FC2ブログ

AIは直木賞の夢を見るか2

2016.03.29 (Tue)
さて、話変わって次はこのニュース。
『人工知能(AI)が人間と共同で「執筆」した短編小説が、
国内文学賞の1次審査を通過した。
応募した2チームが21日、東京で報告会を開いて発表した。
韓国での囲碁のトップ棋士への勝利に続き、人工知能の飛躍的な能力向上を印象づけた。
医療や投資などの分野にも応用が始まっており、
普及が進めば身近な生活を大きく変えることになりそうだ。

報告会で公表された作品のひとつ「コンピュータが小説を書く日」の終わりの部分だ。
松原仁・公立はこだて未来大教授が代表を務めるチーム、
「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」が、第3回日経「星新一賞」に応募した。
物語の構成や登場人物の性別などを人間があらかじめ設定。人工知能が状況に合わせて、
人間が用意した単語や単文を選びながら「執筆」したという。

小説創作ソフト「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の開発を進めている
公立はこだて未来大学の松原仁教授らは21日、星新一賞(日本経済新聞社主催)に4作応募し、
一部は1次審査を通ったが受賞には至らなかったと発表した。
囲碁ソフト「アルファ碁」がプロ棋士を降すなど、
盤上ゲームでは力を発揮した人工知能(AI)だが、小説ではまだまだ力不足のようだ。』

この短編小説については、ネットで発表されていますので、
最後にリンクを貼りつけておくことにします。

ふむふむ、設定や登場人物は人間側で考えてあり、コンピュータには、
意味の通ったひとつながりの文章を書かせるのを重視したということですね。
まあ確かに、それだけでも相当の進歩であるとは言えます。
みなさんも翻訳ソフトを使って、「なんだこの意味不明なひどい文章は」
と思われた経験はあると思います。言語を自在に操作する、
というのはAIにとっては苦手な分野の一つであるんですね。

とはいえ、詩や俳句の分野においては、作者がわからないようにして見せれば、
人間が書いたのか、AIがつくったのか区別できないレベルまでになってきてはいます。
ただ、長い文章はまだ難しいので、その方面へのアプローチが主眼なのでしょう。
あと、小説のテーマ、筋立て、登場人物などについても、
人間の設定ではなく、コンピュータが独自に選んで書き進めていくというのも、
それほど難易度が高いわけでもないように思います。
実際、小説家の中村航氏は、自身の出身大学である芝浦工業大学と共同で、
小説のプロット(小説を書く際に必要となる、構成やおおまかなあらすじを記した設計図)
を作成するソフトを開発しています。

『このソフトを開発するにあたり、芝浦工業大学の米村俊一教授は、
プロトコル解析という方法を活用しました。
プロの小説家である中村氏に頭の中で考えたことを言葉に出してもらい、
それを解析することで、中村氏がどのような思考回路で小説の筋書きや構成を
組み立てているのかを体系化し、これをシステムに実装しました。
利用者はソフトから出される質問に答えていくと、
ソフトが小説の筋書きや構成を作ってくれます。
これまでまったく小説を書いたことがない人でも小説の基礎を作ることができるわけです。』


ただこれ、人間の補助ならともかく、
AIに主体的に小説を書かせるとするなら、目的が何なのかは難しいですよね。
目指すところはどこになるのでしょうか。
今のところは単なる技術的試行錯誤なんでしょうが、
自分などは、「売れる小説」を目指すのか、それとも「いい小説」を目指すのか、
なんてことを考えてしまいます。「売れる小説 = いい小説」
とは必ずしも限らないでしょうしねえ。もし売れる小説を目指すのであれば、
ラノベも含めたベストセラーの中からキーを集めてプログラムし、
いい小説を目指すなら、夏目漱石などの古典純文学の中から・・・

しかしここは考えどころです。人間であれば話は難しくないのですが、
コンピュータの書くことに対するモチベーションはどうなのでしょう。
「俺は歴史に残る、ドストエフスキーを超える偉大な小説を書いてやる」
「ベストセラーを書いて直木賞を取り、
莫大な収入を得て、今までバカにしたやつらを見返してやる」
まずコンピュータはそう思わないでしょうね。

将棋や囲碁などの、ルール一定で目的は相手に勝つことのみ、
計算が複雑化しただけのゲームとは違って、
小説を書くという場合は、その動機がどうしても内容に反映されてしまうのです。
また人間の場合は、その生育歴によって関心を持つ分野が違ってくるでしょう。
もちろんAIが進化すれば、ランダムにテーマを自分で決めて書くことは、
できるようになるでしょうが、これはAIが創作を楽しいと感じることができるかどうか、
そういう面とも関係してくると思います。

さらに、AIが書いた小説を評価するのは、今のところ人間ですよね。
ですからAIは人間の好みというのを熟知している必要がある。
しかしこれには総合的な人間学が必要で、それができるのならば、
小説の量産化を目的とするなら別ですが、何も機械ではなく、
人間が書いたほうが早いということにならないでしょうか。

それとも、いずれAIが自我を持ったあかつきには、
人間にはさっぱり意味がわからなくても、AL同士の間では評価される小説、
などというものができてくるのか。もしそうなれば、
それはそれで読んでみたいなという気はしますが。 
関連記事 『AIは直木賞の夢を見るか』
第3回星新一賞応募作品『コンピュータが小説を書く日』PDF

星 新一氏





関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1076-b1068e95
トラックバック
コメント
 こんばんは、野崎です。

『作家ですのよ』……星新一のショートショート『殺し屋ですのよ』のパロディですね。なるほど、面白い試みだ。

 この先、なんでもかんでもコンピュータがやるようになったら本当に星新一作品みたいなディストピアになってしまうんではなかろうか。怖いなぁ……。

 確かに「売れる小説=いい小説」の公式は成立しませんよね。
 私はかなり癖の強い(婉曲表現)メルヒェン(本人談)を書いている作家が好きなんですが、友人に勧めると「表現がキツくて最後まで読めん」と言われます。『Missing』面白いのにな。
 そんな風に「いい小説」の基準は読者ごとに違うし、「売れる小説」も時代によって変わってきますからね。
 コンピュータはデータから「今売れてる小説」を分析するのは得意でしょうが、「これから売れる小説」の予測は難しいんじゃないかな、と思います。というかそうあって欲しい。

 長話失礼しました。
野崎昭彦 | 2016.03.30 00:04 | 編集
コメントありがとうございます
おっしゃるとおり、人間には好みがあって
ですから多様な創作作品が店にならんでいるのですよね
これは書くための動機が一人一人異なるせいがあるのだと思います
自分なんかはホラーが好きで、人を怖がらせてやろうとか
AIの場合はそこが難しいと思うんです
マニュアルどおりの画一的にならない作品ができるものかどうか
AIの個性なんてのは、まだしばらく先の話だと思いますし
bigbossman | 2016.03.30 02:01 | 編集
管理者にだけ表示を許可する