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お知らせ

2021.02.18 (Thu)
諸事情により、しばらくブログをお休みします。
転載、転用、改作等はお断りします。


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賢治と狐と密造酒

2021.02.17 (Wed)


今回はこういうお題でいきます。何のジャンルに入るのか
難しいですが、いちおう「怖い日本史」にしておきます。さて、
みなさんはお気づきになられたと思いますが、狐と密造酒、
どちらも宮沢賢治の作品に出てきます。『雪渡り』は大正10年に
発表された童話で、生涯に賢治が唯一の原稿料を手にした作品。

狐の幻燈会に招待された子どもたちと子狐たちの交流を
描いた内容です。雪渡りは、積もった雪が低温で固くなり、
どこまでも歩いて渡れる状態のこと。雪の降り積もった日、
四郎とかん子の兄妹が野原に遊びにいき、森で狐をからかう
歌を歌っていると、ほんとうに狐がやってくる。



狐の紺三郎が二人に黍団子をすすめるが、かん子がつい、
狐の団子は兎のくそと失言する。それを聞いた紺三郎は
気を悪くし、嘘つきは人間の大人のほうであると主張して、
それを説明するための幻燈会に二人を招待する。
幻燈会はスライドを使った今の映画会のようなもので、

学校の行事としてあったようです。スクリーンに
「お酒のむべからず」と字が映し出され、村人2人が酔って
野原で変な物を食べている2枚の証拠写真が映し出される。
それから幻燈会が中休みになり、かわいい狐の女の子が
黍団子を二人の前に持ってくる。



2人は団子を食べるのをためらい、また気まずい雰囲気となるが、
四郎は紺三郎がだますはずがないと結論し、2人は団子を
平らげる。団子はおいしく、狐たちは信用してもらえた事に
感激し、狐の生徒はどんなときでも嘘はつかず、盗まないという
歌を歌って聞かせてくれる・・・こんなお話でした。

いっぽう、『税務署長の冒険』は宮沢賢治の作品の中では異色で、
中編に近い長さがあり、内容も童話とは言いにくいものです。
賢治が大正12年頃に書いたものとみられており、
サスペンスタッチが取り入れられていて、



村ぐるみで酒の密造を行う村人たちと、それを摘発しようとする
税務署長の攻防が描かれます。長くなるので筋は書きませんが、
賢治の作品は著作権が切れており、ネットの青空文庫などで
ほとんど読めるので、興味を持たれた方は探してみてください。

で、この作品、最初は完全なフィクションとみられていたんですが、
研究家により、1923年(大正12年)に、岩手県湯田村
(現 西和賀町)で濁密の取り締まりにあたっていた花巻税務署の
税務属が、住民に半殺しに会う事件が起きていたことがわかります。
賢治の作品は、この事件をタイムリーに反映したものだったんです。

摘発された密造酒
キャプチャddd

当時の密造酒は、どぶろくを自家用につくるくらいは見逃されて
いましたが、さすがに村ぐるみで清酒の製造まで行っては
摘発の対象になります。1875年(明治8年)に日本初の
近代的な酒税法が策定された後、酒税法の整備にともなって、
自家製像酒に対する制限が強化されるようになっていきます。

ただ、密造酒摘発は警察ではなく税務署の仕事とされ、日本各地で
農民の抵抗は大きく、あちこちで税務署員が殉職・遭難するなどの
トラブルが起きています。賢治が書いた花巻の事件も、
そんな中の一つだったわけですね。

現在は制限がゆるくなったドブロク
キャプチャsd

さて、狐や狸が人を化かすという話がありますね。奈良時代ころから
文献に出てきますので、古くからそう信じられていたのは確かですが、
明治になって「村人は狐や狸によく化かされるのに、政府のお雇いで
来た外国人は化かされることがなかった」と言われました。

これ、どういうことなんでしょうか。自分は、上記した密造酒と
関係があるものと見ています。明治時代に日本に来た外国人は
クラーク博士のような指導的な立場の人で、一定の知識技術と
教養を持っていました。まして発展途上中の異国の地で、
酒を勧められても、泥酔するようなことはなかったでしょう。



これに対し、村人が密造酒を飲んで酔っ払う、それでふらふらと
村内をさまよって肥溜に落ちたり、山中に迷い込んでいったりする。
また、団子と思って馬糞を食べてしまう。しかし、密造酒で酔った
とは言えず、狐や狸に化かされたとする。

それで八方が丸く収まるわけです。自分の考えでは、酒類の製造が
自由だった明治以前はともかく、酒税法公布以降は、
酒を飲んでの失態が、狐や狸のせいにされたという側面が大きかった。
賢治も、もちろんそのことは知っていたわけです。

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ですから、『雪渡り』と『税務署長の冒険』にはつながりがあります。
『雪渡り』の中で、狐の幻燈会で「お酒のむべからず」が
映されるのは、おそらく賢治の皮肉なんでしょう。その後、密造酒の
実際の事件が起き、それをテーマに『税務署長の冒険』が書かれた。

さてさて、ということで、昔から化かすという言い伝えがあった
狐と狸が、村人が泥酔して起こす珍事件の隠れ蓑にされていたと
考えることができそうですよね。賢治は、密造酒にというより、
狐のせいにされているのが不満だったんでしょう。
では、今回はこのへんで。




従軍する狸と狐

2021.02.17 (Wed)
ここ

変な題名ですが、今回はこういうお話をしていきます。
カテゴリは妖怪談義に入るでしょうか。さて、1994年の
スタジオジブリ映画に『平成狸合戦ぽんぽこ』というのが
ありました。昭和40年代、多くの狸たちが平和に
暮らしていた多摩丘陵に、多摩ニュータウン開発計画による

山や森の破壊が迫っていた。ある日、多摩の狸たちは
結集し、総会を開いて開発阻止を決議する・・・
だいたいこんな内容でしたね。なかなか面白かったと思います。
人間が社会生活を営んでいるのと同様、

金長狸の像


狸や狐にはそれぞれの社会があり、その一部は人間の領域と
重なっている。「阿波狸合戦」という話があります。
これは江戸時代末期、阿波国(後の徳島県)で起きたという
タヌキたちの大戦争の伝説です。金長狸と六衛門狸を
それぞれの長として争いになった。

この場合、狸たち同士での戦いだったわけですが、人間が
起こした戦争に狸や狐が加わることもあったようです。
どっちの話からいきましょうか。まず狐のほうからにしましょうか。
幕末のことです。1853年、アメリカ、ペリー提督が
率いる艦隊、俗に言う黒船が日本に来航しました。



その後、日本は西洋列強国と次々に条約を結ばせられることに
なりますが、この時期、コレラが大流行します。安政五カ国条約が
結ばれた1858年から3年にわたって全国に蔓延し、
「安政コレラ」と呼ばれました。

江戸だけで10万人が死亡したとされます。この流行は長崎から
始まったので、明らかに外国船が持ち込んだものです。
で、このとき、江戸市中には奇妙な噂が流れたんですね。
どういうものかというと、「千年もぐら」という妖怪が
外国からやってきて、コレラをまき散らしている。

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千年もぐらは、アメリカ狐とも呼ばれました。アメリカ国が
日本を征服する加勢として、アメリカの狐千匹が日本に
やってきたというわけです。で、日本の狐たちが一致団結して
アメリカ狐を追い払おうとします。こんな話が残ってます。

浅草に、木綿屋で下働きをしているフユという女性がいた。
このフユが、木綿屋に仕事に出てまもなく、急に背中や脇腹が
痛みだし家に戻ります。夫の音次郎は知らせを聞いて
すぐ医者を呼び、医者は薬を飲ませようとしますが、フユは
飲もうとせず、かわりに何か食べさせてくれと言う。

黒船
キャプaaasd

変に思った医者がわけを聞くと、ふだんのフユとはまったく
別人のような調子で「自分は薩摩からやってきた狐である。
アメリカに加勢してアメリカ狐がやってくるという話を
聞いたので偵察しに来たのだが、遠路旅してきたので
腹が減って動けなくなり、しかたなくこの女にとり憑いたのだ」

さすがに信じられない内容でしたが、飯を与えるとぺろりと
平らげ、その後、深い眠りに落ちてしまった。目が覚めたときには
もとに戻っていた・・・だいたいこんなお話です。興味深い
ですよね。日本の狐とアメリカ狐の戦争、最終的に
どっちが勝ったんでしょうか。

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次は狸の話です。日露戦争は11904年(明治37年)から
翌年にかけて行われました。この戦争には、日本の狸が
自主的に参加していたんです。香川県高松市の「浄願寺の禿狸」や
愛媛県今治市にいた「梅の木狸」などが一族を率いて
ロシアにまで出征していた。

これも奇妙な話です。狸の戦い方はその化ける能力を活用する
もので、たくさんの狸がいっせいに並んで山を作る。で、
そこにロシア兵の隊が登ってくると一気に山をひっくり返す。
また、狸の軍隊は日本兵とは違う軍服を着ていて、

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それは赤で、胸に「○に喜の字」の紋章がついていた。
この兵隊は弾があたってもまったく平気でどんどん前進してくる。
さらにこの兵隊を狙撃しようとすると目がくらむ。どうにも
戦いようがない、とロシア将兵の手記に出てくるんだそうです。
なかなか面白いですね。

日露戦争は、ロシア革命もあり、多大な犠牲を出して日本が
なんとか勝ちましたが、十分な賠償がとれなかったこともあり、
国内の不満も高まりました。このとき、従軍していた狸たちも
日本に凱旋し、提灯行列をしたという話も残っています。

日露戦争
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ただ、これらの狸や狐は、その40年後の太平洋戦争には
参加しなかったようです。そういう記録は残っていません。
ただし、日本が敗戦し、進駐軍が占領しにくると、
アメリカ兵が夜の街で狐に化かされたといった話はありますね。

さてさて、ということで、狸や狐は、たんに人を化かして
面白がっているだけでなく、国の存亡の危機のときには
立ち上がって戦いに出たわけです。ただまあ、人間への協力
だったのかはわかりません。では、今回はこのへんで。




アーカイブ 封の話

2021.02.17 (Wed)
大学生です。・・・俺のアパートに転がり込んでた友人が急死して、
俺に嫌疑がかかって、ごたごたが続いてたんですよ。それがなんとか片づいて・・・
疑いが晴れたっていうか、もともとあいつを殺す動機なんてないしね。
いい迷惑でしたよ。だから話は俺自身じゃなく、そいつから聞いた
ことなんです。いいですか。名前は仮に山野ってことにしときます。
東北出身で、山スキーが趣味なんです。ほら、かかとの上がる細いスキー
はいて歩くやつ。いや、俺はぜんぜんやらないです。寒いの好きじゃないから。
山野がとある湿原に単独行したのが、去年の12月ですね。
リュック背負って一人で雪の上をえんえんと歩いて、雪の上でテント張って、
何が面白いもんやら。しかも死んじまったんですからねえ。それで、
一日目の夕暮れにテントの場所を探して木のあるところへ入ったそうなんです。

大きな岩の陰に場所をとって、テントから顔だけ出して紅茶をわかしてた
んだそうです。したら、100mほど離れた雪の中を女が歩いている。
それがすごい軽装で、上半身はカーディガンだけに見えたそうです。
「地元の人なのか」と思ったそうですが、そこは集落から何kmも離れてるんです。
女が林に消えていったので、ちょっと心配になって見にいったそうです。
いや、変な下心っていうより、自殺者じゃないかと思ったんですね。
ところが、林の中は薄暗くなってて女の姿は見あたらない。
「まあ、いいか」と思って戻ろうとしたとき、
「ひゅいいいー」って音が小高くなったところから聞こえてきた。
歌ってるようにも笛のようにも聞こえる音で、何だろうと登ってみたんだ
そうです。だけど音はそれ1回きりで、周囲には足跡もない。

雪が深くてスキーでも無理っぽい感じがして戻ろうとしたとき、
斜面に、軽自動車より少し小さいくらいの奇妙な固まりを見つけました。
自然物のようにも、そうでないようにも見えた。
自然ぽいのは色で、茶色と黄色の中間くらいで青黒い斑点が入ってた。
らしくないのはその表面の質感。つるつるした陶器みたいな感じ。
近づいていってみると、あちこちポコッポコッと出っぱってた。
それが顔だったんですって。精巧に彫った人の顔が20ほども、一定の間隔を
置いて浮き出していたんだそうです。ええ、耳から前の顔だけ。顔はすべて
目を閉じていて、若い人ばっかりだと思ったそうですね。男と女は半々くらい。
それで最初、オブジェだと思ったそうです。前衛彫刻って言えばいいのかな。
雪に埋もれてるけど、下には台座があって人に見せるものなんだろうと思って。

でね、すぐ側まで来てさわってみた。したら柔らかかったんだそうです。
押した手袋の指がぐにょんと沈んだ。
あんまり空気の入ってない風船に指を突っ込んだ感じって言ってました。
それと、手のひらのほうを当ててみたら、鼓動を感じたそうです。
ドッキン、ドッキンていう心臓の音。まあしかし、そんな生物があるわけは
ないですよね。オブジェってことで自分を納得させて戻ろうとしたとき、
肩くらいの高さにあった女の顔が口を開けた。中には上下の歯も見えたそうです。
その口から「ひょいーん、ひょいいいーん」みたいな音が出てきた。
「さっき聞こえたのはこれだ」と思ったそうです。そ女の上のまぶたが
ヒクヒク動くのが見えた。「これ、目を開けようとしている」そう気づくと怖くなって、
後ろも見ずに逃げてきたって言ってました。

それ以後は特に変わったこともなく、もう一日過ごしてこっちに戻ってきたんだ
そうです。それから山野は実家に帰省して、1月半ばにアパートに帰ってきたら、
郵便受けに熨斗のついた薄っぺらい箱が入ってた。
開けてみると中はタオルで短い手紙が入ってました。
どうやら下の階に越してきた人からのあいさつの粗品のようでした。
でね、その夕方にいちおうお礼を言いに行ったんだそうです。
インターホンを押すとややあって返事があり、要件を話すと「どうぞ」って言われた。
出てきたのは山野より少し年上に見えるくらいの若い女でしたが・・・
その顔がね、あの山の中で見たおかしな造形物にあった顔。
それも最後におかしな声で鳴きだしたのとそっくりに見えたそうです。
山野のほうからお礼を言って、あたりさわりのない話を少しして帰ってきました。

その夜からだそうです。部屋でおかしなことが始まったのは。
1時過ぎに寝て、少し寝たあたりで「ひょーん、ひょいーん」という音が聞こえた。
上のほうからで、見上げると天上板に何かがあった。とび起きて電気を
つけたそうです。で、幻覚や夢なら消えるはずなのに消えなかったそうです。
天井板には板の色のまま顔が浮き出してて、それが山で見た女の顔、
引っ越してきた、その日話したばっかりの女の顔だったって言ってました。
それがぷるぷると震えながら、少しずつ少しずつ沈み込んでいって、
元の天井板に戻った。それからはね、夜になると鳴き声とともに女の顔が出てくる。
うん、顔だけ。それも耳から前のほうの。出てくるのは天上とは限らず、
柱とか、流し台の下とか、要するに木材部分ってことです。
ね、本当だとしたら気味が悪いでしょう。

それで、顔は何をするというわけじゃなく、ただ「ひょーん」と鳴くだけ。
山野が気がついて近づくと消えていく。どうしたらいいのか
困ったそうです。誰かに相談しても、ありえないって言われるだろうし、
俺を部屋に泊まらせて、出てきたのを見せようかと考えていたそうです。
始まって4日目の夜中ですね。それがまた出たときには、完全に頭にきて、
走って部屋を飛び出し、非常階段から下の女の部屋に文句を言いに
行ったそうです。したら電気がついてるのがわかった。インターホンは
返事がない。それでドアを確かめたら開いてた。開けたそうです。
さらに玄関から中仕切りになってる戸を開けたら・・・
壁際にその女がパジャマを着て立ってたんですが、頭がなかったそうです。
壁の柱にもたれるように立ってて、柱に顔がめり込んでた。

そうです。溶けたように柱と一体化して、後頭部の長い髪だけが
垂れ下がっていたそうです。山野は「うわっ」と叫んで逃げ出し、
財布と携帯だけを持って、俺のところに転がり込んできたんですよ。
でね、この話を聞かされました。いや・・・信じられませんでしたよ、当然。
だって世の中ってそうなってないじゃないですか。
とりあえず山野をなだめて落ち着かせ、
「明日になったら一緒に見にいってやる。なんならその女と話してもいい」
そう言って酒を飲ませて寝かせたんです。
このときの酒の量とかも後に警察で問題になりましたが、2人で焼酎の
ボトル半分くらいですよ。そんなベロベロになるほど飲んだなんてことはない。
俺の部屋はベッドがなくて、2人とも畳に寝ました。

寝たのは2時過ぎでしたね。冬休み中で、翌日も特に予定はなかったですから。
それで・・・寝入ったと思ったら、音が聞こえたんです。
「ひょーん、ひょいいーん」って音。でね、そのほうを見ると、山野ですよ。
やつが上を向いたまま口をひし形に開け、目をつむったまま音を出してたんです。
それ以外部屋に変わったとこはなかったと思います。
「ははあ」これやっぱ全部山野の夢なんじゃなか、と思いました。
音も自分で出してるし、女の顔うんぬんは夢で見たことなんだろうって。
起こそうとしたとき、山野が自分で起き上がったんです。
目はつむったまま「ひょー」と言って半身を起こし、這って近くの柱のほうへ・・・
でね、そのまま思いっきり顔をぶつけ・・・たら、
柱が粘土でもあるかのように顔がめり込みました。

あ然としましたが、襟首をつかまえて引っぱりました。
でも抜けなかったんです。山野の手足は痙攣し始めて、俺は足を
壁に引っかけてなんとか柱から引きはがしました。その間5分はありました。
柱のその部分は、デスマスクみたいに山野の顔型がついて、へこんでて・・・
山野は息をしてなくて、すぐ救急車を呼んだんです。助かりませんでした。
窒息死ということで病院が警察に連絡し、俺は取り調べを受けて・・・
正直にあったことを答えるしかありませんでした。
柱の跡は、夜中にははっきり跡がついてたのが、元に戻ってまして、
警察は話をほとんど信じてくれなかったです。山野のアパートのほうは、
引っ越してきたという女は、その夜のうちにいなくなってて、いまだ消息不明です。
荷物もなく、ただ・・・キッチンに奇妙なものが残されてたってことです。
サッカーボールくらいのいびつな楕円形の・・・粘菌というものだということでした。

関連記事 『妖怪談義1(封)』






アーカイブ 文字のオカルト

2021.02.16 (Tue)
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「耳なし芳一」

今回はこういうお題でいきます。洋の東西を問わず、文字が力を
持つといった話はよく耳にします。ただ、この場合、
音声と結びついていることが多いんですよね。でも、それだと
「呪文」になってしまいますので、今回は純粋に
文字(表記)だけのオカルトについて考えてみます。

西洋では、力を持つ文字としては「ルーン」が、まずあげられる
でしょうか。ファンタジー小説やゲームにもよく登場します。
これは古代のゲルマン人が用いていた文字体系で、
表音文字のうち、音素文字と呼ばれるものです。

ルーン文字 最初の1行がフサルクという音素
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「ルーン(rune)」という名称の語源としては、「秘密」を意味する
ゴート語からきていると言われますが、はっきりしません。
ルーン文字は、最初の6文字をとって「フサルク」とも呼ばれます。
実際に見てもらえればわかりますが、ひじょうに素朴な感じがします。

現在の魔術では、ルーン文字は、呪術や儀式に用いられた神秘的な文字
などと言われたりしますが、実際にはそんなことはなく、荷札や伝票など、
日常ふつうに使われていました。魔術に関係があると言われるように
なったのは、ラテン文字が広く普及してからのことです。
ルーン文字は、ラテン文字にいくつか転用されています。

さて、自分が、文字が印象に残っているホラー作品は、
1999年公開のアメリカ映画、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
ですね。黒い森の中にある存在しないはずの廃墟の壁に
手形とともに書かれていた文字です。最初、ルーン文字かと
思いましたが、よく見ると少し違います。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
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この映画は、「モキュメンタリー( 疑似ドキュメンタリー)」として
話題を集めました。評価は賛否両論がありますが、
自分は面白かったです。さまざまな伏線らしきものが提示されるものの、
最後まで観ても、謎はまったく解決しないという内容は
実話怪談に通じるものがありますね。

この映画に低評価をつけた人は、手持ちカメラのグラグラ揺れる映像で
気持ちが悪くなったせいもあるんじゃないでしょうか。
自分は、これを考えた人は頭がいいと思います。まず、超低予算
ですよね。ずっと野外撮影で、CGどころかセットすらありません。
3人だけのキャストはすべて無名の新人。

それであれだけ話題を読んで興行収入を上げたんだから、
たいしたものだと思います。あ、映画の話ではないので、
これくらいにしておきます。西洋には、「シジル魔術」というものも
ありますが、これは文字というより紋章ですね。イギリスの秘密結社、    
「黄金の夜明け団」が使用して有名になりました。

「シジル魔術」
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さて、東洋のほうはどうでしょうか。オカルト的なパワーを持った
文字としては、まず漢字があげられると思います。
自分は、これだけ複雑な構成要素を持った表意文字ができたのは、
奇跡に近いことだと考えてるんです。

漢字の起源は古く、甲骨文字がもとになってるのはご存知でしょう。
甲骨文字は主に占いに用いられ、その結果で生贄の数が
決められていたんです。商(殷)の遺跡からは、生贄になった人骨が
14000体も出土していますが、このことと漢字の発生は
深い関係があります。

甲骨文字 焼いてひびわれを観るため甲骨に記された


ですから、何気ない漢字にも恐ろしい意味を持つものがあります。
例えば、「道」という漢字は、首を手にたずさえる形から生まれ、
荒れ地にいる災いをなす鬼神を祓い清めるために、斬った人間の
首を掲げて道をつけていく様子を表す、などと言われます。

で、もともと力を持っている漢字が、さらにお経になると、
いっそうパワーを発揮します。何を言いたいかもうおわかりでしょう。
「耳なし芳一」の話ですね。平家の怨霊に目をつけられた
芳一の姿を隠すため、寺の住職は全身に般若心経を書き込みますが、
耳にだけ書き忘れてしまったために・・・

お経は、声に出して読まなくても、文字として存在するだけで
力があるとされました。これは梵語の場合も同じです。他にも、
経蔵にしまわれていた経文の文字を食べた紙魚(しみ 虫の一種)が、
不思議な力を持って怪異をなすといった話もあります。

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興味深いのは、四国の某地方に伝わる話で、そこには幼くして海に沈んだ
とされる某天皇がじつは落ちのびてきて、一行が集落の菩提寺に
泊まったときに、礼として書き溜めておいた経文を当時の住職に下した。
そのようないわれのあるものが、いまだに寺に残っていて、
経文はところどころ四角く切り取られた穴が開いている。

どういうことかというと、まともな薬も医師もなかった時代に、
病人が出た家の者が住職のところにやってくると、
うやうやしく経文から小刀で一字を切り取って与えた・・・
ありがたいお経、しかも天皇が自ら写したものだとすれば、当時の人が
飲めば病気が治ると考えても不思議はないかもしれません。

