星君です。
最初の画像に出てくるように、三面六臂(頭が3つ、腕6本)の
像になっていることが多いようです。

太歳で出てきた中国の画像
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さて、太歳は1年ごとに動いていきますので、太歳が地面の下に
埋まっているのは、その年の十二支の方角です。
太歳が自分で移動してるんです。古来から中国では、
新しく宮殿の門をつくったり、庶民が家を建てるときでも
太歳の方角は避けるべきだとされました。災いを招くからです。

太歳の方角の地面を掘ると、不気味な肉塊が出てくる。
中国の古書『稗海』には、わざと太歳の方角に家を建てた
金持ちの話が出てきます。土台を作るために地面を掘ると、
やはりブヨブヨした肉塊が出てきて、みなが恐れたが、

これも中国の画像 食べたんでしょうか?
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金持ちは気にせず、金属の容器に入れて家の土台にしてしまった。
特に祟りのようなものはなかったようです。ここでついに、
太歳は妖怪化してしまったんですね。ただ、この太歳を
食べると、不老長寿になるという話もあります。

さて、この太歳の正体ですが、中国の画像を検索すると
いろいろ出てきます。まずは霊芝です。マンネンタケ科の
キノコでかなり大きくなります。それから、
アメーバ様単細胞生物である粘菌という説もあります。

オオマリコケムシ 太歳にはたくさんの目があるとも言われます
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また、オオマリコケムシという群体性のコケムシ説もありますが、
おそらくは、一種類だけでなく、さまざまな生物が太歳に
なぞらえられているんだろうと思います。
スペースが少なくなってきたので、先を急ぎましょう。

前にも書きましたが、この太歳が、まだ江戸時代になる以前、
駿河にいた徳川家康の前に現れたという話があります。
江戸後期の随筆『一宵話』では、背は小さく、腕はあっても指がない
「肉人」と表現されています。みな気味悪がって、
遠くの山に運んで捨ててしまいました。後に、ある学者が、

ぬっぺっぽう
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「あれは中国の白澤図にある封(ほう)というもので、食べれば
長寿の薬になる。捨てたのは残念なことだ」と言ったとされ、
ここでの封は、太歳と同一とも考えられています。
ただ・・・ 別の解釈によれば、これはある種の皮膚病、おそらくは
ハンセン病に罹患した人間だったんじゃないかという話もあり、

常識的に考えれば、そっちのほうが正しい気がしますね。
この「封」が出てくるのが、京極夏彦氏の『塗仏の宴』です。ネタバレに
なるので詳しい解説はしませんが、作中では妖怪 ぬっぺっぽう
(のっぺらぼう)とも言われています。のっぺらぼうは、
小泉八雲の『怪談』の中の「貉」という短編にも登場します。

塗仏 この絵では黒くて魚の尾があるところから、出目金との関係も考えられる
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最初は天文関係だったのが、ここまで話が広がりました。中国から
伝わった太歳や封が、日本でぬっぺっぽうや肉人になったのか。
そこまではわかりませんが、日本の妖怪には、中国から伝わって
日本的に変質したものが多いので、その可能性は否定できません。

さてさて、最初に中国で太歳などという架空の星を考え出さなければ
ここまで話が複雑にならなかったんだろうと思いますが、
そこが文化の豊かさというもので、妖怪研究にも深みを
与えているんですね。では、今回はこのへんで。






鳥屋さんから聞いた話

2020.01.19 (Sun)
自分(bigbossman)の知り合いに水沼さんという30代の男性が
いまして、この人はいわゆる鳥屋さんなんです。鳥屋といっても、
ペットショップ関係ではなく、本業はミニコミ誌の編集者です。
バードウオッチャーが自分たちのことを称して鳥屋と言ってるんですね。
水沼さんはほんとうに野鳥観察が大好きで、年に50日以上は
山に入ってるそうです。まあ編集者の場合、雑誌の校了の期間は
忙しいですが、ひと月のうちぽっかりと暇になる時期もあるので、
そういうことができるのかもしれません。自分が京都に遊びに行ったとき、
たまたまお会いして、嵐山にある甘味処でお話をうかがいました。

「どうもお久しぶりです。どうですか、最近も鳥を見に行ってますか」
「ええ、もちろん。つい3日ほど前も行きましたよ。ほら、僕ら編集者は、
 校了期間は徹夜の連続になるし、精神的にもかなりキツイんです。
 だから、それが終わると自然の中に逃げ込むんですよ。それとね、
 ずっとマックとにらめっこでしょ。目が悪くなりそうなんで、
 野山の緑を見るようにしてるんです」 「ははあ、ご存知だと思いますが、
 自分は怖い話のブログをやってまして、バードウオッチングで
 何か怖い目に遭ったことはありますか。あ、遭難とかじゃなく、
 オカルト的なことで」 「うーん、そうですね。なくもないですよ。
 僕らが行くのは、いわゆる里山なんです。どこにでもあるような低山。
 登山が目的じゃないし、また標高が高くなるほど鳥の種類も少なくなる」

「ははあ」 「鳥に関しては怖い目に遭ったということはないです。
 鳥が巣作りしてるのは落葉広葉樹帯です。杉や松林じゃなく、
 雑木林なんですが、そうすると、ニホンザルの生息地と重なってる
 場合が多いんです。でね、そのニホンザルに関してなら、
 奇妙な話がいくつかあります」 「あ、ぜひお聞かせください」
「ニホンザルは日本のどこにでもいますけど、寒い地方と暖かいところでは、
 毛の長さが違うんです。まるで別種に見えるくらい違う。それと、
 やつらはオスのボス猿を中心に群れを作って生活してますよね」
「そうみたいですね」 「メス猿が産まれたばかりの子どもを抱いてる
 とこなんか、まるで人間みたいです。けどね、やつら、得体のしれない
 面があるんですよね」 「ははあ」 「あれは北関東に単独で出かけた
 
 ときのことです。渓流をちょっと登った、標高は数百mのあたりです。
 ねらってた鳥の写真は十分に撮れて、もう帰ろうかってころでした。
 山の斜面に細い登山路があるんですが、そこをぞろぞろニホンザルが
 降りてきたんです。驚きました。ふつう、やつらは樹上を跳び移って
 移動するんですけど、そのときは地面を歩いてましたから。でね、
 僕はやつらを驚かせたくなかったんで、木の陰に隠れて見てたんです。
 けど、やっぱ臭いで気づかれたんでしょうね。先頭にいたオス猿が
 キーッという声を出すと、みながバラバラに散って近くの木に
 登ったんです」 「それで?」 「サルたちが樹上から自分の様子を
 うかがってるのがわかったので、そろそろと山を下ろうとも
 考えたんですが・・ でも、サルがそろって下りてきた山に

 何があるのか気になるじゃないですか。それで、サルたちの気配が
 消えたのを見はからって、細い登山路を登ってみました」
「そしたら?」 「高さにして300mくらい登って、何もないんで
 戻ろうとしたとき、ふっと木の間に赤いものが目についたんです」
「何でした」 「人です。50代くらいの女性だと思います。
 立ち膝の状態だったんですが、声はかけませんでした。
 ひと目で生きてないってわかったので」 「遺体ってことですか」
「ええ。こっちを向いた顔には両目がありませんでした。黒い穴になってて、
 腐って溶け落ちたんだと思います。あと、むき出しの腕はほとんど
 骨になってました」 「でも、立ち膝って言いましたよね」
「ええ、気味悪かったですが、遺体を見つけたら通報するのが義務ですから。

 近づいてみると、背中と服の間に細い木がはさまってて、
 それで立ち膝に。無理やりそういう姿勢にさせられてるってことです」
「うーん、サルがやったんでしょうか?」 「おそらくそうだと思います。
 その遺体の前には果物とか木の実が山と積み上げられてましたし」
「サルたちがお供えをした?」 「たぶん」 「で、どうしました」
「地元の警察に連絡しようとしたんですが、携帯は圏外でした。
 で、通じるとこまで下りてったんですが、木の上にサルがいるんですよ。
 で、僕のほうに尖った枝とかを投げつけてくる。ほら、ここ傷に
 なってますが、そのときのものです」 「うーん、で?」
「怖くなって走って逃げました。すると樹上のサルたちが一斉に
 キイキイキャアキャア叫びだして、一時はどうなることかと思いました。

 でも、林を抜けるとそれ以上は追ってこなかったんで、
 そこで警察に通報して、来るのを待ってたんです。2時間以上かかりました。
 そのうちに日が暮れてきて、ああ、変な好奇心を出して見にいかなきゃ
 よかったって後悔しましたよ」 「それで?」 「地元の署の警官が
 2名来たので、事情を話し、遺体があるとこへ案内したんです」
「サルは?」 「そのときは妨害はありませんでした」
「で?」 「さっきの場所に行ってみたら、遺体はなくなってました。
 場所を間違えたわけじゃありません。サルたちのお供えはそのまま
 残ってましたからね」 「うーん、サルたちが移動させたんでしょうか」
「たぶん」 「何のために?」 「わからないですけど、あの遺体で、
 サルは神様ごっこみたいなことをしてたんじゃないかと思うんです。

 その山の麓には新興宗教の本部があって、観音像なんかがありましたから」
「サルがそれを目撃してマネをした?」 「そうじゃないかと思うんです」
「その後は?」 「警察は僕の言うことを信じてくれたみたいです。
 僕が証言した、遺体が着てた服が、前年に山菜採りで行方不明になった
 主婦のものと同じだったようで」 「うーん、じゃあその遺体はまだ、
 サルたちの神様になってる?」 「いや、あれから2年たってるので、
 さすがにもう骨だけになってボロボロだと思います」
「なるほどねえ、その亡くなった方にとっては、供養になってるのかも
 しれませんね」 「あ、そう考えるとそうかもしれません」
「他にないですか」 「まだあります。あれは中部地方の山に行ったときで、
 単独行じゃなく、ネットで知り合った地元のバードウオッチャ2人と

 いっしょだったんです」 「で」 「そのときは、 サシバやノスリ
 なんかをねらって、いい写真がたくさん撮れました。
 やはり、地元の人は穴場をよく知ってるんです。で、その帰り、
 もうすぐ森から出るってときに、頭上でサルたちが騒ぎはじめたんです。
 最初はキイキイ言ってたのが、ウオーウオーってうなるような
 声に変わりました。群れ全体でウオーって。あんなの聞いたことがないです」
「どうなりました?」 「それ聞いて、地元の2人の顔色が変わりまして。
 登山路のわきで、それぞれ自宅に電話したんです。
 一人はすぐに家の人が出ましたが、もう一人は家とは連絡が取れず、
 急いで下山してると、連絡が取れなかった人に電話がかかってきたんです」
「なんと?」 「自宅が火事になってるって」 「う」

「これは後で聞いたことですが、火事の原因はいまだに不明のようです。
 幸い、家族はそれぞれ出かけてて、自宅には人がいなかったんですが、
 全焼だったそうです」 「これも不思議な話ですよねえ。サルが教えて
 くれたってことですか」 「その人の家は山に近いとこにあったので、
 もしかしたら上から火が見えたのかもしれませんが、さすがに、
 サルがそれを教えるってことはないと思います。けど・・・」
「けど?」 「言われてみれば、あのときのサルの声、消防車のサイレンに
 よく似てたんですよ」 「うーん、火が出てるのを見つけたサルが
 伝言ゲームみたいにして山の中まで伝えたってことでしょうか。でも、
 その人の家だってわかるとも思えないですよね」 「ええ」 「いや、
 貴重なお話ありがとうございました。これ、ブログに書いてもいいですよね」







夢をどう使うか?

