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奇妙な遊び

2016.04.19 (Tue)
小学校の教諭をしています。よろしくお願いします。
これからお話するのは職務上知りえた秘密なんですが、
あまりに不可解なことが起きていまして、やむをえずここにお伺いしたんです。
ですから、どうか内密の話としてお聞きください。
先々週の月曜日に学年部会がありました。私は5年生を担当していまして、
大規模校なので、学年は4クラスあります。学校全体では25クラスですね。
学年部会に出るのは、学年主任の先生と所属の先生、
それにクラス担任が4人。その一人だけが男性で、あとはみな女性です。
・・・普段はお菓子なども出てなごやかなものなんですが、
その日の話題はちょっと違っていました。ある担任の先生が、
「おかしな遊びが女子の間で流行っている」ということを言われたんです。

どんな遊びかというと、階段を使った伝言ゲームのようなものということでした。
「私も最初は何やってるかわからなかったの。女の子の、仲のよい友だち同士、
 2人でやるみたいなのね。階段を上にのぼる形で」意味がわかりませんでしたが、
主任が「へえ、私はまだ見かけてないけど、どうやって遊ぶの?」先をうながされました。
「最初の子が、階段途中で立ち止まってる子を追い越しながら、
 ごく短い言葉を言うみたいです。それで2・3段先に止まる。
 すると2番めの子が駆け上がっていって、最初の子に言われた言葉を繰り返す。
 その内容が合ってればいい、みたいな感じですね」主任はふーんという反応をし、
「そういえば私が小学生の頃は、階段でじゃんけんをして勝ったら上がり、
 負けたら下がるって遊びがあったわね。その程度なら問題ないんじゃないかしら」
「でも、相手の子を追い越すときに、けっこうな勢いなんです。

 階段なので、もしぶつかって落ちでもしたら・・・」主任は、
「そうね、しばらく様子を見ましょうか。なんでもかんでも禁止がいいとは思わないけど、
 ケガが心配なおそれがあるようなら、またここで話題にしましょう」
こんな話になったんです。それで翌日、休み時間に廊下に出て、
階段を注意して見てたんですが、それらしい遊びは目撃しなかったんです。
だからたいしたことないのかなと思いました。それでもいちおう、
自分のクラスの帰りの会で、「こういう遊びがあるみたいだけど、やったことある人?」
って聞いてみました。いえ、怒ったりする調子じゃなく、何気なくという感じで。
そしたら、女子の2人が手を上げました。おとなしいタイプの子らです。
それで、この子らがやってるんなら、そう危険なことはないだろうって思ったんです。
2人を残して、どんな遊びなのかを聞いてみました。

そうしましたら、前に学年部会で出たとおりの遊び方だったんです。
「じゃあ、どんな言葉を言って追い越していくの?」と尋ねると、
「社会のテスト、100点」とかそういう内容だということでした。
まあ、この子らはどちらも成績のいい子でしたので、テストの話が出てるのかと思いましたが、
よく聞いてみるとそうでもなく、未来に関する予言みたいなことだったんです。
ええつまり、「社会のテスト、100点」と言って、
相手がそれをちゃんと聞き取って復唱すると、そのことが現実になるみたいな。
興味を惹かれたので、「へえ、それってあたる?」って聞いてみました。
そしたら2人は顔を見合わせ、「まだ始めたばっかりなのでわからないです」
「6年生の人はあたるって言ってました」って。
でも、それは自分たちで大声で聞き取れるようにやってるからだろうって思ったんです。

それに、現実離れしたことも最初から言わないんだろう、とも。
ですから、そのときは「ほんとうは階段で遊ぶのはダメなのよね。
 もしぶつかって落ちたら大変だし」決してきつくはならないよう、
やんわりたしなめました。そのときは神妙な顔をして「はい」とうなづいていたんですが。
それから2日後の木曜日です。日中は何事もなくて、すべてのクラスの掃除も終わり、
私は5年生の入っている2階の棟の見回りの登板だったんです。
窓の施錠やコンセントを確認するなどですね。特に異常はなく、
ふと思いついて、3階へ登る階段に向かったんです。
図書室では7時まで学童保育をやっていまして、5年生も何人かいるんです。
その子らの様子を見ようと思いました。そしたら、踊り場の上のほうで声が聞こえまして。
うちの学校の階段は踊り場から直角に曲がっているので、その先は見えないんです。

