FC2ブログ

川の目の話

2016.05.11 (Wed)
じゃあ話しますけど、みなさん、わけがわからないかもしれません。
20年近く前のことですね。自分が小学校6年のときの話です。
その年に、一つ違いの弟が川で溺死してるんですが、その前後にあったことです。
自分でも自信ないんですよ、あれ全部が本当に起きたことなのかって。
ここはそういうことに詳しい人の集まりだと聞いてきたんで、
もし解釈できることがあれば教えてください。6月でした。
日曜の午後だったはずです。母からお使いを頼まれて、
お釣りでアイス買ってもいいと言われたんで、弟と近くのスーパーに行きました。
リストを見ながら買い物を済ませた帰り際です。
入り口の外に自販機が並んでてベンチがありましたが、そこに腰掛けてたおばさん、
ちょっと齢はわからなかったですが、おばあさんというほどの年齢でもなかったです。

服装なんかはよく覚えてません。黒い着物だったような気がしますけど。
その人が、店から出てきた僕らに話しかけてきたんです。
「あんたら双子かい」って。弟は5年生だったから僕より背は低いけど、
顔はよく似てたんです。僕が「いいえ、兄弟です」って答えると、おばさんは、
「ああ、そうみたいだね。・・・変なこと言うと思うだろうけど、
 あんたらを川が見てるよ。川に近づかないこと、知らない人と話をしないこと」
これだけ言ってそっぽ向いちゃったんです。弟と顔を見合わせながら
その場を離れたんですが、子どもでしたから困惑しますよね。
それで道々、「今の人、何だったんだ?」とか言いながら帰ってきました。
「川が見てる」って部分も、意味がわかってなかったんです。
そもそも「かわ」が「川」のことだと僕は思いませんでした。

だって、川は人間じゃないし「見る」ことなんてできないですからね。
「川に近づかいない」のほうは「川」のことだと思いましたけど。
ええ、家の近くに川はありました。名前はついてましたけど、支流で、
そんな大きな川じゃなかったです。それと「近づくな」というのも無理な話で、
小学校への通学路は少しだけど土手を歩いたんです。
朝は集団登校でそのコースは変えられないし、帰りも土手を通るのは数分程度でした。
で、そのおばさんのことは親に言おうかと考えたものの、
家でアイスなめてるうちに、僕も弟も忘れちゃったんです。
でもねえ、今から考えて、親に話してどうにかなったとも思えないんですけども。
翌日の月曜日です。その日、弟はサッカーのスポ少があって、
僕のほうが先に家に戻って宿題やってました。

そしたら6時近くに弟が帰ってきて、一緒に使ってる部屋に入ってくるなり、
「兄ちゃん、変なことがあった」って言ったんです。
「えー、何?」 「さっき土手歩いてたら、たぶんまだ小学校じゃないくらいの
 小さい男の子が寄ってきて、ボール落としたから取ってって言ったんだ」
「それで」 「手を引っぱられて土手をおりていくと、川につながる排水路に
 金色のボールが落ちてたんだよ。でも、あそこの排水路は高さがすごくあるじゃない。
 手を伸ばしても届かないから、そこらに落ちてる枝を拾ってつついてみたんだよ。
 けど、そのまま押し出したら川に流れていっちゃうし、
 棒2本でつまみあげるのも無理そうだったんだ。だから、これ取れないから、
 大人の人に言ったほうがいいよってその子に言おうと振り向いたら、
 もういなくなってたんだ。そんとき、ゴーゴーって水が流れる音がして、
 