さてさて、この他、文字のオカルトには「神代文字」というのもあり、
漢字伝来以前に古代日本で使用されたと言われるんですが、
確証にとぼしいものばかりです。昔から、日本が中国由来の
漢字を使っているのが気に入らない勢力もあったんですね。
この内容もまだ書くことがありそうですが、まずはこのへんで。

神代文字の一種
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殺生戒と畜生道

2021.02.16 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。仏教の話で、オカルト論ですね。
さて、殺生戒は正式には「不殺生戒」で、字のとおり生き物を
殺してはいけないという戒律です。仏教では五戒と言って、
在家信者が守らなくてはならない重要な戒律が5つあり、
そのうちの一つです。

ここで注意しなくてはならないのは、在家信者とあることです。
僧侶は当然ですが、一般の職業についている信者が守るべき
ものなんです。ちなみに五戒の残りは、不偸盗戒、不邪婬戒、
不妄語戒、不飲酒戒です。これら一つ一つについては、
今回はふれません。

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不殺生戒は、「生き物を故意に殺してはならない」です。故意で
なければしかたのないこともありますよね。例えば道を歩いていて
小さな虫を踏み殺してしまうなど。高徳の僧侶の中には、
それも避けようと弟子に自分の通る道を掃かせたという逸話も
ありますが、弟子が踏み殺してるんじゃないでしょうか。

ただ、不殺生は難しいですよね。完全な菜食主義になってしまいます。
そこで日本では、四足の動物以外の魚や鳥は食べられていました。
肉食でしか摂れない必須アミノ酸もありますし、いたしかた
ありません。で、これが厳密に守られていたかというとそうでもなく、

畜生道
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ウサギは「匹 ひき」と数えずに「羽 わ」としますが、これは
四足の動物ではないという方便なんです。また、鹿が紅葉、
猪が牡丹などの隠語を使って、けっこう食べられていました。
これらは害獣で、田畑を荒らしますからねえ。

さて、次は畜生道の話にうつります。仏教において、衆生がその業の
結果として輪廻転生する六つの世界である六道の一つです。
その中でも特に、地獄道、餓鬼道、畜生道を三悪趣と言います。
畜生道は、親が子を食べ、兄弟同士が交合する世界とされます。
で、上記の不殺生戒は畜生道と深い関係があるんです。

寒山拾得
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『沙石集』という仏教説話集があります。鎌倉時代に、無住道暁
という僧が編纂したもので、題名は「沙から金を、石から玉を引き出す」
つまり、日常的な瑣事から仏教の教義を説くといった意味です。
たしか全部で150くらいの話があったと思います。

その中にこういうのが出てきます。中国、唐の時代の僧である寒山
(かんざん)と拾得(じっとく)が、在家の金持ち信者から接待を
受けました。ところが、人々が酒を飲み肉を食べていると
2人はしきりに笑って料理に箸をつけようとしない。
そのため、饗応した主人は気分を害してしまった。

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後日、2人が師匠に説明するには、「彼らが食べていた肉は、
畜生道に落ちた親の肉であり、私たちはそれを知らず楽しんでいる
彼らを哀れんで泣いていたのだが、彼らの目には笑っているように
見えたのだろう・・・こんな内容でした。あと、道教的な話に
変えられていますが、芥川龍之介が書いた『杜子春』では、

師の命令で言葉を発しない杜子春に怒った閻魔大王が、畜生道に
落ちた杜子春の両親を連れて来させると、彼の前で鬼たちに
めった打ちにさせ、杜子春はついに「お母さん」と言葉をもらして
しまいます。最後は師が、「あそこで言葉を出さなければ、私が
お前を殺していた」で終わります。

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また、上田秋成の『雨月物語』に、「夢応の鯉魚」という話があり、
興義という高僧がいて、鯉の絵を描くのが大変上手だった。
あるとき病気になり息絶えてしまったが、少しだけ体が温かかった。
そこで火葬せずそのままにしていると、3日たって生き返った。
そして「自分は鯉になって大きな池を自在に泳いでいたが、

漁師に釣り上げられてしまった。その漁師は檀家の平の助という
人に鯉を売り、膾に料理されてしまった。今、宴会をしてるだろうから
見てこい」と弟子に言った・・・出家した僧は本来、魚も
不殺生戒で食べることができず、精進料理が発達したわけです。
現在のお坊さんはどうでしょうか。

sss (4)

さて、最後にオカルト話を。昔の見世物に「親の因果が子に
報い・・・」という口上があり、蛇捕りをしていた男に娘が
生まれたが、体に鱗のある蛇女になったなどの話が語られます。
親が犯した殺生の罪が、子どもにまで影響を与える。

で、これ、妖怪?の「牛女」と関係があるんです。件(くだん)
という妖怪は、体が牛で顔が人間、生まれ出ると人語を話し、
近い将来に起きる凶事を予言するとされました。その逆、
体が人間で頭が牛というのが牛女なんですが、太平洋戦争末期、
兵庫県、六甲山の近くで焼け跡をあさっているのが目撃された

これは牛女ではなく件 この話は現代の神戸ビーフまでつながってます
sss (6)

という怪談があります。じつは差別に関わる内容で、あまり
取り上げにくいものなんですね。西宮にあった牛馬の屠殺業者
の家に牛頭の娘が生まれ、座敷牢に入れられていたが空襲で
逃げ出した。そういうたちの悪い噂に、件の予言の話が混ざって
できたものだろうと自分は推測しています。

さてさて、ということで、不殺生戒と畜生道の関係について
見てきました。このあたりのことは、現代の仏教僧では、
ただのお話としてしかとらえてない人が多いんですよね。
では、今回はこのへんで。





式仕舞いの話

2021.02.15 (Mon)
bigbossmanです。今回もまた、ボランテイア霊能者であるKさんと
ごいっしょさせていただいたときの話です。
ただし、ホテルのバーでの会話だけでなく、後半は実際に現地に
行っての活劇もあります。これは今から2年前くらいのころですね、
「Kさん、最近は何か霊障事件がありましたか」 「ああ、あった。
 というか現在進行形なんだが」 「聞かせてくれますよね」
「ああ、それだけじゃなく、人手が足りないんで、お前にも
 手伝ってもらうかもしれん」 「あ、それはかまいませんが、
 自分は霊感はありませんよ」 「わかってる。プロが同行して
 くれるから心配はいらん。お前はまあ、雑用係だ」
「ああ、はいはい。発端はどんなことです?」

「ある町でのことだ。最初は、風呂場の覗きだ」 「え?」
「といっても、覗かれたのはジイさんだけどな」 「どういうことです」 
「仮にAさんとしておこうか。60代後半で、再雇用で町立病院付属の
 レストランで働いてる。一軒家で一人暮らしだ」 「今はたいへん
 ですよね。地方は特に、60代、70代でも働いてる人が多い」
「うん、貧困老人ということもあるが、若いやつがいないせいで、
 仕事があるんだよな。それでな、Aさん、2週間前の夜の9時過ぎ、
 自宅の風呂に入ってたんだ。風呂場は外に面してるが、道との
 間にブロック塀がある」 「はい」 「で、風呂場のくもりガラスに何かが
 映ってることに気がついた。ふだん、そんな影はないのに」 
「はい」 「しかもその影は動いてる。つまり、塀を越えて

 Aさんの家の敷地に何者かが侵入し、風呂場のサッシの前にいる」
「はい」 「泥棒? まさか覗きということはないだろう、年寄の
 一人暮らしというのは、地域のものはみんな知ってる、
 Aさんはそう考え、声もかけず、思い切ってサッシを開けてみた
 そうだ」 「はい」 「そしたら・・・」 「何がいたんです」
「道からの街灯の光で見えたのは動物の頭」 「なんだ人間じゃないのか」
「ああ、けどな、その動物に頭が3つあったとしたらどうだ」
「え?!」 「Aさんが見たのは、真ん中にタヌキ、その両側に
 ムジナとキツネの頭が生えたもの、それが直立して風呂場の
 窓の前にいた」 「ムジナというのはアナグマのことですね。
 3匹がいっしょにいたんじゃなくて?」 「いや、胴体は一つ

 だったそうだ」 「えー、信じがたいです」 「Aさんは確かに
 見たと言ってる。そのとき、驚きのあまり後ろにひっくり返って
 肘を骨折した。そのまま這うようにして風呂場を出て、警察に
 連絡したんだ」 「で、どうなったんですか」 「パトカーが
 駆けつけたときには何もいなかったそうだ。けど、下の地面に
 動物の毛らしいものが落ちてた」 「うーん、ジイさん、酒飲んで
 たんじゃないですか」 「ああ、晩酌はしたと言ってたが、
 缶ビール1本だけ」 「ジイさんがノラ猫かなんかを見間違えた
 というのが一番ありそうですけど」 「まあな、そんとき見たのは
 Aさん一人だけだからな。けど、その2日後に、町中がひっくり返る
 ような出来事があった」 「どんな?」 「その町は山沿いにあってな、

 ほぼ町の中央を流れの速い川が通ってる」 「はい」
「橋も何本もかかってるんだが、川の水面に近いところを顔が流れてった
 という通報がいくつも警察に入ったんだ」 「顔?」
「そうだ、しかもただの顔じゃなく、縦横2mはあったそうだよ」
「えー、嘘でしょう」 「いや、目撃者は40人くらいいるんだが、
 その証言はほぼ一致してる。巨大な女の顔、40代くらいの中年女性と
 いう意見が多かったが、それがニヤニヤ笑いを浮かべながら、
 流れに乗ってスーッと通り過ぎていったそうだ」 
「それ、顔を上に向けた巨人の女が、川の中を歩いてったってことですか」
「いや、体を見た人はいない。顔だけ」 「で、どうなったんです」
「通報を受けた警察も困ってしまってな」 「そうでしょうね」

「いちおう警官を出して川岸を捜索させたが、おかしなものは見つからない」
「で」 「しかし目撃者40人というのは重いだろ、それで署長が、
 町に一つだけある神社の宮司に相談した」 「はい」
「その宮司が神社本庁に連絡し、さらにそっから俺に話が回ってきた」
「どうしました?」 「最初はむろん、変な話だなあと思ったが、
 その町の場所を聞いて事情がすぐ飲み込めた」 「それ、どこですか」
「〇〇県の〇〇町」 「え? あ、もしかして」 「お前もわかったようだな」
「つい去年、教祖が亡くなって解散したばかりの新興宗教の霊堂が
 山麓にあるとこですよね」 「そうだ、集団生活してた信者も
 ちりじりになって、その建物は荒れている」 「えーと、たしか、
 珍しい陰陽道系の宗派でしたよね」 「そう、教祖は陰陽師を称してた」

「どうするんです」 「来週初めに、神社本庁の専門家と現地に行く」
「自分もついてっていいんですよね」 「さっきそう言ったろ」
「ありがとうございます」と、こんな会話があって、Kさんのレンジローバーに
自分と専門家が乗せてもらい、3人でその町に向かいました。
神社本庁のプロは40代くらいですかね。自分とKさんのちょうど
中間くらいの年配。神職の装束はつけておらず、ジャージ姿でした。
ここからは車の中での会話です。自分が「その新興宗教の教祖、陰陽師を
 名のるだけあって、式神をつくってたんですね」 「そうだ」とKさん。
「式神って、作った本人が亡くなると消えちゃうんじゃないんですか」
「普通はそうだが、タネのあるものは消えない」 「タネ?」
「力のある陰陽師なら、何もないとこから式を作り出せるが、

 半端な霊力だと、式のタネになるものが必要なんだ」 「意味が
 わかりません」 「粘土で人形を作るとして、中に針金とかで芯を入れないと、
 すぐ手足が くたっちゃうだろ」 「ああ、何となく理解できてきました」
ここで、プロの人が口を開き、「今度の始末はそう難しいことじゃないが、
 力仕事が必要でね。だからあなたに来てもらいました」そう言ったんです。
レンジローバーは町の中心部を抜けて山に向かい、やがてだだっ広い
道路に出ました。「これは?」 「教団の霊堂にしか通じない道だよ」
「立派ですね。お金が相当あったんでしょうね」 「ああ。ただ、その教団、
 後継者を決めてなかったから。教祖が一代で興して、後継者がいない場合、
 四分五裂してしまうことが多いんだよ」 「なるほど」
そうしてるうち、金色に塗られた下品な感じの霊堂が見えてきましたが、

放置されて1年、背後の山から飛んできた落葉がそこかしこに積もってましたね。
その前庭に車を停め、プロがカーゴから木材を出して祭壇を築きました。
神道式とは言えない見たことのない形の。「郷に入っては郷に従え」と
プロが言い、それで、古式陰陽道のものだとわかったんです。その前で火を焚き、
プロが祝詞ともお経ともつかないものを唱え始めると、風はなかったのに、
近くの落葉が舞い始めました。Kさんが車から木でできた剣を出して身構え、
自分もあたりに気を配ってると、ザザッと積もった落葉が盛り上がり、
こちらに一直線に進んできて、すぐ前まで来たと思ったとき、Kさんが木剣を
軽く振りました。クオンという鳴き声が聞こえ、中空に動物3匹が かたまった
ものが姿を現し、すぐに骨になって崩れ落ちたんです。「それが芯だ」とKさん。
で、骨と祭壇はそのままにし、プロが「水場を探そう」と言い、3人で霊堂の

裏に回ると、幼稚園児用くらいの浅いプールがあったんです。プールの
中も落葉だらけでしたが、くるぶしくらいまで水が残ってました。
プロはその場でまた呪言を唱え始め、するとプールの端のほうで落葉と
水がぶわっ持ち上がったんです。Kさんはズボンが濡れるのもかまわず、
そちらに走りより、真上から木剣を振り下ろし・・・ブチッと太い綱が
切れるような音がしました。で、そこに浮かんできたのは2m近い大きな
甲羅だったんです。亀じゃなくスッポンだと思いました。「大スッポンだ、
 アフリカから輸入したんだろう」 「これが式神の芯」 「そう、タヌキ、
 キツネ、ムジナの骨を混ぜたものとこの大スッポンで、2体の式神を作ってた、
 それを今、仕舞い終えたんだよ。さ、こっからはお前の仕事だ。
 この甲羅、かなり重そうだが、車まで運ぶぞ」 「う」

キャプチャ
 



「魔除け」って何?

2021.02.15 (Mon)
アーカイブ605

hhdususs (3)

今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論かな。
さて、魔除けというのは、まじないの一種でしょう。
まじないとは、さまざまな民間信仰が混然とした形になっているものです。
前に、当ブログでは「まじない」について考察していますので、
興味ある方は参照なさってください。  関連記事 『まじないについて』

まじないは、大きく分けると2種類あるのかなと思います。
一つは、開運です。積極的に運を自分のほうに引き寄せるためのもの。
もう一つが魔除け、つまり悪運を避けるためのもの。
これは開運に比べれば、消極的な意味にも思えますよね。

イワシとヒイラギの魔除け
hhdususs (5)

ただ、歴史的には、開運よりも魔除けのほうが古かったのではないかと
思います。みなさんは、例えば、ある石を身につけるだけで運がよくなる、
なんてことがあると思いますか。まあ、一種のブラセボ効果のようなものは
あるのかもしれません。ですが、幸福をつかむためには、
やはり自分が努力することが何よりも大切です。

これに対し、不幸はいつ襲ってくるかわかりません。疫病とか、
不慮の事故、そういうのはいくら気をつけていても避けられない場合も
あります。昨日まで隣の家の子と仲よく遊んでいた自分の息子が、
今日、流行病で死んでしまった。隣の子はピンピンしてる。

ハチの巣の魔除け


これは運不運なんですが、どうしても釈然としない気持ちが
残ります。自分の子は、魔に魅入られてしまったのではないか。
そのような偶発的な不幸を避けたい、というのが魔除けの
そもそもの発想ではないかと思います。

さて、「魔除け」に類する言葉はいくつかありますね。
「厄払い」 「邪気払い」などです。これらはだいたい同じ意味で
使われていますが、そもそもの言葉の成り立ちは少し違いが
あります。まず、そのへんをみていきたいと思います。

花火筒の魔除け
hhdususs (6)

魔除けの「魔」は、サンスクリット語の「マーラ (魔羅)」の短縮形で、
仏教的な意味合いがあるようです。マーラは、仏道の修行を妨害したり、
人の行う善事を妨げるものを指しています。「魔が差す」という言葉が
ありますが、これは、「悪魔が心に入りこんだように、一瞬判断や
行動を誤る。出来心を起こす。」という意味で使われます。

ですから、魔除けとは、外からの影響によって悪い心を起こす、
人生が破滅してしまう、といったことがないよう、自分を守るための
ものだったと考えます。現代でも、女や金、あるいは酒などで
人生を棒に振ってしまうなんて話は、いくらもありますよね。

次に厄払いですが、この「厄」は、厄病神、疫病神、厄神のことで、
人間界に疫病をもたらす悪い神とされます。
厄病神が村の街道を通ってやってくるのを、注連縄などの
結界を張って防ぐ。これを「道切り」と言いました。

厄病神を通さないための「道切り」
hhdususs (1)

次は邪気払い、「邪気」とはよくない気のことです。
自分はこれ、神道の影響が強い言葉じゃないかと思います。
神道では、気を重視します。気が充実していない場合を「気枯れ」
と言い、それが「穢れ」という語に変化しました。

邪気は、「人の身に病気を起こすと信じられた悪い気」という意味で
使われます。厄と似た意味の言葉なんですね。ただ、上でも書いたように、
「魔除け」 「厄払い」 「邪気払い」は、現代では、
どれも同じような意味で考えてる人が多いんじゃないでしょうか。

ニンニクの魔除け
hhdususs (4)

さて、では、どうすれば魔を払うことができるのか。一つには、強いものの
力を借りる。「鎮西八郎為朝御宿」と書いた札を家の入口にはって、
疫病が入ってこないようにします。源為朝は剛弓の使い手として知られた
平安時代の武将ですね。この他、「鬼瓦」の怖い顔で魔を追い返す
などもそうですし、沖縄のシーサーもこれに近いものです。

次に、魔が嫌がりそうなものを軒先に吊るす。例えば、嫌な臭いを出す
イワシの頭、ニンニクなどです。ニンニクは西洋でも、ドラキュラ除け
として有名ですよね。この他、トゲトゲのあるヒイラギの葉や、ハチの巣、
花火の殻、蹄鉄など、地方によっていろいろな魔除けグッズがあります。

あと、籠や笊を魔除けとして用いる地方もありますね。
籠や笊は目(穴)がたくさんあるので、魔が怖がるとされます。
また、籠目は六芒星の形をしていて、それが魔除けになるという説もあります。
六芒星はダビデの星とも言われ、西洋でも呪術的な意味を持っています。

籠目
hhdususs (2)

さてさて、ということで、ここまで見てきましたが、
いくら自助努力をしても避けようがない不運というのは、人生には、
どうしてもあるものです。それをなんとかしたい、そういう昔の人の
気持ちが、魔除けには込められているのではないでしょうか。
では、今回はこのへんで。




アーカイブ ネットの墓の話

2021.02.14 (Sun)
前に「悪魔の話」というのを書きましたが、あれに登場するKさんに、
昨夜、いつものバーでお会いしていろいろお話をうかがいました。
Kさんは、貸ビルやアパレルの店などを手広く経営されている実業家ですが、
霊能者としての活動もしてるんですね。ただし、
すべてはボランティアで、謝礼などは一切もらっていません。
「Kさん、最近、何か面白い話とかありましたか?」
「bigbossman、お前なあ、ブログに書くネタを探してるんだろ」
「まあそうです」 「でもな、ブログって怖いんだぞ」
「どんなとこがですか?」 「お前、去年大病しただろ」
「あ、はい。12時間の手術をして、一時は死も覚悟しましたよ」
「で、もしあのときお前が死んでたら、今書いてるブログはどうなったんだ?」

「え、それは大丈夫です。共同事務所の仲間にパスワード教えてるんで、
 消してくれるはず。あと、自分のパソコンの処分も」
「だったらいいけどな。お前のやってるブログなんて、
 特に霊障のかたまりみたいなもんだから」 「・・・・」
「でな、人が生きていく世の中には、喜びも悲しみもあるよな」 「はい」
「それは人間の歴史が始まって以来、ずっとそうだったんだが、
 ネット社会になって、その喜びや悲しみが不特定多数につながるようになった」
「そうですね」 「ネットのことを電脳空間とも言うよな」 「はい」
「けど、実際にそこにあるのは人間の思いなんだよ」 「はい」
「ところで、ネットの墓って知ってるか」 「いえ」
「管理人が亡くなって、ネット上にそのまま放置されてるブログのことを言うんだ」
「ああ、なるほど。言いえて妙ですね」

「だろう。ただまあ、ブログをやってる人でも、自分のブログに対する思い入れは
 さまざまだ」 「はい」 「だからほとんどのネットの墓は無害だが、
 中にはマズイものもあるんだ」 「そうなんでしょうねえ」
「お前、闘病ブログって知ってるか?」 「あ、わかります。病気になった人が、
 病状の経過や治療のことを書いたりするんですよね。上位になってるブログは、
 自分のより3桁くらいアクセス数が多いです」 
「あれなんて、かなり危険な要素がいろいろある」 「ははあ」
「まず、書いてる本人の思い入れというか、念のこもり方が強い」
「そうでしょうねえ」 「ホスピスの病床で、スマホで記事を投稿して、
 そのまま中断してしまってるものもある。おそらく、その記事を書いた直後に
 亡くなったとかだろう」 「はい」 「身内がいれば、死去したという報告を

 ブログに上げたりすることもあるが、今は独身の人も多いし」
「そうですね」 「で、重い病気の場合、仕事をやめてしまったり、症状が重くて
 出歩けなかったり、医師との関係がうまくいかなくて病院を転々としたり、
 外の世界とのつながりが、そのブログだけって場合もあるんだ」 「はい」
「それと、詐病ブログって知ってるか?」 「いえ」
「病気を装った嘘のブログってことだよ」 「何のためにそんなことを?」
「さっき、アクセス数が多いって自分で言ったじゃないか。末期がんとか、 
 難病のふりをしてブログを立ち上げれば、大勢の人に注目してもらえるし、
 アフィリエイト収入にもなる」 「ああ」
「アナウンサーの小林麻央さんが乳がんになって、すごいアクセス数だったろ」
「はい」 「あれ以後、かなり増えたらしい」

「でも、詐病なんてすぐわかるでしょうに」 「それが、そうでもないんだな。
 今は病気に関する情報なんてネットにいくらも出てるし、
 ずっと前に書かれてた他人のブログをその部分だけパクったっていい」
「うーん」 「それに、詐病ブログを書いてる人は、悲劇の主人公になりきって、
 すごく真に迫ったものも多いんだよ」 「・・・・」
「あとは、ブログを見るほうの問題もある」 「どういうことですか?」
「そのブログの読者が、必ずしも治療を参考にしたり、
 病状が軽快するように応援してるわけじゃない」 「・・・・」
「中には、自分より不幸な人を見て楽しみたいってことで、
 アクセスしてる人もいるわけだ」 「うーん、それは嫌ですねえ」 
「でも、実際そうなんだよ。お前、こないだ病気してどんなことを考えた?」

