FC2ブログ

ノーベル賞の傾向分析

2017.11.15 (Wed)
今回は科学ニュースからです。「ノーベル賞受賞者の傾向は? 」という論評が、
『ナショナル・ジオグラフィック』誌に出ていたので、それについて。

■世界でいちばん受賞者を輩出している国は米国、移民が大きく貢献

米国は、受賞者をどの国よりも多く輩出しているが、科学分野の受賞者の多くが、
子供の頃、あるいは研究を始めたばかりの頃に米国へ移り住んだ移民である。
世界でいちばん受賞者が多いのは米国だが、米国の大学に在籍し、
科学分野のノーベル賞を受賞した多くの科学者が、米国以外の国で生まれている。

米国を拠点とするノーベル化学賞受賞者の30%以上が、米国外の出身者だ。
2017年の共同受賞者でコロンビア大学教授のヨアキム・フランク氏は、
ドイツ生まれである。また、物理学賞受賞者の35%も外国生まれである。
マサチューセッツ工科大学の物理学者で、2017年物理学賞を共同受賞した
ライナー・ワイス氏も、やはりドイツで生まれた。

まあこれはそうでしょうねえ。まず一つには、英語で論文を書くことができれば、
それだけで世界中の多くの人の目に留まることになります。
論文の引用数や追試験の数も増えるでしょうし、
英語圏の住人というだけで、受賞には有利に働くはずです。
あと、アメリカの場合、なんといっても大学を含めた研究機関の数が多い。
研究機関の数が多いということは、研究で食っていけるポストが多い
ということでもあります。いくら高い志を持っていても、
生活が成り立たなければしょうがないわけですし。

さらに、アメリカは研究資金も潤沢にあります。
そこへ、自在に英語を操れる高い知力を持った高等移民が集まってきて
切磋琢磨し、さらにレベルアップする。
これはノーベル賞の数が増えるのは当然でしょうね。
今後、さらに米国一国集中の傾向は強まっていくことでしょう。

話変わって、今年度のノーベル文学賞は、
英国人作家のカズオ・イシグロ氏が受賞されましたが、日本国内では、
イシグロ氏の文化勲章受賞が検討されたものの、最終的には見送られたようです。
(文化勲章は外国国籍でも受賞することができ、
これまでにも米国籍のドナルド・キーン氏などが受賞しています。)

自分は、これは当然だと思います。国籍がどうのこうのという問題ではなく、
文学賞というものの性質上、どの言語で書かれたかということが重要です。
イシグロ氏は、元日本国籍とはいっても日本語はほとんどできず、
氏のすべての作品は英語で書かれています。つまり、
ノーベル賞は英国文学に対して与えられたとも言えるわけで、
日本文学および日本文化との関係は希薄だと考えます。

■平均すると、科学分野の受賞者の年齢は上がっている

2017年のノーベル生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の受賞者のうち、
1人を除く全員が70歳を超えていた。これは、受賞者の年齢が年々上昇傾向にある
ことを示している。実際、授賞時の平均年齢は過去100年間上がる一方だった。

これもしょうがないでしょうね。100年前と比較すれば、
科学者の数がまるで違いますから。物理学だけで見ても、100年前には
物理学者の数は数千人程度だったのが、今は数百万人まで増えているでしょう。
そして重大な発見の数も飛躍的に増えており、
受賞の順番待ちをしている科学者がたくさんいるのです。

中には、自分に順番が回ってくる前に死去してしまうという
不運な科学者もいるでしょうが、
1回でのノーベル賞の受賞者の数は決まっているので、
しょうがないことだと思います。とはいえ、iPS細胞の山中伸弥氏のように、
真に画期的な研究成果は順番をすっ飛ばして受賞することになります。

あと、理論の検証に時間がかかるということもあげられるかもしれません。
ノーベル賞は、たんに理論を発表しただけではダメで、
実験による検証がなければ受賞が難しくなってきています。
ですから、ヒッグス粒子のピーター・ヒッグス氏のように、
論文発表から50年もたっての受賞なんてことも起きてくるわけです。

■受賞者の大部分が男性

1901年から2016年までの個人受賞者881人のうち、
女性の受賞者はわずか48人である。
また、数十年間女性の受賞者が全く出ていない分野もある。
最後に物理学賞を受賞した女性は、1964年のマリア・ゲッパート・マイヤー氏である。
この格差は、科学において女性に対する組織的偏見が根強いことを反映している。
ノーベル賞に値する発見が数十年分もたまっていることも状況を悪くしている。

たとえば、ノーベル財団の記録によると、核分裂を共同発見したリーゼ・マイトナー氏は、
1937年から1965年までの間に物理学賞候補に29回入り、
それとは別に11924年から1948年まで化学賞候補に19回入っているが、
一度も受賞には至っていない。また、ダークマター(暗黒物質)の存在を明らかにした
天文学者ベラ・ルービン氏の画期的研究も高い賞賛を得たが、
ノーベル賞を受賞することなく2016年12月25日に死去した。


うーん、受賞者の男女比は20:1くらいの割合ですか。
これ、実際の最先端科学者の男女比と比較してどうなんでしょうね。
ノーベル財団のあるスウェーデンは、早くから女性の人権問題に力を入れている国ですし、
そもそも、ノーベル賞の名前が高まったのは、
女性であるマリー・キュリーの受賞が大きいのです。
意図的に男性を女性に優先させているとは考えにくい気がします。

あと、本文に名前が出ているリーゼ・マイトナー氏はノーベル賞を受賞するに値する
業績を残しましたが、ベラ・ルービン氏はどうなんでしょう。
彼女の、銀河の回転速度の観測はすぐれた成果ではありますが、
その原因が、必ずしもダークマターによるとは まだ言えないと思います。

■多くの人々が関わる共同研究の受賞はますます増えている

ノーベル財団の規則によると、同時受賞は最高で3人までと限定されている。
20世紀初頭には少人数の研究チームが主流だったが、
昨今の画期的発見は大々的な科学協力の成果であることが多い。それでも選考委員会は、
大所帯の研究チームへ科学分野の賞を授与することにいまだ前向きではない。

特に物理学の場合、研究には数千人の研究者が関与していることもある。
2017年の物理学賞は、その代表例だ。アインシュタインの一般相対性理論で
予言された重力波「時空のさざ波」の検知に成功したとして、
ライナー・ワイス氏、キップ・ソーン氏、バリー・バリッシュ氏に賞が贈られたが、
ソーン氏は「将来的には、私たちのようにプロジェクトの初期段階に関わった
人々だけでなく、これを成功させたチーム全体に賞が与えられるような道を、
ノーベル賞委員会には探っていただきたいと願います」と公式インタビューで述べている。

これもそのとおりだと思います。重力波観測の論文は、共同執筆者として
1000人以上が名前を連ねていますし、日本のニュートリノ観測でも、
プロジェクトを代表して小柴昌俊氏がノーベル賞を受賞しましたが、
これも本来は、プロジェクトそのものが受賞すべきではなかったかと思います。
現代の科学においては、理論屋、実験屋、そしてその両者をつなぐ役割のコーディネーター、
この3者のうちのどれが欠けても、プロジェクトは機能しないのですから。

関連記事 『キップ・ソーン博士』

ノーベル賞のメダル









関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1265-042820aa
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する