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植物怪談 2題

2016.05.08 (Sun)
・前の項を受けて無理くり植物怪談をひねり出してみたんですが、
やはり小手先になって、あんまりいいのはできませんでした。

屋敷の庭

こないだ、2ヶ月くらい前だが、パチンコ屋にいたのよ。
その頃はまったくツキがなくて、その日も朝一で座って3万円やられた。
でまあ、気分を変えようと席を立ったら、自販機コーナーで「よう」と声をかけられた。
見ると70年配ほどのジイサンがいて、最初は誰だかわからなかった。
だがどっかで見覚えがあるなあと記憶をたどって「あっ!」と思った。
○○組の幹部だった人なんだよ。といっても、もう引退してだいぶたつんだが、
見た目がすっかり好々爺になってたから、誰だかわからなかったんだ。
だってよ、元幹部、現役の時はジムで体鍛えてて、
いかにもケンカ強そうに見えたのが、すっかり痩せて縮んでたし。
でな、緊張して話をしたら、「ヒマそうに見えるが、少し俺のとこ手伝わねえか。
 バイト料払うから」こう言われた。

いや、金もなかったけど、ちょっと断れねえ感じがして話聞いてみると、
家の庭の手入れをしたいが、老体一人だと手にあまるからってことで。
ま、確かにヒマだったんで、「いいですよ」って言って、
元幹部の古いベンツで郊外にある一軒家に行ったわけ。豪邸といえるつくりだったが、
すっかり荒れていたな。昔、まだヤクザ屋が景気よかった頃は、
みな競うようにして瓦屋根の屋敷を建ててたからな。
「一人で住んでるんですか」って聞いたら、「おうよ、
 息子は俺の家業が嫌だと抜かしたから縁を切った。この齢じゃ女も必要ねえし、
 気楽な一人住まいよ」こんな話だった。
「でもこれ、継ぐ人がいないんじゃもったいないですね。売らないんスか?」
聞いたら、「ま、ちょいと事情があってなあ。

 しかしいずれは何とかせにゃ。俺もこの先長くないだろうから」って。
でね、まだ残ってた雪囲いを外したり、雑草をとったり池をさらったり、
元幹部の支持にしたがって、あれこれ手入れをしたんだよ。庭はすげえ広さで、
確かに一人で手入れをするのは無理だろうと思った。
「業者、人材センターとかに頼んだらどうです」って言ったら、
「元とはいえ筋者のとこだからな、地域でも警戒されててなあ」こんな話だった。
楓や松、俺はそれくらいしかわからねえが、様々な木がところせましと植えられてて、
元幹部が出してきたハシゴにのって枝切りなんかもした。
でな、敷地の横手のほうに、こんもりと塚みたく地面が盛り上がったところがあり、
そこは何も植えられてなくて、雑草が生い茂ってたんだ。
「ここらの草取りもしますか」って言ったら、

「・・・ああ、じゃあ、あんまり掘っ返さないようにしてやってくれ」
でな、そこに生えてたのは細い固い茎のイネに近いような雑草一種類だったが、
これが奇妙だったんだよ。なんか手にまとわりついてくる気がした。
抜こうとして何十本かまとめてつかむと、シュッシュッと指の間から抜けて、
手首に巻きつくような感じがした。まあそんときは、
茎に弾力があるからそうなるんだろうくらいに思ってたのよ。雑草は生きてるけど、
自分の力で動くわけはねえから。で、4時間ほど作業して5万円もらった。
臨時収入としてはいい額だろ。飲んでいくかって誘われたが、それは断った。
「また荒れてきたら頼むわ」携帯の番号を交換してそのときは別れたが、
次はなかったんだよ。それから少しして、仲間にこの話をしたら、
「ああ、○○さんの家に行ったのか。お前知ってるか?

