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飯マズの話

2017.10.25 (Wed)
始まったのは2週間前の夜のことでした。うちは父が公団に勤めてて、
帰ってくるのがだいたい6時過ぎ、母は主婦で基本的に家にいますし、
私は高校生だけど部活動はやってないので、5時過ぎには帰宅します。
あと弟が小4で、4時前後には帰ってきます。
だからほぼ毎日、家族全員で7時過ぎには夕食をとることになってたんです。
その日もいつもどおりでした。えーおかずは、カキフライとエビフライ、
卵とトマトとチンゲンサイの炒め物、味噌汁、ご飯でしたよ。
ええ、あんなことになったんでよく覚えてるんです。

まず最初は弟からでした。好物のエビフライにドバっとソースをかけ、
口に入れた瞬間、ものすごく変な顔をして、ロケットみたいに吐き出したんです。
エビフライは飛んで、向かいに座ってた父の手元に落ち、
私たち家族が驚いていると、弟は「うげー何これ、腐ってるよ!!うえええんっ」
って泣き叫んだんです。母が驚いて、
「そんなはずないわよ。今日の夕方に買ったんだから」
自分の皿のを食べ、頭を思いっきり叩かれたような顔をしました。
それで、半開きの口からボロッとフライがこぼれ落ちて・・・

ドーンという音がして、弟がイスから落ちました。
父が立ってきて弟を抱き上げトイレに連れていきました。母は目を白黒させながら、
「ダメ、このエビフライおかしいから。食べないで!」って言いました。
でも私はほんの少しだけ、どんなだろうと思ってかじってみたんです。
そしたら・・・一瞬で吐き気がこみ上げてきました。
どう表現したらわかってもらえるかな・・・玉ねぎを1ヶ月ドブにつけて、
それにさらに塩の塊を混ぜたような・・・それであわてて味噌汁を一口飲んで、
そこでもどしてしまいました。ええ、味噌汁も地獄のような味だったんですよ。

「ママー、これ味噌汁もダメ、ダメダメ!」そう言うと、
母は、「えー味噌汁まで! じゃあ、水道の水のせいなのかしら」
それからおそるおそる、炒め物やご飯を箸でさわって舐め、
「ほんと全部ダメだー!」と絶望したように叫んだんです。
私はキッチンに行って水道の水をコップにくみ、
ちょっと飲んでみました。そしたら・・・これは普通の水だったんですよ。
父が泣いている弟を連れて戻ってきたので、母は、
「ごめんなさい、今日のご飯はダメ、何か外から取りましょう」って言ったので、
私は「お水はなんでもないよ!」って知らせました。

・・・こんなことを詳しく話してもしょうがないですかね。
その後ピザを頼んだんですが、箱を開けたときは普通のピザに見えたんですけど、
やっぱりひどい味がして、家族の誰も食べることができませんでした。
でも、おかしいですよね。家のご飯なら何かで全部ダメになった
ってことも考えられるけど、宅配のピザまでそうだってのはありえないです。
今回はピザを口にしてしまった父が、
「もしかしてというか、それしか考えようがないけど、
 何かの中毒で家族全員の舌がダメになったのかもしれない」
それから、冷蔵庫の中の牛乳やハムなんかを試してみました。

でもどれも、とても食べられないひどい味で。
それで、家族全員で総合病院の救急外来に行くことにしたんです。
ええ、病院では話を聞いて驚いていましたが、中毒だと大変なので、
朝までかかって全員の検査をしてくれました。でも血液の数値も普通だし、
アレルギーでもないし、舌にも異常はなし。
父が代表して胃カメラを飲んだんですけど、
それもまったく問題はなしで・・・病院でも首をかしげるばかりでした。
それで、様子を見てくださいと言われて家に戻ったのが5時過ぎだったんです。