「いや、それは、健康って大事だなあ、生きてるだけで丸もうけなんだな、って」
「だろう。例えば、余命宣告なんかされた人のブログを見て、
 自分は何もないけど、まだ死ぬ心配がないだけ、この人よりはマシだってわけだ」
「うーん」 「まあ、そんな感じで、人間の嫌な部分がブログの周辺に渦巻いてたり
 するんだな」 「でも、病気がよくなるよう、心から応援してる人もいるんでしょう」
「まあな、むしろそっちのほうが多い。しかし、それはそれで、
 因縁の元になったりするんだ」 「どういうことですか?」
「Sさん、としておこうか。まだ20代の女性で主婦をしてる。その人が、
 偶然に、ある闘病ブログを見つけた。そのブログは5年ほど前に
 書き込みが途絶えてたが、まだネット上に残ってたんだな。ブログランキングからも
 外れて、意図的に探してもなかなか見つからないような」 「はい」

「でな、その管理人の女性が、たまたまSさんと同じ年齢だったこともあって、
 興味を持って読み始めた。ブログの管理人は生真面目な人だったらしく、
 病状や治療を細かく記してて、文章も上手だと思ったらしい」 「はい」
「で、それと同時に、管理人の境遇が不幸なことも知った。管理人は独身で、
 父親とは幼い頃に死に別れてたが、闘病中に母親まで亡くなってしまった」
「・・・・」 「それと、仕事を続けられなくなったんで、お金の問題もあった。
 あからさまにそういうことを書いてるわけではないが、そのあたりは読み取れた。
 で、Sさんは深く同情してしまったんだな」 「はい」
「ブログの書き込みは、病状が重くなるにつれて増え、それがあるときを境に
 がくんと減った。パソコンで書いてたのがスマホになり、とぎれとぎれになり、
 最後は、ブログを読んでくれた人へのお礼が2行書かれて終わってた」

「はい」 「それを何日かかけて読み終えたSさんは、
 あまりにつらい気持ちになったんで、ずっと何も書かれてなかったコメント欄に、
 管理人さんのご冥福をお祈りします、みたいなことを投稿したんだな」
「はい」 「それ以後も、ときおりブログを読み返したりしてたんだが、
 Sさんが夜中にうなされるようになった。毎夜、2時から4時ころの間に、
 悲鳴をあげて飛び起きる」 「はい」 「ご主人が心配して、心療内科に行かせたが、
 睡眠導入剤を処方されただけだった」 「はい」 「それで、飛び起きることは
 なくなったが、やはり寝汗をかいてうなされているし、悪い夢を見るって言う」
「どんな夢ですか?」 「黒い影がベッドに近づいてきて、体のある部分を
 なでる夢」 「黒い影?」 「姿形はわからなかったらしい。で、つてを頼って
 俺に連絡がきたわけだ」 「どうなりました?」

「Sさんからいろいろ話を聞いて、そのブログの存在を知った。で、読んでみたが、
 俺には陰鬱なだけの内容にしか思えなかった。おそらく、そのブログの管理人と
 Sさんの波長が合ったんだろうなあ」 「で?」
「でな、ブログの管理人の病気は、特殊な部位のがんだったんだが、
 Sさんが毎夜、黒い影になでられているのが、それと同じ場所だったんだよ」
「う」 「それに気がついて、知り合いのいる癌研の受診を勧めたんだ。
 よく頼み込んで、何種類もの検査をしてもらった。そうしたら、
 やはりその場所にがんが見つかったんだよ」 「うう」
「初期も初期のがんだったんで、Sさんは手術をして、経過観察になってる。
 幸い、再発や転移の兆候は出ていない」 「で?」
「もちろん、Sさんの手術と並行して除霊を進めた」

「上手くいったんですか?」 「たぶん大丈夫だろう。ただ、そのブログのほうは
 問題だった。悪い墓と化してるんだ。だから、またSさんのようなことが
 起きないとも限らない」 「でも、管理人の浄霊は済んだんでしょう」
「それとは別に、ブログそのものに命が宿ってるっていうか、
 悪霊化してるっていうか」 「で?」 「管理人に身内はいないし、
 難しかったが、なんとかブログサービスに連絡をとって、
 落としてもらった。これは、管理人本人を浄霊するより大変だったよ」
「うーん、ブログを書いた人が亡くなり、さらに浄霊されたとしても、
 ネット上に残ったものが霊障をまき散らすって場合があると」
「そう。命とはいえない命を持つんだ。これからのネットは怖い。 
 だから、bigbossman、お前も十分気をつけないと」 「お言葉、肝に銘じますよ」

関連記事 『悪魔の話』


 


 

住んではいけない家・部屋

2021.02.14 (Sun)
sss (3)

今回はこういうお題でいきます。オカルト論です。
現在、事故物件が注目を集めてますよね。事故物件住みます
芸人と自ら言う松原タニシさんによる本、原作のマンガや
映画が大ヒットしています。

わざわざ事故物件とされる部屋を探してそこに住み、
自分の体験をレポートする。また、固定カメラを設置して
24時間映像・音声を撮り続ける。これはこれで
なかなか大変だと思います。売れてよかったですね。
さて、不動産用語では事故物件を「心理的瑕疵物件」と



言うようです。瑕疵は傷という意味で、もし大きな建物の
陰になって日当たりが悪かったりすると、それは
物理的な瑕疵物件となります。心理的といった場合、
多くは殺人や自殺が起きた部屋、あるいは孤独死して
長期間発見されなかった部屋などを指します。

ただし、法律による心理的瑕疵の明確な定義がある
わけではありません。要は、「その事実を知っていたら
契約しなかった」と依頼者に訴えられた場合、不動産屋側が
不利になるような物件ということです。そのため、
不動産屋には告知義務があります。

sss (1)

で、この話は以前にもやってるので、今回はもう少し別の
観点から、住んではいけない物件について書いてみます。
うーん、そうですね。まず、土地でしょうか。曰く因縁のある
土地に建てられた家がよくないというのはわかりますよね。

例えば殺人事件があった家が解体され、いったん更地になり、
そこに新たに建てられなどのケース。2000年代に起きたある
連続殺人事件の場合、地域住民が犯人の家が残ってるのが
耐えられないと訴え、自治体が入手して公園にされましたが、
そこには誰も立ち入らないと言われます。

土地(敷地)の種類
sss (4)

あとはその土地が過去に古戦場、処刑場、墓地などであった場合。
1982年の映画『ポルターガイスト』では、さまざまな
怪異が起きる原因が、ラストで、その土地は元墓地であり、
不動産屋が墓石だけ移動させて、遺体はそのまま放置したため
であることが判明します。これは日本的な感覚で、

アメリカ映画では珍しいと当時は言われました。ちなみに、
この映画はシリーズ化されましたが、子役の女の子が
3作目撮影直後に急死しています。また、土砂崩れや水害などで
多数の死者が出た土地に建てられた家がよくないのは
誰でもわかりますよね。

sss (5)

次は、現代ではあまりないと思いますが、陰惨な事件のあった
家の部材などが新しい家に使われるケース。小野不由美氏の
小説を原作に、2016年に映画化された『残穢 -住んでは
いけない部屋- 』では、ストーリーの中で北九州最恐と
言われる「奥山怪談」が語られており、

資産家であった奥山家最後の当主が家族と使用人を皆殺しして
自殺。解体された奥山屋敷の部材を買い取った愛知県の米溪家では
その部材「欄間」から仏間を覗くと地獄が見えると伝えられ、
仏間の次の間で寝ると、どこか遠い地の底で吹いているような
風の音が聞こえて金縛りにあうという話になっています。

『ポルターガイスト』のラスト
sss (2)

さて、ここで少し話題を変えて、家相的によくない立地の家と
いうものもあります。いろいろあるんですが、3つくらい
ご紹介しましょう。まずひとつ目は、正方形や長方形ではなく
不定形の土地に建った家。都会ではそういう場所も
けっこうありますよね。

特によくないのが、土地の形が三角である場合で、住人の中で
争いごとが起きやすいとされます。これを防ぐには、土地は
三角でも建物はきちんとした長方形にし、三角形の頂点には
イチイ、カシワ、イチョウなどの木を植えるのがよいと言われます。

四神相応
sss (8)

次は、T字路、またはY字路の突き当たりにある家。日本では
古くからよくないとされており、そこにお堂や道祖神を
置いたりしていました。理由は複数の道を通ってくる魔が
そこで止まって居着いてしまうからです。そういう家に住むと、
落ち着きのない生活になり、ケガや病気が頻発するとされます。

もしそういう家に住むことになった場合、突き当たり部分に
頑丈な塀を作る。3つ目は、西側に川や池などの水地がある場合。
これは「四神相応」という考え方からきているもので、通常、
西には道、東に水があるのがよいとされます。西側に水があると
金運が流されてしまい、出費が多くなりお金が貯まらない。



あとは、もと湿地であった場所。湿邪と言いますが、そういう土地は
湿気が強く、健康に被害をもたらしたり、地盤沈下で家が傾いたり、
道路の少しの振動が家の中で大きく響くなどの実害があるとされます。
まあ、これがよくないのは当然ですよね。

さてさて、ということで、よくない家や部屋について見てきましたが、
そういう物理的、心理的瑕疵のある物件は値段が安い場合があり、
あえて希望して住もうという人も多いんです。ま、その人の
エネルギーが強ければ、ちょっとした影響は はじき飛ばして
しまったりするものです。では、今回はこのへんで。

sss (6)




アーカイブ 月の裏の話

2021.02.14 (Sun)
中国は、世界で初めて月の裏側に着陸することを目指して、
無人の月探査機を打ち上げました。

無人探査機「嫦娥四号」は8日未明、四川省の衛星発射センターから、
ロケットに搭載して打ち上げられました。月までは数週間かかる予定で、
年明けに月の裏側に着陸して月面の鉱物や表面の構造、
地質などを調査する計画です。着陸に成功すれば世界で初めてとなります。

習近平指導部は「宇宙強国」を国家目標に掲げていて、アメリカなどと並んで、
科学技術で世界の覇権を握ることを目指しています。
(テレ朝news)

月の表と裏
kkkk (3)

今回はこういうお題でいきます。自分は占星術師ですので、これまで、
当ブログでは積極的に宇宙の話を取りあげており、月についても何度か書いています。
まず、探査機の名前の「嫦娥 じょうが」というのは、中国神話の登場人物で、
もとは仙女だったが、地上に下りた際に不死でなくなったため、西王母の不死の薬を
盗んで飲み、月に逃げて蟇蛙(ヒキガエル)になったと伝えられています。

この話はかなり古くからあるようで、発掘された前2世紀の「馬王堆漢墓」
の吊画には、月の上に、大きなヒキガエルが描かれています。
中国では、毛沢東の文化大革命によって、古い神話伝承などは捨て去られて、
ほとんど顧みられなくなったんですが、最近は復活してきて、
むしろ積極的に、探査機の名前などに使われるようになっています。

中国の月の女神「嫦娥」
kkkk (1)

さて、月の不思議の一つとして、つねに地球に同じ面を向けている点があります。
地球からは、どうやっても月の裏側を見ることができないんですね。これは、
月の裏側からは電波通信もできないということです。ですから中国では、
嫦娥からの通信電波を中継するための衛星を別個に打ち上げているんです。

では、なんで月の裏側は見られないんでしょうか。この理由は、
月の自転と公転の周期が同じためで、どちらも27.32日です。
これ、一見すると不思議な感じがしますよね。
地球の場合、自転周期は当然ながら1日、公転周期は約365日です。

ですので、オカルト界では昔から、月の裏側には宇宙人の秘密基地がある
などと言われてきました。ただし、惑星と衛星の関係を考えると、
これは不思議でもなんでもないんです。太陽系の衛星は、
例えば、木星のガニメデ、土星のタイタン、火星のフォボスなどなど、
ほとんどが自転と公転の周期が同じなんです。

月の裏側が地球から見えない理由
kkkk (4)

ここで詳しい説明はしませんが、これは惑星とその衛星が、
潮汐力によって互いに影響をおよぼし合っているためと考えられています。
その形が、いちばん軌道が安定するんですね。このため、
月の重力の影響によって、地球の自転周期も少しずつ長くなってきてるんです。
はるか遠い将来には、地球の自転も月と同期するのかもしれません。

さて、では、月の裏側には何の不思議もないかというと、これがあるんです。
アポロ11号は、月の「静かの海」に着陸しましたが、
これは月をウサギに見立てた場合、顔にあたる部分で、
一般的に、「月の海」とは、地球から見て暗くなっている場所を指します。

ここで少し、オカルト的な余談になります。海外では、アメリカを中心に、
「アポロは月に行っていない」説というのが流行していますよね。
ところが、日本ではあまり盛んではありません。なんでかというと、
これにはオカルト界の勢力争いが関係してるんです。

アポロ11号の月面到達
kkkk (5)

「アポロは月に行っていない」説は、どちらかというと陰謀論になります。
アメリカ政府が、国民にいろんなことを隠しているという内容ですが、
日本人にはあんまり面白くありません。ですから、日本の場合、
「アポロは月に行き、宇宙飛行士が宇宙人と接触した」説のほうが優勢なんです。

話をもとに戻して、月の海は、最初はクレーターの影だと思われていたんですが、
だんだんにそうでないことがわかってきました。クレーターではあるものの、
その中に、黒い鉱物が広がっています。これは、約38億年ほど前、
月の内部にマグマが形成され、クレーターの底から噴出して内部を埋めたものと
考えられます。だから黒く見えるんですね。

で、この海のある割合が、月の表と裏ではまったく違うんです。(最初の画像)
月の表の海の比率は約30%なのに対して、裏側はわずかに2%でしかありません。
これ、不思議ですよねえ。また、また裏側は表側より標高が高く、地殻が厚くなっており、
鉱物の組成もかなり違っています。このことを「月の二分性」といいます。

どうしてこんなことになったのか。いろいろな説が立てられています。
例えば、月ができたばかりの頃は、月の表側は地球からの放射熱でドロドロに溶け、
裏側のほうが早く固まったからとか、月形成の初期に、表側で巨大衝突があり、
表側の高地を構成する地殻物質の多くが吹き飛ばされてしまったためであるとか。
でも、はっきりしたことはわかっていないんですね。

さて、長くなってきたので、そろそろ、月にあるとされる「宇宙遺跡」をご紹介します。
必ずしも裏側というわけではありません。赤丸で囲まれた画像は、
「かぐや姫の遺体」(笑)と呼ばれるものです。
この他にもたくさんあるんですが、みなさんどう思われますでしょうか。

月面の宇宙遺跡とされる画像
kkkk (2)

これ以外にも、日本では、福来友吉博士によって発見された超能力者の一人、
三田光一が、昭和6年に月の裏側を「念写」した写真が残っています。
これ、実際に月の裏側の画像と比較してみればわかりますが、
似ても似つかないとしか言いようがありません。

三田光一による月の裏面の念写写真
kkkk (1)

さてさて、最後に、習近平主席は、中国が「宇宙強国」となることを目指すと
述べていますが、一方のアメリカはこれを受け、トランプ大統領が、
「アメリカ宇宙軍 US space force」 創設を明言していますよね。
また米ソの宇宙開発競争のようなことが始まるんでしょうか。
くれぐれも平和利用にかぎってほしいですね。では、今回はこのへんで。

関連記事 『月=人工天体説って何?』




「免疫力」信仰は危ない

2021.02.13 (Sat)
xx (6)

今回はこういうお題でいきます。科学ニュースのカテゴリですね。
この記事、おそらく読んで反発される方もいるんじゃないかと
思いますが、まあ、あくまでbigbossman個人の考えですので、
そこはご承知おきください。

さて、ネットには「免疫力アップで健康に」とか「免疫ががんを
やっつける」とか、そういう記事が多いですよね。免疫治療を
しているクリニックの広告も目立ちます。最近は youtubeなどの
動画サイトの広告にもかなり進出してきていて、
儲かってるんだろうなと思います。

では、免疫って何なんでしょう。ネット辞書を引くとこう出てきます。
「体内に病原菌や毒素その他の異物が侵入しても、それに抵抗して
打ちかつ能力。また、異物と反応する抗体を作って発病をおさえる
抵抗力を持つこと。転じて、物事がたび重なるにつれて
慣れてしまうこと」なるほどね。

これ自体はたいへん正しいですが、あたり前ですよね
xx (1)

「転じて」以下の部分は、「最近、妻の小言に免疫がついた」
みたいな感じで使われるんでしょう。みなさんが風邪をひいたとき、
くしゃみや鼻水、発熱をしますが、これは風邪のウイルスが
症状を起こしているというより、自己免疫が風邪のウイルスと戦った
結果、起きるものです。体温が高いほうが免疫が有効に発揮されやすい。

こう書くと、免疫ってすごくいいもんだと思われますよね。たしかに
そうです。もし免疫がなくなると、そこらにありふれてる常在菌に
感染して、すぐに死んでしまいます。免疫不全におちいった場合、
無菌室で厳重に管理されなくてはなりません。

でも、免疫が諸刃の剣であることは、医学的には常識です。
今回のコロナ禍ではワクチンに注目が集まっていますが、外から
抗体を注射して自己免疫を働かせ、ウイルスを撃退するための
ものです。また、コロナが重症化する原因の多くは
サイトカインストームで、いわば自己免疫の暴走です。

xx (4)

これはハチに刺されたときなどにも起きます。1度目に刺されて
体内に抗体ができ、2度めに刺されたときに免疫が暴走を始める。
アナフィラキシーの症状が出てから心停止までの時間は15分という
報告もあり、それだと助かるのは難しいですよね。

自己免疫性の疾患はたくさんあります。軽微なものとしては
花粉症。体内に入ってきた花粉を自己免疫が攻撃することで起こる
アレルギー反応の一つです。さらに、アトピー性皮膚炎や
関節リウマチなどもそうですね。膠原病の一つで、
炎症性自己免疫疾患です。辛く苦しい症状が特徴ですね。

正常細胞とがん細胞はここまで違いはないので、誤解をまねきやすい
xx (2)

また、自己免疫性肝炎、すい炎などは、死にいたる可能性もあります。
で、これらについては、どうして発生するかの機序はほとんどわかって
ないんです。原因が不明なので、対処療法を行うしかない。全体として、
自己免疫性の疾患で亡くなる人は、かなりの数がいると思われます。

人間の持つ免疫機能は複雑系の最たるもので、仮に全体像が100
だとすれば、現状の科学、医学では3か4程度しかわかっていないと
自分は考えています。自然科学の中でも数学が適用できない分野の
歩みは遅々として、試行錯誤をくり返しながら少しずつ知見を
深めていくしかありません。医学は人体実験ができませんから。

さて、上でも少し書きましたが「免疫力を上げてがんを撃退する」
これって本当にできるんでしょうか。自分はきわめて懐疑的です。
がんは遺伝子の突然変異によって起こります。こう書くと、
まったく違った細胞ができるように思われがちですが、がん細胞は
正常細胞とほとんど変わりません。ほんの一部が違うだけ。

xx (1)

細菌やウイルスなどの外部からの侵入者は、人間の細胞とは
まったく違うものです。ですから、リンパ球などが敵と認識して
攻撃できる。ところが、がん細胞はほとんど同じですので、
免疫細胞が認識できない。まあ、がんにかからないようにするため、
免疫力を高める生活をするというのなら、ありかもしれません。

ですが、いったんがんができてしまった場合、自己免疫で治癒に
持ち込むというのは不可能だと思います。だって、がんはゼロから
できるわけですが、免疫ががんを治すんだったら、そのときに
どうして消してしまえなかったんでしょうか。また、がんは
免疫細胞をごまかすさまざな手練手管を持っています。



オブジーボ、キートルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬は、
このがん細胞が免疫をだます仕組みを破壊するものです。
自己免疫ががん細胞にたぶらかされて攻撃のブレーキを
踏んでしまっているのを解除する。ですから、効く人には
劇的に効くんですが、副作用で免疫暴走が起きたりもします。

医師の近藤誠氏は、がんの免疫治療に批判的で、「体内で毎日がん化が
5000例は起きていて、それを免疫細胞が殺しているというのは
根拠がない」と著書で書いています。自分は、近藤氏のがんもどき理論は
馬鹿げていると思いますが、この発言は評価しています。がん細胞で
できてすぐ死ぬものが多いのは事実ですが、

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おそらくその手のがん細胞は、遺伝子変異により初めから生きられない
ようにできている。あ、かなり長くなってきました。以上のような理由から、
自分は「免疫力を高める」という考え方には批判的です。もちろん、適切に
運動し、バランスのとれた食事、ストレスをなくし よい睡眠をとるのは
大切なことですが、有効に免疫力を高める方法は現状ではわかっていません。
たんにリンパ球の数が多ければいいというような、単純な話ではないんです。

さて、年齢を重ねるにつれて免疫力は落ちてきます。加齢によって低下する
機能は、獲得免疫系の方が著しいことがわかってきました。一説によると、
獲得免疫の能力は、20代頃がピークであり、40代ではすでに
その半分に低下するとされています。また、高齢者の体は、低レベルでは
ありますが、あちこちで炎症が起きている状態です。

xx (1)

顔や手にしわ、シミができるのも炎症の結果と考えていいでしょう。
そのため、自己免疫では対処ができなくなる。まあしかたのないことです。
ほとんどの生物で、繁殖、子育て期には体がよく働くように機能しますが、
それが過ぎると、役目の終わった個体として死に向かうように
プログラミングされているという説もあるくらいです。

さてさて、ということで、この記事で自分が言いたいのは、免疫については
ほとんど何もわかってないこと。「免疫力アップでがんを治す」などの
ネット上の文言の多くには根拠がないこと、下手に免疫にちょっかいを出すと、
おそろしい自己免疫疾患を引き起こす可能性があることです。
最近あまりに、怪しいインチキ業者が「免疫力」という言葉を使っているのを
危惧して本項を書きました。では、今回はこのへんで。




アーカイブ 竹のオカルト

2021.02.13 (Sat)
sっfsv (6)

今回はこういうお題でいきます。うーん、はたして竹で最後まで
話が続くんでしょうか。いまいち自信がありませんが、
始めてしまいました。たぶんあんまりおもしろい内容にはならない
と思うので、スルーされたほうがいいかもしれません。

笹竹という言葉がありますが、Wikiを見ると笹と竹は
区別されているようで、幹が成長するとその部分の葉が落ちるのが竹、
全体が枯れるまで葉が落ちないものを笹とすると出てきています。
へえ、これは知りませんでした。うちの実家は茨木で裏に竹やぶが
ありますが、あれは葉が落ちるので竹でいいみたいです。

さて、竹は古来から清浄な植物とされ、魔除けの効果を持つと
言われてきました。理由は2つあって、まず常緑であること。
それと、天に向かってまっすぐに伸びること。このため、
榊とともに神道の儀式に使われることが多いんですね。
門松に使われているのはご存知でしょう。

sっfsv (7)