2020.01.18 (Sat)
ethahtth (3)

今回はこういうお題でいきます。怪談論ですね。
自分が書く話には夢が出てくるものが多いですが、もちろん、
最初から最後まで夢で終わることはありません。では、夢は
怪談にどう使うことができるでしょうか。少し考えてみたい
と思います。みなさんの参考になればいいですが。

まず、最初に考えられるのは、未来を夢が予言する、いわゆる
予知夢です。予知夢には、悪い未来を予言するものと、
よい未来を予言するものがありますが、よい未来の場合は
なかなか怪談にはなりにくいと思います。

「夢見が悪い」という言葉があります。簡単に言えば悪夢を
見ることですが、一口に悪夢と言ってもいろいろあります。
怪物に追いかけられる夢、高いところから落ちる夢、
すでに亡くなった人が何人も出てくる夢、学生時代の試験で
答案が白紙のまま時間切れになってしまう夢・・・

夢を食べる動物「獏」、じつは中国ではジャイアントパンダのこと
ethahtth (8)

ただ、これだけだと予知夢とは言いにくい気がします。もう少し
具体的なほうがいいですね。例えば、死んだおばあちゃんが
出てきて、あなたの右腕をなでて悲しそうな顔をする。
これだったら、近い将来に腕にケガを負うことを暗示
しているのかも、と思いますよね。

ところが、もし夢の中で右足だけが大根になっていたとしたら。
で、あなたは夢の中で、困ったなあ、これじゃあ会社に行けない
と考えている。この大根になる夢を何度かくり返し見て、
さて何が起こるのか? 怪談にはこういうパターンもあります。
現実とどうつながっていくかが腕の見せどころです。

黒澤明 『夢』
ethahtth (6)

いい予知夢というのは、宝くじ当選の体験談によく出てきます。
白い蛇が小判の山の上にとぐろを巻いていた、これはと
思って翌日宝くじを買ったら見事当選した。やはり怪談には
なりません。なんとか逆手にとれませんかね。

こういうのはどうでしょう。あなたはその夢を見て宝くじを
買い、番号を控えた。さらに念を入れようと思い、蛇神様を
祀っている神社にお参りに行き、くじの束をご祈祷して    
もらった。そしてくじをバッグに入れる途中で、足元を蛇が
走り抜けた。キャーと言ってくじは散らばり、

何とか拾い集めたが1枚だけ足りない。あとで抽選を見たら、
続き番号で1枚だけなくなったくじが1000万円に
当たっていた・・・ 予知夢の反対は過去を見る夢になります。
こういうのはどうでしょうか。夢の中であなたは、
小学生まで住んでいたせまいアパートにいます。

夢探偵が活躍する、筒井康隆原作のアニメ映画『パブリカ』
ethahtth (5)

あなたの母親が絶叫しながら包丁で何かを刺している。
現在の母親よりもだいぶ若い姿です。たちまち床に血が
こぼれますが、母親が何を刺しているのかはぼんやりして
わからない。あなたの父親はあなたが2歳のときに失踪して
今も行方不明です。もしかしたらあれは、母が父を

殺している姿だったのではないか。疑惑がめばえます。
そこで母のいる実家に行ってさぐりを入れると・・・
うん、一つの怪談になりそうです。次に、夢の中に現実が
侵入して来る話。あなたは最近、夫が浮気していることに
気がつき、離婚話が持ち上がっています。

デカプリオ、渡辺謙が共演した『インセプション』
ethahtth (1)

頭にきているあなたは、夫と別れて慰謝料をふんだくって
やりたいが、ここのところどうも夕食後、すぐに眠くなってしまう。
そして何度も、ロープで輪をつくり首を吊ろうとしている夢を
見ます。それで、寝る前に飲んでいたブランデーをやめて
みました。その夜、夜中に目を覚ますと枕元に人の気配がします。

浮気発覚以来、寝場所を別にしていた夫が暗い中に座ってて、
「吊れ~、吊れ~」と言いながら呪文を唱えている・・・
うーん、いまいちかな。逆に、夢が現実に侵入している話も
あります。あなたは夢の中で粘土をこねて人の顔を作っている。
あまり特徴のない中年男性の顔です。

ご存知『エルム街の悪夢』では、夢の中で殺されると現実にも死んでしまう
ethahtth (4)

それだけだとツマラナイ感じがしたので、目の間に大きな
イボをつけ加えてみた。するとすごく満足した気持ちになって、
朝を迎えた。変な夢だったと思ったが、すぐ忘れてしまった。
翌年度、あなたは本社に栄転になり、会社にあいさつにいくと、
直属の上司である課長が出てきたが、顔に大きなイボがある。

あなたは夢を思い出して「あっ!」と叫んでしまう。すると、
課長はあなたを睨みつけて、「お前だったのか、俺の顔に
イボをうつしたのは!」と言う・・・うん、これいいですね。
このタイプのアイデアはナンセンス話に使えそうです。
あとはそうですね。夢から出られなくなってしまう、

ethahtth (2)

というパターンもあるかと思います。『不思議の国のアリス』が
そうですよね。途中でアリスは、これは夢だと気がついている
ものの、いつまでも覚めることができない。最後に癇癪を起こして、
赤の女王たちに「なによ、あなたたちなんてトランプのくせに!」
と怒鳴ってひっくり返し、それでやっと夢の世界から抜け出る。

さてさて、この他、SFだと他人の夢に侵入できる超能力(または
超技術)が出てくる話があります。筒井康隆原作の『パブリカ』
では、他人と夢を共有できる夢探偵が、夢の中で罠を仕掛けられる。
デカプリオ主演の『インセプション』は、他人の夢に忍び込んで
金になるアイデアを盗みとるお話でした。では、今回はこのへんで。

ethahtth (7)





孔子と麒麟

2020.01.17 (Fri)
yjsyjr (2)

今回はこういうお題になります。これもかなり地味な内容の
話なんですが、最後は現代中国批判になるかもしれません。
さて、みなさんはキリンビールはお好きでしょうか。自分は
大好きです。特にビンのキリンは味が濃く、苦味が強くていい
ですね。ドライな味よりも、ビールらしいビールという感じがします。

さて、このキリンビールの商標になっている麒麟ですが、
中国では古代から霊獣とされてきました。その起源はかなり古く、
戦国時代までは確実にさかのぼれるようです。一般的に、
中国では「四霊」と言いまして、「麒麟、鳳凰、霊亀、応竜」が
これにあたります。そのトップにくるのが麒麟。

鳳凰
yjsyjr (4)

簡単に説明すると、鳳凰はすべての鳥を産んだ空の王、
霊亀はかなり大きく、背中に蓬莱山という仙人が住む山を
背負っています。応竜は竜の一種ですが、最初はマムシで、
それが蛟(みずち)になり、角竜になりというふうに
長い年月をかけてどんどん出世していきます。

麒麟は、「形は鹿に似て大きく背丈は5mあり、顔は龍に似て、
牛の尾と馬の蹄をもち、一角があって、背毛は五色に彩られ、
毛は黄色く、身体には鱗がある」とWikiに出てきます。
麒麟もすべての陸上の獣の祖とされていて、鳳凰(あるいはその
子どもの鸞鳥)と対の形で描かれることも多いですね。

霊亀
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また、麒麟はひじょうに高い徳を持った動物で、他の動物を
けっして殺さず、その肉も食べない。さらに植物にさえ気を使って、
歩くときは草の生えていない場所を歩くと言われます。
麒麟は一本角があると考えられていますが、その角も、
他の獣を傷つけないように肉で覆われているとされます。

つまり、人間の帝王以上の徳を持った生き物なわけです。
それと、「麒麟児」という言葉がありますよね。幼い頃から才能
あふれる人物のことを言いますが、これは麒麟が人間に優れた
子どもを送り届けてくれるところからきているということです。

応竜
yjsyjr (5)

あと、アフリカのサバンナにいる実在の動物、キリン(ジラフ)
との関係ですが、さすがに古代の中国人がキリンの噂を聞いて、
麒麟を考え出したということではありません。首の長さがだいぶ
違いますよね。逆に、明代、中国にアフリカのキリンが
紹介されたとき、古の霊獣の名がとられたと考えるべきでしょう。

麒麟にはまた、「瑞獣」としての性格があります。瑞獣とは、
ときの帝王が善政を敷いていると、天がそれを褒めて地上に
姿を現すとされる動物で、中国の天命思想が関係してるんですね。
中国には元号制度がありましたが、麒麟が捕獲されると改元して、
新しい元号には「狩」の字をつけるという習慣でした。

キリン


さて、次に孔子の話に移ります。みなさんご存知のとおり、
孔子は儒家の祖であり、儒教は漢の時代ころから中国では国教化
されて尊ばれました。ただ、孔子の生きていた時代には、
不遇の人という評価ができると思います。

魯の国の貧しい家庭に生まれ、下級役人から出発して52歳で
大司寇(司法長官)になりますが、朝廷内での対立に巻き込まれて
官を辞し、以後、10数年に渡る旅に出て各国を遊説して回ります。
しかし、どこにも受け入れられず、失意のまま魯に戻り、
以後は著作に専念することになります。

孔子 身長216cmだったという話があります
yjsyjr (6)

このとき、魯の歴史をまとめた『春秋』(現存しない)を書いて
いたんですが、ある事件をきかっけにして一切の著述をやめて
しまいます。で、その事件に麒麟が関係してるんですね。
「獲麟 かくりん」あるいは四字熟語で「西狩獲麟 せいしゅかくりん」
という故事成語があります。日本ではあまりなじみがないですが、

「著述を中断すること、物事の終わり」といった意味で使われます。
魯の国の西方にある野で狩りが行われた際、魯の重臣の家来が、
見たことのない一本角の気味の悪い生物を捕えたが、人々はそれを
狩場の管理人に押しつけて帰ってしまいます。孔子は後にその
動物を見て、伝説の麒麟であることに気がつきます。

「獲麟」の故事
yjsyjr (1)

麒麟が獲えられるのは、世の中が太平になり、帝王の徳が高い
しるしで、本来なら国をあげて喜ぶべきことなのに、人々はそれが
麒麟であることにも気づかず、気味が悪いと言って捨てて
しまったんです。孔子は完全にこの世に失望し、『春秋』を
書くのを中断。何をする気力もなくなって死を迎えます。

さて、ここでまた少し話を変えて、現代の中国では孔子は批判の
対象でした。(最近はまた再評価されてきています)文化大革命時
には、孔子および儒教は、党幹部の林彪と重ねるようにして批判され、
孔子の像も破壊されました。この理由はおわかりだと思います。

文化大革命で燃やされる神仏像
yjsyjr (3)

儒教は、天命を受けた帝王が仁を持って国を治める徳治主義を
唱えましたが、共産主義中国にあって、建前上は労働者である人民が
国の主役のはずです。孔子が説く徳治主義は階級制度を肯定し、
封建主義がはびこる原因となったとされ、また上記の林彪は
現代に孔子の教えを復活させようとした人間、と批判されたんです。

さてさて、中国のことを書くとやはり辛口になってしまいます。
現代の中国こそ、ガチガチの序列主義のピラミッドじゃないですかね。
そしてその頂点に立つ習近平氏は、まさに現代の皇帝のようなもの
ですが、はたして仁徳が備わっているんでしょうか。まだ儒教時代の
ほうがマシだったような気もします。では、今回はこのへんで。

権力闘争に打ち勝ち、現代の皇帝となった習近平氏
yjsyjr (7)





飛行士アメリアと東京ローズ

2020.01.17 (Fri)
アーカイブ208

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アメリアの飛行予定コース

今回はこういうお題でいきます。これ、カテゴリはなんでしょうね。
いちおう「怖い世界史」に入れておきますが、どちらかというと
地味な話題ですので、スルー推奨かもしれません。
オカルト陰謀論とも多少関係のある内容です。

みなさんは、アメリア・イアハートという名前をご存知でしょうか。
カメリア・ダイアモンドじゃないですよ。多くの方は知らないと思いますが、
アメリカではすごいビッグネームというか、
歴史的な偉人と考えられていて、伝記等も多数出版されています。

これは余談ですが、アメリカでは知らない人がいないほどの有名人なのに、
日本ではほとんど無名というケースはけっこうあります。自分の仕事に
関係があるところでは、カントリーミュージックのスターなんかが
そうですね。日本ではカントリーミュージックは人気ないですが、
ロックやジャズのスターよりも知名度がある人はごろごろいます。

アメリアと愛機ロッキード・エレクトラ
asdert (5)

さて、アメリア・イアハートはアメリカ人の女性飛行士で、
女性として初めての大西洋単独横断飛行をしたことで知られています。
チャールズ・リンドバーグの初飛行が1927年、アメリアの快挙は、
それから遅れること5年の1932年、35歳のときです。

リンドバーグといえば、最初のうちは英雄としてもてはやされていましたが、
長男が誘拐され殺害された事件のゴタゴタで、たいへん人気を落としました。
それに対し、アメリアは知的でチャーミングな女性で、夫のプロデュースが
成功したこともあり、当時のアメリカでは絶大な人気を誇っていました。

1937年、アメリアは赤道上世界一周飛行に挑戦します。ただこれ、
無給油というわけではありません。当時の航空機は、燃料搭載量の関係から
長時間飛行は不可能だったんです。で、この最中の7月上旬、
アメリアは同乗のナビゲーター、フレッド・ヌーナンとともに、
南太平洋において行方不明になりました。

ニクマロロ島(無人島)
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7月2日、日本の委任統治領(南洋諸島)に隣接したアメリカ領の無人島、
ハウランド島を目指して離陸し、飛行支援していたアメリカの巡視船
「イタスカ」との交信を最後に消息が途絶えます。アメリカ政府は、
巨額の費用を投じてアメリアを捜索、また、大日本帝国海軍にも協力を
依頼し、海軍次官山本五十六がこれに応じました。

