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胡蝶の夢の話

2018.03.24 (Sat)
これはアメリカに住んでいた頃の自分が体験した話です。
2年半ほどいて、アルバイトしながら占星術の勉強をしていたんですが、
後半のほうは、不本意ながら不法滞在状態になってしまいました。
ですので、場所などはボカさせていただきます。あるとき、
同じ占星術のスクールに通っていた、Gというイタリア系アメリカ人の友人から
相談を受けました。Gはマフィアの資産家の5男で、カジノの経営者という肩書を
持ってましたが、店にはほとんど顔を出すことはなく、
毎日好きなこことをして遊んで暮らしている、けっこうな身分でした。
日本人の奥さんがいるんですが、ワイフのことで相談していいかって言われたんです。
「いいけど、俺は独身だし、たいしたアドバイスなんてできないぞ」
「いや、お前ほら、霊とか超能力とかに詳しいだろ。そういう話なんだよ」

これ、当時自分は若気の至りで、あることないこと、オカルト話を周囲に
まき散らしていたんですね。今思えば恥ずかしいんですが。
「うちのワイフは知ってるだろ」 「ああ、何度かお会いしたね」
「そのワイフが変な夢を見るって言うんだよ」
「夢の話か、夢判断とか、夢占いなんてできないぞ」
「いや、とりあえず話を聞いてくれるだけでいいよ」 「 O K 」
「うちのワイフが、日本で失恋してこっちに来たってこと、前に話したよな」
「ああ、聞いた。日本で婚約までした男がいたんだけど、結婚式直前になって
 相手の浮気が発覚して破談、奥さんは傷心のままこっちに留学しに来て、
 そこでお前と知り合って結婚までこぎつけたって話だろ」
「そうだ。でな、ワイフの夢というのが、その前の男と結婚してて、

 日本で生活してるって夢なんだよ」 「へええ、奥さんがそう話したのか」
「そうだ。このところ体調が悪そうだから、あれこれ聞いたら、隠さずに話してくれたよ」
「で?」 「ワイフの夢の中では、浮気が発覚しなかったのか、
 その男といっしょになって日本で暮らしてる。これがすごくリアルで、
 1回見た夢で、数日とかそれ以上がたってるらしい。目が覚めた後はぼうっとして、
 しばらく体が動かないみたいだ。ワイフは働いていないが、外出もできずにいる」
「うーん。でもまあ、夢は夢だよな。病院で診てもらったほうがいいんじゃないか」
「それはもう、何件も回ったよ。どこでも体は問題ないと言われた。
 だから今は精神科医にかかってる」 「それなら、そう心配しなくてもいいんじゃないか。
 ところで、お前、奥さんとの仲はうまくいってるのか」
「問題ない、と思ってる」 「じゃあ、俺がアドバイスすることもなさそうだが、

 具体的な夢の内容はわかるか?」 「うん。さっき言ったとおり、
 ワイフは夢の中でその男と結婚してて、子どもはいないらしい。
 それで、結婚生活はうまくいってない。相手の男はどうしようもないやつで、
 女にだらしなく、浮気を続けてて、それでしょっちゅうケンカになって、
 ワイフはその男に愛想を尽かして、離婚を考えてるとこってことだった」
「ふーん、具体的だし、内容が続いてるんだな。そういうのは聞いたことがない。
 でも、俺にできることはなさそうだな。あ、そうだ、
 日本に興信所で働いてる知り合いがいるから、その男、奥さんの元婚約者がどうしてるか
 調べてもらおうか。費用はかかるけど、いいだろ」 「問題ない、頼むよ」
ということで、日本に連絡してGの奥さんの婚約してた相手について調べてもらったんです。
そしたら、その男はまだ独身で、外資系の証券会社に勤めてるってことがわかりました。

収入はかなりあるらしく、女関係も派手という報告が来たんです。
これを知らせるため、またGに会ったんですが、話に進展がありました。
「ワイフは夢は相変わらず見てる。前は週に1回くらいだったのが、その頻度がだんだん
 増して、今は眠るたびにその男が出てくる」
「うーん、お前、もしかして、その男に嫉妬してるのか?」
「違う。ワイフは夢の中で、その男のことが嫌いでたまらなくて、
 すぐにでも離婚したいが、男が承知しないって嘆いてるんだよ」 「で?」
「つい3日ほど前、おかしなことがあった」 「どんな?」
「寝室のダブルベッドでワイフと寝てるんだが、朝方、ワイフの声で目を覚ますと、
 隣りにいるワイフが、あんたなんか死んで、みたいなことを叫んでたんだが、
 目の下が紫になって腫れあがってたんだ」 「で?」

