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エンガチョを切る話

2018.03.29 (Thu)
これは、アパレル関連会社に勤めるAさんからうかがったお話です。
Aさんは20代の女性なので、バーとかではなく、駅近くの喫茶店でお会いしました。
「占いをしているbigbossmanと申します。よろしくおねがいします。
 奇妙な体験をなさったそうで」 「はい、そうです」 
「いつ頃のことですか」 「つい10日ばかり前なんです。
 その日、6時ころに退社して、 駅までの道を歩いてたんです」 
「はい」 「駅までは15分ほどで、人通りの多い街中です。
 交差点で信号待ちをしてたら、背中をつつかれた感じがして、
 ふり向くとおばあさんがいたんです」 「どんな人でしたか?」
「あんまりよく覚えてないんですが、ものすごく背が低かったです。
 私も背は大きいほうじゃないですけど、頭が私の腰のあたりにあるくらい」

「ははー、小学生くらいですね」 「はい、でもそれは腰が曲がってたせいも
 あると思うんです」 「今どき珍しいですね」
「ええ、それで、そのおばあさんが黙ってたので、何でしょうか?って聞きました。
 そしたら私のほうに手のひらを差し出して、落とし物だよ、って」 「何でしたか?」
 「それが、昔のキーホルダーっていうか、お財布なんかについているやつ」
「根付ですね」 「ああ、それです。でも、私はそんなの持ってないですし」
「待って下さい。どんな根付だったんですか?」 「ああ、3cmくらいの牛、
 飴色の牛に、1cmほどの金色の鈴が2個ついてました」 「はい」
「で、私のじゃないんですって言っても、おばあさんは黙って手をつき出したままで」
「はい」 「そのうち信号が変わったので、私は、失礼しますって言って、
 おばあさんを残して歩き出しました」 「根付を受けとったわけじゃないんですね」

「ええ、そうだったはずですが・・・」 「というと?」
「信号を渡ってしばらく歩いてましたら、後ろから声をかけられたんです。
 落としましたよ、って。ふり返って見ると、40歳くらいのサラリーマンの人が、
 立ち止まって、指でつまんだ物を私のほうに差し出してたんです」
「それが、さっきの根付だったってわけですか?」 「そうなんです」
「で、どうしました?」 「そのとき、何気なくふっと受け取っちゃったんですよ。
 ありがとうございますって。どうしてそうしたのか、
 今考えてもわからないんですけど」 「はい」
「で、そのときよく見てみたんですけど、高そうな物って
 感じはしなかったです。安っぽい、土産物屋で100円くらいで
 売られてるみたいな」 「はああ、それで?」 

「バッグに入れました。で、またしばらく歩いたら、
 後ろから女の子のの声で、落としましたよ~って」 「はい」
「見ると、お母さんに連れられた5歳ぐらいの子が、近寄ってきて、 
 私に、はい、って指でつまんだ物を手渡して・・・」
「それが、牛の根付だったんですね」 「そうです。でも、おかしいんですよ。
 私のバッグは留め金がついていて、中の物が自然に落ちることはないんです」
「まあ普通そうですよね、で?」 「ありがとうってその子の頭をなでて、
 根付を受けとり、その場でバッグの中を調べたんです。
 でも、中には前の根付は入ってなくて」 「それは不思議ですねえ」
「ですよね。私の勘違いじゃないと思います」 「で、どうしました?」
「気味が悪くなってきて、母娘がいなくなってから、その根付、

 ビルの前にある植え込みに捨てたんです」 「はい」
「確かに捨てたんですよ。それなのに」 「どうなりました?」
「もうすぐ駅ってところで、また呼び止められました」 「根付ですか?」
「そうです。そのときは若い、私と同じ歳くらいの男性でした。で、その人が
 指でつまんでたのが、間違いなく、同じ牛がついた根付で・・・
 でも、絶対変ですよね。ビルの植え込みなんて誰ものぞかないし、
 わざわざ私のとこまで持ってくるなんてこともありえないでしょ」
「そうですね、で?」 「あ、私じゃありません、って言いました。そしたら、
 その人はとまどった顔で、でもバッグから落ちるの見えましたよ、って。
 それで・・・」 「受け取っちゃったんですね」
「はい。で、根付は、今度はコートのポケットに入れて、駅に入ってったんです」

