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燈台鬼と人体改造

2018.02.15 (Thu)
今回は妖怪談義とします。ただ、これ、妖怪と言えるかどうかはかなり疑問です。
外見は妖怪のようですが、元来は生きた人間ですし、
ひじょうに中国的な話なんですね。



「軽大臣 遣唐使たりし時 唐人大臣に唖になる薬をのませ 身を彩り
頭に燈台をいただかしめるを 燈台鬼と名づく その子弼宰相入唐して父をたづぬ
燈台鬼涙をながし 指をかみ切り 血を以て詩を書して曰 
我元日本華京客 汝是一家同姓人 為子為爺前世契 隔山隔海変生辛
経年流涙蓬蒿宿 逐日馳思蘭菊親 形破他郷作灯鬼 争皈旧里寄斯身」


いちおう訳してみますと、
「軽(かる)の大臣が遣唐使だった時、唐人が大臣に声の出なくなる薬を飲ませ、
全身に刺青をし、頭に燭台を乗せて燈台鬼と名づけた。
その子の弼(ひつ)の宰相が、後に入唐して父の行方を探した。
(そのうちに燈台鬼と化した父と出会い)燈台鬼は涙を流し、
指をかみ切って、血でこのような詩を書いた。

私は元は日本から来た。あなたと同じ姓を持つ家族だ。子と父の前世からの契があり、
それは海山を隔てても変わらない。長年粗末な家に住んで涙を流し、
日本の家に住む親を思う。姿は怖ろしい燈台鬼になったが、
なんとか故郷に身を寄せたい。」この漢文の部分は難しいので意訳にしました。

さて、この話は『平家物語』、『源平盛衰記』、『和漢三才図会』などに出てくる
「燈台鬼伝説」と呼べるもので、実際にあったことかどうかはわかりません。
遣唐使の一覧も参照してみたんですが、軽の大臣、弼の宰相にあたる人物は
見つからなかったです。おそらく、作られた話だろうとは思うんですが、
できた背後には、中国特有の人体改造の思想があるんじゃないかと思います。

伝説では、燈台鬼は息子に再会し、弼の宰相は父の燈台鬼とともに
帰国の船に乗るが、嵐にあって難破し、
燈台鬼は日本の地を踏むことはできたものの、
家に帰り着くことなく息絶えてしまう・・・という結末になっています。

それにしても怖い話ですよね。日本から唐に文化を学びに行った使節が、
だまされて喉がつぶれる薬を飲まされ、全身に刺青されて、
頭の上に燭台を乗せて立ち続ける「燈台鬼」にされてしまうんですから。
この伝説をもとに、小説家の南條範夫氏が書いたのが『燈台鬼』で、
第35回の直木賞を受賞しています。この小説では、燈台鬼父子が、
実在の遣唐使の小野石根・小野道麻呂父子に置き換えられていますね。
 
さて、中国の人体改造といえば、まず思いつくのが宦官、それから纏足ですか。
宦官は去勢を施された官吏という意味で、中国では古代から存在し、
政治に大きな影響を与えました。宦官は性的に中性なので、
安心して皇帝の近辺や後宮に置くことができたためですが、
権勢欲の強い宦官によって政治が乱れ、中国歴代王朝の中で後漢・唐・明などは
宦官のために滅びたとまで言う人もいます。

宦官になることは、一般の庶民が宮廷内で栄達を極める近道であったため、
強制的に宦官にされる者より、自ら進んで宦官になる者のほうが
多かったようです。(自分から性器を切断することを「自宮」と言います)
明代には約10万人の宦官がいたと推定されています。
去勢した場合、出血多量や細菌感染で約3割は死んだと言われますが、
それもなかなかすごい話ですよねえ。

ちなみに、宦官になるために切断した自分の性器は「宝」と言われ、
大切に保管され、仕官の際にはそれを見せて証拠とする必要がありました。
また、宦官が死んだときには、「宝」もいっしょに墓に葬られ、
それがなかった場合はロバに生まれ変わると言われていたそうです。

纏足は、幼児期より足に布を巻かせ、足が大きくならないようにするという、
かつて中国で女性に対して行われていた風習で、かなり近代まで残っていました。
魯迅が日本で1921年に発表した『故郷』には、纏足した女性が登場しています。
纏足ができた理由は、小さい足の女性の方が美しいと考えられたからですが、
うまく走れないため、女性が逃げ出さないようにする意味もあったと思われます。

また、中国では「盲妹 まんめい」と呼ばれる、
ごく幼い頃に、人為的に視力を奪われた盲目の娼婦もいました。これは、
やはり逃げられないようにするためと、目が見えないことで集中力が増すため、
踊りや音楽などの芸が上達するといった目的もあったようです。

さらに、中国の古典を読めば、宮廷には人間椅子(体に装飾を施され、
高官が外に出た場合などに、いつどこででも椅子になることができる奴隷)や、
軽業や火を吐いたり剣を呑んだりする小人や障害者の道化師などもいたようです。
まあそんな具合で、人体改造に関する意識がかなり日本とは違っていて、
それが燈台鬼伝説の元になっているんじゃないかと思うんです。

さてさて、少し前に、中国で行われた死体の頭部移植の話を書きましたが、
それが行われた背景には、人権に対する感覚が特異で、
倫理観も他国とは違っているせいもあるんだろうと自分は考えています。
中国では、死刑囚から臓器を取り出して移植に回しているという話がありますが、
どうやら事実のようです。臓器ドナーのうち90%が死刑囚であるとも言われます。
燈台鬼から少し話がそれてしまいましたが、お隣の国はなかなか怖いところですよ。

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