真ん中に竹を3本立て、「そぎ」と言って、鋭い切り口を正面に
向けますが、これ、徳川家康が始めたという説があります。
徳川家康の生涯、唯一の敗北として知られる「三方ヶ原の戦い」の後、
武田信玄への復讐を誓って「次は斬るぞ」という意味を込めて正月に
立てられたんだそうです。本当なんでしょうか、眉唾な気がします。

あと、神道では結界に竹が使われます。ある場所を結界として清める
ときには、四隅に竹を立て、注連縄をはり巡らして紙垂(しで)を
下げます。このときに使われる竹は「斎竹(いみだけ)」と言い、
地鎮祭などで行われているのを見かけた方もおられるでしょう。

「斎竹(いみだけ)」
sっfsv (1)

さて、竹のオカルトというと、まず一番に出てくるのは
「八幡(やわた)の藪知らず」でしょうか。千葉県市川市八幡にある
森の通称で、古くから「禁足地」とされており、「足を踏み入れると
二度と出てこられなくなる」という伝承が残っています。

植生は竹だけではないものの、竹の巨木もたくさんあります。
自分も何度か前を通ったことがありますが、鬱蒼として中の様子が
よく見えません。でも、地図上で見ると森は20m四方くらいの
せまい面積で、迷うようには思えません。
竹林には、神隠し伝説がつきものです。

「八幡(やわた)の藪知らず」
sっfsv (3)

子どもが迷い込むと、いつの間にか姿が見えなくなっている。
有名なのが2005年に起きた「たけのこ掘り行方不明事件」です。
実際の事件なので詳述はしませんが、香川県で、当時5歳だった
少女が、母親、小学3年生の姉と一緒にたけのこ掘りへ出かけ、
一人で「もう一本とってくる」と竹林に入ったまま

戻ってこなかったものです。警察の捜索で、竹林の中にある池に
落ちたのではないかとされ、池の水を完全に抜いても遺体は
見つかりませんでした。また、捜索に動員した警察犬4匹が同じ場所で
いっせいに動きをとめたため、誘拐の可能性も指摘されています。
現在、この竹林はフェンスで囲まれ、立入禁止になっているそうです。

「たけのこ掘り行方不明事件」
sっfsv (4)

さて、あとはそうですね。これは以前に「花火のオカルト」という
記事でも書いたんですが、中国で慶事のときに鳴らされる爆竹。
現在は火薬を使っていますが、もともとは竹で、節の間につまった
空気が熱で膨張して破裂し、音が出るというものでした。

中国の西方の山奥に、人間の姿をした一本足の怪物「山魈 さんしょう」
が棲んでおり、出会った人間は高熱を発し苦しみながら死んでいくと
考えられました。山魈は春になると山から降りてきます。
ある農民が竹を火にくべて暖をとっているところへ山魈が来ましたが、

爆竹、獅子舞などのルーツ


たまたま火にあぶられた竹が爆ぜ、山魈は逃げていった。
これが中国の春節で爆竹を鳴らす由来なんだそうです。この話が
もとになって、獅子舞ができたとも言われますし、日本の妖怪、
「覚 さとり」の話も、この中国の古話がルーツだと考えられています。

さて、植物にはそれぞれ似合う動物がいます。花札の「鹿と紅葉」
「猪と牡丹」などがそうですが、竹とペアになる動物には、
虎と雀があります。ただ、虎は日本にはいませんので中国の話ですね。
縦にまっすぐ生えている竹と、虎の縞が絵になるのかもしれません。

「覚の化け物の話」
sっfsv (5)

雀のほうは、「竹に雀は品よくとまる とめてとまらぬ色の道」
などと唄にもなっていますが、日本の民話「舌切り雀」で、
雀のお宿は山の竹林の中にあります。そこで大きいつづらを
お土産にもらった意地悪ばあさんは、中から出てきたさまざまな
妖怪に食べられてしまうんです。

さてさて、ということでけっこう書くことがありました。
ここではふれませんでしたが、七夕も笹竹にかかわる行事ですし、
古来から竹は身近なものだったんです。この調子なら松や梅でも
記事が書けそうです。では、今回はこのへんで。

大きいつづらから出てきた化け物に襲われる欲深ばあさん
sっfsv (2)




祠(ほこら)の話

2021.02.12 (Fri)
bigbossmanです。今回はひさびさに、霊能力者のKさんとお会いした
ときの話です。ご存知の方も多いと思いますが、Kさんは50代後半、
本業は実業家で、貸しビルや高級飲食店を手広く所有されています。
そのほとんどは経営を人に任せてて、本人はボランティアで
全国を飛び回り、霊障事件の解決にあたられてるんです。以前は
神戸のほうにご自宅があったので、ときどきお会いしてたんですが、
去年、石垣島に転居され、ご一緒する機会が少なくなりました。
これはつい1週間前、本土に出てこられたKさんと、ホテルのバーで
飲んだときのものです。「ところでbigbossman、祠ってあるだろ、
 あれ、どういうものなんだ」 「祠ですか、うーん、語源は、
 もともとは神倉(ほくら)って言ったみたいですね。

 弥生時代の遺跡で、厳重な環濠に囲まれた中に、小さな高床式の
 建物が見つかったりしてます。人が住める大きさじゃなく、
 種もみの倉庫ではないかという説が有力で、そんなのが祠の
 源流なのかもしれません」 「ふうん、じゃあ、神道のものなのか」 
「それが、そうとも言いにくいんです」 「どうして?」 
「神社の場合、御祭神がはっきりしてます。天照大神とか大国主とか」
「ああ、そうだな」 「けど、祠は、何が祀られてるかよくわからないんです。
 神道の神社なら、どんな小さなものでも、かけ持ちで担当する神職がいて
 お世話をしてますが、祠の場合は、その近くの家の人が世話してたり
 します。ですから、もし世話してたお年寄が亡くなったり、
 転居した場合、祠は放置され、そのまま朽ちていくことも」

「なるほどな。中にはどんなものが祀られてるんだ」 「それはいろいろで、
 その地の人が尊いと思ったものです」 「え、どういうこと?」
「うーん、例えば、山の中で人の顔が浮き出して見える石を拾って
 持ち帰ってきた。で、それを近所の人に見せたら、祀らなきゃいかんと
 言われて祠を作ったとか、あとはそうですね、白蛇の抜け殻とか、
 洪水のときに流れついた仏像とか」 「仏像?」 「はい、庶民の間では、
 神仏は習合してましたから」 「そうか」 「だから、ひと口では
 言えないんですよ」 「で、もし祠が祀られなくなったらどうなる」
「それは、その祠がどれだけ信仰を集めてたかによると思います。
 例えばある一家だけで祀られてたようなのは、放置されてもまず何も
 起きません。けど、たくさんの人の信心を集めてた場合、

 捨て置かれるようになると祟りが発生したりします」 「それは何となく
 わかる気がするな。人々の信仰心そのものが実体を持つということだろ」
「そうです。あと、めったにはないんですが、その祠に祀られてたのが
 強力な呪だった場合、やはり祟りが起きたりしますね」 「つまり、
 祟りを鎮めるために 地域みなでお祀りしてた」 「そうです・・・Kさん、
 何か祠にまるわる事件に関わってられたんですね。話を聞かせてください」
「うん、そのつもりで聞いたんだ。けど、発端はずいぶん昔、今から
 28年前のことだ」 「というと1993年あたり」 「そうだ、
 あの頃はちょっとしたオカルトブームだった」 「わかりますよ。
 テレビでもけっこうオカルトな番組をやってましたが、1995年の
 地下鉄サリン事件で、みなパッタリと消えちゃいましたよね」

「うん、その少し前の話、3人の男子大学生がいて、オカルト研究会所属」
「はい」 「その子たちが、ある廃村に1泊でビデオ撮影に行った。
 学祭で流すつもりだったそうだ」 「なるほど、その廃村の場所は」
「それは言えんが、東北の〇〇県だよ」 「で」 「林業が盛んなころは、
 かなり栄えてた村だが、廃村になって15年ほどたってた」 「はい」
「大学生たちは夏休みに車で行き、小さいテントを張って泊まったんだ。
 日中は廃村の中を撮影してまわり、生活感のある家の内部なんかを
 撮ってな、夜はライトを使って、改葬で放棄された墓地なんかも」
「で」 「テントを張ったのは村外れで、そこに奇妙な祠があった」
「どんな」 「それが、一つ一つは小さいが高さのある祠が、
 4つ四角に向き合う形で建ってた」 「向き合う?」

「そう、つまり四角形の対角線にそれぞれ祠があって、全部が内側を
 向いてる」 「珍しいですね。その祠は真ん中にある何かを封印
 してた?」 「そうだ」 「中は確かめたんですか」 「ああ、その
 大学生らは怖いもの知らずで、わざわざ扉を開けてみたが、
 すべて空だったらしい」 「罰当たりですねえ」 「うん、さらに
 もっと罰当たりなことに、テントを張ったのがその中心の場所」
「うわ」 「当然、何かが起きたと思うだろ」 「はい」
「大学生らは焚火をしてな、その回りで持ってきた酒を飲んだ。
 寝たのは12時過ぎだったらしい。夏だから寝袋もいらず ごろ寝」
「で」 「その日、日中はいいお天気だったのに、彼らがテントに
 入ってから雨が降り出した。土砂降りなら車に戻るが、

 そこまでの雨でもない」 「で」 「だいたい2時ころ、全員が
 寝入ってると、突然突風が吹きテントが飛ばされたんだ」
「ははあ、で」 「起き上がると、自分たちの頭上に何かが飛んでる」
「何が?」 「それが、4つの火の玉だったそうだ。円を描きながら、
 まるで互いに追いかけっこするようにぐるぐる」 「それ、
 焚火の火が風に乗ったんじゃ」 「いや、焚火は寝る前に消した。
 それに火の玉と言っても、青白い光だったそうだ」 「うーん」
「何かの電気的な現象かとも思ったそうだが、怖くなって車に入り、
 そのまま大学のある地元まで逃げてきたそうだ」 「で」
「でもな、その後、彼らには特に何が起きたというわけでもなかった」
「え、じゃあKさんが依頼を受けたのはいつです?」

「その8年後のことだ。3人はそれぞれ就職し、時期は違うが結婚して、
 同じ頃に最初の子が生まれた、3人とも女の子だった」 「で」
「この3人をABCとしようか。ABはもう亡くなってるが、その日が、
 2人とも自分の娘の4歳の誕生日だった」 「え?」
「もちろん日は違うが同じ年。Aは交通事故、Bは突然の病死」
「うーん、じゃあCは?」 「このCから俺が依頼を受けたんだよ」
「ああ」 「大学時代の友人仲間で、まだ親しく交流があった2人が
 急に亡くなったわけだ、そりゃ怖いと思うだろ」 「ですね」
「で、俺はCと会って、いろいろ話を聞いたが、そんな中で、
 この廃村の祠の話が出てきたんだよ。本人は半分忘れてたけどな」
「うーん、Kさん、調査に行ったんですね。その祠、8年後にも

 残ってたんですか」 「ああ、かなり朽ち果ててたが、倒れたりは
 してなかった」 「どんな調査を?」 「祠自体は中身がないんだから、
 それが衞ってる中心地にレーダー調査を入れた」 「地中レーダーですか、
 さすがですね」 「知り合いにその手の会社をやってるやつがいたから。
 結果は、そう深くないところに金属のものが埋まってると出た」
「掘ったんですね」 「ああ、重機を頼んで」 「わくわくしますね、
 何が出てきたんですか」 「金銅製の坐像、かなり傷んでたが、
 地蔵菩薩だった。頭を下にして逆さの形で」 「で」
「中が空洞になってて、調べてみたら4体分の子どもの骨が出てきたんだ。
 性別ははっきりしないが、女の子っぽい。年齢は3、4歳。
 大学の先生に見てもらったら、江戸後期だろうということだった」

「うーん、すると、江戸時代に、何らかの理由で子ども4人が亡くなり、
 遺体を地蔵像の内部に入れて逆さの形で埋められ、その周囲に祠を
 建てた!? よくわかりませんね。あ、その子たちの死因は判明したん
 ですか」 「はっきりはしてないが、骨に刃物のすり跡があって、
 肉を削いだんじゃないかという話だった」 「う」 「その地方は
 江戸時代、ひどい飢饉が続いてたから」 「うう」 「この骨が
 障りをなしてるのだろうと考えて浄霊をしたよ。それが功を奏したか
 わからんが、Cは娘さんの4歳の誕生日には死なず、娘さんともども
 健在だ」 「なるほどねえ」 「だが、事件はまだ解決してない」
「え、どうして」 「埋められた子どもは4体、大学生は3人、
 1体がどこかをさまよってる。それをずっと追い続けてるんだよ」

キャプチャ

 
 
 

アーカイブ 恐怖の扉の話

2021.02.12 (Fri)
これな、ずいぶん昔の話なんだ。昭和の40年代前半だな。
ただ、今とも関係なくはない。もしかしたら、ずっと続いてること
かもしれねえんだ。そういう意味では、ただの思い出話とは違う。
あれは俺が小学校5年生のときだな。〇〇市ってとこに住んでたのよ。
そうだ、誰でも知ってることだが、あそこの市は、ある企業の
本社があるお膝元で、すべてをその企業が支配してた。
市長はその企業の子飼いだし、今だと信じられねえかもしれねえが、
その企業の社員が交通違反をしても、軽いものなら警察も
見逃してたんだ。まあ、どこの話かはすぐわかるよな。
で、俺の通ってた小学校も、近くに企業の社宅があったから、
クラスの3分の2以上の子どもの親が社員だった。

ただ、そのことは、これから話す内容とはたぶん関係ないと思う。
当時はネットもゲームもなかったから、子どもの話題といえば、
まずマンガ、少年ジャンプの話。それからテレビ、あとはプロ野球とか。
じつは俺は相撲が好きだったんだが、それは少数派で、
相撲の話ができるやつはあんまりいなかったな。
で、テレビの話なんだよ。朝早く教室に集まった男子が、前の日の
番組の話をあれこれしてた。ほら、さっき社宅があるって言ったろ。
工場勤務してる親に合わせて、子どもも早く家を出されるんだ。
そんときに、あるやつ・・・山田ってしておこうか・・・が、
怖い番組の話を始めた。怖い番組も、知ってると思うが、
「あなたの知らない世界」とか流行ってたんだ。

うーん、当時はまだ心霊って言葉は一般的じゃなかったと思う。
怪奇特集なんて言葉を使ってたな。で、前日は日曜日だったんだが、
そいつは「恐怖の扉」って番組を見たって言う。けど、他のやつらは
誰も知らない。だから当然、何チャンネルで何時からやったのか聞いた。
そしたら、見たのは朝5時だって。それは無理な時間だよなあ。
親は連日の仕事で疲れきってて、日曜は下手すれば10時くらいまで起きない。
子どももそれに合わせて寝てるんだよ。そもそもだな、昔はその時間帯は
番組をやってなかった。砂嵐って知ってるよな。画面が灰色になって乱れてる。
要は電波が来てない。「嘘つくなよ」って皆が言ったが、山田は真剣で、
「俺な、リトルリーグで野球やってるだろ。そのレギュラーになりたくて、
 朝走ってるんだよ。5時から6時くらいまで。

 日曜だって休まねえよ。そんときも、親が寝てる中 起き出して、
 着替えて走りに出ようとしたんだが、居間に出てきたとき、ふっとテレビ
 つけてみたんだよ。やっぱ砂嵐だったが、チャンネルをガチャガチャ
 回してたらそれやってたんだ。いやあ、何チャンネルかはよく覚えてない。
 見てて怖くなって消したから。その後チャンネルは親か弟が変えちゃったし」
「どんな内容だったんだよ」 「画面の上のほうに赤い字で、恐怖の扉って
 出てた。映ってたのは部屋だな。薄暗い、かなり広い部屋。
 それで、真ん中に自動販売機が置かれてる。ただそれだけをずっと
 写してるんだ。俺が見てたのは3分くらいだったけど、その間に動くものは
 なかったな」 「自動販売機? コーラか?」 「わからん、暗くてはっきり
 しなかったが、全体が赤い気がしたからコーラなのかもしれん」

わかるかなあ。まず当時はテレビのリモコンなんてなくて、いちいち手で
回してチャンネルを変えてた。それと、自動販売機も少なくて、
メーカーもかぎられてたんだ。この話を聞いて、みなは口々に、
「そんな時間に番組なんてねえだろ」 「恐怖の扉なんて聞いたことがない」
そういい始めた。ただ、その山田は嘘つくようなやつじゃなかったんだ。
体が大きいし、スポーツもできて、ドッジボールなんか最高に上手い。
だから、本当かもしれないって考えたやつもけっこういたと思う。
山田はムキになって「俺が見たのは事実だ。あ、そうだ、先生が来たら
 新聞のテレビ欄を見せてもらおう。昨日の新聞も学校にはあるんじゃないか」
頭もいいやつだったんだよ。しばらくして担任が来たんで、理由は詳しく言わず、
「昨日の新聞見せてください」って頼んだら持ってきてくれた。

けど、やっぱ日曜の朝5時にやってる番組自体がねえんだ。NHKはじめ、
どのチャンネルも放送開始は6時から。地方都市だったから、キー局自体が
5つくらいしかない。山田はそれ見てふてくされたような感じになった。
で、その日の昼休み、山田は親しい友だちを集めて、「もしかしたら毎朝
 やってるのかもしれん。明日の朝、起きれるやつは5時にテレビつけて
 チャンネル回してみてくれ」こんなことを言った。そんときに俺もいたから、
ええと、翌日の火曜の朝だな。5時にテレビつけてみたんだ。
けど、やっぱ砂嵐だけでな。俺以外にもためしたやつが数人いて、やはり
「恐怖の扉」を見たやつはいない。山田は悔しそうに「俺も見れなかった。
 もしかしたら特別番組だったかもしれんし、日曜だけやってるのかも。
 嘘じゃないんだよ。次の日曜、5時にテレビつけてみてくれよう」って、

泣きそうな顔になってみなに頼み込んだ。で、日曜になって、
なんとか起きてテレビをつけた。砂嵐が出たんで、何度もチャンネルをぐるぐる
回してたら、映るとこがあったんだよ。覚えてる、7チャンネルで、
ふだんは放送が入ってないとこ。かなり乱れた画像だったが、工場の一画
みたいなとこが映って、上半分に赤い字で「恐怖の扉」って書いてある。
「あ、これか」と思ったが、なんとも気味の悪い画面でな。
あちこちボコボコに凹んだ自販機が真ん中にある。ただ、その自販機、
部屋の大きさに比べて小さいし、暗いんで細部がはっきりしないんだ。
電気もついてないから、何のジュースが入ってるのかもわからない。
ただ、ビールとかのじゃない、清涼飲料水の縦長のやつだった。どのくらい
見てたかなあ、10分くらいか。画面には何の変化もないままふっと消えて、

その後はまったく映らなくなったよ。俺も見たぜ、って明日学校で山田に
言おうと思ったんだができなかった。なんでかって言うと、日曜の午後に
山田が行方不明になったんだ。自転車でリトルリーグの練習に出た帰り、
そのままいなくなったみたいだ。月曜の朝、担任は山田くんは風邪で欠席です
って言ったんだが、これは誘拐を想定して秘密捜査が行われてたんだな。
山田の親父は企業の重役だったから。けども1週間しても見つからず、
警察は公開捜査に切りかえた。当時は子どもの誘拐はちょくちょくあって、
そのたびに大騒ぎになったから、あんたらも山田の本名は知ってるんじゃ
ないかと思う。結局、あれから40数年たって山田は行方しれずのままだよ。
え、山田の家族? いや、よくわからんなあ。親はもう死んでて不思議ない
齢になってるはずだし、俺は高校を卒業してその市を出たから。

ああ、その市の企業に勤めるのが嫌だったんだ。俺の親は両方とも
社員だったから、俺も優先的に採用されたはずだが、あえてまったく
別の職種についたんだ。あと、「恐怖の扉」な、山田がいなくなって、
日曜の5時には、思い出すたびにテレビをつけてみた。1回だけ映った
ことがあるんだ。俺が高3の春休み、その市を出る直前だった。
小学生のときとまったく同じ画像に思えたが、ちょっとだけ違った。
自販機の前に野球のグローブが落ちてたんだ。山田のだ!って思った。
・・・その後、テレビのチャンネルはリモコンで変えるようになり、
テレビ放送はバブル期なんかは一晩中やってたな。デジタル放送が始まって、
俺も「恐怖の扉」のことはほとんど思い出さなくなったんだよ。で、
2ヶ月くらい前だ。その市で、40数年ぶりに小学校の同級会があったんだ。

懐かしいんで出席した。俺と同じで同級生はみなジジイになってたが、
小学校のときの面影はあった。当時の担任はすでに亡くなってた。
あとな、今は俺の実家もその市にはないんだ。だから駅前のビジネス
ホテルに泊まった。山田の話は出なかったな。同級会の3次会までいって、
ベロベロに酔っ払ってホテルに戻った。翌日の始発で戻る予定だったんで
早く起きたが、まだ前日の酔いが残ってた。何気なくテレビをつけたら、
衛星放送のチャンネルなのに恐怖の扉が映ったんだよ。今までと
違うのは自動販売機が大きく画面に出てることで、入ってるジュース缶は
どれも全部同じ赤い色、そこに白い字で「山田〇〇」と書いてあった。
「あっ!」と思ってリモコンを落とすと、画面が乱れて消えた。
その後は見てないが、これ、どういうことなんだ??