「で?」 「ホームに入ったら、まだ電車が来るまで時間がありました。
 それで、立って待ってたら、また後ろから、あれ何か落ちましたよ、って。
 コートのポケットに手を入れたら、根付はなくなってて・・・」
「不思議ですねえ。で、どうしました?」 
「怖くなっちゃって、ふり返らなかったんです。前を向いたまま、
 私のじゃありませんって、自分でもびっくりするくらい
 大きな声を出しちゃいました」 「はい」 「えーでもたしかに・・・
 って言ってるその人から、離れた場所に移動して、
 横目で見ると、60歳くらいですかね、定年まじかに見える
 サラリーマンの男性でした。その人は、変な顔をして、根付を目の前に
 ぶら下げてみてました」 「で?」

「それで、このままじゃ、また戻ってくるかもしれないって思いまして・・・
 bigbossmanさん、エンガチョって、ご存知ですか?」
「え? ああ、わかります。映画の千と千尋に出てましたよね。
 両手の指で輪をつくって切るやつ」 「そうです。私もその映画見てまして、
 そのときなぜか頭に浮かんだんです」 「はああ、やってみたわけですか?」
「はい。エンガチョ切った、って」 「これ、平安時代からあるみたいですよ。
 絵巻物にエンガチョ切る場面がのってます。要は、縁をチョンと切るってことです」
「はい。今思えば、よくあの映画を覚えてたなあ、やってよかったなあって」
「どうなりました?」 「電車が来るアナウンスがあったんです。
 そしたら、ホームの後ろのほうで、時間だあ!!って、大きな叫び声がして」
「はい」 「さっき私に根付を渡そうとした男性が、

 カバンを両手で胸に抱えたまま、すごい勢いで走ってって、
 入ってきた電車の前に飛び込んだんです」 「う」
「前から飛び込みが多いっていわれてる駅だったんですけど、
 目の前で見たのは初めてだし、怖くなって階段を下りて地下に逃げました」
「その男性、亡くなったんですよね」 「たぶんそうだと思います。
 テレビや新聞では報道されませんでしたけど」 「その後どうしました?」
「電車に乗る気にはなれなくて、その日はタクシーで帰ったんです。
 次の日からは、一つ離れた駅から電車に乗るようにしてます。
 これ、どういうことかわかりますか?」
「うーん、その根付に関係があるんだとは思いますよ。それ以上のことは
 ちょっと・・・呪われた根付ってことなんですかねえ」

「もしかして、あの根付を持ったままだったら・・・というか、
 エンガチョをしなかったら、ホームに飛び込んだのは私だったんでしょうか?」
「・・・そうかもしれませんねえ。でも、なんでAさんがその根付に
 因縁がついたのか、そこはわかんないです。ホントにそれまで、
 見たことがない物だったんですよね」 「はい。あんな古くさいもの、
 自分で買うなんてありえないし・・・ でも、怖いんですよ。
 あれが、また私のところに来るんじゃないかって考えると。
 背中をつつかれて、落とし物ですよ、って言われたらどうしようって」
「・・・うーん、解決になるかどうかはわからないですけど、自分がよく行く
 神社をご紹介しましょうか。ほら、自分はオカルトの研究をしてるんで、
 ちょくちょく気味の悪いことがあるんです。

 そんなときに、お祓いを受けにいく神社です。
 大阪市内ですし、行く気なら今からでもいけます。なんなら神職に連絡を
 入れましょうか?」 「あ、ありがとうございます。お願いします」
こんな話になりました。自分が喫茶店の支払いをして、
Aさんとは反対方向に別れたんですが、少し歩いてふり返ると、
信号待ちをしているAさんの後ろに、腰の曲がったすごく背の低いおばあさんが・・・
ぞくぞくと背筋が寒くなって、それでもAさんのほうに走ったんですけど、
信号が変わって歩き出したAさんの後ろには、誰もいませんでした。
バツが悪くなって、自分はそこに立ち止まってAさんを見送りました。
そのとき、無意識に指でエンガチョをやってましたよ。その後、Aさんから連絡は
ありませんし、確かめたところ、神社にもみえられていないようでした・・・
 

 
 



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