弟の異変の話

2018.01.27 (Sat)
これ、俺が小6のときの話ことなんだ。ただし、俺自身には何も起きてない。
4つ下で、そのとき小2だった弟がいるんだけど、その弟の話なんだよ。
あれは夏休み中のことだったな。家族で1泊の旅行にいったんだ。
場所は北陸のほうだが、詳しいことは言わないほうがいいだろ。
1日目に海水浴場へいって温泉に泊まり、
2日目に、その地方でけっこう有名な神社にお参りしんだよ。
俺も弟も神社には興味がなかったけど、母親がそういうのが好きで、
どうしてもってことで寄ったんだ。すごく広い参道で神社も大きかったが、
参詣に来てる人はそんなに多くはなかった気がする。そのあたりはよく覚えてない。
で、お参りした後にお神籤を引いたんだ。俺と弟で2枚。
俺は中吉か小吉か、そんなんだったと思うが、弟が引いたやつは凶だったんだ。

そんときは、弟は凶の意味がよくわかってなかったな。
けど、それを見た母親が、もう一度引きなさいって言って、弟だけ引いたらまた凶。
それで3回目引くかってなったときに、親父が「まあ、もういいだろう。
 何事も本人の行い次第なんだから、これを幸運に変えていけばいい」
みたいなことを言って、それで俺と弟は参道から外れたところの松の木の枝に、
お御籤を結びに出たんだよ。俺はすぐ結べたが、
弟は背が低かったんで親父が抱き上げた。それ見てたら、
弟が手を伸ばした先の松の枝に、何か長くて赤黒いものがからみついてたんだ。、
最初それ、ヒモだと思ったけど、弟が結び終えようとしたときに、
するするっと動いて弟の顔にあたった・・・
「あ、蛇か?」親父に知らせようとしたが、そんときはもう見えなくなってた。

だから俺の見間違いかって考えたけど、降りてきた弟の額の真ん中が、
うっすらと赤くなってた。「お前、ここ痛いとかないか」って聞いたら、
首を振ってたんで、たいしたことないだろうと思って忘れてしまったんだ。
その後、昼飯を食って電車で家に戻ったんだよ。それで、その夜のこと。
その頃はまだ、俺と弟は同じ部屋の2段ベッドで寝てたんだよ。
時間は2時ころだったと思うけど、ベッドがガタガタ揺れるんで目が覚めた。
子どもだし、1度寝ると朝まで目が覚めなたりしなかったんだが、
それが起きてしまうくらいすごい揺れ。しかも「イギ~~~、イギ~~」
という声が聞こえて、弟だと思った。それで半分寝ぼけながら、
ベッドの階段を上って弟の布団をのぞき込んだ。そしたら、
弟は両手を天井に向けて伸ばした状態で、「イギ~」って叫んでたんだ。

それに、足を踏んばってベッド全体を揺らしてたんだよ。
俺はびっくりして呼びかけたが返事はなし。ただ「イギ~~~、イギ~~」
と叫ぶだけ。これは大変だって、下に降りて電気をつけ、
それから親を呼びに行ったんだよ・・・両親が来てもそのままの状態で痙攣してたから、
救急車を呼んだ。で、病院についたあたりで弟は正気に戻って、
「どうしたの?」とか言い出した。結局、その日と翌日もあれこれ検査したが、
特に異常はなしってことだったんだ。うーん、いや、そんときは、
神社で見たことと関係があるとは思わなかったよ。で、それ以来、
弟の元気がなくなった。まあ、もともとそんなにうるさいやつではなかったんだが、
ほとんどしゃべらなくなって、飯もあんまり食わない。両親が心配して、
具合が悪いとこがないか聞いても、「だいじょうぶ」って言うだけだった。

んで、夏休みの終わり頃に弟を連れて学校のプールに行ったんだよ。
そしたら、俺の同学年の友だちが何人か来てて、俺はそいつらと遊んでた。
ほら、プールって全員水から上がる休憩時間ってあるだろ。
そのときに弟を探したが見つからなかった。プールのフェンスの中にはいないみたいで、
外まで出てみたんだ。すると、草むらに海パン姿でしゃがみ込んでいる子がいて、
後ろ姿だが弟だと思った。「お前、そんなとこで何を・・・」近づいてったら、
弟の体の前に1mくらい長く伸びてるものがあった。うーん、赤黒いソーセージというか、
細長くなったひき肉というか、それが小刻みに震えながら動いてて、
その先に黒い小さな生き物の死骸があった。今、考えればモグラだったと思うけど、
夏の日差しで乾いて臭いとかはしなかったな。
その死骸に赤黒いものの先が巻きついてたんだよ。

