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心霊主義と英仏怪談

2013.08.12 (Mon)
 心霊主義(スピリチュアリズム)というのは、定義はいろいろあるでしょうが、
自分は19世紀以降、イギリスやフランスで広まった生命の死後存続仮説と、
霊魂の科学的根拠に基づく研究ととらえています。
霊媒を通しての交霊会が各地で盛んになり、死者との通信などが試みられました。

 この思想には、コナン・ドイルなどの文化人や多くの科学者が参加しています。
今からすれば、何を非科学的な、と言われかねない霊の話ですが、
当時は科学の進展により、キリスト教の力が弱まり(天文学や進化論など)、
それまで宗教が一手に扱ってきた魂について、科学的なアプローチが可能ではないかとする
期待感が高まったのです。この思潮は新大陸アメリカにもおよび、
エジソンが霊界ラジオの開発をしていたというような話もあります。

 当時の交霊会において霊媒の奇術的なトリックが暴かれた例も多々あります。
当時の科学者は世間知らずな騙しやすいタイプも多かったようですし、
何よりもヨーロッパには上流階級に取り入るための詐欺の伝統が脈々とあったからです。
錬金術や占星術もある意味そうですし、
カリオストロ伯爵などのアヴァンチェリエ(山師)と言われる人物もそれです。
擬似医療行為や永久機関詐欺のようなのもこの範疇に入るでしょう。
これらは下層階級が上流の人々に取り入るための手段として発達してきました。
このあたりの歴史を調べると興味深いものがあります。

 ホラー小説アンソロジー異形コレクションの38巻『心霊理論』中に、
『私設博物館資料目録』井上雅彦という短編があります。
本邦の初期の心霊研究にまつわる怪しげな資料がずらずらと紹介される話なのですが、
上記の心霊主義時代にいったい何があったのか、
それはもはや鼻にガーゼを詰め込んだとしか見えないエクトプラズム写真などからしか
うかがい知ることはできません。そこに写っているものの真偽はもはや永久にわからない、
そんなもどかしい気分を存分に味わえる作品です。

 それはともかく、このスピリチュアリズムが盛んになった時期には、 
怪談ブームのようなことがあり、多くの佳作が生まれています。
ディケンズの『信号手』、ラドヤード・キップリングの『彼等』、
アルジャノン・ブラックウッドの『空家』、ヒュー・ウォルポール『ラント夫人』、
レ・ファニュの『クロウル奥方の幽霊』、ウォルター・デ・ラ・メア『失踪』、
ジェイコブス『猿の手』、アーサー・マッケンの諸作などが有名ですね。
この流れはゴシック小説の隆盛とも重なり、『ジキルとハイド』『ドラキュラ』は
誰でも知っているでしょう。

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