1937年といえば昭和12年で、太平洋戦争開戦の4年前です。
ここで旧日本海軍がアメリアの捜索に協力したことが、
戦争をはさんで、後に都市伝説的な陰謀論を生み出すことになりますが、
それについては後のほうで書きます。

アメリアがどうなったかについては、大きく4つの説があります。
一つは予定ルート周辺で海に墜落したというもの。その付近の海域の平均水深は
5500mとされていますので、この場合は跡も残らないでしょう。
2つめは、燃料補給を予定していたハウランド島の南、約560kmの
ニクマロロ島に不時着し、やがてそこで命を落としたという説です。

マーシャル諸島の岩礁での捜索
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1940年、西洋人女性と見られる遺骨が同島から発見され、
フィジーに送られてイギリス人医師の鑑定を受けますが、その後紛失しています。
3つめの説は、マーシャル諸島のミリという小さな環礁に着陸したというもので、
不時着した女性を見たという、現地人の証言が残っているということです。
ただ、マーシャル諸島は飛行コースから数千km離れています。

最近のニュースで、アメリアの捜索をDNA分析を使って行う
というのがありました。アメリアが自宅で書いた手紙から唾液を採取し、
上記のニクマロロ島で発見された骨と比較しようとする試みですが、
昔の唾液からDNAを採集するのは困難でしょうね。
続報がないところをみると、上手くいかなかったのかもしれません。

さて、最後の4つ目の説ですが、アメリアはやはり当時日本領であった
マーシャル諸島に不時着し、日本軍に捕らえれた後、サイパン島を経由して
東京に移送され、太平洋戦争が始まると、「東京ローズ」の一人として、
アメリカ軍に対する反戦放送を強要されていたとするものです。

日本軍に捕らえられたアメリアらとされる画像 しかし様々な考証から日本統治以前のものと見られる
asdert (3)

東京ローズはご存知だと思います。旧日本軍が太平洋戦争中におこなった
連合国向けプロパガンダ放送の女性アナウンサーにアメリカ軍将兵が
つけた愛称で、一人ではなく、複数の女性が存在していますが、
英語のできる日本人女性、強制収容された日系アメリカ人女性らだったと
考えられています。(1名だけ身元がわかっています)

その中の一人がアメリアだったとしたら、これはセンセーショナルな話題です。
そのため、日本が無条件降伏した後、GHQによる統治が行われましたが、
アメリカ人新聞記者が、GHQの制止をきかずに放送局に侵入し、
アメリアの捜索を行っています。もちろんアメリアは見つかっていません。

これは無理な話ですよね。旧日本軍の記録は詳細に調べられましたが、
アメリアに関する記述はいっさいなし。また、日本国内における
目撃証言も一つもないんです。日本を占領していたGHQには
法を超えた強大な権力があり、もし日本にアメリアの痕跡が
残っているのなら、必ず見つかるはずです。

「東京ローズ」の一人、捕虜となった日系アメリカ人
asdert (4)

さてさて、なぜこういう話が広まったのか。敵国日本に対する憎しみ
だけではないと思います。アメリアの人気は絶大でしたが、戦争中の
兵士にとって、東京ローズもまた隠れた人気があったんでしょう。
アメリアの行方については、毎年のように新説が出されています。
どこかで見つかるといいですね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『環境DNAって何?』





眷属の話

2020.01.16 (Thu)
あ、どうも、辻と申します。よろしくお願いします。
今年、大学の4年生になります。あ、就職のほうはなんとか
内定をもらってます。それで、大学は東京ですけど、
実家は〇〇県の□□市なんです。ええ、北関東の。
そこにある神社のお使いの話をします。少し調べたんですけど、
お使いは、正式には眷属って言うらしいですね。
その神様と関係の深い動物の場合が多いみたいです。
ふつうの小さい神社は、境内にある狛犬が眷属を務めてるん
だけど、大きな神社だと、鹿、猿、狼、龍なんかが眷属に
なってることもあります。そういう場合、狛犬のかわりに
その眷属の像が造られてたりするんですね。

ああ、すみません。こういう話は、ここのみなさんならよく
ご存知ですよね。その神社、名前を出すのは控えさせていただき
ますが、眷属がカラスなんです。これは神社の本社がそうだから
だと思います。ほら、日本神話で、神武天皇の道案内をしたという
三本足の八咫烏。その神社は、摂社の中でも大きなほうで、
海沿いにあるんです。まわりは運動公園になってて、
野球場、サッカー場なんかが並んでる中に、けっこう広い杜が
残ってて、その中に。はい、僕の実家も比較的近くにあります。
ですから、子どもの頃からよく両親にその神社に連れてかれました。
産まれて間もない赤ちゃんの頃から。七五三もその神社で
やりましたし、小学生のときはお祭りのお神輿も担いでました。

で、いつからなのかなあ。はっきりとはわからないんですが、
その神社の大鳥居の上に、巨大なカラスがいつもとまってることに
気がついたんです。そうですね、大きさは2m近くあったと思います。
人間の背丈より高く、ふつうのカラスの数十倍大きい。
まだ幼児だったときに、そのときいっしょにいた父親に、
「あそこに大きなカラスがいる」って言ったんです。
鳥居を見上げた父親は、「そうか、いないように見えるけどな。
 ここの鳥居は、カラスがとまらないことで有名なんだ。
 カラスたちは神様のお使いだから、神社の神様に遠慮して、
 鳥居にとまらないようにしてる」だいたいこんな内容を、小さな
子どもにわかるように説明してくれたんです。

はい、そのカラスが見えるのは僕だけみたいなんですね。
このことは母親にも、小学校のときの友だちにも話したんですよ。
でも、誰もが「いない、見えない」って。ただ、その神社の神主さん
だけは、僕の言うことをわかってくれました。
いつだったかのお祭りのとき、神主さんが近くにいたんで、
「鳥居に大きなカラスがいつもいますよね」って言ってみたんです。
そしたら、神主さんはすごく驚いた顔になって、「ほう、ボク、
 それが見えるのかい」って。それで、初めて自分以外にも
見える人がいるのかと思って、息せき切って話したら、
神主さんは「いやあ、残念ながら私には見えないんだよ。
 ただ、いることは知ってる。ボクのほうが正しいんだよ」

そして僕の頭をなでてから、続けて「でもそれは、あんまり人には
 言わないほうがいいな。ほとんどの人には見えないんだから」って。
それからは人には話さないようにしてました。どうして、
そのカラスが僕だけに見えるかの理由はわからないです。
うちの父方の祖父は、その神社の氏子代表の一人だったんです。
でも、早くに亡くなってて、父親の代からは一般の氏子に戻って
ました。もしかしたら、おじいさんにも見えたんじゃないかなんて
思うこともありますが、わからないですね。他には心あたりはないです。
あ、肝心のカラスのことをあんまり話してないですね。
鳥居に向かって、中央やや右寄りの同んなじ場所にいつもいました。
それで、ピクリとも動きません。羽づくろいどころか、

頭を動かすことさえしなかったです。まるで彫像みたいなんだけど、
羽毛や目の光なんかを見るかぎり、生きてるものとしか思えませんでした。
足は3本ありました。そのうち左右の2本で、がっしりと鳥居をつかみ、
一本はつねに浮かしてましたね。・・・前置きが長くなってスミマセン。
ここから本題に入るんですが、このカラスが鳥居以外の場所にいるのを
2回見たことがあるんです。1回目は、小学校5年生のときの
お正月でした。初詣に行ったんです。その年は、紅白を見て年越しそばを
食べると家族みんな寝てしまって、初詣は2日の午後になったんです。
でも、行列ができるほどじゃなかったけど、そのときも神社は
だいぶ混雑してました。歩きで行って鳥居が見えてくると、
いつものように大カラスの姿を探したんですが、いないんですよ。

こんなことは初めてで、びっくりしました。鳥居へと続く道は両側が
駐車場になってて、たくさん車がありました。キョロキョロあたりを
見回してたら、いたんです。大ガラスは、やや離れたところにある
一台の車の上にとまって、上からガッツンガッツン、その車の
屋根を突っついてたんです。あ、ガッツンって言いましたけど、
音はしてなかったと思います。でね、当時は僕、車の車種なんて
よくわからなかったんですが、白いSUVでした。
どうしてカラスが鳥居を離れたのか、なんで車の屋根にとまって
つついてるのか、わけがわからなかったです。僕が立ち止まってると、
父親が「置いてくぞ」って言ったんで、あわてて後を追いながら
何回かふり返って見たけど、カラスはずっとそうしてたと思います。

でね、その意味がわかったのは2日後の新聞を見たときです。
いや、テレビのほうが先だったかな。地元の高校生のグループが
自損事故を起こしたんです。男女5人が海岸沿いの道を走ってて、
運転を誤って堤防から砂浜に転落したって出てました。
運転してた男子生徒は無免許で、即死だったみたいですが、
他の4人はフロントガラスを破って浜に投げ出されたりしたのに、
ケガだけで済んだんです。後の証言で、全員が飲酒してたとも
出てましたね。その事故車の写真が、新聞の地元版に出てたんですが、
それが僕には、駐車場でカラスがつついてたのと同じに思えたんです。
いや、違うかもしれないんですけどね。あと、もし同じ車だったとしても、
カラスが屋根をつついてたのが、事故のことを警告してたのか、

それとも怒ってたのか、そのあたりのことはわからないです。
運転者が死んでるので、やはり怒ってたのかもしれません。で、2度めに
カラスが鳥居を離れたのを見たのは、あの日の前日の夕方です。
僕は中学生になってて、吹奏楽部に入り毎日練習があったんですが、
卒業式が近かったんでその日の練習は早めに終わって、4時半頃に家に
向かってました。そしたら、頭上を何か大きなものが飛んでいることに
気がついたんです。そんなに高くないところでした。あのカラスです。
普通の鳥とは考えられない異様に大きい影が、ゆっくりと町並みから湾岸道路、
それと、夏は海水浴場になってる浜を、円を描くようにして飛んでたんです。
神社のカラスだ、とすぐに思いました。けど、誰も上を見上げたり
してる人はいないし、やはり見えてるのは僕だけなのか。飛んでいる姿を

見たのは初めてでした。あの車のときも、屋根にとまってたわけですし。
雄大な感じというより、すごく不吉な気持ちになったんです。何かが
起きるんじゃないかって。カラスは、僕が外にいる間ずっと、大きな弧を
描いて旋回してました。もうおわかりですよね。翌日の午後、あの地震が
起きて津波がきたんです。幸い、僕らの市は他のところに比べて被害は
少なかったです。海岸が長い遠浅の浜になっていたからかもしれません。
家族にも被害はありませんでしたが、津波で神社の大鳥居は倒れてしまい
ました。その後、3年くらいたって僕が高校生のときに鳥居は再建され、
見に行ったんですが、もうカラスはいなかったです。もしかしたら、
神社には神様もいないのかもしれません。あのとき・・・
僕に何かできることがあったんだろうかって、今でも考えてしまいますよ。






家もの、部屋ものホラー

2020.01.15 (Wed)
geggt (9)
『ヘルハウス』

今回はこういうお題でいきます。怪談論になります。
さて、ホラー小説や映画には、「家もの」と呼ばれるジャンルが
あるのはご存知だと思います。映画なら、まずあげられるのが、
リチャード・マシスン原作のイギリス映画、『ヘルハウス』です。
これ、傑作ですよね。じつによくできていると思います。

「滞在すると必ず死ぬ館がある。そこでは過去に、
館の主を中心に、背徳的・悪魔的な儀式が行われていた」
そこに、科学者夫妻と心理霊媒師、前回の探索で一人だけ生き残った
物理霊媒師を加えたグループが入り込み、異常現象の調査をする。
まずこの設定が、その後の家ものホラーに大きな影響を与えています。

これはC級なのでお薦めしません
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内容は、派手に血しぶきが飛び散るようなスプラッターではありません。
また、悪魔ものとも言いにくい。異常現象を起こしているのは、
ネタバレになりますが、かつての館の主ベラスコ個人の残留思念です。
それが鉛で囲まれた隠し部屋に渦巻いている。

心霊を科学で解明しようとするストーリーも、当時としては
新しかったですし、その館で死ぬ人物は必ず足に傷を
負うのはなぜか、という謎解きの要素もありました。この
『ヘルハウス』影響を受けて、たくさんの家ものホラー映画が
つくられました。実話をもとにしたとされる『悪魔の棲む家』。

心霊でなくても、ここまで怖くできる
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スティーブン・キングの原作は超能力ものですが、かなり違った
ストーリーになっていた『シャイニング』。シャーリー・ジャクスンの
小説『山荘奇譚』を原作とした『たたり』。新しいところでは
『パラノーマル・アクティビティ』のシリーズなど、
枚挙にいとまがありません。

