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バイク女子と水の話

2016.02.14 (Sun)
今晩は、よろしくお願いします。私はバイクに乗るんです。
ご存じですかね、ヤマハのSRっていう400ccのです。
通勤に使ってるわけじゃなくて、主に休みの日にツーリングに行くだけですけど。
それで私、コーヒーが好きなんです。毎日飲みます。
この2つの趣味をなんとかコラボできないかって考えてたら、
バイクの雑誌で面白い企画が載ってたんですよ。
バイクにコーヒーメーカーと粉、キャンプ用のストーブ、これ湯沸し用の小さいやつです。
あとカップなんかを積んで、名水と言われる水のある場所まで走るんです。
ええ、水を汲んだら場所を見つけて、コーヒーを作って飲んで帰ってくる。
コーヒーの野点。ね、楽しそうでしょう。さっそく用具を買って、
関東名水案内っていう本も買って試してみました。大満足でした。

それからは休みの日ごとに、10ヶ所以上を回りました。
あ、はい。バイク仲間の人と行ったこともありますが、一人のほうが多かったです。
そのほうが気楽だし、事前に計画を立てたりもしませんから。
コーヒーの道具はザックに入れてあるし、休みの日に起きだして晴れていたら、
本を見て今日はここへ行ってみよう、って感じでした。
コーヒーの味の違いですか。うーん、難しいですね。
毎回同じ種類の豆で淹れてるわけでもないし。でも、いい水というのはわかる気がします。
名水と言われるものでも、コーヒーに合う、合わないはあるんじゃないかな。
お茶だとまた違うかもしれないし、好みの問題と言われればそれまでですが。
それで・・・場所は言わないほうがいいですよね。
近県の川の水源地って書かれてるところに行くことに決めたんです。

いわれは、明治以前の昔、山岳宗教で山に入る前の修験者たちが、
それを使って体を清めたという、ありがたいお水だということでした。
行程は、一部高速を使って片道3時間くらい。10時に出て途中で昼ごはんを食べ、
さらに1時間くらい走ってコーヒーを飲み、4時ころには戻ってくる。
ね、贅沢な休日の過ごし方でしょう。
でも、このことがあって以来行ってないんです。あまりに気味の悪い体験でしたから。
その日は天気がよくて、6月の、バイクで走るのに絶好の日和だったんです。
高速をスピード出して走るより、国道、県道をタラタラ走るほうが気持ちよかったです。
途中でお蕎麦の店に入って、それも美味しかったですよ。
けど、その後急に空が暗くなってきて、雨具は持ってましたけど、
ああ、雨になるのは嫌だなって。で、水源地へ行く道もよくわからなかったんです。

ナビなんてつけてないし、地図を見てだいたいの勘で来たんですけど、
どんどん景色が田舎になって道が細くなっていって・・・
ええ、止まって地図は確認して、間違ってはいないようだったんですが。
案内とかそれらしいものがなかったんです。それまでは、
「◯◯の名水」とか、道路や道の駅に看板が出てる場所が多かったんですけど。
ただきれいな渓流沿いの道だったので、
わからなかったら渓流の水を汲んでコーヒーを淹れようとも思ってました。
県道から一つ内側の道を走ってると小さな商店の脇に木の看板があったんです、
「◯◯水源地」っていう。ああ、これだなと思って、
さらに道が細くなった集落に入っていったんです。暗かった空がますます暗くなってきて・・・
まあ天気は偶然だと思いますけど、なんとなく心細くなってきました。

で、道が大きな岩山に突きあたって途切れていたんです。
まわり10軒くらい家がありました。どこも田舎の一軒家で立派な瓦屋根の。
それでです。道に面してる4軒なんですが、誰か人が出てたら道を聞こうと思って見てたら、
どの家も玄関先に「忌中」の札が出てたんですよ。
でも、それってありえないでしょう。いくらなんでも隣と向かいの4軒で、
最近亡くなった人がいるなんて。ああ、昔のをはがさないでいるのかもしれないって。
私もそう考えたんですけど、どれも札は新しかったです。
気味悪いのでUターンしようとしたとき、1軒の縁側から庭に人が出てきたのが、
見えたんです。30代くらいの髪の長い男性でした。
「あの、スミマセン。◯◯水源地ってこのあたりですか。本を見て来たんですけど」
でも男性は私のほうを見もしないで、庭の小屋に入ってシャベルを出してきました。

「あの、スミマセン。東京から来たんですけど」さらに声をかけると、
のろのろとこっちを見て「水は腐った。だから死人が出てる」
びっくりするような大声で怒鳴ったんです。怖かったですよ。
だから大急ぎで引き返してその集落を出ました。その頃には気力がなくなってて、
もう帰ろうと思ったんです。ホントに雨が振りそうでしたし。
さっきの看板のところまで戻って見直していたら、商店からおばあさんが出てきました。
優しそうな様子だったので、「あの、その看板の水をいただきに来たんですけど」
って聞いてみました。そしたら、
「ああ、それはご苦労さんだね、だけどねえ、水は止まっちゃったんだよ」
そう言って少し考えてから「でもねえ、せっかく来たんだし、この先に大岩があっただろ。
あの横にもう一ヶ所お水所があるよ」またあの集落に戻るのは嫌でした。

でも、おばあさんの話だと別から回って行くということだったので、
もう一本先の横道へ入ってみました。
200mほど先に「お水所」と書いた木札のある東屋があったんです。
中には誰もおらず、かなり大きな石を掘った手水鉢のようなのがあって、
樋から中にちょろちょろ水が落ちていました。そのときはきれいな水に見えたんですけども。
でも、ペットボトルを出して汲んでみると、細かい灰色のものがうようよしてたんです。
すごく小さくて見えにくいので、くもり空にかざしてみたら・・・
それ、生き物だったんです。形はオタマジャクシみたいでしたけど、
2mmくらいのオタマジャクシっていないですよね。叫びそうになりましたが、
ペットボトルごとその場に置いて、バイクに乗ったとたん、
急に首の後ろが重くなりました。手でヘルメットを押されてるような感じです。

とにかくバイクを走らせて、県道から国道に入ったあたりで雨が落ちてきました。
止まって雨具を出したりせず、濡れて走りました。
ええ、何かから逃げてるような気分でしたよ。
だから高速に出ると、雨なのにスピードを上げたんです。
自分の部屋が恋いしくてしかたなくて、とにかく早くベッドに入って横になりたい・・・
そう思って。そしたらスピードを出すと、首の重さがやわらぐ感じがしたんです。
そうですね、いけないんだけど途中130km以上出てたんじゃないかな。
はい、事故にならなくてよかったです。
雨は一定以上は強くならなくて、都内に入ったあたりでやみました。
高速を降りると、首筋の違和感はなくなっていたんです。そのときなぜか、
「逃げ切った」って思ったんですよ。何から逃げ切ったのかはわかりませんけど。






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