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梨を植える話

2018.03.18 (Sun)
今晩は。早速、話を始めますけど、これ、民話っていうか、
おとぎ話みたいな内容なんですよね。だから、そんなに怖くないかも
しれないですし、ただの夢なんじゃないか、って思われるかもです。
けど、人が2人亡くなってるんですよ。まあ、その2人の死んだ原因は、
事件というわけでもないんですが・・・ それで、関係者が私を入れて、
もう3人いるんです。その代表として、今晩はここに来たんです。
ですから、何かわかることがあれば教えていただきたいと思いまして。
始まりは小学校4年生のときです。記憶も確かだと思います。
ええ、ここへ来る前に3人で確認してきましたので。
学校が、先生方の研究会のため、給食を食べて終わりだったんですよね。それで、
男だけ5人の友だち同士で、夕方までずっと空き地で野球とかして遊んだんです。

学校からはもちろん、道草食っちゃいけないって言われてましたけど、
私のうちは両親共稼ぎで、一人っ子だから、家に戻ってもつまんなかったし。
ああ、そうそう、そのときにいた5人って全部一人っ子なんです。
まあ、これは、たまたまなんだと思いますけどね。9月のことでした。
まだまだ日が長かったので、5時過ぎまでは遊んでたはずです。
けど、そろそろ帰らなくっちゃって一人が言い出して、
草の上に放り出してたランドセルを背負って、みなで歩き出したときです。
空き地の外の道に、リヤカーを引いた爺さんがいたんですよ。
それが、どんな爺さんかはよく覚えてないんです。これは私だけじゃなく、
他の2人も同じでした。記憶を突き合わせたところで出てきたのが、
白く長いヒゲがあった、白い着物を着ていた、すごく優しい声だった・・・

これくらいです。それで、その爺さんが、リヤカーとめて話しかけてきたんです。
「坊やたち、たくさん遊んで疲れたろう。梨 食べていかないか」って。
私たちは顔を見合わせていましたが、一人が「お金持ってないからいいです」
って答えたんです。そしたら爺さんは笑って、「お金はいらんから」と言い、
リヤカーに積んである箱から、梨を5つ取り出したんです。
その梨が変わった色と形で、ガラスでできたみたいな半透明の青い色、
形は、どう言えばいいかなあ。ほら、勾玉ってあるじゃないですか。
よく古代の遺跡から出てくる。あれに似てたんですよね。
でね、ひと目見たとたん、ものすごく美味しそうに思えたんです。
ごくりとツバを飲み込むくらい。それでも、私たちが躊躇していると、
爺さんは「ほら」と言って、一番近くにいたやつに1つ手渡して。

そいつが皮をむかずに一口かじると、「これ、うめえや!」そう言って、
ガツガツと食べ始めました。それ見てた残りの子も、
われ先にと爺さんから梨をもらって、私も一口食べてみたんです。
それは、何とも表現できない味でした。陶然と、魂がとろけるようなと言えばいいか。
夢中になって食べました。これもね、今考えると不思議なんです。
たかが梨1つですから、数分で食べ終えるはずなんですが、すごく長い時間、
食べてた気がするんです。いや、実際に長い時間たってたかもしれません。
家に戻ったら7時を過ぎてて、親に怒られた記憶がありますから。
でね、食べてた梨がだんだんなくなってきて、歯に固いものがあたりました。
梨の種です。大きかったです。5cm近い、これもガラスでできてるみたいな
深い青色をした涙型の種。それが私たちの手の中に残りました。

すると、ずっと私たちの様子を見てた爺さんは、「その種、お家の庭に植えるといいよ。
 きっといいことがあるから」って。一人が爺さんに、「ありがとうございました」
って礼を言って、それから5人がばらけて家に戻ったんですよ。
種はその日は自分の部屋にあって、まるで宝石みたいでした。
もったいないとも思ったけど、あの梨がなる木が生えたらすごいと思って、
翌日、学校から戻ってから庭の隅に植えたんです。じょうろで水をかけたりもしました。
はい、芽は出てきました。でもそれ、夢の中だったんです。
私が家の庭に立ってると、土から出てきた芽が、ひょいっと私の服を引っかけて、
一気に家の軒の高さまで伸び上がりました。で、いつのまにか横枝も出てたので、
引っかかってた服を外して、その枝の上に腰掛けました。
そうしてるうちにも梨の木は伸びて、私の家の屋根を越えたんです。

