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祟り柱

2016.05.03 (Tue)
俺は、解体業やってんだよ。いや、ただの現場監督だけどな。
うーん、建設会社とはまた違う。解体が専門なんだ。社員数も多くはなし、
小さい仕事ばかりだよ。それでな、この間から、
団地開発のために、丘陵地にある神社の解体をやってたんだ。
神社の解体は別に珍しいことじゃない。
だって簡素な木造建築だから、保ったとしても200年くらいまで。
神社はお寺と違って、素木造りがほとんどで、
これは柱や壁に塗料を塗ったり、木以外の素材を使わないってことだから、
長くは保たないんだよ。屋根が茅葺きのところもあるしな。
だから解体修理や再築、移築は普通にあるんだよ。
あとこれ、勘違いしてる人が多いけど、廃神社なんてのはめったにない。

どんなに寂れてるように見えてる神社でも、世話してる神職はいる。
小さいお社をいくつも掛け持ちしてる人とかな。
そりゃ土地の上に建ってるんだし、土地には必ず管理者がいるもんだ。
だから、ある神社が取り壊されるって場合は、普通は近くの別の神社に合祀される。
境内に摂社として小さなお堂を建てたりするわけだ。
あるいは、何かの事情で完全になくすって場合は、きちんと昇神の儀式をやる。
だからね、世に言われるような廃神社なんてのは、よっぽどの場合だけなんだよ。
でな、そこの神社は、よくある2間四方のお社でな。
屋根はトタン屋根だから、そんな由緒あるものではない。
築100年以内だろうが、もうすっかり痛んでた。お稲荷様でも八幡様でもなく、
祀られてるのは、名もない土地神ってことだった。

もちろん神主を呼んで、きちんと近くの神社に合祀するための手続きを取ったさ。
そっから工事を始めたわけ。神社の解体って簡単なんだよ。
だってな、解体業で一番大変なのが、廃材の分別だ。
しかし神社なら、ガラスも化学合板も断熱材もないわけで、木材とトタンのみ。
少しやっかいなのが、高床造りだから土台の石が埋まってることだが、
それだって重機で掘っ返せば済む話しだしな。
でな、数日かけてあらかた作業が終わった時点で、重機のやつが報告をよこした。
「敷地の中央に、長く縦に埋まったものがあります」って。
これはちょっとあせったよ。だってもし遺跡だったら、しばらく工事ストップになる。
ところが、よく話を聞くと、深くまで丸木の柱が埋まってるみたいってことだったんだ。
これ聞いて何思う? やっぱり伊勢神宮の心の御柱だろ。

あれはもちろん尊いものだが、そんな小さな神社にあるって話は聞いたことがない。
まあ、儀式をしてもう神様はいないんだから、
いいからそのまま堀り返せって言った。でな、見てたら重機でいくら掘っても、
直径80cmほどの丸木の柱が出てきたんだよ。
「こらあ、木がまるまる一本分も埋まってるんだ」と思った。
木の種類ははっきりはしないが、トチかカシみたいだった。
下手すれば15mにもなる可能性があるんで、これはダメだと思って、
翌日クレーンを手配することにしたんだよ。幸い地盤は柔らかかったから、
周囲を突き崩しながら、吊り上げて抜こうってわけだ。
でな、翌日ちょっと小雨模様ではあったが、さっそく実行してみた。
そしたら、思ったほど長いわけじゃなかった。

5m少しくらいだったな。それでも慎重を期して、
吊り上げながら周囲に何本もロープをかけ、
ブラブラ揺れないように作業員が持ったのよ。昼の休憩過ぎの1時頃だったな。
クレーンが柱を高く持ち上げ、だんだん柱は先細りになって、あと少しってとき。
地面の穴から、ヒドイ臭いがしてきたんだ。何と形容すればいいかなあ。
一番近いのが、ドブ、いやいや、腐って緑の泡を吹いてる古沼ってとこかな。
腐臭の中にクスリ臭さが混じってるって感じ。みなは顔をしかめながら、
柱の先が出てくるのを見てた。したらだよ、やっと現れた木の先端に、
ありえないものがついてたんだ。刺さってたと言ったほうがいいか。
いやあ、俺にはカエルに見えたなあ。大きさ1m以上の青黒いカエルの死骸。
それが腹を下にして土から出てきたんだ。

