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妖怪と科学

2016.01.22 (Fri)
ということで、今回は妖怪談義です。
科学、特に自然科学についての概念も知識もなかった昔は、
いろいろな自然現象を説明するために、さまざまな妖怪が発明されました。
有名なところでは、雷なんかがそうですよね。
雷神という形で、太鼓を背負った鬼のような神様になってる場合もありますし、
雷獣といって、イタチともカニともつかない不思議な形状で描かれたりもします。
急にドッカーンと空から落ちてくるわけですから、これは不思議だったでしょうが、
もちろん時代の識者の中には、天候との関係から、
雨などと同じ自然の現象と推測している人もいました。
関連記事 『バチバチあれこれ』

あと「山彦」なんかもそうです。下図は鳥山石燕の絵ですが、
黒い犬のような姿をしています。これは彭侯(ほうこう)という、
中国の木の精霊の姿からきているようです。
水木しげる先生の山彦は一本足の出っ歯の子ども?で、ずいぶん違った形ですが、
こっちは木霊(こだま)と関係が深いのかもしれません。
木霊は歳を経た樹木の精霊で、やはり人の声をまねするとされます。

しかしこれ、しょっちゅう山に入っている猟師などは、
自分の声が山や谷にぶつかってはね返ってくる反響音だということは気づいていたでしょう。
これをいちいち怖がっていたんじゃ、山仕事なんてできないですからね。
ちなみに、日本人の多くが山で叫ぶ「ヤッホー」という言葉は、
そう起源は古いものではないと思われますが、語源は諸説があってはっきりしないようです。

石燕と水木先生の「山彦」


けっこう意外なところでは「蜃気楼」なんかもそうです。
密度の異なる大気の中で光が屈折し、地上や水上の物体が浮き上がって見えたり、
逆さまに見えたりする現象のことをいうのですが、
なぜ蜃気楼という語を使うのか、ご存じの方は少ないようです。
「蜃」は貝のハマグリのことで、「楼」は中国でいう高層の建物です。
海にいる巨大なハマグリが気を吐いて、それが楼閣のように見えるということなんですね。
出典は古く、紀元前に書かれた『史記』にはすでに話が出てきます。
日本ではこれを元にして、ずっとハマグリの妖怪が起こす怪異として考えられてきたようで、
石燕の絵にもその姿で登場します。

豆知識として、蜃気楼で有名な伊勢湾は、また大型のハマグリが名産でもありました。
「その手は桑名の焼きハマグリ」というやつです。
あとはUMA(未確認生物)界のスターであるシーサーペント(大海蛇)
の目撃例のいくつかは、海上に首を出したオットセイなどの頭部が、
蜃気楼によって伸びて見えたものだとする説もあります。

鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より「蜃気楼」


あとはそうですね、「天狗礫」なども自然現象が疑われます。
山中で、石が空から突然降ってくるというもので、
どこから飛んできたのかわからないところから、
天狗が投げた石つぶてではないかなどと言われます。
これとの関連が疑われるのが、西洋でいう「ファフロツキーズ fafrotskies」で、
カエルや魚が降ったりするのですが、これなんかは竜巻で巻き上げられたものが落ちてきた、
という可能性が高いと考えられています。

鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より「天狗礫」
はなかいいおあう

ということで、江戸時代までは自然現象に由来する妖怪がいたわけですが、
これが明治の世になって文明が開化され、西洋科学が流入してくると、
不思議な現象を何でも科学で説明しよう、という風潮が起きてきます。
それ自体はは悪いことではないと思いますが、
中には無理な説明をして俗説化してしまったものもあります。

例えば「人魂は土葬の遺体の燐(リン)が燃えたものだ」なんかですが、
これはずいぶん無理のある説明で、人や動物の骨に含まれるリンは発光しませんし、
そんなに大量に地表に出てくることも説明がつきません。
また「カマイタチは突風が真空をつくって、それによって皮膚が裂ける」というのも、
ちょっとありえないでしょう。つむじ風くらいで真空はできないですし、
おそらく草で切れたか、アカギレのようなものが多かったんじゃないでしょうか。





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