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ラブクラフトと映画『ダゴン』

2013.08.12 (Mon)
 「人間の感情の中で、何よりも古く、何よりも強烈なのは恐怖である。
その中で、最も古く、最も強烈なのが未知のものに対する恐怖である」
                 (ラヴクラフト『文学と超自然的恐怖』)

 さてこれもホラー界の大御所の一人、クトゥルー神話で知られるH・P・ラヴクラフトに
登場してもらうのですが、実はラブクラフトを語る上で格好の映画があります。
スチュアート・ゴードン監督『ダゴン』2001。
『インスマウスの影』を下敷きとした、一般的にはB級と見られることの多い映画です。
 これはわざとやっているのかもしれませんが、この映画にはラヴクラフト作品とは
相容れない要素がいくつか出てきます。

 その一つは女性です。
映画には襲われ役&色気担当の女性2名と主人公を誘惑する美人のイカタコの女王が出てきますが、
本来のラヴクラフト作品は女っ気はなく、出てきても重要な役割をはたすことはありません。
まずここが違います。
 もう一つ、映画はB級らしい残酷描写がたくさん出てきており、
その中でも生きたまま顔の皮を剥がすシーンが見どころなのですが、
ラヴクラフトの作品には肉体損壊の恐怖というのはあまりなく、
登場人物の多くは太古の秘密を知ったがための狂気に蝕まれていきます。
クトゥルーのゲームでもそうですが、
徐々に狂気に陥いっていく恐怖というのが彼の作品では重要なポイントです。

 つまり『ダゴン』は典型的な娯楽としてのホラーなのですが、これと比べると、
ラヴクラフトの作品は、娯楽雑誌に描いていながらもあまり娯楽性が高いとは言えず、
作品からうかび上がって見えてくるのは神経質で人嫌いな作者の人物像です。
また、そういう人物だからこそあのような壮大な神話的物語を構築することができたのだと思います。
(ただし神話大系が整ってるわけではありません。それは後代の人の仕事によるところが大きい)
『クトゥルーの呼び声』は一読すると地味な作品で、
ウイアード・テールズ誌によってボツにされた経歴がありますが、
これなど実にラブクラウトの本質が表れていると自分は思います。

 怖い代表作としては上記した『インスマウスの影』や『エーリッヒ・ツァンの音楽』でしょう。
あと『ダンウィッチの怪』の後半はなんか『ウルトラQ』を思わせるものがあります。
この手の活劇もラブクラフトの作品では異質です。
また、クトゥルー神話のモチーフはさまざまな作家によって書き継がれており、
日本では小林泰三『玩具修理者』などが有名ですね。

『ダゴン』イカタコの女王


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