 

アーカイブ 鉄塔の話

2021.02.12 (Fri)
6年前、自分が中2だったときの話です。9月の土曜日だったと思います。
出かけていた母が夕刻に戻ってきて、居間でテレビを見ていた自分に、
「ほら、あんたの同級生って言ってた佐々木さんのうち、ご近所だしね、
 お線香上げに行ってきたよ」と声をかけてきました。佐々木さんというのは、
その2ヶ月ほど前に中学校の同じクラスに転校してきた女子のことです。
うちとは田んぼ8枚くらい隔てた近くの、
こんもりと木が茂った島のようになった場所に家があるんです。そこは
新築ではなく、昔からある壁が黒ずんだ家に入居したという話は聞いてました。
転校してきたばかりだし、ほとんど人と話をしない暗い感じの子だったから、
「あ、そう」とだけ答えました。

そういえば、その佐々木さんは木曜のあたりから、
お祖母さんが亡くなったということで学校を休んでいました。
「それにしても変な感じだったわよ。家の中はがらんとして、
 まだ納骨もすませてない祭壇に骨壺と遺影があるだけ。
 向こうのお母さんが一人でぽつんとその前にいたのよ」
「・・・それがなんで変なの?」と聞いたら、
「あそこの家のすぐ脇に送電の鉄塔があるでしょ。
 あの下にね、喪服を着た人が十人近くもいて、
 がやがや何かをやっていたのよ。お葬式はもう終わってるはずだし、
 変な感じだった」 「えーでも、あそこ鉄塔なんてないだろ」 「あるわよ」

「ないよ。田んぼの中を通ってる鉄塔はもっと後ろにずれたとこにあるじゃない」
「あの家のすぐそばだったよ。お母さん今見てきたばっかりだもの」
「そんなはずないって」
「じゃあ外に出て見てみなさいよ。まだ暗くなってないからわかるでしょ」
こう言われて、家に外に出てみたんです。
そしたら、確かに母の言うとおり、夕暮れの空を背景に、
シルエットになった林と家のすぐ近くに、並ぶように鉄塔が立ってたんです。
鉄塔の下に、かなりの人数の人が入り込んで動いているのもわかりました。
「おっかしいなー」とつぶやきながら家に戻りました。自分の記憶では、
鉄塔はもっと島とは離れたところにあったような気がしてたんです。

気になったので、次の日の日曜日、午前中に見に行ったんです。
家からは道路を通ればけっこう距離があるんですが、
あぜ道を渡っていくと5分くらいでそこに出るんです。
確かに島のすぐ近くに鉄塔がありました。でも、変なんです。
それの他の鉄塔は自分の記憶どおりの場所にあって、
その鉄塔だけが直線の列からずれてるんです。
電線も不自然に曲がって伸びてました。でも、そんなことありえないですよね。
その鉄塔だけ急な工事で場所を変えるとか考えられないです。意味がないし、
家からすぐ近くだから、いくらなんでも工事してればわかるはずです。
やっぱり自分の記憶違いで、最初からこうだったんだろうか・・・

鉄塔に近づくと、その下は低い柵だけで簡単に人が入り込めるようになってました。
神社にあるしめ縄のようなものが4本の足の2mほどの高さに
張り巡らされていたんです。入っていくと、地面のの土が黒く焼け焦げ、
中央の高いところから下に、1本の太い綱が下りてきていました。
やはり神社の、鈴を鳴らす綱を長く伸ばしたような感じです。その先に
透明ファイルではさまれた写真がついてて、風でくるくると回ってました。
手で止めて見ると、公民館の掲示板にあるような犯人の
手配写真だったんです。「何だこれ?」と思いました。読んでみると、
「○崎△男 ○歳、殺人容疑で指名手配、この男を見かけたら110番」とありました。
ただ、写真の部分は半分ほど焼け焦げ、透明ファイルも溶けかけてたんですよ。

わけがわからず、気味が悪くなってきたので家に駆け戻ったんです。
また庭から見ても、やはり鉄塔は島のすぐ近くでしたので、
ずっと自分が勘違いしてたんだろうと思わざるをえませんでした。
鉄は錆が浮いてて、新しいものには見えませんでしたし。
夕食のとき、家族に鉄塔に行った話をしました。
すると聞いていた父が、変な顔をして考え込んでいましたが、
「そういうことがあったんなら話しておこうか。あそこの家が空き家になってたのは、
 家族が夜逃げしたからなんだよ。お前が生まれる10年以上前の話だ。
 なんで逃げたかっていうと、そこの次男坊が人を殺したからだ。
 場所はこの県じゃなかったけどな。それで、農協に勤めていた
 そこの親父もこの土地に居づらくなって、一家で消えた」

「でも、見た写真は焦げてたけど、そんなに古い物じゃなかった気がしたけど」
「もうその手配書はないはずなんだ。殺人は時効になってるからな」
親父はこう続け、「何か嫌な感じがするなあ。わからんけど、
 母さんやお前が言ってることが本当なら、そこには近寄らないほうがいいな」
「鉄塔の位置が変わってるってのは、父さんどう思うの?」
「いやそれは、昔からそこにあったように思うけどな。
 お前の言うとおり、理由もなく鉄塔の移動なんかしないし、
 工事してればわかる」こんなやりとりをしました。
親父は最後にこうつけ加えました。
「今あの家に住んでるの、佐々木って人だってな。・・・確か、
 殺された人も佐々木だったような気がするな。よくある名字ではあるが」

それから3日後の夜中、すぐ近くでサイレンが鳴っているので目が覚めました。
家族はみな、すでに起きて外に出ているようでした。
ジャンパーをはおって後を追うと、あの島の家が燃えていました。
消防車が集まっていましたが、田んぼ中で車が入れる場所が少なく、
かなり遠くから水をかけているようでした。
夜空が赤くなって、鉄塔もその色に染まっていました。
鉄塔の、前に写真がつり下がっていたあたりに人がぶらさがっているように
見えたんです。それを並んで見ていた父親に言うと、
「人? わからんなあ。暗くて見えんよ。そう言われればそうかなあ」
母が「そんなことより、あんた佐々木さんが心配じゃないの」
と怒ったので、その話は終わりました。

で、どうなったかというと、家は全焼しましたが死傷者はなかったんです。
家の中には誰もおらず、家具類もほとんど空だったということでした。
お祖母さんの葬式以来ずっと学校を休んでいた佐々木さんは、火事のときには
もう一家して消えてたんです。その後の消息もまったくわかりません。
ただ・・・お祖母さんの骨壺が焼け跡から見つかったという話は
聞いたことがあります。噂なので本当かどうかはなんとも・・・
火事の原因は消防署の調査で、これははっきり漏電と決まりました。
火元が送電線が家とつながっている場所だったんです。
火花が、壁に塗ってあったタールに燃え移ったんだそうです。
鉄塔に人がいたように思ったのは自分の見間違いだったんでしょう。

家のあった場所は更地に戻され、今は島も削られて空き地になっています。
何度も行ってみましたが、土が焼けたせいか草がまばらに低く生えて、
虫とかの生き物がほとんどいないんです。
そのあたり一帯は再開発にかかるらしく、数年後には大きな病院が
建つという話です。家族は便利になると言って喜んでます。
鉄塔は火事の影響を受けて焼け焦げ、機能に支障はないようでしたが、
しばらくして離れたところに建て替えられました。新しく建ったのは、
自分が以前からそこに鉄塔があったと思っていた場所なんです。
送電線も曲がったりせず、きれいに伸びてつながってます。
・・・不思議なような、ぜんぶ合理的に説明がつくような話なんですが、
みなさんどう思われますか?






アーカイブ つけこまれる話

2021.02.12 (Fri)
去年の話だ、クリスマス直前。そのとき俺は専門学校の仲間といっしょに、
パン工場でケーキ造りのバイトしてたんだよ。
ベルトコンベアのラインに乗ってくるケーキに、サンタ人形とかのせてく仕事。
これがなんつーか、頭はヒマなんだけど、
ずっと手は動かし続けなくちゃならないんで、精神的に疲れるんだよ。
それを3日間やったら、イライラが最高潮に達してね。
他のやつらもそうだったと思うよ。そんな中で起きたことなんだ。
ケーキ自体は徹夜で造られ続けるんだけど、3日目のバイトが終わったのが、
シフトの関係で午後の9時過ぎ。工場は郊外にあって、
車で来たやつに2人同乗して街に戻ってったんだが、
途中ファミレスに寄って何か食ってこうってことになった。

バイト料は日払いで金は持ってたし。
で、仲間内にSっていう心霊系の話が好きなやつがいて、
こういうファミレスとかに来たときはきまってイタズラをする。
ほら、よく幽霊話で、3人で店に入ったのになぜか水のコップを出された、
ってのがあるだろ。あの逆をやろうとしたわけ。
どういうことかわかるかな。つまり、俺ら3人が4人掛けのテーブルに座って、
店員が水を3人分持ってきたら、「え、一人分足りないですよ。こいつの分」
とかって空のイスを指さすとかするんだよ。
悪趣味だろ。でもよ、深夜とかに入れば、
ヒマな店員に、面白い冗談だって喜ばれることもあるんだよ。
まあ軽いイタズラ以上の意図はなかったんだよ。

そこのファミレスは古いタイプだし、場所が郊外なのと、
夕食の時間を過ぎてたことでほとんど人がいなかった。
俺らは入ってって、外が見える窓の近くの奥に座った。
で、わざわざ空いてる席のイスもさげておいたんだ。
やがて店員がやってきて、見るからにバイトという女の子だった。
3人分のコップを置いて、事務的に、「注文がお決まりになりましたら、
 呼び鈴を押してください」そう言って立ち去りかけたときに、
Sが「あのー、水一個足りなんですけど。こいつのやつ」
いつもの調子でそう言った。ふり向いた女の子はけげんそうな顔をしてたけど、
「あっ、失礼しました。ただいまお持ちします」
あわててカウンターのほうに戻っていった。

「・・・あんまウケなかったな」
「真面目な子なんだろうな。水持ってくると思うか?」
「持ってくるんじゃね。水なんてただだし、
 いうこと聞いてりゃトラブルになんないから」
「反応がいまいちツマンなかったよな。あんまり怪談とか読まない子じゃね」
「もし水持ってきたら、どうする? こいつの分も注文するか?」
「まさか」こんな会話をしてたら、さっきの子がトレイに水一人分と、
それからなぜか小さいテイッシュの箱をのせて持ってきた。
して、空の席にコップを置くと、「どうぞお使い下さい」
そう言ってテイッシュの箱もいっしょにのせたんだ。俺らがきょとんとして、
「それ何?」って聞いたら、「こちらのお客様、泥だらけですし、

 お顔に血がついて・・・テイッシュが必要かと・・・」
こう言ったんだよ。まさかね、こう切り返されるとは思わなかったから、
俺らはかなりウケた。「いやー、こいつが見えるのか。実はこいつ3か月前に、
 バイクで田んぼに落ちて死んでるんだよ。
 だけどいくら言い聞かせてもそれがわかんないみたいで、
 いつもこうやって俺らの後をついてくるんだよ」
「あんたすげえよ、霊能者でも見えないって人もいたのに」
俺らの声が高くなったんで、店員の子は唇に指をあてて「しーっ」というポーズをし、
「私、幽霊の本けっこう読むんです。これって面白いアイデアですよね。
 でも、あんまりそういうことをすると、
 霊を呼び寄せてしまうって聞いたことがあります。つけこまれるっていうか」

「えー信じてるの? 幽霊なんていないよ」
「私はいると思います。霊はほとんどの人には見えないので、
 自分に関心を持ってくれる人につきまとうって言いますよ。
 特に心が空白になってるときが危ないって話です」
「ふーん」こんな話になって、それから俺らは各自注文して、
1時間くらいそのファミレスで過ごしてから帰ったんだよ。
翌日はクリスマスイブの前日で、これでバイトも終わりの4日目、
いよいよ追い込みで、シフトは夜9時から朝の6時まで。
これは眠気との戦いになる。4時間仕事して休憩をはさんでまた4時間って形。
Sが少し遅れてやってきて、なんだか調子が悪そうだったんだ。
「お前、顔色悪いんじゃないか」

「昨夜から肩がずーんと重い感じがしてほとんど寝てないんだ」
「ヘマすんなよ。買い取りになるぞ」
この買い取りというのは、流れ作業の途中でミスって、
ケーキを下に落としたりした場合は、
その分をバイト料から引かれるってこと。
原価だから安いけど、それでも時給の半分はいっちゃうね。
いちおう仲間内でSのことを気づかって、一番楽な作業に回した。
ウエハースの家をのせるのが楽なんだよ。ただ置くだけだから。
Sはうつらうつらしながらも、前半の作業はなんとかこなしたが、
休憩時間に工場の食堂で紙コップのコーヒーを飲んでる時に、
「作業中に、誰か俺の背中引っぱってるやつがいるだろ」って言い出したんだ。

「んなはずねえだろ。隣のラインとの間に棚があるし、ケーキが次々くるから、
 場所の移動なんてできないだろう」
「うーん、そうだよな。そうなんだけど・・・」
でね、仕事の後半、あと残り2時間ってあたりだったな。
そのくらいのときが一番つらいんだよ。
とにかく意識を殺して、頭を空っぽにして耐えるだけ・・・
あっ、これってファミレスの子が言ってた「心が空白」ってことなんかな。
本職が生クリームを盛ったケーキが次々に流れてきて、目の前は白一色。
隣で仕事してたSが目をつむりだしたんで、俺が注意しようとしたとき、
「何だよ、やめろよさっきから。引っぱるな!」
そう叫んで体をねじり、後ろにひじ打ちをするような動作をしたんだ。

「おい! 誰もいないぞ」俺がそう言ったとき、
確かに見たんだよ。コンベアのSの目の前にあったケーキがぼこっとへこむのを。
それも5本の指を広げた手の形に。
その直後、Sが昏倒してそのへこんだケーキに顔をつっこんだ。
だから手型のついたケーキは残ってないんだよ。これはちょっと残念。
霊のいる証拠になったのになあ。それはともかく、
顔をクリームまみれにして床に倒れたSの意識は回復せず、
救急車を呼ぶ騒ぎになったんだよ。病院では、単純作業の繰り返しによる催眠状態、
それと疲労って診断だったんだが、あれ以来ずっと入院が続いてる。
それも精神科のほうに転院して。・・・まあ、こんな話。
つけこまれるってのは確かにあるみたいだ。注意したほうがいいよ。

これケーキです ハロウィンケーキは日本では流行らないんじゃないかな





太陽系内の生命探査

2021.02.11 (Thu)
sssd (7)

中国の火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」が日、火星の周回軌道に
無事到達したと、国営メディアが報じた。同国の野心的な宇宙計画が、
また一歩前へ進んだ形だ。

国営新華社通信は「中国の天問1号は、地球からの7か月近い旅を経て、
10日に火星の周回軌道に無事入った」と伝えた。同機は昨年7月、
同国南部から打ち上げられていた。
(AFP)

今回はこういうお題でいきます。科学ニュースから、天文学、
宇宙生物学的な内容になります。自分は占星術をやっていて、
宇宙関係のニュースはつねにチェックをかかしませんが、
この手の話題が苦手な方は、スルーされてください。

さて、「ハビタブルゾーン Habitable zone」という言葉があります。
当ブログでも何度か取り上げてきましたが、「生命居住可能領域」と
翻訳され、「恒星の周辺において、十分な大気圧がある環境下で、
惑星の表面に液体の水が存在できる範囲」という意味で使われます。
つまり、ハビタブルゾーン内には地球型の生命が存在するかもしれない。

中国、天問1号による火星画像
sssd (1)

ここで、地球型の生命という部分に注意してください。地球生命、
例えば人間は、体の60%が水分とも言われます。また、
地球生命は原始の海の中で発生し、進化して陸上にも上がってきた。
ですから、水は絶対に必要なわけですが、他の星には、水分を
必要としない、非地球型の生命がいる可能性は否定できません。

窒素やメタンを利用する生命体、あるいはSFチックですが、
体がケイ素である岩石生命体などがいるのかも。さて、
ある惑星に液体の水が存在するための条件は、大きく2つあると
考えられます。一つは、その系の恒星からの距離。

sssd (2)

この意味はおわかりでしょう。単純な話、地球がもし、もっと太陽に
近ければ、表面温度が上がり、液体の水は蒸発してしまいますよね。
今よりもほんの数%、距離が太陽に近いだけで、少しずつ
海水が蒸発して、最終的に海は消滅してしまいます。

逆に、もし10%ほど太陽から遠ければ、海は完全に凍りついて    
しまいます。表面だけならまだしも、全部が氷の中で生命が
存在できるとは考えにくいですよね。偶然だと思いますが、
地球は生命が発生し進化していけるちょうどいい距離、
太陽から離れているということになります。

sssd (1)

次、2つめの条件はおわかりでしょうか。その星の大きさ(質量)
です。これは重力の大きさと言い換えてもいいでしょう。
例えば火星ですが、太陽からの距離的には、ハビタブルゾーン
ぎりぎりのところにある星です。

ですが、質量が地球の10分の1程度でしかないため、重力が弱く、
大気を保持することが難しいんです。きわめて薄い大気しか
ありません。大気が薄い=気圧が低い ということになりますが、
気圧が低いほど液体の沸点が下がるのはご承知でしょう。
例えば、富士山頂の気圧は気圧は630hPa程度で、地上の約6割。

気圧と沸点の関係
sssd (6)

それだと、水の沸点は90℃ほどになります。ですから、
富士山頂に電気窯を持っていってお米を炊いても、
芯の残ったものができあがってしまいます。かつて、火星には
海があったと考える研究者は多いですが、この低い気圧により
蒸発してしまったと見ています。

さらに、大気がないと、有害な紫外線や宇宙線の類が地表に      
直接降り注ぎ、大きなダメージを与えます。火星への植民計画も
ありますが、紫外線はともかく、宇宙線対策は難しいんですよね。
逆に、地球の内側の星はどうかというと、金星は大きさは
地球とほぼ同じですが、太陽からの熱量、光量が大きく、

エンケラドス
sssd (3)

二酸化炭素を主成分とする厚い大気で、もうれつな温室効果を
起こしており、地表面は400℃にも達するとみられています。
当然、液体の水は存在できません。ですから、もし火星に生命が
存在するなら地下、金星だったら温度が下がる二酸化炭素の
雲の中だろうと考えられます。

厳しいですね。太陽系には地球以外に生命がいないのか。
最近は、金星、火星以外に生命の存在を探ろうとする流れが
出てきています。でも、太陽に一番近い水星は論外です。むしろ
遠いほうの、木星や土星の衛星が候補にあがってきてるんです。

エウロパ


これらの星は超低温であるのは間違いないんですが、惑星から
強い潮汐力を受けています。地球でも、月があるため、
月に近い面と遠い面では重力の大きさが違い、わずかですが地球を
変形させています(これは月側から見ても同じ)。

で、巨大質量を持った木星や土星の衛星は、強い潮汐力を受けて
氷が砕かれ、液体の水が存在する可能性があるんですね。
木星から内側2番めの軌道にある衛星エウロパは、
表面の氷の層が数km、その下には数十kmの液体の海が
あるのではないかと考えられます。

一見、地球にそっくりなタイタン
sssd (4)

また、土星の衛星も注目の的で、月の7分の1と小さい、
エンケラドスという衛星では、土星探査機カッシーニにより、
氷のすき間から水が吹き出しているのが観測されました。また、
最大の衛星タイタンには、液体メタンの河や湖があるようです。
メタンの沸点は-160℃ほどですね。もしかしたらそこには、
非地球型のメタン生物が・・・

さてさて、ということで、ハビタブルゾーンの話から始まり
ましたが、それを外れたところにも生命の可能性があります。
無理くりという気もしないわけではありませんが、最近の
宇宙生物学では、そういったことも研究されてるんです。
では、今回はこのへんで。




アーカイブ 取りにくる話

2021.02.11 (Thu)
あ、どうも。今、大学の2年生なんです。3年前、予備校に通ってた
ときの話をします。当時僕は浪人生でして、午前中は予備校で授業、
帰ってきてからも夜中まで勉強で、すごい味気ない生活を送ってました。
で、その日も2階の自分の部屋でずっと勉強してて、夜の9時ころですね。
僕の部屋のドアを母親がノックしたんで出てみると、「〇〇伯父さんが来てるよ。
あいさつして」って言われました。お客さんが来てるのはわかってましたが、
ラッキーって思いましたね。伯父さんは父親の年の離れた兄で、
60歳をすぎてるんですが、何か新興宗教の幹部のようなことをしていて、
とにかくお金持ちなんです。僕が子どものときからよく家に来て、
お小遣いをもらえたんですよ。普通のときで1万円、
お年玉だと5万円でした。ただ、このお金、子どもが大金を持っても

しょうがないだろうということで、母親に取り上げられ、
強制的に貯金させられてしまったんですけどね。
6年生になったころ、母親がいないときに伯父さんにそのことを愚痴ると、
それからは高価なオモチャや腕時計、珍しい果物なんかを持ってきて
くれたんです。で、僕が高校生になると、またお小遣いが復活しまして。
だから、そのときも もらえるだろうと思ったんです。
居間に顔を出すと、伯父さんはビールを飲みながら父と話し込んで
いましたが、僕のほうを見てにこにこ笑い、
「どうだ、勉強してるかい。これお小遣い」と封筒を渡してよこしました。
父はちょっと苦い顔をしてました。それで伯父さんは、
「今ね、お父さんと話してたとこだけど、明日、

 ちょっとした仕事を頼まれてくれないかと思ってね」
こういう話だったんです。次の日は平日で予備校があったんで、そのことを言うと、
「なに、1日くらい大丈夫だろう。大学のほうは必ず合格するから」
まあ、模試の日まではだいぶあったんで、「じゃあ、やります」
って答えました。「そうか、それはありがたい」伯父さんは喜んだんですが、
父が横から口をはさみ、「本当に危険なことはないんだろうね」と、
念を押すように言いました。「大丈夫、大丈夫、相手は人間には絶対手は出せない」
「どういうことをするんですか?」僕が聞くと、伯父さんは、
「なあに、朝の9時から4時くらいまで家にいて、自分の部屋で勉強しててくれれば
 いいんだよ。そのうちに何人かが訪ねてくるだろうから、
 家には入れられません、って追い返してくれるだけでいい。どうだ、簡単だろう」

こういう話でしたが、まだ、わけがわからなかったんです。
けげんな顔をしていると、伯父さんは「明日の4時までね、この家で
 ある物をあずかってもらいたいんだよ。ほらこれだ」
そう言ってバッグから出したのは、10cm四方くらいの木の箱。
蓋を開けると、中にはゴルフボールより少し大きいくらいの白い玉が入ってました。
「これね、明日の4時までには熟すから、そうしたら誰も手出しできなくなる。
 だから取り返しに来ると思うんだが、川のものはお日様が出てる時間しか、
 人間の姿はとれない。それに、さっきも言ったように、
 やつらは人間様には手出しはできないから、危険なことは一切ないんだ」
・・・「熟す」とか「川のもの」という言葉は意味不明でしたが、
僕がやることはなんとなくわかりました。明日の日中ずっと家にいて、

訪ねてくるものがいたら追い返せばいい。でも、いくつか疑問もあったんで、
そのことを聞いてみました。「あの、この玉ですね、どうしてうちで保管するんです?
 伯父さんのところの、あの立派な教団の建物じゃなく」そしたら伯父さんは、
「ああ、それは、教団の職員の中にうかつな者がおってね、一度あいつらを
 中に招き入れてしまったことがあるんだ。やつらは、人間が許可しないと
 建物の中には入れない。けど1回でも入ったら、それからは好きにできる。
 だから、君の家で保管しててくれるようお願いするんだよ」
「え、招かないと入れないってどういうことですか?」 「うん、この家の玄関、
 しきいってあるだろ。やつらは勝手にあれをまたぐことができない。
 その家の人に入ってもいいって言われて、やっとそれができる。あとね、
 明日は私は別の用事があっていっしょにいれないが、君は力があるから心配ないよ」

まあ、こんな話だったんです。玉の入った箱はうちの和室の床の間に置かれ、
伯父さんが、夕方の5時ころに取りにくることになりました。
あと、もらった封筒は、自分の部屋に戻ってから開けてみると、
5万円入ってたんです。翌日になり、父も母も出勤しました。父はやはり
心配そうで「もし何かあったら、すぐに父さんか母さんのスマホにかけてこいよ」
そう言って出かけていったんです。でね、僕は、何が起きるんだろうと思って、
ちょっとわくわくするところもあったんです。9時になりました。
部屋で勉強してたんですが、特に何事も起きず、12時近くなって、
何か冷蔵庫から出して食べようかと思ってたとき、玄関のチャイムが鳴ったんです。
「は~い」と出ていくと、玄関の曇りガラスの戸に小さい赤い影が映ってました。
開けると、小学校前、4、5歳くらいの女の子がいました。