 排水路の穴からどっと水が出ててきて、ボールが浮いた。で、やっぱり、
 川に入っちゃったんだけど、そのボールがぐるんと裏返ったときに、
 下になってたほうが出てきて、それが目玉だったんだよ。
 こっちをにらむようにしてから、ぐんと沈んでそれきり浮かんでこなかったんだ」
だいたいこんな話をしたんです。「えー、ボールってどれくらい?」
「ソフトボールくらい」 「それ、目玉の絵が描いてあったんだろう」
「でも、本物の目玉に見えた。生きてるみたいな」
ここまで話して、日曜のスーパーのことを思い出しました。
たぶん弟もそうだったと思います。でも、それはそれとして、
ボールに本物の目がついてるなんて考えませんよね。かといって、
弟が嘘をついてるとも思わなかったです。

そんな変なつくり話する意味ないですからねえ。
「じゃあ、明日お前スポないだろ。帰りに待ち合わせて排水路まで降りてみよ」
こういう話になったんですよ。で、一緒に行ってみたんですが、
やっぱりそんなボールはなかったんです。けど・・・
排水路が川と合流する付近に、なにか大きな四角いものが沈んでるように見えました。
でも、増水してる時期だったから、濁ってて何だかわかりません。
「これ何だろ」子どもだから当然木の枝でつつきますよね。
2人で押してみたら、引っかかってたのが外れたのか、浮き上がってきたんです。
そのときに半回転して、屋根の形と上についてる金の鳥が見えたんです。
「あー、兄ちゃんこれ」 「・・・うん、お神輿だよな」
手につかんでた枝にビビッと電気が走ったような感じがして、

僕は思わず取り落としてしまいましたけど、弟もそうだったんです。
なにか嫌な感じがこみ上げてきたっていうか、
僕も弟も、一目散に土手に登りました。それで上から見ていたら、
お神輿らしきものは、ゆっく浮き沈みしながら下流に流れていったんです。
うーん、排水路からというのは考えられないです。穴のところが格子になってて、
大きなゴミは引っかかりますから。あと、そうですね、
僕らの地域では7月に夏祭りがあって、そのときにお神輿も出るんですが、
それは10人以上で担ぐ大きなのでした。でも、そのとき流れていったのは、
家の神棚よりちょっと大きい程度のものだったんです。
だから、誰かが川に流したのが、たまたまそこに引っかかってたのかもしれません。
ただね、そのとき家に戻るまで、ずっと背中がゾクゾクしてたんです。

弟も同じみたいでした。手で自分の両肩をつかんで縮こまって歩いてたのを覚えてます。
その翌日から長雨になりました。かなり長期間続いたはずです。
弟のサッカーは休みが多くなり、僕は剣道でしたから、
僕のほうが帰る時間が遅い日が続きました。それで3日目に、家に着いたら、
母親が「○○はお前と一緒じゃなかったのか」って言ったんです。
僕が首を振ると、「おかしいわね」と学校に電話をかけ、
そしたら、もう2時間も前に学校を出たって話をされたんです。
そのときが6時過ぎで、さすがに外は真っ暗になってて土砂降りの雨でした。
母はあちこち友だちの家に連絡し、どこにもいないことがわかって、
8時前に帰ってきた父と相談して警察に連絡したんです。
警察の人がたくさんきて、僕も心あたりを聞かれたりしました。

夜中じゅうずっと捜索したんですが、その夜は見つからず・・・
翌日も、その翌日もです。今思えば、誘拐という線もあったんでしょうけど、
警察は川に落ちたのを疑ってるみたいでした。
すごく増水してて、いつも通る土手もすぐ下まで水がきてるように見え、
弟のこともあって通行禁止になりました。父は公務員だったんですが、
ずっと休んで家にいて、僕の登下校を車で送り迎えしてくれたんです。
親戚も集まってきました。それで、雨がやっと上がった翌日、
弟の死体が、ずっと下流の倒木に引っかかってるのが見つかったんです。警察の検死、
火葬、葬式、うちの一家にとっては大ショックでした。・・・こんな顛末です。
弟が会ったという男の子、スーパーのおばさん、お神輿・・・わけがわからないです。
僕はそれ以降、高校を卒業するまで川には近づかないようにしてました。







関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1120-af905175
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する