「驚いてワイフを起こしたんだが、なかなか目が覚めなかった。で、起きるなり、
 男に殴られたって言ったんだ」 「夢の中で殴られたってことだな」
「そうだ、DVが激しくなってきたらしい。だけど、ワイフの顔の腫れは、
 目を覚ますと同時にすっと消えてなくなったんだよ。これ、どういうことかわかるか?」
「うーん、夢の中の出来事が現実の世界に影響をおよぼしてきたってことなんだろうか。
 お前、平行世界って知ってるか?」 「いや、わからん」
「そうか、これ、説明がめんどくさいから、もっとわかりやすい例えで話す。昔々に、
 中国に莊子って人がいてな。胡蝶の夢 (the dream of a butterfly) って話を書いてる」
「胡蝶の夢?」 「まあ知らんだろう。ある人が、蝶になって、
 じつに楽しく、ひらひら飛んでる夢を見た。で、夢から覚めた後に、
 自分は本当に自分なんだろうか? もしかしたら、自分は本当は蝶で、

 今、自分だと思ってるのは、蝶が見てる夢なんじゃないかって考えた」
 「・・・それはわかるような気がする。東洋哲学だな」 「うん。あ、そうだ、
 たしか精神科にかかってるて言ってたよな。それはどうなった」
「ああ、そっちは、精神科医の野郎が、夢を見るのは、無意識のうちにワイフが
 その男に未練を持ってるからとかなんとか言い出したんで、
 気分が悪くなって通うのをやめさせた」 「そうか、また何かあったら知らせてくれ」
 それから2日後、Gから連絡が来て、かなり慌ててる様子だったので、
 自分の部屋から近い、大学のキャンバスで会ったんです。
「どうなった?」 「たいへんなことが起きた」 「どんな?」
「今朝な、やはりワイフの声で目を覚ましたら、ワイフの体が透けたり戻ったりしてた」
「え? どういうこと」 「いや、ワイフの方を見たら、身体ごしに白いシーツが見えて、
 
 これは透けてるってことだろ。それが数秒で濃くなってっていうか、
 普通に戻って、またしばらくして透け始める。それで、透けてるときに肩を揺すろうとしたら、
 触れないんだ」 「で?」 「だから濃くなってるときに強く揺すって起こしたんだよ」
「で?」 「そしたら目を覚まして、体はもとに戻ったが、夢の中で、
 また日本にいる男に殴られて、それで気を失って、光る海みたいなところにいたらしい」
「光る海?」 「そう言ってた。虹みたいに水が7色にきらめく海に浮かんでたって」
「うーん、ただごとではないみたいだな」 「どうすればいい」
「もしかしたら、奥さんは2つの世界の間でたゆたってるのかもしれない。できることは・・・
 お前、仕事していないんだからつねに奥さんといっしょにいろ。寝るときは2人で、
 手とか足を縛って寝るとかもいいかもしれん。あとは、とにかく痕跡を残すことだと思う」 
「痕跡?」 「そうだ、奥さんと一緒の写真をたくさん撮れ。だれかれ声をかけていろんな人に

 撮ってもらえよ。あとは・・・そうだ、お前、あちこちにタトゥー入れてるだろ」
「ああ」 「じゃあ少しぐらい増えてもかまわないよな。奥さんと一緒にタトゥー屋に
 行って、奥さんの名前のタトゥーをどっかに入れろ。別にいいだろ」
「ああ、問題ないが、それにどういう意味がある?」
「いや、ちゃんとはわからんけど、向こうの世界とこっちの世界がせめぎあってる
 状態なら、観測が多いほうが勝つ気がする」 「観測?」
「いや、気にするな。とにかく、奥さんが生きて暮らしてたって痕跡が多いほうが
 勝つんじゃないかって気がするんだよ」 「勝ち負けの話なのか?」
「・・・たぶん」 「わかった、勝ち負けだってんなら、できることすべてやるよ」
まあ、自分も自信はなかったんですが、こんなアドバイスをしたんです。
Gがそれを忠実に守ってたせいか、奥さんが透けるということはなくなりました。

ただ、1回だけ、奥さんが目を覚ましたときに、指に見慣れない指輪をはめてた
ことがあって、Gが奥さんといっしょに自分のところに持ってきました。
結婚指輪でしたね。奥さんは一度も見たことがないものだと言い、
それは自分が預かったんです。Gは、「いつもワイフと一緒なのはかまわないが、
 これ、いつになったら終わるんだ」といらだった様子で聞いてきて、
それには何とも答えられませんでした。けど、この件は唐突に終わったんです。
日本で、奥さんの元婚約者の男が亡くなりました。酒を飲んで帰る朝方、
人気のない街中で刺されたんですね。出血多量でその日のうちに死亡し、
あれから10数年たちますが、犯人は見つかっていません。それ以来、奥さんは
透けることも、夢を見ることもなくなったんです。あとは・・・もしかして平行世界から
来たかもしれない指輪は、消えてなくなりもせず、今も自分が記念に持ってます。



 


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コメント
 「観測が多いほうが勝つ」というのが面白いですね。詳しくないのですが、量子論では観測こそが存在に不可欠なんでしたっけ。アドバイスが実を結んだようで安心しました。しかし胡蝶の夢と平行宇宙、哲学と物理学がオカルトで同じ土俵に上るとはw
| 2018.03.24 15:22 | 編集
コメントありがとうございます
自分は平行世界はあるんじゃないかと思っています
しかも、ある程度似ている平行世界は
ときどき重なり合ったりするんじゃないかと
bigbossman | 2018.03.24 22:09 | 編集
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