ニューヨークの叔母の話

2017.10.11 (Wed)
これ、長い年月にわたる、しかも聞いていてあまり気持ちのいい内容じゃないんですが、
よろしいでしょうか。はい、じゃ話させていただきます。
まず、ニューヨーク在住の叔母のことですが、私の母の妹なんです。
叔母が若い頃、大学2年のときにアメリカに留学しました。1年間の予定だったんですが、
そのときに向こうで猟奇殺人事件にまき込まれてしまって。
事件は解決したんですが、それには叔母の力が大きかったようなんです。
叔母は特殊能力に目覚めてしまい、そのまま日本には帰らずにアメリカで霊媒、
向こうではミーディアムというみたいですが、それを職業にしているんです。
大物の政財界人や映画スターなんかの依頼が多くて、多大な収入があるみたいです。
私も1度だけアメリカに行って叔母の家を訪問したことがあるんですが。
ものすごい豪邸でしたよ。独身で、そこに一人で住んでるんです。

はい、私が叔母と直接会ったのは6回くらいで、子どものころが多かったんですけど、
ニューヨークからの国際電話がたまーに来るんです。
それも私が人生でピンチに陥っているときに。ええ、そのお話をするつもりです。
1回目は、私が高校2年生のときでした。そのころ私はバレーボール部に入っていて、
毎日8時過ぎまで練習がありました。それで、右足のヒザがカクカクするようになって。
家の近くの整形外科に行ったら、まあ疲労だろうから少し練習を休んで様子をみなさい、
って言われました。でも、休んでやらだんだん痛みが強くなってきて・・・
そのあたりで叔母から電話がかかってきたんです。
「あなた今、右膝が痛いんじゃない? 
 大きい病院に行ってちゃんと検査してもらったら?」そんな内容でした。
それで大学病院に行ったら、すぐに入院になっちゃったんです。

なんでもヒザのところの動脈が詰まって、内部に壊死が広がってるということでした。
最悪の場合、足の切断もありえる、もうバレーボールをするのは無理だって言われて、
私は絶望して、毎日泣き暮らしていたんです。そしたらまた、
叔母から電話がきて、私が電話口で涙ながらに病状を伝えたら、叔母は、
「・・・わかったわ。じゃあ今から鶏を送るから、毎晩9時には寝るようにしなさい」
こんなふうに言われまして。鶏?どういうことだろうと思いましたが、
その晩から夢を見るようになったんです。
私は病院のベッドに寝ていて、なんだか顔のまわりが騒がしい。
はい、ベッドの上、顔の両脇にオスの鶏が1羽ずついたんです。
鶏は「コッコッコ」と鳴きながら、だんだん足のほうに下がってきて、
クチバシで私の右ヒザを突っつきはじめ、

そして真っ白いミミズのようなのを引っぱり出すんです。
2羽が協力して何匹も何匹も・・・ええ、夢の中ですし、痛くはなかったですが、
なんとなくむず痒い感じはありました。その夢は4日間続いたと覚えてます。
だんだんに夢の中で、引っぱり出されるミミズの数が少なくなっていって。
4日めの夢では、鶏たちがいくら突っついてもミミズは出てこず、
鶏は不満げな声を上げて、飛び立っていきました。
それから足の手術の日が決まって、術前の検査をしたらなんと、
すべての数値が改善していて、CTでも壊死した部分がほとんどなくなっていたんです。
これには医師たちもびっくりしてましたっけ。
それで叔母に連絡してお礼を言ったら、「よかったじゃない。
 あの鶏たちよく働いたようね」って平然としたこたえが返ってきて。

そんな感じで、恩着せがましかったり、偉そうなところはちっともなかったんです。
はい、それで2回目はちょうど10年後、私が結婚して4年目のときでした。
そのとき長男が2歳になっていて、私は家で子育てに専念してたんですが、
何だか肩こりがひどくなって、背中に重いものが乗っている感じがつねにあったんです。
気持ちもイライラするようになって、夫と何度かひどいケンカをしたり・・・
これじゃダメだ、心療内科にでも行こうか、そう思っていた矢先にまた、
叔母から電話がかかてきました。
「あなた、ちょっとよくないことになっているみたいね。
 前身が映るような大きな鏡、家にある? なければ買いなさい。あと金魚鉢と金魚」
こんなことを言われました。わけがわからないまま準備したら、
叔母から奇妙な手順を詳しく教えられたんです。

