カニバリズム小考

2017.10.10 (Tue)


今日はこのお題でいきます。グロ注意かもしれないです。
まず、カニバリズムはご存知だと思います。簡単に言えば「人肉食・食人」
のことです。「Canibal(カニバル)」はスペイン語で、
「Canib」は西インド諸島に住むカリブ族のこと。
この部族はスペイン人船員から人肉を食べると信じられていたため、
不名誉な語源として名を残してしまいました。

カニバリズムは、じつは人類史に匹敵する長い歴史があります。
本来なら旧石器時代あたりから語っていくべきなのでしょうが、
とてもすべては書ききれません。ほんのさわりの部分しかご紹介できないです。
それで「小考」とお題に入れました。
で、世界に存在したさまざまな人肉食を分類するには、
「なぜ食べたのか」という動機の面を見ていくのがいいみたいですね。

まず、社会的慣習、あるいは宗教的儀式としての食人。文化人類学的には、
自分の仲間を食べる族内食人と、自分たちの敵を食べる族外食人にわけられます。
食生態学者であった西丸震哉氏は『さらば文明人 ニューギニア食人種紀行』
という本を出していますが、ニューギニアでかつて食人族であったフォレ族の中に、
氏が入っていって調査した内容が記されています。(詳しくは下の関連記事参照)
フォレ族の場合は、主に宗教的な族内食人でしたが、
そのためにクールー病(クロイツフェルト・ヤコブ病)が発生していました。
また、この本によって人肉は味の素の味がするなどといった話が広まりました。

関連記事 『ガイジュセクとオヤビン』

次に、緊急避難としての食人。これは食べるものがないので、
自分が生きのびるためにしかたなく食人を行ったというケースです。
世界的に有名なのが「アンデスの聖餐事件」1972年、ウルグアイ空軍機が
アンデス山中に墜落し、乗客らは死亡した乗客の死体の肉を食べることで、
救助されるまでの72日間を生きのびています。

日本では「ひかりごけ事件」1944年、
現在の北海道羅臼町で陸軍の徴用船が難破し、真冬の知床岬に食料もない
極限状態に置かれた船長が、亡くなった船員の遺体を食べたというもので、
裁判になり、船長は死体損壊罪に問われました。
作家の武田泰淳氏が、この事件をモチーフに、『ひかりごけ』という作品を書いてます。
人肉を食った人間の首のまわりはうっすらと光る・・・というのが題名の由来。

歴史的にみれば、こういう食人のケースはいろいろありました。
例えば、戦国時代の秀吉の鳥取城攻めは「鳥取の飢え殺し」とも呼ばれ、
徹底した包囲作戦により城内の食料が尽き、死体の人肉が陣中で奪い合いになるという
地獄絵図がくり広げられ「栄養価が最も高い脳味噌が真っ先に屍体から取られた」
という記録まで残っています。また、天明の大飢饉(1782年~1787年)で、
東北地方で食人が行われていたなまなましい記録を、
あの『解体新書』の杉田玄白が書き残していますね。

次が薬用としての食人、これは最近「山田家の二股商売」という項を書きましたが、
首斬りで知られた山田浅右衛門は、罪人の死体を解体し、
さまざまな人肉薬(人胆)を作って売りさばいていたという内容でした。
明治時代になっても、結核やハンセン氏病の妙薬として人肉が用いられ、
墓から死体を掘り起こした事件や、殺人事件まで起きています。
あと、現代でも胎盤などは薬品、美容品の原料になってます。

関連記事 『山田家の二股商売』

次、食文化としての食人、これ中国に多いんですよね。
人肉は古来「両脚羊」と呼ばれ、ふつうに市場で売られたりしていたようです。
斉の桓公は、紀元前7世紀、春秋時代の覇王ですが、
その料理人であった易牙は、桓公の求めに応じて、
自分の赤ちゃんを蒸し物にして食べさせたという話があります。
この他にも中国の人肉食に関しては多数の逸話が残っていますね。
あとは人肉嗜好、ゆがんだ愛情による食人。
日本人が引き起こした「パリ人肉事件」なんかがそうです。

まだまだ書くことはたくさんあってきりがないんですが、
最後に「ハイサイおじさん」の話でしめます。これは沖縄のミュージシャン、
喜納昌吉氏のデビュー曲ですが、歌のモデルとなったおじさんは喜納家の隣人。
戦後の混乱期、おじさんは女性をひんぱんに家に引っぱりこんでいて、
そのせいで妻が精神を病み、娘を「自分の子どもなんだから食べてもいいでしょう」と、
解体して鍋で煮てしまう。その後、妻は収監されるが自殺。
おじさんは事件のために村八分の状態になり、
なんとかつき合いを保っていた喜納家に酒を無心にくる・・・

それを歌にしたのが「ハイサイおじさん」で、この背景を知って歌詞を見れば、
2番の「年頃なたくと 妻小ふさぬ うんじゅが汝ん子や  呉みそうらに
(年頃だから女房が欲しいんだけど、おじさんの娘をくれないかい)

の部分など、じつにブラックで怖いものがあります・・・

※ 人肉食をあつかった、映画のレクター博士や、奇妙な味の短編 『特別料理』
 『二瓶のソース』などにも触れたかったんですが、そこまでいきませんでした。

関連記事 『食の奇譚』








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