小説のほうでも、ホラー作家であれば一度は家ものホラーに挑戦して
みたくなるようで、日本の小池真理子氏の『墓地を見おろす家』。
加門七海氏の『美しい家』。心霊要素はありませんが、貴志祐介氏の
『黒い家』。映画で大ヒットした『呪怨』など、数多くの作品群があります。

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ここで、お前はどうなんだ、と言われそうですが、自分は本格的な
家ものと言える話は書いていません。理由はおわかりだと思います。
家ものホラーはどうしても長くなるので、短い怪談では
処理しきれないんです。じゃあ、なんで家ものは長くなるのか。

家は部屋数が多いからでしょうか。まあ、そういう要素もなくはない
ですが、それよりも、登場人物が多くなるのが問題です。
特にアメリカ映画は「家族」というのが一つの大きな共通テーマと
なっていて、家ものホラーも例外ではなく、
「家長を中心とした家族 対 家」という構図になることが多いんですね。

欧米ではルームシェアものも多いですが、日本では一般的ではありません
geggt (5)

ご主人、奥さん、子どもたち一人ひとりのエピソードを描いてれば、    
それは当然長くなってしまいます。では、短い怪談の場合どうするか
というと、家ものがスケールダウンした「部屋もの」になります。
これだと、多くの場合、登場するのはその部屋に住むことになった
人物一人だけですよね。話を短く収められる。

自分も部屋ものはたくさん書いています。では、部屋もののパターン
にはどういったものがあるか。よくあるのは、前の住人が殺されたり、
自殺や孤独死をしていて、その霊が出てくる。ただ・・・
これだと、話としてはストレートすぎて、たくさん怪談を読まれた
ツワモノの方には物足りなく感じられるんじゃないでしょうか。

実話をもとにしたというフレコミです
geggt (8)

もう一ひねりも二ひねりもほしい。それで自分は、何らかの意図で呪いが
込められた部屋というパターンで書くことが多いんです。不動産屋や
他の部屋の住人がグルになってる場合もあります。「剥製の家」
というのを書いてますが、これは家と言っても、一部屋しかない離れです。
そこは、かつて剥製師をしていた大家の一人息子の仕事場を改造したもの。

その押入の奥に隠しスペースがあり、息子の剥製が他の動物たちと
ともに収められていました。大家の老夫婦は、わざと未婚の
美術学生を選んでその部屋を貸し、息子の冥婚の相手に
しようとします。たんに死者の無念だけではなく、
生きた人間の悪意も合わせて書きたいと考えたわけです。

この場合はホテルの一室です
geggt (6)

ただ、たった一部屋にキッチン・バス・トイレだけですから、
怪異がひそむ場所は限られています。天井裏、床下、押入、
バスルーム、これくらいしか考えつかないですよね。自分も、
天井裏も床下も使っていますが、もう少し新味を出したい。
そこで知恵をしぼったのが、「夜が来る話」という話です。

ふだん何気なく見過ごしてしまっているガス検知器、この中に
なぜか「夜スイッチ」が入っていて、そのスイッチが下りると
停電になり、さらに死者がよみ返るという、かなり非現実的な
内容になっています。これ、賛否あるでしょうが、
自分では気に入っている話なんです。

アパート全体が水に関連した呪いを受けている
geggt (3)

さてさて、ということで、家もの、部屋ものホラーの話をしてみました。
みなさんが、自分も怪談を書いてみようと考えた場合、
これが一番とっつきやすいんじゃないかと思います。
あるアパートの一室があり、そこにどんな住人を入れて、
どんな怪異を起こそうか・・・何か、わくわくしてきませんか。

怪談を書くのは、ある意味、模型を組み立てたり、手芸の人形を
作ったりするのと似ていると、自分は思っています。
パーツをいろいろ用意して、どこにどういうふうに組み込めば
より怖くなるか、考えながら作っていくのが楽しいんですね。
では、今回はこのへんで。

『エクソシスト』も部屋ものと言えます すべての怪異はリーガンの子ども部屋で起き、
登場人物も、実質的にリーガン(悪魔)とカラス神父だけ







「沢野忠庵」って誰?

2020.01.15 (Wed)
アーカイブ207



今回はこういうお題でいきます。この名前、ご存知の方はよほどの
日本史通かなと思います。はっきりしませんが、これは江戸幕府によって
つけられた名前のようで、「忠」の字が入っているところが残酷です。
もとは、クリストヴァン・フェレイラと言いました。
こっちはおそらく、知っている人が多いでしょう。

遠藤周作氏の小説『沈黙』に登場しますが、実在の人物です。
ポルトガル出身のカトリック宣教師でイエズス会士。1609年来日。
1633年、53歳のときに長崎において捕縛され、そこで拷問を受けて
棄教します。その後は、転びバテレン、背教者などとも呼ばれました。

余談ですが、「転びキリシタン」という言葉がどこからきたかというと、
キリシタンに対する拷問に「俵責め」というのがあり、
米俵の中に体を入れ首だけを出させた上で、棒で叩いたり、
何人もを積み重ねたりして苦しめるものです。

ただ、米俵ですから、苦しければ自分の意志で出ることができます。
この拷問の最中、まわりの役人は「転べ!転べ!」と言ってはやし立て、
苦痛のあまり転げ出たものは棄教をしたとみなされました。
一般的に、日本のキリシタンに対する拷問は、自ら棄教を認めれば
中断される形になっている場合が多かったんですね。

さて、ここでいったん話を変えて、「天正遣欧少年使節」について。
1582年(天正10年)、九州のキリシタン大名らが、
その名代として少年たちをローマに派遣した使節団のことです。
伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン、原マルティノの4名。

「天正遣欧少年使節」


彼らはポルトガル、スペインを経由してローマにたどり着き、
教皇グレゴリウス13世に謁見。ローマ市民権を与えられています。
彼らは1590年、長崎に帰国しましたが、そのときに,
グーテンベルク発明の活版印刷機を持ち帰ったことは有名です。

彼らの年齢は、はっきりしませんが、13~14歳で、
中浦ジュリアンが最年長だったと言われます。この後、
千々石ミゲルは棄教、伊東マンショは長崎で布教中に死去、
原マルティノは日本を追放されてマカオで死去、
中浦ジュリアンは正式な司祭となり、1633年、長崎で殉教しています。

中浦ジュリアン像


さて、この中浦ジュリアンですが、フェレイラと同じときに捕縛され、
穴吊りという拷問を受けています。これは、足を縛った逆さ吊りで
体を穴の中に入れるという過酷なもので、
全身の血が頭に溜まって苦しむものの、すぐには死なないよう、
両耳の後ろに穴を空けて血が流れ出るようにしていました。

「穴吊り」


このとき吊るされたのは、ジュリアンと3名の外国人宣教師。
フェレイラは吊るされて5時間後に棄教を表明。中浦ジュリアンは
4日間耐えて死亡しましたが、最期のときに、「私はこの目で
ローマを見た中浦ジュリアン神父である」と言い放ったと伝えられています。

2007年、ローマ教皇ベネディクト16世は、
中浦ジュリアンを福者に列することを発表し、翌年、列福式が行われました。
福者というのは、神に祝福された人という意味で、カトリックでは
聖者(聖人)につぐ序列にあたり、今後、聖人に昇格する可能性もあります。

さて、棄教した転びバテレンがどうなるかというと、まず絵踏みをさせられ、
誓詞に血判を押させられます。この誓詞には、
「デウスやマリアに誓って確かに棄教しました」こう、英文で奇妙な文言が
書かれていたようです。そして、その身柄は幕府に厳しく管理されます。
フェレイラも、70歳で亡くなるまでずっと幕府の監視下にありました。

「踏絵」


フェレイラは同時期に処刑された中国人の妻と同居するように幕府に
命じられ、通訳などを務めていましたが、キリスト教弾圧にも協力し、
キリシタンの墓の破壊を提案したり、反キリスト教文書である『顕疑録』
を著したとされています。フェレイラの棄教とその後の行動は、
イエズス会とヨーロッパのカトリック界に大きな衝撃を与えました。

さてさて、中浦ジュリアンと、沢野忠庵ことクリストヴァン・フェレイラ。
対照的な晩節になってしまったわけですが、ほとんど無宗教の
自分としては、ここでその是非を問うつもりはありません。
まとめとして、遠藤周作氏の『沈黙』から言葉を借りましょう。

「この国は沼地だ。やがてお前にもわかるだろうな。この国は
考えていたより、もっと怖ろしい沼地だった。どんな苗もその沼地に
植えられれば、根が腐りはじめる。葉が黄ばみ枯れていく。
我々はこの沼地にキリスト教という苗を植えてしまった。」

これは「キリスト教」のところを他の言葉に変えても通用しそうです。
日本は歴史的に、大陸からさまざまな文化を受容してきましたが、
けっして中国的な思考には染まっていません。
海外から取り入れられたものは、だんだんに、
あまりにも日本的な内容へと変質させられていくんですね。

現在、日本のキリスト教徒は1万人もいないと言われますが、
変質を許さない原理的なものは、なかなか日本では広まりません。
グローバリゼーションには、元来 不向きな国なんだと思います。
では、今回はこのへんで。






壺のオカルト

2020.01.14 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。前に「箱のオカルト」という
記事を書いていて、なんか似た内容になりそうな気がしますが、
なるべくかぶらないようにしたいと思います。さて、壺などの
容器がオカルトである点は3つくらいあるでしょうか。

一つは、長い年月を経てたくさんの人の手を渡っていること。
その間に呪いなどがかかってしまっているかもしれません。
もう一つは、中に何が入っているかわからないことです。
西洋では、「壺の中の悪魔」というモチーフがあります。

悪魔あるいは魔神が壺の中に閉じ込められていて、
壺の所有者になった人物に「出してくれたら願いを聞いてやる」
みたいにもちかける話ですね。童話にもなっていますが、
この起原はかなり古く、ギリシア神話のパンドラの箱や、

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『千夜一夜物語』のアラジンの魔法のランプなどがもとに
なっていると思われます。ちなみに、アラジンのランプの中に
いるのは、童話ではランプの精となっていますが、原典では、
ジンという魔神です。ジンは中東で広く信じられており、
イスラム教の聖典もこの存在を否定していません。

で、この壺の中の悪魔と知恵比べをする人物には、歴史上の
有名人があてられたりします。一つだけご紹介すると、
誰がいいですかね。中世のスイス生まれの医師、パラケルススは
ご存知でしょう。前に当ブログでも取り上げていますし、
人工生命ホムンクルスを造ったと言われていますね。

ホムンクルスを育てるパラケルスス
cc (4)

このパラケルススは、閉じ込められていた悪魔を助けると言って
だまし、自分の持っている剣に封じ直したという話が残っています。
パラケルススの剣は「アゾットの剣」と呼ばれ、
何かことがあれば、悪魔を呼び出して使役したとされます。

さて、3つめは、壺は箱と違って口が開いていますね。
ですから、中に何かを入れるのが、多くの場合箱よりも容易です。
何が言いたいかというと、中国の『西遊記』に出てくる
金角・銀角の魔王兄弟が持っていた、名前を呼びかけた相手が
返事をすると中に吸い込まれてしまうひょうたんのことです。

金角・銀角と魔法のひょうたん
cc (7)

ひょうたんは壺じゃないと思われるかもしれませんが、
世界各地で、乾かしてから中に液体などを入れて携帯するという
壺と同じような使われ方をしていました。金角兄弟が
持っていたのは、「紫金紅葫蘆 しきんこうころ」という名前で、
時間が立つと、中の相手を消化液で溶かしてしまいます。

もしかしたら、食虫植物のウツボカズラなどがヒントになって
いるのかもしれません。このような、仙人や妖怪が持っている
不思議な力を持った宝器を、中国では「宝貝パオペエ」と
言います。『西遊記』には、他にも風を起こして火山の炎を
消すことができる芭蕉扇などが登場していました。

哪吒太子 8本の腕に8つの宝貝を持ち、さらに宝貝の円盤に乗って戦う
cc (5)

ここで少しパオペエの話をしましょうか。『封神演義』によれば
仙人はふだん、清らかで欲のない生活をしていますが、
1500年に一度、どうしても人を殺したい気持ちががまん
できなくなる「殺劫」があると説明されます。
ただし、一般人を殺してもしょうがないので、

相手も強力な仙人であると予想され、そのため、数百年から
千年以上をかけて、殺劫を破るときのための武器をつくって
るんですね。それで、宝貝には鞭や槍なんかが多いんです。
ちなみに、孫悟空が持つ如意棒も宝貝ですが、あれはもともと
武器ではなく、海底の深さを測る測量用具だったみたいです。

如意棒を持つ孫悟空
cc (8)

