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伝の木坂の話

2016.02.23 (Tue)
これ俺が中学校2年のときのことだから、今から6年前の話なんですけど、
あんまり怖くないというか、すべてが俺の夢とか幻覚で説明ついちゃうっていう。
まず、そのことをお断りしておきます。
あれは2学期の期末試験が終わった週のことで、もう少しで冬休みだから、
みんななんとなくうかれてる感じだったんです。あ、みんなというのは水泳部の仲間のことで。
もう大会なんてないし、学校のプールはコケだらけだし、
週に3日、1時間くらいランニングと筋トレやって活動は終わりだったんです。
まあ、その後にアスレチッククラブに通ってるやつも多かったですけどね。
で、金曜日だったと思うけど、武見ってやつが頭に包帯を巻いて学校に来たんです。
話を聞くと、自転車で坂で転んだって言う。
ええ、中学校から少し離れた場所にある伝の木坂って名前のダラダラした坂なんですよ。

そのあたりは市の開発から外れてしまってて、
昔からある道は広いんだけど、車通りは少ないんです。伝の木っていう名前の由来?
いや、わかりませんね。当時から気にしたことはなかったです。
市史とかには載ってるんじゃないかな。坂は長さ100mくらいですかね。
突きあたりに公民館があって、その横に細い道が続いてます。
でね、片側、坂を下って左側のほうにガードレールがあって、その外は草ぼうぼうの空き地。
そこは昔、川だったのが、河川工事でなくなったって話です。
左側は民家の中に商店がちらほら。一番大きい店が「伝肉店(でん にくてん)」って肉屋で。
ここね、場所も良くないし、スーパーなんかに押されてさびれてるって思うでしょ。
ところがそうじゃなかったです。安い上に肉の品質がいいってことで、
けっこう主婦の固定客がいたって話です。今はそこにはありませんけど。

ああ、すみません。でもね、この肉屋がなんか話に関係があるんじゃないかと思うんで。
それで、武見は頭を打ってしばらく倒れてたそうですが、
通りかかった人が顔面血まみれなのに驚いて救急車を呼んでくれて。
でもね、CTスキャンとかしても頭の骨も内部もなんともなかったそうです。
で、伝の木坂は「自転車で通ると転ぶ」って話が、小学校のときからあったんです。
ええ、都市伝説っていうのかな、幽霊の話ですよ。よくあるでしょ。
坂を下ってる途中で不意に自転車が重くなった感じがして、
後ろを見ると人が荷台に乗ってたとか、手だけが後ろを引っ張ってたとか。
そういうことがあったのか、もちろん聞きましたよ。そしたら、
「いや、重くなったなんてことはねえ。それに俺のチャリは後ろ、荷台どころか泥カバーもねえ。
 気がついたらアスファルトが見えて、ゴッチンって頭を打ったんだよ」

でね、その場には部のやつが俺入れて4人いたんですけど、
そのうち2人が、小学校のときにやっぱり自転車で転んだことがあるって。
大ケガではないけど血が出たそうです。でね、これ次の土曜休みの日に、
みなでチャリで行って坂を下ってみないかって話になったんです。
で、横から走ってるところを動画撮ろうって。今考えると物好きな話ですけど、
当時はそういうの流行ってましたから。日曜の10時って約束して、来たのは3人でしたね。
カメラはデジカメの動画撮影。今とは違ってハイビジョンじゃなかったです。
天気はどんよりと曇ってて、人はあんまり出てなかったですけど、肉屋の客はちらほらいました。
まず一人目が坂を下りてきて、それを正面から、真横から、後ろ姿と撮る。
時間にすると15秒くらいかなあ。あっという間ですよ。あ、それと、
撮った場所が、真向かいに肉屋があるとこで。

なんでそこかっていうと、武見が転んだというのが肉屋の前って言ってたから、
ガードの後ろの草むらに入って撮れば、人のじゃまにはならなかったし。
で、一人目は俺らの前にきたらわざとハンドルを揺らしたりしたんですが、
転ぶこともなく戻ってきて、再生したけどおかしな物は写ってなかったんです。
2人目も同じでしたね。走ってる最中に違和感を感じたりもなし。
最後が俺の番になって・・・転んだと思いますか?いや、それが何というか・・・
何事もなく仲間のとこに戻ってきたはずだったんですよ。
でね、オチャラけた姿で走ってる俺が写ってましたが、特に変わった様子はない。
そんときに仲間の一人が、「あれ、何だこれ?」って言い出しまして。
そいつが指差してるのは俺じゃなく、仲間の正面に来たときに写った
肉屋の店の前だったんです。そこに長い藁包みみたいなのが置いてあって。

