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木のある村の話

2018.03.31 (Sat)
今回は、釣り雑誌の編集部からの紹介で、youtubeに釣り動画を投稿している、
いわゆるユーチューバーのIさんと、大阪市内のいつものバーでお会いしました。
Iさんは大学の4年生で、就職活動はせず、当面は動画投稿だけで食べていく
予定なんだそうです。あいさつと自己紹介、少しの世間話の後、
うかがったのはこんなお話でした。「去年の夏休みのことです。
 投稿仲間の3人と、釣り旅行に出かけたんです。目的はもちろん、
 youtube用の動画を撮るためです」 「はああ、どちらのほうへ」
「東北の山間部です。宮城から岩手、青森にかけて1週間ほどの予定でした」
「渓流ですか?」 「いや、山中にある湖です。なんか神秘的じゃないですか。
 絵的にいいものが撮れるんじゃやないかと思いまして」
「えーと、釣りキチ三平に出てくる、何でしたっけ・・・タキタロウ! 

 たしかにワクワクする動画が撮れそうですよね」
「はい、ねらいはあんな感じです。ただ、タキタロウは山形なので、
 今回は行きませんでしたが」 「で?」 「3人でワンボックスカーを借りて、
 交代で運転しながら、宮城で3ヶ所、湖を回ったんです」 「釣果は?」
「それが、あんまり。岩魚中心だったんですけど、満足はできませんでした。
 でもね、さっきも言ったように、動画を撮るのが目的なんで」
「いい絵は撮れたと」 「そうです。で、岩手に入って、地図であたりをつけてた
 湖をめざして1時間ほど走ったところで、ナビがきかなくなっちゃったんです」
「はい」 「まあ、これ、そんなに珍しいことでもないんです。田舎のほうは、
 ナビに登録されてないような林道もけっこうあるから」 「はい」
「でも、道はいずれどっかに続いてるんで、そのまま走ってたら、

 霧が出てきたんです」 「夏休みだから、真夏ですよね。そんなに標高が高い
 とこにいたんですか?」 「いや、たしかに山地でしたけど、
 せいぜいが数百mです。だから、霧なんてありえないし、
 最初は何かを焼いてる煙かと思ったくらいで」 「はい」
「で、車は林道を抜けて、集落に入ってったんです。ナビがきかないから、
 地図を見たんですが、どこの町なのかもわかりませんでした」
「でも、普通、道には案内板が出てますよね」 「俺らもそう思って、
 探したんですがなかなか見つからなくて。これもねえ、今考えれば変なんですが」
「で?」 「集落は、両側が山に囲まれたようなせまいところで、
 田んぼなんかはなかったですね。小高い場所にぽつんぽつんと、
 昔風の大きな家がありました。あと、わずかな平地は、

 果樹園になってたみたいですが、あんまり詳しくなくて、りんごとか桃とか
 種類はわかりませんでした」 「はい」 「でね、田舎道だから人っ子一人
 通らないんです。とにかく商店を見つけて、現在位置を聞こうと思ったんです」
「で?」 「しばらく走ってると道路が未舗装になって、
 バス停の後ろにばあさんが立ってたんです」 「どんな人でした?」
「野良着っていうんですか、粗末な着物を着てて、頭に手ぬぐいをかぶってたので、
 顔はよくわかんなかったです。側に車を寄せて窓を開け、俺が、
 すみません、ここ何て町村ですか?って聞いたんです。でも、
 ばあさんは微動だにせず、返事も返ってきませんでした。何を話してもそうなんで、
 あきらめて車を出しました。そのときは、年寄りでよそ者を警戒してるか、
 たんにボケてるんだろうと思ってましたが・・・」 「はい」
 
「車を出してから、後部席にいた一人が変なことを言ったんです」 「どんな?」
「あのばあさん、おかしいぞ、お前ら見えなかったかもしれんが、
 ばあさんの後ろ、背中のほうずっとシダみたいな葉が生えてた、って」 「で?」
「何をバカな、って言ったんです。そんな妖怪みたいなばあさんいるわけないだろ、って」
「まあそうですよねえ、で?」 「そっからまた、一本道を走ってったんですが、
 だんだん霧が濃くなってきて、ライトをつけてもあんまりよく前が見えなくなって」
「で?」 「それで俺らも気味が悪くなってきて、逆にスピードを上げたんです。
 対向車も後続車もなかったですから。とにかく早くここ、抜けちまおうって」
「はい」 「そうしてるうちに、○○酒店って看板が見えて。そこで、道を聞こうと
 思って前に車を停めました。で、3人で中に入ってったんですが、
 いくら呼んでも人は出てきませんでした。それでね、変なことがあったんです。

「どんな?」 「店の中は昔風で、棚には日本酒の一升瓶が並んでましたが、
 黄色っぽいほこりだらけで。あと、店の床はコンクリだったんですが、
 あちこちに深いひび割れができてました。でね、その底のほうに、
 太い蛇みたいなのが見えたんです」 「蛇、ですか?」
「いや、よく見ると木の根っこです。人間のふとももくらいの太さで、
 ねじれた白い木の根っこ。それがびっしり張ってるみたいで、あのせいでコンクリが
 割れたのかもしれません」 「ははあ、で?」
「俺らは顔を見合わせて店を出たんです。そっからまた走ってくと、 
 急に空が暗くなったんです」 「はい」 「仲間の一人が、すげえ見ろ!って、
 横手のほうを指さして」 「はい」 「けっこう高い鳥居が見えたんですが、
 それに覆いかぶさるようにして、巨大な木があったんです」