おっと、壺の話からそれてしまいましたね。少しオカルトから
離れて、壺というのは、日本では土器と考えてもいいと思います。
土器の用途は大きく2つ。一つは物を貯蔵するためのもので、
もう一つは中に食材を入れて煮炊きすることです。

そのため、火にかけても割れたりしない強度が必要ですし、
土器の肉厚が薄いほど、火の伝わり方がよく、煮炊きに時間が
かかりません。日本の考古学には土器編年というのがあり、
作られた時代時代のわずかな形式の変化を調べて
年代別に配列したたいへん精緻なものです。

縄文土器
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他の国の考古学には、こういうのはあまりないんですよね。
年代を調べるには炭素年代が使われる場合がほとんどです。
縄文土器は、表面に縄を押しつけた模様がつけられていることから
名づけられましたが、では、弥生土器にはどういういわれが
あるかご存知でしょうか。

これはじつは、初めて発見された場所の地名がとられてるんですね。
1884年、東京府本郷区向ヶ岡「弥生町」の貝塚から、
丸みを帯びた土器が見つかったのが最初です。一般的な縄文土器と
弥生土器を比較すると、ずいぶん肉が薄くなっていることが
わかります。また火にかける方法も異なっています。

弥生土器
cc (3)

さてさて、ということで、壺のオカルトを見てきましたが、まだ
書きたりないですね。小説や映画の話題にもふれたかったんですが、
そこまでいきませんでした。また、続きを書く機会があるかも
しれません。では、今回はこのへんで。

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中国神話と陰陽五行説

2020.01.13 (Mon)
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三皇五帝

今回はこういうお題になります。うーん、古代史研究においては
大切な話なんですが、かなり地味な内容になると思われるので、
特に興味のない方はスルーされたほうがいいかもしれません。
さて、中国4000年とも5000年の歴史とも言われますよね。
その頃の日本は縄文時代です。

縄文時代の始まりは、今から約1万6000年前とみられますが、
日本の歴史が古いとはあまり言われません。
これはどうしてかというと、一番大きな理由は、日本の縄文時代は
小集団がバラバラに生活していて、大きなまとまりがなかった
ためだと考えられます。あと、文化の程度ということもあるでしょう。

中国では、周王朝が紀元前1000年、商(殷)王朝が紀元前
1600年、夏王朝が紀元前2000年頃に成立したと
言われています。ただし、夏については詳しくはわかっていません。
また、これらの王朝は、後代とは異なり、中国の広い地域を
支配していたわけでもありません。

女媧と伏犠
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では、夏王朝以前には何があったかというと、三皇五帝が支配していた
とされます。もちろん、三皇五帝が歴史的に実在していたという
根拠はなく、現代の中国でも、この部分は神話であると考えられて
います。では、三皇五帝とは誰のことを指してるんでしょうか。

これ、いろんな説があってはっきりしないんですよね。いちおう
『史記』の説をとれば、三皇は、「 伏犠、女媧、神農 」。
五帝は、「 黄帝、顓頊(せんぎょく)、嚳(こく)、堯、舜 」
です。ただし、実際に司馬遷が書いたのは五帝の部分だけで、
しかも、存在は疑わしいという注釈までつけています。

最初の神 盤古
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それより古い三皇については、唐の時代に『史記』を補筆した
司馬貞という人物がつけ加えた新しい内容です。
おそらく、司馬遷の時代には、まだ女媧や神農のエピソードが
広まっていなかったと考えられます。

みなさんは、「加上説」という言葉をご存知でしょうか。
神話研究などに使われる用語ですが、簡単に言うと、
古い時代の神話ほど新しい時代に成立し、神話が複雑さを
増していくといった内容で、よく引き合いに出されるのが、
この中国の例なんです。

中国神話では、盤古(ばんこ)が最も古い神ですが、中国人の
研究者によれば、周代に最古の人とみなされていたのは禹であり、
春秋時代に堯と舜、戦国時代に黄帝と神農、秦代に三皇、
漢代以降に盤古が加えられたと論じられています。
これ、自分はおおむね正しいと思っています。

陰陽を表す太極図
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加上説は世界の他の地域の多くの神話にもあてはまり、
日本神話も例外ではありません。なかなか話が前に進みませんね。
さて、中国には「陰陽五行説」があり、大きな影響力を
持っていました。中国にはさまざまな宗教がありますが、
インドから伝来した仏教をのぞいて、

儒教でも道教でも、陰陽五行説は当然の真理として取り入れられて
います。中国のあらゆる思想を横断する概念なわけです。
陰陽五行説が成立したのは、中国の春秋戦国時代頃と考えられ、
陰陽説と五行説はそれぞれ別個に発生し、後代になって
一つに結びついたものであることがわかっています。

封禅の儀
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で、この陰陽五行説が、中国神話の成立にも大きな影響を与えて
いるんですね。中国の最初の神、盤古は体の大きな巨人で、
生まれたとき、天と地とは接していて区別がありませんでした。ところが
盤古が日に日に成長していくと、軽いものが上に押し上げられて
天になり、重いものが下に沈んで地になって陰陽が分かれた。

まあ、世界は最初混沌であったとする神話は各地にありますが、
中国神話の場合は、陰陽という概念から、かなり後代になって
盤古の存在が考え出されたんです。古い書物で、盤古の名前が
出てくるものはないんですね。ちなみに、陰と陽はどちらがより
重要ということはなく、互いに補完しあう関係です。

また、五帝の最初である黄帝も、五行説から生まれたもので
あるという説があります。下の図を見ていただければ
わかりますが、五行は「土、火、金、水、木」で、それぞれ季節や
方角が対応しています。また、色は、土ー黄、火ー赤、金ー白、
水ー黒、木ー青(緑)です。

五行図
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つまり、黄帝が五行説の中央に位置する神なんです。一説によれば、
黄帝は他の4人の帝、炎帝、蚩尤(しゆう)たちを戦いで倒し、
中国で最初の皇帝の座についたとされます。「黄帝」と「皇帝」は
中国でも日本でも、発音がまったく同じなんですね。

帝位についた黄帝は、中国東方の泰山に登り、封禅の儀を行って
帝位についたことを天に報告します。この儀式は、後に中国を統一した
秦の始皇帝も行っていますが、そのときには誰も儀式のやり方を
知らなかったという逸話が残っています。封禅の儀という言葉だけが
つくられて、実体はなかたっということでしょう。

最初の帝 黄帝
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さてさて、ということで、退屈な話にここまでつき合っていただいて
ありがとうざいます。結論として、中国の古い神々は新しい時代に
つくられたもので、その成立は陰陽五行説の影響を強く受けている
ということなんです。自分はこれ、日本の天照大神、神武天皇などにも
あてはまると考えています。では、今回はこのへんで。

htgn (6)






老人アパートの話

2020.01.12 (Sun)
南といいます。この2ヶ月の間に俺の身に起きたことを話そうと思って
ここに来ました。複雑なことはしゃべれないんで、実際にあったことだけ、
時間を追って話していきます。2ヶ月前にね、長期間やってたバイトを
辞めたんです。本筋には関係ないけど、中古家電屋の店員だったんです。
4年以上やってて、正社員になるって話も出てたんだけど、
ちょっと事情があって。それからは、なかなかいいバイトがなくて、
短期のやつをぼちぼち入れてました。そしたら、生活が苦しくなってきて。
貯金なんてほとんどなかったですから。それで、支出を切りつめようと
思いました。といっても、食費はもとからそんなにかかってないし、
光熱費たってたかがしてれてます。一番大きいのがアパートの家賃なんで、
これが何とか出来ないかと思ってね。ひと間なんだけど、分不相応に、

俺にしてはちょっと高いとこに住んでたんです。手近な不動産屋を
何件か回って、格安物件を探したんです。そんときはまあ、
部屋は寝れればいいやと思ってました。仕事が安定すればまた移れる
わけだしね。で、3件目に行った不動産屋で、バス・トイレ・キッチン
つき6畳で、家賃が2万5千円という破格のとこを見つけたんです。
こう言うと、みなさん、今にもつぶれそうなボロアパートって
思うかもしれないけど、見せられた物件の画像は、
部屋の中だけだったけど、すげえ新しかったんです。不動産屋の
話だと、築7年ってことでした。でもね、そうするとますます怪しい。
そのあたりの相場だと、どう考えても4万は下るはずがないんです。
そう思って、単刀直入に聞いたんです。

「ここ、訳あり物件ってやつですか?」って。ほら、よくホラーマンガ
とかに、前の住人が自殺したり、孤独死で長い間発見されなかったりって
事情があって、異様に安くなってるところ。そのかわり、
もれなく幽霊がついてくるってやつ。いや・・・あのね、俺自身、
幽霊なんてまったく信じてなかったんです。だから、そういう話だったら、
めっけ物だって思ったくらいで。ところが不動産屋は、にこにこ顔で、
「ああ、やっぱりそう思われますよねえ。けど、われわれにも
 告知義務というのがありまして、そういう情報をお伝えせず、
 お客様とトラブルが起きると、裁判で負けてしまうんです。
 はっきり言いまして、あの部屋で亡くなった方はいません。
 その点は心配する必要はないです。住人の方はひんぱんに替わられては

 いますが、これは学生さんが多かったからでしょう」
こう言ったんです。俺がけげんそうな顔をしてたからでしょうか、
続けて「ただね、特殊な事情がないわけではありません。
 アパートは2階建てで、部屋は12ありますが、住人の方の
 ほとんどは高齢者なんです。あ、でも、みな身元のしっかりした方で、
 生活保護なんかではありません。今は、そういう人たちがまとまって
 住んでるとこもありますが、それとは違いますから」って説明をしたんです。
それ聞いて、高齢者かあって、ちょっと考えました。だってね、そういう人たち
って世話好きというか、いろいろ干渉してくるかもしれないじゃないですか。
そしたら不動産屋は、こっちの気持ちを見透かしたかのように、
「その方々、昼は全員がある施設に行ってて夜にならないと戻って

 こないみたいですよ。それに全員が健康そのもので、その点でも
 お客様がご心配するようなことはないかと」まあ、ここまで言われたんで
契約することにして、さっそく前のとこをから移りました。
引っ越ししたのは午後ですが、他の住人の姿は見なかったです。
ふつうほら、引っ越しだとわかれば窓からのぞいたり、出てきてあいさつしたり
するもんじゃないでか。ところが、そういったことは一切なし。しんと静まり
返ってて、誰もいないみたいなんです。部屋はね、不動産屋の画像のとおり、
新しくてきれいで快適でした。しかも2階の角部屋で日当たりもいい。
あと、最初から大型のエアコンがついてました。聞いたことのない
メーカー名だったけど、かなり強力そうな。で、こうして俺の新しい生活が
始まったんですが・・・ あ、一つだけ、このときに気づいたのが、

押入を開けたときに妙な臭いがしたことです。いや、嫌な臭いってことじゃなく、
それまで嗅いだことのない、異国的っていうのか、そういう臭いで、
何かのお香のように思いました。でもね、そんときは気にしなかったです。
押入だから、虫除けとかの臭いだと思って。その夜ですね、
アパートの前が少し騒がしかったんです。うるさいってほどじゃないけど、
ドアを開けて廊下に出てみると、前の道路にマイクロバスが停まってて、
老人たちがぞろぞろ降りてくるとこでした。全員が男で、80歳前後に
見えましたね。それで、ちょっと驚いたのが、みな夜会服って言うんですか、
高そうな黒い服、それを着てたんですよ。ここで、住人は日中、
どっかの施設に行ってるって不動産屋の話を思い出して、その帰りだと
思いました。ジロジロ見てるのは失礼と思ったんで、

引っ込もうとしたら、バスから降りた道路の老人たちは、横一列に
並ぶようにして、全員が一斉に顔を上げて俺に深くおじぎしたんですよ。
あっけにとられたんですが、とにかくおじぎを返しました。
それから、老人たちはそれぞれ各部屋に入っていったんです。でね、俺、
いちおう隣にはあいさつしなきゃと思って、安いタオルを買ってたんです
角部屋だったので、着替えた頃を見計らって隣のドアをノックすると、
ガウンに着替えたおじいさんが出てきて、「それはわざわざ申しわけない。
 少し上がっていきませんか」みたいな話になって、普通はね、
玄関先ですませるんですが、さっきのバスのことが気にかかってたんで、
ちょっとだけ上がらせてもらいました。中は俺のとことつくりが同じ
6畳。キッチンからはみ出すようにして大型冷蔵庫があったんです。

