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長顔の話

2016.05.22 (Sun)
* 鏡怪談を書いてみました。

まず初めに断っておきますけど、この話、俺の勘違いかもしれないんです。
勘違いっていうか、幻覚とか白昼夢とか。
ただ、そうだとしてもつじつまの合わない部分があるんです。
そのあたりがどうなってるか、教えていただきたいと思って。
つい先週のことです。俺ね、○○大の3年で、サッカー部なんです。
いや、部活は趣味みたいなもんで、正式な部だけど、
サークルより練習量は少ないかもしれません。リーグとかに入れないほど弱いんです。
練習も週に2回だし、地元の高校にも負けるんですよ。
でね、金曜日部室で着替えてたら、2年生の後輩が3人、
心霊スポットに行くって話で盛り上がってたんです。
俺、幽霊とかそういうのってまったく信じてなかったんです。

だからこう声かけまして。「お前ら、マジで幽霊とか信じてるのか?」
したら、「いやあ、ないとは思うんですけど、何かそういうのワクワクしませんか」
「しねえよ。それに男だけで行ってもしかたねえだろ」
「うーん、まあそうですけど、やることないもんで」
「で、どこに行くわけ?」 「あの国道○号線沿いにある廃ホテル」
「ああ、知ってる。火事になったとこだろ」
「そうです。でも、燃えたのは一部だけで、普通に建ってますから」
「入れるのか」 「行ったやつらの話だと、鍵とかかかってないって」
「ヒマだなあ」 「先輩も行きませんか。俺、車出すんですが、もう一人乗れます」
こんな話になって、俺も行くことにしたんです。
時間は6時過ぎでも、まだけっこう明るかったですね。

その車の中で、廃ホテルの2階トイレにある鏡の話が出まして。
「あの階の2部屋が燃えてるんです。で、火元の部屋の隣がトイレなんですが、
 そこの洗面所の、入って2番目の鏡を見ると、顔が長く伸びるんだそうです」
「はは、それなあ、火事の熱でガラスが変形してるとかだろ」
「たぶんそうだと思いますけど」 「全然怖くねえな、死んだ人とかいるのか?」
「わかりませんけど、いないんじゃないかな」 「ふん」
ホテルまでは車で30分ほどかかって、だいぶ暗くなってきました。
「お前ら、懐中電灯とか用意してるのか?」 「2本持ってきてます」
いわゆるラブホテルなんで、駐車場から簡単に入れたんですよ・・・けど・・・
まず1階を見まわって、開いてる部屋も鍵かかった部屋もありました。
2階に上がると、廊下の天井の一部が確かに黒く焦げてて、

火が出たという2部屋は入れないほどの惨状でした。トイレに入ってみると、
タイルが少し黒くなってる程度。鏡はどれも割れたりせず、
変形もしてないように見えましたね。「2番目って言ったよな、これだな。
 暗くてよく見えんな。ちょっと横から照らしてくれ。違うって、
 鏡だけ照らしたってしょうがねえだろ。俺の顔と鏡を同時に照らすんだよ」
で、のぞいてみたら、鏡に異常があるとは思えませんでしたけど、
たしかに顎のあたりが少し伸びてるように見えた・・・と思ったんです。
「やっぱガラスが溶けてんだろうな、うわあああああ」
俺が振り返ると、横にいた後輩の顔が伸びてたんです。3人が3人とも。
それも普通の顔の3倍以上になって、あごがベルトの辺まできてたんです。
「うわわわわああああああっ」そこで意識が途切れちゃいまして。

次、気がついたとき、後輩の車の後部席にいました。「あれ、どした、どうなった?」
「あ、先輩、気がつきましたか。これから病院に向かいますから」
「俺、ホテルのトイレで倒れたのか」 「いえ、トイレまで行ってません」
「え?」 「先輩、駐車場に入るなりすぐ頭いてえって言ってうずくまって、
 そのままくたって崩れたんです」 「嘘だろ、だって2階のトイレに入ったじゃねえ」
「入ってません」前の2人もうなずきました。「・・・・じゃ、夢見てたのか??」
わけわからないってこのことですよね。頭を振ってみたら痛くもなんともなくて、
「いや、病院いい、保険証持ってきてないし、なんともないから」
「でも先輩、今日練習中に転んでましたよね」 「大丈夫、なんともないって」
それにしても、駐車場までで、ホテルの建物にも入ってないというのは、
信じられない思いでした。「お前ら、俺、怖がってると思ってるんだろ」