お祭りでもないのに、真っ赤な浴衣を着てたんです。僕が、「どうしたの?」
って聞くと、玄関の前に立ち止まったまま「あのね、うちの猫がいなくなっちゃったの。
 だから、来てないかと思って」こう言ったんです。それで僕は、
「猫はいないなあ。戸も窓も閉めてるから、うちには入ってきてないよ」
すると女の子は残念そうに「そうですか・・・」それから下を見て、
「こっから中に入ってもいい?」と聞いてきたんで、「そらきたな」と思って、
「あ、ダメだよ。ごめんね、他を探して」そう言ってドアを閉めたんです。
女の子の赤い影はしばらく玄関の前にいましたが、いつのまにかいなくなりました。
で、僕はカップラーメンを食べ、次のお客さんが来たのが2時過ぎでした。
チャイムが鳴り玄関を開けると、作業服を来た背の高い男の人が立ってました。
「すみません、ガスのメーターの検針に来ました。中に入って確認してもいいですか」

でもね、僕のうちのガスのメーターは外にあるんです。それを知ってたので、
「外ですよ、裏のほう」そう言ったら、男の人は悔しそうな顔になり、
「あ、そうでしたか。じゃあ、ガス漏れ検知したいんですが、中に入っていいですか」
こうきたんで、「いや、僕じゃわからないので、家族がいるときに来てください」
そう言って、ピシャンと戸を閉めたんです。で、次が来たのが3時半ころですね。
やはりチャイムが鳴ったので玄関に行って戸を開けると、黒紋付を着た
背の低い太ったおじいさんで、細い鼻ヒゲが顔の両脇に飛び出してました。
おじいさんは太い声で「単刀直入に言うが、あんたの家にある玉を渡してもらいたい。
 なに、タダでとは言わん。取引をしないか」このときには僕にも余裕ができてて、
「じゃあ、玉を渡すかわりに何をくれるんです?」と聞いてみたんです。
そしたらおじいさんは「そうだなあ、アサリかシジミをザルに一杯分ならどうだ」

こう言ったんで、思わず笑い出してしまいました。
「いえ、いいです。シジミもアサリも間にあってますから」そう答えて、
強く戸を閉めたんです。で、もう4時近くなったので、「簡単だったな、
もう来ないだろう」と思ってたんですが、すぐまたチャイムが鳴ったんです。
下に降りて玄関を開けると、これまで来た3人、ちょびヒゲのおじいさん、
背の高い作業服の偽のガス検針員、赤い浴衣の女の子がそろって、
うちの玄関前のせまい場所に土下座していたんです。
おじいさんが顔を上げ、「お願いです。もう日が暮れますから、どうかどうか、
 そちらで預かっておられる玉を私どもに渡していただけませんでしょうか」
必死の声で頼まれて、少しかわいそうな気がしてきたんです。
それで「ごめんなさい、できません!」大きな声で言って玄関を閉めました。

やがて時間は5時を過ぎ、伯父さんが家に来ました。僕が許可しなくても
入ってこれたので、本物の伯父さんです。「ごくろうさんだったね、
 玉は無事だったかい」そう聞かれたんで、和室に案内しました。
ちゃんとあるかどうか、何度も確かめてたんです。伯父さんは箱を手にとって
開けると、前の日に見た白い玉は、ぼうっと朱色に染まって、
すごくきれいだったんです。「いや、よく熟した。見事、見事」そのうちに両親も
帰ってきて、伯父さんとお酒を飲み、伯父さんは箱を持って10時ころに
帰っていきました。そのときにまた封筒をもらい、やっぱり5万円入ってたんです。
だいたいこれで話は終わりなんですが、翌日、予備校に行くとき、家から少し離れた
場所の側溝の蓋が外れてて、中をのぞくと魚が3匹、死んで浮いてたんです。
ヒゲのある大きいナマズ、細長い銀色の魚、それと小さい赤い金魚でした。






人工幽霊の作り方

2021.02.11 (Thu)
アーカイブ597

ddd (1)

今回はこういうお題でいきます。みなさんはお化け屋敷に
行かれたことがあるでしょうか。自分はオカルト研究が趣味ですので、
日本各地のお化け屋敷、チャンスがあれば外国のお化け屋敷も
訪問しています。全部で20ヶ所くらいにはなるんじゃないかな。

お化け屋敷って、ローテクからハイテクまでさまざまです。
まず興行形態として、ウォークスルー型、ライド型、シアター型が
あります。ウォークスルー型が一番古典的で、自分の足で、
迷路のようになった暗い細い道を進んでいく。昔は墓場などが
舞台になってるものが多かったんですが、今は廃病院などもあります。

ライド型はトロッコのような小型の乗り物に乗って進んでいくもので、
ディズニーランドの「ホーンテッドマンション」が有名です。
ただこれ、あんまり怖くはないんですよね。シアター型は、
客全員が広い部屋に入って、映像を観たり音声を聴いたりする。



最もローテクなのは、通っていく道に人形が置いてあって、
ところどころで人が操作して、上から幽霊が下がってきたり、
井戸から出てきたりする。これは機械じかけの場合もあります。
人間の従業員が幽霊の扮装をして出てくるものもありますが、

でもこれ、客が幽霊役の人をケガさせたり、逆に客が驚いて転んで
ケガをしたりなど、訴訟に発展するケースがあって難しいんです。
ハイテクの場合は、客がヘッドマウントディスプレィを装着して
何もない空間を歩いていくなど。東京の江東区にある施設が
よく知られています。(画像下)

VRのお化け屋敷
ddd (2)

さて、人工で幽霊を作り出すことができるか。一番簡単なのは、
幽霊の姿を見せる、怖い音を聞かせるという形です。
下の動画は、寝ている自分のガールフレンドにホログラム映像を
見せるイタズラで、3分かからないのでぜひごらんください。
網のようになった透けるスクリーンにホログラムを写しています。



たしかに怖いと思いますが、後でケンカになったりしなかったんで
しょうか。音の場合は簡単ですよね。CDなどに録音しておいたものを
聞かせればいいわけです。車に乗っているときにカーオーディオ
から流すなどの手も使えるでしょう。

2009年、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジの研究チームが、
建築家と協力して「幽霊の出る部屋」を科学的に設計しました。
お化け屋敷とは違って、怖いものはいっさい置いてないんですが、
そのかわりランダムに電磁場(EMF)や低周波音波を発生させる。
もちろん人体に影響のないレベルで、実際に音が聞こえたり

ロンドン大学の「幽霊が出る部屋」実験
ddd (3)

するわけではありません。隠されたスピーカーからは、低周波音波が
流れる。これは、幽霊が出るという噂のあるウェスト・ミッドランズ州の
コベントリー大聖堂で計測されたものに近い周波数です。
同時に他のスピーカーからは、超常的な感覚を刺激する実験で
用いられる電磁周波数を発生させる音波が流されました

結果、幽霊のようなものに遭遇したと答える被験者が結構いたんです。
最近、人間にも渡り鳥のように地磁気を感じる能力が残っている
という研究が報告されており、第六感の正体はこれではないかと
言われたりします。ただ、人間のこの能力は退化しており、
感じることはできても、何かに利用するのは難しいようです。

東京大学の地磁気実験


もう一つ、2014年、スイスのローザンヌ工科大学の研究チームが
人工幽霊の実験を行っています。ます被験者に目隠しをさせ、
自分の体の前にある機械のアームをタッチする。すると、その動きと
完全に同調して自分の背中が別の機械にタッチされる。それを何度も
繰り返す。これだけなら幽霊を感じることはありません。

ところがこの装置、ランダムに背中を押す動きが遅れます。
するとそのとき、実験に加わった12人の被験者全員が幽霊の存在を感じ、
そのうちの2人は恐怖のあまり実験の中止を叫んだということです。
うーん、でもこれ、お化け屋敷に応用するのは難しそうです。

さて、人間の脳で恐怖を感じる中枢は扁桃体と言われ、
様々な精神疾患において扁桃体の機能異常が報告されています。
ただ、幽霊を感じるという場合は、これとは別に、大脳皮質の一部、
島皮質、前頭皮質、および側頭頭頂皮質が関係していることが
わかってきました。これらは空間や体感認識に関係する部分です。

ローザンヌ工科大学の実験
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つまり、空間認識に異常が発生している場合、なぜなのか理由が
わからず、脳はその状況になんとか説明をつけようとします。
そこで持ち出されるのが幽霊なんですね。ローザンヌ工科大学の
実験はこのあたりの解明をねらったものでしょう。

ですから、必ずしも恐怖が先になって幽霊を見たと感じるわけでは
ないんです。むしろ体の異常感覚の説明をつけるために、
物理現象の外にある幽霊を引っぱり出してしまう。
金縛り(睡眠麻痺)と
同じメカニズムです。このあたり、自分は面白いなあと思います。

さてさて、将来的には、お化け屋敷に行った人はベッドに寝て、
ヘッドギアをつけて電気刺激などを受け、それによって幽霊を見たり、
恐怖を感じたりするようになるんでしょうか。それがはたして
娯楽として成り立つのかは難しいところです。では、今回はこのへんで。

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西洋4大精霊について

2021.02.10 (Wed)
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『指輪物語』のバルログ

今回はこういうお題でいきます。オカルト論です。さて、
どっから書いていきましょうか。話は前7~5世紀ころの
古代ギリシアに遡ります。この頃、ギリシアの哲人たちの間では
「アルケー 万物の根源」についての議論が盛んでした。
すべての物質のおおもとは何であるか、ということです。

あるものは、それは火であると言い、あるものは空気であると
言いました。またデモクリトスは、すべてのものには それ以上
分割できない最小の単位があるとし「アトム 原子」と名づけます。
今から2500年も前の話ということを考えれば、
じつに鋭い着想だと思います。

エンペドクレス
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そんな中、哲学者であり、医師や政治家でもあったエンペドクレスは
万物は4大元素の混合からできていると説きました。火、水、土、空気
の4つの「リゾーマタ」が4大元素です。このことが、ずっと後世まで
影響を与え続けてきたんですね。また、アリストテレスは、
物質の状態である「熱・冷・湿・乾」を4大元素としました。

ちなみに、古代中国は、「陰陽五行」という言葉があるとおり、
5大元素説をとります。木、火、土、金、水ですね。
この手の古代の発想は似ていて当然ではありますが、中国の場合、
空気がなく、そのかわり金(金属)と木が加えられています。

パラケルスス


さて、古代ギリシア・ローマ時代の叡智は、中世、キリスト教が
思想界を支配する暗黒時代にいったん失われてしまいますが、
中東などのオリエント世界には残っていて、深く研究されていました。
それが11世紀から始まった十字軍遠征により再発見されます。
と、こんなことを書いていると、それだけで終わってしまいます。

どんどん進めます。4大元素説は民間信仰に取り入れられ、それぞれの
属性を司る精霊がいるとされました。この考えを発展させたのが、
16世紀の偉大な医師、錬金術師でもあったパラケルススです。
彼は著作の中で、水の精霊をニンフ、火の精霊をサラマンダー、
空気(風)の精霊をシルフ、土(地)の精霊をピグミーとしました。

古書に登場するサラマンダー
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ただ、ヨーロッパは多くの国に分かれており、それぞれの精霊は
国ごとになじみの深いものに変えられていきます。例えば、
ニンフがウンディーネ、ピグミーがノームといった形です。
ここからは、それぞれについてごく簡単に説明していきます。

まずはサラマンダー、火トカゲと訳されることが多いですが、
サンショウウオのことです。この精霊は、火にかけても死なず、
新たに生まれ変わることができるとされました。これについては、
一部のサンショウウオは、焚火や山火事などのとき、湿った地面に
潜り表面の粘液で火傷を防ぐ性質があるため、

ウンディーネ
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まるで火の中から這い出たように見えることからきているという
説があります。サンショウウオは神秘的な生物で、両生類のため、
水中でも陸上でも姿を変化させて生きることができます。
これが古代の人には不思議だったんでしょうね。火の精霊はこれ以外、
フェニックス、バルログ、イスラムのイフリートなどがいます。

次に水の精、一般的なウンディーネについて。若い、美しい女性の
姿をとるとされます。パラケルススの本では、ウンディーネには
魂がないが、人間の男性と結婚すると魂を得ることができる。
ただし、男の気が変わり、愛が裏切られると水の泡に戻ってしまう。

ローレライ像
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以前も書きましたが、アンデルセンの童話『人魚姫』は、
この話を下敷きにしています。あと、水の精霊としては
ローレライも有名ですね。ドイツの説話で、ライン川の河中にある
島に半裸の若い娘がいて、美しい歌声で船人を誘惑し溺れさせる。
ハイネ詩・ジルヘル作曲の歌曲がよく知られています。

土の精はノーム。小人の種族で一人ではありません。身長は
15cm程度から人間の子どもくらいと、さまざまな説があります。
もともとヨーロッパには、靴屋のお手伝い小人とか庭小人の
伝承があり、ゴブリンやドワーフとの関係も指摘されますね。

7人の小人
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「白雪姫」に登場する7人の小人は、ドワーフと言われることも
ありますが、それにしては小さいので、やはりノームが
いいでしょう。土の精ですので、金鉱など地中の鉱物のありかを
知っていて、鍛冶仕事が得意とされます。ですから、自分の家の
庭に小人がいるのは縁起がいい。

最後が空気(風)の精で、シルフ、シルフィードとも言います。
これもパラケルススによると、ふだんは目に見えないが、
人間の姿をとるときは、ほっそりした少女の姿になります。
ちなみに、ルネサンス期の絵画を見ればわかりますが、
女性はどっちかというと豊満なほうが美しいとされてました。

東風にのってやってきたメアリー・ポピンズは風の精?
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シルフィードにはあまり具体的な逸話がないんですが、
シェークスピアの戯曲『テンペスト(あらし)』に出てくる妖精
エアリアルがシルフィードと同一とも言われます。
やはり空気の精ですので、いまいちつかみどころがない。

さてさて、ということで、西洋の4大精霊について見てきました。
みなさんの中には、もしかして壮大なファンタジー物語を
書いてやろうという方もおられるかもしれません。
何かの参考になれば。では、今回はこのへんで。





マンションの地下室の話

2021.02.10 (Wed)
三田ともうします。25歳、ある会社で事務をやっています。
2年前に結婚して、夫は3つ年上の28歳、広告デザインの会社に
デザイナーとして勤めてました。子どもはいません。それで、
今年の4月に、2部屋の賃貸マンションに転居したんです。
理由は、夫の職場に近く、私も会社に少し近くなるから。
それと都内なのに、そこまで家賃が高くなかったからです。
そんなに長くいるつもりはありませんでした。子どもが生まれて
2年か3年くらい、保育園に入る頃まで。で、今、事故物件というのが
評判になってますよね。殺人や自殺があった部屋、病死でも
死後長期間発見されなかった部屋とか。そこは気になったので、
不動産屋さんには確認を取りました。そしたら、

その部屋は・・・心理的瑕疵物件って言うらしいですけど、
そういうものではない。直前の入居者は普通に引っ越ししていったし、
それ以前も部屋で亡くなった人はいない。それに、私たちの
部屋だけが安いんじゃなく、マンション全体が同じだと。
それはそうですよね、だって間取りも築年数も同じなんだから。
それで、格安物件が見つかってよかったなあと思ってたんです。
特に何事もなく2ヶ月が過ぎ、私も夫も、職場に近くなった
ぶんだけ朝、寝てられるって喜んでました。
私は定時で帰ってきますが、夫の仕事はハードで、12時過ぎまで
会社にいることも珍しくなかったんです。マンションの他の住人は
私たちと同じような、子どものいない若い人が多かったです。

都会ですから深いつき合いはありませんが、両隣の方とは、
顔を合わせればあいさつするようになりました。
それで、6月の夜です。そろそろ暑くなってきたので、夫が夜に
エアコンをつけようと言い出し、私が冷え性気味でエアコン嫌いなので、
ちょっと言い合いになりました。でも、すぐ仲直りしてお酒を
少し飲んで寝たんです。で、私はあんまり眠りが深いほうではなく、
夜中の1時過ぎに目を覚ましました。じっとり汗をかいてて、
あ、夫の言ったとおりエアコンを軽くかけとけばよかったかなと
思ったんですが、ダブルベッドの隣に夫がいませんでした。
トイレかなと考えて寝なおそうとしたんですが、夫は20分を過ぎても
戻ってきませんでした。おかしいなあと、トイレまで見に行ったら

いなかったんです。外出したんだろうか、でも、着替えは寝室に
あるので、パジャマから着替えてればそのときに私も気がつくはず。
それからさらに15分たって、やっと夫が戻ってきました。
パジャマのままでした。「どこ行ってたの」そう聞いたら、
最初、ベッドの横に立ったまま何も答えなかったので、も一度聞いたら、
「地下室」とぼそっと言ったんです。その地下室というのは、
マンションの地下の駐車場脇にあるコンクリ打ちっぱなしのスペースで
かなりの広さがあります。住人の共同物置にしてよいということでしたが、
わざわざエレベーターでそこに荷物を運び込む人は少なかったんです。
「地下室? 何しに」そしたら、「・・・いや、なんとなく」
納得できませんでしたが、翌日も早かったので、そのときはそれで

終わったんです。で、翌日ですね、夜に玄関脇に詰めている警備員さんに
聞いてみたんです。「昨夜、夜中に外に出た方っていますか?」って。
はい、そこのマンションは、夜間だけ警備員さんが常駐してるんです。
その点でも安心だと思っていたんですが。警備員さんの答えは、
「いや、いなかったはずですよ」でした。夫の様子はそれまでと
変わりはないように思いました。ただ・・・2つおかしなことが
あったんです。一つは、暑がりだったのに、その夜をさかいにエアコンを
つけようって言わなくなったことです。不思議でした。だんだん暑く
なってきたのに、汗をかかず、洗濯のとき見てもシャツがあまり汚れて
ないんです。もう一つは、風呂好きで長湯をするタイプだったのに、
シャワーだけで済ませることが多くなって。でも、それ以外は

普通だったので、深くは気にしませんでした。え、食事ですか?
言われてみれば、いつもより少食だったように思います・・・
それで、3日後、2回めがあったんです。あ、いえ、もしかしたら
私が眠っていて気づかなかっただけかもしれませんが、3日後の夜中、
やはり夜中に目が覚め、夫がいなかったんです。「また地下室?
 でも、何のために」よっぽど地下室まで探しにいこうとかと
思ったんですが、夜中でしたから。待っていると、20分くらいで
戻ってきたので、リビングの電気をつけ、入ってきた夫に「何してたの?」
って強めの口調で聞いたんです。そしたら夫はぼうっとした様子で、
手に持っていた製図用のペンを私に見せ「今やってるデザインのアイデアを
 廊下をうろうろしながら考えてたんだ。で、地下室まで行って戻ってきた

 んだよ」こう答えました。それを聞いて、そのときは、夫は
私と違ってクリエイティブな仕事なんだからと考え、少し反省したんです。
それから、私が気づいただけで2度、夫は夜中に地下室に出ていきました。
やっぱりおかしいですよね。仕事が早く終わった日、地下室に
入ってみたんです。かなり広く、マンションの2部屋分はあって、
置かれているのはパイプ椅子や机、いくつかのダンボールなどで
がらんとしてました。ああ、これなら思う存分歩き回れるかと
思ったんですが・・・ それからまた3日して、夜中、夫が寝室を
出ていく音で目が覚めました。それで、音をたてないよう、こっそりと
後をつけたんです。夫が玄関を出てからしばらくしてドアを開けました。
もう廊下には夫の背中は見えず、エレベーターに乗ったんだろうと

思いました。2つあるエレベーターは深夜は一つしか動いてないので、
私たちの部屋のある階に戻ってくるのを待ち、乗ってBのボタンを
押しました。降りると駐車場に出るんです。で、地下室のほうを見たら、
駐車場に向いた窓が真っ暗だったんです。いないんだろうか、それとも
暗い中を歩き回っているのか。怖くなってきたんですが、意を決して
地下室のドアを開けました。鍵がかかってることは それまでなかったです。
入ってすぐの壁に照明のスイッチがあるので、それを全部押し、
中が蛍光灯の青白い光の色になり・・・一番遠いところの壁に向かっている
夫の姿が見えました。「〇〇君!」と夫の名前を呼びました。
そしたら、ふりむ向かなかったので、かけ寄って肩をさわりました。
たしかにさわったんです。でも、その瞬間、夫の姿が消えました。

かき消すようにいなくなったんです。カランと音がして床に何かが
落ちました。我に返って拾い上げると、夫の製図用のペンだったんです。
そういえば、前もこれを持って夜中に出ていた・・・
パニックになりながら、夫が向かっていた壁を見ると、なにやら
小さい字がたくさん書かれてたんです。この間、地下室に入ったときに
気づかなかった、普通に書くよりも小さい字で壁にびっしり、
「死なない 死なない 死なない 死なない 死なない 死なない」と。
地下室中を走り回り、ダンボールを開けたりしていると、
物音を聞きつけたのか、警備員さんが様子を見に来てくれたんです。
「夫がここにいたんです!」そう叫びました。警備員さんは事情が
飲み込めない様子で、「ここは警備員室から見えますが、

 一度も明かりはついてません。それと、ご主人は存じておりますが、
 外には出ていってませんよ。というか、私が配置についてから、
 帰ってこられてもいないはずです」 「!?」その日、夫が帰宅したのが
10時ころで、警備員さんは玄関にいたはずです。事情を話し、
駐車場一帯を探しましたが、誰もいませんでした。夫も私も電車通勤で、
そこには車もありません。もうわけがわかりませんでした。
「いったん部屋に戻りましょう」警備員さんが部屋まで送ってくれ、
部屋の中にも夫の姿はありませんでした。スマホを探しました。
私のはありましたが、夫のはなし。そんなはずは・・・
そのとき、私のスマホに着信が入ってるのに気がつきました。
夫の会社からです。かけ直すとすぐに出て、夫の直属の上司の方でした。

「奥さんですか。何度も連絡したんですが。今、〇〇病院にいます。
 仮眠室で三田君が床に倒れていて、目を覚まさないので救急車で
 ここに搬送したんです。今、緊急で処置を受けています。
 来られますか? すぐに来てください」タクシーで駆けつけました。
会社の方が大勢来られていて、病室に案内されたときには、夫はもう
生きていませんでした。・・・後で医師に説明されたのは、
突発的な心臓発作で、それまでに前兆があったのではないかということ。
じゃあ、私が見た帰宅した夫の姿は? あの地下室で見た夫は!?
何もかも、もうわけがわからなかったです。
・・・夫が亡くなって、あれから半年が過ぎました。あの頃の
ことを思い出しては、後悔することばかりなんです。

キャプチャ

 


ゴミのオカルト

2021.02.09 (Tue)
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今回はこういうお題でいきます。オカルト論です。
さて、ゴミにはどんなオカルトがあるでしょうか。ゴミがある場所
というのは単純に汚いですよね。そこから目をそむけたくなります。
つまり、見た人の心に嫌な影を落とすわけです。

