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ハリーポッターとキリスト教

2018.01.22 (Mon)


今回はこういうお題でいきます。今はほとんど聞かなくなりましたが、
第2作の『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の映画が公開された後くらい、
2002年から2007年頃まで、キリスト教側からの、
ハリー・ポッターシリーズに対する批判・非難がいろいろとありました。

自分はちょうどこの頃アメリカに住んでいたんですが、
ハリー・ポッターに反対していたのは主にカトリックの信者だったと思います。
ご存知のように、アメリカはプロテスタントの勢力が強く、
アメリカの宗教の50%を超えるものの、さまざまな会派に分かれていて
足並みがそろいません。これに対し、カトリックは20%ちょっとくらいですが、
ローマ法王庁を中心に団結しているので、声は大きいんですね。

アメリカ図書館協会から受け入れ禁止書籍として認定されましたし、
狂信的カトリック関係者によって、焚書騒ぎや訴訟が起きたこともありました。
また、ハリー・ポッターの映画に協賛したコカ・コーラに対して、
抗議と不買運動が行われたりもしています。
あと、キリスト教原理主義団体からも非難の声があがりました。
これはプロテスタントではありますが、カルトと言ってよいもので、
一般のプロテスタントの教会では、それほど大きな抗議運動はなかったと思います。

さて、どうして非難が起きたかというと、原因は2つあるのかな、
と自分は考えています。一つは、聖書ではっきりと魔法(呪文を唱えること)
を禁止しているからです。『あなたの間に、自分の息子、娘に火の中を通らせる者、
占い師、卜者、易者、呪術師、呪文を唱える者、口寄せ、霊媒、
死者に伺いを立てる者などがいてはならない。(申命記)』

キリスト教では、奇跡は神の力によって起きると考えられており、
それ以外の超自然的な出来事は、悪魔のしわざとされます。
魔女や魔法使いはサバトを開いて黒ミサを行い、悪魔を召喚することによって、
魔法の力を授けられる。つまり、魔法=悪魔主義 という図式になっているんですね。
ですから、まだ宗教観の定まっていない子どもたちが、ハリーポッターから、
魔法を賛美するような影響を受けてはならないということなんでしょう。

もう一つ、これは自分の考えなんですが、ハリーポッターによって、
カトリック教会の歴史的な悪行の一つである「魔女狩り」が思い起こされ、
いろいろと都合が悪いからじゃないかと思います。
魔女狩りは、15世紀~18世紀において、
全ヨーロッパで推定4万人から6万人が処刑されたと推定されていますが、
もちろんそのほとんどが無実の人々でした。

さて、ハリーポッターのシリーズはファンタジーです。同じく魔法が出てくる
ファンタジー作品は、トールキンの『指輪物語』をはじめ多数あります。
しかし、それらのほとんどに大きな批判はないのに、
ハリーポッターだけが非難を受けたのはなぜなんでしょう。

これは舞台設定が原因なんでしょうね。ハリーポッターの舞台はこの地球上で、
ナルニア国などの異世界ではありませんし、しかも現代の話です。
それと作者J・K・ローリングの筆力も大きかったと思います。
ローリングの描写が緻密で正確なので、ファンタジーを超えた現実感があり、
魔法の実在を感じさせてしまったためなんじゃないかと思うんです。

ただ、ローリングは、自分の作品がキリスト教界との摩擦を引き起こすことを
予測していたと思われます。ですから、
作品から注意深くキリスト教に関することを取りのぞいています。
頭のいい人ですから、論議を起こすのを避けたかったんでしょう。
ギリシア神話などは取り入れられているのに、キリスト教のにおいのするものは
ほとんど見つかりません。せいぜい「クルーシオ(磔の呪文)」くらいでしょうか。

ハリーポッターの世界は魂の存在を認める世界観です。それは「嘆きのマートル」
などの幽霊がいること、ヴォルデモートが分霊箱を作ったことなどからわかります。
では、その魂は肉体が死んだ後にどこに行くのでしょうか。
『ハリー・ポッターと死の秘宝partⅡ』の最後のほうで、ハリーがいったん死んで?
真っ白なキングズ・クロス駅にいる場面がありました。

そこで、亡くなったダンブルドアや傷ついたヴォルデモートの魂に出会うんですが、
あれはあの世とこの世の中間地点なんだと思われます。
ただ、あの世は神が支配する世界であるとか、
天国や地獄があるなどといったことは作品には出てきません。
このあたりも、ローリングがキリスト教の世界観を避けているのがわかります。

さてさて、前法皇であるベネディクト16世が枢機卿だった時代に、
ハリーポッターを批判する手紙が書かれ、それが公表されました。
ですが、2009年の法王庁のニュースレターには好意的な書評が掲載されましたし、
「子供の頃に想像の世界で、妖精や魔法使いと遊んだ記憶があるのは当たり前のこと」
というコメントも出されました。ハリーポッターの世界的な評価が定まるにつれ、
ヴァチカンも立場を変えざるをえなくなったということなんでしょうね。
では、このへんで。

関連記事 『ハリーポッター魔法の源』







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