それとね、驚いたのが、その冷蔵庫の上に、金色の大きな大黒様の
像がのってたことです。人間の3歳児くらいはありました。
俺がびっくりした顔をしてると、おじいさんは・・・村田って名前でしたが、
「ああ、あれね、驚いたでしょうけど縁起物なんです。私たちの会で
 信心してる。このアパートのどこの部屋にもありますよ」って。
これ聞いて、少し警戒しました。もしかして新興宗教かなにかで、
俺もそのうちさそわれるんじゃないかって。村田さんはその考えを
察したようで、「いやあ、これね、ほら、ピンピンコロリって言うじゃ
 ないですか。できるだけ元気でいて、苦しまず、家族の迷惑にならない
 ようコロッと亡くなるっていう信心。まあ、そういうことを願う
 会なんです。だからメンバーも後期高齢者ばかりで」

そう聞いて少し安心しました。俺はまだ30歳過ぎたばかりですからね。
誘われることはないだろうって。その後、村田さんは高級ブランデーを
出してきて、一杯だけごちそうになりました。その夜です。
12時過ぎに寝たのかな。夢を見ました。俺が寝ている布団の上に、
何か大きなものがいる。でもね、胸とかにのっかられてるわけじゃないから
苦しくはない。そのものはだんだんに明るくなってきて、金ピカに
輝き始めた。あの大黒様だと思いました。ただ、顔が村田さんによく似た
年寄りで、しわだらけ。起きようとしても体が動かない。大黒様は体が
金属でできてるロボットのような動きで、背中の袋を前に持ってくると
俺の顔にかぶせたんです。真っ暗になって、ふっと気が遠くなりました。
目が覚めるともう朝になってて、あと、ここが重要なんですけど、

寝る前に止めてたエアコンがついてたんです。たしかに消したのが、
除湿モードになってました。でね、体調が最悪になってたんです。
頭が重い、体がだるい・・・痛いとこがあるわけじゃないんですけど、
倦怠感っていうんですか、とにかくだるくて動けない。
その日はバイトの面接があったんですが、行けないで午前中ずっと
布団に横になってました。でも、このときは夢と関連があるとは
思わなかったんです。夢に出てきた大黒様は、村田さんの部屋で
見たものが頭に残ってたんだろうって。けど、この夢、それから1週間に
1度ずつ見たんです。まったく同じなんだけど、ただ大黒様の顔だけが、
みな別の老人になってて。いや、これもね、アパートの他の住人たちだとは
考えませんでした。村田さん以外の人とはほとんど会わなかったですから。

で、その夢を見た翌日は体調が最悪で。俺ね、健康だけは自信あったのに。
あと、夢を見た翌朝、何故かエアコンがついてるのも同んなじでした。
バイトもなかなか決まらず、どんどん貯金が減ってって。
そうしてるうち、夢を見ない日も具合が悪くなってきたんです。
何もやる気が起きない。動きたくない。で、無理に動くと体がよろよろで、
俺が老人になったみたいでした。病院にも行きました。検査では、
貧血の数値がやや悪いが、その他は問題ないってことで、
鉄分不足と言われたんです。ほうれん草をとりなさいとか。
まあね、食事はカップ麺やコンビニ弁当でしたから、そう言われると
思いあたる節はある。そうして2ヶ月たつと、とうとう起きれなく
なりました。で、その晩も夢を見たんです。金色の大黒様が出てきて、

俺の顔に袋をかぶぜる・・・このままじゃマズい、って思ったんです。
思い切って上半身をひねり、すると体が動いたんで袋を跳ね上げました。
そしたら、大黒様の体をした老人が、口をすぼめて俺のほうに向け、
チュウチュウ吸うような仕草をしてたんで、「やめろ!!」と
大声が出たんです。老人は驚いた表情になり、一瞬で小さく縮んで、
ひゅ~っとエアコンのほうへ飛び、吸い込まれて消えた・・・
エアコンはそのときもついてて、カタカタ異音を立ててました。
頭にきてイスに乗り、表のカバーを引きはがしたんです。何があったと
思いますか。大黒様ですよ。15cmくらいの金色の大黒様。村田さんの
部屋で見たもののミニチュアが中央にはさまってて、口をすぼめ、
穴が空いてて、そっから空気を吸い込んでるように思ったんです。

「何だこれは!?」わけがわかりませんでしたが、急に怒りがわいてきて、
大黒様をつかんで機械から外し、居間に投げました。すごい重さで、
床にあたってゴッツンという音を立てたので、もしかしたら本物の
金製だったのかもしれません。そのときにはもうわかってました。
俺の体調が悪いのはこいつのせいなんだって。何と言えばいいですかね、
俺の生気? それを、夢を見るたびにこいつが吸いとってた。
だから翌日はものすごく体調が悪い。もうここにはいられない、
そう思って、財布とスマホだけ持って外に出ました。階段を降りて
アパートを見上げると、各部屋の玄関の窓に次々明かりがついたんです。
ほぼ同時に老人たちが出てきました。廊下に立ち、そして俺のほうを見て、
にこにこと笑いながら、深々とおじぎをしたんですよ。






3人の鞍馬天狗

2020.01.11 (Sat)
regte (6)

今回はこういうお題でいきます。この話のカテゴリは難しいですね。
妖怪談義と怖い日本史が混ざったような感じですが、
いちおう妖怪のほうに入れておきます。みなさんは鞍馬山に
行かれたことがあるでしょうか。自分はついこの間、仕事で
訪問しましたが、お土産として天狗の面が売られてるんですよね。

鞍馬山の名前は、馬の鞍に似た形だからということだと思いますが、
夜に真っ暗になるところから「暗部山 くらぶやま」と呼ばれ、
それが「くらま」に転じたという説があります。鞍馬山には
鞍馬寺があって、あそこは、魔王が本尊になっている
日本のお寺の中でもたいへんめずらしいところです。

金星人サナート・クマラはニュー・エイジ思想でも有名


「くらま」という名前の由来として、もう一つ、太古の昔に
サナート・クマラと呼ばれる大魔王が天空から降り立ったため、
「クマラ」が「くらま」になったとする説もあるんです。
サナート・クマラは、サンスクリット語で「永遠の若者」。

ヒンドゥー教の神の一人で、1850年前に金星から飛来した
などとも言われます。このサナート・クマラが永遠の命を持って
今でも生きており、鞍馬山に伝わる伝説の天狗、鞍馬山僧正坊と
同一視されています。で、これについて、ロマンあふれる
話があるんですね。自分のような妖怪研究者にとっては、

鞍馬寺にある金星からの隕石とされる石


「天狗=隕石」というのは基本知識の一つです。現在考えられている
天狗の姿は、山伏の格好をした鼻の長い大男ですが、もともと
天狗という言葉は中国から来たもので、文字どおり
「天を走る狗(いぬ)」なんです。中国の古書『山海経』には、
犬とも猫ともつかない動物が天狗として出てきます。

大気圏に落ちてきた隕石は、空気との摩擦を起こして燃え、
ときには爆発を起こします。中国では、この現象を天を走る狗に
見立てたわけですが、日本に入ってきてかなり違うものに
なってしまいました。これにはいろいろな理由がありますが、
今回はくわしくふれません。

『山海経』に出てくる「天狗」 日本のものとはまったく違います
regte (4)

鞍馬寺の本殿正面には石が祀られていて、これは金星から落ちてきた
隕石だと説明されています。本当かどうかはわかりませんが、
古代に鞍馬山に隕石が落ち、それがもとになってサナート・クマラの
伝承につながったのだとしたら、ロマンのある話ですね。
このサナート・クマラが、まず一人目の天狗。

次に鞍馬山の天狗が歴史上に現れるのは、みなさんご存知だと
思いますが、源義経、幼名 牛若丸との関連です。
義経は、源義朝の九男として生まれますが、父が平治の乱で
敗死したことにより鞍馬寺に預けられます。後に兄の
頼朝と合流して、平家を滅ぼす立役者となります。

日本での一般的な天狗のイメージ
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この義経が、鞍馬山時代、鞍馬山僧正坊とその眷属である
烏天狗から剣術や兵法を習ったという伝承が残っています。
山を降りた義経が、京の五条橋の上で悪僧弁慶と戦ったという
話もあるものの、武蔵坊弁慶は存在そのものが怪しい人物です。

そのときの様子が「京の五条の橋の上、 大の男の弁慶は
長い薙刀ふりあげて、 牛若めがけて斬りかかる」という有名な
童謡になっていますが、今の子どもはこの歌を知らないんですよね。
義経に剣術を教えたのは、天狗 鞍馬山僧正坊ですが、

源義経
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実際は天狗ではなく、鬼一法眼(きいちほうげん)という
京都の民間陰陽師という説もあります。ただし、弁慶同様、
鬼一法眼が実在した証拠はほとんどありません。
鬼一法眼があみ出した剣術は、京八流の祖となったと言われ、

後に戦国時代になって、大野将監という人物が集大成して
鞍馬流剣術をうち立てます。鞍馬流は明治になって、一部が
警視庁に採用されますが、太平洋戦争時に鞍馬流の秘伝書、
古文書などは焼失してしまったようです。

天狗に剣術を習う義経(牛若丸)
regte (2)

さて、3人目はもうおわかりだと思います。幕末の世に忽然と
現れた剣士で、桂小五郎ら勤王の志士を助け、新撰組などの
佐幕勢力と戦います。ただし、実在の人物ではなく、小説家
大佛次郎がつくり出した架空のヒーローです。

自ら倉田典膳と名のりますが、どうも本名ではないようです。
その正体は不明で、水戸天狗党の生き残りとも、京都の貴族に
仕える公家侍であるとも言われます。映画ではつねに覆面を
していますが、原作小説にはそういう描写はありません。
戦前から昭和30年ころまで、鞍馬天狗を主人公にする映画が

天狗のような姿で描かれる鬼一法眼
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たくさん作られたんですが、今はまったく流行らなくなってしまい
ました。これは何でなんでしょうね。鞍馬天狗を演じた俳優、
嵐寛寿郎のイメージが強すぎるのか、それとも幕末の知識が
広まって、架空の人物はもうお役御免なのか。もしかしたら
新撰組の人気が出て、悪役として描きにくいのかもしれません。

さてさて、ということで、今回は鞍馬山の天狗のお話でした。
自分は現在大阪に住んでいて、京都には仕事でもプライベートでも
ちょくちょく行きますが、平安京の昔から幕末まで、いろんな
歴史が詰まっていて、興味がつきません。では、このへんで。

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古神道は復元できる?

2020.01.10 (Fri)
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今回はこういうお題でいきます。オカルト論になります。
さて、まず「古神道」とは何か? ウエブ辞書などの一般的な
定義では「日本において外来宗教の影響を受ける以前に
存在していたとされる宗教」と出てきます。別の言い方として、
原始神道、神祇信仰などがあります。

また、後述しますが、「復古神道」とは異なる概念です。
自分が書いた怖い話の中には、古い神道の神が登場するものが
あります。では、古い時代の神道って復元できるもの
なんでしょうか。これ、結論から述べると、自分はかなり
難しいんじゃないかと考えてるんです。

屈葬が行われた理由は、はっきりとはわかっていません


まず、古神道が行われていたのは「いつ」の時代か。古いほうは
縄文時代、それ以前にさかのぼることができるでしょうが、
新しいほうはいつまでか。歴史の教科書では、仏教の公伝が
6世紀の半ばとされます。では、それ以前の日本の宗教が
古神道なのかというと、なかなか難しい。

中国にあっては、仏教は比較的新しい宗教で(もちろんインド
では古い)それ以前から、神仙思想、神仙思想が教団化した
道教、儒教、陰陽五行説などがありました。研究者の中には、
日本は弥生時代から、何らかの中国渡来の宗教の影響を
受けていたのではないかと見る人もいます。

三角縁神獣鏡レプリカ クリックで拡大できます
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例えば、邪馬台国の女王 卑弥呼は、『三国志』によれば
「鬼道につかえ、よく衆を惑わす」と書かれていますが、
この鬼道を、初期の教団道教、五斗米道などではなかったか
とする意見もあるんです。畿内を中心に、三角縁神獣鏡
という鏡が古墳の副葬品として出土しますが、

この図柄は、西王母、東王父、神獣が浮き彫りにされた、
きわめて神仙思想的なものです。では、弥生時代以前の
縄文なら、他の宗教の影響はほとんどなかったのではないか。
まあそうだと思います。しかし、縄文時代だとすると、
今度は「どこで」が問題になってくるんですね。

男性器をかたどった石棒 縄文晩期 古代の儀式は性的な要素が
大きいと考えられ、その面からも再現は難しい

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ご存知のように、縄文時代は狩猟採集が中心の生活で、数家族の
小集団、あるいは青森の三内丸山遺跡に見られるような
部族単位の集団で生活していたと考えられます。もちろん
他の集団との交流はありましたが、限定的で、日本全体をまとめる
ような共通した宗教などは考えられません。