「時田さんが死ぬ」こんなふうに耳に入りました。
「死ぬ」なんて何だろう、と思いました。それと時田という名前は、
この学校にはいないなとも。小走りに上がっていくと、
顔を知っている6年生の女子が2人いまして、学童保育の子でした。ランドセルを持ってたので、
これから図書館に向かうんだろうと思いましたが、段差がある位置に立ってたので、
あの遊びをやってるんだろうと思ったんです。「あら、あなたたち、これから学童?」
こう声をかけたら、「そうでーす」って明るい声が返ってきました。それで続けて、
「今、誰か死ぬとか言ってなかった?」って聞いてみました。そしたら、
「え、私、そんなこと言ったかな」と下にいた子が答えたんですが、
とぼけてるようには思えませんでした。「今、予言みたいな遊びをしてたんでしょう?」
重ねて聞くと、「そうですけど、自分で言ったことを覚えてないときがあるんです」

「??? 無意識に出るってこと?」 
「そうなんです。で、友だちが繰り返して、初めて自分の言ったことがわかるっていうか。
 それで、自分が何言ったか覚えてないってことは、何十回に一度くらいしかなくて、
 それは本物なんですよ」 「本物の予言ってこと?」 「そうです」
うーん、そんなことがあるものだろうか、信じる気持ちにはなれませんでしたが、
その子らは6年生でもわりに真面目な子たちだったんです。
それで、「死ぬ」の部分は外して、「時田って人を知ってる?」と聞いたんですが、
2人とも首を振り、上にいた子が「6年生にはいません」って言いました
その子らを連れて図書館にいくと、ボランテイアの学童の先生はもう来られていて、
2人はすぐ教科書を出して宿題を始めたんです。それから何事もなく、
この遊びを見かけることもなく、週末になりました。日曜日の朝、

テレビを見ていると、地方版のニュースで一家四人焼死というのが出たんです。
はい、場所は勤務先の小学校の学区で、家が全焼して亡くなったのは、
時田夫妻と、小1の姉、3歳の妹の一家全員・・・あわてて学校に電話をかけると、
教頭先生が出まして、やはりわが校の在校生だったんです。
それも、この4月に入ってきたばかりの。電話口で、急に現実感がなくなったというか、
頭がくらくらして電話を切ってしまいました。
教頭先生はショックを受けたと思われたかもしれません。
次の週は、学校に取材が来たりしてたいへんでした。時田家の実家のほうで葬儀を行い、
校長、教頭、担任、1年生のPTA代表などが出席しました。それと、
あの階段で話をした6年女子2人が月曜の放課後、おびえた顔で私のところに来ました。
ともかく、広まってはいけない話ですので、他の子には話さないよう釘を刺し、

あらためてそのときのことを聞いたんですが、最初の子は自分の言ったことを覚えてないし、
上にいた子も聞いていないと言うんです。つまり、あの場で「時田さんが死ぬ」
って言葉を聞いたのは、私だけみたいなんです。そのときは最初の子の声だと思ったんですが、
今となっては自信がなくなってしまいました。これは上司に話すべきことなのか、
でも、とうてい信じがたい内容だし、不謹慎などと言われないだろうか・・・
ずっと迷っていたんですが、学年主任だけには話してみようと決心がついたんです。
ええ、この遊びが流行るなんて嫌ですから。そうして、今朝のことです。
私が職員室から出て教室に向かおうとしたとき、早く来た1年生の女の子が、
階段でちょろちょろと私を追い越しざま、「◯◯が死ぬ」って言ったんです。
はい、◯◯は私の名前です。その子を呼び止め、「今なんて言ったの?」と聞いたんですが、
その子はきょとんとした顔で「わかりません」と言うだけだったんです・・・






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コメント
 これは怖いです。もし、暴走こっくりさんのような「正体のある怪異」だったのなら、何らかの回避手段はあるでしょう。しかし本当に「予言」だったら・・・? この語り手さんに逃げ道は残されているんでしょうか。
| 2016.05.05 20:37 | 編集
コメントありがとうございます
これはどっから情報が来るのかわからないですね
運命として決まってることが何らかの仕組みで漏れてくるのなら
怪談ルームの面々でも対処不可能かもしれません
bigbossman | 2016.05.06 07:20 | 編集
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