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アート怪談

2017.10.14 (Sat)
スジスワフ・ベクシンスキー


art、芸術といっても言語芸術はのぞきます。陶芸や書道を含む美術、
音楽、あと舞台とか舞踏などの総合芸術・・・骨董品なども含めて、
これらを題材とした怪談、ホラーはいろいろありますよね。

まず美術だったら、絵の中の人物が動くとか、魂が宿って抜け出す、
絵柄がだんだんに変わっていくなどというのは定番です。
見る人が絵の中に閉じ込められてしまうなんて話もあります。
彫刻だと、ギリシャ神話のピグマリオン。現実の女性に失望したピグマリオンは、
理想の女性の裸像を彫刻するが、やがて裸では恥ずかしいだろうと服を着せ、
いっしょに食事をするようになる。しかし彫刻はあくまで彫刻であり、
ピグマリオンは恋わずらいのためにどんどんやせ細っていく・・・

世界的に有名なのは、やはりオスカー・ワイルドの、
『ドリアン・グレイの肖像』でしょう。
若く奔放な美青年ドリアン・グレイは、友人の画家が描いた自分の肖像を見て、
「絵のほうの自分が年をとればいい」と言う。そして官能に溺れた生活を続ける。
すると絵のほうのドリアンだけが、どんどん汚れて醜くなっていく。
肖像を描いた画家を殺したドリアンは、絵を破壊しようと試みるが・・・
世紀末のデカダンな雰囲気がよく出ていたと思います。

音楽だと、あるミュージシャンが出したCDにありえない変な声が入っている。
『暗い日曜日』というハンガリーの歌謡を聞くと自殺したくなる。
ある曲がかかると勝手に足が動いて踊りがとまらなくなってしまう・・・とか。
呪われた曲というのもホラーのジャンルの一つになっていますね。

これはまず、芸術家には奇矯な性格で、異常な生涯を送った人が
多いということもあるでしょう。そういう人たちが執念を込め、
長時間かけて創ったものですから、不可思議な力が宿るのも当然かもしれません。
また、絵だったら構図や色彩、音楽なら旋律やリズム、
それらがなんらかの呪術的な効果を持ってしまうなんてことも、
考えられなくはないと思います。

さて、クトゥルー神話の生みの親、H・P・ラブクラフトは芸術好きであり、
美術と音楽をモチーフにした話をどちらも書いています。
音楽では、代表作の一つである『エーリッヒ・ツァンの音楽』
主人公の私は、同じ下宿に住むドイツ人の老音楽家、
エーリッヒ・ツァンの部屋から聞こえてくるヴィオルの調べに魅了される。
ぜひ目の前で演奏を聞きたいと申し出るが、激しい拒絶にあう。
ヴィオルの演奏はだんだんにこの世のものとは思えないほどになっていき、
それとともにツァンは日ごと憔悴の度をまして・・・
絵のほうは『ピックマンのモデル』という作品ですが、
こちらは『エーリッヒー』ほど評価は高くありません。

日本だと、作家の井上雅彦氏が編集するテーマ別ホラーアンソロジー、
「異形コレクション」の34巻で、
『アート偏愛(フォリア)』というのが出ていて、
折原一氏、竹河聖氏、菊地秀行氏、平山夢明氏などが作品を寄せています。

最後に『今昔物語』から、絵師と細工師が勝負する話をご紹介します。
これには百済の川成という絵師と、飛騨の匠という工匠が出てきますが、
どちらも当時評判の名人で、腕比べ合戦をします。

ある日、飛騨の匠が一間四面のお堂を建てたというので川成が見にいき、
西の面から入ろうとすると、そこが閉じて南の戸が開く。
ではと、そっちから入ろうとするとまた閉じて、今度は北の戸が開く。
いつまでもそういう具合で、川成はとうとう入れずに戻ってきてしまった。
自動仕掛けになっていて、わざと入れないように造ってあったんですね。
後に、飛騨の匠が陰から見て大笑いしていたという話を聞いた川成は、
仕返ししてやろうと匠を家に招待します。

匠が警戒しつつ出かけていき、家に入って戸を開くと、
腐りかけた死人が転がっていた。たちまち死臭が漂ってきて、
これはたまらんと退散しかけたところ、川成が出てきて、
「絵ですよ」と言う。見ればなるほど屏風絵で、死臭はかけらもなかった。
あまりに出来栄えが真に迫っていたので、
匠はありもしない臭いまで嗅ぎ取ってしまったのです。
このように両人とも比類のない腕を持った名匠でした。








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