しょうけらの周辺

2017.09.29 (Fri)
今回は妖怪談義です。まず最初に石燕の絵を出しておきましょう。
説明書きはありませんが、この妖怪も石燕作の中では読み解きやすいものです。



絵には、屋根に上ったしょうけらが、
明りとりの天窓から下を覗き込んでいる様子が描かれていますが、
これは家の中の人間を見張っているのだと思われます。
なぜそんなことをするかというと、悪いことをしてないか監視するためです。
しょうけらは「庚申講(こうしんこう)」と深いつながりがあると考えられています。
庚申講は、1年のうち6~7回ある、60日に一度の庚申(かのえさる)の日に、
神仏を祀って徹夜をする行事で、庚申待とも言います。

中国の道教の影響で、人間の体の中には3匹の虫「三尸(さんし)」
が住んでいると考えられていました。
三尸は、宿主の人間から栄養分をもらっている寄生虫のようなものなのですが、
これが庚申の日に体を抜け出して、天帝(道教の最高神の一つ)のところへ、
その人間が犯した罪を報告にいくのだとされます。
天帝は、三尸が告げた罪の重さにしたがってその人間の寿命を削ります。
ただし、三尸は宿主が起きているうちは体から抜け出すことができないので、
庚申の夜には、徹夜して神仏を祀ったり飲み食いなどをしていたんですね。

三尸は、上尸・中尸・下尸の3種類で、上尸は中国の道士の姿、
中尸は獣の姿、下尸は牛の頭に人の足の姿で中国の古い書物に描かれています。
で、しょうけらはこの三尸と同一視されて考えられることが多いのです。
もしかしたら3匹が合わさってしょうけらの姿になっているのかもしれません。
さらに、三尸は単に罪の報告をするだけではなく、
宿主の人間が死ねば体から解き放たれて自由になるため、
積極的に宿主に罪を犯させようとそそのかします。

三尸


上尸は人の頭に住んでいて、頭を重たくし、耳を聞こえにくくさせます。
中尸は人の腹に住んでいて、心を惑わせます。
下尸は人の足に住んでいて、性欲を引き起こします。
3匹が協力して人間に罪を犯させ、
寿命を短くして早く自由の身になろうとしているわけですね。

また、庚申の申の字は「さる」とも読みますので、
猿を神の使いとする日本の神道とも結びつき、「見ざる・言わざる・聞かざる」
の三猿とも関連して考えられるようになりました。
下図は庚申講を記念して建てられる庚申塚と呼ばれるものですが、
猿の像の前面に「見ざる・言わざる・聞かざる」が彫られています。
これは人間が犯した罪を「見ない、聞かない、言わない」ということでしょう。

庚申塚


ということで、「しょうけら=三尸」と考えてもいいと思いますが、
これだけではつまらないので、一つ新説をつけ加えておきます。
しょうけらの「けら」の部分に着目して、虫ということを考え合わせると、
「おけら」という言葉が浮かんできます。オケラはコオロギに近い種類の昆虫で、
地下にトンネルを掘って生活しています。前脚の先がモグラとよく似ていて、
土を掘るのに適した形をしていますね。



屋根の上にいるしょうけらと、地下に住んでいるオケラは、
違いも大きいのですが、もう一度石燕の絵に戻って、
しょうけらの両手に注目してみると、なんとなく似ているような気がしませんか。
ま、これは自分の深読みのしすぎなのかもしれませんけども。

関連記事 『石燕を読み解く』




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コメント
突然の訪問、失礼いたします。
私はこちら⇒https://goo.gl/uEPpc4
でブログをやっているあゆといいます。
色々なブログをみて勉強させていただいています。
もしよろしかったら相互リンクをお願いできないでしょうか?
「やってもいいよ」という方はコメントを返してくだされば、
私もリンクさせていただきます。
よろしくお願いします^^
あゆ | 2017.09.29 16:00 | 編集
コメントありがとうございます
申し訳ありませんが相互リンクはやってないんです
ごめんなさい
bigbossman | 2017.09.29 23:21 | 編集
 こんばんは、野崎です。

 三シ(字が出ない)の虫といえば、『ゲゲゲの鬼太郎』でこいつが悪事をチクッたことがきっかけで閻魔大王から鬼太郎に「ねずみ男を退治せよ」という指令が来た、なんていう話もありましたね。

 また、『帝都物語』では敵役の加藤が「日本の青シ」を解き放って東京の破滅を引き寄せる、なんていう大規模な呪術儀式をやっていました。
 まあ、加藤の企みはいつもスケールが大きいのですが。


 現代では庚申待の風習が廃れて久しいですが、その割に平均寿命は延びる一方……閻魔大王庁には一体どんな報告が届けられているのでしょうね?

 では、ここらで失礼します。
野崎昭彦 | 2017.09.29 23:42 | 編集
コメントありがとうございます
たしかに平均寿命は伸びましたが
これは延命治療技術が発達したせいもあると思います
何本もの管でつながれてボケたままベッドに縛りつけられるのはある種の恐怖です
そうならないようコロリと逝ければいいんですが
bigbossman | 2017.09.30 00:10 | 編集
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