そうですね、店の入口の真ん前で、長さは人の背丈くらいかなあ。
ええ、頭や足は見えなかったですが、中に人がくるまれてるってこともありそうでした。
デジカメのモニターだから小さくて細部はよくわからなかったです。
でね、不思議なのは、実際には肉屋の前にはそんなものは置いてなかったんです。
だって店に入る人の足に引っかかっちゃうでしょう。
みなが不思議だなあ、と言いましたよ。もちろん道を横断して肉屋の前まで行ってみました。
やっぱ何もなしです。でね、動画は一人ずつ重ね撮りしたんですが、
「これおかしいから家のパソコンで静止画にして拡大してみる」
カメラ持ってきたやつがそう言って、そこで解散になったんです・・・
でもね、これも変な話で、いつもならせっかく集まったんだから、ゲーセンに行くとか、
誰かの家でゲームやるとかもっと遊ぶはずなんですよ。

だからねえ、やっぱり俺の夢なのかもしれないです。
で、その日は家に帰って昼飯、夕飯を食って少し勉強して風呂入って寝た・・・
んだと思いますけど、その記憶もあいまいで。
でもね、確かに自分の部屋のベッドに入ったはずなんです。
そこで夢を見ました。音つきでしたよ。そのかわり視界は真っ暗で。
ああ、意味分かんないでしょう。俺が体を何かにくるまれてて、顔も覆われてたってことです。
身動きが取れなかった。まわりで大勢が怒鳴ってるのが耳に入ってきたけど、
日本語だとは思うものの、何を言ってるかわかんんかったです。
昔の言葉かもしれません。ただ「転がせ」みたいな内容だというのはなんとなくわかりました。
体を担ぎあげられた感覚があって、それからドンと放り出され、
視界がないままでゴロゴロゴロって転がってく。

でね、すごい衝撃があって、強烈に頭を打ったんですね。
ベッドから落ちたかと思ったんですが、目を開けると仲間の顔が見えました。
俺は伝の木坂に仰向けに倒れてたんです。1mほど後ろに自転車が転がってました。
「おい、大丈夫か」 「うわ、血が出てる」体を起こすと、痛いのは頭だけで、
手足はなんともなかったです。額に手をやるとべっとり血がつきました。
「救急車呼ぶか?」 「いい、いい、たいしたことない」そう強がってたら、
肉屋から店員が2人出てきて、俺を抱えて道路脇につてれていき、
額の消毒をして包帯を巻き、電話番号を聞いて家に連絡してくれたんです。
若いほうの店員の人が「ここの坂ね、転ぶ人が多いんだよねー」って言ってたのを覚えてます。
それにしても、家に戻って1日が過ぎ、寝て夢を見たと思ったのは何だったのか。
だって10時間以上も俺の記憶の中ではたってたことになるんですよ。

ね、わけわかんないでしょ。親に連れられて病院に行きまして、
やはり武見と同じで骨や中身は異常なし。ただ額は2針縫って、ほら、まだ傷が残ってます。
自転車は肉屋であずかってくれて、後で親父が車で取りにいったけど、
壊れたりはしてなかったです。仲間の話だと、特に何かに引っかかったわけでもないのに、
急に前輪が跳ね上がり、俺の体だけが前に投げ出されて頭から道路に落ちたって。
いくら坂だってそんな転び方しないですよね。ビデオ撮るからスピードも出してなかったです。
あ、それで、動画のほうは消さないでて、後で仲間の家でパソコンの大画面で見ました。
ここでね、何かおかしなものが写ってるとかだと、話としては面白いんでしょうが、
ただ俺がスタントマンみたく派手にすっ転ぶ場面だけでした。
今ならyoutubeに出したかもしれませんよw ま、こんな話です。その後2年ほどして、
伝肉店は近くのにぎやかなとこに場所を変えましたが、今でも繁盛してるみたいです。

ばななあななおおs

 


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