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天井裏

2013.10.01 (Tue)
30年も前の自分が学生時代の話。
東京の大学に入学して古いアパートに住んでたんだよ。
風呂なしでトイレ共同のやつ。昔はそんなのが普通にあった。
2階の雨漏りがひどくて隣との壁も薄い。
住んでるのはほとんどが貧乏学生だからお互いガマンするとこはしてたんだけど、
2年になったときに大家の知り合いの中年夫婦が端部屋の隣に越してきた。

引っ越しのあいさつもなにもなかったし、すごい陰気だったな。
で、そいつらが新興宗教に入ってるんだ。
昼間はひっそいりしてるんだけど、夜の10時過ぎから活動を始める。
ガチャガチャとビンか茶碗かなんかの音がして、
そっから夫婦そろって鉦入りのお経か祝詞が始まる。
俺は宗教なんか詳しくないんだけど、法華の太鼓というやつとは違ったのはわかる。
毎日ではなかったし、宗教仲間が訪ねてくることもあんまりなかったけどな。

なんとかガマンしてたけど、
あるとき試験勉強してたらそのお祈りが始まって、
それが10時から夜中の2時になってもやめない。
夫婦掛け合いでだんだん声が大きくなってきた。
堪忍袋の緒が切れて、「ルセー!!」ってガーンとそっち側の壁を蹴ったんだよ。
お祈りは、一瞬止んだけど、またすぐ始まった。

それで俺もクソーと思って大音量でラジカセをかけた。
その中で勉強してたんだがまったく頭に入らず、
結局徹夜して、朝方に近くのJRの駅に行って、
そこのベンチで教科書広げたりしたものの試験の結果はさんざん。
ま、これは一夜漬けした俺も悪いんだけどな。
ムシャクシャしてバイトの金があったんで酒飲んで遅くに帰ったら、
隣は不在らしく電気がついてない。

昨夜のこともあって俺はそのまま寝てしまったが、
ちょっと寝たと思ったらすぐ目を覚ました。するとアパートの天井が目の前にあるんだよ。
俺の体が宙に浮かんでて、顔の10cm上くらいにホコリだらけの汚い天井板があった。
水に浮いているような感じではなく、コンクリで固定されてるみたいで、
体は動かせないし目も閉じることができない。

すると、その天井板にぼーっと怖い顔の中年の女の顔が浮かんできて、
正面から俺の顔を見据えたまま、いかにも憎々しいという口調で「死ね!」と言った。
これは隣の宗教ババアとは違う女で、テレビみたいな平面じゃなく顔には立体感があった。
そっから白ひげのじいさんとか、変な髪形の女学生?とか次々に人の顔が出てきて、
「死ぬんだ!」とか「死になさいよ」とか様々な言葉で俺を呪ってくる。
どれも会ったことのない人で、後で数えたところ72人だったけどな。
で、30分近くもそれを聞かされて、滅入ってたところを、
とどめとばかりにドーンと落とされた。天井近くに浮いたとこから、
2m以上はあったと思うけど、そのままの姿勢で床に落ちたんだ。

下は布団だったけどしたたか全身を打った。
そのときに天井裏でドコドコッと音がして板がたわんだ。
上に誰かひそんでるんだと思った。そのままふーっと気が遠くなった。
目を覚ますと8時過ぎで、その日は大学は休みだったんで問題ないが、
起きようとしたら体が痛い。特に腰と両方のかかとが痛い。
そのときには昨夜のことが夢のようにも思えたけど、
この体の痛みは夢じゃないとも思った。
隣はいつも朝はNHKをかけてるんだが、音がしないんでいないと思った。

なんとか起き上がることができたんで、
確かめてみようと、押し入れから天袋を開けて天井裏に頭を出した。
クモの巣だらけで明かりがあまり入ってきてないんで、ライターを擦ってみてあっと思った。
隣のほうからちょうどドミノ倒しのようにズラズラっと、
俺の部屋まで縦30cmくらいの額縁が続いてるんだ。
手前の何枚かをつかんで押入れにおりて見たら、見覚えがある。
昨夜天井裏に出てきた顔のやつらで、遺影なんだと思った。
痛む腰をなだめてなんとか天井裏にのぼって写真を回収したら72人分あった。

もちろん大家に連絡をとってその日のうちに解約の手続きをとった。
それから引越し先が決まるまでダチのところを泊まり歩いていたが、
片方のかかとにはヒビが入ってた。




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