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奇譚 ある胸像の話

2016.01.25 (Mon)
自分は創作で怪談を書く他に、実話の怖い話も収集しているんですが、
これに関しては、類型的であったり、あまりに意味不明であったりして、
なかなかブログに書けるような内容のものは少ないんです。
10話収集して、そのうちでものになるのが2つもあればいいほうでしょうか。
また、それとは別に、実に興味深い話ではあるものの、
ちょっと怪談とは言いがたいという内容のものもあります。奇譚と言えばいいのか。
今回はそういう奇妙な話を載せたいと思いますので、
怖い話を期待される方はスルーをお願いします。

大阪府内で寝具店を経営されているYさんから聞いた話

Yさんは40代の男性で、大きな寝具店を経営されている方なんですが、
それは話とは特別関係はありません。Yさんの母の弟、叔父さんの体験したことなんです。
ですから又聞きというわけですね。この叔父さんは岐阜県在住で、
神主の資格を持っています。といっても神社に常勤しているわけではなく、
畑作農家の方なんですが、その地域にある小さなお社を5つほど受け持っていまして、
季節の祀り事をとり行ったりしているのだそうです。
かなり朽ち方がひどいようなお社で、普段は固く戸が閉まってるようなところでも、
時としてロウソクが灯ったりしてることがありますが、
そういうのはYさんの叔父さんのような方がやっておられるんですね。
で、叔父さんはまた、その地域の建設会社に頼まれて種々の祈祷を担当してもいたんです。
棟上祭、地鎮祭とかああいうやつです。

その他にも、例えば工事で事故が続いたりした場合、
依頼されて祈祷しにいくなどのこともあるそうです。といっても、叔父さんいわく、
「これは霊感とかそういうもんじゃなく、たんに定まった儀式をやるだけ」
まあそうでしょうね。神主さんがお祓いをして悪霊を追い出すなんてのは、
小説や映画でしかないことだと思います。
で、その建設会社が林道工事を請け負いました。2kmばかりの砂利の林道を通すだけで、
何の難しいところのある仕事ではありません。
ただ木を伐って根を掘り返し、それらを廃棄して砂利を敷く。これだけです。
ところが、その工事がどういうわけかはかどらない。
事故が起きたわけじゃないんですが、現場監督の親族が亡くなったり、
作業員の間でインフルエンザが流行ったりしたんです。

でもこれ、親族といっても90歳過ぎの方で老衰でしたし、
インフルエンザも日本全体で流行っていたので、別に不思議というわけではありません。
それでも工事を進めていくうちに、道を通す予定の場所から重機が変なものを掘り出しました。
これ、石碑や古い墓などだったら、叔父さんの出番なのですが、
出てきたのはなんと、青銅製の外国人の胸像だったんです。ほとんど錆はありませんでした。
やや禿げ上がった額に、立派な鼻髭で、高さ1m50cmほど。
顔立ちから、年齢はおそらく50歳以上でゲルマン系に見えたそうです。
これだけで、古いものでないことはわかりますよね。
明治以降であることは間違いないでしょう。台座にはプレートがついていた跡があったそうですが、
プレート自体は見つかりませんでした。建設会社のほうで、貴重なものかも知れないと思って、
いろいろ調べたんですが、誰の像なのかまったく見当がつきませんでした。

明治時代には、有名なクラーク博士などもそうですが、
政府に雇われた外国人が、農村部にも入って文明開化の手助けをしていたので、
そういう人のものかと思って地方史を調べたものの、手がかりはなし。
そのあたりには学校も、政府の機関も、民間会社もなかったんですね。
胸像はとりあえず、工事の拠点になっているプレハブ小屋の外に置かれたんですが、
その翌日です、胸像の前に大きな狸が2匹、折り重なって死んでいるのが見つかったんです。
その狸はどちらも雌で、体に傷跡はありませんでした。近くの藪に埋めたのですが、
さらに1日おいて、また1匹狸が死んでるのが発見され、
気味が悪くなった会社の依頼で、叔父さんが呼ばれたわけです。
叔父さんとしては、経緯を聞いても意味不明でしかなかったのですが、
まあ型通りの神事を行ったということでした。

そのお祓いが効いたのかはわかりませんが、それからはおかしなこともなく、
工事はどんどんはかどって、予定通りに林道は完成したんですね。
胸像のほうは、地元の大学に預けて調べてもらうことになりました。
と、こういう話だったんですが、これを聞いて自分が思いあたったのは、
金沢の兼六園にある「日本武尊像」のことです。
これは有名な話なので、ご存じの方もおられるでしょう。
日本で一番最初に作られたといわれる銅像で、
西南の役での石川県の270名の戦死者を祀ったものだそうですが、
造られてから100年以上たった現在まで、この像にはなぜか鳩や烏が寄りつかず、
鳥の糞で汚れることがないということが知られています。
それを不思議に思った地元大学の教授が、像に使われた金属の成分分析を行ったところ、

普通は合金に2%ほど含まれるヒ素の量が、この像の場合は、
10%にも達していることがわかりました。これが原因で鳥が近づいてこなかったんですね。
ちなみに、この研究は2003年度のイグ・ノーベル賞(ユニークな研究に与えられる賞)
化学賞を受賞しているのだそうです。
ただ、鳥が近づいてこないのはヒ素の毒性によるためではなく、
微妙な異種金属の配合が、鳥が嫌がるある周波数の電磁波を発生させているからとか、
ヒ素を含む金属を分解するバクテリアが発する臭いを鳥が嫌うからとか、
そういう説が出されているようです。
この話の外国人の胸像にしても、ヒ素成分のせいで狸が死んだとはちょっと考えられません。
そのレベルの汚染でしたら、人間も無事ではいられないでしょう。
胸像を預けた大学の研究室は歴史系ですので、成分分析などはされていないようです。

ねえ、不思議な話だとは思いませんか。
自分もこれを最初に聞いたときには興味を惹かれまして、
胸像がある大学に見学させてもらいにいこうかと思ったくらいでしたが、
忙しさのせいもあってのびのびになっています。
ただ、胸像の人物については自宅でも調べることはできそうでしたので、
ネットでいろいろ検索してみたんですが、どうにもわかりません。
おそらくその地にゆかりのある人物ではないのでしょう。もともと別のところにあった像が、
その地に運ばれて、故意か事故かはわかりませんが埋められてしまった。
そう考えるしかないようです。狸が死んだのは偶然・・・なわけはないですよね。
不可解ですが、まさか狸の解剖をするわけにもいかなかったでしょうし、
これもわからないとしか言えません。ということで、もしも続報が入りましたらお知らせします。

兼六園の「日本武尊」像





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