 あの人、現役時代は荒事でならしたもんだが、組の仕事以外にも、
 何人か周辺の人が消えてるんだよな。噂じゃあ、プライベートでバラして、
 自分の家の敷地に埋めたってことになってる」これ聞いて、ちょっとぞゾッとした。
さっき話した、雑草の生えた小山がそうじゃねえかと思ったんだ。
でな、元幹部は3日前に死んだんだよ。死因は心臓らしいが、
なんと立ったまま死んでたって話だ。いや、これも噂なんだが、
そんな馬鹿げた作り事はしねえだろ。あの雑草の中で立ったまま事切れてたんだ。
なんで倒れねえかっていうと、元幹部の腰のあたりまで、
両足びっしりと、あの草が絡みついてたってことだった。なあ怖ええ話だろ。
さあなあ、屋敷はどうなるんだろうな。息子さんが相続するのか。
あの塚を堀っ返せば何が出てくるのやら。

観葉植物

あの、健康食品の販売会社に勤めてます。社員のほとんどが営業で、
事務職は少ないんですけど、その中でいじめがあったんですよね。
いえ、女子職員の中でってことはないです。
ブラックに近い会社で、仕事もハードですからイジメが発生するほど長くいる
人は少ないんです。私はこれでもけっこう気が強いし、
無神経なほうだから務まってるようなものです。
それで、イジメにあってたのは、営業で入った若い男の子で。
訪問販売中心だから営業の月ごとのノルマがあるんです。
それ達成できないと、上司からものすごく罵倒されて。
「何のために生きてるんだこの無能」とか「給料泥棒は首吊って死ね」
みたいなことまで言われるんです。

気の弱そうな子だったから、ああこれはすぐ辞めちゃうだろうと思ってたんですが、
何でも母親が難病で入院してるということで、
辞めたくてもできなかったみたいなんです。どんどん落ち込んでいって、
外回りに出ずっぱりになり、たまに会社に戻っても
ほとんど誰とも口を聞かないようになって、「ああこれはノイローゼだな、
 自分から辞めなくても馘になるだろう」って思ってたんです。
それで、ある夜9時頃ですね。その日、ちょっと会社に私物を忘れ物しまして、
普通は誰もいなくなる時間帯だったんですが、
会社が入ってるビルの守衛さんはいるので、話をして取ってこようとしたんです。
そしたら、「お宅の会社、まだ閉めてませんよ」って言われて、
入ってみたら照明が消えてたんです。

でも、非常灯があるのでそれなりに明るくて、隅のほうに人が立ってたんです。
ぎょっとしました。その人はコーナーに向かって何かブツブツつぶやいてましたから。
急いで照明をつけると、それは話に出した男子社員で、
その隅には、人の背丈くらいの観葉植物が置いてあったんですが、
それに向かって何か・・・たぶん恨み言をささやきかけてたみたいです。
まあこれは、今考えてそう思うってことですけどね。
「ちょっとあんた、明かりもつけないで何やってるのよ。早く帰りなさい。
 明日もたいへんなんでしょ」こう声をかけたら、「はあ」と力ない返事が返ってきました。
「ああこれはダメだ」と思って、忘れ物をとってすぐに帰ったんです。
それから1週間ぐらいして、その男子社員が出社してこなかったんです。
いや、ノルマを考えれば有給なんかとれませんし、連絡も入ってませんでした。

まあ営業職ですから、出社しないで直接外回りに向かうことも多いんですが、
必ず朝一に連絡は入れることになってたんです。
ですから、それ聞いたときは「いよいよ辞めるんだろうな」くらいでした。
それで、昼前になってですね。「ギイヤアーーーアアア」という、
低いけど耳に残ろような音がしまして、どこだろうと思って見たら、
隅にある観葉植物からだったんです。「え!」って思いました。だって、
その上のほうに一個だけ、人の顔くらいの赤黒い大きな鼻が咲いてるように見えたんです。
ありえないです。蕾もなかったし、だいいち花をつける種類じゃないですし。
眼鏡をはずしてもう一度見ましたら、もう花はなくなっていました。
回りは誰も気にしてる様子はないし、私の見間違い聞き間違いだとそのときは思いましたが。
ええ、後でわかったんですが、ちょうどその男子社員が公園で首を吊った時間だったんです。

・やはり植物が単体で怪異を起こすというのは書けませんでした。
どっちも人の恨みがの念が植物に乗り移った話ですね。




 
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