「いや、思ってないですよ」 「・・・そか、しかしこれリベンジしなくちゃならんな。
 そうだなあ、明日、俺、午後は講義ないから、一人でここに来てみる。
 でだな、その2番目の鏡にマジックでなんか書いとくわ」
「一人でですか」 「じゃないとお前ら、俺が怖がって具合悪いふりして
 中に入らなかったとか噂流すだろ」 「そんな、しませんよ」
「冗談だよ。けどなあ、確かめてみたいことがあるんだ」
俺が見たと思ったホテルの内部ね、それがどうなってるか確認したかったんですよ。
これが全く違ったものなら、やっぱ夢だったって納得できるでしょ。
この日は、後輩にアパート前まで送ってもらったんです。
翌朝起きても頭も体も特に具合の悪いとこはなし。
でね、午後の2時過ぎに、俺車ないから、バイクで廃ホテルに向かいました。

いやあ、中は誰もいませんでしたよ。落書きもほとんどなし。
やっぱ駐車場から入って1階を回りました。それでね、中の様子は俺が見たと思ったのと、
まったく同じだったんです。・・・前に来てるのを忘れてるんじゃないかって?
いや、いやいや、それはないです。ホントに初めてなんですよ。
なのに記憶にある、入れる部屋、鍵のかかった部屋、これも同じだと思いました。
2階にあがっても、焼け焦げの様子もそのとおりで・・・
ここでね、もしかしたら後輩たちが何かの事情で俺をだましてるんじゃないか、
って思ったんですよ。本当は中に入ってて、あのトイレまで行ってるのに、
あいつらが口裏を合わせて、俺が入る前に倒れたってことにした・・・
でもねえ、そうする意味ってなんかあるんですかねえ。
変な話だよなあ、って考えながらトイレに入ったんです。

2番目の鏡の前に立ちました。まだ3時前で、その日は晴れてましたからね。
ラブホテルで窓が少ないとは言っても、トイレは明るかったです。
映った顔は、昨日見たとおり、ほんのちょっとだけ鼻の下あたりからあごまでが
伸びてるように見えました。「うーん、同じだよなあ」
でね、ガラスにさわってみようと右手を出したんです。そしたら、
普通は鏡の中の俺も、こっちに向かって指を突き出しますよね。
ところが、鏡の中の俺は両手で自分のあごをつかむと、
下に向かってぐわっと引っ張ったんです。そしたら、鏡の中俺の顔が、
ぐによーんと伸びて。「わああああああああっ」見たのはそこまでで、
走って走って、階段を何段もとばして駆け下り、
ゼイゼイ息を切らしながらホテルの外まで出たんです。

バイクに飛び乗って、そこでヘルメット被るときに、あごを触ってみました。
そしたら何ともなかったんです。とにかくね、少しでもそのホテルから離れたくて、
かなり飛ばして街中まで走りました。警察がいなくてよかった。
でね、アパートに戻って風呂場で鏡見ました。
はい、顔はなんでもなかったんですが、しばらく見てると、
鼻の下がむずむずしてきて、ホテルの鏡で見た自分の顔を伸ばすシーンが
よみがえってきたんです。気がつくと、両手で左右のあごからこめかみのあたりを
つかんでました。鏡の中の俺がじゃなく、実際の俺がってことですが、
区別つかないですよねえ。後ろに倒れるようにして鏡から離れて、
そこにタオル被せました。それ以来、鏡、ただのガラスでもそうですけど、
見るのが怖くなったんです。ねえこれ、どういうことなんでしょう。説明つきますか?





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