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ファミレス戦争の話

2017.11.11 (Sat)
俺が前にバイトしてたファミレスで起きた話をするよ。ああ、皿洗いやってたんだ。
何から説明すればいいかなあ。そこの市は人口15万人くらいで、
新興住宅地が多いんだけど、県立大学のキャンパスが移ってきて、
それに通じる広い県道ができた。んで、道路沿いにパタパタと店が建ったんだ。
ガソリンスタンドとか、コンビニとか、洋服屋とか車のディーラーとかそういうの。
で、俺がいたファミレスもかなり早い時期にできたんだよ。
最初のうちは客は入ってたね。大学の学生グループが多かったけど、
一般の人もけっこう来てた。俺はその頃にバイトとして採用されてね。
でね、それから3ヶ月くらいして、左隣に回転寿司ができたんだ。
有名チェーン店のやつ。それでファミレスの客が少なくなったと思うだろ。
ところが、そうでもなかったんだよ。

だってほら、ファミレスと回転寿司じゃ客層が違うだろ。
うちはカップルとかグループが多いし、一人でくる人も結構いる。
それに対して、回転寿司は家族層が中心じゃね。それに向こうは10時過ぎに終わるけど、
うちは深夜までやってたし。だからすみ分けができてたんだな。
ところがだよ、それからまた3ヶ月くらいして、今度は向かい側にソバ屋ができたんだよ。
日本ソバが中心だけど、カツ丼とかラーメンもやってる店。
そしたら客の数がガクンと減っちゃたんだな。一番はやってた頃の3分の1くらいになった。
いや、俺はバイトだから別に客が減っても困ることはないし、
むしろ洗う皿の数が減って楽になったくらいだったけど、
店長はかなり大変だったみたいだね。チェーン店のファミレスだから、
雇われ店長で、年も若いしね。売り上げが減ると本社に納める上納金も減って、

本部の偉い人から、あれこれ怒られてたんだな。
もちろん客が減った原因は、せまい場所に飲食店が3軒もできてしまったことで、
2軒なら何とかやっていけても、さすがにその数だと、
客が分散してしまって無理だったわけ。だから、店長は俺らによくこぼしてたよ。
「あーあ、あの回転寿司とソバ屋のうち、どっちかつぶれてくれないかな」って。
まあそれは、向こうにしてみても同じことを思ってたんだろうけど。
でね、ある日のことだよ。俺が朝にファミレスに出勤したら、
建物の屋根の上に紫色っぽい煙が立ち上ってたんだ。
「あ、大変、火事かも」そう思ってすぐに店長に知らせた。
店長が外に出てきて見ると、やっぱ平屋建てのファミレスの緑の屋根の上に、
紫色の煙が渦巻いてるのが見える、けど、店が火事になってるわけでもなかったんだ。

「変だなあ。あの煙、ちょっと危険だけど上ってみるか」店長はそう言って、
俺を下に残したまま建物の中に入り、明り取りの窓からトタン屋根の上に出てきたんだ。
それで俺に「おーい、煙があるのはこっちだよな」
そう叫びながら屋根の上を歩いてった。「ああ、もう少し右です」と俺。
店長は「おっかしいなあ、何もないぞ。ホントに煙に近づいてるのか?」
「そこです、あと前に1m」で、店長が煙の中に入ったとたん、
体を二つに折って咳き込み始めたんだよ。「大丈夫ですか~」俺が声をかけると、
店長はゲホゲホいいながら、「これはダメだ、お前も店に入ってこい」
そう言って、逃げるようにしてファミレスの中に戻ったんだよ。
んで、中で「屋根に上ったら煙は見えなかった。
 ただ、お前が煙があるって言った場所に入ったら、

 急に喉が痛くなって、咳が出て立ってられなくなったんだよ」
それから2人してまた外に出てみたら、やっぱり紫色の煙は屋根の上にあって、
しかも何だか色が濃くなってるように見えたんだ。店長は、
「火事とかじゃないし、自然現象としか考えられん。まあ危険はないだろう」
そう言って、通常どおり営業することにしたんだ。
けど、その日は大変だったんだ。考えられないようなトラブルが続いてね。
まず、ドリンクバーってあるだろ。あの機械が壊れて、コーラやなんかが吹き出して、
客にかかって服を汚したんだ。でも、ありえないだろ。
一つならともかく、いくつもある機械がいっせいに壊れるなんて。
コーヒーやコーンスープなんかの熱いやつも吹き出したから、
客で火傷した人が出なかったのが幸いだったよ。