ゴミ自体もそうですが、ゴミがあることによって、人の心の中に
悪いものが溜まります。そしてそれが怪異を呼び込む。
これって、神道における穢れの概念ですよね。穢れたものは、
祓い清めなくてはなりません。逆に言えば、掃除をすることは
自分の心を清めることでもあるわけです。

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学校で校内暴力が盛んだった頃、蹴られて破れた壁なんかを
そのままにしておくと、ますます暴力行為がエスカレートするので、
こまめに修理したり、新しいものに変えるのがよいと言われました。
また、これは賛否両論あるんですが、生徒にトイレの便器掃除を
させることが心の教育につながる、という活動があります。

外国人があの様子を見ればびっくりします。そもそもほとんどの
国では、トイレどころか生徒が教室の掃除をすることもありませんし、
給食の配膳なんかもないですから。で、日本のそういった特別活動を
見た外国人の感想も、やはり賛否両論に分かれるんです。

ゴミ屋敷
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企業でも、社長が社屋のトイレ掃除をするというところもあり、
カーグッズ会社のイエローハットの創業社長などが有名です。
どうなんでしょう、社長がトイレ掃除をすることで業績がよくなる
わけではないでしょうが、社員からは親しみやすくなる・・・のかな。
あ、話題がゴミとは違う方向にいってますね。

さて、穢れた場所は怪談の舞台となることが多く、例えばゴミ屋敷、
ゴミ収集所、スクラップ工場など。自分も、「ゴミ屋敷の清掃の話」
「見なきゃよかった」などという話を書いています。
下にリンクを貼っておきますので、よろしければご覧ください。

『ゴミ屋敷の清掃の話』  『見なきゃよかった』

ゴミ収集所
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あと、「餓鬼」という話もこれ系です。餓鬼は不浄な場所にしか
住めないので、自分の部屋や会社などで餓鬼が見えるようになったら、
遠からずよくない出来事が起きる。やはり、こまめに定期的な
掃除を心がけるようにしないといけません。

餓鬼
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ゴミ屋敷ができるには、さまざまな心理的な要因があります。
ものがもったいなくて捨てられない。そういう人は、わざわざ
別の場所から、自分のものではないゴミを拾ってきたりもします。
また、一人暮らしで孤独感が強く、その心のすき間をゴミで
埋めているなどのケースもあるようです。

この問題は、警察に通報しても対処が難しいんですよね。自分とこの
敷地に置いてるかぎりは犯罪にはなりません。結局は、そこの
自治体が対処にあたることが多いんです。で、大量のゴミがあれば
虫が発生します。掃除に入った業者が、積み重なったゴミ袋の下に
ウジなどの虫がたくさんいるのを発見することになります。

こういう人怖があります。ある男性が妻に失踪され、そのショックから
何もできなくなり、家がゴミ屋敷になった。男性はそこで数年暮らした後、
ふらりといなくなった。自治体の担当者が親族に連絡し、その許可をえて
業者に片づけさせると、床下から失踪したとされる妻の遺体が出てきた。

スクラップ場
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つまり、この男性は衝動的に妻を殺してしまっていて、その死臭を    
ごまかすため、わざと家をゴミ屋敷にしたわけです。
これに、男が拉致してきたんでしょう、行方不明になっていた
女子高生の遺体も見つかった、という内容がつけ加わることもあります。

『餓鬼』

さて、ゴミ捨て場ですが、近所トラブルの原因になることが
多いですよね。分別をきちんとしてなかったり、収集日を違えて
出したり。粗大ゴミなどは、まだ使えるだろうと、出したのを
持って帰る人もいて、じつはそれは呪いの品で、
怪異の原因になるというのも怪談の定番です。

スペースデブリのイメージ
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最後に社会的な方面に目を向けると、宇宙ゴミ(スペースデブリ)
が大きな問題になっています。これについては、当ブログでも
何本か記事を書いてますが、世界各国で4000回を超えるロケットの
打ち上げが行われ、その数倍にも及ぶデブリが発生しています。
1mm以下の微細デブリまでも含めると数百万とも数千万個とも言われます。

これらは異なる軌道を回っているため、回収はきわめて困難。
今後、ロケットや人工衛星を打ち上げるのの大きな支障となってるんです。
あとは、最近はマイクロプラスチックの問題が取り上げられることが
多くなりました。環境中に存在する微小なプラスチック粒子で、
特に海洋環境において問題化しています。

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大きなゴミなら回収の手立てもありますが、マイクロの名のとおり、
5mm以下で、しかも自然分解されにくく、長い期間、
環境を汚染し続けます。あと、上図は日本海溝の深度6200mで
見つかったマネキンの頭部です。

さてさて、前半で掃除することが心を祓い清めると書きましたが、
現代では、掃除できないもの、不可能な場所が存在する
わけですね。これは考えてみれば怖いことです。
では、今回はこのへんで。





アーカイブ 水のオカルト

2021.02.09 (Tue)


今回はこういうお題でいきますが、題材が広すぎて、おそらく
まとまりのない内容になるんじゃないかな。まず、水は地球上ではごく
ありふれた物質ですよね。海水も含めれば、それこそいたるところにあります。
ですが、ありふれているからこそ、根源的なものとも考えられたんですね。

古代ギリシアでは、水は(火、空気、土)と並ぶ四大元素の一つとされましたし、
中国でも五行(木・火・土・金・水)の一つに数えられます。
また、「エリクサ」という言葉を聞かれたことがあると思いますが、
「生命の水」と訳される場合が多いです。

錬金術では、「賢者の石」と並ぶ重要なアイテムで、卑金属を黄金に変えたり、
不老不死になったり、死者を黄泉返らせる効能があるとされました。
この考え方は現在でも続いており、西洋の修道院でつくられる
各種ハーブを材料にしたリキュールは、エリクサと呼ばれることがあります。

さて、日本でも古代から水にかかわる祭祀が行われてきました。
銅鐸はご存知だと思います。弥生時代の後期を中心に出土しますが、
集落の外から、埋められた形で見つかるものが多いんですね。
これには、水源地などに埋めておき、年に何度か掘り出して水に関係した
祭祀を行っていたのではないかとする説があります。

銅鐸絵画
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銅鐸に描かれた絵画には、水鳥や亀、カエルなど水辺の生物がよく見られます。
また、古墳時代の豪族の居館がいくつも発掘されていますが、
敷地内に導水施設が見られる場合が多いんです。これは、生活用水ではなく、
水を流す祭祀が行われていたのだと考えられています。

この形はずっと後代まで続き、前にご紹介したことがある、
奈良県明日香村「酒船石」も水の祭祀遺跡でしょう。7世紀、
斉明天皇の時代のものと考えられ、同地では現在も水が大量にわき出しており、
斉明天皇が国家的な祭祀を行った場所との見方が強まっています。
この施設は、10世紀まで使用されていたようです。

奈良県明日香村の水の祭祀遺跡
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なんだ、古代の水遊びじゃないかと思われるかもしれませんが、
当時としては重要な意味を持っていました。6世紀に朝廷に対して
反乱を起こした「筑紫君磐井 つくしのきみいわい」の本拠地周辺から、
「曲水の宴 」の跡とされるものが発掘されており、

これは、流れる水に盃を浮かべて流す遊びのための施設で、
もとは上記した水の祭祀であったと考えられ、
京都の朝廷でしか行うことができないものでした。そのため、磐井が、
当時の天皇家に反抗していた証であると言われることがあるんです。

筑紫君磐井の像
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さて、話かわって、古代から「水の精」の伝説も伝わっています。
西洋では、水を司る精霊は「ウンディーネ」と呼ばれ、若く美しい女性の姿と
されます。伝説では、ウンディーネに魂はありませんが、人間の男性と結婚すると
魂を得ることができます。しかし、それによってウンディーネは不幸になるんですね。

ウンディーネの彫像
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アンデルセンが書いた童話『人魚姫』では、人魚姫は愛する王子を殺すことができず、
泡となってしまいますが、これは上記のウンディーネの伝説が下敷きになって
いると考えられます。あと、日本にも水の精の出てくる話がありますが、
これは西洋とは違って、年老いた老人の姿です。
『今昔物語』には、「水の精が人の顔をなでる話」というのが載っていて、

水辺の廃墟で人が眠っていると、小さい老人が出てきて顔をなでる。
ある豪胆な男が「俺がつかまえてやる」と言って寝たふりをし、出てきた
老人を縛り上げます。すると老人は「たらいに水を持ってきてくれ」と言い、
水に顔が映ると「われは水の精なり」と一言残し、縛られたまま水に変じて、
ざぶんとたらいに落ちます。人々は気味悪がって、
たらいの水を池に捨てたということです。

『今昔物語』の水の精
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さて、あれこれ書いてきましたが、水は「悪いオカルト」に使われる
ことがあるので注意が必要です。ここで言う悪いオカルトとは、
「金儲けを目的として人を騙す」オカルトのことです。わかりやすい例で言うと、
先日死刑になったオウム真理教の教祖、松本智津夫の入った風呂の残り湯が
200ml、2万円で信者に売られていたようなケースです。

これ、当時買って飲んでいた人は、現在どう思っているんでしょうねえ。
あと、水の悪いオカルトは「波動」とからむことが多いんです。
ここでいう「波動」とは、ある種の生命エネルギーを指しますが、
科学的な根拠はいっさいない疑似科学です。

で、波動を流したとされる水が高額で売られたりしています。
まあ、買うのは自己責任でもありますが、
それで病気が治るなどと宣伝すれば薬事法に違反します。
「ホメオパシー」というのもそうですね。水の中に、ある薬剤を溶かし、さらに
それを何千倍にも薄め、砂糖玉に染み込ませたものを「レメディ」と言います。

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それだけ薄めると、もはや薬剤の効果はないんですが、ホメオパシーでは、
水の分子が、その薬剤の波動を記憶しているなどの理屈がつけられています。
しかしこれ、医学的にはブラセボ効果しかありません。2009年、
ビタミンシロップの代わりにレメディが与えられ、栄養不足で新生児が死亡した
事件をきかっけに、ホメオパシーに対する批判は高まっています。

さてさて、ということで、古代史に始まった話が、最後には疑似科学批判に
なってしまいました。まあこれほど、水に関するオカルトは、
多様な内容を含んでいるんだと考えてくだされば幸いです。
では、今回はこのへんで。




アーカイブ 穴の話

2021.02.09 (Tue)
ある個人輸入の会社に勤務している新米のOLです。よろしくお願いします。
始まりは・・・というか、それがすべてなんですけど、
会社の自分の机で物がちょくちょくなくなったんです。貴重品などではなく、
ほんとうにちょっとした、普段使いのペンやクリップなんかです。
別に惜しいものではないんだけど、昨日まで普通に使ってたのが、
翌日になってどこにも見あたらないって、なんとなく気持ち悪いですよね。
1回2回ならともかく、ここ1ヶ月で10個くらいもありましたから。
よく冗談で言いませんか? 今の今まであったものが急に見えなくなるのは、
異次元の穴に吸い込まれたからだって。もちろん、そんなことは
ありえないと思ってたんですけど。それがこんな結果になってしまって。
誰にも話さなかったのが幸いと言えばいいんでしょうか。

はい、それで、どうしてなくなるのか考えてみたんです。私はエクセルで
データを打ち込むのが主な仕事なんです。文書を作成したりもしますが、
課内向けのもので、外部からの書類が回ってくることってあんまりないんです。
ですから残業もほとんどしないし、机の上も基本的にはパソコンだけなんです。
さきほど話したペンやクリップ、付箋紙なんかも出しますけど、
退社の際に簡単に片づけられる程度です。机の一番上の大きい引き出し、
そこに出したものをザラッと放り込んで、自分のカップを洗ってから帰るように
してたんですが、どうも、なくなるのはそういったものだったんですよね。
いちおう引き出しを抜き出して調べたんですけど、何のへんてつもないスチール製で、
穴なんて空いてないし、そもそも穴があっても床に落ちるからわかるはずです。
ということは、もしかして私が帰ってから誰かが机の中を物色しているのか。

そんなことまで考えたんです。人目があるときには無理でも、
残業で遅くまで残って一人のときになら、できないことはありませんよね。
私のいる2階には3つの課が入っていて、10時ころまで仕事をしてる人も
いるんです。でも、そんなことをして、価値のほとんどないものをくすねる
意味もわかりませんでした。それで、幸いその引き出しの部分だけ
鍵がかかりましたので、退社際にかけてかえるようにしたんです。
そしたら、数日はなんともなかったですが、やっぱりなくなってるものが
あったんです。これはけっこう高価なレーザーポインターでした。
それにしても不思議でした。退社際にその引き出しに入れて、
ちゃちなものとはいえ鍵をかけ、朝に出勤して鍵を開ける、
それなのに昨日入れたはずのものがなくなってるんですから。

それで、その日からは机の中にはいっさい物を入れないようにしたんです。
書類や本などは課の共用ロッカーにすべて入れました。
エクセルの解説書などで、機密保持が必要なものはありませんでしたので、
必要なときにそこから出して使うようにして、ペンなどの小物類は、
帰りに全部カバンに入れて持ち帰るようにしました。
さすがに、カバンの中からなくなるということはなかったです。それでですね、
1週間くらい後のことです。その日は帰るのがちょっと遅くなったんです。
仕事のキリが悪かったので、せいぜい1時間半くらいでしょうか。
それで終わって帰ろうとしたとき、上の引き出しの中からブーンという音が
聞こえたんです。外からさわってみると、細かく振動してるような感じでした。
思い切って開けてみました。そしたら・・・手前のほうに穴があったんです。

直系10cmくらいで、中は貝の裏側みたいに虹色に光っていました。もし、
人が近くにいたら呼んだと思いますが、そのときは課内の人はみな早く帰ってて。
穴の端のほうは中心に向かって渦巻いていて、そうですね、排水口に水を
流したときみたい、と言えばわかってもらえるでしょうか。近くのロッカーの上に
たまたまあった30cm定規を手にとって、穴に突っ込んでみたんです。
ぐにゃっと、こんにゃくをつついたような感触がありました。
でも定規は入っていきまして、今度は吸い込まれていく力が伝わってきました。
それであわてて引き抜いたら、中で何かが引っかかってて、さらに力を込めたら
ブチブチと輪ゴムが切れるような感じで抜けてきました。定規が抜けると、
ブウンという小さな音がして、穴はなくなってしまったんです。おそるおそる
さわってみても ただの机の底で、これだと誰にも信じてはもらえないですよね。

ああ、さっき穴を見たときに大声を出して人を呼べばよかった、と思いました。
でもそのときは、1度あったことですから、またあるだろうと思いました。
そのときこそ人に見せよう。もしかしたら冗談で言ってる次元の穴は本当にあって、
大発見なのかもしれないって (笑)。自分としては遅い時間でしたので、
帰ろうと思い、ロッカー室に寄ってから階段を降りていたときです。
上のほうの階がなにやら騒いでいる声が聞こえてきて、見にいこうか迷っていたら、
今度は下で救急車の音がしたんです。すぐに担架を抱えて救命士の人たちが
上ってきました。私は身をよけてから、おそるおそる上っていくと、
会社の3階の部署のAさんが急に倒れたということだったんです。
イスにかけたまま後ろにドターンと。Aさんは意識がない状態で運ばれていき、
そのまま緊急入院することになりました。

後でわかったことですが、脳の血管が切れ、命に別状はなかったものの、
かなりの後遺症が出ているということでした。
このAさんというのは40代前半で妻子ありの課長補佐の方です。じつは、私が
入社した1年前の歓迎会の2次会の席で、やんわりと誘われたことがありました。
もちろん固くお断りしまして、それからはそんなことはんかったんですけど。
あの穴のことと何か関係があるんでしょうか。
ええ、あれからは注意して引き出しの様子をうかがってるんですけど、
二度と起きてはいないと思います。振動を感じることもなかったです。
まあ、関係がないと思いたいですよ。あの定規が穴の中に引っかかって、無理に
引き抜いたときのブチブチというイヤーな感触、それが今でも手に残って
いるんです。こんなような話なんです。みなさんはどう思われますでしょうか。

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町内の呪いの話

2021.02.08 (Mon)
こんばんは、私、西根〇〇と言います。高校2年生です。
よろしくお願いします。うち、小さいですけど神社なんです。
どこにでもあるような稲荷社で、父が一人で宮司をやってます。
お賽銭や社務所での売り上げ・・・あ、売り上げって言っちゃ
ダメなんです。御守や破魔矢なんかは授与するもので、お代は
お礼とか報謝って言うんです・・・で、その報謝料だけでは
とてもやっていけません。氏子さん方の毎年の寄進で、
なんとかまかなっているんですね。それで、社務所のほうは
アルバイトの人が来てますが、学校の長期休みのときは、私も
そこに入ります。初詣のときなんか、それなりに忙しいですよ。
小さな神社でも、年間行事はきちんとこなさなくちゃなりませんから。

それで、神社に生まれ育ったって言うと、よく「何か不思議な
 経験がありますか」って聞かれるんです。「そんなのないですよ」
と答えることにはしてますけど、じつは数年に1度くらい、
やっぱり説明のつかないようなことが起きるんです。今から
お話するのは、そんな中の一つですね。まず、うちの神社ですが、
4つの町内の真ん中にあるんです。で、だいたい氏子さんも
そこに住んでいる人たち。あと、地域にある小学校の保護者の
中にも氏子さんがいます。これは、夏祭りのとき、そこの
小学校の生徒がお神輿をかついでくれるからです。
で、うちの神社の護りの力も、だいたいその範囲内で。
あ、護りの力ってご存知ですよね。神社というのは、

建っている地域を護ってるものなんです。大きい神社だったら、
その県内全域に力が及びますが、うちくらいだとせいぜい数町内。
あれは去年の夏休みのことでした。私は部活動とかには入ってなくて、
その日も午後から社務所に出ていましたが、お客さんは
一人もなかったんです。ヒマにしていると、夕方になって父が入って
きました。いつもは朗らかな父ですが、そのときは眉根にシワを寄せ、
ちょっと厳しい表情でした。「宮司様、どうしましたか」って
聞きました。これ、神社内では父のことは「宮司様」って呼ぶんです。
すると父は「巫女職、なにか町内で変なことが起きているようだ。
 ちょっと様子を見に行くから、着替えてついてきなさい」
そう言ったんです。私はそのとき、巫女さんの装束をつけてましたから。

で、動きやすい服装にして、ふつうの和服に着替えた父について
いきました。行った先は、神社から400mくらいの町内の
ゴミ収集所です。金属でつくられてて、戸を開けて中にゴミを入れるん
ですが、その脇のブロック塀に異様なものがあったんです。
そうですね、高さ50cmくらいでしょうか。細い竹を組んで作った
・・・一種の祭壇があったんです。四角く組んだ竹の中には和紙が敷かれ、
上にネズミが1匹置かれていました。もちろん死んだネズミで、
その体に破魔矢が刺さっていました。ひと目でわかりましたが、
それ、うちの神社のだったんです。「えー、こんな使い方をするなんて
 ひどい」と思いましたよ。父に「どうしてわかったの?」と
聞くと、「近くに住んでる氏子さんが教えてくれた」

さらに「これ、何」と聞いたら、「どうやら呪いのようだ」という答え。
さすがにただごとではないですよね。呪いのために祭壇をこしらえ、
ネズミを殺し、しかもそれにうちの神社の神物(しんもつ)が
用いられてる。「どうするの?」 「うーむ、まず誰が誰を呪ってるのか
 特定しないとならんが、これだけでは・・・」と、そのときは
頼りない感じでした。それで、翌日、また別の場所で祭壇が見つかったんです。
最初の場所から200mほど離れた、やはりゴミ収集場の近くで。
祭壇の形は前とほぼ同じでしたが、死んで置かれている動物は、
ネズミからウサギに変わってたんです。野生のウサギなんていないので、
わざわざ買って殺したんでしょう。これも父といっしょに見に行きました。
やはりうちの神社の破魔矢が腹に刺さってました。

それ以外、体に傷はなかったですが、父はウサギを持ち上げて、
「首の骨が折れている。さすがに警察に連絡しないと」と言いました。
それから2日おいて3件目、2件目の場所から300mほど
離れた児童公園のベンチの後ろに同じ祭壇、死んでいたのは今度は猫です。
私はその時点ですっかり怖くなっていました。父は苦々しい口調で、
「まあ、呪い自体はけっこうあることなんだが、うちの社の破魔矢が
 使われているのは許しがたい」そう言いました。
で、神社に戻って、せまい神域の杜があるんですが、その中を
見回りました。もしかしたら、藁人形や五寸釘が見つかるかと考えたんです。
じつは、神社で呪詛を行う人はいて、うちの社でも数年に1度くらい、
そういったものが見つかることがあったんですよ。

でも、そのときは特に異常はなしでした。それから父と社務所に入り、
社務に使っているパソコンを立ち上げました。神社にパソコンなんて変だ、
と思われるかもしれませんが、今はどこも経理ソフトなどを使ってます。
で、インターネットでその地域の地図を出し、祭壇があった3ヶ所に
印をつけました。円の周囲にそって並んでるみたいでしたけど、
まだはっきりしません。父は「これはおそらくもう2回、呪いの儀式を
 行うはずだ。5回めが終わると呪いは成就してしまうだろう。
 その前になんとかする」と。それで3日後、4回目があったんです。
やはり数百m離れたビルとビルの間に祭壇が。殺されてたのは中型犬です。
このときは警官も現場検証に来てました。動物虐待など、何かの
犯罪にあたるからでしょうね。犬は両目を開け、ビルの間からのぞく

せまい空をにらんでました。その場所をパソコンに入れると、
やはりぐるっと円形の続きになり、父は「次はここだろうな」そう言って、
地図の下のほうに印をつけ、5つの点を結ぶと、五芒星の形になったんです。
はい、五芒星は呪力を持つと言われてるシンボルで、西洋魔術で
使われることが多いんですが、日本でも晴明印、桔梗印と言って、
木・火・土・金・水の5つの元素の働きの相克を表すとされています。
「この中心に呪いの対象があるはずだ」五芒星の頂点を線で結んでいくと、
その中心は住宅街でした。「この家が呪詛されている」父は、
線が重なった一軒の家を指差したんですが、そこは一般の民家の
ようでした。それで・・・残念なことに「危険があるかも」ということで、
私はこの呪詛事件の探索から外されてしまったんです。

ですから、ここからの話は後になって父から聞いたことなんです。
その呪いの対象になっている家は5人家族で、40代の夫婦と、主人の母親、
それに中学と小学生の子どもが2人。近所で悪い噂が立ってたんです。
そこの家のおばあさんは寝たきり状態のようで、外出することが
なくなってしまったんですが、嫁に虐待されてるんじゃないか、
っていう。もともと嫁姑の仲が悪いことで評判だったみたいです。
4件目の呪詛があってから4日目の夜中、父は神職の装束で外出しました。
警察には連絡せず、そのかわり信頼のおける氏子連の人を2人連れて。
行った先は、5つ回目の呪詛が行われるはずの場所です。
それで、何があったと思いますか。父たちが待ち構えていると、
夜中の2時過ぎ、そこにやってきたのは・・・