「巨大な木?」 「そうです。これ、信じてもらえますかね。幹がどれくらい太いかも
 わからなかったです。中空に見えてるだけで、家一軒分はありました」
「まさか」 「いや本当です。高さもどこまであるかわかんなかったです。
 もしかしたら通天閣より高かったかも」 「・・・」 「その木が、大きく枝を
 広げ、葉が茂って道にまでせり出してきてて。それで空が暗くなったように
 感じたんですね」 「何の木かわかりますか? 種類です」
「それが、あんまり詳しくないんですよ。細かい葉っぱでした。帰ってきてから
 ネットで調べたのでは、ネムノキに似てましたね。
 でも、そんなに大きくなるはずはないし」 「で?」 「やめればよかったんですが、
 車を降りて、3人で神社に入ってったんです」 「はい」
「鳥居をくぐって近づくにつれて、木の全容がわかってきました。

 古い神社の屋根を突き破ってというか、神社は全壊してて、その跡地に木が生えてる
 っていうか。でね、木の幹には近づけなかったんです」 「どうして?」
「木の根が何重にも取り巻いて地面をはってたからです。太いので5m、土管くらいのものは 
 無数に根っこが地面に露出してて、ぐるぐる木の周りにうねってて」 「で?」
「それで、積み重なった根っこの上に、ぼこんぼこんと黒いものが突き出てました」
「で?」 「それ、何だったと思いますか?木で彫った、等身大の人間です」
「・・・」 「ろうそく立てに立ってるろうそくみたいに、黒い人間が、
 さまざまな高さで根っこの上に突き出してて」 
「うーん、誰かが木の根を、人の姿に彫ったってことですかね」 
「俺もそのときにはそう思いました。でも・・・黒い人間はあまりに細かく彫られてて、
 ものすごいリアルだったんです」 「それ、服も彫ってあったんですか?」

「いえ、全部 裸でした。大人も子どもも、男も女も・・・年寄りが多かったですけど、
 みな裸でした。でね、中には服らしきものがまだ引っかかってるのもあったんです」
「Iさんって、ユーチューバーでしたよね。もちろんその木、動画に撮ったんですよね」
「それが・・・、今、説明します。仲間の一人がカメラを構えると、
 やめろ、ストップ!!って、でかい声がしまして。半壊した社務所の後ろから、 
 自衛隊らしき人が何人も出てきたんです。みなガスマスクをしてました」 「え?」
「で、その人たちにビデオカメラもデジカメも全部没収されちゃったんです」
「抗議しなかったんですか」 「それまで撮りためた釣りの動画も入ってたんですが、
 文句言う雰囲気じゃなかったんです。俺らが自衛隊の基地に無断で侵入した
 みたいな扱われ方をしました。隊員の中には銃を肩に掛けてる人もいましたし」
「それ、ただごとでないですね」 「ええ、でね、隊員の一人が、

 すぐにきた道を戻りなさい、まだ胞子が出る時期まで1ヶ月ある。シールドが
 破れたようだが、あなたたちは運がよかった、みたいなことを言ったんです」 
「胞子・・・」 「軍用車両に前後をはさまれる形で、一本道を戻ったんです。
 でね、最初に道を聞いたばあさんがいたでしょ」 「はい」
「それが、まだ同じ場所にいたんですよ。でも・・・」 「でも?」
「50cmほど高くなってました。足が木の根っこに続いてて、宙に持ち上がってたんです。
 それと、かぶってた手ぬぐいが落ちて、頭全体から葉っぱが生えてました。
 その中から無表情な顔だけが突き出して・・・」
「う」 「岩手県のある市の近くでやっと開放されたんですよ」
「口止めとかありましたか?」 「それが、特別は言われてないんです。
 ですから、こうして話してるんです」 「うーん、その後は?」

「カメラ類を全部取られてしまったんで、しかたなく旅行は中断しました。
 でもね、機材代だけでも大損害ですよ。これ、防衛庁に請求すればいいんでしょうか」
「うーん、やめといたほうがいいかもです。その場所、調べたんですよね」
「はい、グーグルアースで。でも、その村があると思われる場所のあたりは、
 全部低い山地なんです。もちろん地図にも載ってなくて」
「うーん、奇妙な話ですねえ。Iさん、体調とか変わりないですか?」
「あ、俺は特に変わったことはないんですが、仲間の一人で、
 ずっと咳をしてるやつがいるんです。本人は風邪をこじらせたって言って、
 病院にも通ってますけど」 「そうですか、大事ないといいですね」
Iさんにはお礼を言って別れました。で、この話、ブログに書こうかどうか迷ったんですが、
こうやって書いてしまいました。この後、自分にも何かあるんでしょうかねえ。



 
 

 

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