スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

巨大な妖怪

2016.03.31 (Thu)
題名でわかるとおり、今日は妖怪談義です。時間がないときには助けになります。
さて、日本の妖怪の中で最も巨大なものは何だと思われるでしょうか。
大入道でしょうか? 大入道は僧形のものは大坊主とも言われ、
身長は2m程度から山ほどの大きさまで、さまざまな言い伝えがあるようです。
しかし、山くらいのものは「ダイダラボッチ」と言われる場合が多いでしょう。

ダイダラボッチは巨大です。
なにしろ名山をつくった主として登場してくるくらいですから。
・上州の榛名富士を土盛りして作り、掘った後は榛名湖となった。
・富士山を作るため、甲州の土を取って土盛りした。そのため甲州は盆地になった。

Wikiでもこんな伝承が紹介されています。もともとは、妖怪というより、
世界の各地にある創世神話に関連した神であった、
と解釈されることが多いようです。

例えば、中国の古神話にある盤古(ばんこ)などですね。
天地が分かれる以前の混沌とした状態の中に、超巨人である盤古が現れ、
その死とともに、息から風が、左目からは太陽が、右目からは月が、
頭と体からは中国の神聖な山である五岳(泰山など)が生まれたと言われていて、
これは元をたどれば、さらに古いインド神話の巨人、
プルシャにまで遡るという説もあります。

巨人伝説が日本神話に影響を与えていることは確かなようで、
イザナギ神が黄泉の国の穢れを祓うため、左目を洗ったときにアマテラスが、
右目を洗った時にツクヨミが、鼻を洗った時にスサノヲと、
三貴神が生まれたくだりはよく似ています。ただこれが、南方から入ってきたものか、
中国から伝わったものであるのかは判然としません。

あと、自分は大学で考古学を専攻していたのですが、それと関連して、
『常陸の国風土記』に「平津の駅家(うまや)の西12里に(約6km)、
大櫛という岡がある。大昔、巨人がおり、岡の上にいながら手が海まで届き、
大ハマグリをさらうほどであった。巨人の食べた貝は、積もって岡になった。
巨人の足跡は長さ40歩余、幅20歩余で、小便が穿った穴は直径20歩余であった。」

こんな記述が出てきています。つまり、当時の人が縄文時代の貝塚を発見し、
海から離れた場所にたくさんの貝があるのを不思議がって、
これは巨人のしわざで、その場所に座ったまま手を伸ばして、
海から貝を取って食べていた名残であろう、という解釈をしたということですね。

しかしこれ、自分なんかはかなり疑問があります。
風土記が書かれた時代でも、食料に占める米の割合は多くはなく、
貝を取って食べるのはふつうに行われていたはずですし、それほどの巨人が、
ちまちまとハマグリを食べていたなんて当時の人が実際に考えたものでしょうか。
まあ、ダイダラボッチの足跡と言われるくぼみは各地にはありますが。
その当時としても神話、おとぎ話に近いものだったんじゃないでしょうか。

さて、次に紹介するのは「赤エイの魚」です。
これは京極夏彦氏が『後巷説百物語』で取り上げたので有名になりました。
なかなか不気味な話であったように記憶しています。
江戸時代後期の奇談集『絵本百物語』には、
「この魚は身の丈三里にあまり。背に砂がたまれば落そうとして
海面に浮かぶ。そのとき漁師が島と思って舟を寄せれば水底に沈んでしまう。
そういうときは波が荒くなって、船は破られてしまう。大海に多い。」


竹原春泉画『絵本百物語』「赤ゑいの魚」


身の丈三里は12kmくらいですから、ダイダラボッチにも負けない、
かなりの大物です。これはどっから発想されたものでしょうかねえ。
島と間違えて船員が上陸したりするということですから、
実際の生き物というより、海図のない時代に無人島を発見し、
後に再訪したが見つけることができなかった、
などということが元になってるのかもしれません。
赤エイは女性に見立てられることがあり、傾城魚という別名があったようで、
ここから城を背中に乗せるほどの巨大な魚、
という伝承が生まれたとする説もあります。

ちなみに中国では、これは妖怪というより幻獣という名称が妥当かもしれませんが、
「鯤(こん)」と「鵬(ほう)」の話が有名です。
北の海にすむ鯤は体長数千里の巨大な魚で、これが成長すると空に舞い上がり、
やはり数千里もある巨鳥、鵬に変じるということになっています。
しかし数千里というのは、日本列島なみの大きさであり、
そういう生物が実在するわけはありません。
UMA界でいう古代翼竜の生き残りといったレベルではないですから。
これはやはり台風などの自然現象、鯤は海の荒れ、
鵬は風害を表しているととるのがいいように思えますね。

あと長い生き物では「イクチ」というのがあります。
「常陸国の沖にいた怪魚とされ、船を見つけると接近し、船をまたいで通過してゆくが、
体長が数kmにも及ぶため、通過するのに1・2刻(3時間弱)もかかる。
体表からは粘着質の油が染み出しており、
船をまたぐ際にこの油を大量に船上にこぼして行くので、
船乗りはこれを汲み取らないと船が沈没してしまう。」
と『譚海』という見聞録にあります。
これも常陸の国であるところが面白いですね。
茨城県民は巨大なものが好きなのでしょうか。

これほど長大な海棲生物はいないはずですが、どこから来た話なんでしょうね。
例えばマヨイアイオイクラゲというクラゲは体長が40mを超えることがあり、
シロナガスクジラよりも長い世界最長生物とする話もありますが、
ただしこれ、一匹の生物というより、
たくさんの個体がつながって群生しているものです。
ですからつながり方によってはもっと長くなる可能性はあります。
ただ、クラゲ類であれば漁師はそれとわかるでしょうしねえ。
石燕の妖怪画にはイクチは「あやかし」の名で出てきていて、
体は鱗状に描かれていてクラゲ類には見えませんが、タコの吸盤には見えるかもです。

鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より「あやかし」(イクチ)





関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1078-8f6d69e2
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する