4人組のおばあさんたちだったそうです。はい、全員が懐中電灯と
祭壇を組むための材料を持ち、それと、おそらくペットショップで買った
ばかりの小型種の猿が入ったケージ。猿はまだ生きてたそうです。
もう、どういうことかわかりますよね。そのおばあさんたちは、
呪いの対象になっている家のおばあさんのお花、華道のお仲間で、
そこの家の嫁を呪詛しようとしてたんです。はい、父はおばあさんたちを
社務所に連れてきて、長時間説教をしたそうですよ。呪いなんて
トンデモない。そんなことをすれば必ず自分たちに返ってくると。
警察に通報はしませんでした。そのかわり、民生委員などを通じて
そこの家の虐待を市の福祉課に訴えたんです。その件はまだ解決して
ませんが、いい方向に進んでると思います。まあ、こんな話なんです。






天皇キリスト教徒化計画

2021.02.08 (Mon)
アーカイブ594

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宮中祭祀

今回はこういうお題でいきます。かなり地味な日本史の話題に
なりますので、スルーされたほうがいいかもしれません。
さて、今上陛下の宗教は何か? こう聞かれたら、みなさんは
どう答えられますでしょうか。おそらくですが、大部分の方は
神道と回答されるんじゃないでしょうか。

それで正解です。今上陛下も宮中祭祀をされています。
これは、天皇が国家と国民の安寧と繁栄を祈ることを目的に
おこなう祭祀で、皇居宮中三殿で行われる祭祀には、
天皇が自ら祭典を斎行し、御告文を奏上する大祭と、
掌典長らが祭典を行い、天皇が御拝する小祭があります。

ただ、太平洋戦争の敗戦後、新憲法やその他の法律には、
宮中祭祀についての明文はなく、現在の宮中祭祀は、
皇室の内廷費によって処理されています。ですので、
多くの憲法学者は現在の宮中祭祀を、
「天皇家が私的に行う儀式」と解釈しています。

歴代天皇の仏塔
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これは以前に記事に書いてますが、そもそも天皇家は
天武天皇以後1000年以上の長きにわたって、熱心な仏教徒
だったんです。御所には仏壇があり、位牌があり、戒名があり、
仏塔式の墓所があり、葬儀をはじめとするさまざまな儀式は、
仏式で行われていたんです。

天皇家が日本神道に回帰したのは明治維新以降のことです。
明治新政府は、国の柱として国家神道を打ち立て、
天皇を現人神としてその中心に据えました。では、天皇家と
キリスト教の関係はどうだったんでしょうか。

フランシスコ・ザビエル
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天皇家を、つまり日本をキリスト教国にしようとする試みは
過去に2度あったと考えられます。そのどちらもが、
日本史上の大転換期でした。最初に企てた人物は、
スペイン生まれのイエズス会士、フランシスコ・ザビエルです。

1548年、ザビエルは洗礼を受けたばかりのヤジロウ他
2人の日本人とともにインドのゴアをジャンク船で出発、
日本に向かいます。ちなみにヤジロウについては興味深い
オカルト話を過去記事にまとめていますので、
興味を持たれた方は参照してください。

その船内で、ザビエルはヤジロウに日本の政治情勢について
尋ねます。ヤジロウは「日本には2人の王がおり、第一の王
(天皇)がすべての権限を持っているが、あらゆることを
第二の王(将軍)に任せている」と答えるんですね。
ただ、ヤジロウは九州出身の倭寇であり、京都に行ったことは

ザビエルが面会を試みた後奈良天皇
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ありませんでした。これを聞いたザビエルは、おそらく、
ヨーロッパのローマ教皇と各国王の関係を連想したんでしょう。
まずは京都に行って天皇に会い、キリスト教への改宗を
勧めようと考えました。しかし、実際に踏んだ京都の地は、
長く続く戦乱で荒れ果てており、面会の請願を出したものの、

当時の後奈良天皇、征夷大将軍・足利義輝にも会うことが
かないませんでした。これは、そのとき献上の品を持ってきて
なかったためとされます。この後もいろいろとあり、失意のうちに
日本での布教を断念したザビエルは、日本文化に大きな影響を
与えている中国への布教を、まず最初にしなくてはならないと考えます。

日本最初の正式なキリスト教徒ヤジロウとザビエル
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しかし、中国(明)への入国前に病没してしまうんですね。
46歳でした。この後、織田信長はキリスト教の布教を許可した
ものの、秀吉がバテレン追放令を出します。徳川時代に入って
島原の乱が起き、江戸幕府はキリスト教国の来航とを禁ずる
ことになります。まあ、このあたりのことはご存知でしょう。

さて、2回目は太平洋戦争の敗戦後です。連合国軍最高司令官
ダグラス・マッカーサーは昭和20年、天皇と面会し、
日本統合のため、天皇制の存続を決めます。翌昭和21年、
昭和天皇は国民に向けて「人間宣言」と呼ばれるメッセージを
出します。これはGHQの意向をくんだものです。

昭和天皇とマッカーサーの有名な会見時の写真
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この前後、ローマ法王庁やマッカーサーが、昭和天皇を
キリスト教に改宗させようとした動きがあったとされます。
ただ、これは秘中の秘なので、資料がほとんど残っていません。
ですから、現状では陰謀論の域を出ないんですが、自分は
そういう策動そのものはあったと考えています。

同じ年、昭和天皇はアメリカ教育施設団団長ジョージ・スタッダード
との会見で、自ら「皇太子(今上上皇)の家庭教師として、
教養あるクリスチャンの婦人を紹介していただきたい」と
依頼したとされます。「クリスチャンの」とつくところが
ちょっとただごとではないですよね。

今上上皇とヴァイニング婦人
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まあ、これは日本と皇室が、天皇制を存続させようとする工作
だったとする意見もあります。しかし実際に、厳格なキリスト教の
宗派であるクエーカー教徒のヴァイニング婦人が家庭教師に
ついて、英語を教えることになるんです。また、ヴァイニング婦人は
皇太子が学ぶ学習院でも講義を行っています。

さてさて、ヴァイニング婦人は、今上上皇陛下にキリスト教的
価値観に基づく平和主義と温かい家庭主義を教えたとされます。
婦人は勲三等宝冠章を受章し、アメリカに帰国しますが、
後年、ベトナム戦争反対のデモに参加して、ワシントンの
国会議事堂前で逮捕されてるんですね。では、今回はこのへんで。

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ヤジロウとクロ宗

2021.02.08 (Mon)
アーカイブ593

今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論にしておきますが、
日本史とも深い関係がある内容ですね。みなさん方の中で、
「ヤジロウ」という名前をご存知の方がどれほどおられるでしょうか。
一般的な歴史教科書には出てきませんので、よほど宗教史などに
詳しくなければ、聞かれたことはないんじゃないかと思います。

この人物、「日本人初のキリスト教徒」と言われることが多いですね。
ですが、ほんとうに日本人初かはわかりませんし、違う可能性のほうが
高いでしょう。「日本にキリスト教が伝来する契機となった人物」
こう言ったほうが正確なような気がします。

ヤジロウの像 しかし元海賊なのでこういう人物ではなかったと思われます
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さて、ヤジロウは名前の漢字がわかりませんので、アンジロウの可能性も
あるようです。庶民ですので名字はないと思われます。
彼は16世紀の人物で、現在の鹿児島県の出身。若い頃は倭寇(海賊)の
一員でした。人を殺した罪で追われ、鹿児島に来ていたポルトガル船に
乗り込んで、なんと現マレーシアのマラッカまで逃れます。

その地で出会ったのが、イエズス会の修道士、フランシスコ・ザビエル。
1547年のことです。ザビエルはヤジロウから日本の話を聞き、
布教の可能性を尋ねます。するとヤジロウは、「日本には第一の王である
天皇がおり、すべてのことを支配するる権力者ですが、実際の政治は
将軍と呼ばれるものにまかせています」と答えます。

ザビエルがさらに、天皇をキリスト教徒にする可能性を尋ねると、
ヤジロウは「ある」と答えるんですね。ザビエルの書簡には、
日本に渡航するにあたって、「日本に着いたらまず天皇のところへ
行こうと考えている」という言葉が出てきます。

フランシスコ・ザビエル
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ただ、これ、不幸なことに両者とも大きな誤解をしてるんです。
ヤジロウは辺地である鹿児島出身で、人生のほとんどを海の上で過ごし、
当時の京都の状況がわかってはいませんでした。また、ザビエルのほうも、
当時のヨーロッパ国王はみなキリスト教徒であり、ローマ教皇に従って
いたため、天皇に布教するのも難しくないだろうと考えてしまったんです。

こうしてザビエルは1549年に鹿児島の地を踏み、これが日本における
キリスト教伝来の年として教科書に載っているわけです。
鹿児島で島津貴久に布教の許可を得たザビエルは京都に向かいますが、
実際に訪れた京都は応仁の乱のために荒廃し、将軍の足利義輝は近江に
逃れていて、後奈良天皇も公的な活動は行っていませんでした。

ヤジロウの話では繁栄しているはずの日本の都でしたが、
見ると聞くとでは大違いだったんです。結局、ザビエルは天皇に謁見する
ことはできず、大内氏や大友氏などキリシタン大名の力を借りて
布教を図ることになりますが、ことはうまく進みませんでした。ザビエルとの
面会を断った後奈良天皇の子である正親町(おおぎまち)天皇が、

正親町天皇
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1565年、京都からのキリスト教宣教師追放令を出したんです。
これは「デウスはらい」とも呼ばれます。宣教師のルイス・フロイスは、
「天皇は宣教師を日本の神仏に対する敵対者として追放した」と書いています。
この後、キリスト教は織田信長によって庇護されますが、豊臣秀吉は、
ポルトガル商人が日本人を奴隷売買することに怒って、宣教師を追放します。

ここで注意しておきたいのは、天皇が日本神道を守ろうとしたわけでは
ないことです。当時の天皇は熱心な仏教徒であり、この追放令を出す
背景には、本願寺法主であった顕如による天皇への献金が
大きかったというのが通説になっています。つまり、
キリスト教は仏教の敵だったということですね。

さて、ザビエルは、日本全土での布教のためには、日本文化に大きな
影響を与えている中国での宣教が不可欠と考え、渡航を計画しますが、
その中途で病死します。では、ヤジロウはどうなったか。彼は、
日本上陸したザビエルの通訳を務め、洗礼を受けて
「パウロ・デ・サンタ・フェ」の名を授かり、自身も布教に努めています。

ヤジロウの墓(眉唾です)
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ですが、ザビエルの死後、上記のフロイスの記述によれば、
布教を離れてまた海賊生活に戻り、中国近海で殺されたと出てきます。
40歳に満たない短い生涯でした。ただ、これにはオカルト的な異説が
あるんです。ヤジロウは日本に残って九州でキリスト教布教を続けた。
島原の乱で敗れたキリシタンの残党もそれに加わり、

そしてその教えは「クロ宗」あるいは「クロ教」として、鹿児島領内の
とある島に残っている。また、ヤジロウの墓もそこにあるとされます。
で、現代に残るクロ宗では、長い間隠れキリシタンであったので、               
家の周囲に3m近い高い塀を築いて、中をのぞけないようにしてある。

また、その教義は長い年月の間に大きく様変わりして、いつの間にか
悪魔崇拝に変わっていた。その家の家長が臨終の際には、
まだ死なないうちに「サカヤ」と呼ばれる司祭のもとへと運ばれ、
生きながら血を抜かれ、胆嚢を摘出される。

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そして、その人物の魂を取り込むため、親族や近隣の宗徒はみなで
それを口にする・・・まあでも、これ、実際のことではありません。
あくまで興味本位でつくられたオカルト話なんです。芥川賞受賞作家、
堀田善衛による『鬼無鬼島』の内容をもとにして考え出され、
広まったものと見られています。

さてさて、ということで、キリスト教伝来の裏話、また日本の天皇の
応対などについて見てきましたが、隠れた歴史のエピソードですよねえ。
ヤジロウがマラッカでザビエルに出会わなければ、キリスト教の伝来は
ずっと遅れていたことでしょう。では、今回はこのへんで。

関連記事 『沢野忠庵って誰?』

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アーカイブ いいもの、の話

2021.02.07 (Sun)
中学校の修学旅行のときのことです。
行き先は京都・奈良方面でした。ああ、それと大阪城にも行きましたね。
その2日目が、京都でのグループ別の自由行動だったんです。
私は女子だけ4人のグループになってて、
どっちかというと大人しい子だけの班でした。
だからというか、立てた行程の計画もかなりシブ目のもので、
「詩仙堂」などを含んでいたんですよ。
ああ、こう言えばどっちの方面に行ったかわかりますね。
メンバーの中でも特にM華という子が、歴史関係が好きで、
ほとんどその子の意見を取り入れて決まったんです。
ええ、京都は初めて訪問したんですが、やはり素晴らしかったです。

今でもちょくちょく訪れています。あの当時は、
それほど神社仏閣に興味があったわけじゃなかったんですが、
それも大好きになりました。ええ、このときの修学旅行がきっかけで、
神仏ってあるもんだなって実感するようになったんです。
M華の寺社好きはかなり徹底していて、
計画を立てた有名寺院以外にも、道の途中に神社などがあれば、
全部中に入ってお参りしていました。
有名でもなんでもない名の知れないところでもです。
まあ、そういうところは拝観料をとられることはなかったんですが、
すべて歩きだったので、足が疲れましたよ。
それで、ある神社に入ったときのことです。

そこもやはり何の変哲もないただの神社で、しかも隣に保育園があり、
子どもたちの声が聞こえる、生活感にあふれたところだったんです。
おそらく地元の人しかお参りしてなかったんじゃないかと思います。
その小さな社殿の前で、4人並んでお賽銭を投げ入れ、
手を叩いて拝んだ後のことです。
空のほうでキューンという音が聞こえたような気がしました。
他の子らにも聞こえたみたいで、皆がいっせいに上を見上げたんです。
「何か落ちてくる」M華がそう言いましたが、
私には何も見えませんでした。その直後、私が持っていたトートバックが、
急に重くなったんです。旅行カバンはホテルに置きっぱなしにして、
みんなお土産を入れる袋しか持ってませんでした。

「○○のバックに空から落ちてきたものが入ったよ」M華がそう言ったので、
あわてて中を見たんですが、中にはここまでで買った、
ストラップなどの小さいお土産類しかありませんでした。
「えー、何もないよ。おどかさないでよ」と答えたんですが、
M華は「さっき落ちてくる音がしたのを聞いて、みんな上見てたじゃない。
 それにバッグに入ったのは悪いものじゃない、いいものだよ」
自信たっぷりにこう言いました。そのときには、
バッグの重さはもう感じなくなってました。その後、私たちは無事に行程を終え、
電車でホテルのある地区まで戻ったんです。その夜のことです。
私は同じクラスのK美という子と相部屋でした。当時から、
大部屋で枕投げをするなんて旅行は少なくなって、ホテル泊が増えてきてました。

そのほうが旅行社もプランが立てやすいし、先生方も管理が楽なんだそうです。
K美とは親しかったんですが、さすがに2人だと大騒ぎもできず、
10時半の消灯からほどなくして2人とも寝入ってしまいました。
それで、夜中に・・・隣のベッドで寝ていたK美が私を揺り起こし、
目を開けると電気がついてたんです。
「どうしたの?」と聞くと、K美は、
「さっきトイレに起きたとき、カサカサ音がするんでそっちを見たら、
 ○○ちゃんのバッグから、絣の着物を着た坊主頭の男の子が上半身を出してた」
こんなことを言いました。昼、自由行動に持っていたバッグは、
部屋のクローゼットの前に立てかけてあったんですが、
買ったお土産が詰まっていて、もちろん子どもが入れる大きさなんてありません。

ええ、M華が「何か入ったよ」って言ったバッグです。
別のグループだったので、そのことをK美は知らないはずなので、
私も怖くなってきました。でも、勇気を出して中を確かめてみましたが、
男の子はもちろん、変な物は入っていませんでした。
どうせ先生方に言っても信じてもらえないだろうと思い、
「夢だと思うよ」とK美をなだめ、
バッグはクローゼットの奥にしまってまた寝たんです。
その後は朝まで・・・というか、修学旅行が終わるまで、
おかしなことはありませんでした。
楽しかった旅行ですが、家に戻ると気持ちが沈みました。そのころ家は、
やっていた商売の経営状態がよくなくて、雰囲気が最悪だったんです。

いつも揉めている両親の間に入って、
私とおばあちゃんと妹はほとほと疲れ切っていたんですよ。
家に入ると、おばあちゃんが待っていて、
「旅行は楽しかったかい。お前の荷物が届いてるよ」って言いました。
お土産類はまとめて、向こうで家に送ってあったんです。
それで、まずおばあちゃんにお土産を渡そうと箱の一つを開けました。
西陣織の巾着を買ったんですが、包装はそのままだったのに、
中が空だったんです。「えーっ!?」
それで、妹や両親へのお土産も開けてみたんですが、
どれも中には何も入っていなかったんです。八橋の大きな箱までです。
「えー、嘘、こんなのありえない!」

私は大騒ぎしましたが、おばあちゃんは私が投げ出したバッグの中から、
何かを大事そうにつかみ出すような仕草をしました。
そして「おやおや、これはこれは。いいものをもらってきたねえ」
そう言って、大事そうに家の神棚に捧げたんです。
「あ、M華と同じようなことを言ってる」と思いましたが、
おばあちゃんの手の中にも、神棚にも、私には何も見えませんでした。
おばあちゃんは「朝夕拝むのをかかさないようにしないと」と言って、
それから、私もいっしょに座らせて神棚に手を合わせてましたが、
私はしばらく、お土産がすべて消えてしまったことが不満でした。
でもそれから、家の商売のほうが上手く回転するようになり、
両親が揉めることもなくなって、私のお小遣いも増えたんです。

おばあちゃんは3年前に他界しましたが、
私は今でも、神棚にあるはずの何か「よいもの」に対して、
毎日かかさずお参りしています。
でも、どうして、おばあちゃんやM華に見えて、
K美には男子の姿で現れたのが、私にだけ見えないのか、
そこがちょっぴり悔しい気がするんですよ。





「実話」怪談と取材

2021.02.07 (Sun)
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今回はこういうお題でいきます。怪談論ですね。
当ブログで書いてるのは、創作の怖い話、創作怪談です。
読んでくださる方はおわかりでしょうが、実際にはまず
ありえないような話ばかりですよね。

これが実話だと言っても、信じない人がほとんどでしょう。
では、なぜ自分が創作怪談と明言しているのか。これには
いくつかの理由があります。まず一番大きいのは、
当ブログには1000話以上の話がありますが、
一人の人間が1000も実話を収集できないからです。

二つめは、創作と最初に宣言しておいたほうが、書く内容の
自由度が高まるからです。オカルト知識を活かしながら
想像の翼を広げ、かなり奇抜な話を創り出すことができます。
これが、書いていても楽しいんですね。

みなさんの中で実話怪談を収集された方が もしいればわかると
思いますが、実際に人から取材する話って類型的で、
しかも深みがないんです。怪談の分類で言えば「〇〇を見た」系
のものがすごく多い。例えば、出張時にホテルの部屋で寝たら
金縛りになり、血まみれの女がのしかかってきたとか。

それを体験した本人はたいへん怖かったと思いますが、
でも、どこにでもあるような内容でインパクトがないですよね。
しかも、見る前に睡眠麻痺になっているところから、自分で
作り出した幻覚である可能性がきわめて高い。これは、
のしかかってきたのが落武者とか兵隊さんでも同じです。

それから、体験談は「虫の知らせ」系がやはり多いんです。
例をあげると、仏間で風もないのに鴨居の遺影が落ちた、
ロウソク立てが転がった。それからほどなくして、長く入院してた
親戚や友人が亡くなったという知らせがくる。ただの偶然である
可能も高いし、そんなの聞いてて面白いですか。

ですから、実際に取材して話として使える怪談というのは、
20に一つあるかどうかくらいです。これ、その怪談作家が
雑誌やラジオなどでやっていて、視聴者からたくさんきた
お便りを見るというなら、話もハイペースで集まるでしょうが、

fff (2)

体験者一人ひとりと実際に会って話を聞くとなると、ちょっと
ありえないほどの時間と費用がかかるんです。もしプロとして
やってるなら、採算が取れるとは思えません。自分はプロでは
ありませんが、本業があって時間が足りません。ということで、
これらの理由から、創作ということを明言してやってるんですね。

創作のいいところは、構成を工夫し、伏線を入れることができる
ところですが、伏線もあまり張りすぎると、あざとくなって
しまいます。そのあたりの調整が難しい。あと、小説ではないので
必ずしもオチは必要ではなく、謎が残ってもかまいません。
そのほうが不気味な余韻がありますよね。

さて、では理想的な実話怪談というのはどういうものか。
これはあくまで自分の考えで、賛同されない方も多いと思いますが、
実際の情報が多く、しかもそれが検証されてるものと考えます。
どういうことかというと、こんな話を聞いたとします。

「3人で地元で心霊スポットと言われている廃病院に行った。
そこでは何も起きず、写真を撮り、一人が手術室からハサミを
拾って持ってきた。その後、3人の携帯それぞれに電話が
かかってきて、女の声でハサミをお返し下さいと言われた。
後に確認したら、携帯に着信履歴はなかった」

この話では、不法侵入してるでしょうから、体験者3人の氏名は
さすがに明らかにはできないでしょうが、廃病院の名と住所くらいは
発表したいですよね。まあ、そうするとその話を聞いて
そこに凸する人が増えるからマズいということもあるので、
そこもゆずって、発表できないとします。

じゃあ、どうすればそれが「実話」となるのか。取材者はその3人に
個別に会うべきだと思います。話を聞いて、それぞれの話に齟齬が
ないかを突き合わせる。また、現場で撮った写真も見せてもらう。
ハサミも、まだ持ってるなら見せてもらいたいですね。
さらに、実際にその廃病院に行ってみる。

fff (3)

許可を得るのはなかなか難しいでしょうが、そこはなんとか。
もし廃病院に入れなくても、近所に住む人から
取材することはできます。もちろん、ここまでやっても実話という
確証が得られるわけではないです。3人が口裏を合わせて
嘘をついている可能性もあります。

でも、これならかなり信憑性が増しますよね。取材者も
後日談を得られるかもしれません。「実話です」と
言い切るのなら、そこまでやるべきかとも思います。
たんに「人から聞いたものだから実話」とするなら、
どんどん実話のハードルが低くなっていくんじゃないかな。

さてさて、とは言っても、最初のほうで書いたように、
ここまで取材をすると、まず採算が合わなくなります。
集まる怪談も年に10話程度。それではやっていけません。
もしこれが、北野誠氏らの「お前ら行くな」のように、

検証そのものが番組になり、DVDになってお金を産む
というのならまた話は別ですが、一般的な怪談作家はそうは
できません。こういった難しい問題が実話怪談を取りまいて
るんです。では、今回はこのへんで。





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