FC2ブログ

幣六と天神様

2018.02.20 (Tue)
今回は妖怪談義です。とりあげるのは「幣六 へいろく」。
これもかなり難しいんですが、ここでは大胆な推理を述べたいと思います。
ただし、自分の大胆な推理というのはほぼ間違っていますので、
そのつもりでお読みいただけたらと思います。あくまで半分冗談ですので。

さて、下の絵が石燕の幣六です。上半身裸の毛深い人物が御幣(ごへい)を
担いで踊っています。御幣とは、神道で使われる用具の一つで、
紙または布を切り、細長い木にはさんで垂らしたものです。
これは、本来は旅に出るときに持参し、道々の道祖神などに捧げ物として
供えるものでした。幣(ぬさ)とも言います。



また「御幣を担ぐ」という言葉は慣用句になっていて、
「つまらない縁起や迷信を気に掛ける。」という意味で使われていますね。
ここにも何か石燕の意図があるような気もしますが、
やはり、はっきりしたことはわかりません。

詞書は「花のみやこに社さだめず あらぶるこころましみ 神のさわぎ出給ひしにやと」
うーん、うまく訳せません。花の都の社(やしろ)におらずに、
心が荒ぶるままに、神が騒いで出てきたのか、みたいな意味でしょうか。
この詞書も謎ですし、幣六の「六」についても、よくわかりません。

自分が最初にこの妖怪画を見たときは、石燕の絵によくある付喪神(つくもがみ)
を描いたものだと思っていました。付喪神というのは、
古くなった器物が命を持ち、妖怪となったもののことを言います。
例えば、下の「骨傘」なんかがそうです。この手の妖怪はたくさん出てきます。
ですが・・・、それにしても詞書が謎なんですね。

「骨傘」


また、石燕の絵は、室町時代の『百鬼夜行絵巻』を参考にして描かれたものも
多いんです。『百鬼夜行絵巻』には、御幣を担いで踊る赤い鬼(下図)
が出てきており、これを参考にして幣六を描いたのではないかとも言われています。
ただ、絵を見ると御幣を担いでいるところはいっしょでも、
その他の部分はずいぶん違っている気もします。浮世絵師・月岡芳年は、
錦絵『百器夜行』に、石燕の幣六を参考にしたと見られる幣六の
絵を描いており、肌は赤く彩色されています。

『百鬼夜行絵巻』


うーん、赤鬼・・・と考えていて、はたと思い当たったことがあります。
菅原道真公です。みなさんご存知だと思いますが、天神様として知られる神様で、
Wikiには「菅原道真(845~903)宇多天皇に重用されて、
寛平の治を支えた一人であり、醍醐朝では右大臣にまで昇った。

しかし、左大臣・藤原時平に讒訴(ざんそ)され、
大宰府へ大宰員外帥として左遷され現地で没した。
死後天変地異が多発したことから、朝廷に祟りをなしたとされ、
天満天神として信仰の対象となる。現在は学問の神として親しまれる。」

というように出てきます。

この菅原道真が怨霊になったときの姿は、黒雲に乗った赤い雷神として
表されることが多いんですね。下図は鎌倉時代の『北野天神縁起絵巻』ですが、
赤い雷神になって暴れているのが菅原道真です。
このとき、930年の内裏、清涼殿の落雷では7名が死亡し、
また、惨状を目撃していた時の醍醐天皇も、
体調を崩して3ヶ月後に崩御されています。なぜ赤い鬼の姿かというと、
この手の絵の約束事として、風神は緑、雷神は赤で描かれるきまりなんです。

『北野天神縁起絵巻』


さて、では幣六は菅原道真公なんでしょうか。
この可能性はけっこうあるんじゃないかと自分は考えます。一つは「幣」です。
『小倉百人一首』に採られている菅原道真(菅家)の歌は、
「このたびは 幣(ぬさ)もとりあへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに」です。



この歌は、898年の秋、道真が宇多上皇のお供して吉野へ行く途中、
一行が道祖神への供え物を忘れてきたことに気づき、
その時に詠んだ和歌だと伝えられています。幣を忘れてきてしまいましたが、
この色鮮やかな紅葉をその代わりとして収めて下さい、ということでしょう。

さてさて、これらのことを考えて詞書を読むと、なんかピンと来るものがあります。
「花のみやこに社さだめず」とは、道真が京の都から、
九州の大宰府に左遷されたことを表しているのかもしれません。
そこで憤死して怨霊となり「あらぶるこころ」なわけですね。
みなさん、どう思われますでしょうか? 








関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/1375-b8caafca
トラックバック
コメント
 詞書を読む限りの印象では、人々の信仰や畏怖が薄れているものだから、荒ぶる神が社も持たずに騒ぎ出ておられるぞ、という風刺かなーと。あと「六」は「禄」に通じるため、人名に用いるには良い文字なんだとか。これは妖怪ですがw
| 2018.02.21 10:32 | 編集
コメントありがとうございます
石燕の絵って基本は仲間ウケなんですよね
仲間の文人に「お前これわかるか?」って謎をかけてる面が大きいので
細かいところに意味があるんです
bigbossman | 2018.02.22 08:24 | 編集
管理者にだけ表示を許可する