いや、生きてはいなかった。ピクリとも動かなかったし、
目をつぶってるように見えたんだ。あとなあ、不思議なのは、
他のやつで、出てきたものには毛が生えてたって言うのもいるんだよ。
大きなネズミみたいなものだったって。どっちが本当かはわからん。
何でかは今から言うよ。それがな、空中で爆発したんだ。
表皮が風船のように膨らんで、弾けるようにパーンと。ああ、音はなかったけど、
まるでそんな感じに。そしたら臭い汁があたりに飛び散って、
俺も含めて周囲にいたやつらみなにかかったんだよ。
「うわあ」 「臭えっ!」こんな叫びがあがり、
ロープを持ってた手を放してしまったやつがいたんだ。これは責められねえと思う。
俺もそうしそうになったからな。そしたら吊り下げてた木は、

バランスを失って、クレーン車のほうにゆらーっと向かってって、
先端部分が運転席のすぐ近くまでいった。けどよ、ぶつかりはしなかったはずだ。
なんとか皆でロープを操作し揺れを収めたときに、クレーン車を見ると、
運転者がハンドルに突っ伏してたんで、手の開いてるやつらを走らせた。
したら意識がなかったんだよ。ただ、この後病院に連れてったが、
ケガはどこにもなかったんだ。木が自分に向かってきた恐怖・・・
しかしこの程度のことはよくあるから、やっぱあの臭いにやられたんだろうな。
ともかくそのときは無事だったわけ。でな、俺に巨大カエルに見えたあの死骸は、
探してもどこにもなかったんだよ。皮一切れ残ってない。
けど、体液というか、大量の液体がこぼれた跡は地面に残ってた。
なあ、不思議な話だろう。だけどこれで終わりじゃねえんだ。

クレーンの運転者は、その日のうちに退院してきたが、
それから数日のうちに体中がイボだらけになったんだよ。うーん発疹とか、
蕁麻疹とはまた違うと思った。よく黒イボって言うだろ。
たいがいは産まれたときからあって、ポツンと固くなった青黒いやつ。
あれが全身にできてたんだ。こう言っちゃ可哀想だが、
見てると気味が悪くなってくるほどだった。ただし、本人は痛くも痒くもないって。
何かの中毒だろうってんで入院させた。土壌汚染とかもあるからな。
それから1日して、俺のロープ握ってた手にも同じイボが出てきたんだよ。
いやもちろん、作業手袋はしてた。全身には回らずに手にだけ。
他のやつらも「俺もできた」「俺にも」ってなあ。
これは明らかにヤバイだろうと思って社長に連絡した。

うん、社長は別の現場にいたんだけど、しばらく待機しろって命令があって、
それから、その神社の神様を合祀した別の神社へ、みなで小型バスで向かったんだよ。
行ったら、社長も、入院したクレーンの運転者も来てて、
かなり急いで作ったように見える摂社のお堂の前に連れていかれ、
社長先頭に、その前に平伏したんだ。玉砂利の上に土下座のかっこうでってことだ。
神主が出てきて、3時間近い祝詞をあげる間中ずっと、額を石にこすりつけてたわけ。
始まって1時間くらいで、俺の手のイボがすっと消えた。
それから全身イボだらけのクレーン担当も、後ろから見える首筋のイボが
どんどんなくなっていくのがわかったんだ。でな、祝詞が終わったときには、
みなすっかりきれいな体になってたわけ。さらにその後、全員が谷川に連れてかれ、
そこで禊をさせられたんだよ。・・・詳細は聞かないでくれ、俺も知らされてないんだ。

hsんskそあづえ




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コメント
それは人柱にされた人間だったのでは?
ゾッとしますが、そういうお社はお祀りし続けないといけないと思います。
| 2017.12.09 21:02 | 編集
コメントありがとうございます
もしかしたら人間だったのかもしれませんね
それが何か霊的な作用で、ある人にはカエルに見えたり
ある人にはネズミに見えたりしたのかも
bigbossman | 2017.12.09 21:21 | 編集
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