眠そうな弟は学校を休ませることにし、朝食は抜きにして、
私は学校に父は仕事に出かけたんですが・・・
学校では学食でカレーを注文しました。
いつもはパンで済ませることも多いんですが、
昨夜から何も食べてなかったのでお腹が空いてて・・・
でも結局、それも食べられなかったんです。
おそるおそる口に入れたものの、友だちのいる前で吐き出してしまいました。
昨夜と同んなじ味だったんです。げっそりして家に戻ると、
母と弟が私の顔を見て首を振りました。

家では近くの食堂からカツ丼を注文したそうですが、
やっぱり私と同じで食べられなかったんです。そうしているうちに父が帰宅し、
ダメだったってことは顔を見てすぐにわかりました。
家族全員の体質がおかしくなっちゃった。やっぱり中毒としか考えられない。
明日もう一度別の病院に行こう・・・そう家族で話し合いがついたとき、
玄関でチャイムが鳴りました。母が見にいって、
居間に白っぽい和服の男性を案内してきたんです。その人は60歳くらいで、
アゴの下に長い髭をたくわえていました。

「はじめまして、わたしは町内の稲荷社の宮司をしておるものです。
 鳥居の前を掃除していると、高いところで狐火が燃えておるのに気がつき、
 見に来たらこの家の屋根の上だったので、おじゃまさせていただきました。
 もしや当社の狐たちが何かイタズラをしておるのではありませんか?」
こう言ったので、父が食べ物の味がおかしくなっていることを説明しました。
宮司さんはしばらく考えていましたが、「はああ、それはいかにも狐たちが
 やりそうなことではあります。しかしながら、ただにイタズラをするわけもなく、
 何か原因があるはずです。どなたかお心あたりはございませんか」

すると、さっきからモジモジしていた弟が、
「昨日学校の帰りにお稲荷様の境内に寄って友だちと遊んだ。そのとき、
 小さなお堂のお狐様にさわった」こんなことを言い出しました。
それで私たちは家を出て屋根を見たんですが、私には火は見えませんでした。
それから宮司さんと連れ立って稲荷社まで行ってみたんです。
もう暗くなってましたけど、稲荷社の前には防犯灯がついてました。
宮司さんは弟に「さわったのはどこ?」と聞き、弟は参道の脇にある小さなお堂、
摂社と言うんですか、そのうちの一つを指差したんです。

「昨日はこの扉が開いてて、白いお狐様がいたから食べ物をあげた」
「えー、食べ物って何?」私が聞くと、
宮司さんが「まあまあ」と、お堂の扉を開けてみると、
中には陶器の白い狐の像があり、その半開きの口に石がはさまっていました。
「お前がこれやったのか?」 「だって何か食べたそうだったから」
弟が半泣きになって答えました。宮司さんはひょいと石をつまんで取り、
参道に放ると「これはいけませんな、この狐に謝ったほうがよろしい」
それで、家族全員で頭を下げ、本殿にはお賽銭1万円を父が投げ入れました。

それから母が油揚げをスーパーで買ってきてお堂の前にお供えすると、
もう一度家族で謝ったんですよ。
宮司さんは、「うん、これで大丈夫かと思いますが、なんなら試してみましょう」
私たちを社務所に招き入れ、紅白の砂糖菓子を半分に割ったのを配られました。
みんなでおそるおそる食べてみたんですが、
あのひどいドブのような味はなくなっていたんです。
宮司さんは笑って、「ああ、これでよい。家でも大丈夫でしょう」
それから弟の頭をなで「お狐様は石は食べないからね。今後は気をつけるんだよ。

 お家でもあんまり怒らないであげてください」と、優しい調子で話されました。
私たちは家に戻り、ほとんど残っていた昨日のピザを一口ずつ食べてみると、
普通の味になっていたんです。「ああよかった」と母が言いました。
私が弟の頭をヒジで少し小突くと、父が「ま、今回のことでわかったろう。
 古いものは大事にしなくちゃいけないんだよ。とくに神様の関係は」
こう弟に諭すように話しました。これで私のお話は終わりです。
はい、二度とあのひどい味のものを食べなくてすんで、ほんとによかったです。
こういうことって実際にあるんですね。








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