まあそれでも、磐座(いわくら)や土偶、縄文土器を飾る火焔型など
ある程度共通した部分も見られるので、それらをして古神道と
言えばいいのか。ですが、考古学で発掘された遺物や墓などから、
その時代の精神性を推測するのは至難です。実際、
縄文人の霊魂観などもよくはわかっていません。

古代ツチノコ説のある釣手土器 この中で火を焚いた
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さて、では、現在残っている神道的な儀式から、古代の神道の
様子を復元することができるのか。これもかなり厳しいんです。
例えば、神社といえば鳥居を思い浮かべる方が多いと思いますが、
鳥居が現在見られるような形になったのは、
そう古い話ではありません。

また、現代で神道的な行事とみられているものの多くも、
他の宗教由来のものなんです。例えば「どんど焼き」というのが
ありますよね。正月15日に書き初めを燃やしたりしますが、
これはもともと、平安時代に陰陽五行説にもとづいて、宮中で
陰陽師が行っていたもので、節分の豆撒きなんかもそうです。

節分は本来、神道の行事ではありません


神職が現在着ている装束も、中国から伝わったものですよね。
そう考えると、現在の神道は他のいろいろな宗教の影響を受け、
古神道からはかなり変質してしまっているんです。
上記したように6世紀に仏教が伝来してから、神道は苦難の
連続でした。それまでバラバラだった形を、

他の宗教にのみ込まれないよう、必死になって整えてきたと
言ってもいいと思います。ですが、奈良時代から神仏習合が進み、
やがて本地垂迹説が鎌倉時代に登場します。これは、仏教の仏が
日本に教えを広めるため、神道の神の姿に化身して現れたとする
もので、天照大神は大日如来の化身といった具合です。

大日如来の垂迹(化身)が天照大神とされた


もともと、神道は創始者もいない、聖書のような経典もない
宗教です。そのため、他宗教におされて消滅してしまうのを
まぬがれるため、さまざまに他の宗教の要素を取り入れながら
形をつくってきたのが、現在の神道と言っていいと思います。
ですから、それから古代の形を再現するのは難しい。

さて、最後に復古神道について。江戸後期、国学の隆盛とともに、
異国のものである仏教を排し、日本古来の神道を復活させよう
という流れが生まれます。ただ、復古神道で参考にされた
日本神話が書かれている『古事記』は、8世紀に成立した書物です。

秋田県大湯の環状列石
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必ずしも正しく古代の姿が伝えられているとは言いにくい。例えば、
イザナギ、イザナミの国産みで、初めに女性神のほうから声を
かけたため不具の神が生まれたというのは、中国由来の男尊女卑的な
考えが入っているのではないか、などの議論があるんですね。

そして明治維新が起き、日本は国として仏教を保護しないことに
決めます。廃仏毀釈は地域によって程度の差があったようですが、
この時期に、爆発的に「神道的な」新興宗教が誕生しました。
そして、日本は天皇を現人神とする国家神道を精神の中枢にすえ、
近代国家をめざして邁進していくことになります。

復古神道を唱えた平田篤胤
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さてさて、そうは言っても、古神道に自然崇拝、祖霊崇拝が
あったのは間違いないところだと思います。ただし、
穢れと清め、ハレとケなどを古神道とできるかはわかりません。
このあたりのことは、いつか太陽暦と太陰太陽暦の違いからも
論じてみたいと考えています。では、今回はこのへんで。

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地下街の通路の話

2020.01.09 (Thu)
あ、どうも、俺、佐藤って言います。仕事は警備員なんですけど、
もちろん時給の非正規です。でも、かれこれもう7年くらい
続いて、班長にもなってます。いやあ、優秀ってことじゃなく、
独身なんで、夜間業務に使いやすいってことだと思います。
俺のほうもね、手当がつくんで夜間のほうがありがたいですよ。
いえ、泥棒と遭遇したなんてことはありません。
そういうケースはまずないと考えてもいいです。警備員ってのは
番犬と同じで、あそこは毎晩人がいるってわかってりゃ、
泥棒のほうから近寄ってきません。だから、抑止力ってことなんすね。
気味の悪い体験ってのもないです。そりゃ、この仕事始めた
最初の頃は、深夜の学校とか見回るのは嫌でしたけど、

一人で回るわけじゃないし、何事も起きてません。で、これから
話すのは俺の体験じゃないんです。つい一昨日、安田さんっていう
同僚の警備員から聞いた内容。安田さんは50代で、元警察官です。
事情があって警察を退職したってことでした。すごい真面目な人で、
冗談を言うようなタイプじゃないんです。でね、一昨日の夜、
その安田さんと組んで、ちょっとした工事現場の交通誘導をやったんです。
そしたら、夜中の2時過ぎかな。ジイさんが一人でそこ通りかかって。
車はともかく、歩行者なんて昼でも少ないとこなんですよ。
それとジイさんの服装が、真冬なのにジャージの上下だけで、
ガタガタ震えててね。こりゃおかしいってピンとくるでしょ。
止まってもらって名前とか聞いたんです。そしたら案の定、

受け答えが変だったので、警察に連絡しました。それでジャンバー着せて、
工事の人から熱いお茶もらって飲ませたりしたんです。
そのうちに警察が来て、やっぱ捜索願いが出てる徘徊老人ってことでした。
で、昨日ね、そのジイさんの家族が本社に来て、お礼言って帰ってった
そうです。こっからは俺と安田さんの会話です。
「昨晩、ジイさんを保護した件、警察から感謝状とかもらえますかね」
「いや、たしかに警備員は感謝状をもらいやすいが、この程度では
 無理だな」 「あのジイさんの家族も、本社に菓子折り持ってきただけで、
 俺らには何もいいことなかったすね」 「まあそう言うな。
 人助けに値段はつけられんよ」 「ああいう、認知症で徘徊してる
 高齢者って多いみたいですね」 「ああ、1年間の高齢者の

 行方不明が1万5千件だよ」 「え、そんなに」 「まあ、これは
 警察に捜索願いが出た件数で、大半は見つかってる。自宅の敷地内って
 ことも多い」 「それもヒドい話ですね。その程度で警察を呼ぶなって」
「まあな。今はほら、一人暮らしの老人が多いだろ。そこへたまに子どもが
 尋ねてきたら家の中に誰もいない。こりゃ大変だって通報したら、
 そのお年寄りは庭の植え込みの陰で草むしりしてたとか、
 そういうのも件数には入ってるから」 「うーん、でも徘徊中に亡くなる
 お年寄りも多いんでしょ」 「そうだな、全国で年に500人くらいか」
「それは川とかに落ちたりしてるんですか」 「ないわけじゃないが、
 ほとんどが行き倒れて、どっかの病院に収容されてる。そこで亡くなるんだが、
 財布も持ってないから身元がわからない。徘徊老人の行動範囲はけっこう

 広くて、他市町村にまで行ってたりするから」 「迷惑な話ですね。まったく
 行方知れずってこともあるんですか」 「少ないけどある。ほとんどは
 身元不明の遺体になる。専門用語で行旅死亡人って言うんだ。
 住所氏名が判明しないケースな。ただな、それ以外にも、完全にこの世から
 消えてしまう場合がある」 「どういうことです?」 「あれは4年前だな。
 地下街の警備をしてたんだ」 「はい」 「けっこう広い地下街だったんだよ。
 地下鉄の駅2つとつながってたし。そこを1日3交代、6人で警備する」
「で」 「そんとき俺は夜間でな。相棒と交代で2時間おきに見回ってた。
 けど、何かが起きるってことはない。地下街の店は、商店は9時頃、
 飲食店も11時にはシャッターを閉める。あと地下鉄の終電が0時半くらいで、
 その後は出入口が自動で朝の始発前まで閉鎖される」 「ああ」
 
「だから夜中に人がいるはずはない。でな、2時に一人で回ってたんだよ。
 そしたら、十字になった通路でふっと人の影が見えた。あれ、
 関係者かな、もし閉じ込められた人なら大事だと思って小走りに
 交差点まで行った。向かって左側の通路にジイさんが一人歩いてたんだ」
「徘徊老人すか?」 「そう思った。トイレとかは全部見たんで、
 おそらくどっかの隅に隠れてたんだと考えた。ジイさんは後ろ姿だったが、
 かなりの高齢に見えたし、そんときは11月だったが、着てるのはシャツと
 ステテコだけ。暖房は止まってるから危険だと思った。
 もしもし、と声をかけたがふり返らない。あとな、ジイさんの姿が
 ちょっと変だった。両腕を肩の高さにぴんと横に伸ばして、そうだな、
 まるで綱渡りでバランスとるみたいに」 「どうしたんです?」

「走り寄って、ちょっといいですかと肩に手をかけたんだよ。
 そんときはもう徘徊老人に間違いないと思ってたからな。そしたら、
 どうなったと思う」 「わかりません」 「そのジイさんはまったく
 後ろを見ずに体をひと揺すりした。宙を飛んだよ」 「ジイさんがですか」
「いや、俺がだ。数m吹っ飛んで通路のコンクリ壁に激突し、さらに頭から
 下に落ちた。ありえない話だよ。そのジイさんは痩せ枯れてて、
 体重は50キロないくらい。こっちは当時80キロ超えてたし、
 こう見えても柔道四段、警察の大会で優勝もしてるんだ」
「達人とかなんですか」 「・・・でな、その衝撃で半分気を失った状態で、
 ジイさんは手を広げたままどんどん向こうに歩いていく」
「で?」 「ジイさんとの間が50mくらい離れたあたりで何とか

 立ち上がって追いかけた。ジイさんはT字になった突き当りの
 前で立ち止まってたから、そこにいてください!と大声を出した。
 すると、ジイさんの目の前の壁に穴が空いたんだよ」 「え?」
「丸い穴、洞窟みたいな穴だ。ジイさんはその穴に平然と入っててな。
 ありえないことだが走ってそこまで行った。穴はずっと奥まで
 下りになって続いてた。照明はなかったが、先のほうで赤い火が燃えてると
 思った。俺が穴の縁まで行ったとき、その穴が一瞬で消えたんだよ」
「どういうことです?」 「わからない。そのときあったことだけ話してる。
 でな、穴がなくなるとき、強い温泉の臭いがしたんだ」 「温泉」
「硫黄の臭いってことだ」 「ああ、で、その後どうしたんです」
「まず警備会社の本部に連絡し、応援を出してもらった。

 それから警察にも。で、応援が来るまで、休憩してた相棒と地下街を
 隅々まで探したんだが、ジイさんなんてどこにもいない。そのうちに
 仲間と警察が着いたんで事情を話したが、信じてる様子がなかった。
 まあ無理もない。俺がジイさんが消えた穴ができたと言った場所には、
 広告のパネルがあったし。俺が寝ぼけるかなんかして、幻覚を見た。
 そう思われてもしかたがないよな。立場が逆なら俺だってそう考える。
 それで、これは処分されるかもしれないって思ったんだが・・・」
「だが?」 「ほら、地下街にはところどころに監視カメラがあるだろ。
 念のために警察がそれを再生したんだ。そしたら、俺がジイさんを見たと
 言ってた時刻に、その姿が録画されてたのがあったんだよ」 「で?」
「ジイさんはやはり両手を広げて人気のない通路を歩いてたんだが、

 両手の先に何かゼリーのような塊が見える」 「・・・」 「やや緑がかった
 透明で、後ろが透けて見えるんだが、人の形にも見えた。ジイさんが両手を
 伸ばしてたのは、そのゼリーに腕をとられてたから。そのビデオで、
 俺が嘘を言ってるわけでもないってわかって、もう一度朝までジイさんを探した。
 けど、やはり姿はなかった」「どういうことなんです?」 「その後、2日して
 俺と上司が警察に呼ばれた。警察が監視カメラ映像を解析したのを見せられた
 んだ。ゼリーがかなり鮮明になってて、やっぱ人に見える。どっちもかなり
 体が大きい、皮膚がどろどろに溶けた人。結局、何もわからずじまい。近辺からは
 老人の捜索願いも出てなかったし、事件はそれで終わりで、俺に処分もなかった。
 ・・・あれな、ものの本に出てくるのとはちょっと違うが、鬼なんじゃないかな。
 あのジイさんが何したのかわからないが、硫黄の臭いのする場所へと連れていく」
 
 

 


お知らせ

2020.01.09 (Thu)
今回はお知らせです。怖い話ではありません。
昨年末から、ライブドアブログさんに「怖い話します(別館)」
今年に入って、Amebaブログさんに「怖い話します(選集)」というブログを
新しく立ち上げました。ただし、そちらの内容は当ブログの過去記事のうち、
怖い話だけを載せるもので、新しい記事を書く予定は今のところありません。

