疫病神としてのスサノオ

2018.01.18 (Thu)
前回、疫病のことを書きましたので、それに関連のある話ですが、
まだ自分の中でうまく整理できてないので、どこまで書けるか自信がないです。
いろいろ間違った内容があるかもしれません。そのつもりでお読みください。
まず、「疫病神」は(やくびょうがみ)と読んで、現在では、
「やっかいなトラブルを起こす人・嫌われ者」のような意味で使われますが、
元来は「疫病(えきびょう)を司る神」という意味だったんです。

スサノオ(素戔男尊)はみなさんご存知だと思います。日本神話の主役の一人ですよね。
黄泉の国から帰ってきたイザナミが川原で禊をしたさい、
左目からアマテラス、右目からツクヨミ、鼻からスサノオが生まれたとされます。
この後、スサノオは姉のアマテラスとトラブルを起こして、さまざまな乱暴を働き、
アマテラスが天の岩戸に隠れるなどのことがあり、スサノオは高天原を追放されます。
そして出雲の地に来て、ヤマタノオロチを退治することになります。

素盞嗚命


ということで、スサノオは日本初の疫病神・嫌われ者だったんですね。
神話学では、このような存在を、「トリックスター( trickster)」
(神や自然界の秩序を破り、物語を展開する者。
みなを引っかき回すイタズラ者)と言ったりもします。
北欧神話の火の神、ロキなどが、典型的なトリックスターですね。

さて、『日本書紀』には、スサノオが高天原を追い出されたとき、
最初に朝鮮半島の新羅国の「ソシモリ」という地に降りたものの、
「ここにはいたくない」と言って、出雲の国へ船で渡ったという記述があります。
「 降到於新羅國 居曾尸茂梨之處 乃興言曰 此地 吾不欲居
遂以埴土作舟 乘之東渡 到出雲國簸川上所在 鳥上之峯 」


また、スサノオは仏教における祇園精舎の守護神である「牛頭(ごず)天王」と習合、
同一視され、どちらも疫病を司る神と考えられています。
朝鮮語で「ソシモリ」は牛頭または牛首を意味しているという説があり、
これは上記のスサノオが降り立った地と関連があるようです。
つまり、スサノオも牛頭天王も朝鮮半島に関係している可能性があるわけです。

素盞嗚命と牛頭天王の習合がわかる御札


牛頭天王は生まれたときから巨体で頭に2本の角があり、
女は誰も恐れて近づきませんでした。そのため酒びたりの生活を送っていたので、
公卿たちが天王の気持ちを慰めようと狩りに連れ出しました。
そのとき一羽の鳩が来て「あなたの妻にふさわしい女性がいます」と告げます。

そこで、牛頭天王は妻をめとるための旅に出ました。その途中のある村で、
長者である弟の古単将来(こたんしょうらい)の家によって宿を求めたところ、
ケチな古単はこれを断りました。それに対し、
貧乏な兄の蘇民将来(そみんしょうらい)は、天王を歓待して宿をかし、
粟飯をふるまいました。蘇民の親切に感じ入った天王は、
願いごとがすべてかなう牛玉を蘇民にさずけ、蘇民は金持ちになりました。

やがて、めでたく妻を得た天王は、自分を冷たくあしらった古単へ復讐しようと
眷属を差し向けました。このため古単とその一族はことごとく殺されましたが、
天王は古単の妻だけを、蘇民将来の娘であるために助命し、
「茅の輪をつくって、赤絹の房を下げ『蘇民将来の子孫なり』との護符をつければ、
末代までも災いを逃れることができる」と、災厄から逃れる方策を教えました。

・・・これが有名な蘇民将来説話です。
この話がもとになって、全国の神社で行われる厄除けの
「茅の輪くぐり」が始まったとされ、「蘇民将来子孫也」という札を玄関に貼ることで、
疫病を始めとする、さまざまな災厄から逃れることができると言われています。

蘇民将来札


さて、この牛頭天王を祀っているのは、京都の八坂神社です。
八坂神社の祭神は、現在ではスサノオとその妻のクシナダヒメですが、
明治の神仏分離以前は、牛頭天王とその妻の頗梨采女 (はりさいにょ)
を祭っていました。ここからも、スサノオと牛頭天王が、
同一視されていたことがわかります。

八坂神社のご利益としては縁結びが有名ですが、疫病除けというのもあります。
八坂神社の年中行事として行われている「祇園祭」は、
もともとは、平安時代に疫病で亡くなった人々の霊をなぐさめるための
御霊会(ごりょうえ)として始まりました。やがて平安末期には、
牛頭天王の霊験で疫病神を鎮め退散させるため、花笠や山鉾を出し、
市中を練り歩いて鎮祭するようになったんです。