「一人だけの夜に、ロウソクの明かりだけにして、鏡の前でイスに座って。
 手には金魚の入った金魚鉢を持って、じっと鏡を見てなさい。
 あと、カナヅチかなにかも必要ね。そしてもし、
 金魚になにか異変あったら、カナヅチで鏡の中のものを強く叩くの。
 もちろん鏡は割れるだろうから、ケガしないように気をつけて」
それ以上の詳しいことは教えてもらえなかったんです。
けっこう準備がたいへんでしたが、高校のときのことで叔母を信用してましたので、
夫が出張でいない晩にそのとおり実行したんですよ。
はい、鏡に映ってるのは金魚鉢をかかえた私。そのまましばらく何事もなくて、
そろそろやめようかと思い始めたころ、
だんだんに持っている金魚鉢が熱くなってきました。

お湯が沸騰するときみたいに、金魚鉢の中で細かい泡が立ち始め、
それにつれて金魚が暴れるように泳ぎ出して、ビョンと鉢から飛び出しました。
私はあわてて、金魚を拾い上げようとしましたが、そのとき、
鏡の中の私の肩の上に、ぼうっと女の姿が浮かんでいることに気づいたんです。
見たことのない知らない女でしたが、ものすごい険悪な目つきで私をにらんでたんです。
それで叔母から言われてたことを思い出し、とにかく夢中で、
下に置いてあったカナヅチでにらんでいる女のいる部分を叩きつけました。
そしたら「キャアッ」というような悲鳴が鏡の中から聞こえて、
鏡はバラバラになって崩れ落ちたんです。
はい、後でわかったことですが、その女、夫の浮気相手だったんです。
じつはそのとき、夫は出張ではなくて、その女と一泊旅行に出てたんです。

それで女と旅館にいるとき、とつぜんに女の額が割れて血が吹き出し・・・
はい、私はうかつにも夫の浮気にはまったく気がついてませんでした。
体調が悪かったのは、その女の生霊がわたしのとこに来てたからなんですね。
ええ、すったもんだありましたが、私は夫のことが許せなかったので、
裁判に訴えて離婚し、シングルマザーになったんです。
このことを叔母に伝えると、「・・・まあねえ、人生いいことばっかりじゃないから。
 ま、気を落とさないで頑張って」みたいに軽く言われまして。
これで叔母に助けていただいたのは2回めでしたし、
とにかく感謝を伝えました。それから私は、子どもを実家に見てもらいながら、
働く先をさがして、なんとかまた10年がたったんです。

それで、子どもはこの春に小学校を卒業して、今は元気に中学に通っています。
私のほうは、今年に入ってからまた体調が悪くなってしまいまして。
病院に行ったら、最悪の診断結果が出ました。
ええ、膵臓がんで、病状が進行してるために手術はできないって。
でも、絶望はしませんでした。私には叔母がついてて、
今度もきっとたすけてくれるだろうって思ってたんです。ところが、
いつまでも叔母からの連絡はなくて、それでこちらから電話して窮状を訴えました。
そしたら叔母は、「病気のことはわかってました。まだ子どもは中学生だし、
 あなたもここで死ぬことはできないでしょう。でも、
 今回のことはちょっと大変。あなたの病気を治すためには、
 身代わりになって亡くなる人がどうしても必要。

 手順もかなり複雑になるし、あなたそれできる?」
こんなふうに言われたんです。ええ、これはずいぶん悩みました。
だって人の死がかかってるんですから。前のときの金魚は結局死んじゃったけど、
それどころの話じゃないですよね。そんなときでした、
別れた夫からアプローチがあったんです。浮気相手とも別れて、
私とよりを戻したがってるみたいな話で・・・
ええ、私のほうは夫にはもう未練はないので、身代わりになってもらおうと決めました。
いいとか悪いとか、もうしかたがないんです。
叔母が言ったように、かなりの準備が必要なので、
今あれこれと取りそろえているところです。もちろん罪悪感がないわけじゃないです。
だからこうやって、ここに話しに来たんですよ・・・

blaのコピー






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