それを見て、前に行った神社のときのことを思い出した。
「あ、あれと同じか」って。気味悪かったが「おい、何やってる!」
弟の両肩をつかんで振り向かせた。そしたら、ほら、掃除機の線が巻き取られていくだろ。
あれみたいに、長く伸びてたものがしゅるしゅるって弟の口の中に入ってった。
そして弟は、無表情なままで「イギ~~」って言ったんだよ。
気味が悪かったけど弟のことが心配だったんで、プールはやめて家に連れて帰り、
母親にプールであったことを話した。あんまり俺の言うことを信じてるようじゃなかったが、
母親は弟を近くの病院に連れてった。けど、異常は見つからなかったみたいだ。
それから、俺は弟のことが怖くなったんだよ。
あの赤黒い蛇みたいのが弟の体の中に住んでるんだと思ったんだ。
弟の体を乗っ取ってるんだろうって。だから弟にあんまり近づかないようにしてた。

そうは言っても、同じ家に住んでるんだし、2段ベッドで寝てるんだし、
近づかないわけにはいかなかったけどな。その後、しばらく変わったことはなかった。
弟は相変わらず元気がなく、けど、宿題なんかはちゃんとやってた。
で、夏休みが終わって3日目の朝のことだ。俺のいたところは集団登校で、
俺は6年生だから、下の学年のやつら5人ほどを連れて先頭で歩いてたんだ。
その中で後ろのほうにいた弟が、学校まであと5分くらいのとこで、
急に「ギイイイイイイイ」と声を上げた。そして、列から外れて、
学校に隣接してる市の運動公園のほうへ走り出していった。
俺はあっけにとられてたが、5年生の女子に集団登校を頼んで、
弟を追いかけていったんだ。運動公園の野球場のバックネットの後ろを、
弟は手を振りまわしながらすごい速さで駆け抜けてって追いつけない。

「おーい、待てよ」と声をかけても、ふり向きもしないで林に入ってった。
そこ、けっこう深い林だったんだよ。そのときは俺はかなり息を切らしてたが、
弟はまったく平気で木の間をぬいながらどんどん奥へ進んでいき、
やや斜面になったところで立ち止まって、太い松の木の後ろに回り込んだ。
・・・こっから先のことは思い出したくない。弟のいる前に首つり死体があったんだ。
黒っぽいコート着たままの男性の。弟の体がガクガク揺れ、
弟からまたあの赤黒い肉のヒモが飛び出してた。
で、ヒモはぐるぐると首つりの体に巻きつき、死体がぐらっと傾いた。
そこでやっと俺は弟のとこまでいって、後ろから胴をつかんで引っぱった。
とにかく、その場から引き離そうと思ったんだよ。
そのとき、弟の口からずるっと音を立てて、ヒモの後ろのほうが飛び出た。

そこで弟を抱えたまま走って逃げればよかったんだが、目が離せなかった。
ヒモは蛇のように首つり死体をぐるぐると這い上っていき、
うつむいてた男の口の中に入った。で、1m以上あるヒモが全部入り終わったとき、
首つり死体が真っ黒な顔を上げて目を開いたんだよ。そしてこんなことを言った。
「たしかに受け取った。だが遅い。もう死んでしまった」
首つり死体は目を閉じ、首がぎゅーんと伸びて足が地面についた。
そこまでが限界だった。俺は弟を抱えて走り出した。
1度もふり返ったりはしなかったよ。よれよれになって通学路まで出て、
そっからは弟の手を引いて学校までいった。
で、玄関で登校指導してる先生に、林の中の首つり死体のことを話したんだ。
弟はぐったりしてたから、保健室に連れていかれた。

これでだいたい話は終わりだよ。俺が教室にいってると遠くでパトカーの音が聞こえた。
しばらくして、先生方が何人も来て別室に連れてかれ、事情を聞かれたんだ。
見たとおりのことを話したよ。あの肉のヒモのことも。
それから母親が学校に来て俺と弟は家に帰った。
もちろん家でも話を聞かれたし、後で警察にも聞かれた。
何回も同じ話をしたから、そのときのことをこうやって覚えてるんだよ。
いや、警察とかが俺の話を信じたかはわからない。たぶん信じちゃいなかったろう。
これは後でわかったんだが、首つりはたしかにあって、40代のサラリーマンてことだった。
会社の金を使い込んだらしい。弟はショックを受けてた俺よりずっと元気で、
前のような感じに戻ったが、首つりのことは何も覚えてなかった。で、俺はその後、
3ヶ月くらいカウンセラーと心療内科に通わされたんだよ。







関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1349-5033cab8
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する