逆さ

2016.07.05 (Tue)
大学のときの話ですね。都市伝説研究会というのに所属してたんです。
まあでも、地方大学ですので田舎伝説と言ったほうがいいのかもしれませんが。
それで、俺が3年のときです。学祭での発表のためのテーマに選んだのが、
地元で「逆さトンネル」と呼ばれてる場所についてです。
これ、郊外の鉄道の下を通る大きなトンネルの脇にある、
人しか通れないトンネルです。封鎖されてるけど今もありますよ。
俺が大学当時も、もうすでに封鎖されてたんですが、
そのときは両方の入り口に、あの側溝に使うコンクリブロックが
逆さに積み上げられているだけで、入ろうと思えば入れたんですよ。
今はダメです。完全にコンクリで塗り込められちゃってますから。
ああ「逆さ」がついた理由ですか。それを今から説明します。

これね、俺らが大学の当時ってのが、今から7年前ですけど、
その頃にはもう真偽不明のふっるい伝説になってました。
俺もそうでしたけど、地元の市の出身者なら、
中学校のときにこの話聞くんじゃないかな。ええ、まず知ってますよ。
そのトンネルだけど、中を通ってた女の人が襲われて殺されたってのが発端。
その事件があって、しばらくしてトンネルは立入禁止になったんです。
でも事件後しばらくは、両側に立入禁止の移動柵が置かれてるだけで、
だれでも簡単に入れたんだそうです。
で、事件が風化し始めた3年後、あるグループが怖いもの見たさで、
夜にそのトンネルに行った。軽自動車の男女4人、って言われてます。
たぶん男2人、女2人。これねえ、最初の女の人が殺された事件は、

本当にあったことですよ。新聞に出ましたから。
その縮刷版のコピーも持ってきてます。犯人は、
その場で凶器を持って立ち尽くしていたところを逮捕されてます。
被害者とは知り合いじゃない、通り魔的な犯行だったみたいです。
あ、すみません。説明がごちゃごちゃしてしまって。
ただ、最初の事件は伝説でも何でもないって言いたかっただけで。
でね、その後の男女ですけど、なんと通行止めの柵を寄せてから、
車でトンネル内に侵入しちゃったんです。はい、入ろうと思えば入れます。
幅は2mくらいありましたから、軽自動車ならギリギリなんとか。
それでトンネルは高さも2mちょっとで。
これ重要なことなんですよ。というのは、その軽自動車。

伝説では、トンネルの中央部分でひっくり返った状態で
発見されたことになってるからなんです。でも、それってありえませんよね。
軽の長さって3.4mってなってるじゃないですか。
それが横幅ギリギリ、縦が2mの場所でどうやってひっくり返ることができます?
1回つぶしてだったらできるかもしれませんけど、まさかねえ。
うーん、この話の裏はまったくとれてません。
市の交通死亡事故もかなり遡って調べたんです。でも、
あのトンネル内で起きたという新聞記事は出てきませんでした。
たしかに古くからあるトンネルではありますが、
それだって昭和40年代にできたものなんです。
まあね、話自体は、この時点でガセってわかるんですけど、

じゃあそういう伝説がそうしてできたのかってことも、
それはそれで興味深いじゃないですか。ぶっちゃけた話をすれば、
都市伝説と言われるもののほとんどは信憑性の薄いデマでしょ。
でも、どうしてその伝説、例えば100kmババアとかができたのかを探るのは、
現代の民俗学として意味があることじゃないですか。
でね、まずは実地調査ってことで出かけたんです。やっぱ軽自動車で。
その伝説と違うのは、夜じゃないこと、車では入れなくなってたこと、
あと男ばっか3人だったことですね。平日の午後でしたから、
人なんかいませんでしたよ。やや離れた場所の大きいほうのトンネルを、
時おり車が通るだけで。でね、やや離れた草地に車を起きまして、
3人で伝説のトンネルの前に出ました。

中は照明を切ってるはずなんで、懐中電灯は人数分用意してまして。
側溝ブロックをよじ登って、隙間から中に入っていったんですよ。
それで、その日もだし、前1週間くらい雨降ってなかったのに、
トンネル内はかなり湿ってまして。ポタポタ天井からしずくがたってました。
いやあ、地下水ってことはないと思うんですけど、理由はわかりません。
ああ、大事なことを言い忘れてました。トンネルの長さは100mもないんです。
走ればあっという間に向こうに着いちゃう。あちこち照らしながら
3人で進んでいきました。いや、最初の事件の現場はわかんないです。
でもそのほうがよかったっていうか、怖いじゃないですか。
で、写真を撮りながら、車がひっくり返ったっていう中央部分まできたんです。
そこで念入りにあちこち照らしてましたら「あっ!」という声が同時に上がったです。

俺以外の2人です。一人は天井を指差してて、一人は地面です。
まず地面のほうから説明しますね。ぼこぼこになったコンクリ面に何か白いものが
突き刺さってたんです。声を上げたやつが手を出してそれ抜いてみました。
何だったと思います? 高さが25cmくらい。太さは手首より細いくらいの
観音像だったんです。それが逆さになって、頭を下にした形で埋まってまして、
コンクリが10cmほどくぼんでたんです。それね、俺も持ったんですが、
以外に軽かったですよ。象牙とか、何かの骨とかそういう材質に感じました。
「どうする?」って言われたんで、
俺が「それ仏様だよな、何かの供養かもしれないから、元に戻しとけよ」って。
だって、ただ捨てたのならコンクリがくぼむはずないでしょ。
明らかに道具を使って掘り、そこに埋め込んだものですよね。

あと天井のほうですけど、なんと懐中電灯の丸い光の中に、
車のタイヤ跡が見えたんです。天井もコンクリで一面に黒く濡れてるわけだから、
それが見えるってことは、よっぽど強くこすりつけたかなんかで。
これが地面なら急ブレーキを踏んだ跡と言えるんでしょうけど。
あとね、これ混乱しないように分けて話してるんですけど、
実際はこの2つのことが同時に起きたんです。だからね、頭が混乱しました。
天井のタイヤ跡は伝説の車のものだろうか。?それを供養するために、
何ものかが観音像を逆さに立てたんだろうか?
そんな風に考えたのは、トンネルを出てからのことです。中ではみなそれぞれ、
イヤーなことを考えたんですね。「もう出ようぜ」ってことになりました。
引き返すと、側溝ブロックの外はこうこうと明るくて、

安心感がありました。みなが足をかけて登ろうとしたとき、
3人とも時間差でひっくり返りました。それで脳天を打ったんです。
俺と天井のタイヤ跡を発見したやつはコブだけで済んだんですが、
観音像を最初に見つけたやつは頭を切ってかなり血が出たんです。
まあ医者に行くほどではなかったんでねすけど、でも、いくら慌ててたとはいえ、
3人が3人とも、ほぼ同時に転ぶってありえないですよね。
しかも後ろに倒れたんなら後頭部をうつか、手をついて受け身をとるでしょ。
ええ、俺の場合は滑ったわけでもなんでもなく、
ポンと弾き飛ばされた感覚がありましたね。だからね、あのトンネル、
やっぱ何かがあるんです。そう思って、そこで研究はやめました。
うーん、3人とも、その後は特別なことはないんですけども。

indexええっdっrっtyy




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