部屋の幽霊の話

2018.03.09 (Fri)
1ヶ月ほど前のことです。自分(bigbossman)の師匠筋にあたる占星術家の先生が
本を出されまして、自分たち弟子が相談して、ささやかですが、
先生の出版を記念する会を開いたんです。それが3次会まで流れて、
自分はホテルのバーで、Oさんという編集者の方と飲んでたんです。
そのとき、こんな話になりました。
「bigbossmanさんって、怖い話を集めてられるんですよね」
「ええ、いちおう収集してます。何かそういう話、ありますか?」 
「うーん、人が聞いて怖いかどうかはわかりませんが、ちょっとした体験があります」
「あ、ぜひお聞かせ下さい」 「それがね、何と言えばいいか、うまく説明できないし、
 たいしたことも起きてないんですけど、部屋の幽霊ってあるもんですか?」
「え? 幽霊が出る部屋ってことですよね」

「うーん、そうじゃなくて、部屋の幽霊としか言いようがないんですが」 
「??、興味深そうですね。くわしく教えてください」
「僕は仕事柄、今日みたいなパーテイに出ることが多いんです。それで、
 かなりお酒が入った状態で部屋に帰ると、変なことが起きるんです」
「Oさんって、マンション住まいでしたっけ?」
「いやまあ、名前はマンションですけど、アパートに毛が生えたようなとこです」
たしかOさんは、4年ほど前に奥さんと離婚されて、子どもはおらず、
今は一人暮らしをされてるんですね。「話の腰を折ってすみません、それで?」
「でね、酔っぱらって自分の部屋のドアの前に立ったときに、
 すごく嫌な予感がすることがあるんです」 「どんな?」
「このドアを開けちゃいけないって思うんですよ」

「だって、ご自分の部屋なんでしょう」 「そうなんですが・・・なんというか、
 これを開ければ、何もかもダメになってしまう・・・そういう感じがするんです」
「うーん、で?」 「もちろん朝に出てきたいつもの部屋だし、中には誰もいません。
 だから最初のときは、酔って感覚が変になってるんだろうと考えて、
 ドアを開けました。そうしないと寝る場所もないわけですし」
「どうなりました?」 「それがね、開けた瞬間、中に青っぽい煙が充満してたんです」
「火事ですか?」 「いや、僕も火事かと思って酔いがいっぺんに覚めたんですけど、
 玄関に半歩足を踏み入れたとたんに煙はかき消えまして、いつもの自分の部屋だったんです」
「ははあ」 「酔っ払って幻覚を見たと思いますでしょ」 「まあ・・・」
「いいんです、僕もそう思いましたから。中に入ってあちこち確かめたけど、
 燃えた物なんてなかったですし」 「それで?」

「でね、それから2週間くらいして、また酔っ払って夜中に帰ったときに、
 やっぱりドアの前で、強い、嫌な予感がしたんです。開けちゃいけない、
 開けたらダメだって、頭の中で非常ベルが鳴ってる感じで」 「はい」
「でも、開けないわけにいかないでしょ。毎日暮らしてる自分の部屋なんだから」
「それで?」 「開けてみたらまた青っぽい煙。だけど、このときは
 なかなか煙が消えなかったんです。ただね、焦げたような臭いとかは
 まったくなかったです。で、そこは玄関で廊下につながってるはずなんですが、
 いつもの廊下より中が広い気がしました」 「それで?」
「6畳間くらいの空間があったんです。だんだん煙が薄れてきて、
 その部屋の中の様子が見えてきて・・・ それが、いかにも昭和って感じで、
 すごく雑然としてて。だけどね、ああ、見覚えがあるとも思ったんです」

「で?」 「このときはそれで終わりました。青い煙が薄れていくと、
 部屋全体がぐらっとゆがんで、そしたら自分の部屋の廊下に立ってたんです」
「不思議な話ですねえ。その部屋、見覚えがあるって言われましたよね」
「ええ・・・でも、どこなのかはわからない。ただ、懐かしいけど、
 すごく嫌悪感もあるんです。あとね、時間がスリップしてるっていうか、
 中が何もかも昭和なんです。テレビがあったんですけど、とても古い型で、
 畳も日焼けしてたし、ずいぶん昔の部屋なんだと思います」
「見覚えがある、というのは?」 「・・・もしかしたらですけど、
 僕が子どもの頃に過ごした部屋なのかもしれないです。僕は両親が早くに離婚して、
 母に育てられたんですが、 僕が幼児のときに、母は水商売をしてて、
 あちこちのアパートを移り住んでたみたいで。だから、そのとき見たのは、

 それらの部屋の一つかもしれないです」 「うーん、奇妙ですねえ。
 こういう話は聞いたことがないです。部屋に人はいなかったんですか?」
「いなかったと思います。けど、人の気配は強くあったんです」
「これは気になります。もし、またそういうことがあったらぜひ知らせて下さい」
このときは、こんな感じで別れました。翌日、昼ころに、Oさんから自分の共同事務所に
電話が入りまして。「bigbossmanさん、昨日の話、あれ、またあったんですよ。3回目が」
「あ、どうなりました?」 「電話だとちょっと言いにくいです」
「じゃあ、また昨日のホテルのバーで」ということで、続きをうかがいました。
「昨日もね、酔ってたから、またあの現象が起きるんじゃやないかと思って帰ったら
 あんのじょう。ドアの前で嫌な感じがして、前と同じように中に入ると、
 煙はなく、ストレートにあの部屋になってた」 「それで?」

