キップ・ソーン博士

2017.10.01 (Sun)
早いもので、今年もまたノーベル賞受賞シーズンになりました。
現在、日本人は3年連続で受賞していますが、初の4年連続の受賞はなるでしょうか。
さて、今回取り上げるのは、ノーベル物理学賞の最有力候補の一人である
キップ・ソーン博士についてです。昨年2月に重力波がはじめて観測されましたが、
博士はその検出プロジェクトのリーダーの一人なんですね。
ちなみに、物理学賞の発表は日本時間の10月3日です。

自分が博士の名前を知ったのは、もう10年以上前、
過去に遡るタイムマシンに関する著作を読んだときでした。
キップ・ソーン式のタイムマシンはワームホールを用いたもので、
ワームホールは宇宙の虫食い穴とも呼ばれます。
入り口から入って出口から出ると、
そこは宇宙のはるか離れた空間になっているという不思議な穴。
ただし、この宇宙に実際にワームホールがあるという証拠はまったくありません。
ですから、このタイムマシンに関する考察は思考実験です。

ブラックホールは空間に空いた一方通行の穴のようなものです。
そこに飲み込まれた物質やエネルギーは二度と出てくることはできません。
ブラックホールの中心は特異点といって、圧力や温度が無限大になります。
ブラックホールには入り口はあるものの出口はないのです。
このブラックホールを2つつなげたらどうなるか、
というのがワームホール発想の原点なんです。

博士のタイムマシン理論について、ここでは詳しく解説はしませんが、
負のエネルギーを持つエキゾチックな物質を使って特異点問題を回避し、
さらにワームホールの通路を光速に近いスピードで伸ばしてやることで、
なんとかかんとか過去へのタイムトラベルを可能にする理論を組み立てました。
ですが、これが現実にできるかというと、おそらく1000年たっても不可能でしょう。
先に書いたように、まずワームホールそのものが存在するかどうか怪しいですし、
ワームホールを準光速でビョ~ンと伸ばしてやる技術は想像を超えています。

それと、キップ・ソーン式のタイムマシンはなかなか使いにくいものです。
なぜかというと、原理的に、過去に遡るといっても、
タイムマシンが作られた以前の過去には戻れないからです。
今日は10月1日ですが、この日の昼の12時にタイムマシンが完成したとすると、
そこが基準点となって、それより昔には戻れないのです。ですから、
ジュラ紀の時代に行って恐竜を観察するとか、子ども時代の自分に会って、
人生のアドバイスをしてやるなどということは不可能なわけですね。

さて、自分は洋画に関する雑文なども書いていますが、
博士は映画界とも深いつながりがあります。話題になった2014年のSF映画、
『インターステラー』の原案を出したのがキップ・ソーン博士でした。
この映画は、特殊相対性理論、特異点問題、多次元における時間と重力など、
きわめて難解な物理学的内容が含まれていて、
その方面の知識があればあるほど面白く見られるというものでした。
また、ジョデイ・フォスター主演の1997年のSF映画『コンタクト』にも
深く関わっており、この映画ではワームホールを利用した星間旅行機が登場します。

さて、博士は量子力学の人ではなく、研究分野は相対論的重力理論です。
相対性理論の学者がノーベル賞を取るのはたいへんに難しいと言われます。
なぜなら、理論を証明する証拠が出てくることがほとんどないからです。
ノーベル賞は賞の性格として、実証的かつ実用的な研究に与えられることが多いのです。

世界的に有名な車椅子の天才科学者、ホーキング博士がノーベル賞を取れないのは、
彼の研究を証明する証拠が実験で出てこないからなんですね。
(大型加速器でマイクロブラックホールが生成され、
それが蒸発するホーキング放射が観測されたなら、あるいは・・・)
相対性理論の創始者、アインシュタインはノーベル賞を受賞していますが、
これは相対性理論に対して与えられたわけではなく、他の研究によるものです。

ですから、今回キップ・ソーン博士がノーベル賞を取れればラッキーとも言えますが、
長い間、アメリカで重力理論研究の第一人者としてやってきたからこそ、
重力波検出プロジェクトのリーダーに選ばれたのだとも言えるのです。
ノーベル賞に関しては、もし今年取れないとしても、
近い将来には必ず受賞することになるでしょう。

さてさて、最後に、博士はアメリカ人ですから冗談が好きです。
博士は研究分野が同じであるホーキング博士とはたいへん仲がよく、
ホーキング博士はイギリス人ですから賭けが好きです。

「裸の特異点」という概念があります。
宇宙の始まりのビッグバンの瞬間やブラックホールの中心が特異点ですが、
なぜ「裸の」とついてるかというと、
ホーキング博士は、これは女性の局部のように恥ずかしいものだから、
必ず奥底に隠されて見えなくなっていると主張しました。
(特異点は温度・圧力無限大になり、計算が成り立たなくなるので恥ずかしい)
それに対してキップ・ソーン博士は異を唱え、賭けが成立しました。

結果、高い次元の宇宙だと裸の特異点が存在するという計算結果が示され、
ホーキング博士はキップ・ソーン博士に、
裸を隠すための下着を贈ることになりました。
また「はくちょう座 X-1 はブラックホールか否か」という賭けも2人の間で行われ、
これにも負けたホーキング博士は、キップ・ソーン博士に、局部丸見えの、
アメリカのヌード雑誌である『ペントハウス』1年分を贈ったということです。

関連記事 『重力波観測』



※ 追伸 ノーベル物理学賞受賞おめでとうございます。






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コメント
 こんばんは、野崎です。

「ラッキーが起きましたね」的なことを書きに来たらもう追記済みでしたね。

 とりあえず仕切りなおして。

 キップ・ソーン博士、ノーベル物理学賞受賞おめでとうございます。


 では、失礼します(何しに来たんだ)
野崎昭彦 | 2017.10.06 00:21 | 編集
コメントありがとうございます
相対性理論でブラックホールとかの研究をしてる物理学者は
なかなかノーベル賞が取れないんですよね
重力波検出プロジェクトは何百人のスタッフでやってるんでしょうが
そのリーダーになるには
やはり長年アメリカで第一人者であり続ける必要があります
日本で言うとカミオカンデでニュートリノ発見の
小柴博士みたいな立場なんでしょう
bigbossman | 2017.10.06 00:27 | 編集
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