なぜこんなことをしたかというと、そちらから当ブログへの読者の流入を
ねらったわけではありません。当ブログを立ち上げたのはもう7年も前ですが、
当時は、パソコンから見ていただくことを想定していました。
ところが、始めるとすぐに「見にくい」 「読みにくい」という苦情が
殺到しまして、これらはモバイル端末からご覧になってる方なんだと思いました。

たしかに、当ブログは画面の地がダークグレーで、フォントが白のため、
自分で確認しても見にくいとは思ったんですが、まあいいかとずっと
放置してたんです。ただ、明らかに見えづらい黄色の文字などは
やめてました。で、ようやっと、スマホで もう少し見やすくしなきゃと
考えまして、白地に黒フォントのブログをつくったわけです。
今はもう、パソコンから見ておられる方はほんとに少数なんですよね。

内容はただ当ブログの過去記事を転載するだけなので、時間はあまり
かかりません。で、FC2さん以外のブログサービスを利用してみると、
あたり前ですが、かなり特徴が違うんですね。

ライブドアさんの場合は、いっさい広告が入らないので、
たいへんすっきりしたブログになります。
また、HTML編集もやりやすいですね。
ビジネスユースや自分のお店の宣伝などにいいかもしれません。

Amebaさんのほうは、どうしてもgoogleの大きな広告が
入ってしまうようですが、これはしかたありません。
また、ブログのカスタマイズもしづらい気がします。
ただし、Amebaブログどうしのコミュニケーションが取りやすい形に
なっていて、ブログを通じていろんな人と交流したいといった
場合には便利な機能がたくさんあるようです。

コメント等は、当ブログにいただいたものは必ずお返事していますが、
姉妹ブログのほうは時間的に厳しく、やらないつもりですので、
その点をご了承していただきたいと思います。
ということで、姉妹ブログともどもよろしくお願いします。

リンク
『怖い話します(選集)』
『怖い話します(別館)』







「獅子王」伝説

2020.01.08 (Wed)
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「獅子王」東京国立博物館 蔵

今回はこういうお題でいきます。自分は刀剣を鑑賞する趣味が
ありまして、当ブログでも「刀剣シリーズ」というのを書いて
るんですが、これはどちらかというと地味な話なので、
興味のない方はスルーされてください。

さて、みなさんは「獅子王」という刀について聞かれたことが
あるでしょうか。例えば、源頼光が酒吞童子を斬ったとされる
「童子切安綱」などは有名ですけど、これはあんまり知られて
ないんじゃないかと思います。この刀の伝説には、二人の武人、
1匹の妖怪、そして一人の女妖が登場します。

どっから話していきましょうか。まず「獅子王」そのものについて。
これは現存する刀で、国の重要文化財です。平安時代末期の
大和の国の刀工作と見られており、刃長二尺五寸五分(約77cm)
やや小ぶりな刀ですが、元は長かったのが、研ぎ削られて
短くなったという説もあります。作者は不詳。

坂上田村麻呂
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次に、坂上田村麻呂の話をしていきたいと思います。
この人物はご存知でしょう。平安時代の武官で、桓武天皇の時代に
征夷大将軍を2度務め、蝦夷征伐をしたことで有名ですね。
田村麻呂については、「田村語り」と呼ばれる説話伝承が
各地に残ってるんですが、これがじつに混乱をきわめていまして。

できた場所や、伝わった時代によって内容がバラバラなんです。
ですから、ここから書く話には異説があります。そのことは
ご承知おきください。さて、次に出てくるのが女妖、鈴鹿御前
(すずかごぜん)です。伊勢国と近江国の境にある鈴鹿山に
住んでいたとされる伝説上の女性で、2つの顔を持っています。

田村麻呂の佩刀として有名な「ソハヤノツルギ」
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一つは、天より使わされた女神としての顔。もう一つは、
別名、立烏帽子(たてえぼし)という名の悪鬼、女盗賊としての
ものです。第六天魔王の娘とも言われます。正と邪の2面性が
あるんですね。で、前述のように、ここから話がごちゃごちゃに
なるんですが、大きく3つに分けられるかなと思います。

① 鈴鹿御前こと盗賊立烏帽子は田村麻呂によって討伐された。
② 鈴鹿御前と立烏帽子は別人で、田村麻呂は鈴鹿御前と協力して
  女盗賊立鳥帽子を倒した。③ 鈴鹿御前は立鳥帽子なのだが、
  本当の悪人は立烏帽子の夫で、田村麻呂は立烏帽子と
  ねんごろになり、その夫の大嶽丸を倒した。

ね、わけわかんないですよね。鈴鹿御前の伝説は、平安時代末頃には
できていたと考えられますが、残っている文献ごとに内容が
違うんです。ですから、鈴鹿御前が現代の作品やゲームに登場
する場合でも、そのキャラクターはバラバラになっています。

鈴鹿山の悪鬼、鈴鹿御前、田村麻呂 これは③の説
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長い話なので先を急ぎましょう。ともかく、田村麻呂は鈴鹿御前から
3本の宝刀を授けられ、それをもとにして大和の国の鍛冶に
作らせたのが、獅子王です。田村麻呂の佩刀としては「ソハヤノツルギ」
が有名で、この獅子王は朝廷に献上されました。

さて、時代は下って源平争乱の少し前、近衛天皇の御世。天皇は
体が弱く病気がちでしたが、その頃、毎夜黒雲が御殿をおおい、
その中で不気味な鳴き声をあげるものがいる。そこで退治を命じ
られたのが、源氏の長者、源頼政です。頼政が先祖、源頼光から
伝わる名弓「雷上動」で雲の中心を射ると、大きなものが落ちてきた。

妖怪 鵺(ぬえ) 実際は鵺という名前ではないと思われる
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これが、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇の妖怪、
鵺(ぬえ)です。ただし、『平家物語』によれば、この怪物の
名前は不明で、鳴き声が鵺(トラツグミと考えられる)に似ていた
と出てくるだけなんですが、後世に鵺という妖怪になってしまいました。

頼政の家来、井早太がとどめをさし、怪物は死んで、帝の病気も
すっかり癒えます。近衛帝はこの褒美として、頼政に太刀、
獅子王を与えるんですね。この後、頼政は平氏全盛の世にあって
源氏最高の従三位の位にまで昇ります。

平安時代に鵺と呼ばれていたトラツグミ
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ですが、76歳で以仁王の令旨を受け、平氏追討に立ち上がるものの、
宇治平等院前の宇治橋で平知盛・重衡らと戦って戦死します。
このあたりのことはご存知と思います。で、獅子王は、頼政の
子孫である但馬国竹田城城主、赤松広秀へと受け継がれましたが、

赤松が関ヶ原の戦いにおいて、鳥取城下を焼き払ったのを徳川家康に
とがめられ切腹を命じられた際、家康に没収されます。
家康はこの刀の由来を知っていたので、自分のものにはせず、
頼政の別系の子孫、土岐頼次へと下賜されることになります。

従三位 源頼政
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土岐家に代々伝えられた獅子王は、明治維新後に皇室に献上され、
現在は東京国立博物館に所蔵されています。やっと最後まで
説明することができました。長い話でしたね。
ただ、現存する刀は、頼政に与えられた獅子王ではないという
説を唱える研究者もいます。

さてさて、ということで、獅子王伝説を見てきましたが、
どこまでが史実で、どこまでが伝説や脚色なのか、まったく判別
できません。歴史ってこういう例が多いんです。ただ、平安末期の
特徴を備えたこの名刀が存在していることだけは
間違いのない事実です。では、今回はこのへんで。

頼政が戦死した宇治橋合戦
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地震予知の周辺事情

2020.01.07 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。地震はほんと怖いですよね。
自分が大阪に転居したのは、茨城の実家にいたときに
東日本大震災に遭遇したためです。ただ、放射能が怖いから
ということではありません。あのときの恐怖から少しでも
離れるためでした。

あと、自分は実家で海水魚をサンゴ中心に飼育してたんですが、
地震の後の停電で、魚はなんとか救えたものの、
サンゴは全滅しました。大阪に移ってから飼育は再開しましたが、
サンゴはやめて魚だけです。あの地震のさ中では、水槽はもう
どうでもよく、自分と家族の命を守るだけで精一杯でしたね。

さて、「地震予知」という言葉にはいろいろ誤解があります。
オカルト的には、予知能力を使って地震を知るというのも
地震予知と言いますが、今回はその話ではありません。
日本地震学会では、警報につながるような直近の地震の
事前情報を地震予知と言い、それ以外の、例えば、

egethte (6)

「〇〇地方でマグニチュード◯以上の地震が起きる確率は、
30年間で◯%」といった長期的なものは「地震予測」とする
新しい定義を2012年秋に発表し推奨しています。これは
「緊急地震速報」ともまた違います。地震速報はすでに地震が
発生していて、まだ揺れが伝わってない場合のものですね。

さて、では、直近の地震予知は、科学的にできるものなんで
しょうか。まず地震予知の定義について。一般的には、
「いつ、どこで、どのくらいの規模の地震が起きるか」
というのが必須条件と考えられます。具体的には、
「◯月◯日、〇〇地方で、マグニチュード◯規模」となるでしょう。

egethte (4)

で、日本地震学会をはじめ、気象庁その他、ほとんどの学術
団体、個人の科学者からも、現在の科学力で、そのレベルの
地震予知は不可能と考えられています。どうしてできないのか。
これは、地震予知が数学が通用しにくい性質を持っている
ためと考えられます。

同じ自然科学の分野で、数学が通用し、数式が立てられるものは
急速に発展します。1900年、マックス・プランクが
プランクの法則を提案して量子力学が始まりました。
また、1905年のアインシュタインの特殊相対性理論、
その後の宇宙膨張の観測により、現代宇宙論は急速に進展しました。

わずか100年で目をみはる成果です。量子力学では、
シュレディンガーの波動方程式、ハイゼンベルグの不確定性原理の
不等式。宇宙論では、アインシュタインの宇宙方程式。これらの解に
あてはまる現象が次々に発見され、先日、ブラックホール撮影の
話題が世界を駆け巡ったのは記憶に新しいところです。

egethte (1)

量子力学もそうですね。アメリカで白黒テレビ放送が始まったのは
1941年ですが、その後の量子力学の急速な進展で半導体などが
開発され、現在みなさんが使っているスマホ等へとつながります。
ところが地震予知では基本となる数式の立てようがありません。

この理由はおわかりだと思います。あまりに諸要素、諸条件が
複雑だからです。うーん、何か例え話で説明したいですね。
あ、そうだ。薄い板に五寸釘を20本打ちつけます。すると釘の
ほとんどが外に出ますよね。その一本一本に同じメモ用紙を
刺します。で、これを風のある日に公園に持っていく。

egethte (7)

で、どのメモ用紙が最初に飛ばされるか・・・無理ですよね。
いくら、その公園の風速、風向、気流の状態、釘の摩擦、
メモ用紙の刺さり方などを研究したとしても、
どれが最初に飛んでいくかを予知するのは不可能です。
地震予知もほぼそれと同じなんですね。

あと、観測の問題もあります。宇宙論であれば、地球や衛星の
望遠鏡から宇宙を見て、見える範囲について少しずつわかっていく。
ですが、地震の場合、海底のすべてのプレートの状態をカメラや
ソナーで監視することはできませんし、また、直下型や火山による
地震などもあります。まずデータがそろわない。

海溝のプレートの裂目
egethte (5)

前にも書きましたが、数学が通用しない、地震予知、気象予報、
医学・生理学などは、一つずつわかったことを積み上げていくしかなく、
その歩みは遅々としているんです。まあそれでも、気象予報は
関係者の努力で、かなり当たるようになりました。

さて、オカルト的には、地震予知は超能力の一種としてとられられ、
(あるいは高次の霊が教えてくれる、などと言う人もいます。)
5ちゃんねるのオカルト板にも、予言・予知スレが立てられましたが、
誰も当たらないんですね、かすりもしない。あまりに当たらないので、
みな飽きてしまって、今はそのスレも荒れ放題です。

気象予報は当たるようになりました 衛星の力も大きい
egethte (1)

まあね、現状では、未来から情報を得ることは不可能とみられて
います。また、もし未来から情報が伝われば、未来が変わってしまう
可能性もあります。例えば競馬で、ある人が今日のレースの勝ち馬情報を
どうやってか手に入れ、馬券を大量買いした。するとオッズが変わって
しまいますよね。多くの人が情報を得れば元金返しになるかもしれません。

さてさて、ということで、地震予知の話でしたが、地震予知ができたとして、
そこにはメリットとデメリットがあります。例えば、2日以内に80%の
確率で地震が起きる・・・これなら発表して避難する意義はあるでしょう。
じゃあ、1週間以内に5%だったら? ただ混乱をまねくだけに
なってしまうかもしれません。では、今回はこのへんで。

egethte (3)