「でね、中のものをいろいろ確かめたんです。かかってたカレンダーは、
 昭和の年月日で、僕が3歳のときのものでした。それと、棚の上にあった保険かなにかの
 書類に母の名前がついてたんです。だから、やはり、僕と母が昔に住んでた部屋だと
 思うんです。あとね、不思議なことに、その部屋の中のものにはさわれませんでした」
「というと?」 「その書類を取り上げようとしたら、つかめなかったんです」
「・・・」 「だから、部屋は実在してて、もしかしたら僕のほうが、
 タイムスリップして、その部屋に戻ったのかもって考えました。でも、
 そんなことってあるもんですか?」 「いやあ、オカルトは研究してますけど、
 こんな話は初めてです。で、どうなりました?」
「それで、部屋の右手にあちこち破れた襖があって、隣にも部屋があるみたいなんですよ。
 でも、僕は物にさわれないから、その襖も開けられない。

 前に立ってると、中から子どもの泣き声がかすかにしてきて」 「それで?」
「そのときに、グラグラっと、大地震が起きたみたいにすべてが揺れて、
 いつもの自分の部屋に戻ったんです。心底ホッとしました。
 あの襖の前に立ってるときの気持ちといったら・・・ 心臓がしめつけられるような、
 消え入りたいような・・・」 「うーん、これ、今後も起きるかもしれませんね」
「そうかもしれないです。だから、もうお酒を飲んで帰るのはやめようかと思ってます」
「うーん、それがいいのかもしれません。ところで、お母さんは今、
 どうされてるんですか?」 「郷里で一人暮らしです」
「これ、お母さんに連絡して、事情を話してみたらどうでしょう。
 何かわかることがあるかもしれませんよ」 「ああ、そうですね。母に話す・・・
 何で考えつかなかったんだろう。たしかに、母なら何かわかるのかも」

こういう経緯になりました。それから、おそらくOさんはお酒を控えてたんでしょう。
2週間ほど連絡がなかったんですが、ある日の夜中、自分が占星術の天測をしていると、
Oさんから携帯に連絡が来たんです。出ると、「bigbossmanさん、またあれが起きました。
 前より長い時間、あの部屋にいたし、隣の部屋にも入れたんです」
Oさんの興奮した声が聞こえてきまして。「ええ、どうなりました?」
「隣の部屋の前の襖の前で子どもの泣き声が聞こえてきたんで、
 すごく嫌だったけど、これが何なのか知りたい気持ちも強くて、思い切って襖にさわると、
 体ごと通り抜けて。そしたら・・・」Oさんはそこで絶句し、自分が待っていると、
「中は寝室で、布団が敷いてあって、中に女の人がいました。
 それ、たぶん母だと思います、若い頃の」 「Oさんには気づかなかったんですか?」
「僕がいるのはまったく見えてないみたいでした。その若い頃の母が何をしてたと思います?」

「いや、わかりません」 「赤ちゃんを抱いてて、赤ちゃんは手足をじたばたさせて、
 赤ちゃんの顔に・・・」 「顔に?」 「ビニール袋がかぶせてあったんです」
「う」 「僕はどうすることもできないし、赤ちゃんはだんだんにぐったりしてって・・・」
「うう」 「そこで、またグラグラっときて、昔の部屋は消えたんです」
「その赤ちゃん、Oさんだったってことですか?」 「いや、違うと思います。
 前に部屋のカレンダーの話をしましたよね。僕はそのときは3歳のはずですが、
 母が抱いていたのは乳児でした、まだ1歳にもなってない」
「・・・それ、ただごとじゃないです。戸籍を調べてみたほうがいいかもしれません。
 あと、やはりお母さんに連絡するべきじゃないかと」 「・・・ええ、そう、ですよね」
これで、この話は終わりです。続報はありません。何でかというと、Oさんのお母さんが
自殺されたからです。Oさんは郷里に戻ってて、こちらからの連絡に出てくれません。




 



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コメント
 荒木飛呂彦の「屋敷幽霊」みたいな話かと思ったら・・・身内の範囲でこういうことが起こると、どうしてもオカルト抜きで説明をつけないと居心地が悪く感じます。もっともらしく考えるなら、封印されていた幼少期の記憶が、酔いからくる悪夢や幻覚として蘇った、とかでしょうか。何にしてもOさんがお気の毒で心配ですね。
| 2018.03.17 15:26 | 編集
コメントありがとうございます
部屋の幽霊のアイデアは『ジョジョ』のストーンオーシャンからいただきました
あと、関係ないとえいえば関係ないんですが
自分は幼少時に父の仕事の都合で何度も引っ越したためか
家の中に自分の知らない部屋があるって気がするときがあるんですよね
bigbossman | 2018.03.17 20:56 | 編集
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