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青坊主と青頭巾

2018.01.29 (Mon)
今回は妖怪談義です。とりあげるのは「青坊主 あおぼうず」
という妖怪ですが、これもねえ、わからないんですよ。
下に石燕の絵を掲載しましたが、これを見れば、
家の軒下に墨染の衣を着たでっぷりと太った人物がいて、頭はハゲており、
僧籍にある者なのは間違いないようです。年齢は若くはなさそうに見えます。
また、額の真ん中に目が一つだけあります。
詞書があればいくらか手がかりがつかめたかもしれませんが、それもなし。

クリックで拡大できます


石燕の描いた妖怪には、何らかの伝承が伝わっているものと、
まったく何の言い伝えもなく、おそらく石燕が創作したのだろうと推測される
ものとがあります。この青坊主は前者で、各地に伝承が残っているんですが、
それがみなバラバラなんですね。ほとんど共通点がありません。

例えば、長野県の青坊主は、とある松の木を、息を止めて7回りすると出現し、
「石踏むな、松折るな」と告げる。
山口県では、人間の前に現れて相撲をとろうと誘う。
見た目は小さいので、油断して相撲をとると、すごい力でに放り投げられる。
静岡県では、春の日暮れに、家に帰り遅れた子供が麦畑を走っていると、
麦の中から青坊主が現れてその子をさらう・・・まあこんな具合です。

うーん困った。もう一度、石燕の絵を見ますと、
画面の中に上から吊るされたものが2つあります。
家の中にある土瓶と、軒から下がっている風鐸?で、
この両者が、昔の天秤ばかり(竿秤)に見えないこともないですね。
ちなみに、竿秤に刻んである目盛りを「竿目(さおめ)」と言います。

石燕の絵って、描かれている小道具には何らかの意味があるんです。
ですから、何か「吊す」ことに関係のある伝承がないか探したら、ありました。
香川県の伝承では、ある家で主人が出かけて子守女が留守をしているとき、
青坊主が現れて「首を吊らないか」と言う。女が断ると、
青坊主は手を長く伸ばし、無理矢理に女の首を吊ってしまった。

そのときに守りをしていた赤ん坊が火のついたように泣き出し、
その声を聞いた近所の人が様子を見にやってきて、首を吊っている女を発見し。
縄から下ろしたため、女は一命をとり留めることができた。
こんな話があるようです。もしや、これと関係があるのかもしれません。

あと、青坊主という名称から考えてみると、青という言葉には「未熟な」という
意味があります。でも、この絵の様子は、修行僧という感じではないですね。
青々したヒゲの剃り跡とか、青々した頭などとも言いますが、
それもちょっと違うのかなあという気がします。

で、青で考えていたら、上田秋成の怪異小説 『雨月物語』に、
「青頭巾」という話があるのを思い出しました。「青頭巾」の筋は、
ある山寺に高徳の僧が住んでいたが、寵愛していた稚児が病気で亡くなると、
悲しみのあまりその遺体に何日も添い寝して、ついには気が狂い、
やがてその死肉を食らい、骨をなめ、食い尽くしてしまった。
こうして僧は鬼と化し、里の墓をあばき屍を食うようになった。

里人が恐れているところへ通りかかった旅の僧、改庵禅師(実在の人)
が話を聞き、この僧を救おうと決意し、その棲家へとおもむき一夜の宿を借りた。
真夜中になって、鬼と化した僧は改庵禅師を取って食おうと探し回ったが、
どこにも姿が見えない。鬼は疲れ果てて倒れ、
やがて朝になって正気に戻ると、目の前に改庵禅師が座っていた。

改庵禅師は、飢えているなら自分の肉を食ってもよいと言い、
昨夜はここでずっと坐禅を組んでいたと告げると、
僧は餓鬼道に堕ちた自分の浅ましさを恥じ、禅師に救いを求めた。
禅師は僧を庭の石の上に座らせ、自分がかぶっていた青頭巾を僧の頭にのせ、
一つの禅の公案を授けた・・・こんなお話です。
結末が気になる方は、ぜひ『雨月物語』で読んでみてください。

さてさて、青坊主と青頭巾は関係あるんでしょうか? 
上田秋成と鳥山石燕は同時代の人です。石燕の時代には、
他にも本居宣長や曲亭馬琴、山東京伝などの文化人が活躍していました。
しかも、青坊主が載っている『図画百鬼夜行』と、秋成の『雨月物語』は、
どちらも同じ安永5年(1776年)に刊行されてるんです。

うーん、偶然と言えないものを感じます。
『雨月物語』の序は1768年に発表されているので、
もしかしたら、石燕は1776年以前に書かれた内容を知っていたかもしれません。
まあ、これに特別な根拠はなく、おそらく自分の考え過ぎなんだと思いますが、
もし、いくらかでも関係があるとしたら面白いですよね。

『雨月物語』の青頭巾






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コメント
 こんばんは、野崎でございます。

 『朧村正』という和風アクションゲームをやった時、最初のボスがコイツだったのを思い出しました。
 確か、念仏唱えた後大ジャンプして踏みつけてくるんだったかな?
 どんなヤツかは不明ながら、一目でバケモノと分かるシンプルな見た目ゆえに使い勝手がいいんでしょうね。

 では、ここらで失礼します。
野崎昭彦 | 2018.01.29 23:58 | 編集
コメントありがとうございます
これは妖怪画ですが、浮世絵もふくめて
江戸時代の絵って何か隠された意味があるものが多いんです
それもくだらないような意味が
で、絵を見た人たが「ああ、これはあれのことか」とうなずきあう
楽屋落ち、内輪ウケみたいなもんなんです

そこを何とか明らかにしたいんですが、わからないことだらけです
bigbossman | 2018.01.30 02:00 | 編集
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