京都祇園祭


さてさて、古代において、疫病は海の向こうから来ると考えられていました。
これはたんなる迷信ではなく、朝鮮半島からの渡来人が、
それまで日本にはなかった疫病を持ち込んで流行させたといったケースは、
あってもまったく不思議はないと思います。

そこで、同じく朝鮮半島に由来のある「牛頭天王=スサノオ」が、
疫病神として、それを鎮める力を持っていると考えられたのではないか・・・
というのが、ここまでで自分が考えた結論ですが、あんまり自信はありません。
どうも、もう少し勉強が必要な気がします。いやあ、民俗学は難しい。

最後に、疫病とは関係ないですが、興味深い話題を一つご紹介します。
中国の史書である『後漢書』に「安帝の永初元年(107年)、
倭国王 帥升等が生口160人を献じ、謁見を請うた」という記述があります。
「 安帝永初元年 倭國王帥升等 獻生口百六十人 願請見 」

ここに出てくる「帥升」とは、名前なのか職名なのかもはっきりしませんし、
どう読むのかもわからないんですが、古代史家の一部に、
「帥升王=スサノオ」という説を唱えられる方がいるんですね。
ただ、この真偽については、自分にはさっぱりわかりません。







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コメント
日韓の史料を見ると新羅は倭人系の国家であることが分かります。

『三国史記』によると新羅の祖の赫居世居西干は異国人
『新撰姓氏録』によると神武天皇の兄である稻飯命が新羅の祖(朴氏の始祖で初代王の赫居世居西干)
『三国史記』によると新羅の建国時に諸王に仕えた重臣である瓠公は倭人
『三国遺事』によると「朴」は辰韓の語で瓠を意味する(朴氏の始祖である赫居世居西干と瓠公は同族とする説がある)
『古事記』『日本書紀』によると赫居世居西干の次男アメノヒボコが日本の但馬国に移住
『三国史記』によると昔氏の始祖で第4代王の脱解尼師今は倭人(多婆那国の出身。多婆那国の場所は日本の但馬あたり)
『三国史記』によると新羅三王家の一つ金氏の始祖である金閼智を発掘したのは瓠公(おそらく金氏も倭人)
Zombie | 2018.06.15 01:49 | 編集
新羅ではスサノオが人気だったようなので
『日本書紀』の中でスサノオに新羅をディスらせたのでしょう。
Zombie | 2018.06.15 01:56 | 編集
コメントありがとうございます
新羅や百済ができる以前から、日本(倭)と朝鮮半島はかなりの交流があったと思われます
ただ、スサノオの神話がいつごろできたのかは
よくわからないですね
bigbossman | 2018.06.15 11:29 | 編集
古くは縄文人が半島に進出していますし、
おそらく辰国のころから半島南部は倭人系が支配していたと思います。
馬韓、百済を建国したのは南侵してきた満洲系ですが、
日本が吸収合併(属国化→倭人化→亡命→帰化)してるので
百済も含めて半島南部は日本の歴史と言って良いと思います。
Zombie | 2018.06.17 00:51 | 編集
古くは縄文人が半島に進出していますし、
おそらく辰国のころから半島南部は倭人系が支配していたと思います。
馬韓、百済を建国したのは南侵してきた満洲系ですが、
日本が吸収合併(属国化→倭人化→亡命→帰化)してるので
百済も含めて半島南部は日本の歴史と言って良いと思います。
Zombie | 2018.06.17 00:52 | 編集
新羅建国が前57年なので、スサノオ信仰が生まれたのはそれ以前でしょう。
Zombie | 2018.06.17 01:04 | 編集
コメントありがとうございます
>半島南部は倭人系が支配 これはそのとおりだと思いますが
当時の人々にどこまで国境意識があったか
言語や文化の違いがどれほどであたかはよくわかりません
韓とか倭というのは中国が決めた区分ですし
bigbossman | 2018.06.17 07:26 | 編集
コメントありがとうございます
そのあたりはよくわからないですね
ところで倭国王帥升=スサノオ説をどう思われますか?
bigbossman | 2018.06.17 07:27 | 編集
> 韓とか倭というのは中国が決めた区分ですし

列島も統一されてたわけではありませんし、
沢山ある倭人系の国家が半島南部にもあった。
ぐらいの認識で良いかと。

> ところで倭国王帥升=スサノオ説をどう思われますか?

倭国と新羅の両方で信仰されてるのに、ありえませんねその説は。
信仰が生まれたのは倭国建国時もしくはそれ以前かも知れません。
史料から特定するのは難しいので神話ってことで良いと思います。
Zombie | 2018.06.17 18:13 | 編集
コメントありがとうございます
このあたりのことは、どこまでいっても確証は出てこないんですよね
そこが古代史の難しいところで、魅力でもあると思ってます
bigbossman | 2018.06.18 00:27 | 編集
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