それだけじゃない。その日は皿やなんかの食器がたくさん割れたんだ。
皿洗いは機械がやって、俺は出したり入れたりするだけだったんだが、
皿洗い機に入れてスイッチを押したとたん、ガガガガって異常な音がして、
中の皿がみな割れたんだよ。それにウエイトレスのバイトも、
よろけて客に運んでく料理を落としたりしたんだ。店長がそのバイトの子に聞くと、
「黒っぽい影みたいなものが急に目の前に現れて、あ、ぶつかると思って、
 よけようとしてトレイを落としてしまって」こんな答えが帰ってきてね。
その上にね、ほら怪談でよくあるだろ、
客が4人しかいないのに5人分、コップの水を出しちゃうなんて話。
そういうことが何度もあったんだよ。で、そんなだから怒って帰っちゃう客が
たくさんいて、俺らスタッフは、とにかくずっと謝りっぱなしだったんだ。

だから午前2時の閉店になったときは心底ほっとした。今日は一体何だったんだ、
って思ってると、店長が、バイトの最古参だった俺に「ちょっと残ってくれ」って言って、
本部に電話をかけたんだよ。それから1時間ほどして、高級車が店の前に乗りつけ、
中から本部の偉い人といっしょに、変な神主みたいな格好の人が降りてきたんだ。
年は60代くらいで、ヤギみたいな白ヒゲを伸ばしてた。
その人は店に入るなり「ああ、これは呪いの攻撃を受けている」そう言って、
木でできた占い盤?みたいなのを出して、あれこれいじってたが、
「わかった。隣にある回転寿司、あれがこの店に呪術的な攻撃をしかけておる。
 おそらくこの店をつぶしたいのだろう。これから呪い返しをする」
それから床にチョークで変な図形を描いて、その中に炉みたいなのをすえて香を焚き、
朗々とした声で祈祷を始めたんだよ。それが朝の4時ころまで続いた。

でね、翌日の朝まで店に泊まって仮眠をとり、
それから店長と外に出てみると、前日の紫の煙はまだあったが、
だいぶ煙の色が薄くなってた。それと、それまで確かになかったのに、
回転寿司の屋根の上に緑色の煙が立ってるのが見えたんだ。そこに白ヒゲの先生が出てきて、
「ああ、呪い返しが効いてる、効いてる。今日はあの店のほうがてんてこ舞いだろう」
そう言って帰ってったんだよ。で、その日も店は営業して、
前日ほどではなかったものの、やっぱり細かいトラブルがいくつもあったんだ。
これは回転寿司のほうも同じだったんじゃないかと思う。
屋根の上の紫と緑の煙は、今日はこっちが濃かったと思えば、
次の日はあっちが濃くなってるって具合で、両店ともどんどん客が減ってったんだよ。
ところがそれから5日ほどした日、紫も緑もどっちの煙もなくなってたんだ。

そのことを店長に言うと、店長は小さな声で、
「呪詛合戦な、あれ、両方の店で手打ちをして、お互いにやめることにした。
 このままだと共倒れになっちまうからな」
俺が「ああ、やっとトラブルから解放されますね。
 前の状態に戻れるわけですか」そう言うと、店長は、
「いや、また三すくみ状態に戻ってもしかたないだろ。明日からは、
 両店で協力して、向かいのソバ屋をやるんだよ」ニヤニヤ笑いながら、そう答えたんだ。
でね、翌日、ソバ屋の屋根の上にオレンジ色の煙が溜まってた。
その煙はどんどん濃くなって、それとともにソバ屋の駐車場にある車の数が減り、
ついに1ヶ月後、閉店してしまったんだよ。ああ、それ以来、
回転寿司とは共存して、俺はバイトやめたけど、そのファミレスは今も営業してるよ。









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