ああ、屋根が丸見えだなあ、ちょっと怖いな、そう思ったあたりで夢は終わり。
朝になっても覚えてたんで、同じく梨をもらった仲間の一人に休み時間、話しました。
そいつは驚いた顔をして、「梨の夢な、俺も見たぞ。同んなじだなあ」って。
それで、残りの3人にも確かめたら、やっぱり夢を見てたんです。みな内容も同じ。
不思議ですよね。それで、今度また夢を見たらみなで報告し合おうて決めました。
ええ、夢は毎日見るわけじゃなかったんです。最初は2週間に1ぺんくらい。
だんだんに月に1度ほどになって、そのたびに梨の木が高くなっていきました。
何度目かに見たときは、もう自分の家はけしつぶくらいになって、
街全体が見渡せました。でね、四方を見渡すと、高い高い木が4本生えてまして。
ええ、残りの4人が乗ってる木です。ただ、葉が茂ってるため、
どこに友だちがいるかはわかりませんでした。

そっちに向けて手を振ったりもしてみましたが、姿は見えなかったです。
ええ、最初のうちは律儀に報告し合ってましたよ、「また、あの夢を見た」って。
でも、内容はいつも同じだし、高さがますます増していくくらいでした。
ですから、つまらないし、その頃には夢は3ヶ月に1度くらいしか見なくなってたんです。
それで、いちいち報告し合うのはやめてました。4年生が終わってクラス替えがあり、
スポ少に入ったやつもいて、遊ぶ仲間も変わりました。でね、夢を見る間隔は
どんどん長くなてって、中学校に入る頃には1年に1ぺんくらいになったんです。
梨の木はものすごく高くなって、地上は航空写真みたいでしたし、
他の友だちが乗ってる木は糸みたいに見えたんです。高校生のときには、
夢は3年間で1度見ただけでしたね。その後は、5年おきくらいですかね。
私は就職し、結婚して子どももでき、梨を食べた4人とはすっかり疎遠になってました。

それがある日、一番仲よかった当時の友だちの一人から、電話がかかってきたんです。
お互い「懐かしいなあ」って言い合い、友だちは、「またあの夢を見たぞ。覚えてるか、
 梨の木の夢。久しぶりだったが、もうすぐ雲まで届くところだ」って言ってました。
で、友だちは、会社を早期退職して独立するって張り切ってたんですが、
それから1週間ほどして訃報が入ったんです。自殺という噂でしたね。
まさか、そんな短期間で事業がうまくいかなくなったわけでもないだろうし、
理由はわかりません。葬式には出ました。2人の子どもはまだ小さく、
残された奥さんが気の毒でしたよ。でね、葬式に出た日の夜に、久しぶりに
あの夢を見たんです。木はますます伸びて、地上ははるかはるか下。
友だちの木は って探したら、3本しかなかったんです。1本なくなってたんですね。
でも、この夢のことが幼馴染の死と関係があるとは、そのときは考えませんでした。

このことがあってから5年後、先月のことです。この間、私は夢は見ていません。
また、当時の友だちの一人から電話が来て、切迫した声で、こんな内容でした。
「おい、あの夢、覚えてるか、梨の木の夢。あれ、ヤバイものかもしれん。
 昨日久しぶりに夢を見たんだが、雲の上まで届いた。
 そしたらそこに俺たちに梨をくれた爺さんがいて、手に大きな鎌を持ってたんだ。
 それが、何とも嫌な、怖い顔をして、「収穫の時期だなあ」って
 言ったんだよ」 そこで電話は切れ、こちらからかけ直してもつながらず・・・
でね、他の2人の友だちからは次々に電話が来たんです。
友人は、私たち3人全員に連絡してたようなんです。あれこれ話をしたら、
同じ内容の電話だったみたいでした。でもねえ、お互いに忙しい身だし、
最近は誰もその夢は見てなかったので、集まるとか、そういう話は出なかったんですよ。

だってねえ、そのときはまだ、正直言って信じちゃいなかったんです。
でも、その夜また夢を見て・・・木は高く高く伸びてて、地平線が丸く見えるくらいでした。
で、遠くに見える他の木は2本だけ。ええ、そうです。その時刻には、
電話をかけてきた友だちは亡くなってたんです。やっぱり自殺でした。
世間体を考えてか、葬式はありませんでしたが、他の2人と相談して時間をやりくりし、
郷里に集まったんです。3人でお線香をあげに自宅にうかがったら、
やつれた顔で奥さんが出てきて、自殺する心あたりはまったくない、という話をされました。
その後、喫茶店で3人で相談したんです。「あの夢で、木が雲まで届いたやつは、
収穫されてしまうんじゃないか」って。ええ、知らない人が聞いたらバカバカしいでしょうし、
私もまだ半信半疑ではあります。けど、怖いんですよ。次に、木が雲まで届く
夢を見てしまったらどうしようって。それで、ここにご相談に来たんです。







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