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たとえで語る物理

2016.02.17 (Wed)
えー今日はあまり気乗りのしない話題です。
この間「重力波観測」という項を書きましたら、
合同事務所の仲間がそれを読みまして、「お前、理系でもないのに偉そうに、
この間ヒッグス粒子とやらが発見されたときは何も書かなかったじゃないか」
みたいなことを言われました。でまあ、悔しく思ったんですが、
かといって書く自信があるかといえばそうではない。

一つには自分自身の理解が及んでいないこと、
もう一つは、みなさんにわかりやすく書くのが難しいからなんですね。
しかしながら言われた以上はチャレンジしてみます。
これ、似たようなことが月と竹取物語のときにもあったんですけど。
たとえを用いてできるだけわかりやすく書きたいと考えています。
間違いがあれば詳しい人は指摘してください。  関連記事 『竹取物語小考』

まず、ヒッグス場とヒッグス粒子について。これはあちこちで書かれていますが、
重要なのはヒッグス場のほうです。みなさんは小学生のとき、
砂鉄を散らばした中に磁石を入れて、磁場を観察したことがあると思われます。
ヒッグス場もああいうものです。電磁場は、激しく揺すぶってやると光子(フォトン)
が出てきますが、普通は電磁場の実験で光子のことを考慮することはないですよね。
ヒッグス粒子も同じようなもので、ヒッグス場を激しく揺さぶる(高エネルギーを与える)
と出てきます。波の飛沫(しぶき)のようなものとでも言えばいいのか。
磁石と磁界


ただ、ヒッグス場自体は観測が難しいので、
ヒッグス粒子を見つけることで、ヒッグス場があるという証拠になるわけなんですね。
ちなみに、ヒッグス粒子はマスコミによって、
「神の粒子(God particle)」と呼ばれたりするようですが、
世界の物理学者の中には、この言い方を嫌っている人が多いみたいです。
理論というのは、数学的に美しいものが好まれるのですが、
ある種の素粒子だけが質量を持つというのは美しくない。
むしろじゃまな存在であるので、
「クソ粒子 (Goddamn particle)」などと言う人までいます。

そう、このヒッグス場の中に、ある種の素粒子が入り込むと質量を持ってしまうんです。
ある種の粒子というのはWボゾン、Zボゾンなどですが、ここは深入りは避けます。
ヒッグス場は雪の積もった平原と思えばいいでしょう。
多くの粒子は鳥のようにその上を飛びますので、ヒッグス場からの影響を受けません。
電子はスキーで平原を滑っています。ですから鳥のように完全には自由にできない。
雪の上で、ほんのわずかの質量が与えられてしまいます。
ところがWボゾン、Zボゾンなどは、スキー靴でドカドカ雪の中を歩いている。
だからとても動きにくい。この動きにくさを質量と考えてもらればいいでしょう。

ヒッグス場はなぜ考えられたのか。物理学の目標の一つに、
「重力波観測」の項で書いた、この世界にある4つの力(電磁力、強い力、弱い力、重力)
を統一して記述したい、ということがあります。これらの4つは、
宇宙の始まりでは一つの力だったのが、急速に宇宙が広がっていく中で、
4つに枝分かれをしてきた、と考えられています。
ですから、どうやって枝分かれをしたかを考察することは、
宇宙の始まりへと近づいていくことになるわけですね。

重力をのぞいた3つの力の統一に関する理論を「標準理論」といいます。
で、それまでの物理学では、これらの力にかかわる素粒子は質量を持たない、
と考えられていました。ところが実際に観測すると質量のあるものが混じっている。
物理学者はとても困ってしまい、そこでヒッグス場という考え方が出てきたのです。

宇宙の始まりでは、すべての素粒子は質量を持たなかったと考えられます。
自由自在に平原を移動することができた。ところが宇宙の温度が下がるにつれて、
ヒッグス場に「自発的対称性の破れ」が起き、「相転移」が生じました。
雪が積もった、と考えてもいいでしょう。
そこで質量が出てきてしまったわけです。この「自発的対称性の破れ」というのは、
日本生まれの天才、昨年逝去された南部陽一郎博士が考えだされたものですが、
説明するのがひじょうに難しい。ここでは最もわかりやすいたとえと言われている、
美人女性物理学者、リサ・ランドール博士の話を借りましょう。
下の画像だと、芸能人みたいですね。
Dr.Lisa Randall


中華屋のような丸テーブルがあるとしましょう。各イスごとに一個ずつ、
水の入ったコップが置かれているとします。
席に座る人は左右対称のどっちのコップをとってもいいわけですが、
ある人が、もしたまたま右のコップをとってしまうと、他の人もそれに習うでしょう。
これで「どっちのコップをとってもいい」という状態から、
「右のコップをとらねばならない」という形に、対称性が破れたわけです。

「自発的」というのは、誰かに命じられたわけではなく、
マナーの本に書いているからという理由でもなく、
たんに喉が渇いたという自らの欲求から、対称性が破れてしまったということです。
「相転移」というのは、水の温度がだんだん下がっていって氷に変わるようなもので、
場の世界が一変する。自然界ではいろいろ見ることができます。

さて、ヒッグス場の論文は1964年、ピーター・ヒッグス博士によって出されましたが、
その証拠が約50年の後に観測されたということなんですね。
論文は2つ書かれましたが、どちらも2ページに満たない短いものだったそうです。
で、最初の論文は、提出した科学雑誌の審査で弾かれてしまった。
当時の審査員には理解できなかったんでしょう。

ところが2番目の論文の査読に、上記の南部博士が加わっていた。
これは大変ラッキーなことでした。
南部博士は論文を読んで重要性を認めた上で、さらにアドバイスをしました。
「何か将来に発見されるべき、予言的なことを書いておいたほうがいい」
そこで、ヒッグス博士は「場からは新しい粒子が生み出されるだろう」こうつけ加えたのです。
後の回想でヒッグス博士は「おそらくこの一文を最後に加えたため、
私の名前がヒックス粒子という呼称に残されたのだと思います」と述懐しているそうです。

さてさて、長くなってきましたので最後にしますが、
このヒッグス場が生み出す質量と、重力は基本的には関係がないと見られています。
ヒッグス場と重力場は別のものなんですね。
「標準理論」の中に重力を組み込むのはとても難しいのです。
ちなみに素粒子の重力理論の一つに「超弦(超ひも)理論」というのがありますが、
これが考えられる最初のきっかけをつくったのも、前述の南部陽一郎博士なんです。
素粒子は単なる点ではなく、じつは見えないほど小さい、
振動するひもなのかもしれない、というアイデアでした。
・・・わかりやすかったでしょうか。





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コメント
bigbossmanさん、こんばんは!!^^

私は理系のはしくれですが、ヒッグス粒子を人に説明可能どころか、、情報を全く持てていません。^^:敬意を表します。^^
くわがたお | 2016.02.17 23:00 | 編集
コメントありがとうございます
いやいや、かなり曖昧な理解をしてるんです
特に数式が入るともうほとんどわかりません
そういえば、くわがたおさんのお名前を、
高校数学の問題を解くブログの解答者欄でお見かけしましたよ
bigbossman | 2016.02.18 06:01 | 編集
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